説明

電気錠システム

【課題】
扉内配管・配線及び通電金具を使用せずに電気錠システムを構築する。美観上・防犯上有利な電気錠システムを提供する。
【解決手段】
扉体1の戸先側端面12に設けたストライク7と、戸先側縦枠4内に設けた電気錠本体8と、戸先側縦枠4に沿って延出する電気配線Wと、を備えている。電気錠本体8は、ストライク7に対して電動で係脱するデッドボルト80と、デッドボルト80をストライク7に対して手動で係脱させるためのシリンダ81と、を備えており、戸先側縦枠4の室外側に扉体1の全高に亘って延出する縦長カバー体6を回動自在あるいは/および着脱自在に設けてシリンダ錠81を隠蔽し、室外側からのシリンダ錠81の取付位置の特定及びシリンダ錠81の鍵孔へのアクセスを防止した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉体の電気錠システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の開き戸の電気錠は、錠前(電気錠本体)を扉体内に設ける一方、ストライクを枠に設け、錠前のデッドボルトを電動で扉体の戸先側端部から出没させて、戸先側縦枠のストライクに係脱させるようにしている(図5及び特許文献1参照)。このような電気錠を用いた仕様では、扉体内に配管を設けて通線を行った上で、枠に設けた通電金具や通電ピボットを用いて、配線を扉体内から枠外へ持ち出す必要があり、工場及び現場での作業性・施工性が悪いといった問題がある。
【0003】
施工後においては、扉体の内部に電装部品が付くので、部品や配線が故障したような場合のメンテナンスが難しいという不具合がある。
【0004】
木製ドアは、扉体内部に配管を通すための中空部を形成することになるが、防火設備として使用する場合には、その分板厚を大きく取る必要があり、実質的に電気錠仕様が困難である。
【0005】
電気錠は錠前に内蔵した電動モータ又はソレノイドを作動させて電動で施錠・解錠を行うが、停電等の電気的トラブルに対応できるように、通常、室外側からはキーで、室内側からはサムターンで施錠・解錠できるように構成されている。しかしながら、室外側にシリンダ錠が露出することは美観上好ましくないだけでなく、ピッキング防止の観点からも望ましくない。
【特許文献1】特開平11−159209
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、扉内配管・配線及び通電金具を使用せずに電気錠システムを構築することを目的とする。本発明の他の目的は、美観上・防犯上有利な電気錠システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を達成するために本発明が採用した技術手段は、枠体により形成された建物開口部を開閉する扉体の電気錠システムにおいて、前記電気錠システムは、
前記扉体の戸先側端面に設けたストライクと、前記枠体の戸先側縦枠内に設けた電気錠本体と、を備えており、前記電気錠本体は、前記ストライクに対して電動で係脱するデッドボルトと、室外側から前記デッドボルトを前記ストライクに対して手動で係脱させるためのシリンダ錠と、を備えており、電気錠システムの電気配線は、前記戸先側縦枠側に設けられ、前記戸先側縦枠の室外側に扉体の全高に亘って延出する縦長カバー体を回動自在あるいは/および着脱自在に設けて前記シリンダ錠を隠蔽し、室外側からのシリンダ錠の取付位置の特定及びシリンダ錠の鍵孔へのアクセスを防止したことを特徴とする、前記シリンダ錠を隠蔽する。
【0008】
一つの態様例では、戸先側縦枠は室外側面部を備えており、縦長カバー体は、当該室外側面部を覆うように戸先側縦枠に回動自在あるいは/および着脱自在に設けられる。一つの態様では、電気配線は、戸先側縦枠の室外側面部の室内側の空間を通って戸先側縦枠に沿って上下方向に延出する。あるいは、戸先側縦枠の納まり等によっては、電気配線を、戸先側縦枠を横断するように引き出しても良い。電気錠システムの電気配線は、具体的には、電気錠本体のモータに通電を行う配線や施錠・解錠の制御信号を送信する配線が含まれ、これらの配線は当業者において良く知られている。
【発明の効果】
【0009】
ストライクを扉体側に設け、電気錠本体を縦枠側に設けて電気配線を縦枠に沿って延出させたことにより、扉内配管及び配線が不要となり、さらに、工場での扉の製造工程や現場での施工が簡単となる;通電金物や通電ピボットなどの電気錠仕様専用金物が不要となる;木製ドアに対しても電気錠仕様が可能となる;電気配線が扉体の開閉の影響を受けないので、電気錠システムの耐久性、信頼性が向上する;といった効果を奏する。また、扉体に比べ縦枠側にはより大きなスペースがあるので、電気錠本体の取付位置や個数の選択の自由度が大きい。
【0010】
戸先側縦枠の室外側に扉体の全高に亘って延出する縦長カバー体を回動自在あるいは/および着脱自在に設けて前記シリンダ錠を隠蔽し、室外側からのシリンダ錠の取付位置の特定及びシリンダ錠の鍵孔へのアクセスを防止したので、停電時等には室外側から手動で電気錠を施錠・解錠できるものでありながら、通常時はシリンダ錠が室外側に露出することがないので、美観上、防犯上良好である。より具体的には、シリンダ錠の鍵孔が室外側に露出しないことによりピッキングに対して有効であり、室外側からのシリンダ錠の取付位置の特定ができないことで、バール等のこじ開けに対して有効である。ここで、従来のような扉体に設けられた電気錠本体では、可動部材である扉体に縦長カバー体を設けることは美観等を考慮すると現実的でない。また、電気錠本体のみを部分的に隠蔽したのでは、電気錠本体の位置が特定されてしまうためバール等を用いたこじ開けに対して不利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は本発明に係る電気錠システムを備えた扉装置を室外側から見た図、図2は同扉装置を室内側から見た図、図3は同扉装置の横断面図である。図4は、他の実施形態にかかる電気錠システムを備えた扉装置を室外側から見た図であり、縦長カバー体を取り外すと共に、電気配線を示すように戸先側縦枠を部分的に切り欠いてある。図1乃至図3に示す実施形態と図4に示す実施形態は、電気錠の取り付け位置や丁番の種類が異なるが、基本的な構成は実質的に同じである。
【0012】
扉装置は、建物開口部を形成する枠体と、建物開口部を開閉するように枠体に設けられた扉体1、とからなる。枠体は、上枠2、下枠3、戸先側縦枠4、戸尻側縦枠5、からなる方形状の四周枠であり、内側に建物開口部を形成している。戸先側縦枠4は、室外側面部40、側面41を備えており、側面41は建物開口部の戸先側の側面を形成している。
【0013】
扉体1は、室外側面部10、室内側面部11、戸先側端面12、戸尻側端面13、を備えている。扉体1の室外側面部10及び室内側面部11には、戸先側に近接して、扉体1の高さの略中央部位に位置して取手1aが設けられる。扉体1の室内側面部11の上方にはドアクローザ1bが設けてある。扉体1は、開き戸であり、戸尻側部位を丁番1cを用いて戸尻側縦枠5に回動自在に装着することで建物開口部を開閉する。図4に示すように、扉体1の戸先側部位には、取手の回動操作や押操作に連動して戸先側端面12より出没自在のラッチ1dが設けてあり、ラッチ1dは図示しない付勢手段によって、戸先側縦枠4の側面41に形成したストライク41a内に突出して係止している。このラッチ1d及びストライク41aは、通常の扉体が有する構成部品であり、本発明に係る電気錠システムとは別の構成部品である。ラッチ1d及びストライク41aは周知の構成であり、図1乃至図3に示す実施形態にも採用され得る。
【0014】
戸先側縦枠4の室外側面部40には、当該面部40を被覆する縦長カバー体6が戸先側縦枠4に対して回動自在に設けてある。より具体的には、室外側面部40の開口部から離隔する側は室外側に突成する凸部400となっており、縦長カバー体6の厚みは、凸部400と突出寸法と略同じ寸法を有しており、縦長カバー体6を開口部から離隔する側を凸部400の側面400aに近接させて戸先側縦枠4に設けた時には、縦長カバー体6の室外側面部60と凸部400の室外側面部400bが略面一となる。
【0015】
縦長カバー体6は、扉体1の全高に亘って延出しており、戸先側縦枠4と略同じ高さ寸法を備えている。縦長カバー体6の開口部から離隔する側の高さ方向の上下には軸6Xが突出しており、上枠2、下枠3に対して回動自在に取り付けられており、縦長カバー体6は、開口部に近接する側を戸先側、開口部から離隔する側を戸尻側として回動自在に戸先側縦枠4に取り付けられる。縦長カバー体の戸尻側(回動支点側)をさらに戸先側縦枠4に対して着脱自在としてもよい。縦長カバー体の戸尻側(回動支点側)を戸先側縦枠4に対して着脱自在とする構成は当業者における設計事項である。
【0016】
縦長カバー体6の戸先側端部は、室外側面部60の戸先側部位600と、戸先側端面601と、戸先側端面601の室内側から室外側面部60の戸先側部位600に対向して延出する室内側片602とから断面視コ字形状に形成されている。室内側片602は、戸先側縦枠4の室外側面部40に近接しており、室内側片602の高さ方向の上下端部において螺子603によって、室外側面部40に取り付けられる。戸先側部位600には、螺子603の頭部に対応して開口が形成されており、開口にはキャップ604が着脱自在に装着されている。縦長カバー体6を開放させる時には、開口を被覆しているキャップ604を取り外し、開口からドライバを挿入して螺子603を回転させて取り外すことで縦長カバー体6の戸先側が自由となり、戸尻側の軸6Xを介して縦長カバー体6を室外側に回動させればよい。縦長カバー体6は袖パネルとして機能し、室外側面部60には、様々な部品を取り付けることができ、例えば、照明6a、室名札6b、インターフォン6c、新聞受6d、が取り付けられ得る。縦長カバー体6を回動させることで、配線やメンテナンスを容易に行うことができる。また、縦長カバー体6が戸先側縦枠4に対して回動自在の構成を示したが、単に、縦長カバー体6を戸先側縦枠4に対して着脱自在としてもよい。例えば、上述の戸先側の螺子止めの構成を戸尻側にも採用することで、縦長カバー体6を戸先側縦枠4に対して着脱自在とすることができる。
【0017】
電気錠システムは、扉体1の戸先側端面12に設けたストライク7と、戸先側縦枠4内に設けた電気錠本体8と、電気錠本体8に接続され、戸先側縦枠4に沿って延出する配線Wと、を備えている。本発明の特徴は、ストライク7を扉体1側に設け、電気錠本体8を縦枠4側に設けて延出させたことにあり、ストライク7、電気錠本体8などの電気錠システムの個々の構成部品の構成は従来の公知の電気錠の構成を採用することができる。電気錠本体8は、本体ケース8´と、デッドボルト80と、シリンダ錠81と、デッドボルト80を電動で作動させるモータを内蔵したケーシング82と、サムターン83と、を備えている。モータによって電気錠本体8のデッドボルト80をストライク7に対して電動で出没させて、デッドボルト80をストライク7に対して係脱させることで、施錠・解錠を行う。図示の例では、デッドボルト80は水平方向に往復動するものであるが、回動するデッドボルトでもよい。また、図3の例では、モータは本体ケース8´とは別のケーシング82に内蔵されているが、図4の例では、モータは本体ケース8´に内蔵されている。
【0018】
電気錠システムは、一つの態様では、磁気によって戸先側縦枠4内のコントロールユニット84を介して施錠・解錠を行うものである。扉体1の閉鎖時には、扉体1の戸先側に内蔵したマグネットユニット85の磁気によって、コントロールユニット84、モータを介してデッドボルト80がストライク7内に突出して施錠状態となる。扉体1の開放時には、縦長カバー体6の室外側面部60に設けたカードリーダ86にICカードをかざすことによって、コントロールユニット84、モータを介してデッドボルト80がストライク7内から退避して解錠状態となる。本発明の電気錠システムの電気的制御については、従来の電気錠システムのいかなる電気制御も採用することができる。
【0019】
電気錠システムのモータに通電する配線やコントロールユニットに接続される信号配線等の電気配線Wは、戸先側縦枠4内を延出している。図4の例では、電気配線Wは、戸先側縦枠4内を本体ケース8´から上方に向かって配管Pを通って延出しており、戸先側縦枠4の上方から引き出されて図示しない電源に接続される。このように、本発明に係る電気錠システムでは、扉内配管および配線が不要であるため、扉内配管および配線に起因する不具合を一掃することができる。電気配線Wは、戸先側縦枠4の中空部に沿って縦枠4の高さ方向に延出させることができるため、施工性・作業性も良好である。配管Pの施工においても、戸先側縦枠4の中空部を用いて設ければよいので、扉内配管に比べて施工性・作業性が良好である。また、電気配線Wは、常に開閉される扉体1のような可動部と干渉することがないため、配線の断線等が可及的に防止され、電気錠システムの耐久性、信頼性が向上する。
【0020】
戸先側縦枠4の室外側面部40の室外側にはシリンダ錠81が室外側に向かって突出しており、シリンダ錠81の端面には、鍵孔が形成されており、図示しないキーを鍵孔に差し込んで回転させることで、デッドボルト80をストライク7に対して手動で出没させて、デッドボルト80をストライク7に対して係脱させる。上述の通り、戸先側縦枠4の室外側面部40の室外側は縦長カバー体6によって全体が覆われており、通常時には、シリンダ錠81の鍵孔が外部に露出することがなく、美観上・防犯上良好である。停電時等において、室外側から手動で電気錠を施錠・解錠したい場合には、開口を被覆しているキャップ604を取り外し、開口からドライバを挿入して螺子603を回転させて取り外して縦長カバー体6を回動すればよい。ピッキングのような侵入行為は5分以上の時間を要すると侵入をあきらめるといわれており、縦長カバー体6でシリンダ錠81を被覆することで、シリンダ錠81の鍵孔にアクセスするまでに時間を要するため、ピッキング防止として防犯上有利である。また、バール等によるドアのこじ開けは、シリンダ錠81に対応する部位からデッドボルト80の位置を特定してバールを差し込んで行うが、本発明の電気錠においては、縦長カバー体6はシリンダ錠81が設けられた部位のみならず、当該部位を含む扉体1の全高に相当する部位を被覆するので、室外側からシリンダ錠81の取付位置を特定することができず、バール等によるこじ開けを困難にする。停電時等において、室内側から手動で電気錠を施錠・解錠したい場合には、サムターン83を回動させればよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】扉装置を室外側から見た正面図である。
【図2】扉装置を室内側から見た正面図である。
【図3】扉体装置の横断面図である。
【図4】他の実施形態に係る扉装置を室外側から見た正面図であり、縦長カバー体を取り外すと共に、戸先側縦枠を部分的に切り欠いて電気錠システムの電気配線を示している。
【図5】従来の2種類の電気錠の納まりを示す扉装置の正面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 扉体
12 戸先側端面
4 戸先側縦枠
6 縦長カバー体
7 ストライク
8 電気錠本体
80 デッドボルト
81 シリンダ
W 電気配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体により形成された建物開口部を開閉する扉体の電気錠システムにおいて、
前記電気錠システムは、
前記扉体の戸先側端面に設けたストライクと、
前記枠体の戸先側縦枠内に設けた電気錠本体と、
を備えており、
前記電気錠本体は、
前記ストライクに対して電動で係脱するデッドボルトと、
室外側から前記デッドボルトを前記ストライクに対して手動で係脱させるためのシリンダ錠と、
を備えており、
電気錠システムの電気配線は、前記戸先側縦枠側に設けられ、
前記戸先側縦枠の室外側に扉体の全高に亘って延出する縦長カバー体を回動自在あるいは/および着脱自在に設けて前記シリンダ錠を隠蔽し、室外側からのシリンダ錠の取付位置の特定及びシリンダ錠の鍵孔へのアクセスを防止したことを特徴とする、
電気錠システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−30275(P2009−30275A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−193315(P2007−193315)
【出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【出願人】(307038540)三和シヤッター工業株式会社 (273)
【Fターム(参考)】