説明

電気防食方法

【課題】外部電源方式の電気防食に使用される電極体の設置、点検、交換などを、海上工事を伴わずにおこなうことが可能な電気防食方法を提供する。
【解決手段】埋戻し土12に埋設された鋼構造物としての沈埋トンネル1の電気防食方法である。
そして、沈埋トンネル1に隣接してシールドトンネル2を構築する工程と、シールドトンネル2の内部から埋戻し土12に向けて電極棒3を設置する工程と、沈埋トンネル1及び電極棒3と外部電源装置33とを接続する工程と、外部電源装置33から電流を供給する工程とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中又は地中に設置された鋼管、鋼製函体などの鋼構造物に防食処理を施すための電気防食方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
河川や海洋又はそれらに隣接して構築される港湾施設、取水施設、沈埋トンネルなどには、鋼矢板、鋼管、鋼製函体、防水鋼板が取り付けられた沈埋函などの鋼構造物が使用されており、従来、その防食を電気防食によっておこなう場合があることが知られている(特許文献1,2など参照)。
【0003】
この電気防食方法には、鉄よりイオン化傾向の高いアルミニウム合金などの流電陽極を使用する流電陽極方式と、直流電源装置と補助陽極及び鋼構造物とを接続して防食電流を供給する外部電源方式とがある。
【0004】
現在では、港湾鋼構造物の電気防食には、流電陽極方式を適用するのが一般的である。また、水底に埋め戻される沈埋函に対しても、一般に流電陽極方式が適用されている。
【特許文献1】特許第2601338号公報
【特許文献2】特許第3014066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、流電陽極方式では、年月の経過によって流電陽極が溶融してしまうと防食効果がなくなるため、引き続き鋼構造物を供用していくためには、別途、防食処理を施さなければならなくなる。
【0006】
例えば沈埋函の場合は、埋戻し土を浚渫して補助陽極を設置することによって外部電源方式の防食をおこなうのが一般的であるが、沈埋函の近辺を浚渫するに際しては、海上工事に伴い航行船舶への影響があったり、グラブバケットによって沈埋函を損傷させたり、上載荷重が除去されて不安定な状態にさせたりするおそれがある。
【0007】
また、浚渫後に補助陽極などの電極体を埋め戻した場合に、電極体の交換や修繕が必要になると、再度、浚渫工事をおこなわなければならず、維持・管理が難しいという課題が残る。
【0008】
そこで、本発明は、外部電源方式の電気防食に使用される電極体の設置、点検、交換などを、海上工事を伴わずにおこなうことが可能な電気防食方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の電気防食方法は、水中又は地中に設置された鋼構造物の電気防食方法であって、前記鋼構造物に隣接して配置される中空体の内部から外部に向けて電極体を設置する工程と、前記鋼構造物及び前記電極体と外部電源装置とを接続する工程と、前記外部電源装置から電流を供給する工程とを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、地中に設置された鋼構造物の電気防食方法であって、前記鋼構造物に隣接してトンネルを構築する工程と、前記トンネルの内部から地中に向けて電極体を設置する工程と、前記鋼構造物及び前記電極体と外部電源装置とを接続する工程と、前記外部電源装置から電流を供給する工程とを備えたことを特徴とする。
【0011】
ここで、前記電極体を設置する工程において、前記電極体は先端に削孔手段が設けられた電極棒であって、前記削孔手段によって前記中空体又は前記トンネルの外殻を突き破ることで前記電極棒が外部に押し出される構成とすることができる。
【0012】
また、前記鋼構造物が地中に設置されている場合に前記電極体を設置する工程において、前記電極体は先端に削孔手段が設けられるとともに削孔促進手段が設けられた電極棒であって、前記削孔手段と前記削孔促進手段によって地中を削孔することで前記電極棒が所定の長さまで押し出される構成とすることもできる。
【0013】
さらに、前記中空体又は前記トンネルの外殻に隣接して前記電極棒が挿入可能な2つの防水手段が設けられており、第1の防水手段と第2の防水手段に前記電極棒を挿入して密着させた状態で前記外殻を突き破る構成であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
このように構成された本発明の電気防食方法は、鋼構造物に隣接して配置される中空体の内部から外部に向けて電極体を設置する。
【0015】
このため、中空体という気中の作業環境において外部電源方式の電気防食に使用される電極体を容易に設置することができる。また、中空体を介して、点検作業、交換作業などを容易におこなうことが可能になる。
【0016】
また、地中に鋼構造物が設置されている場合に、その鋼構造物に隣接してトンネルを構築し、そのトンネルの内部から外部に向けて電極体を設置するのであれば、鋼構造物が安定して設置された状態のままで、電極体を容易に地中に設置することができる。
【0017】
さらに、電極棒の先端に削孔手段を設けることによって、別途穿孔などをおこなわなくても、外殻を突き破って中空体又はトンネルの内部から外部に向けて電極棒を押し出すことができる。
【0018】
また、電極棒に削孔手段と削孔促進手段を設けることによって、地中を削孔させながら所定の長さに至るまで電極棒を押し出すことができる。
【0019】
さらに、電極棒が挿入可能な2つの防水手段を外殻に隣接して設けておき、第1の防水手段と第2の防水手段に電極棒を挿入して密着させた状態で外殻を突き破るようにすることで、中空体又はトンネルの内部に外部から水が浸入することを確実に防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の最良の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、本実施の形態の電気防食方法を適用する鋼構造物としての沈埋トンネル1及びその周辺の構成を説明する図であって、図1(a)は平面図、図1(b)は縦断面図である。
【0022】
この沈埋トンネル1は、外周面が防水鋼板(図示省略)によって覆われた沈埋函11を複数、水面13下の水底に並べて、その周囲及び上方を埋戻し土12で埋め戻すことによって構築されたトンネルである。また、沈埋トンネル1の両端には、換気塔14,14が立設されており、これによって地上と沈埋トンネル1の内空とが連通している。
【0023】
この沈埋トンネル1には、建設時にアルミニウム合金などの流電陽極が取り付けられ、流電陽極方式によって電気防食が行なわれている。しかしながらこの流電陽極は、時間の経過とともに徐々に溶融するので、最終的には沈埋トンネル1の防食がおこなわれなくなる。このため、新たに外部電源方式の電極体としての電極棒3を沈埋トンネル1に隣接して設置し、電気防食をおこなうことになる。
【0024】
また、上述したように、沈埋トンネル1は埋戻し土12に埋もれているため、本実施の形態では、図1(a)に示すように、沈埋トンネル1の両側に平行して中空体としてのシールドトンネル2,2を構築する。
【0025】
このシールドトンネル2は、沈埋トンネル1の両端より外側に立坑21,21をそれぞれ設け、一方の立坑21からシールド掘削機(図示省略)を他方の立坑21に向けて発進させることによって構築される。
【0026】
図2は、このシールドトンネル2の断面図である。このシールドトンネル2は、作業員Mが内部で作業できる大きさに形成されるものであって、外殻としての坑壁22が外部の埋戻し土12との境界となっている。
【0027】
この断面視円形の坑壁22は、例えば鉄筋コンクリート製の円弧板(RCセグメント)を複数、組み合わせて形成されており、この坑壁22によって内部空間が保護されることになる。また、シールドトンネル2の底面には、平板状の作業床23が全長にわたって延設され、作業員Mが内部を移動したり、作業したりし易いようになっている。
【0028】
そして、このシールドトンネル2の内部から、電極棒3を沈埋トンネル1に向けて押し出す。この電極棒3は、先端に削孔手段としての先端ドリル部31が形成されており、電極棒3を回転させることによって埋戻し土12に対しても容易に押し込むことができる。
【0029】
また、この電極棒3の後端には、図2に示すように電線である分岐線321が接続されており、その分岐線321は電源ケーブル32に繋がっている。
【0030】
さらに、この電源ケーブル32は、図1(b)に示すように、シールドトンネル2の内部に配線されて、立坑21から地上に延設されて外部電源装置33に接続されている。
【0031】
この外部電源装置33は、防食電流となる電流を供給する装置であり、直流電源、整流器、大型電池などが使用できる。また、電源ケーブル32は、この外部電源装置33のプラス端子に接続する。
【0032】
一方、外部電源装置33のマイナス端子には、図1(a),(b)に示すように鋼材側ケーブル34の一端を接続する。そして、この鋼材側ケーブル34は、換気塔14の内部に配線され、例えば沈埋トンネル1の内部から防水鋼板(図示省略)に他端が接続される。
【0033】
このように外部電源装置33と電極棒3及び沈埋トンネル1の鋼材部分を接続することによって、外部電源装置33、電源ケーブル32、電極棒3、沈埋トンネル1、鋼材側ケーブル34という電気回路が形成され、電極棒3から沈埋トンネル1の鋼材部分に向けて防食電流が流れることになる。
【0034】
また、シールドトンネル2の頂部からは、図2に示すように、電位測定用の亜鉛照合電極としての照合電極棒352を押し込む。さらに、この照合電極棒352の先端にも先端ドリル部352が設けられており、その設置方法は電極棒3と同様になるため、以下、電極棒3によって説明をおこなう。
【0035】
図3は、電極棒3をシールドトンネル2の内部から外部の埋戻し土12に向けて押し出す工程を説明する図である。
【0036】
ここで、図2,3に示すように、シールドトンネル2の坑壁22に隣接して第1の防水手段としてのスライドゲート41と、第2の防水手段としてのプリペンダ42とが設けられている。
【0037】
また、坑壁22には、図3(a)に示すように、外殻としての貫入部221が設けられており、この貫入部221を突き破って電極棒3を設置することになる。このため、貫入部221は、遮蔽部材としての強度を有するとともに、先端ドリル部31によって切削させ易いように、合成樹脂材などによって成形しておく。
【0038】
また、スライドゲート41は、閉塞板41aをスライドさせることによって、開放、遮断の切り替えがおこなえるようになっている。このスライドゲート41は、ハンドル部41cの操作によって貫入部221の内部側を閉塞板41aがスライド移動し、開口部41bが貫入部221の投影位置にきたときに開放されることになる。
【0039】
また、プリペンダ42は、スライドゲート41の外枠に端面が接合される円筒状の筒体42bと、その筒体42bの内側面に取り付けられる膨縮自在の締付けゴム42aとによって主に構成される。
【0040】
まず、電極棒3をシールドトンネル2の内部から外部に向けて押し出すに際して、図3(a)に示すように、締付けゴム42aが収縮した状態のプリペンダ42の内空に、先端ドリル部31が貫入部221側になるように向けた電極棒3を挿し込む。この時点では、プリペンダ42の開口は、スライドゲート41の閉塞板41aによって遮断された状態となっている。
【0041】
続いて、図3(b)に示すように、スライドゲート41の開口部41bが貫入部221に投影される位置まで閉塞板41aをスライド移動させる。ここで、締付けゴム42aを膨張させて電極棒3の周面に密着させることになるが、その圧力は電極棒3の軸方向移動が可能な程度の大きさに抑えておく。
【0042】
そして、図3(c)に示すように、電極棒3を回転させながら貫入部221に押し込み、先端ドリル部31によって貫入部221を突き破らせる。
【0043】
また、図3(d)に示すように、貫入部221を通過した後も引き続き電極棒3を回転させて、埋戻し土12の中に先端ドリル部31を押し込んでいく。さらに、この電極棒3が挿し込まれた状態で、スライドゲート41の開口部41b及び締付けゴム42aを締め付けると、電極棒3に圧着されて二重の防水構造が完成する。
【0044】
なお、電極棒3を引き抜いて点検、交換などをおこなう場合は、シールドトンネル2の内部から上記挿し込みとは逆の手順によって電極棒3を引き抜き、再度、挿し込みをおこなえばよい。
【0045】
次に、本実施の形態の電気防食方法の作用について説明する。
【0046】
このように構成された本実施の形態の電気防食方法では、沈埋トンネル1に隣接して構築されるシールドトンネル2の内部から外部に向けて電極棒3を押し出す。
【0047】
このため、シールドトンネル2内という気中の作業環境において外部電源方式の電気防食に使用される電極棒3を容易に設置することができる。また、シールドトンネル2の内部であれば作業員Mが自由に行き来できるので、電極棒3、分岐線321及び電源ケーブル32などの点検作業、交換作業などを容易におこなうことができる。
【0048】
また、沈埋トンネル1のように地中に設置されている鋼構造物に対して、それに隣接してシールドトンネル2を構築するのであれば、沈埋トンネル1の上載荷重である埋戻し土12を除去しないため、安定した状態を維持することができる。
【0049】
さらに、水面13からバケットなどによって浚渫をおこなう場合に比べて、シールドトンネル2は正確な位置に設けることができるので、掘削にともなって沈埋トンネル1を損傷させることがない。
【0050】
そして、シールドトンネル2の内部から外部に向けて電極棒3を設置するのであれば、容易に電極棒3を所望する位置に設置することができる。
【0051】
さらに、電極棒3の先端に先端ドリル部31を設け、その先端ドリル部31によって貫入部221を突き破らせることで、別途穿孔などをおこなわなくても、シールドトンネル2の内部から外部に向けて容易に電極棒3を押し出すことができる。
【0052】
また、電極棒3の先端に先端ドリル部31が設けられていれば、その先端ドリル部31によって地中を削孔させながら所定の長さに至るまで容易に電極棒3を押し出すことができる。
【0053】
さらに、電極棒3が挿入可能な防水手段4を貫入部221に隣接して設けておき、防水手段4を構成するスライドゲート41とプリペンダ42とに電極棒3を挿入し、電極棒3との間に隙間が生じないように密着させた状態で貫入部221を突き破るようにすることで、シールドトンネル2の内部に外部から水が浸入することを確実に防ぐことができる。
【0054】
また、照合電極棒35を設置することによってシールドトンネル2周辺の電位を測定することができるので、その測定値を参照しながら適切な量の防食電流を供給することができる。
【実施例1】
【0055】
以下、この実施例1では、前記した実施の形態の実施例について、図4,5を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0056】
この実施例1では、前記実施の形態で説明した電極棒3と防水手段4の詳細な構成、及び削孔促進手段36の構成について説明する。
【0057】
ここで、図4は、電極棒3の構成を説明する図であって、図4(a)は外観を示した側面図、図4(b)は削孔促進手段36が設けられた電極棒3の内部構成を示した断面図である。
【0058】
この電極棒3は、先端が円錐形に成形された円筒状の鋼管3aと、その内部に配置される酸化物被覆電極3dと、その酸化物被覆電極3dの後端に接続される電線(分岐線321)とから主に構成される。
【0059】
この鋼管3aの先端には、螺旋形状の先端ドリル部31が形成されている。また、後端にはU字形の把持具3b,3bが取り付けられている。
【0060】
また、鋼管3aの内部には、図4(b)に示すように、鋼管3aの軸心に沿って酸化物被覆電極3dが配置されている。この酸化物被覆電極3dは、鋼管3aの内面に取り付けられたセンターライザ3e,3eによって両端が支持されている。
【0061】
さらに、鋼管3aと酸化物被覆電極3dとの間には、黒鉛などのバックフィルが通電材3cとして充填されている。また、鋼管3aの後端は、固定栓3fによって閉塞されている。
【0062】
そして、この電極棒3には、図4(b)に示すように、削孔促進手段36が設けられる。この削孔促進手段36は、鋼管3aの内部を貫通して先端に吐出口36eが形成される送泥管36dと、鋼管3aの後端に装着される延長管36bと、その延長管36bの後端に取り付けられるスイベル36aと、スイベル36aに接続される送泥ホース36cとによって主に構成される。
【0063】
この削孔促進手段36を使用する場合は、延長管36bの内部に収容可能な長さに形成された分岐線321の端部に防水キャップ321aし、鋼管3aの後端には延長管36b、スイベル36a及び送泥ホース36cを装着しておく。
【0064】
そして、電極棒3の先端ドリル部31が地中に貫入された時点で、送泥ホース36cによって延長管36bの内部に泥水36fを送り込むと、送泥管36d,36dに泥水36fが流れ込み、吐出口36e,36eから泥水36fが吐出されることになる。
【0065】
このように泥水36fを先端から吐出させることによって、円滑に削孔をおこなうことができる。さらに、スイベル36aによって電極棒3を回転させることで、地中の所定の位置まで容易に電極棒3を押し出すことができる。
【0066】
なお、電極棒3を所定の位置まで押し出した後は、鋼管3aの後端から延長管36b、スイベル36a及び送泥ホース36cを取り外し、防水キャップ321aを外した分岐線321と電源ケーブル32とを接続する。
【0067】
一方、図5は、防水手段4の構成及び使用方法の詳細を説明する図である。この図は、シールドトンネル2の内部側から見た防水手段4の正面図である。
【0068】
この防水手段4は、図2,3に示すように、坑壁22側に配置される第1の防水手段としてのスライドゲート41と、シールドトンネル2の内部側に配置される第2の防水手段としてのプリペンダ42とから構成されている。
【0069】
このスライドゲート41は、側縁に配置される取付けボルト41d,・・・によって坑壁22に固定される。また、スライドゲート41は、図5(a)の右側に延設されているハンドル部41cを操作することによってスライドが可能な矩形板状の閉塞板41aを備えている。さらに、この閉塞板41aには、円形の開口部41bが形成されている。
【0070】
また、この閉塞板41aの側縁には、ボルト孔41f,・・・が穿孔されており、板固定ボルト41e,・・・によって締結することで、所定の位置で閉塞板41aを固定することができる。
【0071】
さらに、このスライドゲート41のシールドトンネル2内部側には、円筒形状のプリペンダ42が接合されている。このプリペンダ42は、内側面に締付けゴム42aが配置されており、その締付けゴム42aの膨縮の調整は、図5(a)の左側に延設された締付け調整具42cを操作することによっておこなう。
【0072】
そして、図5(a)に示すようにハンドル部41cが引き出されている状態では、プリペンダ42の側方に開口部41bがはみ出し、プリペンダ42の内空は閉塞板41aによって遮断されることになる。
【0073】
また、図5(b)に示すようにハンドル部41cが押し込まれている状態では、プリペンダ42の内空と開口部41bとが一致し、プリペンダ42からスライドゲート41を貫通する孔が形成され、電極棒3の挿入が可能になる。
【0074】
さらに、締付けゴム42aを膨張させることで内空に挿入された電極棒3に密着させれば、プリペンダ42と電極棒3による防水構造が形成される。また、図示していないが、開口部41bの内周にゴムリングなどを取り付けて電極棒3に密着可能な構成とすることで、スライドゲート41と電極棒3による防水構造が形成される。
【0075】
このようにスライドゲート41とプリペンダ42を接合して二重防水構造にすることで、防水性能を向上させることができる。また、電極棒3の点検又は交換をおこなう際には、スライドゲート41とプリペンダ42とを交互に開放、遮断することで、シールドトンネル2の内部に浸水させることなく、電極棒3の点検又は交換を容易におこなうことができる。
【0076】
また、電極棒3の先端に先端ドリル部31を設けるとともに、削孔促進手段36を設けることによって、硬い地盤であっても削孔することができるようになる。
【0077】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態と略同様であるので説明を省略する。
【実施例2】
【0078】
以下、この実施例2では、前記した実施の形態とは別の実施の形態について、図6,7を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0079】
この実施例2では、沈埋トンネル1に隣接する中空体として構築されるシールドトンネル5の内部から、回転体6に取り付けられた電極体62を外部に向けて設置する。
【0080】
このシールドトンネル5は、図6(a)に示すように、円筒形状の外殻としての坑壁51によって覆工が形成されている。この坑壁51は、鉄筋コンクリート製の円弧板(RCセグメント)を複数、組み合わせて形成されており、底面には平板状の作業床52が設けられている。
【0081】
また、坑壁51の側部と頂部とには、矩形状の開口53,53が設けられており、その開口53,53に回転体6,6がそれぞれ取り付けられる。ここで、開口53の縁部には、図7に示すように、ゴムシートなどの止水材67が取り付けられている。
【0082】
この回転体6は、両端の軸部61,61を中心に回転する円柱状の栓体であって、この回転体6と開口53との隙間は止水材67によって塞がれているので、水や土砂などが外部から侵入することはない。
【0083】
また、この回転体6の側面には、凹部66が設けられており、その凹部66に電極体62が収容される。さらに、この電極体62には、図7に示すように電線である分岐線631が接続されており、その分岐線631は電源ケーブル63に繋がっている。
【0084】
一方、シールドトンネル5の頂部に配置された回転体6には、電位測定用の照合電極体64が収容されており、その照合電極体64には分岐線651及び電源ケーブル65が接続されている。
【0085】
このように回転自在の回転体6の内部に電極体62を収容するのであれば、回転体6を回転させるだけで、シールドトンネル5の内部から外部に向けて容易に電極体62を設置することができる。
【0086】
また、回転体6がいずれの向きになっていても、回転体6及び止水材67によって開口53が塞がれているので、外部から地下水や土砂が侵入してくることはない。
【0087】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は前記実施例1と略同様であるので説明を省略する。
【0088】
以上、図面を参照して、本発明の最良の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態又は実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0089】
例えば、前記実施の形態及び前記実施例では、中空体としてシールドトンネル2,5を構築する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、在来工法で掘削されたトンネル、推進トンネルなどによって中空体を形成してもよい。
【0090】
また、中空体として構築されるものはトンネルに限定されるものではなく、地下室や水中に横架される配管などであってもよい。さらに、中空体として新たにトンネルを構築するのではなく、予め設けられていたトンネルや地下空間を中空体として利用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の最良の実施の形態の電気防食方法を適用する沈埋トンネルの構成を説明する図であって、(a)は平面図、(b)は縦断面図である。
【図2】シールドトンネルの内部から外部に向けて設置された電極棒の構成を説明する断面図である。
【図3】電極棒を押し出す工程を示した説明図である。
【図4】実施例1の電極棒の構成を説明する図であって、(a)は電極棒の側面図、(b)は削孔促進手段が設けられた電極棒の断面図である。
【図5】実施例1の防水手段の構成を説明する図であって、(a)はスライドゲートが閉じている状態を示した正面図、(b)はスライドゲートが開いている状態を示した正面図である。
【図6】(a)は実施例2のシールドトンネルの構成を説明する斜視図、(b)は回転体の構成を説明する斜視図である。
【図7】実施例2のシールドトンネルの内部から外部に向けて設置される電極体及びそれを収容する回転体の構成を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0092】
1 沈埋トンネル(鋼構造物)
12 埋戻し土(地中)
11 沈埋函(鋼構造物)
2 シールドトンネル(中空体、トンネル)
22 坑壁(外殻)
221 貫入部(外殻)
3 電極棒(電極体)
31 先端ドリル部(削孔手段)
32 電源ケーブル
321 分岐線
33 外部電源装置
34 鋼材側ケーブル
36 削孔促進手段
4 防水手段
41 スライドゲート(第1の防水手段)
42 プリペンダ(第2の防水手段)
5 シールドトンネル(中空体、トンネル)
51 坑壁(外殻)
62 電極体
63 電源ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中又は地中に設置された鋼構造物の電気防食方法であって、
前記鋼構造物に隣接して配置される中空体の内部から外部に向けて電極体を設置する工程と、
前記鋼構造物及び前記電極体と外部電源装置とを接続する工程と、
前記外部電源装置から電流を供給する工程とを備えたことを特徴とする電気防食方法。
【請求項2】
地中に設置された鋼構造物の電気防食方法であって、
前記鋼構造物に隣接してトンネルを構築する工程と、
前記トンネルの内部から地中に向けて電極体を設置する工程と、
前記鋼構造物及び前記電極体と外部電源装置とを接続する工程と、
前記外部電源装置から電流を供給する工程とを備えたことを特徴とする電気防食方法。
【請求項3】
前記電極体を設置する工程において、前記電極体は先端に削孔手段が設けられた電極棒であって、前記削孔手段によって前記中空体又は前記トンネルの外殻を突き破ることで前記電極棒が外部に押し出されることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気防食方法。
【請求項4】
前記鋼構造物が地中に設置されている場合に前記電極体を設置する工程において、前記電極体は先端に削孔手段が設けられるとともに削孔促進手段が設けられた電極棒であって、前記削孔手段と前記削孔促進手段によって地中を削孔することで前記電極棒が所定の長さまで押し出されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電気防食方法。
【請求項5】
前記中空体又は前記トンネルの外殻に隣接して前記電極棒が挿入可能な2つの防水手段が設けられており、第1の防水手段と第2の防水手段に前記電極棒を挿入して密着させた状態で前記外殻を突き破ることを特徴とする請求項3に記載の電気防食方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−112006(P2010−112006A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−283120(P2008−283120)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】