説明

電池の構造

【課題】 体積効率を改善して、電池の搭載性を向上させる。
【解決手段】 電池100は、正極板と、負極板と、正極板と負極板との間に設けられるセパレータとにより形成される電極体と、電極体の一方の端部に設けられ、正極板に接続されるキャップ形状の正極端子106と、電極体の他方の端部に設けられ、負極板に接続されるキャップ形状の負極端子104と、正極端子106の一部および負極端子104の一部が露出するようにして、電極体を密閉する外装部102とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の構造に関し、特に、電極体を密閉する外装部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド自動車等に用いられる二次電池としては、鉛電池、ニッケル水素(Ni−MH)電池やリチウムイオン電池等がある。二次電池は、電力が消耗されると外部からの充電電流の供給により再び放電可能であるため、従来から各種の機器に適用されている。
【0003】
たとえば、二次電池は車両に搭載されて、始動時にエンジンの点火プラグやスタータ等へ電力供給を行なうというエンジン始動用バッテリの役割を果たしている。最近では、電気自動車(EV)やハイブリッド自動車(HV)において、走行用モータを駆動する際の主電源としても用いられている。
【0004】
このような二次電池は、車両に搭載されるため、より軽量であることが望ましい。そのため、たとえば、特開2003−346798号公報(特許文献1)は、ラミネート外装体に収納された構成を有する二次電池を開示する。この二次電池は、正極、負極、およびこれらに挟持された電解質を含む。二次電池は、ラミネート外装体を有する。
【0005】
特許文献1に開示された二次電池によると、ラミネート外装体に収納された構成を用いることにより、二次電池やそれを用いた組電池の軽量化や自由な形状に容易に構成することができる。
【特許文献1】特開2003−346798号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、車両に搭載される電池としては、さらに搭載性のよい構造が要求される。これは、たとえば、車両においては、乗員室、エンジンおよび電池の冷却装置等により搭載空間が制限されるためである。特許文献1において開示された二次電池においては、電極体を、ラミネートフィルムを用いた外装体で挟み、四辺を溶着して形成される。したがって、四辺の溶着部分が電池本体から突出しているため、体積効率を悪化させているという問題がある。
【0007】
また、電池の端子が外装体から引き出される際の突出量が大きいと、突出した端子により体積効率が悪化するという問題がある。
【0008】
体積効率とは、電池の長さ、幅、高さの各寸法の最大値で形成される直方体の体積に対する電池の体積の比である。したがって、体積効率が悪化すると、電池の搭載空間をより大きく確保する必要があり、電池の搭載性が悪化するという問題がある。
【0009】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、体積効率を改善して、電池の搭載性を向上させる電池の構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明に係る電池の構造は、正極板と、負極板と、正極板と負極板との間に設けられるセパレータとにより形成される電極体と、電極体の一方の端部に設けられ、正極板に接続されるキャップ形状の正極端子と、電極体の他方の端部に設けられ、負極板に接続さるキャップ形状の負極端子と、正極端子の一部および負極端子の一部が露出するようにして、電極体を密閉する外装部とを含む。
【0011】
第1の発明によると、キャップ形状の正極端子とキャップ形状の負極端子との間に電極体が設けられる。外装部(たとえば、ラミネートフィルムを用いて形成された外装部)は、キャップ形状の正極端子の一部およびキャップ形状の負極端子の一部が露出するようにして、電極体を密閉する。外装部を形成するラミネートフィルムが、正極端子の一部および負極端子の一部が露出するようにして、キャップ形状の正極端子および負極端子に溶着することにより、キャップ形状の正極端子と負極端子との間を、電極体の形状に沿って外装部が形成されるため、溶着部分が電池の外周方向に突出することなく外装部を形成させることができる。そのため、長さ、幅および高さの各寸法の最大値が大きくなることを抑制することができるため、体積効率を向上させることができる。また、キャップ形状の正極端子および負極端子自体が電極体を密閉する外装部の一部となっているため、電池内部から端子を引き出す必要がない。そのため、電池内部から端子を引き出す場合と比較して、その突出量を減少させることができる。その結果、電池の体積効率を向上させることができる。したがって、体積効率を改善して、電池の搭載性を向上させる電池の構造を提供することができる。また、端子の断面積を大きくすることができるため、内部抵抗を低減させることができる。そのため、電池の性能を向上させることができる。
【0012】
第2の発明に係る電池の構造においては、第1の発明の構成に加えて、正極端子の露出する一部は、電池の一方の側面に形成され、負極端子の露出する一部は、他方の側面に形成される。
【0013】
第2の発明によると、正極端子の露出する一部は、電池の一方の側面に形成され、負極端子の露出する一部は、他方の側面に形成される。たとえば、電池を複数個積層して組電池を形成する際に、積層方向に沿って、互いに対向するような位置の一方の側面と他方の側面とに、正極端子および負極端子のうちのいずれか一方の一部が露出するように形成されることにより、電池同士を接続させる接続端子により組電池の外形が大きくなることなく、組電池を形成させることができる。そのため、組電池の小型化が図れる。
【0014】
第3の発明に係る電池の構造においては、第2の発明の構成に加えて、一方の側面と他方の側面とは、互いに対向する位置の側面である。
【0015】
第3の発明によると、たとえば、電池を複数個積層して組電池を形成する際に、積層方向に沿って、互いに対向するような位置の一方の側面と他方の側面とに、正極端子および負極端子のうちのいずれか一方の一部が露出するように形成されることにより、電池同士を接続させる接続端子により組電池の外形が大きくなることなく、組電池を形成させることができる。そのため、組電池の小型化が図れる。
【0016】
第4の発明に係る電池の構造においては、第1〜3のいずれかの発明の構成に加えて、外装部は、ラミネートフィルムを用いて形成される。正極端子および負極端子にラミネートフィルムを接着することにより、電極体が密閉される。
【0017】
第4の発明によると、外装部は、ラミネートフィルムを用いて形成される。正極端子および負極端子にラミネートフィルムを接着することにより、電極体が密閉される。キャップ形状の正極端子と負極端子の間を、電極体の形状に沿ってラミネートフィルムを用いた外装部が形成されるため、接着部分が電池の外周方向に突出することなく外装部を形成させることができる。そのため、長さ、幅および高さの各寸法の最大値が大きくなることを抑制することができるため、体積効率を向上させることができる。
【0018】
第5の発明に係る電池の構造においては、第1〜4のいずれかの発明に構成に加えて、電極体は、正極板と負極板とセパレータとからなる積層体を巻回して形成される。
【0019】
第5の発明によると、正極板と負極板とセパレータとからなる積層体を巻回して形成される電極体を有する電池に本発明を適用しても、体積効率を向上させることができる。
【0020】
第6の発明に係る電池の構造においては、第1〜4のいずれかの発明の構成に加えて、電極体は、正極板と負極板とセパレータとからなる積層体を複数個積層して形成される。
【0021】
第6の発明によると、正極板と負極板とセパレータとからなる積層体を複数個積層して形成される電極体を有する電池に本発明を適用しても、体積効率を向上させることができる。
【0022】
第7の発明に係る電池の構造においては、第1〜6のいずれかの発明の構成に加えて、電池は、二次電池である。
【0023】
第7の発明によると、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、鉛蓄電池およびリチウムイオン電池等の二次電池に本発明を適用することにより、車両に搭載される二次電池の体積効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態に係る電池の構造について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0025】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る電池100は、正極端子106と、負極端子104と、外装部102とから構成される。正極端子106および負極端子104は、それぞれ直方体のキャップ形状を有している。外装部102は、ラミネートフィルムを用いて形成される。外装部102は、内部の電極体(図示せず)を密閉している。また、電池100の外装部102の内部には、電解液が充填される。
【0026】
本実施の形態に係る電池100において、電極体には、外装部102を形成するラミネートフィルムが巻回される。ラミネートフィルムの端部同士が溶着されて、溶着部110が形成される。ラミネートフィルムは、本実施の形態において、たとえば、長方形状を有するが特に限定されるものではない。そして、ラミネートフィルムが正極端子106に溶着されて、キャップ形状の正極端子106の側面に沿って溶着部112が形成される。同様に、ラミネートフィルムが負極端子104に溶着されて、キャップ形状の負極端子104の側面に沿って溶着部108が形成される。
【0027】
なお、外装部102は、ラミネートフィルムの端部同士およびラミネートフィルムと正極端子106、負極端子104とを溶着することにより内部の電極体を密閉することに限定されるものではない。たとえば、外装部102は、ラミネートフィルムの端部同士およびラミネートフィルムと正極端子106、負極端子104とを接着剤を用いて接着して内部の電極体を密閉するようにしてもよい。
【0028】
本実施の形態において、電極体114は、正極板と、負極板と、正極板と負極板との間に設けられるセパレータとにより形成される。図2に示すように、電極体114は、正極板と負極板とセパレータとからなる積層体が巻回されて形成される。
【0029】
なお、本実施の形態においては、電極体114は、正極板と負極板とセパレータとからなる積層体が巻回されて形成されるとして説明するが、電極体114の構造は、特にこれに限定されるものではない。たとえば、電極体114は、正極板と負極板とセパレータとからなる積層体を複数個積層して形成されるようにしてもよい。
【0030】
また、本実施の形態において、電池100は、正極端子と電極体と負極端子とから構成される電池であれば、特に限定されるものではない。したがって、電池は、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、鉛蓄電池およびリチウムイオン電池等の二次電池であってもよいし、マンガン電池、アルカリ電池等の一次電池であってもよいものとする。
【0031】
キャップ形状の正極端子106は、電極体114の一方の端部から延長された正極板に接続される。一方、キャップ形状の負極端子104は、電極体104の他方の端部から延長された負極板に接続される。キャップ形状の正極端子106および負極端子104は、本実施の形態においては、直方体のキャップ形状を有するが、キャップ形状であれば、特にこれに限定されるものではない。すなわち、キャップ形状の正極端子106および負極端子104は、電池の搭載構造に対応する形状に形成するようにしてもよい。
【0032】
図3に示すように、積層体200の負極板から負極端子104側に延長した部分とキャップ形状の負極端子104とは、延長した負極板がキャップ形状の負極端子104に組み付けられた後、負極板と負極端子104とが溶接されて接続される。キャップ形状の負極端子104には、溶接用の工具を挿入するための開口部208が形成される。
【0033】
図4に示すように、積層体200は、負極板202と、セパレータ204と、正極板206とを積層して形成される。負極板202の延長した部分が負極端子104に組み付けられると、溶接用の工具が開口部208に挿入されて、負極板202とキャップ形状の負極端子104とを挟み込むようにして、溶接部210,212,214にて溶接される。なお、正極板206とキャップ形状の正極端子106とにおいても、同様に溶接により接続される。したがって、その詳細については繰り返さない。なお、端子と極板との接続は、上述した溶接に特に限定されるものではない。
【0034】
以上のような構造に基づく、本実施の形態に係る電池の構造の作用について説明する。
【0035】
積層体200が巻回されて形成される電極体114の両端部には、正極板206から延長した部分と負極板202から延長した部分とが設けられる。正極板206には、キャップ形状の正極端子106が組み付けられ、負極板202には、キャップ形状の負極端子104が組み付けられる。そして、正極板206と正極端子106とが溶接され、負極板202と負極端子104とが溶接される。このようにして、電極体114の両端部に正極端子106と負極端子104とが接続された状態で、ラミネートフィルムを用いて形成される外装部102が巻回される。巻回されたラミネートフィルムの端部同士が溶着され、溶着部110が形成される。そして、ラミネートフィルムは、キャップ形状の正極端子106の一部と負極端子104の一部とが露出するようにして溶着して、電極体114を電解液とともに密閉する。このように製造される電池100において、外装部102が正極端子106と負極端子104との間を、電極体114の形状に沿って形成されるため、溶着部108,110,112は、電池100の外周方向に突出することはない。
【0036】
このとき、露出する正極端子106および負極端子104の一部は、正極端子106および負極端子104のどこに設けられてもよいが、好ましくは、露出する正極端子106の一部が電池100の一方の側面に形成され、露出する負極端子104の一部が電池100の他方の側面に形成されることが望ましい。たとえば、電池100を複数個積層して組電池を形成する場合において、積層方向に沿って、互いに対向するような位置の一方の側面と他方の側面のそれぞれに正極端子106の露出する一部および負極端子104の露出する一部を設けることにより、電池100同士を接続する接続端子により組電池の外形が大きくなることなく、組電池が形成される。
【0037】
以上のようにして、本実施の形態に係る電池の構造によると、キャップ形状の正極端子とキャップ形状の負極端子との間に電極体が設けられる。ラミネートフィルムを用いて形成される外装部は、キャップ形状の正極端子の一部およびキャップ形状の負極端子の一部が露出するように溶着して、電極体を密閉する。これにより、キャップ形状の正極端子と負極端子との間を、電極体の形状に沿って外装部が形成されるため、溶着部分が電池の外周方向に突出しないようにすることができる。そのため、長さ、幅、高さの各寸法の最大値が大きくなることを抑制することができるため、体積効率を向上させることができる。また、キャップ形状の正極端子および負極端子自体が電極体を密閉する外装部の一部となっているため、電池内部から端子を引き出す必要がない。そのため、電池内部から端子を引き出す場合と比較して、その突出量を減少させることができる。その結果、電池の体積効率を向上させることができる。したがって、体積効率を改善して、電池の搭載性を向上させる電池の構造を提供することができる。
【0038】
また、正極端子の露出する一部は、電池の一方の側面に形成され、負極端子の露出する一部は、他方の側面に形成される。電池を複数個積層して組電池を形成する際に、積層方向に沿って互いに対向するような位置の一方の側面と他方の側面とに、正極端子および負極端子の一部が露出するように形成することにより、電池同士を接続させる接続端子により組電池の外形が大きくなることなく、組電池を形成することができる。そのため、組電池の小型化が図れる。
【0039】
さらに、正極端子および負極端子の断面積を大きくすることができるため、内部抵抗を低減させることができる。そのため、電池の性能を向上させることができる。
【0040】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本実施の形態に係る電池の外観を示す図である。
【図2】本実施の形態に係る電池の構造を示す図である。
【図3】本実施の形態に係る電池において、端子と極板との接続構造を示す図である。
【図4】図3の4−4断面を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
100 電池、102 外装部、104 負極端子、106 正極端子、108,110,112 溶着部、114 電極体、200 積層体、202 負極板、204 セパレータ、206 正極板、208 開口部、210,212,214 溶接部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極板と、負極板と、前記正極板と前記負極板との間に設けられるセパレータとにより形成される電極体と、
前記電極体の一方の端部に設けられ、前記正極板に接続されるキャップ形状の正極端子と、
前記電極体の他方の端部に設けられ、前記負極板に接続されるキャップ形状の負極端子と、
前記正極端子の一部および前記負極端子の一部が露出するようにして、前記電極体を密閉する外装部とを含む、電池の構造。
【請求項2】
前記正極端子の露出する一部は、前記電池の一方の側面に形成され、前記負極端子の露出する一部は、他方の側面に形成される、請求項1に記載の電池の構造。
【請求項3】
前記一方の側面と前記他方の側面とは、互いに対向する位置の側面である、請求項2に記載の電池の構造。
【請求項4】
前記外装部は、ラミネートフィルムを用いて形成され、
前記正極端子および前記負極端子に前記ラミネートフィルムを接着することにより、前記電極体が密閉される、請求項1〜3のいずれかに記載の電池の構造。
【請求項5】
前記電極体は、前記正極板と前記負極板と前記セパレータとからなる積層体を巻回して形成される、請求項1〜4のいずれかに記載の電池の構造。
【請求項6】
前記電極体は、前記正極板と前記負極板と前記セパレータとからなる積層体を複数個積層して形成される、請求項1〜4のいずれかに記載の電池の構造。
【請求項7】
前記電池は、二次電池である、請求項1〜6のいずれかに記載の電池の構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−155934(P2006−155934A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−340848(P2004−340848)
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】