説明

電気集塵装置用の電源制御装置及びこれを備えた電気集塵装置

【課題】スカーフィングで発生したダストの捕集する電気集塵装置用の電源制御装置であって、集塵効率を維持しつつ省エネルギー効果のある電源制御装置及びこれを備えた電気集塵装置を提供する。
【解決手段】湿式電気集塵装置30用の電源制御装置50の電源制御手段52は、スカーフィングにより発生するダストの濃度に応じて、湿式電気集塵装置30の集塵部32に対して高電圧電源40から供給する電力を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スカーフィングで生じたダストを捕集する電気集塵装置用の電源制御装置及びこれを備えた電気集塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、鋼材の品質を維持するために、鋼片の表面に生じた傷や不純物を燃焼ガスと酸素で熱化学的に溶削するスカーフィングと呼ばれる作業が行われている(例えば、特許文献1参照)。また、スカーフィング作業の一部として、溶削により生じた鋼片表面のスラグを高圧水や圧縮空気等で除去することも行われている。このスカーフィング作業は、スカーフィング装置のローラテーブル上に鋼片を載置し、この鋼片の移動と停止を繰り返しつつ断続的に行われる。1つの鋼片のスカーフィング作業が終了すると、当該鋼片は新しい鋼片と入れ替えられ、当該新しい鋼片のスカーフィング作業が行われる。このスカーフィング作業によって酸化鉄等のダストを含む排ガスが生じるが、排ガス中のダストは湿式の電気集塵装置(EP:Electrostatic Precipitator)により取り除かれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−22961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スカーフィング作業は断続的に行われるため、スカーフィングによって発生するダスト量は変化する。しかしながら、従来においては、ダスト濃度が低い時であっても電源装置から電気集塵装置に供給される電力を常に高く維持していたため、電力が無駄に消費されるという問題があった。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、スカーフィングで発生したダストを捕集する電気集塵装置用の電源制御装置であって、集塵効率を維持しつつ省エネルギー効果のある電源制御装置及びこれを備えた電気集塵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る電気集塵装置用の電源制御装置は、スカーフィングにより発生するダストの濃度に応じて、電気集塵装置の放電極と集塵極とで構成される集塵部に対して電源装置から供給する電力を制御する電源制御手段を有することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、ダスト濃度に応じて電気集塵装置の集塵部に対して電源装置から供給する電力を制御することができるため、集塵効率を維持しつつ省エネルギーを実現することができる。
【0008】
上記発明において、前記電源制御装置は、スカーフィングにより発生するダストの濃度を計測するダスト濃度計からダスト濃度の計測値を受信するダスト濃度受信手段を備え、前記電源制御手段は、前記ダスト濃度受信手段により受信した計測値が予め定められた閾値を超えた場合に第1の電力を供給し、前記計測値が前記閾値以下となった場合に、前記第1の電力よりも小さい第2の電力を供給するように制御することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、ダスト濃度の計測値が小さい場合には集塵部に対して電源装置から供給する電力を小さくすることができるため、集塵効率を維持しつつ省エネルギーを実現することができる。
上記発明において、前記電源制御手段は、前記計測値が前記閾値以下となった時から一定時間が経過した後に、前記第2の電力を供給するように制御することを特徴とする。
【0010】
スカーフィングの終了によりスカーフィングにより生じるダスト濃度が低下しても、スカーフィングが終了する前に発生したダストは排ガス経路長分だけ時間差をおいて電気集塵装置の設置場所に到達する。したがって、計測値が予め定められた閾値以下となった時から一定時間が経過した後に第2の電力を供給するように制御することで、電気集塵装置におけるダスト濃度に合わせて電力を変化させることができ、集塵効率を維持しつつ省エネルギーを実現することができる。
【0011】
上記発明において、前記電源制御装置は、スカーフィングにより発生するダストの濃度を計測するダスト濃度計からダスト濃度の計測値を受信するダスト濃度受信手段を備え、前記電源制御手段は、前記ダスト濃度受信手段により受信した計測値が小さくなるほど、前記集塵部に供給する電力が小さくなるように制御することを特徴とする。
本発明によれば、計測値が小さくなるほど供給する電力が小さくなるように制御することで、集塵効率を維持しつつ省エネルギーを実現することができる。
【0012】
また、本発明に係る電気集塵装置用の電源制御装置は、スカーフィングが実施されているスカーフィング期間においては電気集塵装置の放電極と集塵極とで構成される集塵部に対して電源装置から第1の電力を供給し、前記スカーフィング期間外においては前記集塵部に対して前記電源装置から前記第1の電力よりも小さい第2の電力を供給するように制御する電源制御手段を有することを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、スカーフィング期間においてはダスト濃度が高くなり、スカーフィング期間外はダスト濃度が低くなるため、スカーフィング期間に第1の電力を供給し、スカーフィング期間外に前記第1の電力よりも小さい第2の電力を供給するように制御することで、集塵効率を維持しつつ省エネルギーを実現することができる。
【0014】
上記発明において、スカーフィングが開始される時にスカーフィングコントローラからスカーフィング装置に開始信号が出力され、スカーフィングの終了時に前記スカーフィングコントローラから前記スカーフィング装置に終了信号が出力される場合に、前記開始信号が出力された時にその旨を通知する開始検出信号を受信し、前記終了信号が出力された時にその旨を通知する終了検出信号を受信するスカーフィング状態受信手段を備え、前記電源制御手段は、前記スカーフィング状態受信手段により前記開始検出信号を受信した場合に前記第1の電力を供給し、前記終了検出信号を受信した場合に前記第2の電力を供給するように制御することを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、スカーフィングの開始時と終了時にそれぞれ受信する検出信号に基づいて集塵部に供給する電力を制御することができ、集塵効率を維持しつつ省エネルギーを実現することができる。
上記発明において、前記電源制御手段は、前記終了検出信号を受信した時から一定時間が経過した後に、前記第2の電力を供給するように制御することを特徴とする。
【0016】
スカーフィングの終了によりスカーフィングにより生じるダスト濃度が低下しても、スカーフィングが終了する前に発生したダストは排ガス経路長分だけ時間差をおいて電気集塵装置の設置場所に到達する。したがって、終了検出信号を受信した時から一定時間が経過した後に第2の電力を供給するように制御することで、電気集塵装置におけるダスト濃度に合わせて電力を変化させることができ、集塵効率を維持しつつ省エネルギーを実現することができる。
【0017】
また、本発明に係る電気集塵装置は、上記電源制御装置を備えていることを特徴とする。本発明によれば、集塵効率を維持しつつ省エネルギーを実現する電気集塵装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ダスト濃度に応じて電気集塵装置の集塵部に対して電源装置から供給する電力を制御することができるため、集塵効率を維持しつつ省エネルギーを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係る集塵システムの全体構成図である。
【図2】同実施形態に係る電源制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【図3】スカーフィング期間とスカーフィング期間外における、ダスト濃度の変化と湿式電気集塵装置の集塵部に供給される電力の変化を示すグラフである。
【図4】同実施形態に係る電源制御装置による電力制御の手順を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の第2実施形態に係る集塵システムの全体構成図である。
【図6】同実施形態に係る電源制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【図7】同実施形態に係る電源制御装置による電力制御の手順を説明するためのフローチャートである。
【図8】ダスト濃度の変化と湿式電気集塵装置の集塵部に供給される電力の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る集塵システム1の全体構成図である。集塵システム1は、スカーフィングにより発生したダストを捕集して、ダストを除去した清浄な空気を排出するシステムである。
【0021】
図1に示すように、集塵システム1は、鋼片のスカーフィングを実施するスカーフィング装置10と、スカーフィング装置10の稼働を制御するスカーフィングコントローラ20と、スカーフィングにより発生したダストを捕集する湿式電気集塵装置30と、湿式電気集塵装置30に電力を供給する電源装置としての高電圧電源40と、高電圧電源40を制御する電源制御装置50と、を備えている。
【0022】
スカーフィングコントローラ20は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、入出力インターフェース等を備えており、スカーフィング装置10及び電源制御装置50と電気的に接続されている。スカーフィングコントローラ20は、スカーフィング装置10に制御信号を出力して、スカーフィング装置10におけるスカーフィングの開始と終了を制御することにより、断続的にスカーフィングを実施させる。
【0023】
具体的には、スカーフィングコントローラ20は、作業者により稼働スイッチ(不図示)がオンされると、開始信号と終了信号を順番にスカーフィング装置10に出力する。
スカーフィングコントローラ20がスカーフィング装置10に開始信号を出力すると、スカーフィング装置10はスカーフィングを開始する。一方、スカーフィングコントローラ20がスカーフィング装置10に終了信号を出力すると、スカーフィング装置10はスカーフィングを終了する。
【0024】
また、スカーフィングコントローラ20は、スカーフィング装置10に開始信号を出力した時に、その旨を通知する開始検出信号を電源制御装置50に対して送信する。一方、スカーフィングコントローラ20は、スカーフィング装置10に終了信号を出力した時に、その旨を通知する終了検出信号を電源制御装置50に対して送信する。
【0025】
スカーフィング装置10は、噴射口(不図示)を備えた掘削火口(不図示)を有する。噴射口には、溶削用の酸素供給管(不図示)と燃料供給管(不図示)とが連結されている。また、掘削火口付近には鋼片の表面に水と空気の混合流体を噴射するノズル(不図示)が設けられている。
【0026】
スカーフィング装置10は、スカーフィングコントローラ20から開始信号を受信すると、スカーフィングを開始する。具体的には、酸素供給管と燃料供給管とからそれぞれ供給される酸素と燃料との混合気を噴射口から鋼片の表面に向けて噴射し、この混合気に点火して得られた火炎により鋼片の表面を加熱しつつ、溶削火口と鋼片の表面とを相対移動させることにより、鋼片の表面の溶削を行う。さらに、ノズルから水と空気の混合流体を噴射して、溶削により生じたスラグを除去する。
【0027】
一方、スカーフィング装置10は、スカーフィングコントローラ20から終了信号を受信すると、スカーフィングを終了する。具体的には、酸素供給管への酸素の供給と、燃料供給管への燃料の供給と、ノズルからの水と空気の混合流体の供給とを停止し、溶削火口と鋼片との相対移動を停止させる。
【0028】
スカーフィング装置10の上方には、スカーフィングにより発生した酸化鉄の粉塵等のダストを含む排ガスを収集するための円錐形状のフード60が設けられている。
フード60の頂点は煙道管70の一端に連結されている。煙道管70は湿式電気集塵装置30の設置場所まで延長されている。スカーフィングにより発生した排ガスは、フード60から煙道管70を通って湿式電気集塵装置30に導入される。
【0029】
湿式電気集塵装置30は、排ガス中のダストを帯電させて捕集する集塵部32を備えており、この集塵部32は排ガスを取り込むケーシング34内に収められている。集塵部32は放電極32aと集塵極32bとで構成されている。放電極32aは高電圧電源40の負極側に電気的に接続され、集塵極32bは接地されている。ケーシング34の一方の側面には、スカーフィング装置10から発生した排ガスを導入する入口煙道34aが設けられており、他方の側面にはダスト除去後の清浄ガスを排出する出口煙道34bが設けられている。
【0030】
ケーシング34内の集塵部32の上方には、集塵極32bに付着したダストを洗浄除去するためのスプレーノズル36が設けられている。スプレーノズル36にはポンプ38から水が給水される。集塵部32の下方には、ダスト回収用のホッパ39が設けられている。
【0031】
電源制御装置50は、高電圧電源40から湿式電気集塵装置30の集塵部32に供給する電力を制御する制御盤であり、スカーフィングコントローラ20及び高電圧電源40と信号線で電気的に接続されている。
図2には電源制御装置50の機能構成を示す。電源制御装置50は電源制御手段52とスカーフィング状態受信手段54とを備えている。
【0032】
電源制御手段52は、電源制御装置50が備えるCPU(不図示)がメモリ(不図示)に記憶された制御プログラムを実行することにより実現される機能である。電源制御手段52は、スカーフィングコントローラ20から送られてくる制御信号に応じて、高電圧電源40から湿式電気集塵装置30の集塵部32に供給する電力を制御する。具体的には、電源制御手段52は、スカーフィングコントローラ20がスカーフィング装置10に開始信号を出力した時にその旨を通知する開始検出信号を送信してきた場合に、定格(100%)の電力(第1の電力)を高電圧電源40から湿式電気集塵装置30の集塵部32に供給するための開始制御信号を、高電圧電源40に送信する。
【0033】
また、電源制御手段52は、スカーフィングコントローラ20がスカーフィング装置10に終了信号を出力した時にその旨を通知する終了検出信号を送信してきた場合に、内部時計により時間を計時し、当該終了検出信号を受信した時点から一定時間が経過した後に、定格の30%の電力(第2の電力)を高電圧電源40から湿式電気集塵装置30の集塵部32に供給するための終了制御信号を、高電圧電源40に送信する。
【0034】
ここで、「一定時間」は、電源制御装置50の入力インターフェース(不図示)から電源制御装置50のメモリに予め記憶されたものが用いられる。この「一定時間」として、煙道管70の径や長さ、煙道管70中を通る排ガスの速度等に基づいて、スカーフィングにより発生した排ガスが煙道管70中を完全に通過する時間を予め算出し、当該時間と等しいか又はそれよりも長い時間を設定しておくのが好ましい。スカーフィングの終了によりスカーフィングにより生じるダスト濃度が低下しても、スカーフィングが終了する前に発生したダストは時間差をおいて湿式電気集塵装置30の設置場所に到達するため、このように「一定時間」を設定しておくことにより、スカーフィングが終了する前にスカーフィングにより放出されたダストを含む排ガスが煙道管70を完全に通過しないうちに湿式電気集塵装置30の集塵効率が低下するのを防ぐことができる。
【0035】
なお、スカーフィングの終了時のみならずスカーフィングの開始時においてもスカーフィング装置10と湿式電気集塵装置30との設置場所間でダスト濃度に時間差が生じるため、上述したスカーフィング終了時と同様の制御を行ってもよい。すなわち、スカーフィングコントローラ20から開始検出信号を受信した時点で即座に電源制御手段52から開始制御信号を送信せずに、開始検出信号を受信してから一定時間が経過した時に開始制御信号を送信するようにしてもよい。
【0036】
スカーフィング状態受信手段54は、スカーフィングコントローラ20との入出力インターフェースであり、スカーフィングコントローラ20から開始検出信号や終了検出信号を受信し、これらの受信した信号を電源制御手段52に転送する。
【0037】
なお、開始検出信号と終了検出信号、開始制御信号と終了制御信号は、これらを受信する電源制御装置50や高電圧電源40が区別できる信号であればよく、例えばオン(“1”)とオフ(“0”)であっても、H(ハイレベル信号)とL(ロウレベル信号)であってもよい。
【0038】
図1に示す高電圧電源40は、電源制御装置50からの制御信号に従って所定の電力を湿式電気集塵装置30の集塵部32に供給する。
高電圧電源40は、交流電源(不図示)から入力した交流電圧を位相制御するサイリスタ等の電力制御素子(不図示)と、電力制御素子によって位相制御された電圧を昇圧する変圧器(不図示)と、変圧器で昇圧された電圧を直流に整流し直流高電圧を生成する整流器(不図示)とを備えている。
【0039】
高電圧電源40は、スカーフィングが開始された時に電源制御装置50から開始制御信号を受信すると、電力制御素子により位相制御を行い、定格の電力を湿式電気集塵装置30の集塵部32に供給する。
一方、高電圧電源40は、スカーフィングが終了して電源制御装置50から終了制御信号を受信した場合には、定格の30%の電力を湿式電気集塵装置30の集塵部32に供給する。
【0040】
図3に、スカーフィングコントローラ20から開始信号が出力されてから終了信号が出力されるまでの期間であるスカーフィング期間と当該スカーフィング期間外における、スカーフィング装置10周辺のダスト濃度の変化と湿式電気集塵装置30の集塵部32に供給される電力の変化を示す。本実施形態では、例えば、スカーフィング期間は70〜80秒であり、スカーフィング期間外の期間は20〜30秒である。図3に示すように、スカーフィング期間にはスカーフィング装置10周辺のダスト濃度が上昇し、例えば60kVの電圧が高電圧電源40から湿式電気集塵装置30の集塵部32の放電極32aに印加される。また、スカーフィング期間以外にはスカーフィング装置10周辺のダスト濃度が低下し、例えば20kVの電圧が高電圧電源40から湿式電気集塵装置30の集塵部32の放電極32aに印加される。
【0041】
このように、スカーフィング期間外に集塵部32に供給する電力を30%とすることで、最低の捕集能力を維持することが可能となり、スカーフィング期間外に湿式電気集塵装置30の集塵部32付近に未だ残留しているダストを捕集することができる。また、スカーフィング期間外に集塵部32に供給する電力を0%としないことで、スカーフィング開始時に電圧を昇圧させるまでの時間を短くすることができる。
【0042】
なお、本実施形態では、スカーフィング期間外に供給する電力を30%としたが、これに限定されることはなく、スカーフィング期間外の集塵部32付近におけるダスト濃度が高い場合には40%であってもよいし、ダスト濃度が低く集塵する必要がない場合には10%や0%であってもよい。また、スカーフィング期間に供給する電力についても100%に限定されることはなく、例えば70%でも80%でもよい。
【0043】
要するに、スカーフィング期間外に供給される第2の電力が、スカーフィング期間に供給される第1の電力よりも小さくなるように制御すればよく、これにより集塵効率を維持しつつ省エネルギーを実現することが可能となる。
【0044】
また、本実施形態に係る湿式電気集塵装置30では、コロナ放電を発生させるために高電圧を集塵部32に印加しており、ここでは電圧の制御を行う例を示したが、電流の制御を行ってもよい。
【0045】
次に、上記構成を有する集塵システム1における動作を説明する。まず、スカーフィングの作業者は、鋼片をスカーフィング装置10のローラテーブル上に鋼片を載置し、スカーフィングコントローラ20の稼働スイッチをオンする。これにより、スカーフィングコントローラ20は開始信号をスカーフィング装置10に出力するとともに、開始信号が出力された旨を通知する開始検出信号を電源制御装置50に送信する。
【0046】
スカーフィング装置10は開始信号を受信すると鋼片のスカーフィングの実施を開始し、図3に示すスカーフィング期間となる。スカーフィング期間においては、スカーフィング装置10周辺のダスト濃度が上昇し、スカーフィングにより発生したダストを含む排ガスは、フード60、煙道管70、湿式電気集塵装置30の入口煙道34aを経由してケーシング34内に導入される。
【0047】
一方、電源制御装置50は、図4に示すように、スカーフィング状態受信手段54によりスカーフィングコントローラ20から開始検知信号を受信し(ステップS101のYes)、電源制御手段52により開始制御信号を高電圧電源40に出力する。
【0048】
開始制御信号を受信した高電圧電源40は、供給する電力を100%に設定し、当該100%の電力を湿式電気集塵装置1の集塵部32に供給し、当該供給する電力を維持する(ステップS102)。湿式電気集塵装置30の放電極32aと集塵極32bとの間には高電圧が印加され、放電極32aではコロナ放電が発生して放電極32aと集塵極32bとの間に電流が流れる。スカーフィング装置10からの排ガスが両極間を通過すると、放電極32aから放出される負イオンが排ガス中のダストに付着して負に帯電する。当該ダストは、接地されている集塵極32bに捕集される。捕集されたダストは、集塵極32bの上方に設けられたスプレーノズル36からの洗浄水により、集塵極32bから洗い流される。そして、ダストは洗浄水と共に、下部のホッパ39より湿式電気集塵装置30の外部へ放流される。ダストが除かれた排ガスは、出口煙道34bより排出される。
【0049】
スカーフィングコントローラ20は、開始信号を出力してから70〜80秒経過した後に終了信号をスカーフィング装置10に出力するとともに、終了信号が出力された旨を通知する終了検知信号を電源制御装置50に送信する。
【0050】
スカーフィング装置10は終了信号を受信すると、鋼片のスカーフィングを終了し、図3に示すスカーフィング期間は中断する。スカーフィング期間外にはスカーフィング装置10周辺のダスト濃度は低下し、煙道管70から湿式電気集塵装置30に導入される排ガス中のダスト濃度は減少する。
【0051】
一方、電源制御装置50は、図4に示すように、スカーフィング状態受信手段54により終了検知信号を受信すると(ステップS103のYes)、当該終了検知信号を受信してから一定時間が経過した後に、電源制御手段52により終了制御信号を高電圧電源40に出力する。
【0052】
終了制御信号を受信した高電圧電源40は、供給する電力を30%に設定し、当該30%の電力を湿式電気集塵装置30の集塵部32に供給し、当該供給する電力を維持する。湿式電気集塵装置30の放電極32aと集塵極32bとの間には低電圧が印加されて、放電極32aではコロナ放電は発生するものの放電極32aと集塵極32bとの間に電流がほとんど流れない状態となる。しかしながら、残留している排ガスが両極間を通過すれば、排ガス中のダストは集塵極32bに捕集される。
【0053】
スカーフィングコントローラ20は、終了信号を出力してから20〜30秒経過した後に開始信号をスカーフィング装置10に出力し、上述した動作を繰り返す。
以上のように、湿式電気集塵装置30の集塵部32に供給する電力を常に一定に維持せずに、スカーフィング期間外のダスト濃度が低くなる期間については供給する電力を小さくすることで、集塵効率を維持しつつ省エネルギーを実現することができる。
【0054】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下では第1実施形態と異なる構成のみ説明し、重複した説明を省略する。
第1実施形態では、スカーフィング期間とそれ以外の期間でダスト濃度が変化することを利用して、スカーフィング期間とそれ以外の期間とで湿式電気集塵装置30の集塵部32に供給する電力を変化させたが、第2実施形態では、スカーフィング装置10の周辺にダスト濃度計を設置して、スカーフィングにより発生するダスト濃度を直接計測し、当該計測値に応じて電力を制御する。
【0055】
図5は、本発明の第2実施形態に係る集塵システム1aの全体構成図である。第2実施形態では、第1実施形態に係る集塵システム1に対してダスト濃度計80が新たな構成要素として追加されている。
【0056】
第2実施形態に係る電源制御装置50aはダスト濃度計80と電気的に接続しており、第1実施形態のようにスカーフィングコントローラ20とは接続していない。ダスト濃度計80は、ダスト濃度を計測し、計測値を電源制御装置50aに送信する。
【0057】
図6には、第2実施形態に係る電源制御装置50aの機能構成を示す。電源制御装置50aは、電源制御手段52aと、ダスト濃度受信手段56とを備えている。
ダスト濃度受信手段56は、ダスト濃度計80からの入力インターフェースであり、ダスト濃度計80からダスト濃度の計測値を受信し、電源制御手段52aに転送する。
【0058】
電源制御手段52aは、電源制御装置50aが備えるCPU(不図示)がメモリ(不図示)に記憶された制御プログラムを実行することにより実現される機能であり、ダスト濃度受信手段56から送信されてきた計測値に応じて、高電圧電源40から湿式電気集塵装置30の集塵部32に供給する電力を制御する。
【0059】
具体的には、図7に示すように、電源制御装置50aは、ダスト濃度受信手段56によりダスト濃度計80からダスト濃度の測定値を定期的に受信し(ステップS201)、当該測定値を逐次メモリに記憶している。ダスト濃度計80から測定値を受信すると、電源制御手段52aは、受信した計測値と、予め定められてメモリに予め記憶されたダスト濃度の閾値と、メモリに記憶しておいた前回の計測値とを比較する(ステップS202)。比較した結果、今回の計測で計測値が閾値を超えたと判断した場合(ステップS203のYes)、電源制御手段52aは開始制御信号を高電圧電源40に出力する。
【0060】
開始制御信号を受信した高電圧電源40は、供給する電力を100%に設定して、当該100%の電力を湿式電気集塵装置30の集塵部32に供給し、当該電力を維持する(ステップS204)。
【0061】
一方、今回の計測で計測値が予め定められた閾値以下となったと判断した場合(ステップS205のYes)、電源制御手段52aはその時点から一定時間が経過した後に、終了制御信号を高電圧電源40に出力する。
【0062】
終了制御信号を受信した高電圧電源40は、供給する電力を30%に設定して、当該30%の電力を湿式電気集塵装置30の集塵部32に供給し、当該電力を維持する(ステップS206)。以降、これらの操作がスカーフィング作業の間、繰り返される。
【0063】
図8には、ダスト濃度計80により計測されたダスト濃度と高電圧電源40により供給される電力パターンとの関係を示す。このように、ダスト濃度に応じて高電圧電源40から湿式電気集塵装置30の集塵部32に対して供給する電力を制御することができるため、集塵効率を維持しつつ省エネルギーを実現することができる。また、スカーフィングが終了してスカーフィング装置10周辺のダスト濃度が低下しても、湿式電気集塵装置30内のダスト濃度はすぐには低下しないため、ダスト濃度が閾値よりも低下した時から一定時間が経過した後に電力を100%から30%に低下させることで、湿式電気集塵装置30におけるダスト濃度に合わせて電力を変化させることができる。
【0064】
なお、上述した実施形態では、ダスト濃度が閾値を超えているか否かによって電力を制御したが、電力の制御方法はこれに限定されることはなく、例えば、閾値を用いずに、ダスト濃度の計測値が小さくなるほど電力が小さくするように、すなわち、ダスト濃度と電力が比例するように制御してもよい。
【0065】
あるいは、ダスト濃度の閾値を複数設けておいて、ダスト濃度が当該複数の各閾値を超える毎に電力を大きくするように制御してもよい。すなわち、ダスト濃度に応じて電力を段階的に変化させるようにしてもよい。
【0066】
また、上述した実施形態では、スカーフィング装置10の周辺にダスト濃度計80を設置して、スカーフィングにより発生したダストをリアルタイムで計測できるようにしたが、ダスト濃度計80の設置場所はこれに限定されることはなく、例えば、ダスト濃度計80を煙道管70内や湿式電気集塵装置30の入口煙道34a内に設けてもよい。この場合には、ダストがダスト濃度計80を設けた位置から湿式電気集塵装置30の集塵部32に到達するまでの時間と等しいかそれより長い時間を、上述した「一定時間」として設定するように調整する必要がある。
【0067】
なお、スカーフィングで生じる排ガス中のダストには酸化鉄が含まれており、酸化鉄は、粒径が1μ程度で電気抵抗率が1012〜1013Ω・cmと電気抵抗率が高いため、乾式電気集塵装置を用いた場合、逆電現象が生じて集塵効率が低下する。このため、本実施形態では、洗浄水を使用する湿式電気集塵機30を使用して、集塵効率を向上させている。しかしながら、集塵効率は低くなるが、湿式電気集塵機30に替えて乾式電気集塵装置を使用することもあり得るし、他の種類の電気集塵機を使用することも可能である。
【0068】
なお、上述した電源制御装置50、50aの機能を高電圧電源40と一体に設けてもよい。また、上述した電源制御装置50、50aにおける電力の制御機構は一例に過ぎず、公知の任意の電力制御機構、例えばインバータ等を用いた制御機構を用いてもよい。
【0069】
また、電源制御装置50、50aに対して、高電圧電源40の制御機能に加えて、スプレーノズル36が接続された水配管の途中に設けられた電磁弁(不図示)のオン/オフを制御し、スプレーノズル36から噴霧される水の量を調整する機能を設けてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1、1a………集塵システム、10………スカーフィング装置、20………スカーフィングコントローラ、30………湿式電気集塵装置、32………集塵部、32a………放電極、32b………集塵極、34………ケーシング、34a………入口煙道、34b………出口煙道、36………スプレーノズル、38………ポンプ、39………ホッパ、40………高電圧電源、50、50a………電源制御装置、52、52a………電源制御手段、54………スカーフィング状態受信手段、56………ダスト濃度受信手段、60………フード、70………煙道管、80………ダスト濃度計。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スカーフィングにより発生するダストの濃度に応じて、電気集塵装置の放電極と集塵極とで構成される集塵部に対して電源装置から供給する電力を制御する電源制御手段を有することを特徴とする電気集塵装置用の電源制御装置。
【請求項2】
スカーフィングにより発生するダストの濃度を計測するダスト濃度計からダスト濃度の計測値を受信するダスト濃度受信手段を備え、
前記電源制御手段は、前記ダスト濃度受信手段により受信した計測値が予め定められた閾値を超えた場合に第1の電力を供給し、前記計測値が前記閾値以下となった場合に、前記第1の電力よりも小さい第2の電力を供給するように制御することを特徴とする請求項1に記載の電気集塵装置用の電源制御装置。
【請求項3】
前記電源制御手段は、前記計測値が前記閾値以下となった時から一定時間が経過した後に、前記第2の電力を供給するように制御することを特徴とする請求項2に記載の電気集塵装置用の電源制御装置。
【請求項4】
スカーフィングにより発生するダストの濃度を計測するダスト濃度計からダスト濃度の計測値を受信するダスト濃度受信手段を備え、
前記電源制御手段は、前記ダスト濃度受信手段により受信した計測値が小さくなるほど、前記集塵部に供給する電力が小さくなるように制御することを特徴とする請求項1に記載の電気集塵装置用の電源制御装置。
【請求項5】
スカーフィングが実施されているスカーフィング期間においては電気集塵装置の放電極と集塵極とで構成される集塵部に対して電源装置から第1の電力を供給し、
前記スカーフィング期間外においては前記集塵部に対して前記電源装置から前記第1の電力よりも小さい第2の電力を供給するように制御する電源制御手段を有することを特徴とする電気集塵装置用の電源制御装置。
【請求項6】
スカーフィングが開始される時にスカーフィングコントローラからスカーフィング装置に開始信号が出力され、スカーフィングの終了時に前記スカーフィングコントローラから前記スカーフィング装置に終了信号が出力される場合に、
前記開始信号が出力された時にその旨を通知する開始検出信号を受信し、前記終了信号が出力された時にその旨を通知する終了検出信号を受信するスカーフィング状態受信手段を備え、
前記電源制御手段は、前記スカーフィング状態受信手段により前記開始検出信号を受信した場合に前記第1の電力を供給し、前記終了検出信号を受信した場合に前記第2の電力を供給するように制御することを特徴とする請求項5に記載の電気集塵装置用の電源制御装置。
【請求項7】
前記電源制御手段は、前記終了検出信号を受信した時から一定時間が経過した後に、前記第2の電力を供給するように制御することを特徴とする請求項6に記載の電気集塵装置用の電源制御装置。
【請求項8】
請求項1から7の何れか1項に記載の電源制御装置を備えた電気集塵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−179528(P2012−179528A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43208(P2011−43208)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】