説明

電気防食構造および電気防食構造の形成方法

【課題】柱部の干満範囲を均一に防食することができる電気防食構造を提供する。
【解決手段】鋼管または鉄筋コンクリートで上下方向に延びるように形成され、一端側が大気中に配置されるとともに水面Lの高さが周期的に変化する電解水W中に他端側が配置された柱部210の浸食を抑える電気防食構造1であって、水面の高さが周期的に変化する範囲である干満範囲212において柱部の外周面全体を覆うように配置された導電体20と、干満範囲の外周面と導電体との間に充填され、電解水を保持した状態で干満範囲の外周面および導電体の形状の変化に対応して変形することで、柱部と導電体との導通状態を維持する基体30と、鋼管または鉄筋コンクリート中の鉄筋に電気的に接続されるとともに電解水中に配置され、電解水を通して導電体との間で電流を発生させる電流発生部40とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鋼または鉄筋コンクリートで形成された構造体が海水などの電解水により腐食するのを防止する電気防食構造および電気防食構造の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、橋、道路、沖合プラットホーム、岸壁および消波施設などを支持するために、海水(電解水)中に鉄筋コンクリート製や鋼管製の杭(柱部)が設けられている。
海水中の杭は、杭の鋼材または鉄筋中の鉄がイオン化して海水中へ流れ出て腐食する。この腐食を防止するために、杭に犠牲陽極などの電流発生部を設け、腐食電流に打ち勝つだけの直流電流を生じさせることが行われている。
このような電気防食構造の1つとして、たとえば特許文献1に記載されたコンクリート構造物の電気防食構造が知られている。
【0003】
この電気防食構造では、コンクリート杭の表面に、導電性塗料などの導電性被覆物(導電体)、アクリル酸系吸水ポリマーを含有した不織布シートなどの電流吸上げ材、そして、繊維強化プラスチックなどの外装材を順に被覆している。電流吸上げ材は、その下部が海水中に浸漬されるように配置される。また、コンクリート杭における海水中の部分には、流電陽極が接続されている。
この電気防食構造によれば、導電性被覆物が電気防食の分布電極となるとともに、海水を吸い上げた電流吸上げ材がコンクリート杭を大気から遮蔽するため、コンクリート杭を広範囲にわたり均一に防食することができるという。
【0004】
また、一般的に、杭において、海面の干満により大気中での乾燥状態と海水中での浸水状態とを繰り返す部分(干満範囲)は、腐食が著しく促進される。このため、杭の防食は、この干満範囲を中心に行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−267485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された電気防食構造では、コンクリート杭の表面に直接導電性被覆物を被覆しているため、杭が乾燥した場合などには、杭の表面から導電性被覆物が剥がれて杭と導電性被覆物との間に空隙が生じることがある。このため、導電性被覆物がコンクリート杭と接触している部分に電流が集中して流れて導電性被覆物が偏耗し、コンクリート杭を安定して防食できないという問題がある。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、柱部の干満範囲を均一に防食することができる電気防食構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の電気防食構造は、鋼管または鉄筋コンクリートで上下方向に延びるように形成され、一端側が大気中に配置されるとともに水面の高さが周期的に変化する電解水中に他端側が配置された柱部の浸食を抑える電気防食構造であって、前記水面の高さが周期的に変化する範囲である干満範囲において前記柱部の外周面全体を覆うように配置された導電体と、前記干満範囲の外周面と前記導電体との間に充填され、前記電解水を保持した状態で前記干満範囲の外周面および前記導電体の形状の変化に対応して変形することで、前記柱部と前記導電体との導通状態を維持する基体と、前記鋼管または前記鉄筋コンクリート中の鉄筋に電気的に接続されるとともに前記電解水中に配置され、前記電解水を通して前記導電体との間で電流を発生させる電流発生部と、を備えることを特徴としている。
【0009】
また、本発明の電気防食構造の形成方法は、鉄鋼または鉄筋コンクリートで上下方向に延びるように形成され、一端側が大気中に配置されるとともに水面の高さが周期的に変化する電解水中に他端側が配置された柱部の浸食を抑える電気防食構造の形成方法であって、前記水面の高さが周期的に変化する範囲である干満範囲において前記柱部の外周面全体を覆うように導電体を形成し、前記干満範囲の外周面と前記導電体との間に基体を充填し、前記電解水を保持させた前記基体を前記干満範囲の外周面および前記導電体の形状に対応して変形させることで、前記柱部と前記導電体との導通状態を保持し、前記鉄鋼または前記鉄筋コンクリート中の鉄筋に電気的に接続させた電流発生部を前記電解水中に配置し、前記電解水を通して前記電流発生部と前記導電体との間で電流を発生させることを特徴としている。
【0010】
この発明によれば、乾燥や熱膨張などにより、柱部における干満範囲の外周面および導電体の形状が変形した場合であっても、変形した形状に対応して電解水を保持した基体が変形し、柱部と導電体との導通を基体の接触面全体にわたり維持する。
【0011】
また、上記の電気防食構造において、前記柱部の前記一端には、鉄筋コンクリートで形成された支持台が取り付けられていて、前記導電体は、前記柱部における前記干満範囲より上方の部分である大気範囲、および前記支持台の外周面を覆うように配置され、前記基体は、前記大気範囲および前記支持台の外周面と前記導電体との間に充填され、前記水面が最も高くなったときの前記水面の高さより下方に先端が配置され、基端が前記導電体のうち前記支持台の外周面を覆う部分に電気的に接続された補助導電体を備えることがより好ましい。
この場合、電流発生部により発生し電解水中を流れる電流は、補助導電体を通して支持台の外周面を覆う導電体に流れる。そして、導電体、基体および補助導電体により、電流が柱部の干満範囲、大気範囲および支持台の外周面にほぼ均一に流れる。
【0012】
また、上記の電気防食構造において、前記導電体の下方の端部は、前記基体の下方の端部よりも下方まで延びるように構成されていることがより好ましい。この場合、電流発生部から流れる電流を、電流発生部のより近く、かつより広い面積で受けることになる。
また、上記の電気防食構造において、前記導電体のうち前記基体より下方に延びる部分と前記柱部との間に、絶縁部材を備えることがより好ましい。
また、上記の電気防食構造において、前記導電体の下方の端部には、前記導電体よりイオン化傾向の小さな材料で形成された第二の導電体が設けられていることがより好ましい。
【0013】
また、上記の電気防食構造において、前記導電体は、板材の一方の面に配置された状態で前記板材と一体に形成されて導電板を構成し、前記導電板は、前記導電体を前記柱部側に配置した状態で、前記柱部に取り付けられていることがより好ましい。
また、上記の電気防食構造において、前記導電体における前記水面が最も高くなったときの前記水面の高さより下方には貫通孔が形成され、前記貫通孔を覆うように、前記電解水は通すが前記基体は通さない透過膜が設けられていることがより好ましい。
また、上記の電気防食構造において、前記導電体は、下方に向かうにしたがって前記柱部に近づくように構成されていることがより好ましい。この場合、基体に作用する重力により基体が干満範囲の外周面に押し付けられる。また、重力の影響により、電解水が少なくなり乾燥して軽くなった基体は上方に移動しやすく、電解水を十分に含んで重くなった基体は下方に移動しやすい。
【発明の効果】
【0014】
本発明において、請求項1に記載の電気防食構造および請求項9に記載の電気防食構造の形成方法によれば、電流発生部から電解水、導電体および電解水を保持した基体を通して柱部に電流を確実に流して、電流発生部と柱部における干満範囲との間に均一に電位差を生じさせることができる。これにより、柱部における干満範囲を均一に防食することができる。
請求項2に記載の電気防食構造によれば、電流の損失を抑えて、柱部における干満範囲、大気範囲、および支持台を効果的に電気防食することができる。
【0015】
請求項3に記載の電気防食構造によれば、導電体を通してより多くの電流を干満範囲に流すことができる。
請求項4に記載の電気防食構造によれば、導電体の下方の端部に入った電流が柱部に流れるのを抑えることで、導電体に流れる電流を増加させることができる。
請求項5に記載の電気防食構造によれば、導電体の起電力に第二の導電体の起電力が加えられることで、導電体に流れる電流を増加させることができる。
【0016】
請求項6に記載の電気防食構造によれば、導電板を扱うことで、柱部に導電体を取り付ける作業を容易に行うことができる。
請求項7に記載の電気防食構造によれば、透過膜を通して電解水を基体に取り込むことにより、基体が乾燥して柱部と導電体との導通が悪化するのを抑えることができる。
請求項8に記載の電気防食構造によれば、柱部の干満範囲と基体との密着性を高め、基体から柱部に電流が流れにくくなるのをより確実に抑えることができる。また、保水機能を失った基体の交換や電解水の補給を基体の上方側、すなわち大気中で容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態の電気防食構造が用いられた桟橋の正面断面図である。
【図2】図1中の要部拡大図である。
【図3】本発明の第1実施形態の変形例の電気防食構造における要部断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態の変形例の電気防食構造における要部断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態の変形例の電気防食構造における要部断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態の変形例の電気防食構造における正面断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態の電気防食構造が用いられた桟橋の正面断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態の変形例の電気防食構造における要部断面図である。
【図9】本発明の第2実施形態の変形例の電気防食構造における要部断面図である。
【図10】本発明の第2実施形態の変形例の電気防食構造における要部断面図である。
【図11】本発明の第2実施形態の変形例の電気防食構造における要部断面図である。
【図12】本発明の第3実施形態の電気防食構造が用いられた桟橋の正面断面図である。
【図13】本発明の第3実施形態の変形例の電気防食構造が用いられた桟橋の正面断面図である。
【図14】本発明の第4実施形態の電気防食構造が用いられた桟橋の正面断面図である。
【図15】本発明の第4実施形態の変形例の電気防食構造が用いられた桟橋の正面断面図である。
【図16】本発明の電気防食構造を保守する方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る電気防食構造の第1実施形態、およびその電気防食構造が用いられる桟橋を、図1から図6を参照しながら説明する。
図1に示すように、桟橋200は、鋼管により上下方向に延びるように形成された脚柱(柱部)210と、脚柱210の一端210aに取り付けられた支持台220とを備えている。脚柱210の他端210bは、海水(電解水)Wの下方に位置する地盤Gに設けられた不図示の基礎に固定されている。一般的に、海水Wは導電性を有している。
図1中のL1は、朔望平均満潮面、すなわち、最も高くなったときの水面である満潮水面L1を示し、L2は、朔望平均干潮面、すなわち、最も低くなったときの水面である干潮水面L2を示す。水面Lの高さは、満潮水面L1の高さと干潮水面L2の高さとの間で、約6時間を1サイクルとして周期的に変化している。
脚柱210は、満潮水面L1より上方に位置して常に大気中に配置された大気部(大気範囲)211と、満潮水面L1より下方であって干潮水面L2より上方に配置された干満部(干満範囲)212と、干潮水面L2より下方に位置し常に海水W中に配置された海中部213とに区分される。干満部212は、満潮時には水面Lより下方に位置して海水Wで湿った状態となり、干潮時には水面Lより上方に位置して乾いた状態となるため、腐食が進行しやすい。
【0019】
本実施形態では、大気部211から海中部213の上部までの外周面には、略円筒状にモルタル層215が設けられている。
モルタル層215は、端部が脚柱210に接続された鉄筋216と、鉄筋216を覆うように配置されたモルタル217とを有している。モルタル層215は、少なくとも下部が海水Wに浸かることで、ある程度湿った状態となっている。
図2に示すように、モルタル層215の外周面における下部には、後述する金属板20を取り付けるためのアングル部材218が固定されている。アングル部材218は絶縁性の材料で形成されている。
【0020】
支持台220は鉄筋コンクリートで形成されている。支持台220は、図1に示すように、脚柱210の一端210aおよびモルタル層215の天面に接続された柱状のベース部221と、隣り合う一対のベース部221(一方のベース部221は不図示)に架橋された架橋部222とで構成されている。
支持台220に内蔵された鉄筋223の端部は、脚柱210の一端210aに接続されている。
【0021】
続いて、本実施形態の電気防食構造1について説明する。
本電気防食構造1は、干満部212および大気部211の外周面全体を覆うように配置された金属板(導電体)20と、モルタル層215と金属板20との間に充填され不図示の海水Wを保持する基体30と、脚柱210の海中部213に接続された犠牲陽極(電流発生部)40と、基端50aが金属板20に電気的に接続された補助金属板(補助導電体)50とを備えている。
【0022】
金属板20は、この例では、耐食性の高いステンレス鋼やチタンなどの金属により形成されている。金属板20の下端は、干潮水面L2より下方に位置するように設定されている。
金属板20は、モルタル層215の外周面全体を、これらの外周面から一定距離離間した位置で覆うだけでなく、支持台220のベース部221の外周面および架橋部222の底面をこれらの面から一定距離離間した位置で覆っている。
図2に示すように、金属板20の内周面における下部には、絶縁性の材料で形成されたアングル部材21が固定されている。金属板20は、絶縁性のボルト22の先端に設けられたアンカー22aにより、モルタル層215に固定されたアングル部材218に取り付けられている。アングル部材218とアングル部材21との間には、吸水性および保水性があり基体30は通さない下部透過膜23が取り付けられ、基体30が下方から海水W中に漏れないようになっている。本実施形態では、下部透過膜23は干潮水面L2より下方に配置されている(図1参照)。
【0023】
基体30は、本実施形態では、吸水性を有する高分子材料で形成されている。基体30は、金属板20とモルタル層215との間だけでなく、金属板20とベース部221および架橋部222との間にも充填されている。
海水Wを保持した基体30は一定の流動性を有していて、モルタル層215の外周面および金属板20の形状に対応して変形することで、モルタル層215と金属板20との導通状態を維持するようになっている。基体30は、鉄筋223の端部に接続されている。
犠牲陽極40は、金属板20および鉄よりイオン化傾向の大きな、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛などの金属で形成され、海水W中に配置される。犠牲陽極40は、脚柱210の海中部213に取り付けられることで、海中部213と電気的に接続されている。
【0024】
補助金属板50は、たとえば、金属製の板材により形成されていて、その先端50bは、干潮水面L2より下方に配置されている。補助金属板50の基端50aは、金属板20のうち架橋部222の底面を覆う部分に電気的に接続されている。
補助金属板50は、塩化ビニルなどで形成された管材51に挿通されていて、管材51は金属板20に取り付けられている。
【0025】
次に、以上のように構成された本実施形態の電気防食構造1の形成方法について説明する。
なお、本形成方法を行う前に、モルタル層215に対してケレン処理および欠陥部の補修を行うことが好ましい。ケレン処理とは、モルタル217の表面の汚れなどをブラシなどで取り除くことである。また、欠陥部の補修とは、モルタル217がひび割れたり浮いたりしている部分を、略円筒状の外周面に沿って凹凸が無くなるように補修することである。
【0026】
まず、モルタル層215の外周面全体を覆うように、モルタル層215から一定距離離間した位置に金属板20を形成する(導電体形成工程)。このとき、金属板20の下端が、干潮水面L2より下方に位置するように形成する。金属板20の下部において、モルタル層215と金属板20との間に下部透過膜23を取り付ける。下部透過膜23は、干潮水面L2より下方に設置する。
次に、モルタル層215の外周面と金属板20との間であって下部透過膜23の上方に、基体30を充填する(基体充填工程)。この後で、時間の経過とともに下部透過膜23を通して海水Wが基体30にしみ込んでいくが、施工期間を短縮するために基体30に海水Wを直接注入してもよい。海水Wを保持した基体30は、モルタル層215および金属板20の形状に合わせて変形し、モルタル層215と金属板20との導通状態を維持する。
続いて、犠牲陽極40を脚柱210の海中部213に接続した状態で海水W中に配置し、海水Wを通して金属板20との間で防食電流を発生させる(陽極設置工程)。
【0027】
以上の工程により、桟橋200に電気防食構造1が形成される。
なお、本電気防食構造の形成方法では、陽極設置工程は、導電体形成工程や基体充填工程の前に行ってもよい。
【0028】
次に、以上のように構成された電気防食構造1の作用について説明する。
なお、以下の作用は、水面Lの高さが干潮水面L2以上で満潮水面L1以下の場合に生じるものである。
犠牲陽極40、脚柱210、鉄筋216および鉄筋223は、それぞれが金属で形成されているとともに互いに電気的に接続されているため、ほぼ同電位となる。犠牲陽極40は金属板20よりイオン化傾向の大きな金属で形成されているため、犠牲陽極40を形成する金属がイオン化して海水W中に流れ出し、犠牲陽極40から海水Wを通して金属板20に防食電流が流れる。
一方で、海水Wは、下部透過膜23を透過して、高分子材料で形成された基体30中を毛細管現象により上昇する。乾いた基体30は海水Wで湿った基体30より軽いため、比較的軽い乾いた基体30がモルタル層215と金属板20との間を上方に移動し、比較的重い海水Wで湿った基体30が下方に移動する。この循環作用により、海水Wは基体30全体に行き渡る。
【0029】
このとき、海水Wを保持した基体30は、モルタル層215と金属板20との導通状態を基体30の接触面全体にわたり維持するため、モルタル層215を介して脚柱210の干満部212における外周面に均一に防食電流が流れる。この防食電流は、金属板20により上方に伝えられ、脚柱210の大気部211や支持台220のベース部221の外周面にも流れる。この電流により、脚柱210の干満部212、鉄筋216、223中の鉄の分子がイオン化するのが防止され、電気防食される。
一方で、犠牲陽極40から海水Wを介して補助金属板50の先端50bから補助金属板50に流れ込んだ防食電流は、補助金属板50により電流の損失を抑えて支持台220に配置された金属板20に直接流される。
【0030】
以上説明したように、本実施形態の電気防食構造1および電気防食構造1の形成方法によれば、乾燥や熱膨張などにより、モルタル層215の外周面および金属板20の形状が変形した場合であっても、これらが変形した形状に対応して海水Wを保持した基体30が変形し、モルタル層215と金属板20との導通を基体30の接触面全体にわたり維持することができる。これにより、犠牲陽極40から海水W、金属板20、海水Wを保持した基体30およびモルタル層215を通して脚柱210の干満部212、大気部211および支持台220に電流を確実に流して均一に電位差を生じさせることができる。したがって、干満部212、大気部211および支持台220を均一に防食することができる。
【0031】
電気防食構造1は、干潮水面L2より下方に先端50bが配置され、基端50aが金属板20に電気的に接続された補助金属板50を備えている。このため、水面Lの高さによらず、犠牲陽極40により発生し海水W中を流れる電流を補助金属板50を通して支持台220内の鉄筋223に流すことで、電流の損失を抑えて支持台220により多くの電流を直接流し、支持台220を効果的に電気防食することができる。
海水Wを保持する基体30は、モルタル層215および脚柱210の干満部212の外周面が酸素に接触するのを防止するため、モルタル層215および干満部212が腐食するのを防止することができる。
【0032】
なお、本実施形態では、補助金属板50の先端50bは、干潮水面L2より下方に配置されているように構成した。しかし、これは必須の構成ではない。たとえば、支持台220に比較的充分な電流を供給できている場合などには、補助金属板50の先端50bは、干潮水面L2より上方であって満潮水面L1より下方に配置されていてもよい。
【0033】
本実施形態の電気防食構造1は、以下に説明するように、その構成を様々に変形させることができる。
たとえば、本実施形態では、図3に示すように、下部透過膜23が干潮水面L2より上方であって満潮水面L1より下方に配置されるように構成してもよい。
前述したように、水面Lの高さは、満潮水面L1の高さと干潮水面L2の高さとの間で約6時間毎に周期的に変化する。このため、下部透過膜23が一定時間海水W中にあれば、基体30が乾かない程度の量の海水Wを透過させることができるからである。
【0034】
また、図4に示すように、金属板20における満潮水面L1水面の高さより下方に貫通孔20aが形成され、さらに、貫通孔20aを覆うように側部透過膜(透過膜)56が設けられているように構成してもよい。側部透過膜56は、海水Wは通すが基体30は通さないように構成されている。
なお、本変形例では、金属板20に設けられた側部透過膜56で海水Wを透過させて基体30内に取り込むことができるため、基体30の下方に、下部透過膜23に代えて、絶縁材57を配置している。
側部透過膜56を備えることで、基体30が乾燥してモルタル層215と金属板20との導通が悪化するのを抑えることができる。
【0035】
図5に示すように、金属板20が、下方に向かうにしたがってモルタル層215に近づくように構成してもよい。
このように構成することで、基体30に作用する重力により基体30がモルタル層215の外周面に押し付けられる。このため、基体30とモルタル層215との密着性が高まり、基体30からモルタル層215に電流が流れにくくなるのをより確実に抑えることができる。
また、重力の影響により、海水Wが少なくなり乾燥して軽くなった基体30は上方に移動しやすく、海水Wを十分に含んで重くなった基体30は下方に移動しやすい。このため、保水機能を失った基体30の交換や海水Wの補給を基体30の上方側、すなわち大気中で容易に行うことができる。
【0036】
図6に示す桟橋201のように、モルタル層215の天面とベース部221の底面との間に隙間Vが形成された場合にも、本発明の電気防食構造2を用いることができる。
この場合、電気防食構造2は、本実施形態の電気防食構造1の金属板20に代えて、隙間Vより上方に配置された金属板61と、隙間Vより下方に配置された金属板62とを備えている。
隙間Vに露出する脚柱210の外表面には、防食塗料などで形成された防食層63が設けられている。
金属板61の下部における支持台220のベース部221と金属板62との間は、前述の絶縁材57などで封止されていることが好ましい。
電気防食構造2をこのように構成することで、既存の桟橋201に対しても、本発明の電気防食構造2を用いることができる。
【0037】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図7から図11を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図7に示すように、本実施形態の電気防食構造3は、前記第1実施形態の電気防食構造1の金属板20、基体30および下部透過膜23に代えて、金網(導電体)70およびモルタル層(基体)71を備えている。
【0038】
金網70は、モルタル層215の外周面全体を、この外周面から一定距離離間した位置で覆うだけでなく、支持台220のベース部221の外周面および架橋部222の底面をこれらの面から一定距離離間した位置で覆っている。金網70は、耐食性の高いステンレス鋼などの金属により形成されている。
モルタル層71は、モルタル層215およびベース部221の外周面全体と架橋部222の底面を覆うことで、自身の厚さ方向の中間部に金網70を埋設している。
【0039】
次に、以上のように構成された本実施形態の電気防食構造3の形成方法について説明する。
なお、本形成方法を行う前に、前述のケレン処理および欠陥部の補修を行うことが好ましい。さらに、モルタル217に後述するモルタルが付着しやすくなるように、モルタル217の表面に公知のプライマー液を噴霧しておくおことが好ましい。
まず、モルタル層215の外周面全体などから一定距離離間した位置に、金網70を配置する。金網70をモルタル層215などから離間した位置に配置するには、金網70に取り付けたアンカーピンの先端をモルタル層215の外周面に固定する方法などを用いることができる。
次に、金網70にモルタルが付着しやすくなるように、金網70に公知のプライマー液を噴霧する。
続いて、金網70にモルタルを吹き付けてモルタル層71を形成する。このとき、金網70がモルタル層71に埋設される程度にモルタルを厚く吹き付ける。
以上の工程により、桟橋200に電気防食構造3が形成される。
【0040】
以上のように構成された電気防食構造3は、海水Wを保持したモルタル層71がモルタル層215および金網70の形状の変化に対応して変形するため、モルタル層215と金網70との導通状態を維持することができる。
なお、本実施形態では、モルタル層71に代えて、コンクリートを吹き付けることでコンクリート層を形成してもよい。
【0041】
本実施形態の電気防食構造3は、以下に説明するように、その構成を様々に変形させることができる。
たとえば、本実施形態では、図8に示すように、金網70は、モルタルなどで形成された化粧板(板材)81の一方の面81aに配置された状態で化粧板81と一体に形成されて化粧型枠(導電板)80を構成するようにしてもよい。化粧型枠80は、工場などで所定の大きさとなるように製造され、電気防食構造3を施工する作業現場において、モルタル層215の外周面に取り付けられる。
化粧型枠80は、金網70をモルタル層215側に配置した状態で、モルタル層215に前述の絶縁性のボルト22などで取り付けられている。
本変形例では、化粧型枠80とモルタル層215との間に、不図示の海水Wを保持した基体30が充填されている。
また、本変形例では、金網70の下部に、基体30の下方の端部よりも先端が下方まで延びるように構成された延長金属板(導電体)82が接続されている。延長金属板82は、金網70とは異なる金属で形成されている。なお、延長金属板82を金網70よりイオン化傾向の小さな材料で形成してもよい。
【0042】
化粧型枠80を用いることで、モルタルを吹き付けてモルタル層71を形成する場合に比べて、施工時に作業現場がモルタルの飛沫などで汚れるのを抑えることができる。さらに、化粧型枠80を扱うことで、モルタル層215に金網70を取り付ける作業を容易に行うことができ、施工期間を短縮させることができる。
延長金属板82を備えることで、犠牲陽極40から海水Wを介して流れる防食電流を犠牲陽極40のより近くで、かつ、より広い面積で受けることになる。これにより、金網70を通してより多くの防食電流を脚柱210の干満部212、大気部211および支持台220に流すことができる。
【0043】
また、図9に示すように、前記変形例では、化粧板81における満潮水面L1の高さより下方に貫通孔81bが形成されるように構成してもよい。この場合、金網70の目(隙間)は、海水Wは通すが基体30は通さないように細かく形成されていることが好ましい。本変形例では、金網70の下端、化粧板81の下端、および下部透過膜23は、高さがほぼ同じになるように設定されている。
このように構成することで、基体30が乾燥してモルタル層215や金網70との導通が悪化するのを抑えることができる。
【0044】
さらに、この変形例では、図10に示すように、金網70の下端が化粧板81の下端および下部透過膜23より下方に位置するように構成してもよい。
このように構成することで、前述の延長金属板82と同様に、より多くの防食電流を脚柱210の干満部212、大気部211および支持台220に流すことができる。
【0045】
図11に示すように、延長金属板82に、延長金属板82よりイオン化傾向の小さな材料で形成された(貴な電位をもつ)第二の導電体86を設け、延長金属板82のモルタル層215側の面に、絶縁部材87を備えるように構成してもよい。
第二の導電体86を設けることで、延長金属板82の起電力に第二の導電体86の起電力が加えられることで、延長金属板82に流れる電流を増加させることができる。
また、絶縁部材87を設けることで、延長金属板82の下方の端部に入った電流がモルタル層215側に流れるのを抑えることで、金網70から脚柱210の干満部212などに流れる電流を増加させることができる。
【0046】
絶縁部材87は、脚柱210の外周面と延長金属板82との間に隙間無く配置されるように構成されることが好ましい。このように構成することで、何らかの障害物が第二の導電体86の外面に当たったときに、絶縁部材87が緩衝材となって第二の導電体86および延長金属板82が折れるのが防止される。
なお、絶縁部材87は、モルタル層71より下方におけるモルタル層215の外周面に取り付けてもよい。このように構成することで、犠牲陽極40から流れてくる防食電流がモルタル層215側に流れるのを抑えることができる。
【0047】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図12および図13を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図12に示すように、本実施形態の電気防食構造が用いられる桟橋202は、前記第1実施形態の桟橋200における鋼管製の脚柱210に代えて、鉄筋コンクリートで形成された脚柱230を備えている。
脚柱230は、コンクリート部材231と、コンクリート部材231中に埋設された鉄筋232とにより、略円柱状に形成されている。本実施形態では、脚柱230および支持台220は一体に形成され、鉄筋232は支持台220内まで延びている。
脚柱230は、前記第1実施形態と同様に、満潮水面L1および干潮水面L2の高さに応じて、大気部234、干満部235、および海中部236に区分される。
【0048】
桟橋202に用いられる電気防食構造4は、前記第1実施形態の電気防食構造1において、補助金属板50および管材51が備えられていない構成となっている。
本実施形態では、犠牲陽極40は鉄筋232に接続部材40aにより電気的に接続されている。
【0049】
次に、以上のように構成された電気防食構造4の作用について説明する。
全ての鉄筋232は、ほぼ同電位となるとともに、犠牲陽極40を形成する金属がイオン化して海水W中に流れ出し、犠牲陽極40から海水Wを通して金属板20に防食電流が流れる。
不図示の海水Wを保持した基体30は、脚柱230、支持台220および金属板20の形状の変化に対応して変形することで、脚柱230および支持台220と金属板20との導通状態を維持している。
そして、犠牲陽極40から流れる防食電流により、脚柱230の干満部235および大気部234、さらに支持台220が電気防食される。
このように構成された電気防食構造4は、脚柱230が鉄筋コンクリートで形成されている場合であっても、前記実施形態と同様の効果を奏することができる。
さらに、電気防食を行うことで、コンクリート部材231のかぶり厚さが小さい脚柱230を用いることができる。
【0050】
なお、桟橋202に対しては、図13に示す電気防食構造5のように、本実施形態の電気防食構造4において、金属板20および基体30に代えて、金網70、モルタル層71、補助金属板50および管材51を備えた構成としてもよい。
【0051】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について図14および図15を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図14に示すように、本実施形態の電気防食構造6が用いられる桟橋203は、前述の脚柱210と支持台220との間に、脚柱210およびベース部221より大径に形成された杭頭コンクリート240が設けられている。
杭頭コンクリート240は、鉄筋コンクリートで形成されている。杭頭コンクリート240に埋設された不図示の鉄筋の端部は、脚柱210および支持台220の鉄筋223に接続されている。
脚柱210における干満部212の外周面には、防食塗料などで形成された防食層245が設けられている。
【0052】
電気防食構造6は、前記第1実施形態の電気防食構造1において、金属板20および基体30を杭頭コンクリート240の外周面および天面、ベース部221の外周面、そして架橋部222の底面を覆うように配置した構成となっている。
なお、金属板20における下部透過膜23とは反対側となる上方の端部には、架橋部222と金属板20との間に気密を保つためのシーリング材90が設けられている。さらに、シーリング材90の基体30側には、バックアップ材91が設けられている。バックアップ材91は、目地に設けるシーリング材90の3面接着の回避、充填深さの調整、目地底の形成を目的として、シーリングを施す目地底に設ける。
【0053】
電気防食構造6をこのように構成することで、杭頭コンクリート240を均一に防食することができ、杭頭コンクリート240が設けられた桟橋203に対しても、本発明の電気防食構造6を好適に用いることができる。
【0054】
なお、桟橋203には、図15に示すような電気防食構造7を用いることができる。
この電気防食構造7は、本実施形態の電気防食構造6の金属板20および基体30に代えて、金網70およびモルタル層71を備えたものである。
電気防食構造7をこのように構成することによっても、本実施形態の電気防食構造6と同様の効果を奏することができる。
【0055】
以上、本発明の第1実施形態から第4実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更なども含まれる。さらに、各実施形態で示した構成のそれぞれを適宜組み合わせて利用できることは、言うまでもない。
たとえば、前記第1実施形態から第4実施形態では、基体は吸水性を有する高分子材料、またはモルタル層であるとした。しかし、基体としては、これら以外にも、たとえば、バックフィルと呼ばれる材料を用いることができる。このバックフィルは、カオリンと呼ばれる水分を保持する粘土系の材料と、グラファイトなどの炭素系の粉状または繊維状の導電性体とを混合させたものである。バックフィルは、海水Wを保持可能であるとともに、海水Wを保持した状態で変形可能となっている。
また、前記第1実施形態および第2実施形態では、脚柱210にモルタル層215は設けられなくてもよい。
【0056】
また、前記第2実施形態から第4実施形態において、モルタル層71を構成するモルタルは、一般的に、セメント、水、細骨材を混合させた無機質の材料である。金属板20で吸い上げた電流を均一に流すために、モルタルに、セメント、水、細骨材以外に、金属繊維や金属粉(カーボンブラック、グラファイト、コークス粉など)を混入させてもよい。モルタル層をこのように構成することで、電気防食構造に用いられる金網70を小型にしたり、金網70を配さなくしたりしても、モルタル層内に電流を流すことができる。
【0057】
前記第1実施形態から第4実施形態では、電気防食構造を桟橋の脚柱における干満部などに対して用いる場合で説明した。しかし、本発明の電気防食構造は、桟橋に限ることなく、漁港の岸壁に設置され鉄筋コンクリートで形成された壁状の構造体や、海水に設置され、道路や岸壁などを支持する鋼管または鉄筋コンクリートで形成された柱状構造物に対しても好適に用いることができる。
前記第1実施形態から第4実施形態では、電流発生部が犠牲陽極40であるとしたが、電流発生部として、直流電流を発生させるバッテリーなどを用いてもよい。
【0058】
なお、前記第1実施形態から第4実施形態における基体30を備えた電気防食構造は、以下のように保守することができる。
図16に示すように、不図示の海水Wを保持した基体30中に電極96を配置し、鋼管製の脚柱210、または脚柱230の鉄筋232と電極96との電位差を、電圧計97により測定する。
そして、この電位差の絶対値を継続的に監視し、絶対値が所定の基準値より小さくなったときに、モルタル層215と金属板20との間に基体30を補充したり、基体30を新しいものに取り替えたりする。
この電気防食構造の保守方法によれば、電気防食の性能を好適な状態に保つことができる。
【符号の説明】
【0059】
1、2、3、4、5、6、7 電気防食構造
20、61、62 金属板(導電体)
20a 貫通孔
30 基体
40 犠牲陽極(電流発生部)
50 補助金属板(補助導電体)
56 側部透過膜(透過膜)
70 金網(導電体)
80 化粧型枠(導電板)
81 化粧板(板材)
82 延長金属板(導電体)
71 モルタル層(基体)
210、230 脚柱(柱部)
211 大気部(大気範囲)
212、235 干満部(干満範囲)
220 支持台
L 水面
W 海水(電解水)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管または鉄筋コンクリートで上下方向に延びるように形成され、一端側が大気中に配置されるとともに水面の高さが周期的に変化する電解水中に他端側が配置された柱部の浸食を抑える電気防食構造であって、
前記水面の高さが周期的に変化する範囲である干満範囲において前記柱部の外周面全体を覆うように配置された導電体と、
前記干満範囲の外周面と前記導電体との間に充填され、前記電解水を保持した状態で前記干満範囲の外周面および前記導電体の形状の変化に対応して変形することで、前記柱部と前記導電体との導通状態を維持する基体と、
前記鋼管または前記鉄筋コンクリート中の鉄筋に電気的に接続されるとともに前記電解水中に配置され、前記電解水を通して前記導電体との間で電流を発生させる電流発生部と、
を備えることを特徴とする電気防食構造。
【請求項2】
前記柱部の前記一端には、鉄筋コンクリートで形成された支持台が取り付けられていて、
前記導電体は、前記柱部における前記干満範囲より上方の部分である大気範囲、および前記支持台の外周面を覆うように配置され、
前記基体は、前記大気範囲および前記支持台の外周面と前記導電体との間に充填され、
前記水面が最も高くなったときの前記水面の高さより下方に先端が配置され、基端が前記導電体のうち前記支持台の外周面を覆う部分に電気的に接続された補助導電体を備えることを特徴とする請求項1に記載の電気防食構造。
【請求項3】
前記導電体の下方の端部は、前記基体の下方の端部よりも下方まで延びるように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電気防食構造。
【請求項4】
前記導電体のうち前記基体より下方に延びる部分と前記柱部との間に、絶縁部材を備えることを特徴とする請求項3に記載の電気防食構造。
【請求項5】
前記導電体の下方の端部には、前記導電体よりイオン化傾向の小さな材料で形成された第二の導電体が設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の電気防食構造。
【請求項6】
前記導電体は、板材の一方の面に配置された状態で前記板材と一体に形成されて導電板を構成し、
前記導電板は、前記導電体を前記柱部側に配置した状態で、前記柱部に取り付けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の電気防食構造。
【請求項7】
前記導電体における前記水面が最も高くなったときの前記水面の高さより下方には貫通孔が形成され、
前記貫通孔を覆うように、前記電解水は通すが前記基体は通さない透過膜が設けられていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の電気防食構造。
【請求項8】
前記導電体は、下方に向かうにしたがって前記柱部に近づくように構成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の電気防食構造。
【請求項9】
鉄鋼または鉄筋コンクリートで上下方向に延びるように形成され、一端側が大気中に配置されるとともに水面の高さが周期的に変化する電解水中に他端側が配置された柱部の浸食を抑える電気防食構造の形成方法であって、
前記水面の高さが周期的に変化する範囲である干満範囲において前記柱部の外周面全体を覆うように導電体を形成し、
前記干満範囲の外周面と前記導電体との間に基体を充填し、
前記電解水を保持させた前記基体を前記干満範囲の外周面および前記導電体の形状に対応して変形させることで、前記柱部と前記導電体との導通状態を保持し、
前記鉄鋼または前記鉄筋コンクリート中の鉄筋に電気的に接続させた電流発生部を前記電解水中に配置し、前記電解水を通して前記電流発生部と前記導電体との間で電流を発生させることを特徴とする電気防食構造の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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