説明

電池の内部短絡検査方法

【課題】電池の電圧変化に基づいて高い信頼性のもとに電池の内部短絡の有無を検査することのできる電池の内部短絡検査方法を提供する。
【解決手段】複数の電池110s、110a〜110eの一方の電極を互いに同極同士で電気的に接続するとともに、それら複数の電池の一つを基準としてこの基準とする電池110sとそれ以外の電池110a〜110eとの互いに開放された他方の電極間での電圧差を測定し、この測定した電圧差に基づいて基準とする電池110s以外の電池110a〜110eの内部短絡の有無を検査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池内部での微小短絡の有無を検査する電池の内部短絡検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記検査対象とする電池、例えばマンガン乾電池やアルカリ乾電池等の一次電池をはじめ、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池等の二次電池(蓄電池)に代表される密閉型電池は、通信機器やOA機器といったポータブル機器用の電源として幅広く用いられている。また、特にニッケル水素電池やリチウムイオン電池等の二次電池は、電気自動車用電池、ハイブリッド自動車用電池、あるいは夜間電力貯蔵用電池としても用いられており、より大容量、高出力であるとともに、長期間の放置でも容量低下や内部抵抗の上昇が少ないなどの特性が要求されている。
【0003】
そして、これらの電池の多くは、正極と負極とをセパレータにより隔離してこれらを渦巻き状に捲回した、あるいは正極と負極とを隔離するようにセパレータを配して積層した電極群を金属製もしくは樹脂製のケースに挿入後、ケース内に電解液を注入し、封口板でケースの上部を密閉することによって製造される。
【0004】
このようにして製造される電池は、正極、負極の電極間が非常に薄いセパレータによって隔離されているため、電極群を作成する際に、電極の切断面のバリや活物質の脱落物などがセパレータを突き破って電極間を微小短絡させることがある。また、活物質材料の製造工程中に金属不純物や電池製造設備の金属摩耗くずなどが正極に混入した場合には、充電時に正極の電位によってそれらが電気化学的に溶解され、電解液中を拡散して負極に到達し、負極の電位でデンドライト析出して電極間を微小短絡させることがある。このように正極、負極が内部で微小短絡した電池は、充電後しばらく放置すると放電容量が大きく低下してしまうため、製造段階でこのような電池を選別する必要がある。また、ニッケル水素蓄電池やリチウムイオン蓄電池は通常、数セル〜数十セル、多い場合には数百セルを直列に接続した組電池で使用されることが多く、その組電池中に1セルでも内部短絡した電池が含まれていた場合には、放置によって1セルだけ放電容量が下がったり、電圧が下がったりするため、使用中に1セルだけ過放電や逆充電の状態になることがあり、電池の安定性という点からも好ましくない。
【0005】
そこで従来は、例えば特許文献1に見られるように、初回充電前の二次電池の電極間に電流を通電し、通電中、並びに開放後の電極間の電圧の経時変化をそれぞれ計測することで二次電池内部の微小短絡の有無を検出するようにしている。すなわち、電極間が内部短絡していない場合は、通電により電圧が上昇または下降し、開放後に若干復元する。一方、電極間が内部短絡している場合は、通電された電流の一部が短絡部分を通過するため、電圧の変化速度が遅くなり、内部短絡の程度が大きい場合には電圧が一定値から変化しなくなる。また、電流を通電させたのちに電極を開放した場合には、短絡部を通じて放電するため、経時的に電圧が最初の値へと復元していく。このように、電圧の経時変化を計測することにより、電池の内部短絡の有無を判別するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−28690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、こうした電圧の経時変化を計測する際には、電池の出力電圧に合わせて計測器(電圧計)のレンジを設定する必要がある。このため、電池の電圧に比べて相対的に微小な電圧の経時変化を計測するには、その計測精度の低下が免れない。また、上記各電池は、短絡電流とは別に自己放電電流を発しており、特にリチウム電池にあっては、自己放電が小さいものの時間あたりの電圧変化も小さいため、この自己放電も考慮して内部短絡の有無を検査する必要がある。このような実情から、電圧の経時変化に基づいて電池の内部短絡の有無を正確に判別することは困難であり、その検査にかかる信頼性も自ずと低いものとなる。
【0008】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、電池の電圧もしくは電流の計測に基づいて高い信頼性のもとに電池の内部短絡の有無を検査することのできる電池の内部短絡検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、正極と負極とを有する電池の内部短絡の有無を検査する電池の内部短絡検査方法であって、複数の電池の一方の電極を互いに同極同士で電気的に接続するとともに、該複数の電池の一つを基準とし、基準とする電池と基準とする電池以外の電池との互いに開放された他方の電極間での電圧もしくは電流を計測し、該計測した電圧もしくは電流に基づいて前記基準とする電池以外の電池の内部短絡の有無を検査することを要旨とする。
【0010】
前述のように、電池に生じる内部短絡に起因する電圧変化は通常、電池の出力電圧に比べて相対的に微小なものとなる。また、電池自体の自己放電による電圧の低下も生じるため、これを除外してこの内部短絡による電圧変化、すなわち電圧の低下を検査する必要がある。この点、上記検査方法によるように、正極と負極とを有する複数の電池の一方を同極同士で電気的に接続する、すなわち検査対象とする電池の一方の電極を並列に接続して基準とする電池とそれ以外の電池との互いに開放された他方の電極間での電圧もしくは電流を測定すれば、検査対象とする電池自体の電圧及び自己放電が相殺され、電池の内部短絡に起因する電圧変化もしくは電流変化のみを計測することができるようになる。これにより、計測器(電圧計、電流計)により電池の内部短絡の有無を検査する上で、同計測器のレンジを内部短絡に起因して変化する電圧もしくは電流に合わせて設定することができ、ひいては、複数の電池の内部短絡の有無を高い信頼性のもとに検査することができるようになる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電池の内部短絡検査方法において、前記計測の対象が前記電圧であり、前記基準とする電池と基準とする電池以外の電池との間での電圧差に対して許容できる内部短絡の度合いを判定するための判定値を設け、前記計測した電圧差が該判定値を超える電池を不良品として判別することを要旨とする。
【0012】
電池に内部短絡が生じた場合は、その度合いに応じて電池の電圧が低下するようになる。すなわち、内部短絡の度合いが軽度であるほど電池の電圧低下は小さく、内部短絡の度合いが重度であるほど電池の電圧低下は大きくなる。一方、電池に内部短絡が生じていない場合には、自己放電による電圧低下しか生じないため同電池の電圧低下は微小なものとなる。そこで例えば、内部短絡が生じていない電池(良品)を上記基準とする電池とし、この電池と内部短絡が生じている電池との電圧差を測定するようにすれば、これら電池間の電圧差は自ずと拡大されるようになる。このため、同検査方法によるように、この電圧差に対して上記判定値を設け、計測した電圧差がこの判定値を超える電池を許容できない内部短絡の生じた不良品として判別するようにすれば、こうした不良品の判別を簡便に行うことができるようになる。なお、これら電圧差は時間とともに拡大されるため、電池の
初回充電後、所定の時間を置いたのちに検査することで、その検査精度をさらに高めることができるようにもなる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の電池の内部短絡検査方法において、前記電圧差を単位時間当たりの電圧変化量として計測することを要旨とする。
上述のように、電池に内部短絡が生じた場合にはこの電池の短絡部を通じた放電が起こるため、電池の出力電圧も経時的に低下するようになる。そして、この電圧の単位時間あたりの変化量は、電池の内部短絡の度合いが大きいほど大きくなり、電池の内部短絡の度合いが小さいほど、また内部短絡が生じていない場合ほど小さくなる。このため、同検査方法によるように、上記電圧差を単位時間当たりの電圧変化量として測定することとすれば電池の内部短絡の有無をより的確に判別することができるようになる。なお、この場合にも、内部短絡が生じた電池と内部短絡が生じていない電池との電圧差は時間とともに拡大されることから、微小な内部短絡を検査する上では、単位とする時間を長くとるほどその検査精度を高めることができるようになる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の電池の内部短絡検査方法において、前記計測の対象が前記電流であるとともに、前記基準とする電池を含めて同極同士で電気的に接続する複数の電池が3個以上の電池からなって前記基準とする電池以外の2個以上の電池に対する前記検査を同時実行するものであり、記計測した電流の方向を検出し、前記基準とする電池の電流の方向と異なる方向に電流が流れる電池を不良品として判別することを要旨とする。
【0015】
基準とする電池と検査対象とする複数の電池との間で流れる各電流は、内部短絡に起因して相対的に電圧が低下した電池とその他の電池との電圧差によって、内部短絡の生じた電池に向かって流れ込むようになるために、基準とする電池を流れる電流の方向と内部短絡の生じている電池を流れる電流の方向とが異なるようになる。これにより、検査対象とする電池を流れる電流の方向のみに基づいて電池の内部短絡の有無を検査することができるようになり、ひいては、電池の内部短絡の検査をより容易に行うことができるようになる。
【0016】
また、上記方法によれば、2個以上の電池を同時に検査対象とすることができ、特に、こうした2個以上の電池を同時に検査対象として上記検査を同時実行することで、その検査効率が大幅に高められ、ひいては、こうした検査を含む電池の生産性も向上されるようになる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の電池の内部短絡検査方法において、前記基準とする電池の電流の方向と異なる方向に流れる電流に対して許容できる内部短絡の度合いを判定するための判定値を設け、前記基準とする電池の電流方向と異なる方向に電流が流れてかつ、該電流値が前記判定値を超える電池を不良品として判別することを要旨とする。
【0018】
各電池を流れる電流値は、各電池間の電圧差に応じて変化するものであり、各電池間の電圧差が大きいほどこれに比例して大きくなる一方、各電池間の電圧差が小さいほどこれに比例して小さくなる。そして、各電池を流れる電流は、各電池のうち最も電圧の低い単電池に向かって流れるものであり、上記検査対象とする電池に内部短絡が生じていない場合であっても、検査対象とする電池のうち最も電圧の小さい電池に向かって微小な電流が流れ込むことも生じ得る。この点、上記方法によるように、基準とする電池の電流方向と異なる方向に電流が流れてかつ、その電流値が上記判定値を超える電池のみを不良品として判定することとすれば、例えば「良品」を「不良品」として誤判定することもなく、各電池間を流れる電流に基づいて電池の内部短絡の有無を検査する上で、その検査精度をさ
らに高めることができるようにもなる。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の電池の内部短絡検査方法において、前記基準とする電池を含めて同極同士で電気的に接続する複数の電池は同一仕様の二次電池であり、前記検査に先立ち、全ての電池を同一SOCになるまで充電することを要旨とする。
【0020】
一般に、二次電池はSOC(充電状態:標準容量に対する充電量の割合)に応じてその電池の出力電圧も異なるようになる。そこでこの検査方法のように、電池の内部短絡検査に先立って全ての電池を同一のSOCにしておくこととすれば、検査対象とする電池を同一の条件のもとに検査することができるようになり、ひいては電池の内部短絡の検査精度を高めることができるようになる。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の電池の内部短絡検査方法において、前記基準とする電池を含めて同極同士で電気的に接続する複数の電池として同一ロットにて生産された電池を用いることを要旨とする。
【0022】
上記検査対象とする電池は、同一の仕様のものであっても少なからず個体差が生じることがある。この点、同検査方法によるように、検査対象とする電池を同一ロットで生産された電池とすれば、これら電池間の個体差を最小とすることができ、これら電池間の内部短絡に起因する電圧差のみをより高い精度のもとに測定することができるようになる。
【発明の効果】
【0023】
本発明にかかる電池の内部短絡検査方法によれば、計測器(電圧計、電流計)により電池の内部短絡の有無を検査する上で、複数の電池の内部短絡の有無を高い信頼性のもとに検査することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明にかかる電池の内部短絡検査方法の各実施の形態において検査の対象とする角形密閉式電池を側面方向から見た部分断面図。
【図2】第1の実施の形態にかかる内部短絡検査方法について、その検査回路の構成例を示すブロック図。
【図3】同実施の形態にかかる内部短絡検査方法による検査態様を示すグラフ。
【図4】第2の実施の形態にかかる内部短絡検査方法について、その検査回路の構成例を示すブロック図。
【図5】同実施の形態にかかる内部短絡検査方法による検査態様を示すグラフ。
【図6】電池の内部短絡検査方法の他の例について、その検査回路の構成例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1の実施の形態)
以下、本発明にかかる電池の内部短絡検査方法の第1の実施の形態について図1〜図3を参照して説明する。
【0026】
本実施の形態において検査対象とする電池は、複数のニッケル水素蓄電池(単電池)を電気的に直列接続することによって構成される角形の密閉式電池である。本実施の形態ではまず、こうした角形密閉式電池を組み立てたのちに、同角形密閉式電池を構成する各単電池に対し同一の条件のもとに活性化処理を実施する。そして、内部短絡検査に先立ち、この活性化された各単電池を同一のSOC(充電状態:標準容量に対する充電量の割合)になるまで充電し、このSOCが同一となった各単電池に対して内部短絡検査を実施する

【0027】
ここで、本実施の形態において検査対象とする上記角形密閉式電池は、図1に側方から見た一部断面構造を示すように、例えばニッケル水素蓄電池からなる単電池110を構成する電槽130を隔壁120を介して複数連結したものが同じく角形の一体電槽100に収容された状態で、各電槽130の上面開口が蓋体200により一体に封止されている。そして、これら各電槽130内には、正極板と負極板とがセパレータを介して積層された極板群140とその両側に接合された集電板150、160とからなる発電要素が電解液とともに収容されている。ここで、上記極板群140の正極板及び負極板は互いに反対側の側部に突出されることで正極板及び負極板のリード部141a、141bが構成され、これらリード部141a、141bの側端縁にそれぞれ上記集電板150、160が接合されている。また、上記隔壁120の上部には各電槽130の接続に用いられる貫通孔170が形成されており、これら集電板150、160の上部に突設されている接続突部151、161同士がこの貫通孔170を介してスポット溶接により接続されることによって、各々隣接する電槽130が電気的に直列に接続される。なお、上記貫通孔170のうち、両端の電槽130の各々外側に位置するもの、すなわち一体電槽100の端側壁上方の貫通孔170には正極または負極の接続端子TMが装着されている。そして、それら接続端子TMと集電板150または160の接続突部151または161とがスポット溶接により接続されることによって、こうして直列接続された電槽130、すなわち複数の単電池110の総出力がこれら接続端子TMから取り出される。
【0028】
次に、このようなニッケル水素蓄電池を製造する各工程について、その一例を説明する。この製造工程は、大きくは、正極板、負極板、セパレータ及び電解液をケースに封入して電池を組み立てる組立工程(第1工程)と、この組み立てられた電池を活性化させるべく所定の条件のもとに充放電を行う第2工程〜第4工程からなる。
【0029】
まず、電池の組立工程(第1工程)においては、正極板や負極板、セパレータ、集電板150及び160等を有して構成される単電池を一体電槽100内で電気的に直列接続する(ここでは各接続突部151、161同士を仮接続)。次いで、各電槽内に水酸化カリウムを主成分とするアルカリ水溶液(電解液)を所定量注入したのちに、蓋体200で一体電槽100の開口を封止することによって、複数の単電池(ニッケル水素蓄電池)からなる例えば定格容量「6.5Ah」の角形密閉式電池の組み立てが完了する。
【0030】
次に、このようにして組み立てられたニッケル水素蓄電池に対し、各電極を活性化させるべく活性化工程を行う。
この活性化処理では、上記組み立てられた角形密閉式電池に対し、まず「0.05〜0.2C(1C=電池の定格容量/1時間)」の範囲内の電流で上記組み立てられた電池をSOC(充電状態)が「10〜30%」になるまで充電することによって、正極に含まれているコバルトを酸化させるとともに、過放電時の転極を防止する放電リザーブを負極に形成する(第2工程)。そして、この第2工程を経た電池を「0.2〜1C」の範囲内の電流で過充電したのちに、SOCが「10%」以下になるまで放電することで正極中の活物質を活性化させる(第3工程)。さらに、「0.2〜5C」の範囲内の電流でSOCが「60〜95%」になるまで充電したのちに、電池の電圧が「0.70〜1.05V」になるまで放電を行う充放電サイクルを複数回繰り返すとともに、この充放電サイクル時に「30〜60℃」の冷媒によって電池を冷却することにより、負極中の活物質を活性化する(第4工程)。
【0031】
そして、上記第4工程において、最後の充放電サイクルで各単電池の電圧が「1.0V」となるように調整し、角形密閉式電池の活性化処理を終了する。
本実施の形態では、このように内部短絡検査の対象とする単電池110を同一ロットで
組み立てることとし、この組み立てられた単電池110に対して同一の活性化処理を施し、内部短絡検査に先立ち同一のSOC(「1.0V」)とする。これにより、各単電池110の内部短絡を検査する上で、検査対象とする各単電池110の内部短絡を同一の条件のもとに検査することができるようになり、ひいては各単電池110の内部短絡の検査精度を高めることができるようになる。
【0032】
次に、このような角形密閉式電池を対象に実施される内部短絡の検査方法について説明する。
まず、上記製造された角形密閉式電池を構成する各単電池110のうち、電池の内部短絡検査に際して基準となる単電池110を選定する。この基準となる単電池110の選定に際しては、まず、上記製造された角形密閉式電池を構成する複数の各単電池110のうち任意の単電池110を選び、その単電池110が良品であるか否か、すなわち内部短絡が生じているか否かを判定する。なお、この判定も含め、以降の内部短絡検査に際しては、上記仮接続した各接続突部151、161間の電気的接続が一旦解除される。
【0033】
この良品判定では、上記選定された任意の単電池110に対して一定の電流を通電し、通電中の電圧の経時変化を計測する。そして、この計測される電圧値の経時変化が上記通電される電流の供給量に相関する場合には、この計測対象とされた単電池110を良品と判定し、この電池を基準電池110sとする。一方、上記計測される電圧の経時変化が、通電される電流の供給量を下回る場合には、この計測対象とされた電池に内部短絡が生じていると判定し、さらに他の単電池110を選定して、同じく内部短絡の有無を計測する。
【0034】
このようにして良品、すなわち内部短絡検査の実施に際して基準となる電池の判定が終了すると、次に、この良品と判定された電池110sを基準として内部短絡検査を行う。
この内部短絡検査に際しては、図2に示すように、まず、上記良品と判定された基準電池110sの負極と未検査の単電池110a〜110eの各負極とを、すなわち同極同士をリード線300によって互いに電気的に接続する。そして、基準電池110sの正極と未検査の各単電池110a〜110eの正極との間に、これら基準電池110sと未検査の各単電池110a〜110eとの各電圧差を計測すべく電圧計VM1〜VM5をリード線301〜305によって接続する。
【0035】
このようにして、基準電池110sと未検査の各単電池110a〜110eとの同極同士が電気的に接続された内部短絡検査の検査回路が構成される。なお、本実施の形態においては、これら基準電池110sと未検査の各単電池110a〜110eとの導通状態を切り替え可能とすべく、上記各電圧計VM1〜VM5と未検査の各単電池110a〜110eの正極との間にオン/オフ動作を切り替え可能なスイッチSw1〜Sw5を設ける。これにより、これら各スイッチSw1〜Sw5のオン/オフ動作に応じて、基準電池110sと未検査の各単電池110a〜110eとの電圧差Vsa〜Vseが電圧計VM1〜VM5を通じて各別に計測されるようになる。また、これら各電圧計VM1〜VM5には、その計測値を一括して取り組む検査装置TMG1が接続されており、この検査装置TMG1にて各電圧計VM1〜VM5の計測値が一括管理される。なお、各単電池110a〜110eに生じうる内部短絡に起因する電圧変化は、通常、各単電池110a〜110eの電圧(「1.0V」)よりも相対的に微小であることに鑑み、本実施の形態では、こうした内部短絡に起因して変化する各電圧差Vsa〜Vseを確実に検出すべく、各電圧計VM1〜VM5の計測レンジを例えば数mV〜数十mV程度の範囲で設定する。
【0036】
次に、こうして構成された検査回路によって未検査の単電池110a〜110eの内部短絡の有無を検査する。この検査では、まず、各スイッチSw1〜Sw5のオン/オフ状態が、検査装置TMG1を通じてスイッチSw1から順に例えば5秒毎に一時的にオン状
態とされることによって、オン状態とされたスイッチSw1〜Sw5に応じて電圧計VM1〜VM5により各電圧差Vsa〜Vseが計測され、これら計測されたVsa〜Vseの値が検査装置TMG1に取り込まれる。
【0037】
すなわち、まず、内部短絡検査の開始直後にスイッチSw1のみがオン状態とされることにより、基準電池110sと未検査の単電池110aとの電圧差Vsaが計測される。こうして基準電池110sと未検査の単電池110aとの電圧差Vsaの計測が終了するとスイッチSw1が再びオフ状態に維持される。次に、内部短絡検査の開始から5秒経過時にスイッチSw2のみがオン状態にされることにより、基準電池110sと未検査の単電池110bとの電圧差Vsbが計測され、再びスイッチSw2がオフ状態に維持される。
【0038】
その後は、同じく内部短絡検査の開始から10秒、15秒、20秒の経過時に応じて、スイッチSw3〜スイッチSw5が順に一時的にオン状態とされることによって、その際の基準電池110sと未検査の各単電池110c〜110eとの各電圧差Vsc、Vsd、Vseが順に計測される。このようにして、内部短絡検査の開始から5秒毎の各電圧差Vsa〜Vseの値が計測され、これらの値が検査装置TMG1に取り込まれる。
【0039】
次に、こうして計測される各電圧差Vsa〜Vseの計測結果に基づき検査装置TMG1を通じて実行される内部短絡の検査態様について図3を参照して説明する。なお、図3において、直線L0は、単電池110に内部短絡が生じた場合において、この内部短絡に伴う電池の電圧低下の推移を示したものあり、本実施の形態では、この直線L0を基準電池110sとの間での電圧差に対して許容できる内部短絡の度合い、すなわち不良品か否かを判定する判定値として用いる。
【0040】
図3に一例を示すように、上記検査を通じて5秒毎に計測された各計測値は、基準電池110sと各単電池110a、110b、110d、110eとの各電圧差Vsa、Vsb、Vsd、Vseの値が、いずれも「0mV」となっている。これにより、これら各単電池110a、110b、110d、110eは良品、すなわち内部短絡が生じていないと判定された基準電池110sと同等の電圧を出力しているものと判断することができ、基準電池110sと同じく良品と判定することができる。また、これら各単電池は、内部短絡とは別途に自己放電による電圧低下が生じる場合があるものの、本実施の形態では、各単電池の同極同士を接続することで得られる各電圧差に基づいて内部短絡の有無を判定するようにしていることにより、この自己放電が相殺された値を検出することができる。このため、同図3に示すように、これら良品と判定された各単電池110a、110b、110d、110eとの各電圧差Vsa、Vsb、Vsd、Vseの値は、全て「0mV」となっており、このことからも、本実施の形態にかかる内部短絡検査方法によれば、検査対象とする単電池の自己放電が相殺された値が計測されていることが確認できる。
【0041】
一方、検査開始後10秒後に計測された基準電池110sと単電池110cとの電圧差Vscの値は、この図3の例では「11mV」となっている。すなわち、本内部短絡検査に先立ち、一旦「1.0V」まで充電された単電池110cの電圧が、次第に低下し、内部短絡検査の開始から10秒経過時において、少なくとも「11mV」の電圧低下が発生していることになる。これにより、この単電池110cは、それ自身の自己放電以外に起因する電圧の低下、すなわち内部短絡が生じているものと判定することができる。
【0042】
しかも、同図3に示されるように、内部短絡検査の開始から10秒経過した時点において、基準電池110sと単電池110cとの電圧差Vscの値「11mV」は、内部短絡の基準となる直線L0を上回っている。これにより本実施の形態の検査では、この単電池110cは、その内部短絡の度合いが基準電池110sに対して許容されうる内部短絡の
度合いを超えた「不良品」として判定される。
【0043】
以上説明したように、本実施の形態にかかる電池の内部短絡検査方法によれば、以下のような効果が得られるようになる。
(1)良品と判定された基準電池110sと検査対象とする複数の単電池110a〜110eとを互いに同極同士で電気的に接続するとともに、互いに開放された他方の電極は各々電圧計VM1〜VM5を介して基準電池110sと接続し、各々計測される電圧差Vsa〜Vseに基づいて内部短絡の有無を検査することとした。このため、検査対象とする各単電池110a〜110e自身の出力電圧(「1.0V」)及び自己放電が除外され、上記内部短絡に起因する比較的微少な電圧変化のみがそれら各電圧差Vsa〜Vseとして計測されるようになる。これにより、こうした微小な電圧変化に応じて電圧計VM1〜VM5の計測レンジを設定することができるようになり、ひいては、複数の電池の内部短絡の有無を高い信頼性のもとに検査することができるようになる。
【0044】
(2)内部短絡検査に先立ち、検査対象とする各単電池110a〜110eを全て同一の条件、すなわち、(イ)同一の活性化処理を施すとともに、(ロ)同一のSOC(「1V」)に統一することとした。これにより、基準電池110sと各単電池110a〜110eとの各電圧差Vsa〜Vseに基づき内部短絡の有無を検査する上で、これら単電池間の個体差を最小とすることができ、ひいては電池の内部短絡の検査精度を高めることができるようになる。
【0045】
(3)基準電池110sと内部短絡の検査対象とする各単電池110a〜110eとの各電圧差Vsa〜Vseを計測するに際し、これら基準電池110sと単電池110a〜110eとの導通状態を切り替え可能なスイッチSw1〜Sw5を設けることとした。このため、電圧計VM1〜VM5を通じて各電圧差Vsa〜Vseを計測するタイミングを任意に設定することができる。これにより、各電圧差Vsa〜Vseの推移、ひいては、単電池110a〜110eの内部短絡に起因する電圧の低下を個別に、かつ任意の時点で検出することができるようになる。これにより、基準電池110sと各単電池110a〜110eとの各電圧差Vsa〜Vseに基づき内部短絡の有無を検査する上で、各単電池110a〜110e毎にそれらの内部短絡の有無を高い精度のもとに検査することができるようになる。
(第2の実施の形態)
以下、本発明を具体化した第2の実施の形態を図4、図5を参照して説明する。なお、この第2の実施の形態では、基準電池110sと単電池110a〜110eとの間を流れる各電流Isa〜Iseを同時に検出すべく、各電池110s、110a〜110e間の通電状態を同時に切り替え可能な治具400を用いている。
【0046】
図4は、先の図2に対応する図として、この第2の実施形態にかかる電池の内部短絡検査方法に用いられる検査回路を示したものである。
すなわちこの図4に示すように、良品と判定された基準電池110sの正極と未検査の単電池110a〜110eの各正極との間に、これら基準電池110sと未検査の各単電池110a〜110eとの各電圧差によって流れる電流Isa〜Iseを計測すべく電流計AM1〜AM5をリード線301〜305によって接続する。なお、本実施の形態では、電流計AM1〜AM5を、各単電池110a〜110eの正極側に接続し、それら各単電池110a〜110eの正極の電圧と基準電池110sの正極の電圧との電圧差に基づく電流を計測する。すなわち、基準電池110s及び未検査の単電池110a〜110eの各負極側に、上記通電状態を同時に切り替え可能な治具400が取り付けられる。こうして治具400によって各電池110s、110a〜110eが導通状態とされることにより、基準電池110sと各単電池110a〜110eとの間にそれらの電圧差に応じた電流Isa〜Iseが流れることとなる。そして、これら導通状態とされた各電池110
a〜110eのいずれかに内部短絡が生じている場合には、内部短絡に起因してその電圧が低下することとなり、このために相対的に電圧が低くなる単電池へと電流が流れることとなる。そこで、本実施の形態では、こうした各電池110s、110a〜110e間を流れる電流Is、Isa〜Iseの方向及びその値を検出することによって電池の内部短絡の有無を検査することとする。なお、本実施の形態においては、これら電流Isa〜Iseを、各電流計AM1〜AM5によって同時に計測するようにしている。
【0047】
また、本実施の形態において、上記各電流計AM1〜AM5には、その計測値を一括して取り込む検査装置TMG2が接続されており、この検査装置TMG2にて各電流計AM1〜AM5の計測値が一括管理される。なお、各単電池110a〜110eに生じうる内部短絡に起因する電圧変化は、通常、各単電池110a〜110eの電圧(「1.0V」)よりも相対的に微小であり、こうした電圧変化に応じて流れる電流も微小である。そこで、本実施の形態においても、こうした内部短絡に起因して変化する各電流Isa〜Iseを確実に検出すべく、各電流計AM1〜AM5の計測レンジを例えば数μA程度の範囲で低く設定している。
【0048】
次に、こうして構成された検査回路によって計測される電池110s、110a〜110eを流れる電流Is、Isa〜Iseの推移について図5を参照して説明する。なお、この図5では、上記治具400が基準電池110s及び未検査の単電池110a〜110eの各負極に取り付けられてから5秒経過時、15秒経過時、25秒経過時における各電流Isa〜Iseの推移を示したものである。
【0049】
この図5に示されるように、まず、治具400が取付けられてから5秒経過時に計測された基準電池110sと単電池110a〜110eとの間を流れる各電流Isa、Isb、Isd、Iseの値は、いずれも約「+0.5μA」となっている。これに対し、単電池110cを流れる電流は約「−1.8μA」となっている。すなわち、内部短絡検査に先立ち、一旦「1.0V」まで充電された単電池110cの電圧がその他の電池110s、110a、110b、110d、110eの電圧よりも相対的に低下し、それら電池110s、110a〜110eからこの単電池110cに電流が流れ込んでいることが確認できる。このため、基準電池110sを流れる電流Isの方向と単電池110cを流れる電流Iscとを流れる電流の方向とが異なるようになる。また、こうした電流Iscの値(「−1.8μA」)は、電流Isa、Isb、Isc、Iseの値(「+0.5μA」)とは大きく乖離したものともなっている。
【0050】
一方、計測開始後、15秒経過時に計測された基準電池110sと単電池110a、110b、110d、110eとの間を流れる各電流Isa、Isb、Isd、Iseの値はいずれも約「+0.5μA」となっている。これに対し、基準電池110sと単電池110cとの間を流れる電流Iscの値は約「−1.75μA」となっている。このため、検査開始後から15秒経過時においても、電流Iscの方向がその他の各電流Isa、Isb、Isd、Iseの方向とは相反する関係にあり、また、こうした電流Iscの値(「−1.75μA」)は、電流Isa、Isb、Isc、Iseの値(「+0.5μA」)とは大きく乖離したものともなっている。
【0051】
また一方、さらに、計測開始後、25秒経過時に計測された基準電池110sと単電池110a、110b、110d、110eとの間を流れる各電流Isa、Isb、Isd、Iseの値も同じく約「+0.5μA」となっている。これに対し、基準電池110sと単電池110cとの間を流れる電流Iscの値は約「−1.6μA」となっている。このため、検査開始後から25秒経過時においても、電流Iscの方向がその他の各電流Isa、Isb、Isd、Iseの方向とは相反する関係にあり、また、こうした電流Iscの値(「−1.6μA」)は、電流Isa、Isb、Isc、Iseの値(「+0.5
μA」)とは大きく乖離したものともなっている。
【0052】
このように、単電池110cを流れる電流Iscの方向は、単電池110cの内部短絡に起因して、その他の単電池110a、110b、110d、110eを流れる電流Isa、Isb、Isd、Iseの方向とは異なるものとなっており、またそれらの乖離も大きくなっている。また、図5に示されるように、内部短絡が生じているとみられる単電池110cを流れる電流Iscは、計測開始からそれぞれ5秒、15秒、25秒が経過した時点において、「−1.8μA」、「−1.75μA」、「−1.6μA」と次第に「0μA」に近づく態様で推移している。この結果、内部短絡が生じている電池を流れる電流と内部短絡が生じていない電池を流れる電流との乖離は、電池が導通状態にされた後、5秒程度で最大となっている。そこで、本実施の形態では、電池110s、110a〜110eが導通状態とされてから5秒経過時に計測される電流値に基づいて各単電池110a〜110eの内部短絡の有無を検査することとする。
【0053】
次に、上記のように構成された検査回路によって未検査の単電池110a〜110eの内部短絡の有無を検査する方法について説明する。
この検査では、まず、上記治具400が基準電池110s及び未検査の単電池110a〜110eの各負極に取り付けられる。これによって電流計AM1〜AM5により各電流Isa〜Iseが計測され、これらの各電流Isa〜Iseの値が検査装置TMG2に取り込まれる。
【0054】
具体的には、上記治具400が基準電池110s及び未検査の単電池110a〜110eの各負極に取り付けられた後、例えば5秒経過時における各電流Isa〜Iseの値が各単電池110a〜110eの内部短絡の有無の判定のために抽出される。ここでの例では、図5に例示したように、例えば検査開始後5秒経過時に計測された基準電池110sと単電池110a〜110eとの間を流れる各電流Isa、Isb、Isd、Iseの値は、いずれも約「+0.5μA」となっている。これに対し、単電池110cを流れる電流は約「−1.8μA」となっている。そしてこれにより、同図5からも明らかなように、基準電池110sと単電池110cとの間を流れる電流の方向が、基準電池110sと各単電池110a、110b、110d、110eとの間を流れる電流Isa、Isb、Isc、Iseの方向と相反するようになる。すなわち、基準電池110sを流れる電流Isの方向と単電池110cを流れる電流Iscの方向とが異なるようになる。また、こうした電流Iscの値(「−1.8μA」)は、電流Isa、Isb、Isc、Iseの値(「+0.5μA」)とは大きく乖離したものともなっている。このため、上記検査装置TMG2では、こうした電流Iscの方向、あるいはその大きさや乖離の度合いから、単電池110cを、その内部短絡の度合いが許容されうる度合いを超えた「不良品」として判定する。
【0055】
以上説明したように、第2の実施形態にかかる電池の内部短絡検査方法によれば、以下のような効果が得られるようになる。
(1)良品と判定された基準電池110sと検査対象とする複数の単電池110a〜110eとを互いに同極同士で電気的に接続するとともに、互いに開放された他方の電極は各々電流計AM1〜AM5を介して基準電池110sと接続し、各々計測される電流Isa〜Iseの方向あるいはその値に基づいて内部短絡の有無を検査することとした。これにより、検査対象とする各単電池110a〜110e自身の出力電圧(「1.0V」)及び自己放電が除外され、複数の電池の内部短絡の有無が高い信頼性のもとに判別されるようになる。
【0056】
(2)また、このように基準電池110sと検査対象とする複数の単電池110a〜110eとの間に流れる電流は、内部短絡に起因して相対的に電圧が低下した単電池110
cとその他の各単電池110a、110b、110d、110eとの電圧差により、内部短絡の生じた単電池110cに向かう態様で各電流Isa〜Iseが流れることとなる。このため、検査対象とする各単電池110a〜110eのうち内部短絡の生じた単電池110cを流れる電流Iscの方向のみが、基準電池110sを流れる電流Isの方向と異なるようになる。これにより、各単電池110a〜110eを流れる電流の方向のみに基づいて各単電池110a〜110eの内部短絡の有無を判別することができるようにもなる。
【0057】
(3)基準電池110sと内部短絡の検査対象とする各単電池110a〜110eとの間を流れる電流Isa〜Iseを計測するに際し、これら基準電池110sと各単電池110a〜110eとの導通状態を同時に切り替え可能な治具400を用いることとした。このため、この治具400が取り付けられることによって、基準電池110sと各単電池110a〜110eとが導通状態となり、これに応じて各電流計AM1〜AM5により各電流Isa〜Iseが同時に計測されるようになる。これにより、基準電池110sと各単電池110a〜110eとの間を流れる電流の方向あるいはその大きさに基づき電池の内部短絡の有無を検査する上で、こうした2個以上の電池を同時に検査対象として上記検査を同時実行することで、その検査効率が大幅に高められ、ひいては、こうした検査を含む電池の生産性も向上されるようになる。
(他の実施の形態)
なお、上記各実施の形態は、以下のように変更して実施することもできる。
【0058】
・上記第1の実施の形態では、各電圧差Vsa〜Vseの計測に際し、スイッチSw1〜Sw5のオン/オフ状態をSw1から順に一つのスイッチのみを例えば5秒毎にオン状態とすることとした。これに限らず、基準電池110sとの電圧差を計測する単電池110a〜110eの選択は任意であり、スイッチSw1〜Sw5のうち複数のスイッチを同時にオン状態とすることとしてもよい。また、各電圧差Vsa〜Vseを計測するタイミングは任意であり、5秒の間隔に限定されるものでもない。
【0059】
・上記第1の実施の形態では、図3に示したように、基準電池110sと各単電池110a〜110eとの電圧差Vsa〜Vseの計測回数をそれぞれ一回とした。これに限らず、基準電池110sと各単電池110a〜110eとの電圧差Vsa〜Vseをそれぞれ複数回計測するようにしてもよい。
【0060】
・上記第1の実施の形態では、基準電池110sと検査対象とする単電池110a〜110eとの間での電圧差Vsa〜Vseに対して許容できる内部短絡を判定するための判定値として直線L0を用いることとしたが、上記判定値はこの直線L0に限定されるものではない。また、こうした判定値を用いることなく、基準電池110sと検査対象とする単電池110a〜110eとの間で電圧差が生じた場合に、これを「不良品」として判定するようにしてもよい。
【0061】
・上記各実施の形態では、便宜上、「不良品」として判定される単電池を一つとして説明したが、内部短絡の生じている電池が複数個あったとしても上記方法による検査を行うことは可能である。例えば、上記第1の実施の形態では、基準電池110sとの電圧差Vscが判定値を超えた単電池110cを「不良品」として判定することとしたが、基準電池110sとの電圧差が判定値を超える単電池が複数ある場合にはそれらを「不良品」として判定するようにしてもよい。また、上記第2の実施の形態では、一度の検査で不良品として判別可能な単電池の数は一つではあるが、一回目の検査で「不良品」として判定された単電池を検査対象から外したのちに、再度、各単電池間に流れる電流を計測し、各々計測された電流のうち電流の方向が異なる一つの単電池を「不良品」として判定することとなる。また、こうした検査を繰り返し実行するようにしてもよい。
【0062】
・上記第2の実施の形態では、内部短絡の有無を判定する値として、検査開始から例えば5秒経過時における各電流Isa〜Iseの値を用いることとしたが、各電流Isa〜Iseの方向のみに基づき内部短絡の有無を検査する上では、このような条件に限定されるものではない。
【0063】
・上記第2の実施の形態では、各単電池110a〜110eを流れる電流の方向に基づいて内部短絡の有無を検査することとした。ここで、各電池110s、110a〜110e間に流れる電流Isa〜Iseの大きさは、各電池110s、110a〜110e間の相対的な電圧差に応じて変化するものである。そして、基準電池110sを流れる電流の方向と異なる方向に流れる電流の値は、各電池110s、110a〜110e間の電圧差が大きいほどこれに比例して大きくなる。一方、各単電池110a〜110eを流れる電流Isa〜Iseは、これら各単電池110a〜110eのうち最も電圧の低い単電池に向かって流れるものであり、たとえ各単電池110a〜110eのいずれにも許容できないような内部短絡が生じていない場合であっても、各単電池110a〜110eのうち最も電圧の低い単電池に向かって電流が流れ込むことが懸念される。そこで、基準電池110sを流れる電流Isと異なる方向に流れる電流に対して許容できる内部短絡の度合いを判定するための判定値を設け、基準電池110sを流れる電流Isと異なる方向に電流が流れて、かつ、その電流値が上記判定値を超える単電池を「不良品」として判別することとしてもよい。これにより、検査対象とする各単電池110a〜110eのいずれにも内部短絡が生じていない場合に、「良品」が「不良品」として誤判別されるような事態を回避することができるようになり、ひいては、各単電池110a〜110eの内部短絡の有無をより高い精度のもとに検査することができるようになる。
【0064】
・上記第2の実施の形態では、電流計AM1〜AM5の端子を各単電池110a〜110eの正極側に接続することとした。これに限らず、各単電池110a〜110e間を流れる電流の方向あるいはその値に基づき電池の内部短絡の有無を検査するものであればよく、電流計AM1〜AM5を各単電池110a〜110eの負極側に接続するようにしてもよい。
【0065】
・上記第2の実施の形態では、基準電池110sと各単電池110a〜110eとの間の電流Isa〜Iseを計測することとしたが、基準電池110sを用いず、検査対象とする複数の電池を同極同士で互いに電気的に接続したときにそれら各電池間の電圧差に起因する電流の方向あるいは電流値を計測して内部短絡の有無を検査するようにしてもよい。すなわち、先の図4に対応する図として例えば図6に示すように、各単電池110a〜110eを互いに同極同士で電気的に接続するとともに、それら複数の電池の互いに開放された他方の電極間を流れる電流を計測する。そして、この計測した電流の方向を検出し、この検出された電流のうち異なる方向に電流が流れる電池を不良品として判別する。またあるいは、この異なる方向に流れる電流に対して許容できる内部短絡の度合いを判定するための判定値を設け、前記異なる方向に流れる電流の値がこの判定値を超える電池を不良品として判別する。このように同極同士が接続された電池間を流れる電流の方向や大きさは、それら各電池の相対的な電圧差に応じたものであり、内部短絡の生じていない相対的に電圧の高い単電池から内部短絡に起因して相対的に電圧が低下した単電池に向かって電流が流れ込むようになる。このため、検査対象とする各電池間を流れる電流の方向に基づいて電池の内部短絡の有無を検査する上では、予め「良品」と判定された基準とする電池を用いることなく同検査を実施することも可能であり、こうした検査を含む電池の生産性もより向上されるようになる。
【0066】
・上記各実施の形態では、基準とする電池と検査対象とする電池との検査回路として、図2あるいは図4に示す検査回路を用いることとしたが、基準とする電池と検査対象とす
る電池との一方の電極同士を電気的に接続するとともに、これらの開放された他方の電極間での電圧差を計測可能な回路構成であればよく、これらに限定されるものではない。
【0067】
・上記各実施の形態では、活性化処理を経て、電池の電圧が「1.0V」とされた直後に内部短絡の有無を検査することとしたが、基準とする電池と内部短絡が生じた電池との電圧差をさらに拡大させる上では、SOCが「1.0V」とされた電池を一定時間放置したのちに電池の内部短絡の有無を検査するようにしてもよい。
【0068】
・上記各実施の形態では、電池の内部短絡検査に先立ち、電池の電圧を「1.0V」になるまで充電することとしたが、予め設定する電池の電圧値は、この値に限定されるものではない。
【0069】
・上記各実施の形態では、検査対象とする電池として5個の電池を用いることとした。これに限らず、基準とする電池と検査対象とする電池との電圧差に基づき電池の内部短絡の有無を検査する上では、検査対象とする電池は1個、あるいは6個以上であってもよい。
【0070】
・上記各実施の形態では、内部短絡検査の対象として、同一の工程で製造された電池を用いることとしたが、基準とする電池と検査対象とする電池との電圧差に基づき電池の内部短絡の有無を検査する上では、同一の仕様あるいは同一の電圧を有する電池であればよく、これに限定されるものではない。
【0071】
・上記各実施の形態では、基準電池110sとして予め検査された良品を用いることとした。これに限らず、基準とされる電池は、不良品を含めて、どのような電池を基準としてもよく、要は、基準とされる電池の一方の電極と検査対象とする電池の一方の電極とを同極同士で接続し、基準とされる電池と検査対象とする電池との互いに開放された他方の電極間の電圧差に基づき電池の内部短絡の有無を検査するものであればよい。
【0072】
・上記各実施の形態では、内部短絡検査の対象として、角形密閉式電池を構成するニッケル水素蓄電池(単電池)を用いることとした。これに限らず、上記構成される角形密閉式電池、あるいは、ニッケルカドミウム電池、リチウムイオン電池等の二次電池やマンガン乾電池やアルカリ乾電池等の一次電池であってもよい。
【0073】
以下に、この明細書中に記載された事項から把握される技術思想に基づいて追記する。
(イ)正極と負極とを有する電池の内部短絡の有無を検査する電池の内部短絡検査方法であって、複数の電池の一方の電極を互いに同極同士で電気的に接続するとともに、それら複数の電池の互いに開放された他方の電極間を流れる電流を計測し、この計測した電流に基づいて電池の内部短絡の有無を検査することを特徴とする電池の内部短絡検査方法。
【0074】
(ロ)同極同士で電気的に接続する複数の電池が3個以上の電池からなり、前記3個以上の電池に対する前記検査を同時実行するものであって、前記計測した電流の方向を検出し、この検出された電流のうち異なる方向に電流が流れる電池を不良品として判別する(イ)に記載の電池の内部短絡検査方法。
【0075】
(ハ)前記異なる方向に流れる電流に対して許容できる内部短絡の度合いを判定するための判定値を設け、前記異なる方向に流れる電流の値が前記判定値を超える電池を不良品として判別する(ロ)に記載の電池の内部短絡検査方法。
【0076】
上述のように、同極同士が接続された電池間を流れる電流の方向や大きさは、それら各電池の相対的な電圧差に応じたものであり、内部短絡の生じていない相対的に電圧の高い
単電池から内部短絡に起因して相対的に電圧が低下した単電池に向かって電流が流れ込むようになる。このため、検査対象とする各電池間を流れる電流の方向に基づいて電池の内部短絡の有無を検査する上では、予め「良品」と判定された基準とする電池を用いることなく同検査を実施することも可能であり、こうした検査を含む電池の生産性もより向上されるようになる。
【符号の説明】
【0077】
100…一体電槽、110、110a〜110e…単電池、110s…基準電池、120…隔壁、130…電槽、140…極板群、141a…リード部、150、160…集電板、151、161…接続突部、170…貫通孔、200…蓋体、300、301〜305…リード線、400…直列治具、Sw1〜Sw5…スイッチ、TMG1、TMG2…検査装置、TM…接続端子、AM1〜AM5…電流計、VM1〜VM5…電圧計。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と負極とを有する電池の内部短絡の有無を検査する電池の内部短絡検査方法であって、
複数の電池の一方の電極を互いに同極同士で電気的に接続するとともに、該複数の電池の一つを基準とし、基準とする電池と基準とする電池以外の電池との互いに開放された他方の電極間での電圧もしくは電流を計測し、該計測した電圧もしくは電流に基づいて前記基準とする電池以外の電池の内部短絡の有無を検査する
ことを特徴とする電池の内部短絡検査方法。
【請求項2】
前記計測の対象が前記電圧であり、前記基準とする電池と基準とする電池以外の電池との間での電圧差に対して許容できる内部短絡の度合いを判定するための判定値を設け、前記計測した電圧差が該判定値を超える電池を不良品として判別する
請求項1に記載の電池の内部短絡検査方法。
【請求項3】
前記電圧差を単位時間当たりの電圧変化量として計測する
請求項2に記載の電池の内部短絡検査方法。
【請求項4】
前記計測の対象が前記電流であるとともに、前記基準とする電池を含めて同極同士で電気的に接続する複数の電池が3個以上の電池からなって、前記基準とする電池以外の2個以上の電池に対する前記検査を同時実行するものであり、前記計測した電流の方向を検出し、前記基準とする電池の電流の方向と異なる方向に電流が流れる電池を不良品として判別する
請求項1に記載の電池の内部短絡検査方法。
【請求項5】
前記基準とする電池の電流の方向と異なる方向に流れる電流に対して許容できる内部短絡の度合いを判定するための判定値を設け、前記基準とする電池の電流方向と異なる方向に電流が流れてかつ、該電流値が前記判定値を超える電池を不良品として判別する
請求項4に記載の電池の内部短絡検査方法。
【請求項6】
前記基準とする電池を含めて同極同士で電気的に接続する複数の電池は同一仕様の二次電池であり、前記検査に先立ち、全ての電池を同一SOCになるまで充電する
請求項1〜5のいずれか一項に記載の電池の内部短絡検査方法。
【請求項7】
前記基準とする電池を含めて同極同士で電気的に接続する複数の電池として同一ロットにて生産された電池を用いる
請求項1〜6のいずれか一項に記載の電池の内部短絡検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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