説明

電気錫めっき液および電気錫めっき方法

【課題】 本発明は、錯化剤を含有せず、電気錫めっきを行う場合、特にバレルめっき法を用いて電気錫めっきを行う場合にカップリングレートが極めて小さく、かつはんだぬれ性の良好なめっき液及びめっき方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明は、(A)第一錫イオン、(B)酸、(C)N,N−ジポリオキシアルキレン−N−アルキルアミン、アミンオキシドまたはこれらの混合物及び(D)固着防止剤を含有し、pH1以下のチップ部品用電気錫めっき液を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錫めっき液および電気錫めっき方法に関し、より詳しくは、セラミックコンデンサ等のチップ部品のめっき処理に有用な電気錫めっき液およびめっき方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チップ部品はその形状やめっき箇所の構造等に応じて、バレルめっき、フロースループレーターめっき等のめっき方法によって錫、銅、銀、金、ニッケル、パラジウムまたは、それらの合金等の金属めっきが施される。錫めっきの目的は、チップ部品の電極部分へのはんだ付け性を付与することにある。
【0003】
しかし錫めっき、特にバレルめっきでは、チップ部品同士の固着(以後凝集、くっつき、カップリングとも言うことがある)が生じるという問題を有していた。固着したチップは不良品となり、製品の歩留まりを悪化させる。全チップ数に占める固着したチップ部品の割合をカップリングレートと呼ぶが、著しい場合このカップリングレートは90%以上にもなる。
【0004】
従来の硫酸またはメタンスルホン酸をベースとしためっき浴を用いてチップ部品をバレルにてめっきを行うと、カップリングが生じることが知られている。特許文献1には、この問題を解決するために、第一錫塩としてのスルファミン酸第一錫と、クエン酸、グルコン酸、ピロリン酸等の錯化剤と、光沢剤を具備する錫めっき浴を用いてチップ型セラミックス電子部品の電極を形成する方法が記載されている。
【0005】
しかし、引用文献1のめっき液は錯化剤を含有するため、めっき液及び水洗水の排水処理が困難である。このため、環境保護の観点からも錯化剤を含有しない低pHの錫めっき浴が切望されていた。
【0006】
また、錫めっきはチップ部品等のはんだ付け性を付与することを目的とすることから、良好なはんだぬれ性を有する錫めっき浴であることが重要である。本発明者らは、以前この点を改善すべく、均一な外観を有する錫皮膜を形成することが出来、且つ、析出した錫皮膜が良好なはんだぬれ性有する電気錫めっき添加剤として特定のナフトール化合物を用いることが有効であることを見出し特定のナフトール化合物により、はんだ付け性を改善できることを見出している(特許文献2)。
【特許文献1】特開2003−82492号公報 特許請求の範囲
【特許文献2】特開2007−51358号公報 特許請求の範囲
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、錯化剤を含有せず、電気錫めっきを行う場合、特にバレルめっき法を用い電気錫めっきを行う場合にカップリングレートが極めて小さく、かつはんだぬれ性の良好なチップ部品用めっき液及びチップ部品のめっき方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を達成するため鋭意検討した結果、錯化剤を含有しない強酸性(pH1以下)錫めっき浴、特にバレル用錫めっき浴において、特定の化合物を使用することで錫めっき皮膜を平滑にし、かつ皮膜表面硬度を従来より高くし、被めっき基体同士の固着を低減できることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は一態様において、(A)第一錫イオン、(B)酸、(C)N,N−ジポリオキシアルキレン−N−アルキルアミン、アミンオキシドまたはこれらの混合物及び(D)固着防止剤を含有し、pH1以下のチップ部品用電気錫めっき液を提供する。
【0010】
また、本発明は一態様において、上記(A)〜(D)成分に加えて、(E)付き回り改善剤をさらに含有するチップ部品用電気錫めっき液を提供する。
【0011】
また、本発明は一態様において、上記(A)〜(D)成分に加えて、または(A)〜(E)成分に加えて、(F)1以上の下記一般式(1)で表されるアクリル酸またはアクリル酸誘導体、及び(G)酸化防止剤をさらに含有する、チップ部品用電気錫めっき液を提供する。
【0012】
【化1】

【0013】
上記式中Rは、Hまたは、炭素数1〜3のアルキル基である。
【0014】
また、本発明は一態様において、前記N,N−ジポリオキシアルキレン−N−アルキルアミンが下記一般式(2)で表わされる1以上の化合物であるチップ部品用電気錫めっき液を提供する。
【0015】
【化2】

【0016】
上記式中、Rは炭素数6〜28のアルキル基を示し、w、x、y及びzはそれぞれ0〜30の整数を示す。ただし、w、x、y及びzの合計は0ではない。
【0017】
また、本発明は一態様において、前記アミンオキシドが、下記一般式(3)で表される1以上の化合物であるチップ部品用電気錫めっき液を提供する。
【0018】
【化3】

【0019】
上記式中、Rはアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基であり、R’は水素、アルキル基又はシクロアルキル基である。
【0020】
また、本発明は一態様において、前記(D)固着防止剤が芳香族アルデヒドまたは、芳香族ケトンからなる群から選択される1以上の化合物であるチップ部品用電気錫めっき液を提供する。
【0021】
さらに本発明は一態様において、(A)第一錫イオン、(B)酸、(C)N,N−ジポリオキシアルキレン−N−アルキルアミン、アミンオキシドまたはこれらの混合物、及び(D)固着防止剤を含有し、pH1以下の電気錫めっき液を使用してチップ部品に電気錫めっきを施すことを特徴とする、チップ部品のめっき方法を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明のめっき液は、チップ部品等の複数の基体を電気錫めっきする場合、特にバレルめっき法を用いて電気錫めっきを行う場合に、基体同士の固着が極めて少なく、めっき不良品が少なくなるため製品の歩留まりを向上させることができる。すなわち、錫めっき皮膜を平滑にすることにより、基体同士が接触したとき、マットめっきのように、鍵状で物理的に基体同士が剥がれなくなり固着する現象を低減することができる。また、皮膜表面硬度を高くすることにより、マットめっきのように皮膜表面がやわらかいことに起因する基体同士が接触したときに錫めっき皮膜が変形して、錫めっき皮膜同士で固着することを低減することができる。また、本発明のめっき液は、錯化剤を含有しないため、従来のバレルめっき用めっき液等に比べ排水処理も容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本明細書を通じて使用される略語は、他に明示されない限り、次の意味を有する。
g=グラム;mg=ミリグラム;℃=摂氏度;min=分;m=メートル;cm=センチメートル;L=リットル;mL=ミリリットル;A=アンペア;dm=平方デシメートル。全ての数値範囲は境界値を含み、さらに任意の順序で組み合わせ可能である。本明細書を通じて用語「めっき液」および「めっき浴」は、同一の意味を持ち交換可能なものとして使用される。
【0024】
本発明の電気錫めっき液は、(A)第一錫イオン、(B)酸、(C)N,N−ジポリオキシアルキレン−N−アルキルアミンまたはアミンオキシド、及び(D)固着防止剤を含有するpH1以下のチップ部品用電気錫めっき液である。以下順に説明する。
【0025】
(A)第一錫イオン
本発明のめっき浴は、第一錫イオンを必須構成要件として含有する。第一錫イオンは、2価の錫イオンである。めっき浴中に第一錫イオンを供給することができる化合物であれば、任意の化合物を用いることができる。一般的には、めっき液に用いる無機酸または有機酸の錫塩であることが好ましい。例えば、無機酸の錫塩としては、硫酸や、塩酸の第一錫塩が挙げられ、また有機酸の錫塩としては、置換または非置換のアルカンスルホン酸またはアルカノールスルホン酸、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、2−ヒドロキシエタン−1−スルホン酸、2−ヒドロキシプロパン−1−スルホン酸または1−ヒドロキシプロパン−2−スルホン酸などの第一錫塩が挙げられる。特に好ましい第一錫イオンの供給源は、無機酸の塩であれば硫酸第一錫塩、有機酸の塩であればメタンスルホン酸第一錫塩である。これらのイオンを供給することができる化合物は、単独でまたは2種以上の混合物として使用することができる。
【0026】
第一錫イオンのめっき浴中の含有量は、錫イオンとして、例えば、1g/L以上150g/L以下であり、好ましくは5g/L以上50g/L以下、より好ましくは8g/L以上20g/L以下である。
【0027】
(B)酸
酸は、pHを1以下に調整し、かつめっき浴に導電性を提供し得るものであれば、任意の酸を用いることができる。酸としては有機酸及び無機酸のいずれも使用することができる。有機酸としては、例えば、置換または非置換のアルカンスルホン酸またはアルカノールスルホン酸が挙げられ、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、2−ヒドロキシエタン−1−スルホン酸、2−ヒドロキシプロパン−1−スルホン酸または1−ヒドロキシプロパン−2−スルホン酸が挙げられる。好ましくはメタンスルホン酸である。無機酸としては、例えば、硫酸や、塩酸を用いることができ、好ましくは硫酸である。これらのpHを1以下に調整し、かつめっき浴に導電性を提供し得る酸は、単独または、2種類以上の混合物として使用することができる。
【0028】
めっき浴液中の酸の含有量はめっき浴中に存在する2価の錫イオンと化学量論的に少なくとも当量以上であることが好ましい。例えば、めっき浴中の遊離酸の含有量として10g/L以上500g/L以下、好ましくは、30g/L以上300g/L以下、より好ましくは50g/L以上200g/L以下であることが好ましい。
【0029】
(C)N,N−ジポリオキシアルキレン−N−アルキルアミンまたはアミンオキシド
本発明のめっき浴は、N,N−ジポリオキシアルキレン−N−アルキルアミン、アミンオキシドまたはこれらの混合物を必須構成要件として含有する。本発明者らは種々のノニオン系界面活性剤について検討し、上記特定のノニオン系界面活性剤であるN,N−ジポリオキシアルキレン−N−アルキルアミンまたはアミンオキシドを用いた場合に、要求されるめっき膜厚でかつ均等にめっきすることができることを見出した。
【0030】
N,N−ジポリオキシアルキレン−N−アルキルアミンは、下記一般式(2)で表されるポリオキシプロピレンポリオキシエチレンアルキルアミンが好ましい。
【0031】
【化4】

【0032】
ここで、上記式中のRは炭素数6〜26の直鎖または分岐のアルキル基を示し、w、x、y及びzはそれぞれ0〜30の整数を示す。ただし、w、x、y及びzの合計は0ではない。好ましくは、Rは8〜18の直鎖のアルキル基であり、w、x、y及びzの合計は10〜20である。
【0033】
アミンオキシドは下記一般式(4)で表される1以上の化合物である。
【0034】
【化5】

【0035】
ここで、上記式中のR、R及びRはそれぞれ置換基を有していてもよいアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基である。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、フェニル基、トリル基、キシル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0036】
本発明のアミンオキシドのうち、特に一般式(3)で示される構造を有する1以上のアミンオキシドが好ましい。
【0037】
【化6】

【0038】
ここで、上記式中のRはアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基であり、R’は水素、アルキル基またはシクロアルキル基である。
【0039】
N,N−ジポリオキシアルキレン−N−アルキルアミンまたはアミンオキシドは、本発明のめっき浴中において、皮膜改善剤として作用し得る。すなわち、N,N−ジポリオキシアルキレン−N−アルキルアミンまたはアミンオキシドがめっき皮膜を平滑にすることにより、複数の被めっき基体同士が接触したとき、マットめっきのように、鍵状で物理的に被めっき基体同士が剥がれなくなる現象を低減することができるのである。
【0040】
N,N−ジポリオキシアルキレン−N−アルキルアミンまたはアミンオキシドは、めっき浴中において、例えば、0.01g/L以上100g/L以下、好ましくは0.1g/L以上50g/L以下、より好ましくは1g/L以上25g/L以下の濃度で使用することが適当である。
【0041】
(D)固着防止剤
本発明のめっき浴は、固着防止剤を必須構成要件として含有する。固着防止剤は、本発明のめっき浴中において、めっきするチップ部品同士が凝集(固着)するのを防ぐ働きをするものである。固着防止剤は、特にバレルめっきにおいて、チップ部品同士が凝集、すなわちチップ部品同士の固着を防止するので特に有用である。固着防止剤として、例えば芳香族アルデヒドまたは芳香族ケトンを使用することができる。好ましい固着防止剤としては、例えば、ベンズアルデヒドまたはベンジリデンアセトンが挙げられる。これらの化合物は特に皮膜表面硬度を高くする作用を有する。すなわち、皮膜表面硬度を高くすることにより、マットめっきのように皮膜表面がやわらかいことに起因するチップ同士が接触したときに錫めっき皮膜が変形して、錫めっき皮膜同士で固着することを低減することができるのである。
【0042】
上記好ましい固着防止剤は、上記(C)N,N−ジポリオキシアルキレン−N−アルキルアミンまたはアミンオキシドとの組み合わせにおいて特に有効に作用し得る。固着防止剤は、めっき浴中において、例えば、1mg/L以上50g/L以下、好ましくは5mg/L以上10g/L以下、より好ましくは10mg/L以上5g/L以下の濃度で使用することが好適である。
【0043】
(E)付き回り改善剤
本発明のめっき浴は、前記(A)〜(D)に加え、さらに任意成分である付き回り改善剤を含有することが好ましい。本発明における付き回り改善剤とは、特に低電流密度部分におけるめっきの付き回りを改善する化合物である。特にバレルめっきにおいては、被めっき物をバレルに入れ、めっき液に浸した状態で回転させながら電気めっきを行うため、電流密度のばらつきが生じ、被めっき物の電流密度範囲が高電流密度領域から低電流密度領域まで広範囲となり、低い電流密度領域では、めっきの付き回り性の低下という問題が生じ、めっき皮膜にバラつきが生じてしまう。この場合でも付き回り改善剤を添加することにより、低電流密度部分においても均一にめっきを行うことができる。
【0044】
付き回り改善剤としては、例えば2−ナフトール−7−スルホン酸及び下記構造式を有する化合物(I)が挙げられる。2−ナフトール−7−スルホン酸は、遊離酸としてでも塩の形式でも用いることができる。好適な2−ナフトール−7−スルホン酸の塩としては、例えば、カリウム、ナトリウム、アンモニウムまたは錫等の浴可溶性塩が挙げられ、好ましくは、カリウムまたはナトリウムの塩であり、より好ましくは、2−ナフトール−7−スルホン酸ナトリウムである。これらは、単独でまたは2種以上の混合物として使用することができる。特許文献2に記載されているように、ナフタレン環の特定位置に水酸基とスルホン酸基が結合する特定のナフトールスルホン酸、具体的には、2−ナフトール−7−スルホン酸またはそのアルカリ塩が、他のナフトールスルホン酸またはその塩と比較して顕著な効果を示す。他の位置異性体、例えば2−ナフトール―6―スルホン酸、1−ナフトール―4―スルホン酸、では殆ど効果を示さず、好ましくない。
【0045】
【化7】

【0046】
2−ナフトール−7−スルホン酸またはその塩は、そのめっき浴中の含有量として、例えば、0.01g/L以上20g/L以下、好ましくは0.1g/L以上10g/L以下、より好ましくは、0.2g/L以上5g/L以下である。
【0047】
一方、上記化合物(I)を用いる場合には、めっき液中の含有量として、例えば、0.1mg/L以上10g/L以下、好ましくは1mg/L以上1g/L以下、より好ましくは5mg/L以上100mg/L以下の濃度で使用することが好適である。これらの付き回り改善剤は、単独または混合して使用して良い。
【0048】
(F)アクリル酸またはアクリル酸誘導体
本発明のめっき浴は任意成分である下記一般式(1)で表されるアクリル酸またはアクリル酸誘導体の1以上を含有することが好ましい。特に、アクリル酸または、メタクリル酸が好ましい。
【0049】
【化8】

【0050】
式中、Rは水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を示す。メタクリル酸またはアクリル酸は、上記(D)固着防止剤を補助する補助固着防止剤として本願発明のめっき液に添加される。メタクリル酸またはアクリル酸は、本発明のめっき浴中において上記(D)固着防止剤と組み合わせて用いることにより、(D)固着防止剤の部品固着防止効果をさらに向上させ、特に皮膜表面硬度を高くする作用を有し、固着防止効果の持続性も向上させる。
【0051】
上記一般式(1)で表されるアクリル酸またはアクリル酸誘導体は、そのめっき液中の含有量として、例えば、0.1g/L以上100g/L以下、好ましくは0.1g/L以上50g/L以下、より好ましくは0.5g/L以上10g/L以下の濃度で使用することが好適である。
【0052】
(G)酸化防止剤
本発明のめっき液において、酸化防止剤を任意に使用することができる。酸化防止剤は、錫イオンの2価から4価への酸化を防止するために使用され、例えば、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、フロログルシン、ピロガロール、ハイドロキノンスルホン酸およびその塩等を使用することができる。
【0053】
酸化防止剤は、めっき浴中において、例えば、10mg/L以上100g/L以下、好ましくは100mg/L以上50g/L以下、より好ましくは0.5g/L以上5g/L以下の濃度で使用することが好適である。
【0054】
さらに本発明においては、必要に応じてめっき浴中に、公知の添加剤、例えば、光沢剤、平滑剤、電導剤、陽極溶解剤などを配合することができる。
【0055】
めっき浴を建浴する際の各成分の添加順序は、特に制限されないが、安全性の観点から、水を添加した後、酸を加え、十分に混ぜ合わせた後に、錫塩を添加し、十分に溶解した後に必要な薬品を順次添加する。
【0056】
本願発明のめっき液によりめっきされるチップ部品としては、例えば、抵抗器(レジスター)、コンディンサー(キャパシター)、インダクター(インダクタートランス)、可変抵抗器、可変コンディンサー等の受動部品や、水晶振動子、LCフィルター、セラミックフィルター、遅延線、SAWフィルター等の機能部品、スイッチ、コネクター、リレーヒューズ、光接続部品等の接続部品等の電子部品が挙げられる。
【0057】
めっき方法
本発明のめっき液を用いて電気めっきする方法としては、公知の方法、例えば、バレルめっき、スロースループレーターめっき等のめっき方法を採用し得る。めっき液の上記(A)〜(F)の各成分の濃度は、各成分に関する上述の記載に基づいて任意に選択され得る。
【0058】
本発明のめっき液を用いた電気めっき方法は、例えば、10〜50℃、好ましくは15℃〜30℃のめっき浴温度で行うことができる。
また、陰極電流密度は、例えば、0.01〜5A/dm、好ましくは0.05〜3A/dmの範囲で適宜選択される。
めっき処理の間、めっき浴は無攪拌でも良く、また例えばスターラー等による攪拌、ポンプによる液流動などの方法を選択することも可能である。
【実施例】
【0059】
実施例1
下記の組成で錫めっき液を建浴した。
(A)メタンスルホン酸第一錫(錫イオンとして):12g/L
(B)メタンスルホン酸(遊離酸として):50g/L
(C)アミンオキシド:2,2’−(オキシドイミノ)ビス[エタノール](2:1),N−[3−(C9−11−イソアルキルオキシ)プロピル]誘導体(Oxirane, methyl−, polymer with oxirane, ether with 2,2’−(oxidoimino)bis[ethanol](2:1), N−[3−(C9−11−isoalkyloxy)propyl]derives):10g/L
(D)ベンジリデンアセトン:0.4g/L
(E)メタクリル酸:2g/L
(F)2−ナフトール−7−スルホン酸ナトリウム:0.5g/L
(G)ハイドロキノンスルホン酸カリウム:2g/L
(H)蒸留水:残部
【0060】
建浴した錫めっき液1Lを用い下記条件で、ニッケルめっきをしたチップ抵抗体に対しバレル錫めっきを行い、各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0061】
バレルめっき
・めっき対象物:チップ抵抗体 バレル:山本ミニバレル(容量:140mL)
・回転速度:20rpm
・ニッケルめっき:2.4A−60分
・錫めっき:2A−90分
・チップR抵抗体(サイズ1608):4.7KΩ 15mL/バレル
・スチールボール:1mmΦ 30mL/バレル
【0062】
評価項目
(めっき厚さ)
バレルめっき後のチップの前面、背面、及び左右のめっき厚さを蛍光X線膜計を用いて測定し、その厚さ及び各箇所間でのめっき厚のバラツキを評価した。
(カップリングレート)
バレルめっき後のチップ部品を、チップ部品同士が固着したものと、固着していないものに分け、固着したチップの重さを分子、全チップの重さを分母としその割合(%)をカップリングレートとして算出した(固着したチップ/(固着したチップ+固着していないチップ)×100)。
【0063】
(はんだぬれ性試験)
実施例および比較例のめっき液をそれぞれ1L準備し、浴温20℃、2Aにて、90分間錫電気めっきし、チップ抵抗体上に5μmの錫めっき被膜を堆積した。
得られた各錫めっき被膜を105℃、100%、8時間の耐湿試験処理(PCT処理(105℃ 100%Rh 8Hr))を行い、耐湿試験後のめっき被膜のはんだぬれ性について、TARUTIN社製のMulti Solderability Tester SWET−2100を用いたソルダーペースト平衡法によりゼロクロスタイム(「Z.C.T」)を測定し評価を行った。測定条件は以下のとおりである。
【0064】
ゼロクロスタイム測定条件
・はんだペースト:Sn:Ag:Bi:Cu=96:2.5:1:0.5
・浴温:245℃
・浸漬深さ:0.25mm
・浸漬速度:2mm/秒
・浸漬時間:8秒
【0065】
ゼロクロスタイムが3.0秒以下を合格とし、測定を行った。ゼロクロスタイム3秒以下を分子とし、測定検体数(10個)を分母とした百分率をパスレートとした。
【0066】
実施例2〜11、及び比較例1〜7
実施例1と同様にして、表1及び表2に示す割合で錫めっき液を建浴し、実施例1と同様に各種試験を行った。結果を表1及び表2に併記した。なお、めっき厚さの評価に関する記号は以下の通りである。
前面、背面、及び左右でめっき厚さが均等であるもの:○
均等でないもの:△
めっきがされていないもの:×
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)第一錫イオン、(B)酸、(C)N,N−ジポリオキシアルキレン−N−アルキルアミン、アミンオキシドまたはこれらの混合物及び(D)固着防止剤を含有し、pH1以下のチップ部品用電気錫めっき液。
【請求項2】
さらに、(E)付き回り改善剤を含有する、請求項1記載のチップ部品用電気錫めっき液。
【請求項3】
さらに、(F)1以上の下記一般式(1)で表されるアクリル酸またはアクリル酸誘導体、及び(G)酸化防止剤を含有する、請求項1または2に記載のチップ部品用電気錫めっき液。
【化1】

(式中Rは、Hまたは、炭素数1〜3のアルキル基である。)
【請求項4】
前記N,N−ジポリオキシアルキレン−N−アルキルアミンが下記一般式(2)で表わされる1以上の化合物であることを特徴とする請求項1に記載のチップ部品用電気錫めっき液。
【化2】

(式中、Rは炭素数6〜28のアルキル基を示し、w、x、y及びzはそれぞれ0〜30の整数を示す。ただし、w、x、y及びzの合計は0ではない。)
【請求項5】
前記アミンオキシドが、下記一般式(3)で表される1以上の化合物であることを特徴とする、請求項1に記載のチップ部品用電気錫めっき液。
【化3】

(式中、Rはアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基であり、R’は水素、アルキル基又はシクロアルキル基である。)
【請求項6】
(D)固着防止剤が芳香族アルデヒドまたは、芳香族ケトンからなる群から選択される1以上の化合物であることを特徴とする、請求項1に記載のチップ部品用電気錫めっき液。
【請求項7】
(A)第一錫イオン、(B)酸、(C)N,N−ジポリオキシアルキレン−N−アルキルアミン、アミンオキシドまたはこれらの混合物、及び(D)固着防止剤を含有し、pH1以下の電気錫めっき液を使用してチップ部品に電気錫めっきを施すことを特徴とする、チップ部品のめっき方法。

【公開番号】特開2009−299123(P2009−299123A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−154461(P2008−154461)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(591016862)ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ,エル.エル.シー. (270)
【Fターム(参考)】