説明

電気錠システム用アダプタ

【課題】 電気錠と電気錠制御盤との間の通線経路からの不正行為による施解錠を低減して防犯性を向上させる。
【解決手段】 電気錠システム用アダプタ1は、制御盤側アダプタ2と電気錠側アダプタ3を具備する。制御盤側アダプタ2は、電気錠制御盤4から施錠指令が入力されて錠状態信号が解錠状態のときにランダムな施錠IDを生成して保持記憶し、この保持記憶された施錠IDとともに施錠出力を出力し、電気錠制御盤4から解錠指令が入力されて錠状態信号が施錠状態のときには施錠時に生成された施錠IDとともに解錠出力を出力する。電気錠側アダプタ3は、施錠時に制御盤側アダプタ2からの施錠IDを保持記憶するとともに電気錠5に施錠出力を出力して電気錠5を施錠制御し、解錠時には制御盤側アダプタ2からの施錠IDと前回の施錠時に保持記憶された施錠IDとを照合して両者が一致したときに電気錠5に解錠出力して電気錠5を解錠制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉に設けられる電気錠を電気的に施解錠制御する電気錠システムにおいて、電気錠と、この電気錠を制御する電気錠制御盤との間の配線部分から不正行為による錠の施解錠を防止する電気錠システム用アダプタに関するものである。
【0002】
近年、例えばオフィスビルやマンションなどの一般住宅の扉には、不審者の侵入を回避するため、防犯性に富んだ電気錠システムを採用している。この種の電気錠システムは、特定の施解錠信号により、例えばモータやソレノイドなどの駆動手段を電気的に駆動して錠内部の施解錠機構やデッドボルトを電気的に進退させ、錠の施解錠を行っている。そして、この種の電気錠システムとしては、例えば下記特許文献1に開示されるものが知られている。
【0003】
特許文献1に開示される電気錠システムは、図7に示すように、ドア51に設置された電気錠52及び電気錠制御部(図示せず)と、壁に設置され電気的な手段により電気錠52の施錠や解錠を決定し、電気錠52を制御するための制御信号を出力する施解錠決定手段53とを備え、ドア51の一側が蝶番54にてドア枠55に連結されている(ドア枠55に開閉自在に取り付けられている)。施解錠決定手段53には、電源線56によって交流電源(AC100V又はAC200V)が供給され、施解錠決定手段53と前記電気錠制御部との間は、電線57,58及び伝送手段Aを介して信号が伝送されるようになっている。
【特許文献1】特開平10−25935号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1を含め、従来の一般的な電気錠システムでは、扉に具備された電気錠と、電気錠の施解錠を制御するための電気錠制御盤とが扉の通電金具を介して配線接続されている。そして、電気錠制御盤から電気錠に電力供給するか、電力供給を絶つかによって電気錠の施解錠を電気的に制御している。ところが、この種の電気錠システムでは、電気錠と電気錠制御盤との間を接続する通線経路の任意の箇所で不正に通線を切断し、又は電線の被覆を剥いで電源装置を接続し、この電源装置からの電源の供給により不正に電気錠の施解錠が容易に行われてしまうという問題があった。
【0005】
また、近年では、単に電気錠の施解錠を電源供給/電源断だけで制御するのではなく、省線化などを目的として電源重畳などの特殊な方法で電気錠を制御するものも市場に出回っている。この場合、単に通線経路に電源装置を介入させただけでは電気錠を施解錠することはできないが、この種の電気錠を制御する制御盤には市販品を使用していることが多いため、誰でも容易に制御盤を入手でき、この入手した制御盤を悪意で使用すれば、電気錠の施解錠を不正に行うことが可能であった。
【0006】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、電気錠と電気錠制御盤との間の通線経路からの不正行為による施解錠を低減して防犯性を向上させることができる電気錠システム用アダプタを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本願発明の請求項1に記載された電気錠システム用アダプタは、扉に設けられた錠前の施解錠機構を施解錠するとともに、現在の錠の状態を示す錠状態信号を出力する電気錠と、該電気錠に通線経路を介して接続され、前記電気錠を施錠するための施錠指令又は前記電気錠を解錠するための解錠指令を出力して前記電気錠を制御する電気錠制御盤とを備えた電気錠システムに用いられる電気錠システム用アダプタであって、
前記電気錠制御盤から施錠指令が入力されて前記錠状態信号が解錠状態のときにランダムな施錠IDを生成して保持記憶し、この保持記憶された施錠IDとともに施錠出力を出力しており、前記電気錠制御盤から解錠指令が入力されて前記錠状態信号が施錠状態のときには前記施錠時に生成された前記施錠IDとともに解錠出力を出力する制御盤側アダプタと、
施錠時に前記制御盤側アダプタからの施錠IDを保持記憶するとともに前記電気錠に施錠出力を出力して該電気錠を施錠制御しており、解錠時には前記制御盤側アダプタからの施錠IDと前回の施錠時に保持記憶された施錠IDとを照合して両者が一致したときに前記電気錠に解錠出力して該電気錠を解錠制御する電気錠側アダプタとを備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載された電気錠システム用アダプタは、請求項1記載の電気錠システム用アダプタにおいて、
前記制御盤側アダプタは、前記電気錠の施解錠時に、前記施錠IDと施錠又は解錠出力を重畳して前記電気錠側アダプタへ出力することを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載された電気錠システム用アダプタは、請求項1又は2記載の電気錠システム用アダプタにおいて、
前記制御盤側アダプタが前記電気錠制御盤に組み込まれ、かつ前記電気錠側アダプタが前記電気錠に組み込まれたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように本発明によれば、電気錠制御盤と電気錠との間の配線(通線経路)の切断部分から不正に電力供給や施解錠信号を入力しても不用意に電気錠を動作させる可能性が極めて低く、不正行為による電気錠の施解錠を低減して防犯性に優れた電気錠システムを提供することができる。
【0011】
また、施解錠時に制御盤側アダプタから出力される施錠IDや制御電力(施錠出力、解錠出力)を重畳して電気錠側アダプタに入力する構成とすれば、配線数を低減して配線の省線化が図れ、配線処理の手間を省くことができる。さらに、電気錠制御盤に制御盤側アダプタを組み込み、かつ電気錠に電気錠側アダプタを組み込む構成とすれば、部品点数が少なくなり、より簡素で防犯性に優れた電気錠システムを構築することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら具体的に説明する。図1は本発明に係る電気錠システム用アダプタを採用した一例を示す概念図、図2は本発明に係る電気錠システム用アダプタの第1形態の電気的構成を示すブロック図、図3は本発明に係る電気錠システム用アダプタにおける制御盤側アダプタの詳細を示すブロック図、図4は本発明に係る電気錠システム用アダプタにおける電気錠側アダプタの詳細を示すブロック図、図5は本発明に係る電気錠システム用アダプタの第2形態の電気的構成を示すブロック図、図6は本発明に係る電気錠システム用アダプタの第2形態の電気的構成を示すブロック図である。
【0013】
本例の電気錠システム用アダプタ1は、図1に示すように、扉11に設けられた錠前の施解錠機構を施解錠するとともに、錠回路5aから現在の錠の状態を示す錠状態信号を出力する電気錠5と、制御盤回路4aが出力する施錠指令又は解除指令を含む制御電力により電気錠5を制御するべく室内の所定箇所(例えば壁面など)に配設された電気錠制御盤4とが通電金具12を介して配線接続された従来から周知の一般的な電気錠システム10に採用することができる。なお、施解錠機構は、例えば扉枠の係合穴に対して進退するデッドボルトをモーターやソレノイドで駆動する機構で構成される。また、電気錠制御盤4には、例えば商用電源から電源が供給される。
【0014】
図1に示すように、本例の電気錠システム用アダプタ1は、制御盤側アダプタ2と電気錠側アダプタ3から構成される。この電気錠システム用アダプタ1を図1の電気錠システム10に採用する場合には、制御盤側アダプタ2が電気錠制御盤4と通電金具12との間に配線接続され、電気錠側アダプタ3が電気錠5と通電金具12との間に配線接続される。
【0015】
まず、本例の電気錠システム用アダプタ1の第1形態について図2及び図3を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図2に示すように、第1形態の電気錠システム用アダプタ1は、電気錠制御盤4と電気錠5との間の通線経路途中に位置し、制御盤側アダプタ2が電気錠制御盤4に配線接続され、電気錠側アダプタ3が電気錠5に配線接続されている。
【0017】
図2に示すように、制御盤側アダプタ2は、制御盤側判断処理手段2A、制御盤側施錠ID生成/保持手段2B、制御盤側電気錠制御手段2C、制御盤側蓄電手段2Dを備えて構成される。
【0018】
図3に示すように、制御盤側判断処理手段2Aは、更に制御盤側電力入力検知部2Aa、制御盤側錠状態検知部2Ab、制御盤側条件判断部2Acを備えて構成される。この制御盤側判断処理手段2Aでは、電気錠制御盤4からの施錠指令又は解錠指令を含む制御電力の入力検知や、電気錠5の状態を示す錠状態信号に基づいた判断処理を行っている。
【0019】
制御盤側電力入力検知部2Aaは、電気錠制御盤4からの施錠指令又は解錠指令を含む制御電力が正常に供給されているか否かを検知している。そして、電気錠制御盤4からの施錠指令又は解錠指令を含む制御電力を正常に検知したときには、そのときの制御電力の一部が駆動電源として制御盤側アダプタ2の各部に供給される。なお、電気錠制御盤4からの制御電力の供給が切れた後も、若干の時間はアダプタ各部を作動させるため、制御盤側蓄電手段2Dに蓄電された電力が供給される。制御盤側蓄電手段2Dの容量を大きくし、停電時の作動を行なうこともできる。
【0020】
制御盤側錠状態検知部2Abは、制御盤側電力入力検知部2Aaが施錠指令又は解錠指令を含む制御電力を正常に検知すると、電気錠5から電気錠制御盤4に向かって出力されている錠状態信号を取込み、電気錠5の現在の状態が施錠状態又は解錠状態の何れであるを判別し、その判別結果を制御盤側条件判断部2Acに出力している。
【0021】
制御盤側条件判断部2Acは、制御盤側錠状態検知部2Abからの判別結果が解錠状態のときに、電気錠5を施錠制御する旨の施錠制御信号を制御盤側施錠ID生成/保持手段2Bに出力している。また、制御盤側条件判断部2Acは、制御盤側状態検知部2Abからの判別結果が施錠状態のときに、電気錠5を解錠制御する旨の解錠制御信号を制御盤側施錠ID生成/保持手段2Bに出力している。
【0022】
図3に示すように、制御盤側施錠ID生成/保持手段2Bは、更に制御盤側施錠ID生成部2Ba、制御盤側施錠ID保持部2Bbを備えて構成される。この制御盤側施錠ID生成/保持手段2Bでは、制御盤側条件判断部2Acからの施錠制御信号または解錠制御信号の入力に応じた処理を行っている。
【0023】
制御盤側施錠ID生成部2Baは、電気錠5が解錠状態で制御盤側条件判断部2Acから施錠制御信号が入力されたときに、例えば数字や記号などをランダムに組み合わせた施錠IDを生成するとともに、施錠制御信号を制御盤側電気錠制御手段2Cに出力している。なお、制御盤側制御ID生成部2Baは、制御盤側条件判断部2Acから施錠制御信号が入力される度に新たな施錠IDを生成し、解錠制御信号が入力された場合は生成しない。
【0024】
制御盤側施錠ID保持部2Bbは、電気錠5の施錠時に制御盤側施錠ID生成部2Baが生成した施錠IDを保持記憶している。また、制御盤側施錠ID保持部2Bbは、電気錠5が施錠状態で制御盤側条件判断部2Acから解錠制御信号が入力されたときに、その解錠制御信号を制御盤側電気錠制御手段2Cに出力している。なお、制御盤側施錠ID保持部2Bbは、制御盤側施錠ID生成部2Baが施錠時に新たな施錠IDを生成する度にそれまで保持記憶していた施錠IDを新たに生成された施錠IDに書き替えて保持記憶している。
【0025】
図3に示すように、制御盤側電気錠制御手段2Cは、制御盤側施錠制御部2Ca、制御盤側解錠制御部2Cbを備えて構成される。制御盤側施錠制御部2Caは、電気錠5の施錠時、すなわち、制御盤側施錠ID生成部2Baから施錠制御信号が入力されたときに、制御盤側施錠ID生成部2Baで生成された施錠IDと施錠出力(制御電力)とを同時に電気錠側アダプタ3に出力している。
【0026】
制御盤側解錠制御部2Cbは、電気錠5の解錠時、すなわち、制御盤側施錠ID保持部2Bbから解錠制御信号が入力されたときに、制御盤側施錠ID保持部2Bbに保持された施錠ID(施錠時に生成されたID)と解錠出力(制御電力)とを同時に電気錠側アダプタ3に出力している。
【0027】
制御盤側蓄電手段2Dは、電気錠制御盤4から供給される制御電力を蓄電し、制御電力の供給が切れた後も、若干の時間はアダプタ各部に電源供給を行なう。制御盤側蓄電手段2Dの容量を大きくし、停電時の作動を行なうこともできる。
【0028】
図4に示すように、電気錠側アダプタ3は、電気錠側判断処理手段3A、電気錠側施錠ID保持/照合手段3B、電気錠側電気錠制御手段3C、電気錠側蓄電手段3Dを備えて構成される。
【0029】
図4に示すように、電気錠側判断処理手段3Aは、更に電気錠側電力入力検知部3Aa、電気錠側錠状態検知部3Ab、電気錠側条件判断部3Acを備えて構成される。この電気錠側判断処理手段3Aでは、制御盤側アダプタ2から供給される施錠指令(制御電力)又は解錠指令(制御電力)の入力検知や、電気錠5の状態を示す状態信号に基づいた判断処理を行っている。
【0030】
電気錠側電力入力検知部3Aaは、制御盤側アダプタ2から施錠出力(制御電力)又は解錠出力(制御電力)が正常に供給されているか否かを検知している。そして、制御盤側アダプタ2から施錠出力(制御電力)又は解錠出力(制御電力)を正常に検知したときには、そのときの制御電力の一部が駆動電源として電気錠側アダプタ3の各部に供給される。なお、電気錠制御盤4からの制御電力の供給が切れた後も、若干の時間はアダプタ各部を作動させるため、電気錠側蓄電手段3Dに蓄電された電力が供給される。電気錠側蓄電手段3Dの容量を大きくし、停電時の作動を行なうこともできる。
【0031】
電気錠側錠状態検知部3Abは、電気錠側電力入力検知部3Aaが施錠出力(制御電力)又は解錠出力(制御電力)を正常に検知すると、電気錠5から電気錠制御盤4に向かって出力されている錠状態信号を取込み、電気錠5の現在の状態が施錠状態又は解錠状態の何れであるを判別し、その判別結果を電気錠側条件判断部3Acに出力している。
【0032】
電気錠側条件判断部3Acは、電気錠側錠状態検知部3Abの判別結果が解錠状態のときに、電気錠5を施錠する旨の施錠制御信号を電気錠側施錠ID保持/照合手段3Bに出力している。また、電気錠側条件判断部3Acは、電気錠側錠状態検知部3Abの判別結果が施錠状態のときに、電気錠5を解錠する旨の解錠制御信号を電気錠側施錠ID保持/照合手段3Bに出力している。
【0033】
図4に示すように、電気錠側施錠ID保持/照合手段3Bは、更に電気錠側施錠ID保持部3Ba、電気錠側施錠ID照合部3Bbを備えて構成される。この電気錠側施錠ID保持/照合手段3Bでは、制御盤側アダプタ2からの施錠IDを保持又は照合するとともに、電気錠側条件判断部3Acからの施錠制御信号または解錠制御信号の入力に応じた処理を行っている。
【0034】
電気錠側施錠ID保持部3Baは、電気錠5が解錠状態で電気錠側条件判断部3Acから施錠制御信号が入力されたときに、制御盤側アダプタ2から入力される施錠IDを上書きして保持記憶し、施錠制御信号を電気錠側電気錠制御手段3Cに出力している。なお、電気錠側施錠ID保持部3Baは、制御盤側アダプタ2側で施錠時毎に新たに生成されて入力される施錠IDに書き替えて保持記憶している。
【0035】
電気錠側施錠ID照合部3Bbは、電気錠5が施錠状態で電気錠側条件判断部3Acから解錠制御信号が入力されたときに、制御盤側アダプタ2から入力される施錠IDと電気錠側施錠ID保持部3Baに保持記憶されている施錠IDとを照合し、照合が一致した場合のみ解錠制御信号を電気錠側電気錠制御手段3Cに出力している。
【0036】
図4に示すように、電気錠側電気錠制御手段3Cは、更に電気錠側施錠制御部3Ca、電気錠側解錠制御部3Cbを備えて構成される。電気錠側施錠制御部3Caは、電気錠5の施錠時に電気錠側施錠ID保持部3Baから施錠制御信号が入力されたときに、電気錠5に制御電力(施錠出力)を出力して電気錠5を施錠制御している。
【0037】
電気錠側解錠制御部3Cbは、電気錠5の解錠時に電気錠側施錠ID照合部3Bbから解錠制御信号が入力されたときに、電気錠5に制御電力(解錠出力)を出力して電気錠5を解錠制御している。
【0038】
電気錠側蓄電手段3Dは、制御盤側アダプタ2から供給される制御電力を蓄電し、制御電力の供給が切れた後も、若干の時間はアダプタ各部に電源供給を行なう。電気錠側蓄電手段3Dの容量を大きくし、停電時の作動を行なうこともできる。
【0039】
次に、上述した第1形態の電気錠システム用アダプタ1を採用した電気錠システム10の施解錠動作について具体的に説明する。なお、以下では、施錠動作時は電気錠5が出力する錠状態信号が解錠状態であり、解錠動作時は電気錠5が出力する錠状態信号が施錠状態であることを前提とした場合の正常時の動作について説明する。
【0040】
まず、電気錠5を施錠する場合について説明する。電気錠5を施錠する場合、電気錠5を施錠するため特定の操作を行い(例えば、操作器のテンキー操作による暗証番号入力、リモコンキーの操作による特定の認証情報出力)、電気錠制御盤4に施錠指示信号を送信する。電気錠制御盤4は、上記施錠指示信号が送信されたことを認識すると、制御盤側アダプタ2に施錠指令を含む制御電力を供給する。
【0041】
制御盤側アダプタ2は、制御盤側電力入力検知部2Aaが電気錠制御盤4からの施錠指令を含む制御電力を正常に検知すると、制御盤側錠状態検知部2Abが錠状態信号を検知して現在の電気錠5の状態を判別する。ここでは、電気錠5が解錠状態であるため、制御盤側錠状態検知部2Abから解錠状態を示す判別結果が制御盤側条件判断部2Acに出力される。制御盤側条件判断部2Acは、制御盤側錠状態検知部2Abから解錠状態を示す判別結果が入力されると、電気錠5を施錠する旨の施錠制御信号を制御盤側施錠ID生成部2Baに出力する。制御盤側施錠ID生成部2Baは、制御盤側条件判断部2Acから施錠制御信号が入力されると、この施錠出力(制御電力)と同時に出力するためのランダムな施錠IDを生成する。
【0042】
制御盤側施錠ID生成部2Baは、生成した施錠IDを制御盤側施錠ID保持部2Bbに出力するとともに、施錠制御信号を制御盤側施錠制御部2Caに出力する。その際、制御盤側施錠ID保持部2Bbは、生成された施錠IDを保持する。そして、制御盤側施錠制御部2Caは、制御盤側施錠ID生成部2Baから施錠制御信号が入力されると、制御盤側施錠ID生成部2Baが生成した施錠IDと施錠出力(制御電力)を電気錠側アダプタ3に出力する。
【0043】
電気錠側アダプタ3では、電気錠側電力入力検知部3Aaが制御盤側施錠制御部2Caからの施錠出力(制御電力)を正常に検知すると、電気錠側錠状態検知部3Abが錠状態信号を検知して現在の電気錠5の状態を判別する。ここでは、電気錠5が解錠状態であるため、電気錠側錠状態検知部3Abから解錠状態を示す判別結果が電気錠側条件判断部3Acに出力される。電気錠側条件判断部3Acは、電気錠側錠状態検知部3Abから解錠状態を示す判別結果が入力されると、電気錠5を施錠する旨の施錠制御信号を電気錠側施錠ID保持部3Baに出力する。
【0044】
電気錠側施錠ID保持部3Baは、電気錠側条件判断部3Acから施錠制御信号が入力されると、制御盤側アダプタ2からの施錠IDを保持記憶するとともに、電気錠側施錠制御部3Caに施錠制御信号を出力する。電気錠側施錠制御部3Caは、電気錠側施錠ID保持部3Baから施錠制御信号が入力されると、電気錠5に施錠出力(制御電力)を出力し、電気錠5を施錠する。なお、錠状態信号から電気錠5が施錠状態と判別された場合には、電気錠制御盤4から施錠指令(制御電力)が出力されても制御盤側アダプタ2が信号を無視するため、電気錠5の施錠制御は行われない。
【0045】
次に、電気錠5を解錠する場合について説明する。電気錠5を解錠する場合、電気錠5を解錠するための特定の操作を行い(例えば、操作器のテンキー操作による暗証番号入力、リモコンキーの操作による特定の認証情報出力)、電気錠制御盤4に解錠指示信号を送信する。電気錠制御盤4は、上記解錠指示信号が送信されたことを認識すると、制御盤側アダプタ2に解錠指令を含む制御電力を供給する。
【0046】
制御盤側アダプタ2は、制御盤側電力入力検知部2Aaが電気錠制御盤4からの解錠指令を含む制御電力を正常に検知すると、制御盤側錠状態検知部2Abが錠状態信号を検知して現在の電気錠5の状態を判別する。ここでは、電気錠5が施錠状態であるため、制御盤側錠状態検知部2Abから施錠状態を示す判別結果が制御盤側条件判断部2Acに出力される。制御盤側条件判断部2Acは、制御盤側錠状態検知部2Abから施錠状態を示す判別結果が入力されると、電気錠5を解錠する旨の解錠制御信号を制御盤側施錠ID保持部2Bbに出力する。
【0047】
制御盤側施錠ID保持部2Bbは、制御盤側条件判断部2Acから解錠制御信号が入力されると、その解錠制御信号を制御盤側解錠制御部2Cbに出力する。制御盤側解錠制御部2Cbは、制御盤側施錠ID保持部2Bbから解錠制御信号が入力されると、制御盤側施錠ID保持部2Bbに保持記憶された施錠IDと解錠出力(制御電力)とを同時に電気錠側アダプタ3に出力する。
【0048】
電気錠側アダプタ3では、電気錠側電力入力検知部3Aaが制御盤側解錠制御部2Cbからの解錠出力(制御電力)を正常に検知すると、電気錠側錠状態検知部3Abが錠状態信号を検知して現在の電気錠5の状態を判別する。ここでは、電気錠5が施錠状態であるため、電気錠側錠状態検知部3Abから施錠状態を示す判別結果が電気錠側条件判断部3Acに出力される。電気錠側条件判断部3Acは、電気錠側錠状態検知部3Abから施錠状態を示す判別結果が入力されると、電気錠5を解錠する旨の解錠制御信号を電気錠側施錠ID照合部3Bbに出力する。
【0049】
電気錠側施錠ID照合部3Bbは、電気錠側条件判断部3Acから解錠制御信号が入力されると、制御盤側アダプタ2からの施錠IDと、前回の施錠時に電気錠側施錠ID保持部3Baに保持記憶されている施錠IDとが一致するか否かを照合する。そして、両者の施錠IDの照合が一致すると、電気錠側施錠ID照合部3Bbから電気錠側解錠制御部3Cbに解錠制御信号が出力される。
【0050】
電気錠側解錠制御部3Cbは、電気錠側施錠ID照合部3Bbから解錠制御信号が入力されると、電気錠5に解錠出力(制御電力)を出力し、電気錠5を解錠する。なお、錠状態信号から電気錠5が解錠状態と判別された場合には、電気錠制御盤4から解錠指令(制御電力)が出力されても制御盤側アダプタ2が信号を無視するため、電気錠5の解錠制御は行われない。
【0051】
次に、不正行為発生時の動作について説明する。電気錠5が施錠状態で、通線経路の途中を物理的に破壊し、電源装置を通線途中に接続した場合、電気錠5に向けて電源装置から電力供給(解錠出力)すると、この電源装置からの電力供給を受けた制御盤側アダプタ2は、施錠IDを伴わない電力供給(解錠出力)であれば、電気錠5への解錠出力を行わない。
【0052】
また、通線経路の途中を物理的に破壊し、本例の電気錠制御盤4と同種の制御盤と制御アダプタを通線途中に接続し、この制御盤と制御アダプタを操作して施錠IDと解錠出力を出力した場合には、この施錠IDと解錠出力を受けた電気錠側アダプタ3は、自身が記憶している施錠ID(施錠毎にランダムに変化するID)と、送られてきた施錠IDとを比較するが、両者の施錠IDが一致せず、電気錠5への解錠出力を行わない。
【0053】
次に、電気錠システム用アダプタ1の第2形態について図5を参照しながら詳細に説明する。なお、上述した第1形態の電気錠システム用アダプタ1と同一の構成要素には同一番号を付してその説明を省略し、相違する構成についてのみ説明する。
【0054】
図5に示すように、第2形態の電気錠システム用アダプタ1は、制御盤側アダプタ2に制御盤側重畳手段2Eを具備し、電気錠側アダプタ3に電気錠側重畳手段3Eを具備している。これら制御盤側重畳手段2Eと電気錠側重畳手段3Eとの間では、施解錠時に制御盤側アダプタ2からの施錠出力又は解錠出力(制御電力)と施錠IDが重畳されて電気錠側アダプタ3に送られ、電気錠側アダプタ3側で施錠出力(制御電力)、解錠出力(制御電力)、施錠IDのそれぞれの信号に復調される。なお、この重畳処理に加えて施錠IDを暗号化して送ることもできる。これにより、各種信号の種類毎に配線する必要がないので、配線数を低減して省線化が図れ、システム構築時の配線の手間が省ける。
【0055】
次に、電気錠システム用アダプタ1の第3形態について図6を参照しながら詳細に説明する。なお、上述した第1形態や第2形態の電気錠システム用アダプタ1と同一構成の構成要素には同一番号を付してその説明を省略し、相違する構成についてのみ説明する。
【0056】
図6に示すように、第3形態の電気錠システム用アダプタ1は、図3に示す構成の制御盤側アダプタ2を電気錠制御盤4に組み込み、図4に示す構成の電気錠側アダプタ3を電気錠5に組み込み、さらに上述した第2形態における重畳処理に関する構成(制御盤側重畳手段2E、電気錠側重畳手段3E)を採用したものである。これにより、新たに電気錠システム10を構築する場合、部品点数を必要最小限とし、低コスト化を図りつつ防犯性に優れた電気錠システム10を提供することができる。
【0057】
なお、上述した第3形態の電気錠システム用アダプタ1において、重畳処理に関する構成(制御盤側重畳手段2E、電気錠側重畳手段3E)を省くこともできる。
【0058】
このように、本例の電気錠システム用アダプタ1を電気錠システムに採用すれば、電気錠制御盤4と電気錠5との間の配線(通線経路)の切断部分から不正に電力供給や施解錠信号を入力しても不用意に電気錠を動作させる可能性が極めて低く、不正行為を低減して防犯性に優れた電気錠システム10を提供することができる。
【0059】
しかも、既存の電気錠システムに採用する場合でも、本例の電気錠システム用アダプタ1を電気錠制御盤4と電気錠5との間の通線経路の所定箇所に接続するだけでよいので、現在使用している電気錠システム10をそのまま活かして防犯性を向上させることができる。
【0060】
第2形態の電気錠システム用アダプタ1を採用すれば、施解錠時に制御盤側アダプタ2と電気錠側アダプタ3との間で通信される各種信号を重畳して送ることができるので、配線数を減らして省線化を図ることができる。
【0061】
第3形態の電気錠システム用アダプタ1を採用すれば、電気錠制御盤4と電気錠5のそれぞれにアダプタを組み込む構成なので、部品点数を必要最小限に少なくでき、より簡素で防犯性に優れた電気錠システム10を構築することができる。
【0062】
以上、本発明を用いて最良の形態について説明したが、この形態による記述及び図面により本発明が限定されることはない。すなわち、この形態に基づいて当業者等によりなされる他の形態、実施例及び運用技術等はすべて本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係る電気錠システム用アダプタを採用した一例を示す概念図である。
【図2】本発明に係る電気錠システム用アダプタの第1形態の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る電気錠システム用アダプタにおける制御盤側アダプタの詳細を示すブロック図である。
【図4】本発明に係る電気錠システム用アダプタにおける電気錠側アダプタの詳細を示すブロック図である。
【図5】本発明に係る電気錠システム用アダプタの第2形態の電気的構成を示すブロック図である。
【図6】本発明に係る電気錠システム用アダプタの第3形態の電気的構成を示すブロック図である。
【図7】従来の電気錠システムの概略構成を示す概念図である。
【符号の説明】
【0064】
1 電気錠システム用アダプタ
2 制御盤側アダプタ
2A 制御盤側判断処理手段
2Aa 制御盤側電力入力検知部
2Ab 制御盤側錠状態検知部
2Ac 制御盤側条件判断部
2B 制御盤側施錠ID生成/保持手段
2Ba 制御盤側施錠ID生成部
2Bb 制御盤側施錠ID保持部
2C 制御盤側電気錠制御手段
2Ca 制御盤側施錠制御部
2Cb 制御盤側解錠制御部
2D 制御盤側蓄電手段
2E 制御盤側重畳手段
3 電気錠側アダプタ
3A 電気錠側判断処理手段
3Aa 電気錠側電力入力検知部
3Ab 電気錠側錠状態検知部
3Ac 電気錠側条件判断部
3B 電気錠側施錠ID保持/照合手段
3Ba 電気錠側施錠ID保持部
3Bb 電気錠側施錠ID照合部
3C 電気錠側電気錠制御手段
3Ca 電気錠側施錠制御部
3Cb 電気錠側解錠制御部
3D 電気錠側蓄電手段
3E 電気錠側重畳手段
4 電気錠制御盤
4a 制御盤回路
5 電気錠
5a 錠回路
10 電気錠システム
11 扉
12 通電金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉に設けられた錠前の施解錠機構を施解錠するとともに、現在の錠の状態を示す錠状態信号を出力する電気錠と、該電気錠に通線経路を介して接続され、前記電気錠を施錠するための施錠指令又は前記電気錠を解錠するための解錠指令を出力して前記電気錠を制御する電気錠制御盤とを備えた電気錠システムに用いられる電気錠システム用アダプタであって、
前記電気錠制御盤から施錠指令が入力されて前記錠状態信号が解錠状態のときにランダムな施錠IDを生成して保持記憶し、この保持記憶された施錠IDとともに施錠出力を出力しており、前記電気錠制御盤から解錠指令が入力されて前記錠状態信号が施錠状態のときには前記施錠時に生成された前記施錠IDとともに解錠出力を出力する制御盤側アダプタと、
施錠時に前記制御盤側アダプタからの施錠IDを保持記憶するとともに前記電気錠に施錠出力を出力して該電気錠を施錠制御しており、解錠時には前記制御盤側アダプタからの施錠IDと前回の施錠時に保持記憶された施錠IDとを照合して両者が一致したときに前記電気錠に解錠出力して該電気錠を解錠制御する電気錠側アダプタとを備えたことを特徴とする電気錠システム用アダプタ。
【請求項2】
前記制御盤側アダプタは、前記電気錠の施解錠時に、前記施錠IDと施錠又は解錠出力を重畳して前記電気錠側アダプタへ出力することを特徴とする請求項1記載の電気錠システム用アダプタ。
【請求項3】
前記制御盤側アダプタが前記電気錠制御盤に組み込まれ、かつ前記電気錠側アダプタが前記電気錠に組み込まれたことを特徴とする請求項1又は2記載の電気錠システム用アダプタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−118312(P2006−118312A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−309802(P2004−309802)
【出願日】平成16年10月25日(2004.10.25)
【出願人】(390037028)美和ロック株式会社 (868)
【Fターム(参考)】