説明

電池の誤装填防止方法及び装置

【課題】電池を挿抜自在に保持する電子機器にあって、安価で簡易な構成により電池の誤挿入を防ぐ。
【解決手段】カメラボディ2の底面に専用電池15が挿入される開口12を設け、電池蓋10で開閉できるようにしておく。専用電池15の第一側面21に第一磁石22、第二側面24に第二磁石25を設ける。第一磁石22と第二磁石25は、互いに異なった磁極を表面に露呈する。専用電池15を開口12を通して正挿入姿勢で挿入したとき、第一側面21に対面する第一内壁32に、第一磁石22とは異なるに磁極を露呈させた保持用磁石33を埋め込む。専用電池15が、正挿入姿勢で装填されたときと誤挿入姿勢で装填されたときとで磁石相互間に引力または反発力のいずれか一方が作用して専用電池15の保持位置が異なり、誤装填か否かを容易に識別することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池収納室に電池が誤った挿入姿勢のまま装填されることを防ぐ電池誤装填防止方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラなどの携帯機器の電源には、繰り返し充電が可能な二次電池が多用されている。二次電池には様々な形態のものがあり、携帯機器の種類や機種に応じた独特の形状をもつ専用電池も利用されている。このため、使用により二次電池が消耗したときに一般に市販されている乾電池の代用が難しいこともあり、使用中の電池消耗が懸念され、引き続きその場で機器を使用しなければならないときには、充電した予備の専用電池を準備しておく必要がある。
【0003】
電池収納室のスペースを節約して携帯機器をコンパクト化することができるように、携帯機器に用いられている専用電池の多くは簡単な直方体形状にまとめられ、正電極と負電極をその一つの面に露呈させるのが通常となっている。そして、正・負電極を露呈させた面を先頭にして電池収納室の入口から挿入すれば、電池収納室の底面に設けられた接続端子に専用電池の正・負電極を正しく接続することができるようにしている。
【0004】
ところが、電池装填室に上記のようにして専用電池を挿入する際に電池の挿入姿勢を誤ると、電池収納室の正・負の接続端子に電池の正・負電極が逆に接続されてしまう。例えば暗所で電池装填を行うときや、電池交換を素早く行おうとしたときには、前述のように専用電池の形状が単純化されていると、時として誤った挿入姿勢のまま電池の装填操作を行ってしまい、短絡事故や発火など思わぬ事態をひき起こすことが懸念される。
【0005】
こうした問題を防ぐために、特許文献1に記載のように電池を独特の形状にして誤装填を防ぎ、また特許文献2記載のように電池挿入時の姿勢を電気的に識別して誤挿入の警告報知を行う手法が知られている。さらに、特許文献3にはインクジェットプリンタ装置で交換使用されるインクカートリッジの誤装填を防ぐ目的で、磁石の引力・反発力を利用することが記載されている。
【特許文献1】特開平7−335186号公報
【特許文献2】特開2004−14153号公報
【特許文献3】特開平7−329318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の手法では専用電池の形状の複雑化に伴って携帯機器側の電池収納室の構造も複雑になり、コンパクト化の妨げやコストアップの原因になる。また、特許文献2の手法では、電池収納室に電池の挿入姿勢を検出するための電気部品や付加回路、さらには携帯機器側にも誤挿入検知用の補助電源が必要となり、コストアップが避けられない。特許文献3の手法では、所要部に磁石を組み込むだけで済む利点があるものの、インクカートリッジが決められた位置に正しく装填されたときには、機械的なロック機構に加えて磁石の引力がインクカートリッジを保持する方向に作用するため迅速な交換操作の妨げになりやすい。
【0007】
本発明は上記事情を考慮してなされたもので、その目的は、専用電池の形状を何ら複雑化させることなく、また回路部品や可動部品などを要せずにローコストで電池の誤装填を防止するとともに、電池交換時には使用済みの専用電池を簡単に取り出すことができるようにした電池の誤装填防止方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するにあたり、専用電池とこれを収納する電池収納室の内壁にそれぞれ磁石を組み込み、専用電池を電池収納室に挿入する際にこれらの磁石の相互間に生じる引力と反発力とを使い分けて専用電池の挿入姿勢が適切であるか否かを識別することができるようにしたものである。このため本発明では、略直方体形状にした専用電池の互いに対向する第一側面と第二側面に互いに異なる磁極の一方を露呈させた第一,第二磁石を埋め込み、そしてこの専用電池を収納する電池収納室の内壁のうち、前記第一側面と第二側面とのいずれかに対面し合う内壁に前記第一,第二磁石の一方とのみ磁極が等しい保持用磁石を埋め込み、前記電池収納室内の所定の装填位置に向かって専用電池を挿入したときに、前記第一または第二磁石と前記保持用磁石との間に生じる引力または反発力に応じて電池収納室内における専用電池の保持位置を変え、これに基づいて専用電池の挿入姿勢が適切であるか否かが識別できるようにしてある。
【0009】
なお、専用電池側の第一,第二磁石と電池収納室側の保持用磁石とを相互に入れ替え、専用電池の前記第一,第二側面の一方に電池側磁石、前記第一,第二側面に対面し合う電池収納室の内壁に第一,第二保持用磁石を設けても同様の機能を得ることが可能である。また、専用電池が開口を通して正しい挿入姿勢で挿入されたときには、前記開口からの突出量が小さくなるように前記各々の磁石相互間の引力を利用して専用電池を保持して前記開口を塞ぐ電池蓋の閉じ動作を許容し、そして誤った挿入姿勢で挿入されたときには、前記開口からの突出量が大きくなるように磁石相互間の反発力で専用電池を保持するようにして電池蓋の閉じ動作を妨げるようにすると効果的である。
【0010】
より具体的には、正電極と負電極とを並べて露呈させた電極面を含む略直方体形状を有する専用電池に、前記電極面に直交し互いに対向する第一側面と第二側面に前記電極面からの高さが互いに異なる位置に異なった磁極が露呈するように第一,第二磁石を埋め込み、前記専用電池が装填される携帯機器の電池収納部を、前記電極面を先頭にして挿入される専用電池を受け入れる開口と、この開口に奥側で対面し、装填位置まで挿入された専用電池の正電極と負電極にそれぞれ接続される正極端子と負極端子とが並べて設けられた接続端子面と、専用電池の挿入時に前記第一,第二側面に対面して位置決めする第一,第二内壁と、前記開口を開閉するとともに閉じ位置にロックされる電池蓋とから構成し、前記第一内壁には磁極の一方が露呈するように保持用磁石を埋め込み、前記正電極が正極端子に対面する正挿入姿勢で専用電池が電池収納室に挿入されたときに、前記保持用磁石と前記第一磁石との間に生じる引力により専用電池の挿入を補助するとともに前記電極面と接続端子面との間に狭い間隙が生じるように専用電池をその自重に抗して保持させ、前記正電極が負極端子に対面する誤挿入姿勢で専用電池が電池収納室に挿入されたときには、前記保持用磁石と前記第二磁石との間に生じる反発力により専用電池の挿入に抵抗を与えるとともに前記電極面と接続端子面との間に広い間隙が生じるように専用電池をその自重に抗して保持させ、前記専用電池が前記引力で保持された状態で前記電池蓋を閉じたときには、前記開口から小さく突出した専用電池の後端を電池蓋で押圧して専用電池を前記装填位置まで押し込み、専用電池が前記反発力で保持された状態では、前記開口から大きく突出した専用電池の後端側により電池蓋の閉じ操作が妨げられるようにすればよい。なお、専用電池の第一,第二側面のいずれかに一個の電池側磁石を設け、電池収納室側に第一,第二の保持用磁石を設けることも可能である。また、本発明は上記専用電池を電源に用いる携帯機器の電池誤挿入防止装置としても用いることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電池の誤挿入防止装置によれば、専用電池の外形を簡単な略直方体形状とし、同時に携帯機器側の電池収納室も格別に複雑化させることなく、電池収納室に専用電池を挿入するときの姿勢の適否を識別することができるようになる。そして、専用電池の挿入姿勢の適否に応じて電池蓋の閉じ動作を許容し、または妨げるようにしたから、誤った挿入姿勢のままで専用電池が使用されることを確実に防ぐことができる。しかも本発明においては、マイクロスイッチや光電スイッチなどの誤装填検出用の電気部品や判定用の回路構成を要しないためコスト面での負担もほとんどなく、携帯機器の電池収納室回りの機械的な構造も何ら複雑化させずに済むという効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、一例として図1に示すデジタルカメラに好適に用いることができる。図1において、カメラボディ2の上面にレリーズボタン3,電源のオン・オフボタン4が設けられ、前面には撮影レンズ5,フラッシュ発光窓6が設けられている。背面には、撮影レンズ5を通して順次に撮影される被写体画像をスルー画として表示する液晶パネルが組み込まれている。そしてカメラボディ2の底面には開閉自在な電池蓋10が設けられ、このデジタルカメラの電源となる専用電池の装填や取り出しのときに開閉される。また、電池蓋10の裏面には装填された電池の後端側を押圧する板バネ10aが設けられている。
【0013】
上記デジタルカメラの底面側を表す図2おいて、電池収納室11は底面側に露呈し電池蓋10で開閉される開口12と、開口12に奥側で対面し装填された電池の正・負電極に接続される正極端子14a,負極端子14bが設けられた接続端子面14と、略直方体形状をもつ専用電池15の4側面に対面する4つの内壁で構成されている。電池蓋10はヒンジ軸16により回動自在に支持され、閉じ位置では係止爪17を係止機構で係止して閉じ位置にロックすることができ、ノブ19の解除操作により閉じ位置でのロックを解除することができる。
【0014】
このデジタルカメラの電源電池には、専用電池15として繰り返し充電が可能な二次電池が用いられる。専用電池15の電極面20には正電極20aと負電極20bが設けられている。電極面20に直交する第一側面21にはN磁極を露呈させた第一磁石22が埋め込まれ、対向する第二側面24にはS磁極を露呈させた第二磁石25が埋め込まれている。第一磁石22は第二磁石25よりも電極面20に近い高さ位置にある。専用電池15の互いに対向し合う第三側面27,第四側面28には、同じ高さ位置に電池の誤挿入を警告する警告シール30が貼付されている。
【0015】
電池収納室11を構成する4つの内壁のうち、正常に専用電池15が挿入されたときの第一側面21に対面する第一内壁32には、専用電池側の第一磁石22と磁気的に吸着し合うように、磁極Sを露呈させた保持用磁石33が埋め込まれている。この保持用磁石33は接続端子面14から上方に離れ、しかも専用電池15の電極面20と第一磁石22との間隔よりも離れた高い位置に設けられている。これらの第一,第二磁石22,25及び保持用磁石33には、例えばフェライト磁石やネオジム磁石のような永久磁石が用いられている。また、これらの磁石の相互間に生じる磁気的な引力または反発力の強さは、専用電池15の重量を支え得る程度にしてある。
【0016】
これらの第一,第二磁石22,25と保持用磁石33との相互の位置関係は図3に示すとおりである。専用電池15の電極面20から第一磁石22,第二磁石25の中心までの距離をそれぞれB,C、電池収納室11の接続端子面14から保持用磁石33の中心までの距離をAとすると、C>A>Bの関係が保たれるようにしてある。
【0017】
上記構成による作用について説明する。専用電池15を電池収納室11に装填するにあたり、専用電池15は単純な直方体形状であるため、電池蓋10を開放して矩形状の開口12があらわれたとき、専用電池15の挿入姿勢には可能性として4パターンがある。そのうち、電極面20を上面に向けた挿入姿勢では、専用電池の正・負電極20a,20bが接続端子面14に向けられていないので電気的接続が行われることはない。
【0018】
したがって、仮にそのまま装填して電池蓋10を閉じて電源スイッチをオンしたとしても、デジタルカメラは全く動作しない。なお、電極面20を上面にした挿入姿勢には2通りあるが、いずれの場合でも事情は全く同じで、ユーザは誤装填したことに容易に気づくから、専用電池15を取り出して再度装填し直すのが通常である。また、デジタルカメラと専用電池15との間に電気的接続が何ら行われることがないから、重大な故障をひき起こすこともない。
【0019】
電極面20を下向きにし、専用電池15を電極面20から開口12を通して挿入する挿入姿勢にも2通りあり、その一方が図2に示すように、正電極20aを接続端子面14の正極端子14aに対面させた正挿入姿勢である。そして、他方が図2において専用電池15を挿入方向に関して180°回転させ、正電極20aを接続端子面14の負極端子14bに対面させた誤挿入姿勢である。正挿入姿勢で専用電池15を装填したときの作用は以下の通りである。
【0020】
専用電池15を正挿入姿勢で開口12から電池収納室11に落とし込むと、専用電池15の第一側面21が電池収納室11の第一内壁32に対面した状態となる。そして、専用電池15が図4に示す位置まで移動した時点で、第一磁石22と保持用磁石33との間に生じる引力によって、専用電池15はその電極面20が接続端子面14から離れた状態で保持される。このとき、A>Bの関係があるため未だ電気的な接続が行われることがなく、専用電池15の後端側を指で押し込んでも、指を離すと第一磁石22が保持用磁石33に引きつけられ専用電池15は図示の位置まで戻る。この位置では、警告シール30は開口12の奥に隠れているので外部からは見えない。
【0021】
この状態で開口12から突出している専用電池15の後端面の高さはわずかであるため、電池蓋10の閉じ操作は何ら妨げられることはない。そこでユーザは引き続き電池蓋10の閉じ操作を行い、電池蓋10で専用電池15を電池地収納室11に押し込むと電池蓋10は係止機構により閉じ位置にロックされる。そして、電池蓋10が閉じ位置にロックされた状態では板バネ10aの付勢により電極面20が接続端子面14に押し付けられ、専用電池15の正電極20a,負電極20bは電池収納室1内の正極端子14a,負極端子14bにそれぞれ接続される。したがって、以後は電源スイッチをオンすればデジタルカメラは正常に起動される。
【0022】
電極面20を下向きにしながらも、専用電池15が誤挿入姿勢で装填されると、保持用磁石33が埋め込まれた第二内壁32に専用電池15の第二側面24が対面するように挿入される。第二側面24には磁極Sを露呈させた第二磁石25が埋め込まれているから、専用電池15の挿入過程でこの第二磁石25が保持用磁石33に近づくと、磁気的な反発力によって挿入操作に大きな抵抗が生じ、押し込んだとしても押し戻される。この反発力は専用電池15の重量を支え得る強さに設定されているので、その大きな抵抗に違和感をもって挿入操作を中断したとしても、図5に示すように、専用電池15の電極面20が接続端子面14から大きく離れた位置で保持され、その後端面は開口12から大きく突出するようになる。また、反発力に抗して強引に専用電池15を押し込んだとしても、C>Aの関係があるため第二磁石25の中心が保持用磁石33の中心を通りすぎることはない。したがって、反発力が逆向きに作用して専用電池15が電池収納室11に引き込まれることはなく、電池蓋10を閉じ操作するために押し込み力を解くと専用電池15は必ず戻される。
【0023】
このように専用電池15の後端面が大きく突出していると、ヒンジ軸16の近傍の高い位置に専用電池15の角が位置して電池蓋10の閉じ操作がしにくくなり、さらに磁気的な反発力もあいまって電池蓋10の閉じ操作が妨げられるようになる。加えて、この状態では、専用電池15の第3,第4側面27,28に貼付された警告シール30が開口12の上に現れる。そして、警告シール30に表記された例えば「誤装填」などの表示をユーザは容易に確認することができるから、電池蓋10がそのまま閉じ操作されるおそれはほとんどなく、専用電池15の誤装填を防ぐことができる。
【0024】
さらに上記構成によれば、単に専用電池15の装填時に誤装填を防ぐだけでなく、以下の効果も得られる。装填された専用電池15が消耗してこれを電池収納室11から取り出すとき、不用意にカメラボディ2の底面を下に向けたままノブ19を解除操作して電池蓋10が開放されたとしても、専用電池15は第一磁石22と保持用磁石33との間に生じる引力によって取り出し方向に移動した後にその位置で保持され、そのまま落下させてしまうことはない。また、底面を上に向けて電池蓋10を開いたときには、やはり第一磁石22と保持用磁石33との間に生じる引力によって専用電池15が浮き上がって後端面を開口12から突出させるので、その取り出しが容易になる。
【0025】
本発明の別の実施形態を図6に示す。この実施形態では、専用電池15の第一側面21に磁極Nが露呈するように電池側磁石40を埋め込み、第二側面24には磁石を設けていない。そして、専用電池15を正挿入姿勢で電池収納室11に挿入したときに第一側面21に対面する第一内壁32に磁極Sを露呈させた第一保持用磁石42、第二側面24に対面する第二内壁43には磁極Nを露呈させた第二保持用磁石44を埋め込んでいる。専用電池15の電極面20から電池用磁石40の中心までの距離をX、電池収納室11の接続端子面14から第一保持用磁石42,第二保持用磁石44までの距離をそれぞれY,Zとすると、Y>X>Zの関係が保たれるように設定されている。
【0026】
上記構成においても、先の実施形態と同様の機能を得ることができる。すなわち、専用電池15を正挿入姿勢で開口12から挿入したときは、電池側磁石40が第一保持用磁石42による磁気的に引きつけられ、Y>Xの関係があることから電極面20と接続端子面14との間にスペースを残した状態で保持される。そして、電池蓋10を閉じ位置にロックするときに専用電池15が押圧され、正・負電極20a,20bがそれぞれ接続端子面14に露出している正極端子14a,負極端子14bに接続される。
【0027】
専用電池15が誤挿入姿勢で開口12から挿入されたときには、専用電池15の第一側面21が第二内壁43に対面し、電池側磁石40には第二保持用磁石44が作用するようになる。第二保持用磁石44は電池側磁石40と同じN極であることから、挿入の途中で磁気的な反発力が生じて挿入操作が困難になる。強引に押し込んだとしても、X>Zの関係があることから専用電池15には常に戻し方向の反発力が作用する。しかも、その保持位置は正挿入姿勢で装填されたときの保持位置よりも高いので、専用電池15の後端は開口12から大きく突出して電池蓋10の閉じ操作が困難になる。先の実施形態と同様に、専用電池15の他の側面に警告シールや警告表示をプリントしておけば電池の誤装填を防ぐことができる。また、専用電池15の取り出しに際して電池蓋10を開いたときにも、先の実施形態と全く同様の効果を得ることができる。
【0028】
上記のように、専用電池15の形状を簡単な直方体形状とし、また電極面20に正・負電極20a,20bを同列にしかも全く対称な位置に配置しておいても、本発明によれば少なくとも3個の磁石を専用電池15と電池収納室11の内壁にそれぞれ磁極を考慮して埋め込んでおけば、特に機械的な可動部や電気的なセンサ類を何ら利用することなく、的確に誤装填を防ぐことが可能となる。しかも、磁気的な引力と反発力とを利用することから、単に誤装填を防ぐだけでなく、電池蓋10を開放したときの取り出し操作がしやすくなり、また不用意に電池を落下させるといった不都合も解消できる。
【0029】
なお、本発明を実施するに際しては、電池収納室11の端子接続面14から正極端子14a,14bがわずかに突出する程度のバネ付勢を与えておけば、専用電池15の正・負電極20a,20bについては、電極面20から凹ましておくこともできるから、専用電池15の携帯時に各電極を損傷するような事故もなくなる。また、専用電池15を正挿入姿勢で装填したときと誤挿入姿勢で挿入したときとでは、開口12からの突出量が明らかに異なるようにしてあるから、暗所において手探りで電池交換を行うような場合でも装填ミスを確実に防ぐことができる。また、本発明はデジタルカメラだけでなく、携帯電話機やPDAなど、携帯型の種々の電子機器に等しく適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明を用いたデジタルカメラの外観図である。
【図2】電池収納室及び専用電池の概略構成を示す斜視図である。
【図3】専用電池及び電池収納室に設けられた磁石の配置関係を示す説明図である。
【図4】専用電池を正挿入姿勢で装填したときの説明図である。
【図5】専用電池を誤挿入姿勢で装填したときの説明図である。
【図6】本発明の別の実施形態の概略を示す説明図である。
【符号の説明】
【0031】
2 デジタルカメラ
10 電池蓋
11 電池収納室
14 接続端子面
14a 正極端子
14b 負極端子
15 専用電池
20 電極面
20a 正電極
20b 負電極
22 第一磁石
25 第二磁石
30 警告シール
40 電池側磁石
42 第一保持用磁石
44 第二保持用磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略直方体形状をもつ専用電池の互いに対向する第一側面と第二側面に、互いに異なる磁極を露呈させた第一磁石と第二磁石の一方と他方を埋め込むとともに、前記専用電池を収納する電池収納室の内壁のうち、前記第一側面と第二側面とのいずれかに対面し合う内壁に前記第一,第二磁石の一方とのみ磁極が等しい保持用磁石を埋め込み、前記電池収納室内の所定の装填位置に向かって専用電池を挿入したときに、前記第一または第二磁石と前記保持用磁石との間に生じる引力または反発力に応じて電池収納室内における専用電池の保持位置を変えて専用電池の挿入姿勢が正しいか否かが識別できるようにしたことを特徴とする電池の誤装填防止方法。
【請求項2】
略直方体形状をもつ専用電池の互いに対向する第一側面と第二側面とのいずれかに磁極の一方を露呈させた電池側磁石を埋め込むとともに、前記専用電池を収納する電池収納室の内壁のうち、前記第一側面と第二側面に対面し合う内壁のそれぞれに互いに異なる磁極を露呈させた第一保持用磁石と第二保持用磁石の一方と他方を埋め込み、前記電池収納室内の所定の装填位置に向かって専用電池を挿入したときに、前記電池側磁石と前記第一または第二保持用磁石との間に生じる引力または反発力に応じて電池収納室内における専用電池の保持位置を変えて専用電池の挿入姿勢が正しいか否かが識別できるようにしたことを特徴とする電池の誤装填防止方法。
【請求項3】
前記専用電池は所定の開口を通して前記電池収納室に挿入され、専用電池の挿入姿勢が正しい時には前記開口からの専用電池の突出量を小さくして前記開口を開閉する電池蓋の閉じ動作が許容され、専用電池の挿入姿勢が誤っているときには前記開口からの専用電池の突出量を大きくして前記電池蓋の閉じ動作が妨げられるようにしたことを特徴とする請求項1または2記載の電池の誤装填防止方法。
【請求項4】
正電極と負電極とを並べて露呈させた電極面を含む略直方体形状を有する専用電池に、前記電極面に直交し互いに対向する第一側面と第二側面に電極面からの高さが互いに異なる位置に異なった磁極を露呈させて第一磁石と第二磁石の一方と他方を埋め込み、
前記専用電池が装填される携帯機器の電池収納室を、前記電極面から挿入される専用電池を受け入れる開口と、この開口に奥側で対面し、装填位置まで挿入された専用電池の正電極と負電極にそれぞれ接続される正極端子と負極端子とが並べて設けられた接続端子面と、専用電池の挿入時に前記第一,第二側面に対面して位置決めする第一,第二内壁と、前記開口を開閉するとともに閉じ位置にロックされる電池蓋とから構成し、
前記第一内壁には磁極の一方が露呈するように保持用磁石を埋め込み、前記正電極が正極端子に対面する正挿入姿勢で専用電池が電池収納室に挿入されたときに、前記保持用磁石と前記第一磁石との間に生じる引力により専用電池の挿入を補助するとともに前記電極面と接続端子面との間に狭い間隙が生じるように専用電池をその自重に抗して保持させ、前記正電極が負極端子に対面する誤挿入姿勢で専用電池が電池収納室に挿入されたときには、前記保持用磁石と前記第二磁石との間に生じる反発力により専用電池の挿入に抵抗を与えるとともに前記電極面と接続端子面との間に広い間隙が生じるように専用電池をその自重に抗して保持させ、
前記専用電池が前記引力で保持された状態で前記電池蓋を閉じたときには、前記開口から小さく突出した専用電池の後端を電池蓋で押圧して専用電池を前記装填位置まで押し込み、専用電池が前記反発力で保持された状態では、前記開口から大きく突出した専用電池の後端側により電池蓋の閉じ操作が妨げられるようにしたことを特徴とする電池の誤装填防止方法。
【請求項5】
正電極と負電極とを並べて露呈させた電極面を含む略直方体形状を有する専用電池に、前記電極面に直交し互いに対向する第一側面と第二側面のいずれかに磁極の一方を露呈させた電池側磁石を埋め込み、
前記専用電池が装填される携帯機器の電池収納室を、前記電極面から挿入される専用電池を受け入れる開口と、この開口に奥側で対面し、装填位置まで挿入された専用電池の正電極と負電極にそれぞれ接続される正極端子と負極端子とが並べて設けられた接続端子面と、専用電池の挿入時に前記第一,第二側面に対面して位置決めする第一,第二内壁と、前記開口を開閉するとともに閉じ位置にロックされる電池蓋とから構成し、
前記第一,第二内壁のそれぞれに、前記接続端子面から異なった高さ位置で互いに異なる磁極の一方を露呈させた第一,第二保持用磁石を埋め込み、前記正電極が正極端子に対面する正挿入姿勢で専用電池が電池収納室に挿入されたときに、前記第一,第二保持用磁石の一方と前記電池側磁石との間に生じる引力により専用電池の挿入を補助するとともに前記電極面と接続端子面との間に狭い間隙が生じるように専用電池をその自重に抗して保持させ、前記正電極が負極端子に対面する誤挿入姿勢で専用電池が電池収納室に挿入されたときには、前記第一,第二保持用磁石の他方と前記電池側磁石との間に生じる反発力により専用電池の挿入に抵抗を与えるとともに前記電極面と接続端子面との間に広い間隙が生じるように専用電池をその自重に抗して保持させ、
前記専用電池が前記引力で保持された状態で前記電池蓋を閉じたときには、前記開口から小さく突出した専用電池の後端を電池蓋で押圧して専用電池を前記装填位置まで押し込み、専用電池が前記反発力で保持された状態では、前記開口から大きく突出した専用電池の後端側により電池蓋の閉じ操作が妨げられるようにしたことを特徴とする電池の誤装填防止方法。
【請求項6】
正電極と負電極とを並べて露呈させた電極面を含む略直方体形状を有するとともに、前記電極面に直交し互いに対向する第一側面と第二側面に、前記電極面からの高さが互いに異なる位置で異なった磁極が露呈するように埋め込まれた第一,第二磁石を備えた専用電池を電源電池に用いる携帯機器において、
前記携帯機器の本体に設けられ、前記電極面から挿入される専用電池を受け入れる開口と、この開口に奥側で対面し、装填位置まで挿入された専用電池の前記正電極と負電極にそれぞれ接続される正極端子と負極端子とが並べて設けられた接続端子面と、前記専用電池の挿入時に前記第一,第二側面に対面して位置決めする第一,第二内壁を備えた電池収納室と、
前記第一,第二内壁のいずれかに磁極の一方が露呈するように埋め込まれ、前記正電極が接続端子面の正極端子に対面する正挿入姿勢で専用電池が電池収納室に挿入されたときに前記第一磁石との間に生じる引力により専用電池の挿入を補助するとともに前記電極面と接続端子面との間に狭い間隔が生じるように専用電池をその自重に対して保持し、前記正電極が接続端子面の負電極に対面する誤挿入姿勢で専用電池が挿入されたときに前記第二磁石との間に生じる反発力により専用電池の挿入に抵抗を与えるとともに前記電極面と接続端子面との間に広い間隙が生じるように専用電池をその自重に対して保持する保持用磁石と、
前記開口の近傍に開閉自在に設けられ、閉じ位置にロックされたときに前記正挿入姿勢で挿入された専用電池の後端面を押圧して専用電池を前記装填位置に保持し、専用電池が前記誤挿入姿勢で挿入され前記反発力で保持された状態では、前記開口から突出した専用電池の後端側によって閉じ位置への移動が妨げられる電池蓋と、
を備えたことを特徴とする携帯機器の電池の誤挿入防止装置。
【請求項7】
正電極と負電極とを並べて露呈させた電極面を含む略直方体形状を有するとともに、前記電極面に直交し互いに対向する第一側面と第二側面とのいずれかに磁極の一方が露呈するように電池側磁石が埋め込まれた専用電池を電源電池に用いる携帯機器において、
前記携帯機器の本体に設けられ、前記電極面から挿入される専用電池を受け入れる開口と、この開口に奥側で対面し、装填位置まで挿入された専用電池の前記正電極と負電極にそれぞれ接続される正極端子と負極端子とが並べて設けられた接続端子面と、前記専用電池の挿入時に前記第一,第二側面に対面して位置決めする第一,第二内壁を備えた電池収納室と、
前記第一内壁に磁極の一方が露呈するように埋め込まれ、前記正電極が接続端子面の正極端子に対面する正挿入姿勢で専用電池が電池収納室に挿入されたときに前記電池側磁石との間に生じる引力により専用電池の挿入を補助するとともに前記電極面と接続端子面との間に狭い間隔が生じるように専用電池をその自重に対して保持する第一保持用磁石と、
前記第二内壁に磁極の他方が露呈するように埋め込まれ、前記正電極が接続端子面の負極端子に対面する誤挿入姿勢で専用電池が挿入されたときに前記電池側磁石との間に生じる反発力により専用電池の挿入に抵抗を与えるとともに前記電極面と接続端子面との間に広い間隙が生じるように専用電池をその自重に対して保持する第二保持用磁石と、
前記開口の近傍に開閉自在に設けられ、閉じ位置にロックされたときに前記正挿入姿勢で挿入された専用電池の後端面を押圧して専用電池を前記装填位置に保持し、専用電池が前記誤挿入姿勢で挿入され前記反発力で保持された状態では、前記開口から突出した専用電池の後端側によって閉じ位置への移動が妨げられる電池蓋と、
を備えたことを特徴とする携帯機器の電池の誤挿入防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−140728(P2010−140728A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314889(P2008−314889)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】