説明

電池パック、及びその製造方法

【課題】電池セルの外周部と枠型ケースの内周部との間のクリアランスを小さくし、電池パックの小型化を図る。
【解決手段】厚み方向に四側面を有し、一側面に接続端子4が配されたセル組立品3と、セル組立品3の四側面が内周部に嵌め込まれる四角形状の枠型ケース5と、を備える。枠型ケース5の、セル組立品3の一側面に対向する枠部5aと交差する一組の枠部5c、5dは、一組の枠部5c、5dを、枠型ケース5の内周部に嵌め込まれたセル組立品3の厚み方向に弾性変形させるための変形促進部17を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枠状ケースの内周部に電池セルが嵌め込まれて構成される電池パック、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電池パックは、各種の携帯型の電子機器に用いられており、携帯型の電子機器の更なる小型化を図るために、電池パックの小型化が求められている。
【0003】
この種の電池パックとしては、電池セルと、電池セルが内周部に嵌め込まれる枠状ケースと、を備える電池パックが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
本発明に関連する電池パックは、セル組立品と、セル組立品が内周部に嵌め込まれる長方形状の枠型ケースと、枠型ケースの内周部に嵌め込まれたセル組立品と枠型ケースとに跨って貼り付けられるラベルと、を備えている。
【0005】
図7に示すように、本発明に関連する電池パックが備える枠型ケース105は、セル組立品の、接続端子が設けられた一側面と対向する短辺方向の枠部105aと、枠部105aに対向する短辺方向の枠部105bと、枠部105a、105bに直交する長辺方向の一組の枠部105c、105dと、を有している。枠型ケース105の内周部は、セル組立品を嵌め込むことが可能にするために、セル組立品の外形寸法に対して所定のクリアランスが確保されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−73203号公報
【特許文献2】特開2009−4264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述したように、本発明に関連する電池パックでは、所定のクリアランスが、枠型ケースの内周部の長辺方向の長さを、長方形状のセル組立品の長辺方向の長さよりもやや大きくすることで設定されている。
【0008】
したがって、本発明に関連する電池パックでは、枠型ケースを、クリアランスの寸法分だけ小さくすることが困難であり、このクリアランスの寸法分だけ小型化が妨げられているという不都合がある。
【0009】
また、電池パックが備える枠型ケースの振る舞いについて、図面を参照して説明する。図8Aに、本発明に関連する枠型ケースが変形していない状態の模式的な平面図を示す。図8Bに、本発明に関連する枠型ケースが変形した状態の模式的な平面図を示す。
【0010】
図8A及び図8Bに示すように、枠型ケース105は、クリアランスを有することで、枠型ケース105に無用な力が加わったときに枠型ケース105の短辺方向の枠部が内側に撓む変形を招いてしまう。ラベルを貼り付けるときに枠型ケースが撓んでいた場合、枠型ケースの枠部が変形した状態でラベルが貼り付けられてしまう問題がある。したがって、ラベルを貼り付けるときに枠型ケースを変形させないように取り扱う必要があり、組立工程での作業性が低下する不都合がある。
【0011】
そこで、本発明は、上記関連する技術の課題を解決することができる電池パック、及びその製造方法を提供することを目的とする。本発明の目的の一例は、電池セルの外周部と外装枠の内周部とのクリアランスを小さくし、電池パック全体の小型化を実現できる電池パック、及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した目的を達成するため、本発明に係る電池パックは、厚み方向に四側面を有し、一側面に接続端子が配された電池セルと、電池セルの四側面が内周部に嵌め込まれる四角形状の外装枠と、を備える。外装枠の、電池セルの一側面に対向する枠部と交差する一組の枠部は、一組の枠部を、外装枠の内周部に嵌め込まれた電池セルの厚み方向に弾性変形させるための変形促進部を有する。
【0013】
また、本発明に係る電池パックの製造方法は、厚み方向に四側面を有し、一側面に接続端子が配された電池セルと、電池セルの四側面が内周部に嵌め込まれる四角形状の外装枠と、を備える電池パックの製造方法であって、外装枠の、電池セルの一側面に対向する枠部と交差する一組の枠部に設けられた変形促進部で、一組の枠部を、外装枠の内周部に嵌め込まれたときの電池セルの厚み方向に弾性変形させた状態で、外装枠の内周部に電池セルを嵌め込む工程を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、一組の枠部が有する変形促進部を弾性変形させて、外装枠の内周部に電池セルを嵌め込むことが可能になるので、電池セルの外周部と外装枠の内周部との間のクリアランスを小さく設定することが可能になる。その結果、本発明は、電池パック全体を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態の電池パックを示す斜視図である。
【図2】実施形態の電池パックを示す分解斜視図である。
【図3】実施形態におけるセル組立品を示す分解斜視図である。
【図4】実施形態における枠型ケースを示す斜視図である。
【図5】実施形態における枠型ケースの変形促進部がラベルで覆われる状態を示す斜視図である。
【図6】実施形態における枠型ケースが弾性変形する状態を模式的に示す斜視図である。
【図7】本発明に関連する電池パックが備える枠型ケースを示す斜視図である。
【図8A】本発明に関連する枠型ケースが変形していない状態を模式的に示す平面図である。
【図8B】本発明に関連する枠型ケースが変形した状態を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の具体的な実施形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
図1に、実施形態の電池パックの斜視図を示す。図2に、実施形態の電池パックの解斜視図を示す。図3に、実施形態におけるセル組立品の分解斜視図を示す。
【0018】
図1及び図2に示すように、実施形態の電池パック1は、厚み方向に四側面を有し、一側面に接続端子4が配された電池セルとしてのセル組立品3と、セル組立品3の四側面が内周部に嵌め込まれる長方形状の外装枠としての枠型ケース5と、枠型ケース5の内周部に嵌め込まれたセル組立品3と枠型ケース5とに跨って貼り付けられる被覆材としてのラベル6と、を備えている。
【0019】
セル組立品3は、図3に示すように、面積が広い上面と、この上面の反対側の下面と、四側面を有する扁平六面体に構成されたセル10を有している。セル10としては、リチウムイオン二次電池が用いられている。
【0020】
また、セル10の一側面には、接続端子4が設けられており、この接続端子4と電気的に接続される端子部を有する保護回路基板11と、保護回路基板11を保持する基板ホルダ12が設けられている。また、セル10の一側面には、接続端子4の周囲に絶縁紙13が設けられるとともに、保護回路基板11と電気的に接続されたPTC(positive temperature coefficient)素子14が設けられている。
【0021】
図4に、実施形態における枠型ケースの斜視図を示す。図4に示すように、枠型ケース5は、セル組立品3の一側面に対向する短辺方向(X方向)の枠部5aと、この枠部5aに対向する短辺方向の枠部5bと、枠部5a、5bと直交する長辺方向(Y方向)の一組の枠部5c、5dと、を有している。
【0022】
枠型ケース5の内周部は、セル組立品3を嵌め込むことが可能にするために、セル組立品3の外形寸法に対して所定のクリアランスLが確保されている。
【0023】
セル組立品3の一側面に対向する枠部5aには、開口部16が設けられており、枠部5aに保護回路基板11を嵌め込むことで、保護回路基板11の端子部が開口部16から電池パック1の外部に面するように構成されている。
【0024】
一組の枠部5b、5cは、この一組の枠部5c、5dを、枠型ケース5の内周部に嵌め込まれたセル組立品3の厚み方向、すなわち図中に示すZ方向に弾性変形させるための変形促進部17を有している。
【0025】
変形促進部17は、一組の枠部5c、5dの中央部をセル組立品3の厚み方向に容易に弾性変形させるために枠部5c、5dの剛性を意図的に低下させた部分である。変形促進部17は、一組の枠部5c、5dの長手方向に延ばされた長穴状の2つのスリット17aを有している。なお、変形促進部は、スリットを有する構成に限定するものではなく、弾性変形させる枠部の剛性に応じて、枠部5c、5dを貫通しない溝状に形成されてもよいことは勿論である。
【0026】
本実施形態における枠型ケース5は、変形促進部17を有するので、上述した本発明に関連する枠型ケースと比較して、内周部の長手方向に対する所定のクリアランスLが小さく設定されている。したがって、枠型ケース5は、クリアランスLが小さく設定されたことによって、枠型ケース5の小型化が実現されている。
【0027】
図5に、実施形態における枠型ケース5の変形促進部17がラベル6で覆われる状態の斜視図を示す。ラベル6は、合成樹脂材によって形成されており、図5に示すように、セル組立品3における、接続端子4が配された一側面の周方向に沿って設けられる。ラベル6は、変形促進部17を覆って設けられることで、変形促進部17が隠される。このため、枠部5c、5dの変形促進部17によって電池パック1の外観が損なわれることがない。
【0028】
以上のように構成された電池パック1について、セル組立品3を枠型ケース5の内周部に嵌め込むときの動作を説明する。図6に、実施形態における枠型ケース5が弾性変形する状態の模式的な斜視図を示す。
【0029】
まず、枠型ケース5の内周部にセル組立品3の一端側を挿入し、枠部5aにセル組立品3の保護回路基板11を係合させる。続いて、枠部5aにセル組立品3の保護回路基板11側を係合させた状態で、図6に示すように、変形促進部17によって、一組の枠部5c、5dをZ方向に向かって弾性変形させる。一組の枠部5c、5dを弾性変形させることで、枠型ケース5の内周部にセル組立品3を容易に嵌め込むことが可能になる。
【0030】
一組の枠部5c、5dを変形促進部17で弾性変形させた状態で、枠型ケース5の内周部の装着位置にセル組立品3を配置し、弾性変形させた一組の枠部5c、5dを初期状態に戻す。これによって、セル組立品3は、枠型ケース5の内周部に円滑に嵌め込まれる。
【0031】
また、枠型ケース5に嵌め込まれたセル組立品3は、枠型ケース5の一組の枠部5c、5dを変形促進部17で変形させることで、枠型ケース5の内周部から容易に取り外すことができる。
【0032】
上述したように、実施形態の電池パック1によれば、枠型ケース5の内周部にセル組立品3を嵌め込むときに一組の枠部5c、5dが有する変形促進部17が弾性変形するので、セル組立品3と枠型ケース5との間の、一組の枠部5c、5dの長手方向に対するクリアランスLを小さく設定することが可能になる。その結果、実施形態によれば、クリアランスLを減らした分だけ枠型ケース5を小さく構成することが可能になり、電池パック1の小型化を実現することができる。
【0033】
また、本実施形態における枠型ケース5は、クリアランスLが小さいので、セル組立品3が嵌め込まれた枠型ケース5にラベル6を貼り付けるときに、枠部5a、5bが内側に撓むことが抑えられ、枠型ケース5の取り扱いが容易になる。このため、枠部5a、5bが内側に撓んだ状態でラベル6が貼り付けられた不良品の発生が減り、ラベル6の貼り付け工程での作業性を向上することができる。
【0034】
なお、本実施形態の電池パックでは、変形促進部が、長辺方向の枠部の中央部に形成されて構成されたが、変形促進部の位置や個数が限定されるものではなく、必要に応じて、変形促進部が枠部の他の位置や、1つの枠部の複数の箇所に形成されて構成されてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 電池パック
3 セル組立品
4 接続端子
5 枠型ケース
5a、5b、5c、5d 枠部
17 変形促進部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向に四側面を有し、一側面に接続端子が配された電池セルと、前記電池セルの前記四側面が内周部に嵌め込まれる四角形状の外装枠と、を備え、
前記外装枠の、前記電池セルの前記一側面に対向する枠部と交差する一組の枠部は、該一組の枠部を、前記外装枠の内周部に嵌め込まれた前記電池セルの前記厚み方向に弾性変形させるための変形促進部を有する、電池パック。
【請求項2】
前記変形促進部は、前記一組の枠部が延びる長手方向の一部の剛性を小さくして設けられている、請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記変形促進部は、前記一組の枠部の前記長手方向の中央に設けられている、請求項2に記載の電池パック。
【請求項4】
前記変形促進部は、前記一組の枠部の前記長手方向に延びる長穴を有する、請求項3に記載の電池パック。
【請求項5】
前記電池セルの前記一側面の周方向に沿って、前記外装枠と、前記外装体に嵌め込まれた前記電池セルとに跨って設けられる被覆材を備え、
前記被覆材は前記変形促進部を覆う、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の電池パック。
【請求項6】
厚み方向に四側面を有し、一側面に接続端子が配された電池セルと、前記電池セルの前記四側面が内周部に嵌め込まれる四角形状の外装枠と、を備える電池パックの製造方法であって、
前記外装枠の、前記電池セルの前記一側面に対向する枠部と交差する一組の枠部に設けられた変形促進部で、前記一組の枠部を、前記外装枠の内周部に嵌め込まれたときの前記電池セルの前記厚み方向に弾性変形させた状態で、前記外装枠の内周部に前記電池セルを嵌め込む工程を有する、電池パックの製造方法。
【請求項7】
前記電池セルの前記一側面の周方向に沿って、前記外装枠と、前記外装体に嵌め込まれた前記電池セルとに跨って被覆材を設けるとともに、前記被覆材によって前記変形促進部を覆う工程を有する、請求項6に記載の、電池パックの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【公開番号】特開2012−230812(P2012−230812A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98144(P2011−98144)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】