説明

電池システム

【課題】対象金属に腐食センサーを配置できない場合であっても、対象金属の腐食の程度を適切に検知することができる電池システムを提供する。
【解決手段】対象金属と、前記対象金属とは異なる位置に配置され、且つ、前記対象金属と同一の金属で形成されたダミー金属6を備えた腐食センサー9と、前記ダミー金属6の第1環境条件を調整する環境調整器10と、前記対象金属の第2環境条件に対応する関連情報に基づき、前記第1環境条件を前記第2環境条件と実質的に同一とするよう前記環境調整器10を制御するとともに、前記腐食センサー9の送信する腐食度情報を受信して前記対象金属の腐食の程度を検知する制御装置3とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腐食センサーを備えた電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電池から供給される電力によりモータ等の電力負荷を駆動する電池システムにおいては、一般的に、電池システムが駆動される場所の環境条件によって、電池システムを構成する金属に生じる腐食の程度が変化することが知られている。
当該金属の腐食が進むと電池システムの故障等を引き起こす可能性がある。そこで、電池システムの故障等を防止すべく、電池システムの内部の金属のうち、腐食の程度を検知したい金属(以下、「対象金属」という)に腐食センサーを適宜配置し、対象金属の腐食の程度を的確に把握することで、電池システムの修理等を適切に実施する技術が開発されている(特許文献1参照)。
また、腐食センサーとしては、基板を対象金属と同一の金属とし且つ湿度に応じて発生する水膜を利用して腐食の程度を検知するAtmospheric Corrosion Monitor型(ACM型)腐食センサーも開発されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−134162公報
【特許文献2】特開2010−133748公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電池システムの構造によっては、対象金属に腐食センサーを配置するための空間が十分に確保できない場合がありうる。
この場合には、対象金属の腐食の程度が正確に把握できない。従って、電池システムの適切な修理等の実施が困難であるため、結果として、電池システムが故障する恐れがある。
そこで、本発明は、対象金属に腐食センサーを配置できない場合であっても、対象金属の腐食の程度を適切に検知することができる電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の電池システムは、対象金属と、前記対象金属とは異なる位置に配置され、且つ、前記対象金属と同一の金属で形成されたダミー金属を備え腐食センサーと、前記ダミー金属の第1環境条件を調整する環境調整器と、前記対象金属の第2環境条件に対応する関連情報に基づき、前記第1環境条件を前記第2環境条件と実質的に同一とするよう前記環境調整器を制御するとともに、前記腐食センサーの送信する腐食度情報を受信して前記対象金属の腐食の程度を検知する制御装置とを有することを特徴とする。
【0006】
上記構成により、対象金属に腐食センサーを配置できない場合であっても、腐食センサーに備えられたダミー金属の環境条件を対象金属の環境条件と実質的に同一とすることができる。このため、腐食センサーから得られる腐食度情報によって対象金属の腐食の程度を適切に検知することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の電池システムによれば、対象金属に腐食センサーを配置できない場合であっても、対象金属の腐食の程度を適切に検知することができる電池システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態としての電池システムにおける回路概要図である。
【図2】図1の電池システムの一部を抜粋した構成概要図である。
【図3】図1のA−A´線でのYZ平面断面概要図等である。
【図4】図1の電池システムにおけるダミー金属部6の一例を示す概要図である。
【図5】図1の電池システムにおけるダミー金属部6の他の例を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の電池システムは、対象金属と同一金属からなるダミー金属を備えた腐食センサーを用い、当該腐食センサーを対象金属と異なる位置に配置し且つ当該腐食センサーの環境条件を対象金属の環境条件と実質的に同じとなるよう制御することで、当該腐食センサーの検知する腐食の程度を対象金属の腐食の程度とみなして適宜制御・処理を行うことを特徴の1つとしている。以下、図面を参照しながら、詳述する。
【0010】
以下、本発明の実施形態の電池システム1につき図面を参照して説明する。図1は、電池システム1の回路概要図である。電池システム1で用いる電池セルCE(CEa〜CEh)は、電池システム1の用途に応じて一次電池または二次電池等のいずれの電池でも、また、積層型または捲回型のいずれの電池でも用いることが可能であるが、ここでは一例として、充放電可能な電池セル、例えば蓄電池であるリチウムイオン二次電池の電池セルを用いて説明する。
【0011】
電池システム1は、電池モジュール2、上位制御装置3、表示装置4、電力負荷5、ダミー金属部6を備えている。ここで、電池システム1は、例えば、電力負荷5である電気モータに車輪を接続したフォークリフトなどの産業車両、電車、または電気自動車などの移動体、並びに電力負荷5である電気モータにプロペラまたはスクリューを接続した飛行機または船などの移動体であってもよい。さらに、電池システム1は、例えば家庭用の電力貯蔵システムや、風車や太陽光のような自然エネルギー発電と組み合わせた系統連系円滑化蓄電システムなどの定置用のシステムであってもよい。すなわち、電池システム1は、電池セルの充電または放電を利用するシステムである。
【0012】
電池モジュール2は、複数の電池セルCEa〜CEhからなる組電池と、当該組電池の監視制御装置であるBMS(Battery Management System)7と、組電池を冷却するための空冷用のファン8とを含んでおり、電池システム1の外部から電池システム1の内部へはめ込まれて固定される。かようにモジュールとすることで、電池システム1の外部から容易に交換が可能となっている。
電池モジュール2内の組電池は、直列接続された電池セルCEa〜CEdからなる第1アームと直列接続された電池セルCEe〜CEhからなる第2アームとが並列に接続されて構成されている。組電池を構成する複数の電池セルCEa〜CEhには、各々の電池セルの温度をそれぞれ計測するための温度センサーTa〜Thおよび各々の電池セルのセル電圧をそれぞれ計測するための電圧センサーVa〜Vhが、各々の電池セルにそれぞれ1つずつ対応して配置されている。
また、各アームには対応する電流センサー、具体的には、第1アームに対して電流センサーIaおよび第2アームに対して電流センサーIbが1つずつ配置されており、各アームを流れる電流を計測することができる。
これら各種のセンサーにより計測され且つ出力された計測情報は、バスケーブルを介してBMS7に入力される。
【0013】
BMS7は、当該計測情報に基づいて、組電池の「関連情報」(上記計測情報に関連した情報であり、BMS7にて演算される各電池セルの充電率(SOC)やファン8の回転数を含む)を適宜演算する。また、当該計測情報のうち、各温度センサーの計測情報に基づいて(例えば、各温度センサーの計測情報の中で最高温度に対応する値を示す計測情報に基づいて)、ファン8の回転数を適宜制御する。
なお、ここでは4つの電池セルが直列接続されて1つのアームを形成し、計2つのアーム(第1アーム及び第2アーム)が並列に接続されている構成としている。しかしながら、アームの個数及び各アームに接続される電池セルの個数はいかようにも設計可能である。従って、アームの個数及び各アームに接続される電池セルの個数は、各々1つであっても各々複数であってもよい。
【0014】
上位制御装置3は、ユーザーの指示(例えば、電池システム1が船の場合には、スクリュー回転数の増減のためのスロットル操作)に応じて電力負荷5を制御する。
また、上位制御装置3は、BMS7から送信される組電池の関連情報及び後述のダミー金属部6から送信される「腐食度情報」を受信した後、表示装置4を制御して、適宜、当該関連情報及び当該腐食度情報を表示装置4に表示させる。この際、上位制御装置3は、当該関連情報または当該腐食度情報が異常値(少なくとも修理が必要であることを意味する所定値)であると判断した場合には、表示装置4に内蔵された異常灯を点灯させる等するとともに、表示装置4に内蔵されたブザー等の音響機器を作動させて警報音を鳴らし、光と音により視覚および聴覚を刺激してユーザーの注意を促す。
ここで、表示装置4は、例えば上記音響装置を備えた液晶パネル等のモニターであり、上位制御装置3からの制御に基づいて組電池を構成する複数の各電池セルCEa〜CEhの上記関連情報及び上記腐食度情報の表示等を行うことができる。
また、電力負荷5は、例えば船のスクリューを駆動するための電気モータ等の電力変換器である。
なお、上位制御装置3、表示装置4、および電力負荷5は、電池システム1に予め組み込まれている。また、上位制御装置3、BMS7、または後述の環境制御部11を併せて単に「制御装置」という場合もある。
【0015】
ダミー金属部6は、電池システム1の外部から電池システム1の内部へはめ込まれて固定される。ダミー金属部6は、電池モジュール2と同様、モジュールとして形成されているので、電池システム1の外部から容易に交換可能となっている。
ダミー金属部6は、電池システム1を構成する金属のうち、腐食の状態を検知する対象である「対象金属」と同一の金属である「ダミー金属」を備えた腐食センサー9と、腐食センサー9の環境条件(後述する)を調整する環境調整器10と、環境調整器10を制御する環境制御部11とを備えている。ダミー金属部6の具体例については、後述する。
環境制御部11は、対象金属の配置されている場所の環境条件(以下、「対象金属環境条件」という)に関する関連情報を上位制御装置3から受信し、当該関連情報に基づいて環境調整器10を制御することで、環境調整器10に近接して配置された腐食センサー9の配置されている場所の環境条件(以下、「ダミー金属部環境条件」という)を対象金属環境条件と実質的に同一とする。
腐食センサー9は、ダミー金属の腐食の程度(腐食度)を計測し、当該計測により得られた計測情報(「腐食度情報」という)を上位制御装置3へ送信する。
【0016】
では、図2及び図3を用いて、電池システム1の一部の具体的構成の一例につき説明する。図2及び図3に示す構成のうち、図1で示した構成と同一の構成については、図1と同一番号及び同一記号を付している。
なお、図2及び図3は、図1に示した電池システム1の一部の具体的構成の例であるので、図1に示した全ての構成が記載されているわけではない。
【0017】
図2で示す電池モジュール2では、XY平面に配置された略矩形の底板と、当該底板の4辺の各々にそれぞれ対応し且つ当該底板から+Z方向に延びる4つの側板と、当該4つの側板により形成される開口を閉じるための蓋(図示なし)とからなるモジュール容器12の内部に、角型且つ同一形状の電池セルCEa〜CEhを整列させて配置している。これら電池セルの各々は、正極端子14と負極端子15をそれぞれ備えている。なお、図2では、図3で述べるヒートシンク13bについては、図示を省略している。
そして、第1アームを構成する電池セルCEa〜CEdの正極端子14と負極端子15は、電池セルCEa〜CEdが電気的に直列接続となるように、一点鎖線で示すバスバー13aで適宜接続される。同様に、第2アームを構成する電池セルCEe〜CEhの正極端子14と負極端子15は、電池セルCEe〜CEhが電気的に直列接続となるように、一点鎖線で示すバスバー13aで適宜接続される。
また、第1アームと第2アームが電気的に並列接続となるように、第1アームの電池セルCEaの正極端子14と第2アームの電池セルCEeの正極端子14がやはり一点鎖線で示すT字型のバスバー(モジュール正極端子)16で接続され、また、第1アームの電池セルCEdの負極端子15と第2アームの電池セルCEhの負極端子15がやはり一点鎖線で示すT字型のバスバー(モジュール負極端子)17で接続されている。モジュール正極端子16とモジュール負極端子17は、それぞれ図1の電力負荷5に電気的に接続される。
【0018】
図1に示した温度センサーTa〜Th、電圧センサーVa〜Vh、電流センサーIa及びIbは、説明の簡便のため図2では図示を省略しているが、実際には上述した計測情報を適切に得られるよう、モジュール容器12の内部に配置されている。そして、それらの計測情報はバスケーブルを介して、上記側板の1つにモジュール容器12の外部から固定されたBMS7に送信される。
また、モジュール容器12の側板の1つには、モジュール容器12の外部から内部へ電池セルCEa〜CEhを冷却するための外気(大気)を送風するファン8が配置されている。ファン8は、バスケーブル19を介してBMS7に接続されている。BMS7は、バスケーブル19を介してファン8へ制御信号を送信することで、ファン8の回転数を増加または減少させる制御をすることができる。
なお、図示していないが、ファン8の駆動用電力は、電池セルCEa〜CEhのいずれか一つから供給を受ける構成としている。
【0019】
図3(a)に、図2のA−A´線におけるZY平面断面概要図を示す。図3(a)に示すように、第1アームを構成する電池セルCEa〜CEdは、これら電池セルのX方向の寸法及びZ方向の寸法と実質的に同一の寸法をもつヒートシンク13bを、各電池セルCEa〜CEdの間に配置している。具体的には、モジュール容器12の側板と電池セルCEaの間、電池セルCEaと電池セルCEbの間、電池セルCEbと電池セルCEcの間、電池セルCEcと電池セルCEdの間、および電池セルCEdとモジュール容器12の側板の間のそれぞれに対応して5つのヒートシンク13bが当該壁面や当該電池セルと密着して配置されている。
ヒートシンク13bは熱伝導のよい金属、例えばアルミニウム等の金属で形成されている。図3(b)の第1アームにおけるXY平面概要図に示すように、ヒートシンク13bは、板状であって、且つ、Z方向に延びる実質的に同一形状の管が複数集合したような形状である。
そして、ファン8からモジュール容器12へ導入された冷媒としての大気を各ヒートシンク13bのそれぞれに導入するため、モジュール容器12の底板から+Z方向に所定の間隔を空けて配置され、且つ、ヒートシンク13bのXY平面形状と実質的に同一形状の貫通孔であって各ヒートシンク13bの位置に対応して形成された貫通孔を備えた中板27が配置されている。第1アームの各電池セルCEa〜CEdは、底板ではなく、この中板27の上に配置される。従って、ファン8からモジュール容器12へ導入された大気は、底板と中板27との間を通り、各ヒートシンク13bの管の−Z側から+Z側へ抜け、モジュール容器12に形成された排気口からモジュール容器12の外部へ排出されることになる。
【0020】
電池モジュール2の外部に存在する上位制御装置3は、バスケーブル18を介してBMS7と接続されている。そして、上述のように、BMS7がバスケーブル18を介して関連情報を上位制御装置3へ送信する。
【0021】
では、次に、ダミー金属部6につき説明する。電池システム1の対象金属と電池システム1のその他の構成部分においては、それらの位置によって環境条件(温度、湿度、雰囲気(後述する)の成分、雰囲気の流速、振動の程度など)が種々異なる場合がある。そこで、ここでは、説明の簡便のため、複数存在する環境条件のうち、1つの環境条件に着目して説明する。
当該着目する環境条件は、電池システム1の対象金属と電池システム1のその他の構成部分において大きく異なる環境条件であることが望ましい。そこで、まず、当該大きく異なる環境条件を「温度」とし、対象金属として高温となりうる部材であるバスバー13aを用い、さらにダミー金属部6として図4に示すダミー金属部6aを用いて説明する。
【0022】
モジュール容器12の中に配置されるバスバー13aは、電力負荷5を駆動するための大電流が流れる部材であり、電力負荷5を駆動時には電池システム1の構成部材の中でも特に高温となることが知られている。
一方、バスバー13aは、電気抵抗が小さく且つ熱伝導率の高い金属である銅等で形成されている。バスバー13aは、腐食すると電気抵抗が増加して電池システム1の能力を低下させるため、電池システム1においては腐食の程度を検知したい箇所の一つである。 しかし、モジュール容器12の内部の空間は狭いため、特許文献2に示した公知のACM型腐食センサーなどをバスバー13aに直接的に配置することは容易でない。また、当該腐食センサーをバスバー13aに配置することが可能であっても、バスバー13aの放熱が阻害されて電池システム1の性能を低減させる恐れがあるため、やはりバスバー13aに当該腐食センサーを配置するのは望ましくない。
すなわち、バスバー13aは、電池システム1の対象金属と電池システム1のその他の構成部分において大きく異なる環境条件を「温度」とした場合の対象金属にふさわしい部材の1つである。
【0023】
ダミー金属部6aは、モジュール容器12の外部に配置している。配置の容易でないモジュール容器12の内部ではなく外部であって且つ電池システム1の内部で配置しやすい箇所であれば、ダミー金属部6aをいずれに配置してもよい。例えば、ダミー金属部6aをモジュール容器12の側板の1つに固定してもよい。
ダミー金属部6aは、バスケーブル20を介して上位制御装置3と接続されている。上述のとおり、上位制御装置3は、バスケーブル20を介して「対象金属環境条件」に関する関連情報をダミー金属部6に送信し、ダミー金属部6aは、バスケーブル20を介して「腐食度情報」を上位制御装置3へ送信する。
【0024】
ダミー金属部6aでは、腐食センサー9として、特許文献2に示した公知のACM型腐食センサーを用いている。具体的には、ここでは、バスバー13aを対象金属としているので、バスバー13aと同一の金属からなる基板(ダミー金属21)として配置する。そして、同基板の上に絶縁体22、絶縁体22の上に導電体23を配置し、導電体23と基板との間に電流計24を接続する。電流計24の計測した電流値が「腐食度情報」として上位制御装置3へ送信される。腐食センサー9は、かように特許文献2に示した公知のACM型腐食センサーを用いるので、動作原理等の説明は省略する。
上述のように、「対象金属環境条件」と「ダミー金属部環境条件」とで異なる環境条件は、温度である。そのため、図3で示す環境調整器10は、ヒーター25と、ダミー金属21の温度を計測する温度センサー26とを含んで構成される。
環境制御部11は、上位制御装置3から、組電池の温度に関する関連情報、例えば、BMS7が算出した組電池の平均値に関する関連情報を受信して、温度センサー26の計測した温度が当該平均値と実質的に同じとなるまでヒーター25を昇温させる。
これにより、「対象金属環境条件」と「ダミー金属部環境条件」とを実質的に同一とすることができるので、ダミー金属部6の腐食度情報により、実際には腐食の程度を計測していないにもかかわらず、対象金属としてのバスバー13aの腐食の程度を適切に検知することができる。
なお、電池モジュール2内の温度センサーTa〜Thは、このとき、各電池セルCEa〜CEhの正極端子14付近または負極端子15付近に配置する。正極端子14や負極端子15の電極端子は、電池セルの部位の中でバスバー13aに最も近く接続される部位であるため、電極端子の温度をバスバー13aの温度をみなすことができるからである。もちろん、バスバー13aの温度を計測するための温度センサーを別途配置してもよい。
【0025】
以上の説明では、電池システム1の対象金属と電池システム1のその他の構成部分において、最も大きく異なる環境条件が「温度」である場合について説明したが、「温度」ではなく、電池セルを取り巻く周囲の流体(気体または液体などであって、「雰囲気」ともいう)の流速である場合には、腐食するとその管の径が小さくなるヒートシンク13bを対象金属として用い、図5に示すダミー金属部6bをダミー金属部6として用いることができる。
【0026】
モジュール容器12の中に配置されるヒートシンク13bは、電池セルを効率よく冷却するために実質的に同一形状の管が複数集合したような形状をした金属部材であるが、当該管の中を通過させる雰囲気の種類によっては、腐食が生じやすい部材である。例えば、電池システム1が船であり且つ電池モジュール2が空冷される場合には、塩分と水分を含む大気が冷媒として流れ込むため、腐食の進行が早いのが知られている。ヒートシンク13bが腐食すると上記管の径が狭くなることで当該管の内部を通過する雰囲気の流速が低下し、結果として電池セルの冷却が効果的に行われなくなるため、電池システム1においては腐食の程度を検知したい箇所の一つである。
しかし、モジュール容器12の内部の空間は狭く、特に図3に示す板状のヒートシンク13bの周囲には電池セル等が密着されるため、上記公知のACM型腐食センサーなどを直接的に配置することは容易でない。また、当該腐食センサーをヒートシンク13bに配置することが可能であっても、ヒートシンク13bの放熱が阻害されて電池システム1の性能を低減させる恐れがあるため、やはりヒートシンク13bに当該腐食センサーを配置するのは望ましくない。
すなわち、ヒートシンク13bは、電池システム1の対象金属と電池システム1のその他の構成部分において大きく異なる環境条件を雰囲気の「流速」とした場合の対象金属にふさわしい部材の1つである。
【0027】
ダミー金属部6bの腐食センサー9は、ヒートシンク13bと同一金属及び同一形状(実質的に同一形状の複数の管が集合したような形状)のダミー金属21と、ダミー金属21の管の一方の口に配置された流速計29と、ダミー金属21と流速計20とを固定するダミー金属部容器28とを含んで構成される。流速計29の計測した値が「腐食度情報」としてバスケーブル20を介して上位制御装置3へ送信される。流速計29は、公知の流速計を用いるので、動作原理等の説明は省略する。
図5における環境調整器10は、ダミー金属21の管の他方の口に配置されたファンである。
環境制御部11は、バスケーブル30を介してファンである環境調整器10に接続されており、上位制御装置3からバスケーブル20を介してファン8の回転数に関する関連情報を受信して、環境調整器10のファンが取り込む冷媒の流速が、ファン8の取り込む冷媒と実質的に同じ流速になるよう、環境調整器10のファンの回転数を制御する。
これにより、「対象金属環境条件」と「ダミー金属部環境条件」とを実質的に同一とすることができるので、ダミー金属部6の腐食度情報により、対象金属であるヒートシンク13bの腐食の程度を適切に検知することができる。
【0028】
本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない限りで種々の変形が可能である。
例えば、上記の例では、環境条件として「温度」または「流速」の1つに着目して説明したが、複数の環境条件(温度、湿度、雰囲気の成分、雰囲気の流速、振動の程度など)を同時に考慮して「対象金属環境条件」と「ダミー金属部環境条件」とを実質的に同一とする構成としてもよい。
また、上記の例では、対象金属を電池モジュール2の内部の構成部分としたが、電池システム1の構成部分であれば、いずれの構成部分を対象金属としてもよい。
【符号の説明】
【0029】
1…電池システム、2…電池モジュール、3…上位制御装置、4…表示装置、
5…電力負荷、6(6a、6b)…ダミー金属部、7…BMS、8…空冷用ファン、
9…腐食センサー、10…環境調整器、11…環境制御部、12…モジュール容器、
13…対象金属(13a:バスバー、13b:ヒートシンク)、
14…正極端子、15…負極端子、
16…モジュール正極端子、17…モジュール負極端子、
18…バスケーブル、19…バスケーブル、20…バスケーブル、
21…ダミー金属、22…絶縁体、23…導電体、24…電流計、
25…ヒーター、26…温度センサー、27…中板、
28…ダミー金属部容器、29…流速計、30…バスケーブル




【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象金属と、
前記対象金属とは異なる位置に配置され、且つ、前記対象金属と同一の金属で形成されたダミー金属を備えた腐食センサーと、
前記ダミー金属の第1環境条件を調整する環境調整器と、
前記対象金属の第2環境条件に対応する関連情報に基づき、前記第1環境条件を前記第2環境条件と実質的に同一とするよう前記環境調整器を制御するとともに、前記腐食センサーの送信する腐食度情報を受信して前記対象金属の腐食の程度を検知する制御装置と
を有することを特徴とする電池システム。
【請求項2】
前記第1環境条件は前記ダミー金属の温度であり、前記第2環境条件は前記対象金属の温度であることを特徴とする請求項1に記載の電池システム。
【請求項3】
前記環境調整器は、ヒーターであることを特徴とする請求項2に記載の電池システム。
【請求項4】
前記第1環境条件は前記ダミー金属の雰囲気の流速であり、前記第2環境条件は前記対象金属の雰囲気の流速であることを特徴とする請求項1に記載の電池システム。
【請求項5】
前記環境調整器は、ファンであることを特徴とする請求項4に記載の電池システム。
【請求項6】
異常灯または音響機器を備えた表示装置をさらに有し、
前記制御装置は、前記腐食度情報が異常値に対応する場合に、前記表示装置を駆動して
前記異常灯を点灯または前記音響機器から警報音を鳴らすことを特徴とする請求項1及至5のいずれか一項に記載の電池システム。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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