説明

電気電子機器部品搬送ケース用ポリプロピレン系樹脂

【課題】搬送の際にも性能低下を起こさないクリーン性に優れた電気電子機器部品搬送ケースを高い生産性で製造できるポリプロピレン系樹脂を提供する。
【解決手段】揮発性成分量A(単位はppm)と融点T(単位は℃)が下記式1を満足し、かつ揮発性成分量Aが10ppm以下であることを特徴とする電気電子機器部品搬送ケース用ポリプロピレン系樹脂。式1A≦0.67×T−97、さらに融点Tが150℃以上、曲げ弾性率が1300MPa以上であることが望ましい。さらに、ハフニウムを中心金属とするメタロセン触媒を用い製造されることが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気電子機器部品搬送ケース用ポリプロピレン系樹脂に関し、詳しくは、搬送或いは保管の際にも電気電子機器部品の性能低下を起こさない、クリーン性に優れた、生産性の高い電気電子機器部品搬送ケース用ポリプロピレン系樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン系樹脂は、耐熱性、成形性、透明性、耐薬品性に優れるという特徴により、各種工業材料、各種容器、日用品、フィルムおよび繊維など様々な用途に幅広く使用されている。
電気電子機器には、シリコンウエハー、ハードディスク、ディスク基板、ICチップ、光記憶用ディスク、LCD用高機能基板ガラス、LCDカラーフィルター、ハードディスク磁気ヘッド素子、CCD素子等々の各種部品が使用されているが、電気電子機器の組み立てにおいては、これら部品を組み立てラインに供するため、これら部品を運搬、移送する必要性があり、そのための搬送ケースが用いられる。従来、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂の搬送ケースがこの目的のため用いられてきた。
【0003】
近年、電気電子機器部品は、その微細化、高性能化、高容量化にともない、製造環境、保管、移動中に発生、接触する汚染物質が、電気電子機器製品の歩留まり、品質、信頼性に大きな影響を及ぼすようになってきた。樹脂が含有する低分子量成分や残留物質による揮発成分は、加工時の発煙、異臭等の発生原因になるばかりか、加工後でも臭気、色相に悪影響を与えることがあるが、電気電子機器部品の微細化・高密度化・高集積化が進むにつれて、より高度な清浄空間が必要になる。
【0004】
そして、搬送ケースに収納された上記部品に、性能上の不具合が発生する頻度が増加する問題が生じてきている。例えば、記憶ディスクに有機物や酸性ガスが付着することからくる記憶ディスクの動作不良等の不具合があげられる(例えば、非特許文献1参照。)。搬送ケースの樹脂材料から発生する有機物汚染ガスや水分の発生を抑えることにより、製品の歩留まり、貯蔵、移動中における品質の低下を防止し、信頼性を向上させることが期待される。
【0005】
ポリプロピレン系樹脂に係わるこのような問題を解決するために、重合後に低分子量成分を洗浄除去する方法(例えば、特許文献1、2参照。)や、塊状重合後の液相部分を分離除去する方法(例えば、特許文献3、4参照。)が提案されているが、いずれの方法を用いても、得られた樹脂中のオリゴマー成分量やこれに由来する揮発成分量は、十分といえるレベルではなく、品質の優れたポリプロピレン系樹脂の出現が望まれていた。
【0006】
本出願人は揮発性成分の低減された半導体関連部品搬送ケースの提供手段として、メタロセン触媒を使用して製造されたポリプロピレン系樹脂を使用することを提案した(特許文献5)。しかしメタロセン触媒を使用したポリプロピレン系樹脂は、チーグラー・ナッタ触媒を使用して製造されたポリプロピレン系樹脂と比べ射出成形を行う場合には冷却時間を長く取らなければ製品の変形が生じやすく、成形サイクルが長くなってしまう問題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】超クリーン化技術 東レリサーチセンター(2005年7月)
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公昭53−4107号公報
【特許文献2】特公昭58−41283号公報
【特許文献3】特開平10−17612号公報
【特許文献4】特開平10−17613号公報
【特許文献5】特開2008−106089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、かかる従来技術の状況において、揮発性成分量が極めて少なく、電気電子機器部品の搬送の際にも性能低下を起こさない、クリーン性に優れた電気電子機器部品搬送ケースを高い生産性で製造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を行い、搬送ケース用の材料から発生する炭化水素等の微量ガスが電気電子機器部品に作用し、沈着して、上記不具合を発生させることに着目した。そして、揮発性成分の量と融点の関係が特定の関係式を満たすポリプロピレン系樹脂を用いることで、電気電子機器部品搬送ケースは、炭化水素等の揮発性成分は特定の値以下であって搬送・保管等の際に性能低下を起こさず、また、成形サイクルを短くすることができ、高い生産性で電気電子機器部品搬送ケースを製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の電気電子機器部品搬送ケース用ポリプロピレン系樹脂及び電気電子機器部品搬送ケースを提供するものである。
【0011】
[1]揮発性成分量A(単位はppm)と融点T(単位は℃)が下記式1を満足し、かつ揮発性成分量Aが10ppm以下であることを特徴とする電気電子機器部品搬送ケース用ポリプロピレン系樹脂。
式1 A≦0.67×T−97
[2]融点Tが150℃以上であることを特徴とする上記[1]に記載の電気電子機器部品搬送ケース用ポリプロピレン系樹脂。
[3]曲げ弾性率が1300MPa以上であることを特徴とする上記[1]または[2]に記載の電気電子機器部品搬送ケース用ポリプロピレン系樹脂。
[4]ハフニウムを中心金属とするメタロセン触媒を用い製造されたものであることを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれかに記載の電気電子機器部品搬送ケース用ポリプロピレン系樹脂。
[5]上記[1]〜[4]のいずれかに記載の電気電子機器部品搬送ケース用ポリプロピレン系樹脂を射出成形してなる電気電子機器部品搬送ケース。
【発明の効果】
【0012】
本発明のポリプロピレン系樹脂を用いて製造した電気電子機器部品搬送ケースは、従来の搬送ケースと比べ極めて内容物の汚染が生じにくく、搬送の際にも性能低下を起こさず、クリーン性に優れた、生産性の高い、電気電子機器部品搬送ケースを提供でき、特に高集積回路用半導体等の搬送ケースに非常に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の電気電子機器部品搬送ケース用ポリプロピレン系樹脂は、揮発性成分量Aが10ppm以下で、揮発性成分量Aと融点Tが、式1:
A≦0.67×T−97 を満足することを特徴とする。
以下、本発明の電気電子機器部品搬送ケースに用いるポリプロピレン系樹脂及び電気電子機器部品搬送ケースの製造法について、詳細に説明する。
【0014】
[I]ポリプロピレン系樹脂
本発明のポリプロピレン系樹脂は、プロピレンの単独重合体、あるいはプロピレンとエチレンおよび/または炭素数4〜20のα−オレフィンとの共重合体を意味する。それらの中で、プロピレン単独重合体およびプロピレンとエチレンとのランダム共重合体が好ましい。プロピレンとエチレンのランダム共重合体の場合、好ましくはプロピレン単位を90〜99.5重量%、さらに好ましくは92〜99重量%、エチレン単位を好ましくは0.5〜10重量%、さらに好ましくは1〜8重量%含んでなるものである。
【0015】
本発明のポリプロピレン系樹脂は、揮発性成分量が10ppm以下であり、好ましくは8ppm以下、より好ましくは5ppm以下である。その理由は以下の通りである。搬送ケースが集積度や加工精度が高い電気電子機器部品を収納する場合は、揮発性成分が僅かに付着しても問題となるため、揮発性成分量は5ppmを下回ることが好ましい。一方、集積度が低い電気電子機器部品を収納する場合であっても、揮発性成分量が10ppmを超えると揮発性成分が電気電子機器部品へ付着し、部品性能の不具合発生頻度の上昇をもたらすため使用不可能である。
【0016】
ポリプロピレン系樹脂の融点が高い程、固化速度が高まることから搬送ケース成形時の成形サイクルが短縮されて生産性が向上する。そのため、例えば融点が160℃のポリプロピレン系樹脂を使用する場合では、揮発性成分量が例えば9ppmであっても、製品の生産性は良好となるので許容される。一方、融点の低いプロピレン系樹脂に対しては、生産性が低くなる分、高度に揮発性成分量を低減することによる高い製品価値が求められると考えられる。
種々のポリプロピレン系樹脂を用いて、揮発性成分量と融点について、搬送ケースの生産性と製品性能の観点から検討した結果、前記式1を満たすポリプロピレン系樹脂が、電気電子機器部品搬送ケースの生産性と製品価値を両立するためには必要であることが判明した。
そして、ポリプロピレン系樹脂は、好ましくは下記式2を満たすポリプロピレン系樹脂であり、
式2 A≦0.67×T−97.5
より好ましくは下記式3を満たすポリプロピレン系樹脂である。
式3 A≦0.67×T−98.0
【0017】
ポリプロピレン系樹脂の揮発性成分には未反応モノマー、低分子量化合物、重合溶媒、溶剤等のプロピレンの重合工程に起因する揮発性成分、酸化防止剤のような重合後のポリプロピレンに添加される各種添加剤等に起因する揮発性の成分等が含まれる。
【0018】
このように、揮発性成分の発生原因としては、多くのことが考えられるが、ポリプロピレン系樹脂の重合法、製造法に起因する場合が多い。
チーグラー触媒によって製造されたポリプロピレン系樹脂は、GPCによる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を測定して、Mw/Mn(分子量分布の指標)を求めると、触媒の種類、重合条件により若干異なるが、約4〜9であり、未反応モノマー、ダイマー、低分子量化合物、非晶質成分、オリゴマーなどの含有量が高いことが多い。一方、メタロセン触媒によるポリプロピレン系樹脂のMw/Mnは約2〜3であり、分子鎖の長さが非常に揃っていて、揮発性成分の発生の原因になると考えられる未反応モノマー、ダイマー、低分子量化合物、非晶質成分、オリゴマーなどの、比較的低分子量の成分の含有量が、通常は5ppm以下、3ppm以下、好ましくは1ppm以下と少ない。したがって、メタロセン触媒によるポリプロピレン系樹脂を使用することが揮発性成分の発生の原因を原料の段階で、10重量ppm以下に止めることが、より容易に可能であり、好ましい。
【0019】
チーグラー触媒によるポリプロピレン系樹脂の場合には、分子量分布が比較的広く、低分子量域を潜在的に多く含むために、揮発性成分をポリプロピレン系樹脂という、いわゆる成形用ポリマーの原料段階で、多量に12ppm、16ppm、19ppmというような、10重量ppm以上に含まれている場合が多い。したがって、このようなポリプロピレン系樹脂を使用する場合には、揮発性成分を取り除く処理をする必要がある。
【0020】
勿論、揮発性成分は、ポリプロピレン系樹脂の副生成物ばかりでなく、重合溶媒、共重合に供されるモノマーであるエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン等のα−オレフィン、触媒、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の不活性飽和炭化水素溶剤や液状α−オレフィン等のポリマー洗浄溶液、回収溶剤のような重合体の製造の段階で混入するものもありえる。さらに、酸化防止剤、加工助剤のような各種添加剤から混入することも想定できるので、ポリプロピレン系樹脂の揮発成分を10重量ppm以下とするには、重合、重合体の洗浄、抽出、溶媒の除去、添加剤を含むあらゆる工程、観点からの対策を留意する必要がある。
【0021】
前記式1を満たすポリプロピレン系樹脂は、好ましくは以下のようにして得ることができる。
ポリプロピレン系樹脂の融点は、触媒系によって多少の高低はあるが、エチレンおよび/または炭素数4〜20のα−オレフィンの含有量に応じて定まる。この際後述するメタロセン触媒を用いることにより、任意の融点(任意のエチレンおよび/または炭素数4〜20のα−オレフィンの含有量)において、式1を満足する揮発性成分量になる。その融点においてより低い揮発性成分量を求める場合には、または、その融点において揮発性成分量が式1を満足しなかった場合には、揮発性成分を除去する工程、例えば洗浄、乾燥、吸着等により低減させればよい。後述するメタロセン触媒以外の触媒を用いた場合、任意の融点において、式1を満足する揮発性成分量にならなければ、揮発性成分を除去する工程、例えば洗浄、乾燥、吸着等により低減させることができる。
【0022】
本発明のポリプロピレン系樹脂は、融点Tが150℃以上であることが好ましい。融点を150℃以上とすることで成形サイクルの一層の短縮が可能であり生産性をより高めることができる。なお、融点の測定は示差走査熱量分析(DSC)で行うが、高温に昇温して測定する際の劣化防止のため、通常は酸化防止剤を配合した状態で測定される。本発明においても、ポリプロピレン系樹脂の融点Tは酸化防止剤含有状態で測定され、具体的には後記実施例に記載する方法に従って測定される。
【0023】
また、本発明のポリプロピレン系樹脂は、曲げ弾性率は1300MPa以上が好ましく、より好ましくは1400MPa以上である。曲げ弾性率が高いとシリコンウェハ等を容器に収納した際、容器がたわみ変形を生じることを防止できるため好ましい。
【0024】
また、本発明のポリプロピレン系樹脂は、ポリマー内に含まれるハロゲン含有量、例えば、塩素の含有量が10重量ppm以下であることが好ましく、より好ましくは5重量ppm以下である。ハロゲン含有量が多いと腐食性を発現することになるので、好ましくない。
【0025】
また、本発明のポリプロピレン系樹脂は、そのナトリウムおよびカルシウム含有量は、それぞれ100ppm以下であることが好ましい。ナトリウムおよびカルシウム含有量が100ppmを超えると、収納した電気電子機器部品に対し、成形体から剥がれ落ちた樹脂の欠片が付着した場合、付着した部分の電気特性が変化することにより欠損となる可能性がある。ナトリウムやカリウム含有量が高いほど欠損の可能性は高まるため、問題の生じない範囲としての100ppm以下である。より好ましくは70ppm以下、さらに好ましくは50ppm以下と低減させることが望ましい。
【0026】
本発明のポリプロピレン系樹脂は、メタロセン触媒を用いて製造されることが好ましい。メタロセン触媒としては、公知のメタロセン触媒系が使用できるが、好ましくは、メチルアルモキサンなどの有機アルミニウムオキシ化合物やフッ素含有ホウ素化合物を助触媒として使用しない触媒系が用いられる。
アルミニウムオキシ化合物を用いて重合すると生成ポリマー中に存在するアルミニウム量が多くなり、また、フッ素含有ホウ素化合物を用いて重合すると生成ポリマー中に存在するハロゲン量が多くなる。上記した好ましいハロゲン含有量のポリプロピレン系樹脂を得るためには、必要に応じて触媒除去工程を設けることができる。
【0027】
メタロセン錯体としては、ハフニウムを中心金属とするメタロセン化合物を使用するのが好ましく、具体的には、次の一般式[I]で表される化合物を好ましく挙げることができる。
Q(C4−a)(C4−b)MXY ・・・[I]
一般式[I]において、Qは、二つの共役五員環配位子を架橋する結合性基を表す。
Mは、ハフニウムが好ましい。
XおよびYは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン基、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基、炭素数1〜20の窒素含有炭化水素基、炭素数1〜20のリン含有炭化水素基または炭素数1〜20の珪素含有炭化水素基を示す。
【0028】
およびRは、それぞれ独立して、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、アルコキシ基、アリールオキシ基、珪素含有炭化水素基、リン含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基またはホウ素含有炭化水素基を示す。また、隣接する2個のRまたは2個のRがそれぞれ結合してC4〜C10環を形成していてもよい。特には、6員環、7員環を形成して、上記共役五員環と共に、インデン環、アズレン環を形成することが好ましい。
aおよびbは、0≦a≦4、0≦b≦4を満足する整数である。
2個の共役五員環配位子の間を架橋する結合性基Qは、例として、アルキレン基、アルキリデン基、シリレン基、ゲルミレン基等が挙げられる。これらは水素原子がアルキル基、ハロゲン等で置換されたものであってもよい。特には、シリレン基が好ましい。
【0029】
メタロセン錯体として、具体的には次の化合物を好ましく挙げることができる。
(1)メチレンビス(シクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド
(2)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド
(3)イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド
(4)エチレン(シクロペンタジエニル)(3,5−ジメチルペンタジエニル)ハフニウムジクロリド
(5)メチレンビス(インデニル)ハフニウムジクロリド
(6)エチレンビス(2−メチルインデニル)ハフニウムジクロリド
(7)エチレン1,2−ビス(4−フェニルインデニル)ハフニウムジクロリド
(8)エチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ハフニウムジクロリド
(9)ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(テトラメチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド
(10)ジメチルシリレンビス(インデニル)ハフニウムジクロリド
(11)ジメチルシリレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ハフニウムジクロリド
(12)ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ハフニウムジクロリド
(13)ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(オクタヒドロフルオレニル)ハフニウムジクロリド
(14)メチルフェニルシリレンビス[1−(2−メチル−4,5−ベンゾ(インデニル)]ハフニウムジクロリド
(15)ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)]ハフニウムジクロリド
(16)ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4H−アズレニル)]ハフニウムジクロリド
(17)ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)]ハフニウムジクロリド
(18)ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)]ハフニウムジクロリド
(19)ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−ナフチル−4H−アズレニル)]ハフニウムジクロリド
(20)ジフェニルシリレンビス[1−(2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)]ハフニウムジクロリド
(21)ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4−(フェニルインデニル))]ハフニウムジクロリド
(22)ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−(フェニルインデニル))]ハフニウムジクロリド
(23)ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−ナフチル−4H−アズレニル)]ハフニウムジクロリド
(24)ジメチルゲルミレンビス(インデニル)ハフニウムジクロリド
(25)ジメチルゲルミレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ハフニウムジクロリド
また、触媒成分および触媒については、これらの化合物を併用してもよい。
【0030】
メタロセン触媒としては、担持型ものが好ましい。
担持型メタロセン触媒の特に好ましい例としては、担体が助触媒の機能を兼ねたイオン交換性層状ケイ酸塩が挙げられる。具体的には、以下に述べる成分[A]、成分[B]および必要に応じて添加される成分[C]を組み合わせて得られる。
成分[A]メタロセン錯体化合物
共役五員環配位子を少なくとも一個有するハフニウム錯体化合物
成分[B]助触媒
イオン交換性層状ケイ酸塩
成分[C]有機アルミニウム化合物
【0031】
・成分[A]メタロセン錯体化合物
成分[A]としては、前記一般式[I]で説明したハフニウムを中心金属とするメタロセン触媒が好ましい。
【0032】
・成分[B]助触媒(イオン交換性層状ケイ酸塩)
イオン交換性層状ケイ酸塩は、天然産のものに限らず、人工合成物であってもよい。
イオン交換性層状ケイ酸塩として粘土化合物を使用することができ、粘土化合物の具体例としては、例えば、白水春雄著「粘土鉱物学」朝倉書店(1995年)に記載されている次のような層状珪酸塩が挙げられる。
(1)1:1型構造が主要な構成層であるディッカイト、ナクライト、カオリナイト、アノーキサイト、メタハロイサイト、ハロイサイト等のカオリン族、クリソタイル、リザルダイト、アンチゴライト等の蛇紋石族
(2)2:1型構造が主要な構成層であるモンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト等のスメクタイト族、バーミキュライト等のバーミキュライト族、雲母、イライト、セリサイト、海緑石等の雲母族、アタパルジャイト、セピオライト、パリゴルスカイト、ベントナイト、パイロフィライト、タルク、緑泥石群
【0033】
本発明で使用する珪酸塩は、上記(1)、(2)の混合層を形成した層状珪酸塩であってもよい。
本発明においては、主成分の珪酸塩が2:1型構造を有する珪酸塩であることが好ましく、スメクタイト族であることが更に好ましく、モンモリロナイトであることが特に好ましい。
【0034】
これら珪酸塩を酸、塩、アルカリ、酸化剤、還元剤、有機溶剤などで化学処理することにより活性向上を図ることができる。
酸処理は、イオン交換性層状珪酸塩粒子の表面の不純物を除く、あるいは層間陽イオンの交換を行うほか、結晶構造のAl、Fe、Mg等の陽イオンの一部または全部を溶出させることができる。
酸処理で用いられる酸としては、塩酸、硝酸、硫酸などが挙げられるが、好ましくは無機酸、特に好ましくは硫酸である。
酸処理条件に特に制限はないが、好ましくは5〜50重量%の酸の水溶液を60〜100℃の温度で1〜24時間反応させるような条件であり、その途中で酸の濃度を変化させてもよい。酸処理した後、通常洗浄が行われる。洗浄とは処理系内に含まれる酸をイオン交換性層状珪酸塩から分離除去する操作である。
【0035】
塩類処理で用いられる塩類としては、特定の陽イオンを含有するものを選択して使用することが好ましい。陽イオンの種類については1から4価の金属陽イオンが好ましく、特にLi、Ni、Zn、Hfの陽イオンが好ましい。
具体的な塩類としては、次のものを例示することができる。
陽イオンがLiのものとしては、LiCl、LiBr、LiSO、Li(PO)、Li(ClO)、Li(C)、LiNO、Li(OOCCH)、Li(C)等を挙げることができる。
陽イオンがNiのものとしては、NiCO、Ni(NO、NiC、Ni(ClO、NiSO、NiCl、NiBr等を挙げることができる。
陽イオンがZnのものとしては、Zn(OOCH、Zn(CHCOCHCOCH、ZnCO、Zn(NO、Zn(ClO、Zn(PO、ZnSO、ZnF、ZnCl、ZnBr、ZnI等を挙げることができる。
陽イオンがHfのものとしては、Hf(OOCCH、Hf(CO、Hf(NO、Hf(SO、HfOCl、HfF、HfCl、HfBr、HfI等を挙げることができる。
【0036】
化学処理後は、乾燥を行うが、一般的には、乾燥温度は100〜800℃で実施可能であり、構造破壊を生じるような高温条件(加熱時間にもよるが、例えば800℃以上)は好ましくない。構造破壊されなくとも乾燥温度により特性が変化するために、用途に応じて乾燥温度を変えることが好ましい。乾燥時間は、通常1分〜24時間、好ましくは5分〜4時間であり、雰囲気は乾燥空気、乾燥窒素、乾燥アルゴン、または減圧下である。乾燥方法に関しては特に限定されず各種方法で実施可能である。
【0037】
・成分[C]有機アルミニウム化合物
成分[C]の有機アルミニウム化合物は、必要に応じて任意的に使用される成分であり、下記一般式[II]で示される化合物が適当である。
(AlR3−p・・・[II]
式[II]中、Rは、炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Xは、ハロゲン、水素、アルコキシ基、アミノ基を示す。pは1〜3の、qは1〜2の整数である。
としては、アルキル基が好ましく、またXは、それがアルコキシ基の場合には炭素数1〜8のアルコキシ基が、アミノ基の場合には炭素数1〜8のアミノ基が好ましい。
これらのうち、好ましくは、p=3、q=1のトリアルキルアルミニウムおよびジアルキルアルミニウムヒドリドである。さらに好ましくは、Rが炭素数1〜8であるトリアルキルアルミニウムである。
【0038】
有機アルミニウム化合物は、単独又は複数種混合して、あるいは併用して使用することができる。また、有機アルミニウム化合物は、触媒調製時だけでなく、予備重合あるいは本重合時にも添加して使用することができる。
【0039】
本発明に使用されるメタロセン触媒は、本重合が行われる前に予備重合処理することが望ましい。予備重合に供されるモノマーとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン等のα−オレフィン、1,3−ブタジエン等のジエン化合物、スチレン、ジビニルベンゼン等のビニル化合物を用いることができる。
この予備重合は、不活性溶媒中で穏和な条件で行うことが好ましく、固体触媒(成分[A]と成分[B]の合計)1gあたり、0.01〜1,000g、好ましくは0.1〜100gの重合体が生成するように行うことが望ましい。
【0040】
重合反応は、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、シクロヘキサン等の不活性炭化水素や液化α−オレフィン等の溶媒存在下、あるいは不存在下に行われる。本発明においては、固体触媒(固体触媒を予備重合処理した場合は、予備重合で生成した重合体を含まない。)当たりのポリマー生成量をできるだけ大きくすることが望ましい。ポリマー生成量を大きくするために、重合温度、重合圧力はいずれも高めに設定することが望ましい。
【0041】
通常、重合温度は60〜90℃、重合圧力は1.5〜4MPa程度から選択される。特に、バルク重合の場合、重合温度は60〜80℃で、重合圧力は温度と相関して2.5〜4MPa程度から選択することが好ましい。一方、気相重合の場合は、重合温度は70〜90℃で、1.5〜4MPa程度から選択することが好ましい。
さらに、固体触媒の滞留時間を長くすることによっても、固体触媒当たりのポリマー生産量を上げることが可能であるが、あまり長くし過ぎると生産性に影響を与える。好ましい滞留時間は、1〜8時間、さらに好ましくは1〜6時間である。担体を含めた固体触媒1gあたりのポリマー生産量は20kg以上、好ましくは25kg以上、さらに好ましくは30kg以上となるように、重合条件を設定することが望ましい。
また、重合系内に分子量調節剤として水素を存在させてもよい。更に、重合温度、分子量調節剤の濃度等を変えて多段階で重合させてもよい。
【0042】
本発明においては、重合終了後、得られたポリプロピレン系樹脂を、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの不活性飽和炭化水素溶剤や液状α−オレフィンなどを用いて、さらに好ましくは炭素数3または4の不活性炭化水素溶剤や液状α−オレフィンを用いて、洗浄を行うことが好ましい。
洗浄方法としては、特に制限はなく、撹拌槽での接触処理後上澄みのデカンテーション、向流洗浄、サイクロンによる洗浄液との分離など、公知の方法を用いることができる。
また、洗浄前あるいは洗浄と同時に、失活剤を添加してもよい。失活剤に関しては、特に制限はなく、水、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類など、あるいはこれらの混合物を用いることができる。
【0043】
・ポリプロピレン系樹脂の特性
ポリプロピレン系樹脂の融点Tは150℃以上であることが好ましい。融点はポリプロピレン系樹脂の剛性や結晶性の尺度となり、ポリプロピレン系樹脂の融点が150℃を下回ると結晶性が低いために成形体表面から揮発性成分が流出することを抑制できず、揮発性成分が増加することから好ましくない。融点の制御は、ポリプロピレン樹脂を製造する触媒、プロピレンと共重合する成分の割合により行うことが可能である。
【0044】
・造核剤
本発明のポリプロピレン系樹脂において、造核剤を、造核剤からの揮発性成分や金属成分の溶出が問題とならない範囲で、使用可能である。
【0045】
造核剤としては、立体障害性アミド化合物、有機ジカルボン酸金属塩、有機モノカルボン酸金属塩、ポリマー核剤、有機燐酸エステル金属塩、ジベンジリデンソルビトールもしくはその誘導体、ジテルペン酸類の金属塩等が使用される。
【0046】
・酸化防止剤
ポリプロピレン系樹脂には、各種フェノール系酸化防止剤が使用可能である。具体的には、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(ブチレ−テッドヒドロキシトルエン)、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト]メタン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレ−ト、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンを好ましく挙げることができる。
本発明の効果を阻害しない範囲で、他の酸化防止剤を併用することも可能であるが、リン、硫黄を含む酸化防止剤を使用すると、含まれるリン、硫黄が内容物に対し悪影響を及ぼし、製品性能を損なう可能性があるため望ましくない。
【0047】
フェノール系酸化防止剤の好ましい添加量は、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対し、0.03〜0.2重量部の範囲である。フェノール系酸化防止剤の添加量が0.03重量部未満であると、熱によるポリプロピレンの劣化を防止できず、揮発性成分量が増加するため不適である。フェノール系酸化防止剤の添加量が0.2重量部を超えると、酸化防止剤に由来するアウトガスの発生が懸念され、製造費用が高くなり、製品の色合いが悪化する懸念があるため不適である。また、配合量が多くなれば、ブルーミングにより、半導体内容物を直接汚染するばかりでなく、揮発性成分として認識される場合も有り得るので注意を要する。
【0048】
また、フェノール系酸化防止剤の添加量(重量部)の下限は、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対し、下記式を満足するように調整されていることが望ましい。
3×10−3B−0.67
(但し、単位は重量部、Bは成形温度(℃)である。また、0.03未満の値は、0.03とする。)
これは、射出成形において、電気電子機器部品搬送ケースを得る際、該ケースが大きいものや薄肉のもの、複雑な形状の場合、成形温度を高くする必要がある。しかし、成形温度が高温であるほど熱劣化は促進され、揮発性成分が増加するため、フェノール系酸化防止剤は多く必要となる。反面、フェノール系酸化防止剤を多く加えるほど、色相は悪化する。そこで、製品の実用上要求される成形性、揮発性成分量および色相を考慮したときに、上記式で表されるフェノール系酸化防止剤の添加量が最も効果的となる。なお、ここで成形温度は、(射出)成形機のシリンダー設定温度をさす。
【0049】
・その他の成分
本発明のポリプロピレン系樹脂には、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、他の付加的任意成分を配合することもできる。このような任意成分としては、帯電防止剤、防曇剤、金属不活性剤、紫外線吸収剤、分散剤、充填剤、難燃剤、着色剤、顔料、蛍光増白剤等を挙げることができる。
【0050】
・搬送ケースの成形方法
本発明のポリプロピレン系樹脂を用いて電気電子機器部品搬送ケースを製造するには、ポリプロピレン系樹脂に、必要により上述した添加剤を含有したポリプロピレン系樹脂組成物としたものを、公知の方法で射出成形等により所望形状のケースに成形する。搬送ケースとは、各種マガジン、トレイ、ボックス、容器等を含む。
なお、ここで電気電子機器部品とは、特に限定されないが、例えば、シリコンウエハー、ハードディスク、サファイアウェハ、ディスク基板、ICチップ、光磁気ディスク(MO)、DVD、BD、各種メモリー、LCD用高機能基板ガラス、LCDカラーフィルター、ハードディスク用磁気抵抗ヘッド、CCD、CCDデバイス、光学機器半導体部品等の各種電気電子機器用の部品をいう。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例及び比較例を挙げて、詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定して解釈されるものではない。
なお、以下の実施例、比較例において、重合体の物性測定は下記の方法に従ったものである。
【0052】
(1)メルトフローレート(MFR):
JIS−K6921−2:1997付属書(230℃、21.18N荷重)に準拠して測定した。
【0053】
(2)融点(T):
セイコー社製示差走査熱量分析装置(DSC6200)を用い、サンプル量は5.0mgを採り、200℃で5分間保持した後、40℃まで10℃/分の降温スピードで結晶化させた後に1分間保持し、さらに10℃/分の昇温スピードで融解させたときの融解最大ピーク温度で評価した。
【0054】
(3)エチレン含有量:
エチレンコモノマー由来のポリマー中のエチレン単位含有量(単位:重量%)は、得られたペレットをプレスし、シート状に成形したものをIR法により測定した。具体的には730cm−1付近に観測されるメチレン鎖由来ピーク高さから算出した。
【0055】
(4)揮発性成分量:
直径2〜4mm×長さ2〜4mmの円柱状ペレット試料200mgをGERSTEL社製TDS管に充填、TDS管をGERSTEL社製TDS−A装置に挿入し、ヘリウムガスを53.9ml/分の流速で流しながら100℃で30分間加熱し、加熱時間中、ガスはTENAXを充填したGERSTEL社製CIS4に導入され、CIS4を−150℃に冷却することにより試料より発生した揮発成分を捕集した。
捕集された成分は320℃まで急速に加熱気化させることにより、ガスクロマトグラムに導入した。導入されたガスは次の条件でガスクロマトグラム/質量分析法で測定した。
装置:HP6890
カラム:DB−5ms 0.25mm×30m
温度:40℃×5分→10℃/分〜300℃×15分
検出器:HP5973N
炭化水素量の定量は、n−ヘプタンを溶媒として、濃度が1、5及び10μg/mlの炭素数20の脂肪族直鎖飽和炭化水素を、試料と同条件で測定を行い、ガスクロマトグラム/質量分析法で測定し、検量線を作成し、定量は炭素数20の脂肪族直鎖飽和炭化水素換算で行った。
【0056】
(5)曲げ弾性率:
JIS K7203の「硬質プラスチックの曲げ試験方法」に準拠して23℃で測定した。
【0057】
(6)最小冷却時間:
住友重機械社製SG220HD成形機を用い、射出成形にてシリンダー温度を220℃、金型温度を20℃とし、厚さ0.7mm、内径61mm、深さ105mmの搬送ケースの模型を20個連続成形する際、模型の座屈、変形が生じない最小の冷却時間を計測した。
【0058】
(7)製品性能
閉じた搬送ケース模型内にガラス板を設置して、常温で半年間養生した後、ガラス板の汚染状況を目視で観察した。次の基準で良し悪しを判断する。
○:全く汚染なし ×:曇りが確認できる。
【0059】
(製造例1)
(1)触媒の調製
以下の操作は、不活性ガス下、脱酸素、脱水処理された溶媒、モノマーを使用して実施した。
(i)メタロセン化合物の合成
(r)−ジクロロ〔1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}〕ハフニウムの合成は、特開平11−240909号公報の実施例1に記載の方法に準じて行った。
(ii)イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
撹拌翼と還流装置を取り付けた5Lセパラブルフラスコに、純水1,700gを投入し、98%硫酸500gを滴下した。さらに、そこへ市販の造粒モンモリロナイト(水澤化学社製、ベンクレイSL、平均粒径:19.5μm)を300g添加後撹拌した。その後、90℃で2時間反応させた。このスラリーをヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて洗浄した。回収したケーキに硫酸リチウム1水和物325gの水900ml水溶液を加え90℃で2時間反応させた。このスラリーをヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて、pH>4まで洗浄し、回収したケーキは120℃で終夜乾燥した。その結果、270gの化学処理体を得た。その後、2Lフラスコに全量投入し、200℃にて6時間減圧乾燥を行った。
(iii)固体触媒の調整
内容積13リットルの撹拌機の付いた金属製反応器に、上記で得た乾燥珪酸塩0.223kgとヘプタン1.45リットルの混合物を導入し、さらにトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M)0.79リットルを加え、系内温度を25℃に維持した。1時間の反応後、ヘプタンにて十分に洗浄し、珪酸塩スラリーを2.0リットルに調整した。
(iv)予備重合触媒の調整
上記スラリーにトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M)を9.5ミリリットル加えて10分間撹拌した。さらに予め(r)−ジクロロ〔1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}〕ハフニウム2.73gにヘプタン0.55リットルを添加した混合物を導入して、室温にて1時間反応させた後、ヘプタンを追加し5.6リットルに調整した。続いて、温度40℃にてプロピレンを111.8g/時間の速度で供給し、4時間予備重合を行った。さらに1時間、後重合をした。
予備重合終了後、残モノマーをパージし、触媒をヘプタンにて十分に洗浄した。続いて、トリイソブチルアルミニウム(0.71M/L)のヘプタン溶液95ミリリットル添加した後、40℃で減圧乾燥を行った。この操作により、乾燥珪酸塩1g当たりポリプロピレンが1.94g含まれる予備重合触媒0.656kgを得た。
【0060】
(2)ポリプロピレン系樹脂の製造
内容積200リットルの撹拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分に置換した後、液化プロピレン45kgを導入した。これにトリイソブチルアルミニウム・n−ヘプタン溶液470ml(0.11mol)、水素4.0L(標準状態の体積として)を加え、内温30℃に維持した。次いで、上記予備重合触媒2.26gをアルゴンで圧入して重合を開始し、48分を掛けて70℃に昇温した。重合温度を70℃に維持し、2.0時間経過後、エタノール100mlを添加して反応を停止、残ガスをパージした。得られた重合体の固体触媒1g当たりの収量は16.9kgであった。
【0061】
(製造例2)
(1)ポリプロピレン系樹脂の製造
内容積200リットルの撹拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分に置換した後、液化プロピレン45kgを導入した。これにエチレン0.09kg、トリイソブチルアルミニウム・n−ヘプタン溶液470ml(0.11mol)、水素4.1L(標準状態の体積として)を加え、内温30℃に維持した。次いで、上記予備重合触媒2.94gをアルゴンで圧入して重合を開始し、35分を掛けて70℃に昇温した。重合温度を70℃に維持し、2.0時間経過後、エタノール100mlを添加して反応を停止、残ガスをパージした。得られた重合体の固体触媒1g当たりの収量は20.3kg、エチレン含量=0.33wt%であった。
【0062】
(製造例3)
(1)触媒の調製
(i)メタロセン化合物の合成として、特開平11−240909号公報の実施例3に記載の方法に準じて合成を行った(r)−ジメチルシリレンビス[2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル]ジルコニウムジクロリドを用いたこと以外は製造例1(1)に準じて予備重合触媒の調整を行った。
【0063】
(2)ポリプロピレン系樹脂の製造
内容積270Lの攪拌装置付き液相重合槽、内容積400Lの失活槽、スラリー循環ポンプ、循環ライン液力分級器、濃縮器、向流ポンプおよび洗浄液受け槽からなる失活洗浄システム、二重管式熱交換器と流動フラッシュ槽からなる高圧脱ガスシステム、さらに低圧脱ガス槽および乾燥器などを含む後処理系を組み込んだプロセスにより、プロピレン−エチレン共重合体の連続製造を実施した。
上記で製造した予備重合触媒を流動パラフィン(東燃社製商品名「ホワイトレックス335」)に濃度15重量%で分散させて、触媒成分として0.35g/時間で液相重合槽に導入した。さらに、この重合槽に液状プロピレンを40kg/時間、エチレンを0.4kg/時間、水素を0.25g/時間、トリイソブチルアルミニウムを18g/時間で連続的に供給し、内温を70℃に保持し、重合を行った。液相重合槽からポリマーと液状プロピレンの混合スラリーをポリマーとして12.0kg/時間となるように失活洗浄槽に抜き出した。このとき重合槽の触媒の平均滞留時間は、1.3時間であった。失活洗浄槽には、失活剤としてエタノールを21.0g/時間で供給した。さらに液状プロピレンを40kg/時間供給し、ジャケットによる加熱で内温を50℃に保った。ポリマーは分級器の下部から高圧脱ガス槽へ抜き出し、さらに低圧脱ガス槽を経て、乾燥器で乾燥を行った。乾燥器の内温80℃、滞留時間が1時間となるように調整し、さらに室温の乾燥窒素をパウダーの流れの向流方向に12m/時間の流量で流した。乾燥後のポリマーは、ホッパーから取り出した。
一方、分級器、濃縮器を経て、ポリマーと分離された液状プロピレンは、40kg/時間で洗浄液受け槽に抜き出した。得られた重合体の固体触媒1g当たりの収量は34.3kg、エチレン含量=0.75wt%であった。
【0064】
(製造例4)
(1)固体生成物の製造
n−ヘキサン6L、ジエチルアルミニウムモノクロリド(以下、「DEAC」)5.0mol、ジイソアミルエーテル12.0molを25℃で1分間混合し、5分間同じ温度で反応させて反応生成液(I)を得た。窒素置換した反応器に四塩化チタン40molを入れ、35℃に加熱し、これに上記反応生成液(I)全量を30分間掛けて滴下した。その後同温にて30分間保ち、更に75℃に昇温した後1時間反応させた。所定時間後、室温まで冷却しその上澄み液を除去した。次いで、n−ヘキサン40Lを加えてデカンテーションで上澄み液を除く操作を4回繰り返し固体生成物(II)1800gを得た。この(II)の全量をn−ヘキサン30L中に懸濁させた状態で、20℃にてジイソアミルエーテル1800gと四塩化チタン3500gを室温において1分間掛けて加え85℃で1時間反応させた。反応終了後、室温(20℃)まで冷却し、上澄み液をデカンテーションによって除いた後、40Lのn−ヘキサンを加え10分間撹拌・静置して上澄み液を除く操作を5回繰り返した後、減圧下で乾燥させ固体生成物(III)1700gを得た。
(2)予備重合触媒の製造
容積3Lの電磁撹拌機付ガラス容器を窒素ガスで置換し、窒素気流下に精製n−ヘキサン2Lを仕込み、固体生成物(III)を三塩化チタン分として20.0g、DEAC1.56gおよびジエチレングリコールジメチルエーテルとDEACとの同モル反応物を対固体生成物(III)モル比として0.007の割合で添加し触媒分散液を調整した。次いで、一段目予備重合処理としてプロピレンモノマー10.0gを30℃に保持した触媒分散液に2時間掛けて吹き込み吸収させた。次に、二段目予備重合処理として、硫化カルボニルの濃度が10,000ppmのプロピレンモノマー混合ガス、20.0gを同じく30℃に保持した触媒分散液に4時間掛けて吹き込み吸収させて予備重合触媒を得た。
(3)ポリプロピレン系樹脂の製造
容量50Lの電磁撹拌付ステンレス製オートクレーブを窒素ガスで置換し、窒素気流下に精製n−ヘキサン23Lを仕込み、予備重合触媒100ml(三塩化チタン分として1.00g、DEAC78mgを含む)に、DEAC6.24gを加えた。次に水素を目標のMFRとなるように所定量仕込み、70℃に昇温後、プロピレンを10kg/cmGとなるまで圧入し、温度・圧力が一定となるよう保持して4時間重合を行った。時間になったらプロピレンの供給を停止し、メタノール3Lを器内に圧入して触媒を失活させ未反応のプロピレンはパージ後、重合懸濁液から常法に従って重合体とアタクチックポリプロピレンとに分離回収した。得られた重合体の固体触媒1g当たりの収量は5.0kgであった。
【0065】
(実施例1)
(1)樹脂組成物の製造
製造例1で得られたメタロセン触媒によるポリプロピレン系樹脂パウダー100重量部に対して、フェノール系酸化防止剤のペンタエリスチル−テトラキス[3−(3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](BASF社製商品名「IRGANOX 1010」)0.03重量部を添加し、スーパーミキサーで窒素シール後、3分間混合した。その後、パウダーは東芝機械社製2軸押出機(TEM35)を用い、ホッパーを窒素シールしながら、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数150rpm、押出量15kg/時間で造粒し、ポリプロピレン系樹脂組成物のペレットを得た。
このペレットを用い、MFR、融点、揮発性成分量、曲げ弾性率、最小冷却時間の測定、製品性能の評価を実施した。得られた結果を表1に示す。
【0066】
(実施例2)
製造例2で得られたメタロセン触媒によるポリプロピレン系樹脂パウダーを用いること以外は実施例1と同様にしてポリプロピレン系樹脂組成物のペレットを得た。このペレットを用い、融点、揮発性成分量、曲げ弾性率、最小冷却時間の測定、製品性能の評価を実施した。得られた結果を表1に示す。
【0067】
(比較例1)
製造例3で得られたメタロセン触媒によるポリプロピレン系樹脂パウダーを用いること以外は実施例1と同様にしてポリプロピレン系樹脂組成物のペレットを得た。このペレットを用い、融点、揮発性成分量、曲げ弾性率、最小冷却時間の測定、製品性能の評価を実施した。得られた結果を表1に示す。
【0068】
(比較例2)
製造例4で得られたチーグラー系触媒によるポリプロピレン系樹脂パウダーを使用する以外は実施例1と同様にしてポリプロピレン系樹脂組成物のペレットを得た。このペレットを用い、融点、揮発性成分量、曲げ弾性率、最小冷却時間の測定、製品性能の評価を実施した。得られた結果を表1に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
上記表1の結果から、式1を満足するポリプロピレン系樹脂を用いた実施例1、2では、最小冷却時間が小さな値となっていて生産性が良好であることがわかる。また揮発性成分も5ppm以下の値であり、電気電子機器部品搬送ケースに好適である。
これに対して、比較例1では曲げ弾性率が小さいことから電気電子機器部品搬送ケースに用いた場合、内容物の重量によりたわみが生じる恐れがある。最小冷却時間も大きな値となり、生産性が良くないと判断される。以上の事柄より、電気電子機器部品搬送ケースに不適である。比較例2は、融点高い割に最小冷却時間は長く、また、揮発性成分量が極めて多く、電気電子機器部品搬送ケースに不適である。
本発明のプロピレン系樹脂組成物を用い製造された電気電子機器部品搬送用ケースは、揮発性成分量が非常に少ないプロピレン系樹脂から射出成形で成形されているので、従来のケースと比べ極めて内容物の汚染が生じにくく、高集積回路用半導体等の搬送に有効に用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明のポリプロピレン系樹脂は、射出成形等により電気電子機器部品搬送ケースに整形され、得られる電気電子機器部品搬送ケースは、搬送の際にも性能低下を起こさないクリーン性に優れた、生産性の高い搬送ケースであるので、電気電子機器部品の歩留まり、搬送及び保管中における品質の低下を防止できるので、産業上の利用性は非常に高いものがある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性成分量A(単位はppm)と融点T(単位は℃)が下記式1を満足し、かつ揮発性成分量Aが10ppm以下であることを特徴とする電気電子機器部品搬送ケース用ポリプロピレン系樹脂。
式1 A≦0.67×T−97
【請求項2】
融点Tが150℃以上であることを特徴とする請求項1に記載の電気電子機器部品搬送ケース用ポリプロピレン系樹脂。
【請求項3】
曲げ弾性率が1300MPa以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の電気電子機器部品搬送ケース用ポリプロピレン系樹脂。
【請求項4】
ハフニウムを中心金属とするメタロセン触媒を用い製造されたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電気電子機器部品搬送ケース用ポリプロピレン系樹脂。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の電気電子機器部品搬送ケース用ポリプロピレン系樹脂を射出成形してなる電気電子機器部品搬送ケース。

【公開番号】特開2013−40304(P2013−40304A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179406(P2011−179406)
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【出願人】(596133485)日本ポリプロ株式会社 (577)
【Fターム(参考)】