説明

電気錠システム

【課題】アンチパニック機能を備えた電気錠に対する室外側からの不正解錠を防止すること。
【解決手段】室内側レバーハンドル10bの回動操作を検知したときに操作検知信号を出力するハンドル操作検知手段10cと、室内側レバーハンドル10b近傍に設けられ、室内側からの室内側レバーハンドル10bへの近接を検知して人体検知信号を出力する人体検知部12と、侵入者に対して発報する報知部16と、ハンドル操作検知手段10cからの操作検知信号を入力したときに人体検知部12からの人体検知信号を入力していないときは、室内側レバーハンドル10bが不正解錠された旨の報知出力を行う電気錠制御部13とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者の所定操作に基づき扉に内蔵された錠前を電気的に施解錠する電気錠システムに係り、特にアンチパニック機能を備えた電気錠において不在時に室外からの不正解錠を防止する電気錠システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の各種扉の錠前部分には、不審者の侵入を回避するため、セキュリティ性に富んだ電気錠システムが採用されている。この種の電気錠システムでは、特定の施解錠信号により、例えばモータやソレノイド等の駆動手段を駆動し、デッドボルトを扉枠のストライクの係止穴に対して進退させることで電気錠を施解錠している。また、ホテルの客室の扉には、災害等の緊急事態に安全に宿泊客が避難できるようにするため、例えば下記特許文献1に開示される電気錠が公知である。
【0003】
下記特許文献1の電気錠では、室内側のレバーハンドルと室外側のレバーハンドルとにそれぞれ連結される内外の駆動カムを錠ケースに回動自在に設け、これら内外の駆動カムは、それぞれ独立して回動する。また、錠ケースには複数個の部材の組み合わせから成り、且つ外側の回動部材の回動のみを規制する施解錠手段を設け、さらに錠ケースには制御装置と電気的に接続し、且つ前記施解錠手段を駆動するソレノイドが内装されている。
【0004】
そして、この電気錠では、扉を閉じると、直ちに制御装置からの施錠信号に基づきソレノイドが作動し、これにより室外側のレバーハンドルに対して施錠状態が保持されるが、室内側の回動部材は機構的に常に解錠状態になっているので、室内側のレバーハンドルを回転すると、出没部材は錠ケースのフロント内に没入する仕組みとなっており、所謂アンチパニック機能(ソレノイドの作動で室外側から出没部材が施錠状態となっても、室内側からレバーハンドルを回転し、出没部材を自由に解錠状態にすることができる機能)を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平4ー19180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されるようなアンチパニック機能を搭載した電気錠は、施錠状態のときに室内側と室外側レバーハンドルが連動せずに個々で動作するタイプであるため、室内側からの開扉操作はサムターンによるデッドボルトの操作を必要とせず、単にレバーハンドルを所定方向に回動操作するのみで開扉が可能である。
【0007】
しかしながら、このようなタイプの電気錠では、室内側からのレバーハンドルの操作のみで解錠操作が可能であるため、外出時に施錠操作を行った場合でも侵入行為(例えば工具を用いて扉に空けた孔や隙間から針金等で室内側レバーハンドルを所定方向に回動操作する)により不正解錠されてしまうという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、アンチパニック機能を搭載した電気錠の室外側からの不正解錠を防止することができる電気錠システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するために、請求項1記載の電気錠システムは、室内側レバーハンドルと室外側レバーハンドルとを互いに独立回動できるように支承するアンチパニック機能を備え、施解錠操作時に取得した施解錠情報を読み取ってその正当性を判別し、正常に認証したときのみ錠前を電気的に施解錠制御する電気錠システムにおいて、
前記室内側レバーハンドルの回動操作を検知したときに操作検知信号を出力するハンドル操作検知手段と、
室内側からの前記室内側レバーハンドルへの近接したことを検知して人体検知信号を出力する人体検知部と、
前記ハンドル操作検知手段からの前記操作検知信号を入力したときに前記人体検知部からの前記人体検知信号を入力していないときは、前記室内側レバーハンドルが不正解錠された旨の報知出力を行う電気錠制御部と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電気錠システムによれば、アンチパニック機能を搭載する電気錠であっても室外側からの不正行為によって室内側レバーハンドルの回動操作による不正解錠を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る電気錠システムの装置構成を示す概略斜視図である。
【図2】同システムの構成を示す概略ブロック図である。
【図3】同システムの処理動作を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではなく、この形態に基づいて当業者等によりなされる実施可能な他の形態、実施例及び運用技術等はすべて本発明の範疇に含まれる。
【0013】
まず、本発明に係る電気錠システム1の構成について、図1、2を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、本例の電気錠システム1をホテルに採用した例で説明するが、その他公共施設や集合住宅等の施設でも使用可能である。
【0014】
なお、本システムに採用される電気錠の装置構成は、デッドボルトの機能をラッチボルトが兼ねる錠構造であり、通電時解錠タイプにセットされ施錠された状態又は通電時施錠タイプにセットされ施錠された状態において、室外側レバーハンドルは固定状態を維持するが、室内側レバーハンドルは常に回動操作可能であってソレノイドに通電したり、ソレノイドを非通電とすることなくレバーハンドルの回動操作のみで解錠可能な、所謂アンチパニック機能を搭載した周知の構成であるため、その機械的構成の説明について省略し、本発明の特徴要件である不在時における室内側からの不正解錠に対するシステム構成及び制御処理についてのみ記載する。
【0015】
図1又は2に示すように、本例の電気錠システム1は、例えばホテルのフロントや管理室等に配置されるカード発行制御器により施解錠操作時に必要な施解錠キーである施解錠カード20が発行され、この施解錠カード20による施解錠制御が可能な電気錠装置10を備えている。
【0016】
また、図1に示すように、室外側からの開扉時に回動操作される室外側レバーハンドル10aと、室内側からの開扉時に回動操作される室内側レバーハンドル10bが備えている。さらに、室内側レバーハンドル10bには、所定の回動操作方向に回動自在に支持する回動支持部材(扉内に埋設)にハンドル操作検知手段10c(マイクロスイッチやフォトセンサ等の移動検知機器)が設けられており、回動操作されると、操作されたことを示す操作検知信号を後述する電気錠制御部13に出力している。
【0017】
ここで、施解錠キーとしてカード発行制御器で発行される施解錠カード20について説明する。
本例の電気錠システム1で使用する施解錠カード20とは、例えば客室の施解錠操作時に用いるカードとしてフロントからチェックイン時に受け取る施解錠用カードや清掃員がチェックアウト後の客室を清掃する際に施解錠するのに用いる管理カード等の予め決められた部屋の入退出を可能とする権限が付与されたカードである。施解錠カード20は、例えばプロセッサチップのメモリに各種データの読み書きが可能なICカード、CPU、ROM、RAM、フラッシュRAM等を含むICチップ(RFIDタグ)を搭載し非接触通信によるリード/ライトが可能な非接触ICチップ内蔵カード等の各種情報の記憶/書き換えが可能な記憶領域を有するカード状記憶媒体で構成される。施解錠カード20は、カード発行制御器で使用者毎に設定された識別情報(本例では、ホテルに採用されているため、施解錠時に必要な施解錠情報、利用者が宿泊する部屋番号を示す部屋情報、利用者が利用可能な期間を示す利用期間情報等)が保存された状態で発行される。
【0018】
なお、本例では、認証情報として施解錠情報、部屋情報、利用期間情報の3つの情報を設定しているが、少なくとも施解錠情報を認証情報として記憶されていればよい。
【0019】
電気錠装置10は、アンチパニック機能を搭載した装置であり各客室の扉若しくは扉近傍に埋設され、情報読取部11、人体検出部12、電気錠制御部13、記憶部14、施解錠機構15、報知部16、電源部17で構成される。
【0020】
情報読取部11は、例えばICカードや非接触ICチップ内蔵カード等の施解錠カード20に記憶された識別情報の読み取りを行う、例えば挿入式、非接触式等各種情報の読書機能を有するカードリーダで構成される。本例では、施解錠カード20として非接触ICチップ内蔵カードを採用しているので、非接触式のカードリーダ/ライターで情報読取部11が構成される。
【0021】
また、情報読取部11は、一定周期で所定範囲内に近接する施解錠カード20に対してポーリングを行っており、施解錠カード20が所定範囲内に近接した際に施解錠操作時に必要な施解錠情報の読み取りを行う。情報読取部11は、施解錠カード20に書き込まれた識別情報(施解錠情報、部屋情報、利用期間情報)を読み取り、電気錠制御部13に出力している。なお、施解錠カード20からの識別情報の読み取り方法としては、上記のようなポーリングによる読み取りの他、省電力化を図る目的として宿泊客に対し施解錠操作の意思を確認する施解錠時操作ボタンが操作されたときにのみ施解錠カード20の読み取りを行う構成とすることもできる。
【0022】
人体検知部12は、例えば人体から放射される赤外線を検知することにより人体の在否を検知する焦電型赤外線センサモジュールのような所定の検知対象範囲内に人体の在否が検知可能な装置で構成され、人体検知が可能な位置(天井やエスカチオン等)に設けられている。人体検知部12は、所定範囲内に進入した人体を検知し、この検知したことを示す人体検知信号を電気錠制御部13に出力している。なお、人体検知を行う検知範囲としては、ハンドルの回動操作により扉に近接する人体が検知可能な範囲をカバーする程度でよい。
【0023】
また、人体検知部12の他の構成例として、室内側レバーハンドル10bの把持部分の裏面側にハンドルの把持行為による静電容量の変化を検出することで人体の在否を検知する静電容量式センサモジュールを搭載することもできる。このような構成にした場合、室内側レバーハンドル10bが解錠方向に回動した際に、人体(利用者)の手により把持されたか否かを検知し、レバーハンドルの把持が確認されると、この検知結果を人体検知信号として電気錠制御部13に出力する構成としてもよい。また、上記両構成を併用することで、人体の認証精度をさらに向上させることができる。
【0024】
電気錠制御部13は、電気錠装置10を構成する各部の駆動制御を行っている。電気錠制御部13は、施解錠操作時に施解錠カード20から読み取った施解錠情報と記憶部14に記憶された認証用施解錠情報とを照合して施解錠情報の正当性を判別するとともに、部屋情報や利用期間情報の正当性も判別しており、全ての識別情報が正当であった場合のみ、現在の錠前や扉の状態に応じて施解錠機構15に駆動制御信号を出力している。
【0025】
また、電気錠制御部13は、室内側レバーハンドル10bの回動操作の検知に伴いハンドル操作検知手段10cから操作検知信号を入力したとき、人体検知部12からの人体検知信号を入力したか否かの判別を行う。そして、電気錠制御部13は、操作検知信号と人体検知信号の両信号の入力が確認されないとき、室内側レバーハンドル10bによる不正解錠であると判断し、報知部16に報知信号を出力する。さらに、電気錠制御部13は、不正解錠操作の履歴(例えば日時情報)を不正解錠履歴情報として記憶部14に記憶させる。なお、解錠操作が室内側レバーハンドル10bによる不正解錠であると判別した場合は、報知部16への報知出力の他に、例えば集中管理装置を配置するフロントや外部の警備会社等へ侵入者有りを示す報知出力を行う構成とすることもできる。
【0026】
記憶部14は、例えば磁気的、光学的記憶媒体若しくはROM、RAM等の半導体メモリで構成される。記憶部14は、電気錠装置10を構成している各機器の機器情報、情報読取部11で読み込んだ施解錠カード20の各種カード情報、読み取った施解錠情報が錠前を施解錠する正当な情報であるか否かを判別するための認証用施解錠情報、モニタ情報としての状態信号(扉の開閉状態信号や錠前の施解錠状態信号、施解錠操作履歴)等の施解錠制御に関する各種データを記憶している。また、記憶部14は、電気錠制御部13からの不正解錠履歴情報を記憶する。
【0027】
施解錠機構15は、例えばモータやソレノイド等の駆動装置と錠前で構成され、電気錠制御部13から入力される駆動制御信号により錠前を施錠または解錠するべく駆動し、扉枠の係止穴に対してデッドボルトを突出(施錠時)又は引き込む(解錠時)ことにより錠前が施解錠される。
【0028】
報知部16は、LED等の照明装置やスピーカやブザー等の各種音響機器により構成され、電気錠制御部からの報知信号に基づき例えばLEDによる点灯/点滅や、ブザーによる警報音出力やスピーカーによる合成音声の出力によって侵入者に対する威嚇のための報知を行う。
【0029】
電源部17は、商用電源(AC100V)を外部電源として電源の供給を受け、電気錠制御部13の制御により、各部に駆動電源を供給している。また、電源部17の構成として例えば本装置がスタンドアロンな構成で使用する場合、ボタン電池や乾電池(一次電池、二次電池を問わず)等の各種電池が着脱交換可能な電源ユニットで構成し、扉の所定箇所若しくは扉近傍に設けても良い。
【0030】
次に、上述した電気錠システム1における処理動作について図2を参照しながら説明する。ここでは、ホテルを利用する宿泊客が不在のときに侵入者が不正解錠したときの処理動作例について説明する。
【0031】
まず、電気錠制御部13は、室内側レバーハンドル10bからの操作検知信号を入力すると(ST1)、人体検知部12から人体検知信号を入力したか否かの判別を行う(ST2)。
このとき、人体検知部12からの人体検知信号を入力したときは(ST2−Yes)、室内側に人がいる状態でレバーハンドルが回動操作されているため正常解錠であると判別し(ST3)、施解錠機構15に駆動制御信号を出力して電気的に解錠させ(ST4)、処理を終了する。
【0032】
一方、人体検知部12からの人体検知信号を入力していないときは(ST2−No)、室内側に人が存在していないにも拘わらずレバーハンドルが回動操作されているため侵入者による不正解錠であると判別し(ST5)、報知部16に報知信号を出力して発報を行い(ST6)、処理を終了する。
【0033】
以上説明したように、上述した電気錠システム1では、室内側レバーハンドル10bが回動操作されたときに人体検知部12において人体を検知したか否かを判別する人体検知信号の入力の有無を判別する。そして、室内側レバーハンドル10bの回動操作時に人体検知部12から人体検知信号を入力しているときは室内側からの正常な解錠操作と判別して解錠処理を行い、人体検知部12からの人体検知信号を入力していないときは室外側からの不正解錠であると判別して報知部16から発報を行って侵入者を威嚇する。
【0034】
これにより、アンチパニック機能を搭載する電気錠であっても室外側からの不正行為による不正解錠を防止することができる。
【0035】
ところで、上述した形態では、施解錠キー20として非接触ICチップ内蔵カード等の各種情報の記憶/書き換えが可能な記憶領域を有するカード状記憶媒体を用いて例で説明したが、例えばリモコンキーや携帯電話のような予め設定した施解錠情報の記憶や送受信が可能な媒体であれば特に限定されない。これに伴い、例えば施解錠キー20としてリモコンキーを用いた場合は、情報読取部11の構成としてリモコンキーからの送信信号を受信する受信機を採用する等、施解錠キー20として使用する媒体に応じて施解錠キー20から各種情報の読み取りが可能な構成を有する情報読取部11に変更する。また、施解錠情報の認証方法は、施解錠キー20による施解錠操作に限定されず、予め設定された暗証番号を施解錠情報としてテンキーの入力操作によって施解錠操作する方法、予め登録した指紋や虹彩等の生体情報を施解錠情報として情報取得部11の所定操作によって施解錠操作する方法も可能である。
【0036】
また、施解錠履歴や不正解錠履歴を施解錠キー20に対して書き込みを行うようなシステム構成とした場合は、情報読取部11に読み取り機能のみならず書き込み機能を追加したリーダ/ライタの構成でもよい。
【0037】
さらに、本形態では、室内側レバーハンドル10bに設けられたハンドル操作検知手段10cからの操作検知信号を入力したときに人体検知部12からの人体検知信号を入力したか否かにより不正解錠であるか否かの判別を行う構成であるが、これに限定されることはなく、例えばラッチボルトの進退を検出する機構を錠内に設け、レバーハンドルの回動操作に伴うラッチボルトの進退を検出したときの進退検出信号の入力の有無に応じて不正解錠であるか否かの判別を行う構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0038】
1…電気錠システム
10…電気錠装置
11…情報読取部
12…人体検知部
13…電気錠制御部
14…記憶部
15…施解錠機構
16…報知部
17…電源部
20…施解錠カード(施解錠キー)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内側レバーハンドルと室外側レバーハンドルとを互いに独立回動できるように支承するアンチパニック機能を備え、施解錠操作時に取得した施解錠情報を読み取ってその正当性を判別し、正常に認証したときのみ錠前を電気的に施解錠制御する電気錠システムにおいて、
前記室内側レバーハンドルの回動操作を検知したときに操作検知信号を出力するハンドル操作検知手段と、
室内側からの前記室内側レバーハンドルへの近接したことを検知して人体検知信号を出力する人体検知部と、
前記ハンドル操作検知手段からの前記操作検知信号を入力したときに前記人体検知部からの前記人体検知信号を入力していないときは、前記室内側レバーハンドルが不正解錠された旨の報知出力を行う電気錠制御部と、
を備えたことを特徴とする電気錠システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−188828(P2012−188828A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51753(P2011−51753)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(390037028)美和ロック株式会社 (868)
【Fターム(参考)】