説明

電池システム及び電気自動車

【課題】電気自動車に搭載可能な小型のサイズでありながら、3分で電池容量の50%程度を充電する超急速充電にも対応可能な、冷却能力の大きい電池システムを実現する。
【解決手段】電池ユニット21が、電池セル1〜3と、該電池セル1〜3の少なくとも一面に密着可能な蓄冷材22と、前記電池セル非冷却時は、該蓄冷材22を前記電池セル1〜3から離し、前記電池セル冷却時は、該蓄冷材22を前記電池セル1〜3に密着させる駆動手段(上下可動台駆動装置28)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池システム及び電気自動車(EVとも称する)に係り、特に3分で電池容量の50%程度を充電する、いわゆる超急速充電にも対応可能な冷却構造を備えた電池システム、及び、この電池システムを搭載した電気自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
既に実用化されている電気自動車の充電方法には、主に次の2つの方法がある。
(1)家庭などで時間(8−20時間)をかけて行う普通充電方法
(2)共用場所などで急速充電器(30分で電池容量の80%を充電)を用いる急速充電方法
【0003】
しかしながら、3分程度で済むガソリン車の給油時間に比べ、従来の急速充電方法の30分では充電時間が長すぎるという声が多い。
【0004】
そのため、出願人は、充電器に内蔵された蓄電池に、夜間蓄えた電力を別の特殊な電池で吸上げ、EVに一気に放出することで、ガソリンスタンドでの給油やコンビニエンスストアでの簡単な買い物に要すると考えられる3分で電池容量の50%、5分では70%を充電できる、いわゆる超急速充電器を開発している。
【0005】
しかしながら、従来の急速充電の10倍近い速さで超急速充電するには、大電流で充電する必要があり、そのため、電池に大きな熱(出力W=電流Aの二乗×抵抗)が発生するので、EV側も超急速充電器に対応した仕様にする必要がある。
【0006】
従来の車載モジュールの一例を側面から見た断面図を図1に、平面図を図2に示す。図において、1〜12、1.1〜12.1は電池セル、13は、該電池セルの側面及び下面を覆う電気絶縁材、14は、各電池セルへの通電用のバスバー、16は電池箱、18は電池箱台である。ここでは、例えば2つの電池セル1と1.1、2と2.1、・・・、12と12.1が互いに並列に接続され、互いに並列接続された、例えば12組の電池セル1と1.1、・・・、12と12.1が直列に接続されている。
【0007】
従来の電池冷却構造としては、例えば特許文献1や2に、冷却ファンを用いて熱伝達により放熱する空冷式が、特許文献3に、電池に液体の熱媒体を循環させて熱交換器により放熱する液冷式が記載されている。更に、特許文献4には、バッテリ温度の変動を小さくするために、バッテリに蓄熱材と放熱フィンとを固定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−64598号公報
【特許文献2】特開2004−48981号公報
【特許文献3】特開2010−212099号公報
【特許文献4】特開2006−213210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、いずれも、超急速充電に対応するには冷却能力が不足しており、大型化する必要があるが、特にサイズに余裕がないEVには搭載が困難であった。
【0010】
更に、図1及び図2に示したように、電池セルの側面及び下面を電気絶縁材13で覆うため、放熱が妨げられるという問題もあった。
【0011】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、電気自動車に搭載可能な小型のサイズでありながら、超急速充電にも対応可能な、冷却能力の大きい電池システムを実現することを第一の課題とする。
【0012】
本発明は、又、超急速充電にも対応可能な電池システムを搭載した電気自動車を提供することを第二の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、電池セルと、該電池セルの少なくとも一面に密着可能な蓄冷材と、前記電池セル非冷却時は、該蓄冷材を前記電池セルから離し、前記電池セル冷却時は、該蓄冷材を前記電池セルに密着させる駆動手段と、を備えたことを特徴とする電池システムにより、前記第一の課題を解決したものである。
【0014】
ここで、前記蓄冷材を、潜熱を利用して冷却固化して用いる潜熱蓄冷材とすることができる。
【0015】
又、前記蓄冷材を着脱自在とすることができる。
【0016】
又、前記電池セル非冷却時に電池セルと蓄冷材の間に挿入され、前記電池セル冷却時に抜き取られる断熱シートを備えることができる。
【0017】
又、前記電池セルと蓄冷材の間に、熱伝導性の高い電気絶縁材を配設することができる。
【0018】
又、前記電池セルを冷却するための冷却ファンを備えることができる。
【0019】
又、前記蓄冷材を冷却媒体を用いて冷却するための冷却パネルを備えることができる。
【0020】
又、前記冷却パネルに循環される冷却媒体を冷却するための冷凍機を備えることができる。
【0021】
本発明は、又、前記電池システムを搭載したことを特徴とする電気自動車により、前記第二の課題を解決したものである。
【0022】
ここで、前記冷凍機を、車両エアコン内蔵の冷凍機とすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、蓄冷材(特に、潜熱を利用して冷却固化して用いる潜熱蓄冷材が好ましい)を用いることにより、電気自動車に搭載可能な小型のサイズでありながら、超急速充電にも対応可能な、冷却能力の大きい電池システムを実現できる。従って、超急速充電にも対応可能な電池システムを搭載した電気自動車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】従来の車載モジュールの一例の構成を示す、側面から見た断面図
【図2】同じく平面図
【図3】本発明の実施形態における電池セル非冷却時を示す断面図
【図4】同じく電池セル冷却時を示す断面図
【図5】同じく冷却系統を示す図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0026】
本発明の実施形態である電池システムの電池ユニット21は、図3(電池セル非冷却時)及び図4(電池セル冷却時)に示す如く、電池セル1〜3と、該電池セル1〜3の側面に配設された従来と同様の電気絶縁材13と、前記電池セル1〜3の上面に配設された従来と同様のバスバー14と、前記電池セル1〜3の底面に配設された熱伝導性の高い高熱伝導性電気絶縁材20と、従来と同様の、例えばプラスチック製の電池箱16と、例えばアルミニウム製の電池箱台18と、図4に示す如く、前記高熱伝導性電気絶縁材20及び電池箱台18を介して、前記電池セル1〜3の底面に密着可能な蓄冷材22と、該蓄冷材22を冷却するための冷却パネル24と、前記蓄冷材22及び冷却パネル24が載置された上下可動台26と、該上下可動台26を駆動するための上下可動台駆動装置28と、図3に示す電池セル非冷却時には前記電池箱台18と蓄冷材22の間に挿入され、図4に示す電池セル冷却時には巻取装置32により巻き取られて蓄冷材22を電池箱台18に直接接触させる断熱シート(又はパネル)30と、前記電池箱16の内部を、必要に応じて空気で冷却するための冷却ファン34とを備えている。
【0027】
なお、図3、図4では電池セル1〜3のみが図示されているが、実際には図2の従来例と同様に、例えば12組の電池セルが設けられている。
【0028】
前記電池箱台18の材質は、軽量で放熱性が高いアルミニウム製とすることが好ましいが、他の材質であってもよい。
【0029】
前記高熱伝導性電気絶縁材20としては、優れた熱伝導性と電気絶縁性が特徴の特殊シリコーンラバー、例えば、サンゴバン株式会社製のProtectION+DPL1.3Dual Purpose Layerを用いることができる。なお、この高熱伝導性電気絶縁材20の代わりに、側面と同様の電気絶縁材13を電池セル1〜3の底面にも配設することもできる。
【0030】
前記蓄冷材22としては、例えば、融解熱(潜熱)を利用して冷却固化して用いる、不凍液・ゲル化剤などを密閉した保冷剤アイスノン(登録商標)のような市販されている潜熱蓄冷材を用いることができる。
【0031】
この蓄冷材22は、電池ユニット21から着脱自在とし、急速充電時に充電装置側から電池ユニット21に挿入して温度上昇を抑えることができる。更に、蓄冷材22をEV外で冷却、保管して繰り返し使用することもできる。又、蓄冷材22と冷却パネル24を一体化してもよい。
【0032】
前記冷却パネル24には、図5に示す如く、例えば、前記電池ユニット21だけでなく外部電源40が接続可能な副モータ42で駆動される冷凍機46からの冷却配管48が接続されている。図において、50は主モータ、52はインバータである。
【0033】
本実施形態において、電池セル非冷却時には、図3に示す如く、例えば手動スイッチ(図示省略)により、又は、充電プラグ(図示省略)の取り外し等、非充電操作と連動して操作される上下可動台駆動装置28により上下可動台26を下げて、電池箱台18と蓄冷材22の間に空間を形成するとともに、必要に応じて、その間に、例えばプラスチック製の断熱シート30を挿入して、通常の動作状態とすることができる。このようにして、蓄冷材22により電池セル1〜3が冷え過ぎるのを防止することができる。このとき、冷却ファン34は必要に応じてオンオフすることができる。なお、断熱シート30は省略することも可能である。
【0034】
一方、超急速充電時など電池セルの冷却が必要なときには、図4に示す如く、手動スイッチにより、又は、充電プラグの挿入等、充電操作と連動して操作される巻取装置32により断熱シート30を巻き取るとともに、同じく充電操作と連動して操作される上下可動台駆動装置28により上下可動台26を上方に押し上げて、蓄冷材22を電池箱台18に密着させる。
【0035】
これにより、超急速充電時に電池セル1〜3に発生する高熱は、高熱伝導性電気絶縁材20、電池箱台18を介して蓄冷材22に伝達され、吸収される。更に、蓄冷材22は、冷却パネル24により冷却される。
【0036】
本実施形態においては、外部電源40が接続可能な、主モータ50とは別の副モータ42により駆動される冷凍機46により冷却パネル24を冷却するようにしているので、外部電源40を用いて、例えば駐車時(停止時)や充電時でも冷却パネル24を冷却したり、夜間電力等を利用して、車載状態のまま、又は車から取外して車外で蓄冷材22を予め冷凍しておくことができ、冷却効率を高めることが可能である。
【0037】
又、冷却パネル24の冷却に車両エアコン44に内蔵の冷凍機(図示せず)を使うことも可能で、前記冷凍機46と併設してもよい。更に、車両エアコン44に内蔵の冷凍機を外部電源40により駆動し、冷却パネル24を冷却してもよい。この場合も、駐車時や充電時でも冷却パネル24を冷却して、蓄冷材22を冷凍しておくことができ、夜間電力で冷凍することも可能である。
【0038】
本実施形態においては、電池セル1〜3と蓄冷材22の間に高熱伝導性電気絶縁材20を設けているので、電池セル1〜3に発生する熱を効率良く除去することができる。なお、代わりに通常の電気絶縁材13を用いることも可能である。
【0039】
前記実施形態においては、電池ユニット21の底面に配設した上下可動台26により、蓄冷材22を上下動するようにしていたが、蓄冷材22と電池セル1〜3を密着させる構成は、これに限定されず、例えば電池箱台18側を上下動させたり、断熱シート30の巻取装置32を利用して、断熱シート30の抜き取りと同時に蓄冷材22が電池箱台18の直下に挿入されるようにし、上下可動台26で密着させるように構成しても良い。密着させる面も底面に限定されない。
【0040】
また、前記実施形態においては、蓄冷材22が電池セル1〜3の底面にのみ設けられていたが、蓄冷材22を底面以外の面にも設けて、更に冷却能力を高めることも可能である。
【0041】
更に、前記実施形態においては、本発明が電気自動車の車載電池システムに適用されていたが、本発明の適用対象は電気自動車に限定されない。又、超急速充電を行わない電池システムにも適用可能である。
【符号の説明】
【0042】
1〜12、1.1〜12.1…電池セル
13…電気絶縁材
14…バスバー
16…電池箱
18…電池箱台
20…高熱伝導性電気絶縁材
21…電池ユニット
22…蓄冷材
24…冷却パネル
26…上下可動台
28…上下可動台駆動装置
30…断熱シート
32…巻取装置
34…冷却ファン
40…外部電源
42…副モータ
44…車両エアコン
46…冷凍機
48…冷却配管
50…主モータ
52…インバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池セルと、
該電池セルの少なくとも一面に密着可能な蓄冷材と、
前記電池セル非冷却時は、該蓄冷材を前記電池セルから離し、前記電池セル冷却時は、該蓄冷材を前記電池セルに密着させる駆動手段と、
を備えたことを特徴とする電池システム。
【請求項2】
前記蓄冷材が、潜熱を利用して冷却固化して用いる潜熱蓄冷材であることを特徴とする請求項1に記載の電池システム。
【請求項3】
前記蓄冷材が着脱自在とされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電池システム。
【請求項4】
前記電池セル非冷却時に電池セルと蓄冷材の間に挿入され、前記電池セル冷却時に抜き取られる断熱シートを備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電池システム。
【請求項5】
前記電池セルと蓄冷材の間に、熱伝導性の高い電気絶縁材が配設されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電池システム。
【請求項6】
前記電池セルを冷却するための冷却ファンを備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の電池システム。
【請求項7】
前記蓄冷材を冷却媒体を用いて冷却するための冷却パネルを備えたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の電池システム。
【請求項8】
前記冷却パネルに循環される冷却媒体を冷却するための冷凍機を備えたことを特徴とする請求項7に記載の電池システム。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の電池システムを搭載したことを特徴とする電気自動車。
【請求項10】
前記冷凍機が、車両エアコン内蔵の冷凍機であることを特徴とする請求項8に記載の電気自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−248363(P2012−248363A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117867(P2011−117867)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】