電気集塵装置の電極取替え方法および吊上げ型電極搬出入架台
【課題】電気集塵装置の電極板を取り換えるにあたって、作業時に風の影響を受け難く安全に作業を行うことができる電気集塵装置の電極取替え方法を提供する。
【解決手段】上記課題を解決するための電気集塵装置の電極取替え方法は、電気集塵装置のケーシング側面下部に開口部を設ける工程と、搬入する電極板を搬出入架台に水平配置する工程と、電極板を配置した搬出入架台を吊り上げて前記開口部に接続する工程と、前記開口部に接続された前記搬出入架台から、前記ケーシング内へ前記電極板をスライドさせる工程と、前記ケーシング内に搬入された前記電極板を吊設位置に吊り上げる工程と、を有することを特徴とする。
【解決手段】上記課題を解決するための電気集塵装置の電極取替え方法は、電気集塵装置のケーシング側面下部に開口部を設ける工程と、搬入する電極板を搬出入架台に水平配置する工程と、電極板を配置した搬出入架台を吊り上げて前記開口部に接続する工程と、前記開口部に接続された前記搬出入架台から、前記ケーシング内へ前記電極板をスライドさせる工程と、前記ケーシング内に搬入された前記電極板を吊設位置に吊り上げる工程と、を有することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気集塵装置の集塵極や放電極等の電極を交換するための方法、およびこの方法に用いる架台に係り、特に、電気集塵装置の更新時の電極の取り出しと搬入を行うときに、安全且つ能率的に作業を行うことのできる電気集塵装置の電極取替え方法、および架台に関する。
【背景技術】
【0002】
電気集塵装置のケーシング内には、集塵極と放電極が対向して所定の間隔で吊設され、大型の電気集塵装置の場合、電極の大きさは、横の長さが数m、縦の長さが十数mにもなる。そして、電極が電気集塵装置の長時間運転で、例えば腐食等により劣化した場合は、新しい電極に更新する必要がある。
【0003】
従来の電気集塵装置用電極の設置工法としては、例えば、特許文献1に記載されているように、電気集塵装置のケーシングの天井に開口部を設け、この開口部から集塵極等の電極板の出し入れを行うようにしていた。特許文献1においては、電極板の出し入れに際して、電極板を収容する箱体を用い、この箱体をクレーンで吊って搬入、搬出作業を行うようにしている。
【0004】
また、更新工法としては、例えば特許文献2に示されているように、ケーシングの側面上部に開口部を設け、この開口部から電極板を出し入れする工法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−145841号公報
【特許文献2】特開平7−96214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術に係る電気集塵装置の電極板の設置・更新工法は、電気集塵装置のケーシングの天井や側面上部にまで電極板を吊り上げてケーシング内に搬入する。大規模な電気集塵装置では、天井高さが20m以上にもなるため、このような電気集塵装置に電極板を搬入する際には、クレーンでの吊り上げ高を相当高くする必要がある。この場合、作業時における風の影響が大きく、安全に劣るという問題点があった。
【0007】
また、電気集塵装置のケーシングの側面に開口部を設ける場合には、少なからず電極板を誘導するための作業用の足場や架台を組む必要が生ずる。しかし、足場や架台を組むには、ケーシング周囲に配された配管類等を一時的に取り外す必要が生じ、大掛かりな作業となり、工期の短縮が難しくなってしまう。
【0008】
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、電気集塵装置の電極板を取り換えるにあたって、作業時に風の影響を受け難く安全に作業を行うことができ、しかも、作業を能率的に行うことで工期の短縮を図ることのできる電気集塵装置の電極取替え方法、およびこの方法を実施するための吊上げ型電極搬出入架台を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る電気集塵装置の電極取替え方法は、電気集塵装置のケーシング側面下部に開口部を設ける工程と、搬入する電極板を搬出入架台に水平配置する工程と、電極板を配置した搬出入架台を吊り上げて前記開口部に接続する工程と、前記開口部に接続された前記搬出入架台から、前記ケーシング内へ前記電極板をスライドさせる工程と、前記ケーシング内に搬入された前記電極板を吊設位置に吊り上げる工程と、を有することを特徴とする。
【0010】
また、上記のような特徴を有する電気集塵装置の電極取替え方法では、前記電極板を吊り上げる工程において、吊り上げた前記電極板を前記ケーシングにおける前記開口部形成壁面と反対側の壁面側へ片寄せして仮設し、全ての電極板の搬入、仮設が終了した後に、前記電極板を正規の吊設位置へと吊り替えるようにすると良い。
このような方法を採ることにより、電極板の搬入作業時に、長尺物である電極板の吊上げスペースをケーシング内に確保することができる。
【0011】
また、上記目的を達成するための本発明に係る電気集塵装置の電極取替え方法は、電気集塵装置のケーシング側面下部に開口部を設ける工程と、搬出する電極板を前記ケーシング下部に降ろす工程と、搬出入架台を吊り上げて前記開口部に接続する工程と、前記ケーシング下部に降ろされた前記電極板を前記開口部に接続された前記搬出入架台にスライドさせ、前記搬出入架台に水平配置する工程と、前記電極板を水平配置した前記搬出入架台を吊り上げて前記搬出入架台を地上に降ろす工程と、を有することを特徴とするものであっても良い。
【0012】
また、上記のような特徴を有する電気集塵装置の電極取替え方法では、前記電極板を前記ケーシング下部に降ろす工程の前に、正規の吊設位置に吊設された前記電極板を前記開口部を設けた壁面と反対側の壁面側へ片寄せして仮設する工程を実施するようにすると良い。
このような方法を採ることにより、電極板の搬出作業時に、長尺物である電極板をケーシング下部へ降ろす作業を行うためのスペースをケーシング内に確保することができる。
【0013】
さらに、上記のような特徴を有する電気集塵装置の電極取替え方法では、前記搬出入架台を前記開口部に接続する工程において、前記搬出入架台の接続部を前記ケーシングの内部に設け、前記搬出入架台の一部が前記ケーシング内に配置されるようにすると良い。
【0014】
このような方法を採ることにより、搬出入架台の接続作業をケーシング内で行うことが可能となる。よって、ケーシング外部に接続作業のための足場等を設ける必要が無い。
【0015】
また、上記目的を達成するための本発明に係る吊上げ型電極搬出入架台は、電気集塵装置に用いられる電極板を水平配置して吊り上げられる搬出入架台であって、前記電極板配置位置の下部に、滑走面を備えたことを特徴とする。
このような構成を有する電極搬出入架台によれば、電極板を水平配置した状態で吊上げることができる。
【0016】
さらに、上記特徴を有する吊上げ型電極搬出入架台では、前記滑走面をローラコンベアにより構成することが望ましい。このような特徴を有することによれば、電極板を載せたり降ろしたりする作業が容易となる。
【発明の効果】
【0017】
上記のような特徴を有する電気集塵装置の電極取替え方法によれば、電気集塵装置の電極板を取り換えるにあたって、作業時に風の影響を受け難く安全に作業を行うことができる。また、作業を能率的に行うことが可能となり、工期の短縮を図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態に係る電極搬出入作業を行っている状態の電気集塵装置の斜視図である。
【図2】実施形態に係る電極搬出入作業を行っている状態の電気集塵装置の側面構成を示す部分断面図である。
【図3】実施形態に係る電極搬出入作業を行っている状態の電気集塵装置の正面構成を示す部分断面図である。
【図4】実施形態に係る吊上げ型電極搬出入架台の構成を示す図であり、(A)は平面構成を示し、(B)は側面構成を示し、(C)は(A)を右側から見た場合の正面構成を示す図である。
【図5】ケーシングに開口部を設ける工程を説明するための図である。
【図6】吊上げ型電極搬出入架台に電極板を搭載する工程を説明するための図である。
【図7】吊上げ型電極搬出入架台を吊上げてケーシングに接続する工程を説明するための図である。
【図8】吊上げ型電極搬出入架台からケーシング内へ電極板をスライドさせる工程を説明するための図である。
【図9】ケーシング内に搬入した電極板を吊上げる工程を説明するための図である。
【図10】2段式の電極板を接続することを説明するための図である。
【図11】吊上げた電極板を仮設する工程を説明するための図である。
【図12】搬入する全ての電極板を片寄せして仮設することを説明するための図である。
【図13】Jボルトを用いて片寄せすることを説明するための図である。
【図14】Uボルトにより正規位置に吊設することを説明するための図である。
【図15】仮設した電極板をUボルトを用いて正規位置に吊設する工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の電気集塵装置の電極取替え方法、および吊上げ型電極搬出入架台に係る実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
本実施形態に係る電気集塵装置の電極取替え方法を適用する電気集塵装置は、図1〜図3に示すように、ケーシング10aとケーシング10a内に吊設された集塵極52(図5、図6参照)、および放電極54(図5、図6参照)を基本として構成される。ケーシング10aには、一側面に排ガス流入口12が設けられると共に、対向する側面に処理ガス排出口28が設けられている。また、下部にはホッパ14が設けられ、排ガスから除去された塵埃を集積可能な構成とされている。ケーシング10aの内部には、エレクションビーム18やホイスト20、電極吊ビーム22、及びローラコンベア24等が設けられている。
【0020】
なお、図1〜図3に示す電気集塵装置10は、2段式の集塵極、放電極を備える形態の例である。また、図1は、実施形態に係る電極取替え方法を実施する際の電気集塵装置の外観斜視図であり、図2は同部分断面側面図であり、図3は、同部分断面正面図である。
【0021】
エレクションビーム18は、ホイスト20を横行させるための梁であり、排ガスの流通方向と直交する方向に向けて張り渡されている。ホイスト20は、ケーシング10a内に搬入された集塵極52や放電極54等の電極板56(以下、集塵極又は放電極、およびその両方のいずれかについて説明する場合は、総称として、電極板と称することとする)を吊上げて電極吊ビーム22に吊設したり、電極吊ビーム22に吊設された電極板56を降ろしたりするための天井クレーンである。
【0022】
電極吊ビーム22は、上述した電極板56を吊設するための梁である。電極吊ビーム22は、エレクションビーム18の下部側に、エレクションビーム18と平行、すなわち排ガスの流通方向と直交する方向に向けて張り渡されている。このような構成とすることで、電極吊ビーム22に吊設される電極板56の板面は、排ガスの流通方向と平行となり、排ガスの処理効率が高められる。
【0023】
ローラコンベア24は、ケーシング10a内における電極板吊設領域の下部側であって、ホッパ14の上部(ホッパ基部)に設けられている。ローラコンベア24は、詳細を後述する開口部16を介して搬入、または搬出する電極板56を水平移動させるための滑走面を構成する。
【0024】
このような基本構成を有する電気集塵装置10では、放電極54に高電圧が印加され、集塵極52との間に電界が形成される。そして、放電極54の周囲の排ガスを電離してイオンを供給する。これにより、排ガス流入口から塵埃粒子を含む排ガスが導入されると、塵埃粒子をイオンで帯電させ、クーロン力で集塵極52に捕集することができる。そして、塵埃粒子が除去された排ガスは、処理ガスとして処理ガス排出口28から排出される。なお、集塵極52は、集塵極52を構成するフレーム(追打部位)を定期的にハンマリングされることで、捕集した塵埃を払い落とし、ホッパ14へと集積させることで、集塵機能を回復させることができる。
【0025】
このような基本構成を有する電気集塵装置10に対し、本実施形態に係る電極取替え方法を適用する際には、ケーシング10aの側面であって、排ガスの流通方向と直交する側壁、すなわち排ガス流入口や処理ガス排出口が設けられていない壁面15に、開口部16を形成する。開口部16は、ケーシング10aの側壁の下端部(側面下部)に設ける。これにより、開口部16の下端部とケーシング10aの下端部が一致し、ローラコンベア24設置面が開口部16に面することとなる。よって、搬出入する電極板56の取り扱いが容易となる。
【0026】
ここで、開口部16の形状については特に限定するものでは無いが、形状形成の容易さ、作業性の良さ等を考慮した場合には、長方形等の矩形が良い。また、開口部16の大きさについても特に限定するものでは無いが、少なくともその幅と高さは、水平配置された電極板56を挿通可能な幅、および高さを備えたものとする必要がある。この開口部16を介して電極板56の搬出入を行うためである。
【0027】
また、開口部16近傍であって、ケーシング10a内部には、詳細を後述する吊上げ型電極搬出入架台30を接続するためのヒンジ部(不図示)が設けられている。
【0028】
本実施形態では、ケーシング10aに対する電極板56の搬出入を、吊上げ型電極搬出入架台(以下、単に搬出入架台30と称す)を用いて行う。実施形態に係る搬出入架台30は図4に示すように、フレーム32と落下防止ガイド34、ローラコンベア38、および接続部40を有する。
【0029】
フレーム32は、略矩形の平面形状を有し、格子状の中梁32aを備えている。このような構成により、捻れなどの歪みに対する耐性を高めることができる。落下防止ガイド34は、フレーム32における長辺と、短辺の一辺に、コ字状を成すように配置される柵であり、水平配置された電極板56がフレーム32からスライド落下することを防止する役割を担う。なお、落下防止ガイド34の配置位置には、図1〜図3に示すように、落下防止ガイド34と共に手摺34aを設けるようにしても良い。
【0030】
ローラコンベア38は、フレーム32における電極板配置面に、長辺方向に沿って配置されている。このような構成とすることで、フレーム32上に水平配置された電極板56を長辺方向に沿ってスライドさせることが可能となる。ここで、落下防止ガイド34が設けられていない短辺には、図示しない杭などの滑り防止部材が設けられる。ローラコンベア38上に水平配置された電極板56の落下を防止するためである。長辺に沿って設けられた落下防止ガイド34には、複数の吊孔36が設けられている。吊孔36にワイヤ74を接続し、クレーン70等の巻上げ手段により搬出入架台30を吊上げることを可能とするためである。
【0031】
接続部40は、ピン接合可能なヒンジ部であり、ケーシング10aの開口部16(開口部16近傍のケーシング10a下部)に設けられたヒンジ部(不図示)とピン接合可能な構成とされている。このため、接続部40には、ピン孔42が設けられている。
【0032】
本発明に係る電気集塵装置の電極取替え方法は、上述したような構成の電気集塵装置10に対し、上述したような搬出入架台30を用いて行う。まず、電極板の搬入方法について、図5〜図15を用いて以下に説明する。
【0033】
まず、図5に示すように、ケーシング10aの側面下部に、電極板56搬出入のための開口部16を形成する。
次に、図6に示すように、地上に水平配置した搬出入架台30の載置面上に、搬入対象とする電極板56を水平配置する。この際、ローラコンベア38と電極板56との間には、敷板64(図1、図2参照)を配置し、電極板56の滑り易さと姿勢安定性の確保を図るようにすると良い。電極板56の配置後には、滑り防止部材(不図示)を配置し、電極板56がローラコンベア38の配置方向へ滑ることを防止する。ここで、電極板56は、対を成す放電極54と集塵極52とを重ね合わせ、番線58(図11、図12参照)等により括った状態のものをさす。
【0034】
次に、図7に示すように、搬出入架台30の吊孔36にワイヤ74を接続し、搬出入架台30を吊上げる。この際、搬出入架台30の吊上げにはクレーン70を用いるが、クレーン70のフックと搬出入架台30に接続されたワイヤ74との間には、天秤72を介在させることが望ましい。共掛けを行った場合に生ずるワイヤ74の負担を減らすことができると共に、搬出入架台30を水平状態で吊上げることが容易となるからである。
【0035】
搬出入架台30の吊上げ高さは、電気集塵装置10における開口部16の底辺高さ、すなわちホッパ14の基部の高さ程度で良い。この程度の高さであれば、作業時における風の影響が小さく、かつ昇降動作に要する時間も短いため、作業を迅速に行うことができる。
【0036】
クレーン70により吊上げた搬出入架台30をケーシング10aにおける開口部16に寄せ、接続部40の接続を行う。接続部40の接続は、ピン接合で良い。すなわち、ケーシング10a下部の開口部16近傍に設けられたヒンジ部のピン孔(不図示)と、搬出入架台30に設けられた接続部40のピン孔42を重ね合わせ、そこに接合ピン(不図示)を挿通させれば良い。
【0037】
その後、図8に示すように、搬出入架台30に設けた滑り防止部材を取り除き、開口部16を介して、搬出入架台30に載せられた電極板56をケーシング10a内に搬入する。ケーシング10a内に搬入した電極板56は、ローラコンベア24上を滑らせて移動させ、ケーシング10aの奥側、すなわち開口部16と反対側の側壁側へと搬送する。
【0038】
ケーシング10aの奥側にまで搬送した電極板56をホイスト20により引き上げる(図9参照)。電極板56の吊上げは、ワイヤ74等を電極板56のビームに設けたボルト孔(ビーム、ボルト孔共に不図示)に挿通させ、これをホイスト20のフックに引掛ければ良い。
【0039】
ここで、搬入した電極板56が上部電極板(2段式の電極板において上部に配置される電極板)である場合には、後に搬入される電極板56(下部電極板)と接続する。上部の電極板56と下部の電極板56との接続には、シャックル62等を用いるようにすれば良い。具体的には、上部の電極板56のフレームに設けられた接続孔(不図示)と、下部の電極板56のフレームに設けられた接続孔(不図示)とをシャックル62により連結すれば良い。なお、電極板56同士の接続は、ホイスト20による吊上げ前に行っても良い。
【0040】
次に、図11に示すように、吊り上げられた電極板56を電極吊ビーム22に移して吊設する。ここで、電極吊ビーム22に対する電極板56の吊下げは、一時的にケーシング10aの奥側に寄せて行うようにする。ケーシング10a内部に、長尺物である電極板56の吊上げ作業を行うための作業スペースを確保するためである(図12参照)。
【0041】
このように、正規の吊設位置と異なるように電極板56を片寄せして配置する場合には、図13に示すようなフック形状のJボルト50を用いるようにすると良い。電極板56を正規に吊設する場合には、図14に示すようなUボルト60が用いられるが、Jボルト50のフックの先端を向かい合わせるように配置することで、1つのUボルト60の取り付けスペースに、2つのJボルト50を配置することができるようになる。このように配置したJボルト50の1つ1つに電極板56を仮設することで、電極板56を片寄せ配置することができる。
【0042】
全ての電極板56の搬入と、Jボルト50に対する仮設が終了した後、図15に示すように、電極吊ビーム22に配置されたJボルト50をUボルト60に取替え、電極板56を正規位置へ吊設するための作業を行う。具体的には、Jボルト50に仮設された電極板56をホイスト20に吊替え、電極板56のボルト孔(ビームに設けられたボルト孔:不図示)にUボルト60を通して電極吊ビーム22の正規位置へ固定するという作業を繰り返す。その後、集塵極52と放電極54とを分離して、放電極54を正規位置へ吊設する。
【0043】
このような方法により電極板の搬入作業を行うことにより、現場での大掛かりな足場や架台設置等の作業が不要となる。また、大掛かりな足場や架台の設置が不要となることより、ケーシング10aの周囲に配された配管類26(図2参照)等を一時撤去等する頻度が下がり、工期の大幅な短縮を実現することができる。また、足場や架台を構成する資材をレンタルする費用も削減することができるため、低コスト化も実現することができる。さらに、電極板56を水平に配置した状態で運ぶことができるため、垂直吊りを行ったり、角度付けを行ったりしていた従来の方法に比べて、搬入までに要する時間(吊上げ時間)を短縮することができる。このため、工事の効率化を図ることができる。また、クレーン70による電極板56の吊上げ高さも、ケーシング10aの底部に突設されたホッパ14の基部レベルの高さで良いため、作業時における風の影響が少なく、安全性も高い。
【0044】
次に、電極板56の搬出作業について説明する。電極板56の搬出作業は、基本的には電極板56の搬入作業の逆の流れで行えば良い。すなわち、正規位置に吊設されている電極板56を片寄せ位置に仮設した後にローラコンベア24に降ろし、開口部16を介して搬出入架台30へ移送するという作業を行う。その後、搬出入架台30の接続を解いてクレーン70により吊上げて地上に降ろし、搬出入架台30に載せた電極板56を搬出入架台30から降ろすという作業を行えば良い。なお、各工程の詳細な作業に関しては、上述した電極板56の搬入作業についての説明を援用するものとする。なお当然に、電極板56の搬出作業に際しても、作業前にケーシング10aの側面下部に開口部16を形成する。
【0045】
上記実施形態では、搬出入架台30における電極板56を載置する面にローラコンベア38を配置して、これを滑走面としていた。しかしながら滑走面を構成する要素は、フレーム32を構成する部材よりも摩擦係数が低く、水平配置した電極板56を容易にスライドさせることのできるものであれば良い。すなわち、樹脂レールや、単なるコロなどであっても良い。
【符号の説明】
【0046】
10………電気集塵装置、10a………ケーシング、12………排ガス流入口、14………ホッパ、15………壁面、16………開口部、18………エレクションビーム、20………ホイスト、22………電極吊ビーム、24………ローラコンベア、26………配管類、30………吊上げ型電極搬出入架台(搬出入架台)、32………フレーム、32a………中梁、34………落下防止ガイド、34a………手摺、36………吊孔、38………ローラコンベア、40………接続部、52………集塵極、54………放電極、56………電極板。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気集塵装置の集塵極や放電極等の電極を交換するための方法、およびこの方法に用いる架台に係り、特に、電気集塵装置の更新時の電極の取り出しと搬入を行うときに、安全且つ能率的に作業を行うことのできる電気集塵装置の電極取替え方法、および架台に関する。
【背景技術】
【0002】
電気集塵装置のケーシング内には、集塵極と放電極が対向して所定の間隔で吊設され、大型の電気集塵装置の場合、電極の大きさは、横の長さが数m、縦の長さが十数mにもなる。そして、電極が電気集塵装置の長時間運転で、例えば腐食等により劣化した場合は、新しい電極に更新する必要がある。
【0003】
従来の電気集塵装置用電極の設置工法としては、例えば、特許文献1に記載されているように、電気集塵装置のケーシングの天井に開口部を設け、この開口部から集塵極等の電極板の出し入れを行うようにしていた。特許文献1においては、電極板の出し入れに際して、電極板を収容する箱体を用い、この箱体をクレーンで吊って搬入、搬出作業を行うようにしている。
【0004】
また、更新工法としては、例えば特許文献2に示されているように、ケーシングの側面上部に開口部を設け、この開口部から電極板を出し入れする工法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−145841号公報
【特許文献2】特開平7−96214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術に係る電気集塵装置の電極板の設置・更新工法は、電気集塵装置のケーシングの天井や側面上部にまで電極板を吊り上げてケーシング内に搬入する。大規模な電気集塵装置では、天井高さが20m以上にもなるため、このような電気集塵装置に電極板を搬入する際には、クレーンでの吊り上げ高を相当高くする必要がある。この場合、作業時における風の影響が大きく、安全に劣るという問題点があった。
【0007】
また、電気集塵装置のケーシングの側面に開口部を設ける場合には、少なからず電極板を誘導するための作業用の足場や架台を組む必要が生ずる。しかし、足場や架台を組むには、ケーシング周囲に配された配管類等を一時的に取り外す必要が生じ、大掛かりな作業となり、工期の短縮が難しくなってしまう。
【0008】
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、電気集塵装置の電極板を取り換えるにあたって、作業時に風の影響を受け難く安全に作業を行うことができ、しかも、作業を能率的に行うことで工期の短縮を図ることのできる電気集塵装置の電極取替え方法、およびこの方法を実施するための吊上げ型電極搬出入架台を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る電気集塵装置の電極取替え方法は、電気集塵装置のケーシング側面下部に開口部を設ける工程と、搬入する電極板を搬出入架台に水平配置する工程と、電極板を配置した搬出入架台を吊り上げて前記開口部に接続する工程と、前記開口部に接続された前記搬出入架台から、前記ケーシング内へ前記電極板をスライドさせる工程と、前記ケーシング内に搬入された前記電極板を吊設位置に吊り上げる工程と、を有することを特徴とする。
【0010】
また、上記のような特徴を有する電気集塵装置の電極取替え方法では、前記電極板を吊り上げる工程において、吊り上げた前記電極板を前記ケーシングにおける前記開口部形成壁面と反対側の壁面側へ片寄せして仮設し、全ての電極板の搬入、仮設が終了した後に、前記電極板を正規の吊設位置へと吊り替えるようにすると良い。
このような方法を採ることにより、電極板の搬入作業時に、長尺物である電極板の吊上げスペースをケーシング内に確保することができる。
【0011】
また、上記目的を達成するための本発明に係る電気集塵装置の電極取替え方法は、電気集塵装置のケーシング側面下部に開口部を設ける工程と、搬出する電極板を前記ケーシング下部に降ろす工程と、搬出入架台を吊り上げて前記開口部に接続する工程と、前記ケーシング下部に降ろされた前記電極板を前記開口部に接続された前記搬出入架台にスライドさせ、前記搬出入架台に水平配置する工程と、前記電極板を水平配置した前記搬出入架台を吊り上げて前記搬出入架台を地上に降ろす工程と、を有することを特徴とするものであっても良い。
【0012】
また、上記のような特徴を有する電気集塵装置の電極取替え方法では、前記電極板を前記ケーシング下部に降ろす工程の前に、正規の吊設位置に吊設された前記電極板を前記開口部を設けた壁面と反対側の壁面側へ片寄せして仮設する工程を実施するようにすると良い。
このような方法を採ることにより、電極板の搬出作業時に、長尺物である電極板をケーシング下部へ降ろす作業を行うためのスペースをケーシング内に確保することができる。
【0013】
さらに、上記のような特徴を有する電気集塵装置の電極取替え方法では、前記搬出入架台を前記開口部に接続する工程において、前記搬出入架台の接続部を前記ケーシングの内部に設け、前記搬出入架台の一部が前記ケーシング内に配置されるようにすると良い。
【0014】
このような方法を採ることにより、搬出入架台の接続作業をケーシング内で行うことが可能となる。よって、ケーシング外部に接続作業のための足場等を設ける必要が無い。
【0015】
また、上記目的を達成するための本発明に係る吊上げ型電極搬出入架台は、電気集塵装置に用いられる電極板を水平配置して吊り上げられる搬出入架台であって、前記電極板配置位置の下部に、滑走面を備えたことを特徴とする。
このような構成を有する電極搬出入架台によれば、電極板を水平配置した状態で吊上げることができる。
【0016】
さらに、上記特徴を有する吊上げ型電極搬出入架台では、前記滑走面をローラコンベアにより構成することが望ましい。このような特徴を有することによれば、電極板を載せたり降ろしたりする作業が容易となる。
【発明の効果】
【0017】
上記のような特徴を有する電気集塵装置の電極取替え方法によれば、電気集塵装置の電極板を取り換えるにあたって、作業時に風の影響を受け難く安全に作業を行うことができる。また、作業を能率的に行うことが可能となり、工期の短縮を図ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態に係る電極搬出入作業を行っている状態の電気集塵装置の斜視図である。
【図2】実施形態に係る電極搬出入作業を行っている状態の電気集塵装置の側面構成を示す部分断面図である。
【図3】実施形態に係る電極搬出入作業を行っている状態の電気集塵装置の正面構成を示す部分断面図である。
【図4】実施形態に係る吊上げ型電極搬出入架台の構成を示す図であり、(A)は平面構成を示し、(B)は側面構成を示し、(C)は(A)を右側から見た場合の正面構成を示す図である。
【図5】ケーシングに開口部を設ける工程を説明するための図である。
【図6】吊上げ型電極搬出入架台に電極板を搭載する工程を説明するための図である。
【図7】吊上げ型電極搬出入架台を吊上げてケーシングに接続する工程を説明するための図である。
【図8】吊上げ型電極搬出入架台からケーシング内へ電極板をスライドさせる工程を説明するための図である。
【図9】ケーシング内に搬入した電極板を吊上げる工程を説明するための図である。
【図10】2段式の電極板を接続することを説明するための図である。
【図11】吊上げた電極板を仮設する工程を説明するための図である。
【図12】搬入する全ての電極板を片寄せして仮設することを説明するための図である。
【図13】Jボルトを用いて片寄せすることを説明するための図である。
【図14】Uボルトにより正規位置に吊設することを説明するための図である。
【図15】仮設した電極板をUボルトを用いて正規位置に吊設する工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の電気集塵装置の電極取替え方法、および吊上げ型電極搬出入架台に係る実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
本実施形態に係る電気集塵装置の電極取替え方法を適用する電気集塵装置は、図1〜図3に示すように、ケーシング10aとケーシング10a内に吊設された集塵極52(図5、図6参照)、および放電極54(図5、図6参照)を基本として構成される。ケーシング10aには、一側面に排ガス流入口12が設けられると共に、対向する側面に処理ガス排出口28が設けられている。また、下部にはホッパ14が設けられ、排ガスから除去された塵埃を集積可能な構成とされている。ケーシング10aの内部には、エレクションビーム18やホイスト20、電極吊ビーム22、及びローラコンベア24等が設けられている。
【0020】
なお、図1〜図3に示す電気集塵装置10は、2段式の集塵極、放電極を備える形態の例である。また、図1は、実施形態に係る電極取替え方法を実施する際の電気集塵装置の外観斜視図であり、図2は同部分断面側面図であり、図3は、同部分断面正面図である。
【0021】
エレクションビーム18は、ホイスト20を横行させるための梁であり、排ガスの流通方向と直交する方向に向けて張り渡されている。ホイスト20は、ケーシング10a内に搬入された集塵極52や放電極54等の電極板56(以下、集塵極又は放電極、およびその両方のいずれかについて説明する場合は、総称として、電極板と称することとする)を吊上げて電極吊ビーム22に吊設したり、電極吊ビーム22に吊設された電極板56を降ろしたりするための天井クレーンである。
【0022】
電極吊ビーム22は、上述した電極板56を吊設するための梁である。電極吊ビーム22は、エレクションビーム18の下部側に、エレクションビーム18と平行、すなわち排ガスの流通方向と直交する方向に向けて張り渡されている。このような構成とすることで、電極吊ビーム22に吊設される電極板56の板面は、排ガスの流通方向と平行となり、排ガスの処理効率が高められる。
【0023】
ローラコンベア24は、ケーシング10a内における電極板吊設領域の下部側であって、ホッパ14の上部(ホッパ基部)に設けられている。ローラコンベア24は、詳細を後述する開口部16を介して搬入、または搬出する電極板56を水平移動させるための滑走面を構成する。
【0024】
このような基本構成を有する電気集塵装置10では、放電極54に高電圧が印加され、集塵極52との間に電界が形成される。そして、放電極54の周囲の排ガスを電離してイオンを供給する。これにより、排ガス流入口から塵埃粒子を含む排ガスが導入されると、塵埃粒子をイオンで帯電させ、クーロン力で集塵極52に捕集することができる。そして、塵埃粒子が除去された排ガスは、処理ガスとして処理ガス排出口28から排出される。なお、集塵極52は、集塵極52を構成するフレーム(追打部位)を定期的にハンマリングされることで、捕集した塵埃を払い落とし、ホッパ14へと集積させることで、集塵機能を回復させることができる。
【0025】
このような基本構成を有する電気集塵装置10に対し、本実施形態に係る電極取替え方法を適用する際には、ケーシング10aの側面であって、排ガスの流通方向と直交する側壁、すなわち排ガス流入口や処理ガス排出口が設けられていない壁面15に、開口部16を形成する。開口部16は、ケーシング10aの側壁の下端部(側面下部)に設ける。これにより、開口部16の下端部とケーシング10aの下端部が一致し、ローラコンベア24設置面が開口部16に面することとなる。よって、搬出入する電極板56の取り扱いが容易となる。
【0026】
ここで、開口部16の形状については特に限定するものでは無いが、形状形成の容易さ、作業性の良さ等を考慮した場合には、長方形等の矩形が良い。また、開口部16の大きさについても特に限定するものでは無いが、少なくともその幅と高さは、水平配置された電極板56を挿通可能な幅、および高さを備えたものとする必要がある。この開口部16を介して電極板56の搬出入を行うためである。
【0027】
また、開口部16近傍であって、ケーシング10a内部には、詳細を後述する吊上げ型電極搬出入架台30を接続するためのヒンジ部(不図示)が設けられている。
【0028】
本実施形態では、ケーシング10aに対する電極板56の搬出入を、吊上げ型電極搬出入架台(以下、単に搬出入架台30と称す)を用いて行う。実施形態に係る搬出入架台30は図4に示すように、フレーム32と落下防止ガイド34、ローラコンベア38、および接続部40を有する。
【0029】
フレーム32は、略矩形の平面形状を有し、格子状の中梁32aを備えている。このような構成により、捻れなどの歪みに対する耐性を高めることができる。落下防止ガイド34は、フレーム32における長辺と、短辺の一辺に、コ字状を成すように配置される柵であり、水平配置された電極板56がフレーム32からスライド落下することを防止する役割を担う。なお、落下防止ガイド34の配置位置には、図1〜図3に示すように、落下防止ガイド34と共に手摺34aを設けるようにしても良い。
【0030】
ローラコンベア38は、フレーム32における電極板配置面に、長辺方向に沿って配置されている。このような構成とすることで、フレーム32上に水平配置された電極板56を長辺方向に沿ってスライドさせることが可能となる。ここで、落下防止ガイド34が設けられていない短辺には、図示しない杭などの滑り防止部材が設けられる。ローラコンベア38上に水平配置された電極板56の落下を防止するためである。長辺に沿って設けられた落下防止ガイド34には、複数の吊孔36が設けられている。吊孔36にワイヤ74を接続し、クレーン70等の巻上げ手段により搬出入架台30を吊上げることを可能とするためである。
【0031】
接続部40は、ピン接合可能なヒンジ部であり、ケーシング10aの開口部16(開口部16近傍のケーシング10a下部)に設けられたヒンジ部(不図示)とピン接合可能な構成とされている。このため、接続部40には、ピン孔42が設けられている。
【0032】
本発明に係る電気集塵装置の電極取替え方法は、上述したような構成の電気集塵装置10に対し、上述したような搬出入架台30を用いて行う。まず、電極板の搬入方法について、図5〜図15を用いて以下に説明する。
【0033】
まず、図5に示すように、ケーシング10aの側面下部に、電極板56搬出入のための開口部16を形成する。
次に、図6に示すように、地上に水平配置した搬出入架台30の載置面上に、搬入対象とする電極板56を水平配置する。この際、ローラコンベア38と電極板56との間には、敷板64(図1、図2参照)を配置し、電極板56の滑り易さと姿勢安定性の確保を図るようにすると良い。電極板56の配置後には、滑り防止部材(不図示)を配置し、電極板56がローラコンベア38の配置方向へ滑ることを防止する。ここで、電極板56は、対を成す放電極54と集塵極52とを重ね合わせ、番線58(図11、図12参照)等により括った状態のものをさす。
【0034】
次に、図7に示すように、搬出入架台30の吊孔36にワイヤ74を接続し、搬出入架台30を吊上げる。この際、搬出入架台30の吊上げにはクレーン70を用いるが、クレーン70のフックと搬出入架台30に接続されたワイヤ74との間には、天秤72を介在させることが望ましい。共掛けを行った場合に生ずるワイヤ74の負担を減らすことができると共に、搬出入架台30を水平状態で吊上げることが容易となるからである。
【0035】
搬出入架台30の吊上げ高さは、電気集塵装置10における開口部16の底辺高さ、すなわちホッパ14の基部の高さ程度で良い。この程度の高さであれば、作業時における風の影響が小さく、かつ昇降動作に要する時間も短いため、作業を迅速に行うことができる。
【0036】
クレーン70により吊上げた搬出入架台30をケーシング10aにおける開口部16に寄せ、接続部40の接続を行う。接続部40の接続は、ピン接合で良い。すなわち、ケーシング10a下部の開口部16近傍に設けられたヒンジ部のピン孔(不図示)と、搬出入架台30に設けられた接続部40のピン孔42を重ね合わせ、そこに接合ピン(不図示)を挿通させれば良い。
【0037】
その後、図8に示すように、搬出入架台30に設けた滑り防止部材を取り除き、開口部16を介して、搬出入架台30に載せられた電極板56をケーシング10a内に搬入する。ケーシング10a内に搬入した電極板56は、ローラコンベア24上を滑らせて移動させ、ケーシング10aの奥側、すなわち開口部16と反対側の側壁側へと搬送する。
【0038】
ケーシング10aの奥側にまで搬送した電極板56をホイスト20により引き上げる(図9参照)。電極板56の吊上げは、ワイヤ74等を電極板56のビームに設けたボルト孔(ビーム、ボルト孔共に不図示)に挿通させ、これをホイスト20のフックに引掛ければ良い。
【0039】
ここで、搬入した電極板56が上部電極板(2段式の電極板において上部に配置される電極板)である場合には、後に搬入される電極板56(下部電極板)と接続する。上部の電極板56と下部の電極板56との接続には、シャックル62等を用いるようにすれば良い。具体的には、上部の電極板56のフレームに設けられた接続孔(不図示)と、下部の電極板56のフレームに設けられた接続孔(不図示)とをシャックル62により連結すれば良い。なお、電極板56同士の接続は、ホイスト20による吊上げ前に行っても良い。
【0040】
次に、図11に示すように、吊り上げられた電極板56を電極吊ビーム22に移して吊設する。ここで、電極吊ビーム22に対する電極板56の吊下げは、一時的にケーシング10aの奥側に寄せて行うようにする。ケーシング10a内部に、長尺物である電極板56の吊上げ作業を行うための作業スペースを確保するためである(図12参照)。
【0041】
このように、正規の吊設位置と異なるように電極板56を片寄せして配置する場合には、図13に示すようなフック形状のJボルト50を用いるようにすると良い。電極板56を正規に吊設する場合には、図14に示すようなUボルト60が用いられるが、Jボルト50のフックの先端を向かい合わせるように配置することで、1つのUボルト60の取り付けスペースに、2つのJボルト50を配置することができるようになる。このように配置したJボルト50の1つ1つに電極板56を仮設することで、電極板56を片寄せ配置することができる。
【0042】
全ての電極板56の搬入と、Jボルト50に対する仮設が終了した後、図15に示すように、電極吊ビーム22に配置されたJボルト50をUボルト60に取替え、電極板56を正規位置へ吊設するための作業を行う。具体的には、Jボルト50に仮設された電極板56をホイスト20に吊替え、電極板56のボルト孔(ビームに設けられたボルト孔:不図示)にUボルト60を通して電極吊ビーム22の正規位置へ固定するという作業を繰り返す。その後、集塵極52と放電極54とを分離して、放電極54を正規位置へ吊設する。
【0043】
このような方法により電極板の搬入作業を行うことにより、現場での大掛かりな足場や架台設置等の作業が不要となる。また、大掛かりな足場や架台の設置が不要となることより、ケーシング10aの周囲に配された配管類26(図2参照)等を一時撤去等する頻度が下がり、工期の大幅な短縮を実現することができる。また、足場や架台を構成する資材をレンタルする費用も削減することができるため、低コスト化も実現することができる。さらに、電極板56を水平に配置した状態で運ぶことができるため、垂直吊りを行ったり、角度付けを行ったりしていた従来の方法に比べて、搬入までに要する時間(吊上げ時間)を短縮することができる。このため、工事の効率化を図ることができる。また、クレーン70による電極板56の吊上げ高さも、ケーシング10aの底部に突設されたホッパ14の基部レベルの高さで良いため、作業時における風の影響が少なく、安全性も高い。
【0044】
次に、電極板56の搬出作業について説明する。電極板56の搬出作業は、基本的には電極板56の搬入作業の逆の流れで行えば良い。すなわち、正規位置に吊設されている電極板56を片寄せ位置に仮設した後にローラコンベア24に降ろし、開口部16を介して搬出入架台30へ移送するという作業を行う。その後、搬出入架台30の接続を解いてクレーン70により吊上げて地上に降ろし、搬出入架台30に載せた電極板56を搬出入架台30から降ろすという作業を行えば良い。なお、各工程の詳細な作業に関しては、上述した電極板56の搬入作業についての説明を援用するものとする。なお当然に、電極板56の搬出作業に際しても、作業前にケーシング10aの側面下部に開口部16を形成する。
【0045】
上記実施形態では、搬出入架台30における電極板56を載置する面にローラコンベア38を配置して、これを滑走面としていた。しかしながら滑走面を構成する要素は、フレーム32を構成する部材よりも摩擦係数が低く、水平配置した電極板56を容易にスライドさせることのできるものであれば良い。すなわち、樹脂レールや、単なるコロなどであっても良い。
【符号の説明】
【0046】
10………電気集塵装置、10a………ケーシング、12………排ガス流入口、14………ホッパ、15………壁面、16………開口部、18………エレクションビーム、20………ホイスト、22………電極吊ビーム、24………ローラコンベア、26………配管類、30………吊上げ型電極搬出入架台(搬出入架台)、32………フレーム、32a………中梁、34………落下防止ガイド、34a………手摺、36………吊孔、38………ローラコンベア、40………接続部、52………集塵極、54………放電極、56………電極板。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気集塵装置のケーシング側面下部に開口部を設ける工程と、
搬入する電極板を搬出入架台に水平配置する工程と、
電極板を配置した搬出入架台を吊り上げて前記開口部に接続する工程と、
前記開口部に接続された前記搬出入架台から、前記ケーシング内へ前記電極板をスライドさせる工程と、
前記ケーシング内に搬入された前記電極板を吊設位置に吊り上げる工程と、を有することを特徴とする電気集塵装置の電極取替え方法。
【請求項2】
前記電極板を吊り上げる工程において、
吊り上げた前記電極板を前記ケーシングにおける前記開口部形成壁面と反対側の壁面側へ片寄せして仮設し、
全ての電極板の搬入、仮設が終了した後に、前記電極板を正規の吊設位置へと吊り替えることを特徴とする請求項1に記載の電気集塵装置の電極取替え方法。
【請求項3】
電気集塵装置のケーシング側面下部に開口部を設ける工程と、
搬出する電極板を前記ケーシング下部に降ろす工程と、
搬出入架台を吊り上げて前記開口部に接続する工程と、
前記ケーシング下部に降ろされた前記電極板を前記開口部に接続された前記搬出入架台にスライドさせ、前記搬出入架台に水平配置する工程と、
前記電極板を水平配置した前記搬出入架台を吊り上げて前記搬出入架台を地上に降ろす工程と、を有することを特徴とする電気集塵装置の電極取替え方法。
【請求項4】
前記電極板を前記ケーシング下部に降ろす工程の前に、
正規の吊設位置に吊設された前記電極板を前記開口部を設けた壁面と反対側の壁面側へ片寄せして仮設する工程を実施することを特徴とする請求項3に記載の電気集塵装置の電極取替え方法。
【請求項5】
前記搬出入架台を前記開口部に接続する工程において、前記搬出入架台の接続部を前記ケーシングの内部に設け、前記搬出入架台の一部が前記ケーシング内に配置されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電気集塵装置の電極切替え方法。
【請求項6】
電気集塵装置に用いられる電極板を水平配置して吊り上げられる搬出入架台であって、
前記電極板配置位置の下部に、滑走面を備えたことを特徴とする吊上げ型電極搬出入架台。
【請求項7】
前記滑走面をローラコンベアにより構成したことを特徴とする請求項6に記載の吊上げ型電極搬出入架台。
【請求項1】
電気集塵装置のケーシング側面下部に開口部を設ける工程と、
搬入する電極板を搬出入架台に水平配置する工程と、
電極板を配置した搬出入架台を吊り上げて前記開口部に接続する工程と、
前記開口部に接続された前記搬出入架台から、前記ケーシング内へ前記電極板をスライドさせる工程と、
前記ケーシング内に搬入された前記電極板を吊設位置に吊り上げる工程と、を有することを特徴とする電気集塵装置の電極取替え方法。
【請求項2】
前記電極板を吊り上げる工程において、
吊り上げた前記電極板を前記ケーシングにおける前記開口部形成壁面と反対側の壁面側へ片寄せして仮設し、
全ての電極板の搬入、仮設が終了した後に、前記電極板を正規の吊設位置へと吊り替えることを特徴とする請求項1に記載の電気集塵装置の電極取替え方法。
【請求項3】
電気集塵装置のケーシング側面下部に開口部を設ける工程と、
搬出する電極板を前記ケーシング下部に降ろす工程と、
搬出入架台を吊り上げて前記開口部に接続する工程と、
前記ケーシング下部に降ろされた前記電極板を前記開口部に接続された前記搬出入架台にスライドさせ、前記搬出入架台に水平配置する工程と、
前記電極板を水平配置した前記搬出入架台を吊り上げて前記搬出入架台を地上に降ろす工程と、を有することを特徴とする電気集塵装置の電極取替え方法。
【請求項4】
前記電極板を前記ケーシング下部に降ろす工程の前に、
正規の吊設位置に吊設された前記電極板を前記開口部を設けた壁面と反対側の壁面側へ片寄せして仮設する工程を実施することを特徴とする請求項3に記載の電気集塵装置の電極取替え方法。
【請求項5】
前記搬出入架台を前記開口部に接続する工程において、前記搬出入架台の接続部を前記ケーシングの内部に設け、前記搬出入架台の一部が前記ケーシング内に配置されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電気集塵装置の電極切替え方法。
【請求項6】
電気集塵装置に用いられる電極板を水平配置して吊り上げられる搬出入架台であって、
前記電極板配置位置の下部に、滑走面を備えたことを特徴とする吊上げ型電極搬出入架台。
【請求項7】
前記滑走面をローラコンベアにより構成したことを特徴とする請求項6に記載の吊上げ型電極搬出入架台。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−22486(P2013−22486A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157091(P2011−157091)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]