電池パック、電池パックの製造方法、蓄電システム、電子機器、電動車両および電力システム
【課題】電池を被覆する成型部がその部位によって適切な物性を有する電池パックを提供する。
【解決手段】電池の外表面の少なくとも一部を被覆する反応硬化性樹脂からなる成型部は、厚みが大きい第1の部位と、反応硬化性樹脂の厚みが第1の部位に比して小さい第2の部位とを一体に有する。成型部が条件1および条件2の少なくとも一つを満たす。条件1は、第2の部位の最大降伏応力が第1の部位の最大降伏応力に比べて、3%以上100%以下大きいことである。条件2は、第2の部位の最大降伏応力が第1の部位の最大降伏応力に比べて、3%以上100%以下大きいことである。
【解決手段】電池の外表面の少なくとも一部を被覆する反応硬化性樹脂からなる成型部は、厚みが大きい第1の部位と、反応硬化性樹脂の厚みが第1の部位に比して小さい第2の部位とを一体に有する。成型部が条件1および条件2の少なくとも一つを満たす。条件1は、第2の部位の最大降伏応力が第1の部位の最大降伏応力に比べて、3%以上100%以下大きいことである。条件2は、第2の部位の最大降伏応力が第1の部位の最大降伏応力に比べて、3%以上100%以下大きいことである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば2次電池の電池パック、電池パックの製造方法、電池パックを使用する蓄電システム、電子機器、電動車両および電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン2次電池等の電池を含む電池パックは、モバイル電子機器、電動車両、バックアップ電源等として広く使用されている。一般的に、電池パックは、1または複数の2次電池(セルとも称される)と、電池の電圧、電流、温度を検出する検出部を含む保護回路とがラミネートフィルム、合成樹脂ケース等の外装によって一体化されている構成とされる。電池パックは、認証抵抗、認証回路を有する場合もある。
【0003】
電子機器の小型軽量化実現のために、電池設計も軽く、薄型であり、かつ機器内の収納スペースを効率的に使うことが求められている。このような要求を満たす電池として、エネルギー密度および出力密度の大きいリチウムイオン2次電池が最も好適である。
【0004】
リチウムイオン2次電池は、リチウムイオンをドープ・脱ドープすることができる正極及び負極を有する電池素子を備え、この電池素子を金属缶や金属ラミネートフィルムに封入すると共に、電池素子と電気的に接続した回路基板によって充放電時の保護動作を制御するようにされている。
【0005】
中でも、従来の液系電解液を用いた場合に問題となる電解液の液漏れを防止するために、ゲル状のポリマー電解質を用いたリチウムイオンポリマー2次電池が広く用いられている。リチウムイオンポリマー2次電池は、電極端子を接続し、両面にポリマー電解質を塗布した帯状の正極および負極をセパレータを介して積層した後、長手方向に巻回して電池素子を作製する。そして、この電池素子をラミネートフィルムで外装して電池とし、電池を樹脂モールドケースに収納することにより、電池パックとしている。
【0006】
特許文献1または特許文献2に記載されているように、組立工程を極めて簡単にできる電池パックとして、外装ケースを使用しないパック電池が提案されている。すなわち、回路基板を電池に連結して電池部品とし、この電池部品を樹脂成形する金型の成形室に仮り止めし、成形室に溶融状態の反応硬化性樹脂を注入して電池パックが製造される。樹脂成形部は、電池パックの外装ケースを形成すると共に、回路基板や接続端子や電池を一体的に固定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−140757号公報
【特許文献2】特開2009−181802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
反応硬化性樹脂は熱可塑性樹脂に比べ流動性が良いので、電池パックの最大面の樹脂厚みの制約が流動性の観点では少ない一方で、高温などの異常時に電池の寸法変化を抑制するためには十分な強度を持たせる必要がある。そのため、樹脂厚みを厚くしており、電池のエネルギー密度を高めることに限界があった。
【0009】
従来では、電池および回路基板を共通の樹脂で被覆している。しかしながら、樹脂の部位によって、異なる物性が望ましい場合がある。例えば電池を被覆する樹脂と回路基板を被覆する樹脂とは必要とされる物性が異なっている。すなわち、電池を被覆する樹脂としては、電池の体積変化を吸収することを可能とするために、最大降伏応力が高いことが望ましく、回路基板を被覆する樹脂としては、耐衝撃性が優れていることが望ましい。
【0010】
電池パックの部位によって異なる物性を与えようとすると、従来は二色成型で行うか、別の樹脂を使用して成型された部品を用意する必要があった。しかしながら、このような成型方法は、1種類の樹脂によって1度の成型を行うのと比較して、効率が悪い問題があった。
【0011】
本開示の目的は、電池のエネルギー密度を高めながら、部位によって適応的に物性が制御された電池パック、電池パックの製造方法、電池パックを使用する蓄電システム、電子機器、電動車両および電力システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するために、本開示の電池パックは、1または複数の電池と、
電池の外表面の少なくとも一部を被覆する反応硬化性樹脂からなる成型部とを備え、
成型部は、反応硬化性樹脂の厚みが大きい第1の部位と、反応硬化性樹脂の厚みが第1の部位に比して小さい第2の部位とが一体に形成され、且つ以下の条件1および条件2の少なくとも一つを満たす電池パックである。
条件1:JIS K 7127に準じて測定される第2の部位の最大降伏応力が第1の部位の最大降伏応力に比べて、3%以上100%以下大きいこと
条件2:JIS K 7110に準じたアイゾット衝撃試験で測定される第1の部位の衝撃強さが、第2の部位の衝撃強さに比べて、3%以上100%以下大きいこと
【0013】
本開示は、1または複数の電池の外表面の少なくとも一部を反応硬化性樹脂からなる成型部によって被覆する際に、反応硬化性樹脂の反応熱を利用して部位によって異なる物性を与えるようにし、
反応硬化性樹脂の厚みが大きい第1の部位の樹脂厚t1と、反応硬化性樹脂の厚みが小さい第2の部位の樹脂厚t2との比(t1/t2)が13.5以上50以下である電池パックの製造方法である。
【0014】
本開示は、1または複数の電池の外表面の少なくとも一部を反応硬化性樹脂からなる成型部によって被覆する際に、
反応硬化性樹脂の厚みが大きい第1の部位を成形する金型の外表面の一部又は全面に、高温ブロックを当接し、
反応硬化性樹脂の厚みが第1の部位に比して小さい第2の部位を成形する金型の外表面の一部又は全面に、低温ブロックを当接し、
成形時の反応硬化性樹脂の温度を異ならせる電池パックの製造方法である。
【0015】
本開示は、上述した電池パックが、再生可能なエネルギーから発電を行う発電装置によって充電される蓄電システムである。
本開示は、上述した電池パックを有し、電池パックに接続される電子機器に電力を供給する蓄電システムである。
本開示は、上述した電池パックから電力の供給を受ける電子機器である。
本開示は、上述した電池パックから電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と、電池パックに関する情報に基づいて、車両制御に関する情報処理を行う制御装置とを有する電動車両である。
本開示は、他の機器とネットワークを介して信号を送受信する電力情報送受信部を有し、
電力情報送受信部が受信した情報に基づき、上述した電池パックの充放電制御を行う電力システムである。
本開示は、上述した電池パックから電力の供給を受け、または、発電装置または電力網から電池パックに電力を供給する電力システムである。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、1種類の樹脂例えば反応性硬化樹脂を使用して電池および回路基板を被覆し、耐衝撃性に優れ、最大降伏応力が大きい電池パックを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本開示における電池パックの外観の例を示す斜視図である。
【図2】電池素子の外装フィルムによる被膜工程の一例の説明に用いる略線図である。
【図3】電池素子の一例の説明に用いる斜視図である。
【図4】電池部品の樹脂成形時の説明に用いる略線図である。
【図5】電池部品の一例を示す平面図である。
【図6】金型の一例の斜視図である。
【図7】成型部の成形工程の一例の説明に用いる断面図である。
【図8】成型部の成形工程の一例の説明に用いる断面図である。
【図9】成型部の成形工程の他の例の説明に用いる断面図である。
【図10】金型の他の例の斜視図である。
【図11】成型部の成形工程の他の例の説明に用いる断面図である。
【図12】成型部の成形工程の他の例の説明に用いる断面図である。
【図13】成型部の成形工程のさらに他の例の説明に用いる断面図である。
【図14】外装部材を使用しない場合の成形工程の一例の説明に用いる断面図である。
【図15】外装部材を使用しない場合の成形工程の一例の説明に用いる断面図である。
【図16】外装部材を使用しない場合の成形工程の他の例の説明に用いる断面図である。
【図17】電池パックの応用例を説明するための略線図である。
【図18】電池パックの他の応用例を説明するための略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この本開示の実施の形態について説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本開示の好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、この発明の範囲は、以下の説明において、特に本開示を限定する旨の記載がない限り、これらの実施の形態に限定されないものとする。
【0019】
「電池パックの一例」
図1に示すように、電池パック1は、偏平な直方体の外観を有する。枠形状の外装部材(フレームとも称される)11、電池12および電池の保護回路基板13が一体的に反応硬化性樹脂からなる成型部(外装体)10によって被覆された構成を有する。電池12は、例えばラミネートフィルムによって包装されたリチウムイオン2次電池である。
【0020】
外装部材11は、トップカバー部、ボトムカバー部、両側のサイドカバー部とから構成される。トップカバー部には、例えば、複数個の開口が形成されている。図1に示す例では、トップカバーに開口14a、開口14b、開口14cが形成されている。回路基板13に形成されている端子面がそれぞれの開口を介して、外部に露出している。例えば、開口14aを介して正極端子の端子面が露出している。開口14bを介して負極端子の端子面が露出している。開口14cを介してグランド用の端子面が露出している。なお、開口は3個に限られない。例えば、電池パック1が接続される外部機器と通信を行うための通信端子が露出する開口15が形成されていてもよい。
【0021】
なお、後述するように、正極と負極とをセパレータを介して巻回又は積層して成る素子を電池素子と称し、電池素子をラミネートフィルムによって被覆した構成を電池と称し、電池および回路基板を樹脂で一体に成形したものを電池パック1と称する。電池パック1は、外装部材を有する場合と有しない場合とがある。
【0022】
回路基板13には、ヒューズ、熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient;PTC素子)、サーミスタ等の温度保護素子を含む保護回路の他、電池パックを識別するためのID抵抗等の回路部品19がマウントされ、更に複数個(例えば2個または3個)の接点部が形成されている。保護回路には、充放電制御FET(Field Effect Transistor
;電界効果トランジスタ)、2次電池の監視と充放電制御FETの制御を行うIC(Integrated Circuit)等が設けられている。
【0023】
熱感抵抗素子は電池素子と直列に接続され、電池の温度が設定温度に比して高くなると、電気抵抗が急激に高くなって電池に流れる電流を実質的に遮断する。ヒューズも電池素子と直列に接続され、電池に過電流が流れると、自身の電流により溶断して電流を遮断する。また、ヒューズはその近傍にヒータ抵抗が設けられており、過電圧時にはヒータ抵抗の温度が上昇することにより溶断して電流を遮断する。
【0024】
さらに、2次電池の端子電圧が例えば4.3V〜4.4Vを超えると、発熱・発火など危険な状態になる可能性がある。このため、保護回路は2次電池の電圧を監視し、電圧が4.3V〜4.4Vを越えて過充電状態となった場合には充電制御FETをオフして充電を禁止する。さらに2次電池の端子電圧が放電禁止電圧以下まで過放電し、2次電池電圧が0Vになると2次電池が内部ショート状態となり再充電不可能となる可能性がある。このため、2次電池電圧を監視して過放電状態となった場合には放電制御FETをオフして放電を禁止する。
【0025】
電池の一例について説明する。電池は、図2および図3に示すように、正極21と負極22とをセパレータ23a,23bを介して巻回又は積層して成る電池素子20を包装体であるラミネートフィルム27で包装したものである。図2に示すように、包装体であるラミネートフィルム27に形成した矩形板状の凹部27aに電池素子20が収容され、その周辺部(折曲部を除く三辺)が熱溶着・封止される。ラミネートフィルム27を接合する部分がテラス部である。凹部27aの両側のテラス部が凹部27aの方向に向けて折り曲げられる。
【0026】
なお、包装体であるラミネートフィルム27としては、従来公知の金属ラミネートフィルム、例えば、アルミニウムラミネートフィルムを用いることができる。アルミニウムラミネートフィルムとしては、絞り加工に適し、電池素子20を収容する凹部27aを形成するのに適したものがよい。
【0027】
通常、アルミニウムラミネートフィルムは、アルミニウム層の両面に接着層と表面保護層が配設された積層構造を有するもので、内側、即ち電池素子20の表面側から順に、接着層としてのポリプロピレン層(PP層)、金属層としてのアルミニウム層および表面保護層としてのナイロン層又はポリエチレンテレフタレート層(PET層)が配設される。
【0028】
また、包装体であるラミネートフィルム27としては、アルミニウムラミネートフィルムのほかに、一層又は二層のフィルムであり且つポリオレフィンフィルムを含むものとすることができる。ラミネートフィルム27の厚さは、例えば0.2mm以下である。
【0029】
図3に示すように、帯状の正極21と、セパレータ23aと、正極21と対向して配置された帯状の負極22と、セパレータ23bとが順に積層され、積層体が長手方向に巻回される。正極21および負極22の両面にはゲル状の電解質24が塗布されている。電池素子20からは、正極21と接続された正極リード25aと、負極22と接続された負極リード25bとが導出されている。正極リード25aおよび負極リード25bには、後に外装するラミネートフィルム27との接着性を向上させるために、無水マレイン酸変性されたポリプロピレン(PPa)等の樹脂片であるシーラント26aおよび26bが被覆されている。
【0030】
電池の構成要素についてより具体的に説明する。但し、以下に述べる電池以外の電池に対しても、本開示を適用することができる。例えば電解質は、ゲル状のものに限らず、液状、固体状のものを使用しても良い。さらに、帯状の正極と、セパレータと、負極とを巻く形式ではなく、プレート状のこれらの構成要素を積層する形式の電池に対しても本開示を適用できる。
【0031】
(正極)
正極21は、正極活物質を含有する正極活物質層が正極集電体の両面上に形成されてなるものである。正極集電体としては、例えばアルミニウム(Al)箔,ニッケル(Ni)箔あるいはステンレス(SUS)箔などの金属箔が用いられる。
【0032】
正極活物質層は、例えば正極活物質と、導電剤と、結着剤とを含有して構成されている。正極活物質としては、LiXMO2(式中、Mは、一種以上の遷移金属を表し、xは、電池の充放電状態によって異なり、通常0.05以上1.10以下である)を主体とする、リチウムと遷移金属との複合酸化物が用いられる。リチウム複合酸化物を構成する遷移金属としては、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)およびマンガン(Mn)等が用いられる。
【0033】
このようなリチウム複合酸化物として、具体的には、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)等が挙げられる。また、遷移金属元素の一部を他の元素に置換した固溶体も使用可能である。例えば、ニッケルコバルト複合リチウム酸化物(LiNi0.5Co0.5O2、LiNi0.8Co0.2O2等)がその例として挙げられる。これらのリチウム複合酸化物は、高電圧を発生でき、エネルギー密度が優れたものである。さらに、正極活物質としてTiS2、MoS2、NbSe2、V2O5等のリチウムを有しない金属硫化物または金属酸化物を使用してもよ
い。正極活物質としては、これら材料を複数混合して用いてもよい。
【0034】
また、導電剤としては、例えばカーボンブラックあるいはグラファイトなどの炭素材料等が用いられる。また、結着剤としては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が用いられる。また、溶剤としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン(NMP)等が用いられる。
【0035】
(負極)
負極22は、負極活物質を含有する負極活物質層が負極集電体の両面上に形成されてなるものである。負極集電体としては、例えば銅(Cu)箔、ニッケル(Ni)箔あるいはステンレス(SUS)箔などの金属箔が用いられる。
【0036】
負極活物質層は、例えば負極活物質と、導電剤と、結着剤とを含有して構成されている。負極活物質としては、リチウム金属、リチウム合金またはリチウムをドープ・脱ドープ可能な炭素材料または金属系材料と炭素系材料との複合材料が用いられる。具体的に、リチウムをドープ・脱ドープ可能な炭素材料としてはグラファイト、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素等が挙げられ、より具体的には熱分解炭素類、コークス類(ピッチコークス、ニードルコークス、石油コークス)、黒鉛類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体(フェノール樹脂、フラン樹脂等を適当な温度で焼成し炭素化したもの)、炭素繊維、活性炭等の炭素材料を使用することができる。さらに、リチウムをドープ、脱ドープできる材料としては、ポリアセチレン、ポリピロール等の高分子やSnO2、Li4Ti5O12といっ
たLxTiyOz系等の酸化物を使用することができる。
【0037】
また、リチウムを合金化可能な材料としては多様な種類の金属等が使用可能であるが、スズ(Sn)、コバルト(Co)、インジウム(In)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)およびこれらの合金がよく用いられる。金属リチウムを使用する場合は、必ずしも粉体を結着剤で塗布膜にする必要はなく、圧延したリチウム金属板でも構わない。
【0038】
結着剤としては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)等が用いられる。また、溶剤としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン(NMP)、メチルエチルケトン(MEK)、蒸留水等が用いられる。
【0039】
(電解質)
電解質は、リチウムイオン2次電池に一般的に使用される電解質塩と非水溶媒が使用可能である。非水溶媒としては、具体的には、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、γ−ブチロラクトン、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、またはこれらの炭酸エステル類の水素をハロゲンに置換した溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は1種類を単独で用いてもよいし、複数種を所定の組成で混合してもよい。
【0040】
電解質塩としては、非水溶媒に溶解するものが用いられ、カチオンとアニオンが組み合わされてなる。カチオンにはアルカリ金属やアルカリ土類金属が用いられる。アニオンには、Cl-,Br-,I-,SCN-,ClO4-,BF4-,PF6-,CF3SO3-等が用いら
れる。具体的には、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(
LiBF4)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3SO2)2)、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(C2F5SO2)2)過塩素酸リチウム(LiClO4)等が挙げられる。電解質塩濃度としては、溶
媒に溶解することができる濃度であれば問題ないが、リチウムイオン濃度が非水溶媒に対して0.4mol/kg以上2.0mol/kg以下の範囲であることが好ましい。
【0041】
ポリマー電解質を用いる場合は、非水溶媒と電解質塩とを混合してゲル状とした電解液をマトリクスポリマに取り込むことでポリマー電解質を得る。マトリクスポリマは、非水溶媒に相溶可能な性質を有している。このようなマトリクスポリマとしては、シリコンゲル、アクリルゲル、アクリロニトリルゲル、ポリフォスファゼン変性ポリマー、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドおよびこれらの複合ポリマーや架橋ポリマー、変性ポリマー等が用いられる。また、フッ素系ポリマーとして、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ化ビニリデン(VdF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とを繰り返し単位に含む共重合体、フッ化ビニリデン(VdF)とトリフルオロエチレン(TFE)とを繰り返し単位に含む共重合体等のポリマーが挙げられる。このようなポリマーは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0042】
ポリマー電解質中にはSi、Al、Ti、Zr、Wの何れかを含む金属酸化物、乃至複合酸化物を含むことが好ましい。 異常時の絶縁性を確保し、安全性、信頼性を高めると共に、高温時の膨れ抑制効果も期待できるからである。
【0043】
(セパレータ)
セパレータ23aおよび23bは、例えばポリプロピレン(PP)あるいはポリエチレン(PE)などのポリオレフィン系の材料よりなる多孔質膜、またはセラミック製の不織布などの無機材料よりなる多孔質膜により構成されており、これら2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。中でも、ポリエチレン、ポリプロピレンの多孔質フィルムが最も有効である。
【0044】
一般的にセパレータの厚みは5μm以上50μm以下が好適に使用可能であるが、7μm以上30μm以下がより好ましい。セパレータは、厚すぎると活物質の充填量が低下して電池容量が低下するとともに、イオン伝導性が低下して電流特性が低下する。逆に薄すぎると、膜の機械的強度が低下する。
【0045】
「電池パックの構成要素」
図4は、樹脂成形される前の段階における電池パックの構成要素を示す。電池パックは、上述したように、主要な構成要素として外装部材11、電池12、回路基板13を備える。そして、外装部材11と電池12と回路基板13とが成型部10によって一体化される。成型部10によって一体化されるこれらの外装部材11と電池12と回路基板13とを電池部品30と称する。
【0046】
外装部材11は、例えば、前面、後面、左側面および右側面を有する枠体とされ、外装部材11の内部に収納空間が形成されている。外装部材11の形状は、枠体に限らず、コ字状や一面が開放された箱体などでもよい。外装部材11のトップカバー(前面)には、回路基板13に形成されている端子面に対応した開口14a,14b,14cが形成されている。
【0047】
外装部材11のトップカバーの内面と電池12の端面との間隙に、回路基板13が収納される。収納された回路基板13は、トップカバーの内面に対して、例えば、リベット止めにより密着して固定される。回路基板13を外装部材11の内面に密着して固定することで、流動性の高い反応硬化性樹脂が回路基板13の端子面に流れ込むことを防止できる。さらに、後述の反応硬化性樹脂を充填し、成形を行う工程において、回路基板13を正確に位置決めできる。外装部材11に対して回路基板13が取り付けられると、開口14a,14b,14cを通じて端子面16の端子部17a,17b,17cが外部に露出する。
【0048】
さらに、図5Aおよび図5Bにも示すように、外装部材11の内部空間に電池12が収納される。そして電池12の正極リード25aと負極リード25bとが回路基板13の所定箇所に接続される。この後に、反応性硬化樹脂が充填されて成型部10が形成される。成型部10によって、外装部材11と電池12と回路基板13とが一体化される。
【0049】
「樹脂成形」
次に、電池パックの成型部10の形成の概略について説明する。外装部材11と電池12と回路基板13とからなる電池部品30が図6に示すような成形装置の金型のキャビティ(成形空間)43に収納される。なお、複数の電池および回路基板を樹脂成形するようにしても良い。金型は、上型41および下型42からなる。
【0050】
一方の型例えば下型42に2個のゲート穴(図示しない)が設けられている。一方のゲート穴は、成形時に樹脂例えば反応硬化性樹脂が流れ込む通路であり、他方のゲート穴は、成形時に樹脂が吐き出される通路である。上型41および下型42は、金属、プラスチック、またはセラミック材料からなる。一方の型例えば下型42に対して電池部品30が収納されるキャビティ43が形成される。キャビティ43は、外装部材11の外寸法とほぼ等しいものとされる。
【0051】
図7に示すように、下型42のキャビティ43に電池部品30が格納され、下型42の上に上型41が重ねられる。この状態では、上型41および下型42の互いの周縁の面同士が密着される。図8に示すように、上型41および下型42の両者によって成形用のキャビティが形成され、樹脂の充填時に、キャビティ内に樹脂が流れ込む。なお、必要に応じて電池12の上面および/または下面とキャビティ43の対向面との間にスペーサを配置しても良い。図8および他の図においては、樹脂の部分に対してのみ斜線が付されている。
【0052】
樹脂の硬化後に、上型41および下型42が離型され、電池部品30の電池12および回路基板13が成型部10により被覆された電池パック1(図1参照)が成形される。図8に示すように、回路基板13を被覆する厚みが大きい第1の部位51aと、電池12の主面(上面および下面)の全体または一部並びに電池12の側面を被覆する厚みが小さい第2の部位51bとが一体に形成される。第1の部位51aは、電池12のトップカバー側の端面から回路基板13と対向する外装材11の面までの間に存在する成型部である。第2の部位51bは、電池12の上面および下面、並びにボトムカバー側の端面を覆う成型部である。但し、電池12の上面および下面の中央部分に樹脂を設けないことも可能である。
【0053】
(成型時の条件による異なる物性の付与)
本開示は、成型部10の第1の部位(肉厚部)と第2の部位(肉薄部)との間で、成形時(重合反応時)の樹脂温度を調整して、それぞれの物性を異ならせるものである。すなわち、下記の条件1および条件2の少なくとも一方を満たすようになされる。
【0054】
条件1:JIS K 7127に準じて測定される第2の部位の最大降伏応力が第1の部位の最大降伏応力に比べて、3%以上100%以下大きいこと
条件2:JIS K 7110に準じたアイゾット衝撃試験で測定される第1の部位の衝撃強さが、第2の部位の衝撃強さに比べて、3%以上100%以下大きいこと
【0055】
電池12の主面(上面および下面)の全体または一部並びに電池12の側面を被覆する厚みが小さい第2の部位51bの最大降伏応力が大きいことは、電池12の膨張に対応するゴム状物性が期待される。さらに、回路基板13を被覆する厚みが大きい第1の部位51aの衝撃強さが大きいことは、トップカバー部の衝撃強度を高めることができ、回路基板13を保護することができる。
【0056】
(成型時の反応熱を利用した異なる物性の付与)
このような物性を第1の部位51aおよび第2の部位51bにそれぞれ与えるためには、第1の部位51aの成形時の樹脂の温度が第2の部位51bの成形時の樹脂の温度に比して高いものとされる。図8に示すように、第1の部位51aが第2の部位51bに比して肉厚であるために、第1の部位51aにおいて硬化時に発生する反応熱の量は、第2の部位51bに比してより多くなる。部位51aの樹脂厚をt1、部位51bの樹脂厚をt2とする。
【0057】
すなわち、第1の部位51aの硬化時の樹脂の温度が高く、第2の部位51bの硬化時の樹脂の温度が低いものとなる。成形時の樹脂厚によって、硬化時の温度が異なるので、第1の部位51aに比して第2の部位51bの最大降伏応力を大きくすることができる。これと共に、回路基板13を被覆する厚みが大きい第1の部位51aの衝撃強さを第2の部位52bに比して大きくでき、トップカバー部の衝撃強度を高めることができ、回路基板13の保護を確実とすることができる。
【0058】
さらに、成形温度が低い部分では、樹脂の流動性、成形性が優れるので、電池パック側面の最薄肉部での被覆不良、気泡残りなどの生産不良が起こることを防止でき、生産性を高めることができる。これにより従来は二色成型で行うか、別成型にて部品を用意するしかなかった部位別の機能付与を簡単にできるようになり、本開示により高機能な電池パックを効率よく提供できる。反応熱を利用する場合には、任意の物性を確保するために、反応硬化性樹脂の厚みが大きい厚肉部の樹脂厚t1と、反応硬化性樹脂の厚みが小さい薄肉部の樹脂厚t2との比(t1/t2)が1.2以上100以下とされ、好ましくは、13.5以上50以下とされる。なお、図9に示すように、金型の構成によって、電池12を被覆する樹脂の厚みを厚くし、回路基板13を被覆する樹脂の厚みを薄くすることも可能である。この場合、電池12を被覆する樹脂の厚みをt2、回路基板13を被覆する樹脂の厚みをt1とする。
【0059】
樹脂の硬化時の反応熱を利用して各部位に対して所望の物性を与える場合、金型を通じて反応熱の相違が平均化されることは、望ましくないので、図10および図11に示すように、部位の境界付近に断熱材44および45を設けるようにしても良い。断熱材は、熱伝導率が小さい材料である。
【0060】
すなわち、上型の第1の部位および第2の部位の境界付近で上型を第1の上型41aおよび第2の上型41bに2分割するように、断熱材44が設けられ、この境界付近で下型を第1の下型42aおよび第2の下型42bに2分割するように、断熱材45が設けられる。断熱材44、45によって、樹脂硬化時に発生した反応熱による温度差を維持できる。その結果、異なる所望の物性を第1の部位および第2の部位に対してそれぞれ与えることが容易となる。
【0061】
図12に示すように、下型42aおよび42bのキャビティ43に電池部品30が格納され、下型に上型41aおよび41bが重ねられる。形成されたキャビティに対して樹脂が充填される。樹脂の硬化後に、上型および下型が離型され、電池部品30の電池12および回路基板13が成型部10により被覆された電池パック1(図1参照)が成形される。
【0062】
肉厚の第1の部位51aで発生する反応熱の量が肉薄の第2の部位51bで発生する反応熱の量に比して多くなり、第2の部位51bに比してより高い温度で第1の部位51aの樹脂が硬化する。その結果、成形時の樹脂厚によって、第1の部位51aに比して第2の部位51bの最大降伏応力を大きくすることができる。これと共に、回路基板13を被覆する厚みが大きい第1の部位51aの衝撃強さが第2の部位52bに比して大きくなり、トップカバー部の衝撃強度を高めることができ、回路基板13の保護を確実とすることができる。
【0063】
(金型の温度を外的に調整する方法による異なる物性の付与)
上述した例は、成型部の厚みを変更することによって、樹脂の反応熱を利用して第1の部位51aおよび第2の部位51bに対して異なる物性を付与するものである。これに対して、金型の温度を外部の装置によって調整することによって、第1の部位51aおよび第2の部位51bに対して異なる物性を付与するようにしても良い。
【0064】
図13に示すように、断熱材44,45によって上型および下型がそれぞれ熱的に分離されている。第1の部位51aを成型する上型41aの外表面に接するように、ヒーターブロック46aが配置される。同様に、下型42bの底面および側面のそれぞれの外表面に接するように、ヒーターブロック46bおよび46cが配置される。ヒーターブロック46a、46bおよび46cは、ヒーターを内蔵しており、所望の温度に制御される。なお、ヒーターブロック46a、46bおよび46cとして、加熱機構に代えて、または加熱機構と併用して蓄熱材を使用しても良い。さらに、ヒーターブロックを金型の一部の表面に接触させても良い。
【0065】
第2の部位51bを成型する上型41bの外表面に接するように、コールドブロック47aが配置される。同様に、下型42bの底面および側面のそれぞれの外表面に接するように、コールドブロック47bおよび47cが配置される。コールドブロック47a、47bおよび47cは、水冷または空冷によって、冷却されるものである。なお、コールドブロック47a、47bおよび47cとして、冷却機構に代えて、または冷却機構と併用して保冷材を使用しても良い。さらに、コールドブロックを金型の一部の表面に接触させても良い。
【0066】
ヒーターブロック46a、46b、46cとコールドブロック47a、47b、47cとを使用して金型の温度分布を局所的に制御する場合、成型部の最低温度と、最高温度の差が10℃以上200℃以下であることが好ましい。さらに好ましくは、15℃以上50℃以下である。
【0067】
「外装部材の変形例」
上述した外装部材11は、前面、後面、左側面、右側面、上面および下面により、電池の形状に対応しており且つ電池を収容することができる空間を形成している。外装部材11の上面および下面は、それぞれ、外装部材11に電池12を組み合わせた際に、電池12の上面および下面の一部が露出するように矩形で中抜きされた形状を有している。しかしながら、外装部材の形状は、かかる形状に限定されない。例えば外装部材と電池とを組み合わせた時に電池の左側面、及び右側面一部を露出しているような構造であっても良い。外装部材のさらなる変形例として、閉塞された底面を有する箱状の外装部材を使用しても良い。
【0068】
「外装部材を設けない例」
さらに、本開示では、外装部材を設けることは、必須の事項ではなく、外装部材を有しない構成も可能である。図14に示すように、電池12と回路基板13とからなる電池部品30が成形装置の金型(上型41および下型42)のキャビティ(成形空間)に収納される。なお、複数の電池および回路基板を樹脂成形するようにしても良い。一方の型例えば下型42に2個のゲート穴(図示しない)が設けられている。一方のゲート穴は、成形時に樹脂例えば反応硬化性樹脂が流れ込む通路であり、他方のゲート穴は、成形時に樹脂が吐き出される通路である。上型41および下型42は、金属、プラスチック、またはセラミック材料からなる。
【0069】
そして、図15に示すように、キャビティ内に樹脂が充填される。樹脂の硬化後に、上型41および下型42が離型され、電池部品30の電池12および回路基板13が成型部10により被覆された電池パックが成形される。回路基板13を被覆する厚みが大きい第1の部位51aと、電池12の主面(上面および下面)の全体または一部並びに電池12の側面を被覆する厚みが小さい第2の部位51bとが一体に形成される。第1の部位51aは、電池12のトップカバー側の端面と回路基板13との対向面の間に存在する成型部である。第2の部位51bは、電池12の上面および下面、並びにボトムカバー側の端面を覆う成型部である。但し、電池12の上面および下面の中央部分に樹脂を設けないことも可能である。部位51aの樹脂厚をt1、部位51bの樹脂厚をt2とする。
【0070】
本開示は、成型部10の第1の部位(肉厚部)と第2の部位(肉薄部)との間で、樹脂硬化温度を相違させて、それぞれの物性を異ならせるものである。すなわち、上述した条件1および条件2の少なくとも一方を満たすようになされる。具体的には、硬化時の反応熱の量によって、第1の部位51aの樹脂温度が高く、第2の部位51bの樹脂温度が第1の部位51aに比して低い。その結果、第1の部位51aに比して第2の部位51bの最大降伏応力を大きくすることができ、すなわち、伸び率を高めることができ、電池12の膨張に成型部が追従することができる。これと共に、回路基板13を被覆する厚みが大きい第1の部位51aの衝撃強さが第2の部位52bに比して大きくなり、トップカバー部の衝撃強度を高めることができ、回路基板13の保護を確実とすることができる。
【0071】
さらに、図16に示すように、断熱材44,45によって上型および下型をそれぞれ熱的に分離し、ヒーターブロック46a、46bおよび46cによって、第1の部位51aの成型部分を加熱する。さらに、コールドブロック47a、47bおよび47cによって、第2の部位51bの成型部分を冷却する。このような外的に樹脂成型時の温度を制御することによって、第1の部位51aおよび第2の部位51bのそれぞれに対して異なる物性(条件1および/または条件2)を与えることができる。
【0072】
「成型部の樹脂」
成型部10は、熱と反応して硬化する熱硬化性樹脂、紫外線と反応して硬化する紫外線硬化樹脂などの反応硬化性樹脂で構成される。成型部10は、反応硬化性樹脂が硬化されることにより形成された樹脂成形部材である。
【0073】
(反応硬化性樹脂)
反応硬化性樹脂としては、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。中でも、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコン樹脂から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0074】
(ウレタン樹脂)
ウレタン樹脂は、ポリオールとポリイソシアネートとから製造されるものである。ウレタン樹脂としては、以下で定義する絶縁性ポリウレタン樹脂を用いることが好ましい。絶縁性ポリウレタン樹脂は、25±5℃、65±5%RHで測定した体積固有値(Ω・cm)が、1010Ω・cm以上の硬化物を得ることができるものをいう。絶縁性ポリウレタン樹脂としては、誘電率が6以下で(1MHz)、絶縁性破壊電圧が15KV/mm以上のものが好ましい。
【0075】
絶縁性ポリウレタン樹脂は、ポリオールの酸素含有率、溶出イオン濃度または溶出イオンの種類の数などを調整することによって、得られる絶縁性硬化物の体積固有抵抗値を、1010Ω・cm以上、好ましくは1011Ω・cm以上に調整して得ることができる。特に体積固有抵抗値が1011Ω・cm以上であると、硬化物の絶縁性が良好に保持され、2次電池の保護回路基板と一括封止できる。体積固有抵抗値の測定は、JIS C 2105に従って行う。25±5℃、65±5%RHで、サンプル(厚さ:3mm)に500Vの測定電圧を印加し、60秒後の数値を測定する。
【0076】
ウレタン樹脂としては、ポリエステルポリオールを用いたポリエステル系、ポリエーテルポリオールを用いたポリエーテル系、その他のポリオールを用いたウレタン樹脂などが挙げられる。これらは1種で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。また、ポリオールは、粉体を含有してもよい。この粉体として、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、カーボンなどの無機粒子、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリウレタン、ポリフェノールなどの有機高分子の粒子などが使用できる。これらは、単独または混合物として使用できる。粒子の表面は表面処理が施されても良く、ポリウレタン、ポリフェノールはフォーム粉で使用されてもよい。さらに、本開示において使用される紛体には多孔質のものも含まれる。
【0077】
(ポリオール)
(ポリエステル系)
ポリエステル系のポリオールは、脂肪酸とポリオールとの反応物である。脂肪酸としては、例えば、リシノール酸、オキシカプロン酸、オキシカプリン酸、オキシウンデカン酸、オキシリノール酸、オキシステアリン酸、オキシヘキサンデセン酸のヒドロキシ含有長鎖脂肪酸などが挙げられる。
【0078】
脂肪酸と反応するポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコールおよびジエチレングリコールなどのグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパンおよびトリエタノールアミンなどの3官能ポリオール、ジグリセリンおよびペンタエリスリトールなどの4官能ポリオール、ソルビトールなどの6官能ポリオール、シュガーなどの8官能ポリオール、これらのポリオールに相当するアルキレンオキサイドと脂肪族、脂環族、芳香族アミンとの付加重合物や、該アルキレンオキサイドとポリアミドポリアミンとの付加重合物などが挙げられる。なかでも、リシノール酸グリセライド、リシノール酸と1、1、1−トリメチロールプロパンとのポリエステルポリオールなどが好ましい。
【0079】
(ポリエーテル系)
ポリエーテル系のポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1、3−ブタンジオール、1、4−ブタンジオール、4、4' −ジヒドロキシフェニルプロパン、4、4' −ジヒドロキシフェニルメタンなどの2価アルコールまたはグリセリン、1、1、1−トリメチロールプロパン、1、2、5−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトールなどの3価以上の多価アルコールと、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、α−オレフィンオキサイドなどのアルキレンオキサイドとの付加重合物などが挙げられる。
【0080】
(その他のポリオール)
その他のポリオールとして、主鎖が炭素−炭素よりなるポリオール、例えば、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、水素添加ポリブタジエンポリオール、AN(アクリロニトリル)やSM(スチレンモノマー)を上述した炭素−炭素ポリオールにグラフト重合したポリオール、ポリカーボネートポリオール、PTMG(ポリテトラメチレングリコール)などが挙げられる。電池パックに直接成形するには弾性回復力が高く、耐薬品性に優れ、カーボネート系よりコストパフォーマンスに優れるポリエーテル系ポリオールを用いるのが好ましい。
【0081】
(ポリイソシアネート)
ポリイソシアネートとしては、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネートなどが使用できる。芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(粗MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ポリトリレンポリイソシアネート(粗TDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)などが挙げられる。脂肪族ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などが挙げられる。脂環式ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)などが挙げられる。この他に、上記ポリイソシアネートをカルボジイミドで変性したポリイソシアネート(カルボジイミド変性ポリイソシアネート)、イソシアヌレート変性ポリイソシアネート、エチレンオキシド変性ポリイソシアネート、ウレタンプレポリマー(例えばポリオールと過剰のポリイソシアネートとの反応生成物であってイソシアネート基を分子末端にもつもの)なども使用できる。これらは単独または混合物として使用してもよい。これらの中でも、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、カルボジイミド変性ポリイソシアネート、エチレンオキシド変性ポリイソシアネートが好ましい。
【0082】
反応硬化性樹脂の性状により、電池パックの耐熱性、難燃性、耐衝撃性、水分バリア性などの特性を向上することができる。例えば、ウレタン樹脂を用いた場合には、剛直なベンゼン環構造を持った上で最も低分子なイソシアネートであるジフェニルメタジンイソシアネート(MDI)をハードセグメント構造として用い、主剤のポリオールと硬化剤のイソシアネートの重量混合比率(主剤/硬化剤)を1以下、好ましくは0.7以下にすることが好ましい。これにより、架橋密度が高く、剛直で対称性のある分子鎖をもつ構造が得られ、耐熱性と良好な構造強度、ウレタン結合による難燃性の向上、注液性の高い樹脂粘度が得られる。
【0083】
但し、ジフェニルメタジンイソシアネート(MDI)成分が多いほど強度や水分バリア性の面では優れた特性を示すが、80wt%を越えるとMDIによるハードセグメント構造が多すぎて耐衝撃性に劣る結果となる。耐候性が特に要求される場合には、MDIに無黄変性のポリイソシアネートであるXDI系、IPDI系、HDI系を混合して用いることが好ましい。また架橋密度を高めるために主剤に架橋剤として低分子のトリメチロールプロパンなどを加えることが好ましい。
【0084】
反応硬化性樹脂は、JIS K−7110 Izod Vノッチで求められる、衝撃強度が6kJ/m2 以上であることが好ましく、10kJ/m2 以上であることがより好ましい。衝撃強度が6kJ/m2 以上であると、1.9m落下試験および1m落下試験で優れた特性を持つからである。衝撃強度が10kJ/m2 以上であると、市場で最も発生確率が高いと想定される落下試験で非常に優れた特性を得ることができるからである。ここで分子量分布(数平均分子量/重量平均分子量)が高いほど樹脂の流動性、成形性が向上するが、耐衝撃性は悪くなっていく傾向があるので、流動性は少なくとも粘度が80mPa・s以上であることが好ましく、200mPa・s以上600mPa・s以下の範囲で粘度を調節すると好適に使用できるため、より好ましい。
【0085】
反応硬化性樹脂は、0.05mm以上0.4mm未満の厚みでのUL746C3/4インチ炎燃焼試験の規格で、延焼面積が25cm2 以下である難焼性が確保されることが好ましい。
【0086】
反応硬化性樹脂として、ウレタン樹脂を用いた場合には、難燃性ポリオールとして、式(1)で表される構造を含むものが好ましい。ウレタン樹脂の構造内部に難燃成分を付与することで樹脂厚みが薄い場合に特に難燃性向上に効果があり、構造強度も確保できるからである。
【0087】
PO(XR)3 ・・・・式(1)
(R=H、アルキル基、フェニル基、X=S、O、N、(CH2 )n :nは1以上の整数)
【0088】
上述のウレタン樹脂を用いない場合でも、反応硬化性樹脂は、厚みが薄い場合にはガラス転移点(ガラス転移温度)を低くすれば、耐衝撃性が向上すると共に、樹脂がバーナーの炎で収縮し、実質の樹脂の厚みが厚くなって延焼しにくくなり、難燃性を向上できる。一方、ガラス転移点が低すぎたり、ガラス転移点が高すぎたりすると、強度や安全性が低下する傾向にある。
【0089】
したがって、反応硬化性樹脂のガラス転移点は、60℃以上150℃以下であり、且つ溶融(分解)温度が200℃以上400℃以下であることが好ましい。さらにガラス転移点は、85℃以上120℃以下がより好ましい。溶融(分解)温度は、240℃以上300℃以下がより好ましい。ガラス転移点が60℃未満であると、45℃の環境温度で外装としての強度を確保することが難しくなる。ガラス転移点が150℃を超えると誤使用時に電池が蓄えたエネルギーを放出するのが遅れて重大事故につながるおそれがある。
【0090】
ガラス転移温度を60℃以上150℃以下としても溶融温度(分解温度)が200℃以上400℃以下にすると、溶融分解による吸熱反応の寄与により、難燃性が向上する。溶融(分解)温度が200℃未満だと炭化の促進および断熱層の形成初期に吸熱することになるので、かえって難燃性に寄与できない。溶融(分解)温度が400℃を超えても吸熱のタイミングが遅すぎてやはり難燃性に寄与できない
【0091】
反応硬化性樹脂は、粘度が80mPa・s以上1000mPa・s未満であることが好ましい。粘度をこの範囲に調整することにより、電池の最大面の被覆不良を抑制することができ、これにより、電池パックの特性劣化を抑制することができる。さらに、反応硬化性樹脂は熱可塑性樹脂よりも硬化までの時間が長いために流動性が優れる。しかしながら、粘度が高いと型の保持力も増大して生産装置が高価かつ生産性が低くなってしまい、パックの成形部材の薄肉化による体積エネルギー密度の向上と低コストが達成できない。粘度が低すぎると今後は逆に流動性が高すぎるために、成形金型からのバリ、基板部分への樹脂の染み出しにより生産速度が低下し、不良率があがるおそれがある。
【0092】
反応硬化性樹脂(例えばウレタン樹脂)は、接着性であるために金属に強い接着性を持っており、熱可塑性樹脂とも極性基で接着して強靱な一体構造を得ることが可能である。熱可塑性のポリアミド樹脂も接着性を持つものの、接着力が弱いために、物理的な接着強化と高い充填圧力が必要であるが、反応硬化性樹脂では、そうした制約がない。ウレタン樹脂の接着性と凝集構造の関係は明らかではないが、架橋密度を上げていくと接着性は落ちる傾向が見いだされた。したがって、接着部材として表面に活性水素が多い部材、ウレタン樹脂と水素結合を作りやすい極性基の多い部材を用いるのが好ましい。
【0093】
同様に部材との嵌合部にアンダーカット部を設けることで部材との分離を防ぐことや、部材表面を粗化したり、切れ込みを入れたりすることで実質の接着面積を増やすことは好ましい。さらに、硬化時の温度条件でウレタン樹脂の凝集構造をコントロールし、低温にすることで表面の極性基を増やして接着性を向上することや、高温にすることで接着性を落とし、金型との離型性をコントロールすることは好ましい。
【0094】
(添加剤)
反応硬化性樹脂に、充填剤、難燃剤、消泡剤、防菌剤、安定剤、可塑剤、増粘剤、防黴剤、他の樹脂などの添加剤を含ませてもよい。
【0095】
難燃剤としては、トリエチルフォスフェート、トリス(2、3ジブロモプロピル)フォスフェートなどを用いることができる。その他の添加剤としては、三酸化アンチモン、ゼオライトなどの充填剤や顔料、染料などの着色剤を用いることができる。その他の添加剤としては、三酸化アンチモン、ゼオライトなどの充填剤や顔料、染料などの着色剤を用いることができる。
【0096】
(触媒)
反応硬化性樹脂には、触媒を添加することが好ましい。三級アミン、脂肪酸金属塩などの金属系イソシアヌレート化触媒、有機スズ化合物等の公知の触媒、および樹脂の主剤側鎖にカルボジイミド変性やエチレンオキシド変性させた水素を持たない窒素官能基を持つ主剤から選ばれる同じ温度でも触媒活性の異なる2種類以上の触媒を混合して用いることが好ましい。2種類以上の触媒を用いれば、反応熱を利用した樹脂物性の調整の際に樹脂骨格をコントロールし易いためである。
【0097】
触媒はイソシアネートとポリオール化合物の反応やイソシアネートの二量化、三量化を進行させる役割で添加され、公知の触媒を使用することができる。具体的にはトリエチレンジアミン、2−メチルトリエチレンジアミン、テトラメチルヘキサンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ペンタメチルジプロピレントリアミン、ペンタメチルヘキサンジアミン、ジメチルアミノエチルエーテル、トリメチルアミノプロピルエタノールアミン、トリジメチルアミノプロピルヘキサヒドロトリアジン、三級アンモニューム塩などの三級アミンを用いることができる。
【0098】
金属系イソシアヌレート化触媒は、ポリオールの100重量部に対して0.5重量部以上20重量部以下の範囲で使用するのが好ましい。金属系イソシアヌレート化触媒が0.5重量部より少ないと、十分なイソシアヌレート化が起こらないので好ましくない。また、ポリオール100重量部に対する金属系イソシアヌレート化触媒の量を20重量部より多くしても、添加量に応じた効果が得られない。
【0099】
金属系イソシアヌレート化触媒としては、例えば、脂肪酸金属塩を挙げることができ、具体的には、ジブチルチンジラウレート、オクチル酸鉛、リシノール酸カリウム、リシノール酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、ナフテン酸カリウム、ナフテン酸ナトリウム、オクチル酸カリウム、オクチル酸ナトリウム、およびこれらの混合物を挙げることができる。
【0100】
他に触媒としては、有機スズ化合物が用いられ、例えば、トリ−n−ブチルチンアセテート、n−ブチルチントリクロライド、ジメチルチンジクロライド、ジブチルチンジクロライド、トリメチルチンハイドロオキサイドなどがあげられる。これら触媒はそのまま用いてもよいし、酢酸エチルなどの溶媒に、濃度が0.1〜20%となるように溶解して、イソシアネート100質量部に対して、固形分として0.01〜1質量部となるよう添加してもよい。このように、上記触媒の配合量は、そのまま、または溶剤に溶解した状態のいずれの場合においても、固形分として、イソシアネート100質量部に対して0.01〜1質量部となるよう添加するのが好ましく、特に好ましくは0.05〜0.5質量部である。すなわち、触媒の配合量が0.01部未満のように少な過ぎると、ポリウレタン樹脂成形体の形成が遅く、樹脂状に硬化せず成形が困難となる。逆に、1質量部を超えると、樹脂の形成が極端に速くなり、形状維持ポリマー層として成形しにくいからである。
【0101】
2種類以上の触媒を用いる場合、反応硬化性樹脂がウレタンであり、少なくとも一つの触媒として、以下の化学式で示される主剤プレポリマーを用いるのが好ましい。
【化1】
【0102】
このように、主剤のプレポリマー分子鎖中にN基を持つことで、速硬化性を発揮させるだけでなく、難燃性も改善できる。なお、本分子構造は触媒作用を持つものの有機スズ化合物や金属系イソシアヌレート化触媒と同時に用いることは、反応速度差が出しやすくなるので好ましい。
【0103】
(金属酸酸化物フィラー)
成型部10に金属酸化物フィラーを含むようにしてもよい。金属酸化物フィラーとしては、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)の酸化物、またはこれら酸化物の任意の混合物を挙げることができる。このような金属酸化物フィラーは、この成型部10の硬さを向上する機能を果たし、反応硬化性樹脂を含む層と接触した状態で配置され、例えば、この金属酸化物フィラーを反応硬化性樹脂を含む層に混入してもよく、この場合、反応硬化性樹脂を含む層の全体に亘って均一に散在していることが好ましい。
【0104】
金属酸化物フィラーの混入量は、反応硬化性樹脂を含む層のポリマー種などに応じて適宜変更することができる。しかしながら、反応硬化性樹脂を含む層の質量に対する混入量が3%未満の場合には、この外装材の硬さを十分に高め得ないことがある。一方、混入量が60%を超える場合には、製造時の成形性やセラミックの脆性による問題が発生することがある。したがって、反応硬化性樹脂を含む層の質量に対する金属酸化物フィラーの混入量を2〜50%程度とすることが好ましい。
【0105】
また、金属酸化物フィラーの平均粒径を小さくすると、硬度が上がるものの成形時の充填性に影響して生産性に不具合を来たす可能性がある。一方、金属酸化物フィラーの平均粒径を大きくすると、目的の強度を得にくくなって電池パックとしての寸法精度を十分に得ることができない可能性がある。したがって、金属酸化物フィラーの平均粒径を0.1〜40μmとすることが好ましく、0.2〜20μmとすることがより好ましい。
【0106】
さらに、金属酸化物フィラーの形状としては、球状や鱗片状や板状や針状など様々な形状を採用することができる。特に限定されるものではないが、球状のものは、作製し易く平均粒径の揃ったものを安価に得られるので好ましく、針状でアスペクト比の高いものは、フィラーとして強度を高め易いので好ましい。さらに、鱗片状のものは、フィラーの含有量を増したときに充填性を高め得るので好ましい。なお、用途や材質に応じて、平均粒径の異なるフィラーを混合して用いたり、形状の異なるフィラーを混合して用いたりすることが可能である。
【0107】
成型部10は、金属酸化物の他に各種添加剤を含有することが可能である。例えば、反応硬化性樹脂を含む層中に、紫外線吸収剤や、光安定剤や、硬化剤またはこれらの任意の混合物を添加して、金属酸化物フィラーと共存させることができる。
【0108】
<内部離型剤>
反応硬化性樹脂は接着性に優れるが、接着性が強すぎると、例えば、離型時に製品の変形、外観不良を引き起こす虞がある。このため、カルナバワックスなどの天然系ワックス、ポリエチレンワックスなどのポリオレフィン系ワックス、モンタン酸アミドなどのアミド系ワックス、モンタン酸エステルなどのエステル系ワックス、シリコーンオイルなどのシリコーン化合物、ステアリン酸などの高級脂肪酸、ステアリン酸亜鉛などの高級脂肪酸の金属塩類、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの内部離型剤を添加することは好ましい。
特に、内部離型剤としてダイキン ポリフロンMPA FA500Hなどの繊維状フッ素系高分
子を用いると、燃焼時に発煙物質並びに滴下物が生じたとしても滴下を抑制し、延焼を防止するので、生産性だけでなく難燃性も向上させることができるので好ましい。
【0109】
(エポキシ樹脂)
ここで、本開示に使用できるエポキシ樹脂について説明する。エポキシ樹脂は、エポキシプレポリマーと硬化剤とから製造されるものである。プレポリマーには、粉体を含有してもよい。この粉体として、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、カーボンなどの無機粒子、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリウレタン、ポリフェノールなどの有機高分子の粒子などが使用できる。これらは、単独または混合物として使用できる。粒子の表面は表面処理が施されても良く、ポリウレタン、ポリフェノールはフォーム粉で使用されてもよい。さらに本開示において使用できる紛体には多孔質のものも含まれる。
【0110】
(プレポリマー)
ビスフェノールA系エポキシ樹脂、ビスフェノールF系エポキシ樹脂、フェノールノボラック系エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA系エポキシ樹脂、環式脂肪族エポキシ樹脂、有機カルボン酸類のグリシジルエーテルなど公知のエポキシプレポリマーを用いることができる。さらに、本開示では、これらの1種又は2種以上を使用することができる。シクロヘクセンオキシドやエポキシ化ポリブタジエンなどの内部エポキシ型よりも、グリシジルエーテル型ないしグリシジルエステル型が硬化速度の上で好ましい。グリシジルエーテル型には例えばビスフェノールAのエポクロルヒドリン縮合物が挙げられる。またビスフェノールF型エポキシ樹脂を用いるのが粘度の上で好ましい。
【0111】
(硬化剤)
硬化剤としては、アミン類、およびケチミンなどのアミン変性体、ポリアミド樹脂、イミダゾール類、ポリメルカプタン、酸無水物、光・紫外線硬化剤などが挙げられる。これらは1種で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0112】
(アミン類)
鎖状脂肪族アミン、環状脂肪族アミン、芳香族アミンなどが挙げられる。
鎖状脂肪族アミンは、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、AMINE248などのヘキサメチレンジアミンおよびその誘導体が好ましい。環状脂肪族アミンはN-アミノエチルピペラジン、メンセンジアミン、イソフオロンジアミン、ラミロンC-260、Araldit HY-964、S Cure211 乃至212、ワンダミンHM、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、およびその誘導体が好ましい。
【0113】
脂肪芳香族アミンは、m−キシレンジアミン、ショーアミンX、アミンブラック、ショ
ーアミンブラック、ショーアミンN 、ショーアミン1001,ショーアミン1010、およびその誘導体が好ましい。
【0114】
芳香族アミンは、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、およびその誘導体が好ましい。ポリメルカプタンは液状ポリメルカプタンおよびポリスルフィド樹脂をアミン類と混合して用いることが好ましい。
【0115】
酸無水物としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、グリセロールトリストリメリテート、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、アルキルスチレン−無水マレイン酸共重合体、クロレンド酸無水物、ポリアゼライン酸無水物、およびその誘導体が好ましい。メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、およびその誘導体がさらに好ましい。
【0116】
光・紫外線硬化剤としては、ジフェニルヨードニウムヘキサフロロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフロロホスフェート、およびその誘導体が好ましい。電池パックに直接成形するには、耐薬品性に優れ、速硬化性のアミン系硬化剤、乃至アミン系硬化剤より基板の腐食がしにくい酸無水物類を用いるのが好ましい。
反応硬化樹脂の性状により、電池パックの耐熱性、難燃性、耐衝撃性、水分バリア性などの特性を向上することができる。
【0117】
「外装部材」
外装部材11について説明する。外装部材11を構成する材料としては、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリアミドなどの熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。電池パックとして切り替え頻度の大きな、トップ、ボトムなどの形状変化に対して、熱硬化性樹脂より成形サイクルが短い熱可塑性樹脂を用いることにより、迅速かつ安価に対応できるからである。
【0118】
外装部材11は、前面、後面、左側面、右側面、上面および下面により、電池の形状に対応しており且つ電池12を収容することができる空間を形成している。外装部材11の上面および下面は、それぞれ、外装部材11に電池12を組み合わせた際に、電池の上面および下面の一部が露出するように矩形で中抜きされた形状を有している。
【0119】
「実施例」
本開示の理解を容易にするために、実施例および比較例について説明する。なお、本開示の内容は、以下の実施例および比較例の内容に限定されるものではない。
【0120】
実施例1〜実施例8、および、比較例1〜3について表1、表2および表3を参照して説明する。
【0121】
【表1】
【0122】
【表2】
【0123】
【表3】
【0124】
表1、表2および表3は、本来は一つの表であるが、記載スペースの関係で、横方向に3分割したものである。表1に示す各項目は、順に以下のものである。
反応硬化性樹脂の材料:成型部10を形成する樹脂r1〜r4
r1:ポリエステル系ポリウレタン
r2:ポリエーテル系ポリウレタン
r3:熱可塑性ポリカーボネート
r4:熱可塑性ポリプロピレン
【0125】
成型手法:第1の部位および第2の部位に対して異なる物性を与えるための手法である。手法1は、樹脂の反応熱を利用する方法であり、手法2は、金型を外的に温度調整する方法である。
【0126】
成型部の触媒1:成型部10の樹脂に対する触媒c1〜c7
成型部の触媒2:成型部10の樹脂に対する触媒c8〜c14
c1:トリエチレンジアミン
c2:テトラメチルヘキサンジアミン
c3:n−ブチルチントリクロライド
c4:ジメチルチンジクロライド
c5:トリメチルチンハイドロオキサイド
c6:ジブチルチンジクロライド
c7:トリ−n−ブチルチンアセテート
c8:オレイン酸ナトリウム
c9:(OH)2 −(P=O)CH2 N(OH)2
c10:(CH3 O)2 −(P=O)CH2 N(CH2 OH)2
c11:(C2 H5 O)2 −(P=O)CH2 N(C2 H4 OH)2
c12:(C3 H7 O)2 −(P=O)CH2 N(C3 H6 OH)2
c13:(C3 H7 O)2 −(P=O)CH2 N(C4 H8 OH)3
c14:(C2 H5 O)2 −(P=O)CH2 N(C2 H4 OH)(CH2 OH)
【0127】
内部離型剤:成型部10の樹脂に対する内部離型剤
p1:カルナバワックス
p2:ステアリン酸亜鉛
p3:シリコーンオイル
p4:PTFE
【0128】
反応硬化性樹脂の厚肉部(第1の部位)および薄肉部(第2の部位)のそれぞれの最大降伏応力(N/mm2 )と、両者の差を測定した。
(引っ張り強さの測定)
JIS K7127プラスチック引っ張り試験に基づき常温での引っ張り強さを見積もった。装置は島津製作所社の引っ張り試験機AG−20を用い、1B試験片の1/4縮尺で電池パックの部位毎に5本の試験片を作製し、最大降伏応力の平均値を得た。
【0129】
反応硬化性樹脂の厚肉部(第1の部位)および薄肉部(第2の部位)のそれぞれの衝撃強さ(kJ/mm2 )と、両者の差を測定した。
(耐衝撃性の測定)
JIS K7110アイゾッド衝撃試験に基づき常温での耐衝撃力を見積もった。装置は、東洋精機製作所社のデジタル衝撃試験機DG−UBを用い5本の試験片の平均値を得た。
【0130】
表2に示す各項目は、順に以下のものである。
金型設計値(mm)(薄肉部の厚さt1および厚肉部の厚さt2)
厚さの比(t2/t1)
【0131】
製造条件として、硬化方式および硬化時間を規定した。硬化方式としては、加熱する場合と、常温放置の場合と、h1(200℃溶融押出成型)と、h2(220℃溶融押出成型)とを使用した。実施例1〜8では、60℃〜80℃の加熱を行い、硬化時間を3分〜10分程度とした。比較例1は、常温放置であり、硬化時間が1日であった。比較例2は、硬化方式h1であり、硬化時間が20秒であった。比較例3は、硬化方式h2であり、硬化時間が30秒であった。
【0132】
(ガラス転移点)
反応硬化性樹脂のガラス転移点(Tg)(℃)
熱機械分析装置TMA (ThermoMechanical Analyzer )としてエスアイアイ・ナノテクノロジー社製TMA/SS7100を用い定荷重応力測定モードで昇温速度10℃/minで測定して得た応力−温度曲線のうち、急激に応力が軟化した温度の接線を用いガラス転移温度(Tg)とした。
【0133】
電池包装体w1〜w4
w1:アルミラミネート
w2:ポリエチレンフィルム+PETフィルム2層
w3:真空蒸着ポリエチレンフィルム+PETフィルム2層
w4:真空蒸着ポリプロピレンフィルム単層
【0134】
表3に示す各項目は、順に以下のものである。表3には、効果に関する項目が記載されている。
効果として下記の6項目について測定した。
定格エネルギー密度(Wh/l)、充填泡不良数(100個当たりの個数)、0℃サイクル膨れ(mm)、60℃90%RHで1カ月保存後の膨れ(mm)、0℃1m落下試験不良数(10個当たりの個数)、難燃性(延焼面積(cm2 )
【0135】
(定格エネルギー密度)
23℃の温度下において、上限4.2Vで15時間の1Cの定電流定電圧充電と、終止電圧2.5Vまでの1Cの定電流放電を繰り返し行い、定格エネルギー密度を1サイクル目の放電容量から求めた。
定格エネルギー密度(Wh/l)=(平均放電電圧(V)×定格容量(Ah)/電池パックの体積(l)
なお、1Cは、電池の容量を1時間で放出可能な電流値を示す。
【0136】
(電池パックの膨れ(mm))
作製して初回充放電を行った2次電池パックについて、0℃で再度4.2Vまで3時間充電して、電池パックの厚みを測定したものをサイクル前の厚みとした。設計容量1500mAhに対し、充電は、1500mAの定電流定電圧充電を上限4.2Vまで3時間行い、放電は150mAの定電流放電を終止電圧2.5Vまで行って1サイクルとする。これを60℃の恒温槽内で300回繰り返した。300サイクル後に再度0℃で再度4.2Vまで3時間充電して、電池パックの厚みを測定したものをサイクル後の厚みとした。サイクル後の電池パック厚みからサイクル前の電池パック厚みを引いた値を、保存後の膨れとして求めた。
【0137】
また、別途に初回充放電を行った各二次電池パックについて、電池パックの厚みを測定したのち、再度4.2Vまで3時間充電して60℃、90%RHの恒温恒湿槽内で1ヶ月保管し、保存後の電池パックの厚みを測定した。保存後の電池パック厚みから保存前の電池パック厚みを引いた値を、保存後の膨れとして求めた。
【0138】
(0℃1m落下試験の測定)
0℃で3時間電池パックを保存し、取り出した直後に3回落下させた。ヒビ、穴など内部部品が露出するような外傷が得られたものをNGとした。10個の電池パックをそれぞれ試験し、不良品の数を数えた。
【0139】
(難燃性の測定)
UL746C3/4インチ炎燃焼試験の規格に基づき、電池パックの最薄部と同じ厚みに均一に成形した300mm×300mmの平板状の3個の試験片を用い、平板の試験片の中央下端に3/4インチの炎に調節したバーナー炎をあてて30秒間保持し、その後バーナー炎を試験片から離した。1分の間隔で同じ場所にバーナー炎を更に30秒間あてた後バーナー炎を離した。1回目と2回目の接炎終了後の有炎燃焼持続時間が1分以内、且つ試験片の燃焼面積が電池パックのフットプリント以下の面積である25cm2 以下であることを確認し、所定試験片の厚みがUL746C3/4インチ炎燃焼試験を満たしていると判断した。
【0140】
(実施例1)
成型部10を形成する反応硬化性樹脂として、r1(ポリエステル系ポリウレタン)を使用した。成型手法2(金型を外的に温度調整する方法)を使用した。成型部の反応硬化性樹脂に対する2種類の触媒としてc1(トリエチレンジアミン)およびc8(オレイン酸ナトリウム)を使用した。第1の部位および第2の部位の間の最大降伏応力の差が3.2%であった。衝撃強さの差が10%であった。二つの部位の厚さの比t2/t1が33.3とされた。
【0141】
実施例1の効果は、下記のものである。
定格エネルギー密度:500(Wh/l)
充填泡不良数(100個当たりの個数):8
0℃サイクル膨れ:0.7(mm)
60℃90%RHで1カ月保存後の膨れ:0.7(mm)
0℃1m落下試験不良数(10個当たりの個数):3
難燃性(延焼面積:24(cm2 )
【0142】
(実施例2)
反応硬化性樹脂および成型手法は、実施例1と同一である。成型部の反応硬化性樹脂に対する2種類の触媒としてc2(テトラメチルヘキサンジアミン)およびc7(トリ−n−ブチルチンアセテート)を使用した。第1の部位および第2の部位の間の最大降伏応力の差が50%であった。衝撃強さの差が6%であった。二つの部位の厚さの比t2/t1が25.0とされた。
【0143】
実施例2の効果は、下記のものである。
定格エネルギー密度:500(Wh/l)
充填泡不良数(100個当たりの個数):6
0℃サイクル膨れ:0.6(mm)
60℃90%RHで1カ月保存後の膨れ:0.5(mm)
0℃1m落下試験不良数(10個当たりの個数):2
難燃性(延焼面積:22(cm2 )
【0144】
(実施例3)
成型部10を形成する反応硬化性樹脂として、r2(ポリエーテル系ポリウレタン)を使用した。成型手法2(金型を外的に温度調整する方法)を使用した。成型部の反応硬化性樹脂に対する2種類の触媒としてc3(n−ブチルチントリクロライド)およびc9((OH)2 −(P=O)CH2 N(OH)2 )を使用した。第1の部位および第2の部位の間の最大降伏応力の差が6.4%であった。衝撃強さの差が14.3%であった。二つの部位の厚さの比t2/t1が16.7とされた。
【0145】
実施例3の効果は、下記のものである。
定格エネルギー密度:520(Wh/l)
充填泡不良数(100個当たりの個数):3
0℃サイクル膨れ:0.5(mm)
60℃90%RHで1カ月保存後の膨れ:0.5(mm)
0℃1m落下試験不良数(10個当たりの個数):1
難燃性(延焼面積:19(cm2 )
【0146】
(実施例4)
成型部10を形成する反応硬化性樹脂および成型手法は、実施例3と同一である。成型部の反応硬化性樹脂に対する2種類の触媒としてc4(ジメチルチンジクロライド)およびc10((CH3 O)2 −(P=O)CH2 N(CH2 OH)2 )を使用した。第1の部位および第2の部位の間の最大降伏応力の差が33%であった。衝撃強さの差が22.2%であった。二つの部位の厚さの比t2/t1が13.8とされた。
【0147】
実施例4の効果は、下記のものである。
定格エネルギー密度:520(Wh/l)
充填泡不良数(100個当たりの個数):2
0℃サイクル膨れ:0.5(mm)
60℃90%RHで1カ月保存後の膨れ:0.4(mm)
0℃1m落下試験不良数(10個当たりの個数):1
難燃性(延焼面積:15(cm2 )
【0148】
(実施例5)
成型部10を形成する反応硬化性樹脂は、実施例4と同一である。成型手法1(樹脂の反応熱を利用する方法)が使用された。成型部の反応硬化性樹脂に対する2種類の触媒としてc5(トリメチルチンハイドロオキサイド)およびc11((C2 H5 O)2 −(P=O)CH2 N(C2 H4 OH)2)を使用した。第1の部位および第2の部位の間の最
大降伏応力の差が33%であった。衝撃強さの差が25%であった。二つの部位の厚さの比t2/t1が36.7とされた。
【0149】
実施例5の効果は、下記のものである。
定格エネルギー密度:540(Wh/l)
充填泡不良数(100個当たりの個数):1
0℃サイクル膨れ:0.4(mm)
60℃90%RHで1カ月保存後の膨れ:0.3(mm)
0℃1m落下試験不良数(10個当たりの個数):0
難燃性(延焼面積:11(cm2 )
【0150】
(実施例6)
成型部10を形成する反応硬化性樹脂および成型手法は、実施例5と同一である。成型部の反応硬化性樹脂に対する2種類の触媒としてc6(ジブチルチンジクロライド)およびc12((C3 H7 O)2 −(P=O)CH2 N(C3 H6 OH)2 )を使用した。第1の部位および第2の部位の間の最大降伏応力の差が15%であった。衝撃強さの差が37.5%であった。二つの部位の厚さの比t2/t1が27.5とされた。
【0151】
実施例6の効果は、下記のものである。
定格エネルギー密度:550(Wh/l)
充填泡不良数(100個当たりの個数):1
0℃サイクル膨れ:0.3(mm)
60℃90%RHで1カ月保存後の膨れ:0.2(mm)
0℃1m落下試験不良数(10個当たりの個数):0
難燃性(延焼面積:9(cm2 )
【0152】
(実施例7)
成型部10を形成する反応硬化性樹脂および成型手法は、実施例6と同一である。成型部の反応硬化性樹脂に対する2種類の触媒としてc5(トリメチルチンハイドロオキサイド)およびc13((C3 H7 O)2 −(P=O)CH2 N(C4 H8 OH)3)を使用
した。第1の部位および第2の部位の間の最大降伏応力の差が14%であった。衝撃強さの差が37.5%であった。二つの部位の厚さの比t2/t1が18.3とされた。
【0153】
実施例7の効果は、下記のものである。
定格エネルギー密度:560(Wh/l)
充填泡不良数(100個当たりの個数):0
0℃サイクル膨れ:0.2(mm)
60℃90%RHで1カ月保存後の膨れ:0.2(mm)
0℃1m落下試験不良数(10個当たりの個数):0
難燃性(延焼面積:6(cm2 )
【0154】
(実施例8)
成型部10を形成する反応硬化性樹脂および成型手法は、実施例7と同一である。成型部の反応硬化性樹脂に対する2種類の触媒としてc5(トリメチルチンハイドロオキサイド)およびc14((C2 H5 O)2 −(P=O)CH2 N(C2 H4 OH)(CH2 OH))を使用した。第1の部位および第2の部位の間の最大降伏応力の差が14%であった。衝撃強さの差が37.5%であった。二つの部位の厚さの比t2/t1が18.3とされた。
【0155】
実施例8の効果は、下記のものである。
定格エネルギー密度:560(Wh/l)
充填泡不良数(100個当たりの個数):0
0℃サイクル膨れ:0.2(mm)
60℃90%RHで1カ月保存後の膨れ:0.2(mm)
0℃1m落下試験不良数(10個当たりの個数):0
難燃性(延焼面積:5(cm2 )
【0156】
(比較例1)
成型部10を形成する反応硬化性樹脂として、r1(ポリエステル系ポリウレタン)を使用した。成型手法は、通常の成形方法であり、部位によって形成時の樹脂温度を相違させないものである。触媒としてc7(トリ−n−ブチルチンアセテート)のみを使用した。第1の部位および第2の部位の間の最大降伏応力の差が2%であった。衝撃強さの差が0%であった。二つの部位の厚さの比t2/t1が13.8とされた。
【0157】
比較例1の測定結果は、下記のものである。
定格エネルギー密度:350(Wh/l)
充填泡不良数(100個当たりの個数):93
0℃サイクル膨れ:2.2(mm)
60℃90%RHで1カ月保存後の膨れ:1.5(mm)
0℃1m落下試験不良数(10個当たりの個数):10
難燃性(延焼面積:35(cm2 )
【0158】
(比較例2)
成型部10を形成する樹脂として、r3(熱可塑性ポリカーボネート)を使用した。成型手法は、通常の成形方法である。触媒は、使用しない。第1の部位および第2の部位の間の最大降伏応力の差が0%であった。衝撃強さの差が0%であった。二つの部位の厚さの比t2/t1が13.8とされた。
【0159】
比較例2の測定結果は、下記のものである。
定格エネルギー密度:380(Wh/l)
充填泡不良数(100個当たりの個数):95
0℃サイクル膨れ:1.7(mm)
60℃90%RHで1カ月保存後の膨れ:2.1(mm)
0℃1m落下試験不良数(10個当たりの個数):10
難燃性(延焼面積:78(cm2 )
【0160】
(比較例3)
成型部10を形成する樹脂として、r4(熱可塑性ポリプロピレン)を使用した。成型手法は、通常の成形方法である。触媒は、使用しない。第1の部位および第2の部位の間の最大降伏応力の差が2%であった。衝撃強さの差が0%であった。二つの部位の厚さの比t2/t1が13.8とされた。
【0161】
比較例3の測定結果は、下記のものである。
定格エネルギー密度:420(Wh/l)
充填泡不良数(100個当たりの個数):98
0℃サイクル膨れ:2(mm)
60℃90%RHで1カ月保存後の膨れ:2.3(mm)
0℃1m落下試験不良数(10個当たりの個数):10
難燃性(延焼面積:81(cm2 )
【0162】
(効果に対する評価)
表1、表2および表3から得られる評価について説明する。本開示による電池パックは、下記のような効果を奏する。
【0163】
・樹脂物性が均一な電池パックに比べ、1.9m落下試験の破壊までの回数が大きく向上し、変形も抑制された(高温部)。
・樹脂物性が均一な電池パックに比べ、ねじり試験の変形量が改善された(高温部)。
・樹脂物性が均一な電池パックに比べ、基板への水分透過量が改善された(高温部)。
・樹脂物性が均一な電池パックに比べ、サイクル特性が改善された(低温部)。
・樹脂物性が均一な電池パックに比べ、高温保存試験での変形量が改善された(低温部)。
・二色成型で行うか、別成型にて部品を用意した電池パックに比べ,原材料コストが下がり、低コストになった。
・二色成型で行うか、別成型にて部品を用意した電池パックに比べ、生産性タクトが良くなり低コストになった。
・二色成型で行うか、別成型にて部品を用意した電池パックに比べ、歩留まりが改善し、低コストになった。
【0164】
「応用例」
上述した電池パック1の応用例について説明する。なお、電池パック1の用途は、以下に示す応用例に限られることはない。
【0165】
「応用例としての住宅における蓄電システム」
本開示を住宅用の蓄電システムに適用した例について、図17を参照して説明する。例えば住宅101用の蓄電システム100においては、火力発電102a、原子力発電102b、水力発電102c等の集中型電力系統102から電力網109、情報網112、スマートメータ107、パワーハブ108等を介し、電力が蓄電装置103に供給される。これと共に、家庭内発電装置104等の独立電源から電力が蓄電装置103に供給される。蓄電装置103に供給された電力が蓄電される。蓄電装置103を使用して、住宅101で使用する電力が給電される。住宅101に限らずビルに関しても同様の蓄電システムを使用できる。
【0166】
住宅101には、発電装置104、電力消費装置105、蓄電装置103、各装置を制御する制御装置110、スマートメータ107、各種情報を取得するセンサ111が設けられている。各装置は、電力網109および情報網112によって接続されている。発電装置104として、太陽電池、燃料電池、風車等が利用され、発電した電力が電力消費装置105および/または蓄電装置103に供給される。電力消費装置105は、冷蔵庫105a、空調装置105b、テレビジョン受信機105c、風呂105d等である。さらに、電力消費装置105には、電動車両106が含まれる。電動車両106は、電気自動車106a、ハイブリッドカー106b、電気バイク106cである。電動車両106は、電動アシスト自転車等でもよい。
【0167】
蓄電装置103は、2次電池又はキャパシタから構成されている。例えば、リチウムイオン電池によって構成されている。リチウムイオン電池は、定置型であっても、電動車両106で使用されるものでも良い。この蓄電装置103に対して、上述した本開示の電池パックが適用可能とされる。スマートメータ107は、商用電力の使用量を測定し、測定された使用量を、電力会社に送信する機能を備えている。電力網109は、直流給電、交流給電、非接触給電の何れか一つまたは複数を組み合わせても良い。
【0168】
各種のセンサ111は、例えば人感センサ、照度センサ、物体検知センサ、消費電力センサ、振動センサ、接触センサ、温度センサ、赤外線センサ等である。各種センサ111により取得された情報は、制御装置110に送信される。センサ111からの情報によって、気象の状態、人の状態等が把握されて電力消費装置105を自動的に制御してエネルギー消費を最小とすることができる。さらに、制御装置110は、住宅101に関する情報を、インターネットを介して外部の電力会社等に送信することができる。
【0169】
パワーハブ108によって、電力線の分岐、直流交流変換等の処理がなされる。制御装置110と接続される情報網112の通信方式としては、UART(Universal Asynchronous Receiver-Transmitter: 非同期シリアル通信用送受信回路)等の通信インターフェースを使う方法、Bluetooth、ZigBee、Wi−Fi等の無線通信規格によるセンサネットワークを利用する方法がある。Bluetooth方式は、マルチメディア通信に適用され、一対多接続の通信を行うことができる。ZigBeeは、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers) 802.15.4の物理層を使用するものである。IEEE802.15.4は、PAN(Personal Area Network) またはW(Wireless)PANと呼ばれる短距離無線ネットワーク規格の名称である。
【0170】
制御装置110は、外部のサーバ113と接続されている。このサーバ113は、住宅101、電力会社、サービスプロバイダーの何れかによって管理されていても良い。サーバ113が送受信する情報は、たとえば、消費電力情報、生活パターン情報、電力料金、天気情報、天災情報、電力取引に関する情報である。これらの情報は、家庭内の電力消費装置(たとえばテレビジョン受信機)から送受信しても良いが、家庭外の装置(たとえば、携帯電話機等)から送受信しても良い。これらの情報は、表示機能を持つ機器、たとえば、テレビジョン受信機、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistants) 等に、表示されても良い。
【0171】
各部を制御する制御装置110は、CPU(Central Processing Unit )、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等で構成され、この例では、蓄電装置103に格納されている。制御装置110は、蓄電装置103、家庭内発電装置104、電力消費装置105、各種センサ111、サーバ113と情報網112により接続され、例えば、商用電力の使用量と、発電量とを調整する機能を有している。なお、その他にも、電力市場で電力取引を行う機能等を備えていても良い。
【0172】
以上のように、電力が火力102a、原子力102b、水力102c等の集中型電力系統102のみならず、家庭内発電装置104(太陽光発電、風力発電)の発電電力を蓄電装置103に蓄えることができる。したがって、家庭内発電装置104の発電電力が変動しても、外部に送出する電力量を一定にしたり、または、必要なだけ放電するといった制御を行うことができる。例えば、太陽光発電で得られた電力を蓄電装置103に蓄えると共に、夜間は料金が安い深夜電力を蓄電装置103に蓄え、昼間の料金が高い時間帯に蓄電装置103によって蓄電した電力を放電して利用するといった使い方もできる。
【0173】
なお、この例では、制御装置110が蓄電装置103内に格納される例を説明したが、スマートメータ107内に格納されても良いし、単独で構成されていても良い。さらに、蓄電システム100は、集合住宅における複数の家庭を対象として用いられてもよいし、複数の戸建て住宅を対象として用いられてもよい。
【0174】
「応用例としての車両における蓄電システム」
本開示を車両用の蓄電システムに適用した例について、図18を参照して説明する。図18に、本開示が適用されるシリーズハイブリッドシステムを採用するハイブリッド車両の構成の一例を概略的に示す。シリーズハイブリッドシステムはエンジンで動かす発電機で発電された電力、あるいはそれをバッテリーに一旦貯めておいた電力を用いて、電力駆動力変換装置で走行する車である。
【0175】
このハイブリッド車両200には、エンジン201、発電機202、電力駆動力変換装置203、駆動輪204a、駆動輪204b、車輪205a、車輪205b、バッテリー208、車両制御装置209、各種センサ210、充電口211が搭載されている。バッテリー208に対して、上述した本開示の電池パック1が適用される。
【0176】
ハイブリッド車両200は、電力駆動力変換装置203を動力源として走行する。電力駆動力変換装置203の一例は、モータである。バッテリー208の電力によって電力駆動力変換装置203が作動し、この電力駆動力変換装置203の回転力が駆動輪204a、204bに伝達される。なお、必要な個所に直流−交流(DC−AC)あるいは逆変換(AC−DC変換)を用いることによって、電力駆動力変換装置203が交流モータでも直流モータでも適用可能である。各種センサ210は、車両制御装置209を介してエンジン回転数を制御したり、図示しないスロットルバルブの開度(スロットル開度)を制御したりする。各種センサ210には、速度センサ、加速度センサ、エンジン回転数センサなどが含まれる。
【0177】
エンジン201の回転力は発電機202に伝えられ、その回転力によって発電機202により生成された電力をバッテリー208に蓄積することが可能である。
【0178】
図示しない制動機構によりハイブリッド車両が減速すると、その減速時の抵抗力が電力駆動力変換装置203に回転力として加わり、この回転力によって電力駆動力変換装置203により生成された回生電力がバッテリー208に蓄積される。
【0179】
バッテリー208は、ハイブリッド車両の外部の電源に接続されることで、その外部電源から充電口211を入力口として電力供給を受け、受けた電力を蓄積することも可能である。
【0180】
図示しないが、2次電池に関する情報に基いて車両制御に関する情報処理を行なう情報処理装置を備えていても良い。このような情報処理装置としては、例えば、電池の残量に関する情報に基づき、電池残量表示を行う情報処理装置などがある。
【0181】
なお、以上は、エンジンで動かす発電機で発電された電力、或いはそれをバッテリーに一旦貯めておいた電力を用いて、モータで走行するシリーズハイブリッド車を例として説明した。しかしながら、エンジンとモータの出力がいずれも駆動源とし、エンジンのみで走行、モータのみで走行、エンジンとモータ走行という3つの方式を適宜切り替えて使用するパラレルハイブリッド車に対しても本開示は有効に適用可能である。さらに、エンジンを用いず駆動モータのみによる駆動で走行する所謂、電動車両に対しても本開示は有効に適用できる。
【0182】
「変形例」
以上、本開示の複数の実施形態について説明したが、本開示は、上述した実施形態に限られることなく、種々の変形が可能である。例えば、リチウムイオン2次電池以外の2次電池に対しても本開示を適用できる。
【0183】
なお、各実施形態および変形例における構成等は、技術的矛盾が生じない範囲で適宜組み合わせることができる。
【0184】
本開示は、例えば、以下の構成をとることもできる。
(1)
1または複数の電池と、
前記電池の外表面の少なくとも一部を被覆する反応硬化性樹脂からなる成型部とを備え、
前記成型部は、前記反応硬化性樹脂の厚みが大きい第1の部位と、前記反応硬化性樹脂の厚みが前記第1の部位に比して小さい第2の部位とが一体に形成され、且つ以下の条件1および条件2の少なくとも一つを満たす電池パック。
条件1:JIS K 7127に準じて測定される前記第2の部位の最大降伏応力が前記第1の部位の最大降伏応力に比べて、3%以上100%以下大きいこと
条件2:JIS K 7110に準じたアイゾット衝撃試験で測定される前記第1の部位の衝撃強さが、前記第2の部位の衝撃強さに比べて、3%以上100%以下大きいこと
(2)
前記1または複数の電池は、フィルム包装体により電池素子を包装してなり、前記第2の部位が前記電池を被覆する前記成型部の内に含まれる(1)に記載の電池パック。
(3)
前記電池の保護回路を有し、
前記第1の部位が前記保護回路を被覆する前記成型部の内に含まれる(1)および(2)の何れかに記載の電池パック。
(4)
前記反応硬化性樹脂が、シリコン、エポキシ、アクリル及びウレタンからなる群より選ばれる少なくとも一つであり、
成型後の前記反応硬化性樹脂のガラス転移温度が60℃以上140℃以下である(1)乃至(3)の何れかに記載の電池パック。
(5)
前記反応硬化性樹脂が2種以上の反応硬化性触媒を含有し、
前記反応硬化性触媒の反応活性が60℃で15%以上異なる(1)乃至(4)の何れかに記載の電池パック。
(6)
前記反応硬化性樹脂がウレタンであり、
少なくとも一つの反応硬化性触媒が、上述の化学式で示される主剤プレポリマーである(1)乃至(5)の何れかに記載の電池パック。
(7)
1または複数の電池の外表面の少なくとも一部を反応硬化性樹脂からなる成型部によって被覆する際に、反応硬化性樹脂の反応熱を利用して部位によって異なる物性を与えるようにし、
前記反応硬化性樹脂の厚みが大きい第1の部位の樹脂厚t1と、前記反応硬化性樹脂の厚みが小さい第2の部位の樹脂厚t2との比(t1/t2)が13.5以上50以下である電池パックの製造方法。
(8)
1または複数の電池の外表面の少なくとも一部を反応硬化性樹脂からなる成型部によって被覆する際に、
前記反応硬化性樹脂の厚みが大きい第1の部位を成形する金型の外表面の一部又は全面に、高温ブロックを当接し、
前記反応硬化性樹脂の厚みが前記第1の部位に比して小さい第2の部位を成形する金型の外表面の一部又は全面に、低温ブロックを当接し、
成形時の前記反応硬化性樹脂の温度を異ならせる電池パックの製造方法。
(9)
金型の一部に熱伝導が低い部材を用いる請求項8に記載の電池パックの製造方法。
(10)
(1)乃至(6)の何れかに記載の電池パックが、再生可能なエネルギーから発電を行う発電装置によって充電される蓄電システム。
(11)
(1)〜(6)の何れかに記載の電池パックを有し、前記電池パックに接続される電子機器に電力を供給する蓄電システム。
(12)
(1)〜(6)の何れかに記載の電池パックから電力の供給を受ける電子機器。
(13)
(1)〜(6)の何れかに記載の電池パックから電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と、前記電池パックに関する情報に基づいて、車両制御に関する情報処理を行う制御装置とを有する電動車両。
(14)
他の機器とネットワークを介して信号を送受信する電力情報送受信部を有し、
前記電力情報送受信部が受信した情報に基づき、(1)〜(6)の何れかに記載の電池パックの充放電制御を行う電力システム。
(15)
(1)〜(6)の何れかに記載の電池パックから電力の供給を受け、または、発電装置または電力網から前記電池パックに電力を供給する電力システム。
【符号の説明】
【0185】
1・・・電池パック
10・・・成型部
11,11a・・・外装部材
12・・・電池
13・・・回路基板
14a、14b、14c・・・開口
30・・・電池部品
41・・・上型
42・・・下型
44,45・・・断熱材
46a〜46c・・・ヒーターブロック
47a〜47c・・・コールドブロック
51a・・・第1の部位
51b・・・第2の部位
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば2次電池の電池パック、電池パックの製造方法、電池パックを使用する蓄電システム、電子機器、電動車両および電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン2次電池等の電池を含む電池パックは、モバイル電子機器、電動車両、バックアップ電源等として広く使用されている。一般的に、電池パックは、1または複数の2次電池(セルとも称される)と、電池の電圧、電流、温度を検出する検出部を含む保護回路とがラミネートフィルム、合成樹脂ケース等の外装によって一体化されている構成とされる。電池パックは、認証抵抗、認証回路を有する場合もある。
【0003】
電子機器の小型軽量化実現のために、電池設計も軽く、薄型であり、かつ機器内の収納スペースを効率的に使うことが求められている。このような要求を満たす電池として、エネルギー密度および出力密度の大きいリチウムイオン2次電池が最も好適である。
【0004】
リチウムイオン2次電池は、リチウムイオンをドープ・脱ドープすることができる正極及び負極を有する電池素子を備え、この電池素子を金属缶や金属ラミネートフィルムに封入すると共に、電池素子と電気的に接続した回路基板によって充放電時の保護動作を制御するようにされている。
【0005】
中でも、従来の液系電解液を用いた場合に問題となる電解液の液漏れを防止するために、ゲル状のポリマー電解質を用いたリチウムイオンポリマー2次電池が広く用いられている。リチウムイオンポリマー2次電池は、電極端子を接続し、両面にポリマー電解質を塗布した帯状の正極および負極をセパレータを介して積層した後、長手方向に巻回して電池素子を作製する。そして、この電池素子をラミネートフィルムで外装して電池とし、電池を樹脂モールドケースに収納することにより、電池パックとしている。
【0006】
特許文献1または特許文献2に記載されているように、組立工程を極めて簡単にできる電池パックとして、外装ケースを使用しないパック電池が提案されている。すなわち、回路基板を電池に連結して電池部品とし、この電池部品を樹脂成形する金型の成形室に仮り止めし、成形室に溶融状態の反応硬化性樹脂を注入して電池パックが製造される。樹脂成形部は、電池パックの外装ケースを形成すると共に、回路基板や接続端子や電池を一体的に固定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−140757号公報
【特許文献2】特開2009−181802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
反応硬化性樹脂は熱可塑性樹脂に比べ流動性が良いので、電池パックの最大面の樹脂厚みの制約が流動性の観点では少ない一方で、高温などの異常時に電池の寸法変化を抑制するためには十分な強度を持たせる必要がある。そのため、樹脂厚みを厚くしており、電池のエネルギー密度を高めることに限界があった。
【0009】
従来では、電池および回路基板を共通の樹脂で被覆している。しかしながら、樹脂の部位によって、異なる物性が望ましい場合がある。例えば電池を被覆する樹脂と回路基板を被覆する樹脂とは必要とされる物性が異なっている。すなわち、電池を被覆する樹脂としては、電池の体積変化を吸収することを可能とするために、最大降伏応力が高いことが望ましく、回路基板を被覆する樹脂としては、耐衝撃性が優れていることが望ましい。
【0010】
電池パックの部位によって異なる物性を与えようとすると、従来は二色成型で行うか、別の樹脂を使用して成型された部品を用意する必要があった。しかしながら、このような成型方法は、1種類の樹脂によって1度の成型を行うのと比較して、効率が悪い問題があった。
【0011】
本開示の目的は、電池のエネルギー密度を高めながら、部位によって適応的に物性が制御された電池パック、電池パックの製造方法、電池パックを使用する蓄電システム、電子機器、電動車両および電力システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するために、本開示の電池パックは、1または複数の電池と、
電池の外表面の少なくとも一部を被覆する反応硬化性樹脂からなる成型部とを備え、
成型部は、反応硬化性樹脂の厚みが大きい第1の部位と、反応硬化性樹脂の厚みが第1の部位に比して小さい第2の部位とが一体に形成され、且つ以下の条件1および条件2の少なくとも一つを満たす電池パックである。
条件1:JIS K 7127に準じて測定される第2の部位の最大降伏応力が第1の部位の最大降伏応力に比べて、3%以上100%以下大きいこと
条件2:JIS K 7110に準じたアイゾット衝撃試験で測定される第1の部位の衝撃強さが、第2の部位の衝撃強さに比べて、3%以上100%以下大きいこと
【0013】
本開示は、1または複数の電池の外表面の少なくとも一部を反応硬化性樹脂からなる成型部によって被覆する際に、反応硬化性樹脂の反応熱を利用して部位によって異なる物性を与えるようにし、
反応硬化性樹脂の厚みが大きい第1の部位の樹脂厚t1と、反応硬化性樹脂の厚みが小さい第2の部位の樹脂厚t2との比(t1/t2)が13.5以上50以下である電池パックの製造方法である。
【0014】
本開示は、1または複数の電池の外表面の少なくとも一部を反応硬化性樹脂からなる成型部によって被覆する際に、
反応硬化性樹脂の厚みが大きい第1の部位を成形する金型の外表面の一部又は全面に、高温ブロックを当接し、
反応硬化性樹脂の厚みが第1の部位に比して小さい第2の部位を成形する金型の外表面の一部又は全面に、低温ブロックを当接し、
成形時の反応硬化性樹脂の温度を異ならせる電池パックの製造方法である。
【0015】
本開示は、上述した電池パックが、再生可能なエネルギーから発電を行う発電装置によって充電される蓄電システムである。
本開示は、上述した電池パックを有し、電池パックに接続される電子機器に電力を供給する蓄電システムである。
本開示は、上述した電池パックから電力の供給を受ける電子機器である。
本開示は、上述した電池パックから電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と、電池パックに関する情報に基づいて、車両制御に関する情報処理を行う制御装置とを有する電動車両である。
本開示は、他の機器とネットワークを介して信号を送受信する電力情報送受信部を有し、
電力情報送受信部が受信した情報に基づき、上述した電池パックの充放電制御を行う電力システムである。
本開示は、上述した電池パックから電力の供給を受け、または、発電装置または電力網から電池パックに電力を供給する電力システムである。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、1種類の樹脂例えば反応性硬化樹脂を使用して電池および回路基板を被覆し、耐衝撃性に優れ、最大降伏応力が大きい電池パックを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本開示における電池パックの外観の例を示す斜視図である。
【図2】電池素子の外装フィルムによる被膜工程の一例の説明に用いる略線図である。
【図3】電池素子の一例の説明に用いる斜視図である。
【図4】電池部品の樹脂成形時の説明に用いる略線図である。
【図5】電池部品の一例を示す平面図である。
【図6】金型の一例の斜視図である。
【図7】成型部の成形工程の一例の説明に用いる断面図である。
【図8】成型部の成形工程の一例の説明に用いる断面図である。
【図9】成型部の成形工程の他の例の説明に用いる断面図である。
【図10】金型の他の例の斜視図である。
【図11】成型部の成形工程の他の例の説明に用いる断面図である。
【図12】成型部の成形工程の他の例の説明に用いる断面図である。
【図13】成型部の成形工程のさらに他の例の説明に用いる断面図である。
【図14】外装部材を使用しない場合の成形工程の一例の説明に用いる断面図である。
【図15】外装部材を使用しない場合の成形工程の一例の説明に用いる断面図である。
【図16】外装部材を使用しない場合の成形工程の他の例の説明に用いる断面図である。
【図17】電池パックの応用例を説明するための略線図である。
【図18】電池パックの他の応用例を説明するための略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この本開示の実施の形態について説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本開示の好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、この発明の範囲は、以下の説明において、特に本開示を限定する旨の記載がない限り、これらの実施の形態に限定されないものとする。
【0019】
「電池パックの一例」
図1に示すように、電池パック1は、偏平な直方体の外観を有する。枠形状の外装部材(フレームとも称される)11、電池12および電池の保護回路基板13が一体的に反応硬化性樹脂からなる成型部(外装体)10によって被覆された構成を有する。電池12は、例えばラミネートフィルムによって包装されたリチウムイオン2次電池である。
【0020】
外装部材11は、トップカバー部、ボトムカバー部、両側のサイドカバー部とから構成される。トップカバー部には、例えば、複数個の開口が形成されている。図1に示す例では、トップカバーに開口14a、開口14b、開口14cが形成されている。回路基板13に形成されている端子面がそれぞれの開口を介して、外部に露出している。例えば、開口14aを介して正極端子の端子面が露出している。開口14bを介して負極端子の端子面が露出している。開口14cを介してグランド用の端子面が露出している。なお、開口は3個に限られない。例えば、電池パック1が接続される外部機器と通信を行うための通信端子が露出する開口15が形成されていてもよい。
【0021】
なお、後述するように、正極と負極とをセパレータを介して巻回又は積層して成る素子を電池素子と称し、電池素子をラミネートフィルムによって被覆した構成を電池と称し、電池および回路基板を樹脂で一体に成形したものを電池パック1と称する。電池パック1は、外装部材を有する場合と有しない場合とがある。
【0022】
回路基板13には、ヒューズ、熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient;PTC素子)、サーミスタ等の温度保護素子を含む保護回路の他、電池パックを識別するためのID抵抗等の回路部品19がマウントされ、更に複数個(例えば2個または3個)の接点部が形成されている。保護回路には、充放電制御FET(Field Effect Transistor
;電界効果トランジスタ)、2次電池の監視と充放電制御FETの制御を行うIC(Integrated Circuit)等が設けられている。
【0023】
熱感抵抗素子は電池素子と直列に接続され、電池の温度が設定温度に比して高くなると、電気抵抗が急激に高くなって電池に流れる電流を実質的に遮断する。ヒューズも電池素子と直列に接続され、電池に過電流が流れると、自身の電流により溶断して電流を遮断する。また、ヒューズはその近傍にヒータ抵抗が設けられており、過電圧時にはヒータ抵抗の温度が上昇することにより溶断して電流を遮断する。
【0024】
さらに、2次電池の端子電圧が例えば4.3V〜4.4Vを超えると、発熱・発火など危険な状態になる可能性がある。このため、保護回路は2次電池の電圧を監視し、電圧が4.3V〜4.4Vを越えて過充電状態となった場合には充電制御FETをオフして充電を禁止する。さらに2次電池の端子電圧が放電禁止電圧以下まで過放電し、2次電池電圧が0Vになると2次電池が内部ショート状態となり再充電不可能となる可能性がある。このため、2次電池電圧を監視して過放電状態となった場合には放電制御FETをオフして放電を禁止する。
【0025】
電池の一例について説明する。電池は、図2および図3に示すように、正極21と負極22とをセパレータ23a,23bを介して巻回又は積層して成る電池素子20を包装体であるラミネートフィルム27で包装したものである。図2に示すように、包装体であるラミネートフィルム27に形成した矩形板状の凹部27aに電池素子20が収容され、その周辺部(折曲部を除く三辺)が熱溶着・封止される。ラミネートフィルム27を接合する部分がテラス部である。凹部27aの両側のテラス部が凹部27aの方向に向けて折り曲げられる。
【0026】
なお、包装体であるラミネートフィルム27としては、従来公知の金属ラミネートフィルム、例えば、アルミニウムラミネートフィルムを用いることができる。アルミニウムラミネートフィルムとしては、絞り加工に適し、電池素子20を収容する凹部27aを形成するのに適したものがよい。
【0027】
通常、アルミニウムラミネートフィルムは、アルミニウム層の両面に接着層と表面保護層が配設された積層構造を有するもので、内側、即ち電池素子20の表面側から順に、接着層としてのポリプロピレン層(PP層)、金属層としてのアルミニウム層および表面保護層としてのナイロン層又はポリエチレンテレフタレート層(PET層)が配設される。
【0028】
また、包装体であるラミネートフィルム27としては、アルミニウムラミネートフィルムのほかに、一層又は二層のフィルムであり且つポリオレフィンフィルムを含むものとすることができる。ラミネートフィルム27の厚さは、例えば0.2mm以下である。
【0029】
図3に示すように、帯状の正極21と、セパレータ23aと、正極21と対向して配置された帯状の負極22と、セパレータ23bとが順に積層され、積層体が長手方向に巻回される。正極21および負極22の両面にはゲル状の電解質24が塗布されている。電池素子20からは、正極21と接続された正極リード25aと、負極22と接続された負極リード25bとが導出されている。正極リード25aおよび負極リード25bには、後に外装するラミネートフィルム27との接着性を向上させるために、無水マレイン酸変性されたポリプロピレン(PPa)等の樹脂片であるシーラント26aおよび26bが被覆されている。
【0030】
電池の構成要素についてより具体的に説明する。但し、以下に述べる電池以外の電池に対しても、本開示を適用することができる。例えば電解質は、ゲル状のものに限らず、液状、固体状のものを使用しても良い。さらに、帯状の正極と、セパレータと、負極とを巻く形式ではなく、プレート状のこれらの構成要素を積層する形式の電池に対しても本開示を適用できる。
【0031】
(正極)
正極21は、正極活物質を含有する正極活物質層が正極集電体の両面上に形成されてなるものである。正極集電体としては、例えばアルミニウム(Al)箔,ニッケル(Ni)箔あるいはステンレス(SUS)箔などの金属箔が用いられる。
【0032】
正極活物質層は、例えば正極活物質と、導電剤と、結着剤とを含有して構成されている。正極活物質としては、LiXMO2(式中、Mは、一種以上の遷移金属を表し、xは、電池の充放電状態によって異なり、通常0.05以上1.10以下である)を主体とする、リチウムと遷移金属との複合酸化物が用いられる。リチウム複合酸化物を構成する遷移金属としては、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)およびマンガン(Mn)等が用いられる。
【0033】
このようなリチウム複合酸化物として、具体的には、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)等が挙げられる。また、遷移金属元素の一部を他の元素に置換した固溶体も使用可能である。例えば、ニッケルコバルト複合リチウム酸化物(LiNi0.5Co0.5O2、LiNi0.8Co0.2O2等)がその例として挙げられる。これらのリチウム複合酸化物は、高電圧を発生でき、エネルギー密度が優れたものである。さらに、正極活物質としてTiS2、MoS2、NbSe2、V2O5等のリチウムを有しない金属硫化物または金属酸化物を使用してもよ
い。正極活物質としては、これら材料を複数混合して用いてもよい。
【0034】
また、導電剤としては、例えばカーボンブラックあるいはグラファイトなどの炭素材料等が用いられる。また、結着剤としては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が用いられる。また、溶剤としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン(NMP)等が用いられる。
【0035】
(負極)
負極22は、負極活物質を含有する負極活物質層が負極集電体の両面上に形成されてなるものである。負極集電体としては、例えば銅(Cu)箔、ニッケル(Ni)箔あるいはステンレス(SUS)箔などの金属箔が用いられる。
【0036】
負極活物質層は、例えば負極活物質と、導電剤と、結着剤とを含有して構成されている。負極活物質としては、リチウム金属、リチウム合金またはリチウムをドープ・脱ドープ可能な炭素材料または金属系材料と炭素系材料との複合材料が用いられる。具体的に、リチウムをドープ・脱ドープ可能な炭素材料としてはグラファイト、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素等が挙げられ、より具体的には熱分解炭素類、コークス類(ピッチコークス、ニードルコークス、石油コークス)、黒鉛類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体(フェノール樹脂、フラン樹脂等を適当な温度で焼成し炭素化したもの)、炭素繊維、活性炭等の炭素材料を使用することができる。さらに、リチウムをドープ、脱ドープできる材料としては、ポリアセチレン、ポリピロール等の高分子やSnO2、Li4Ti5O12といっ
たLxTiyOz系等の酸化物を使用することができる。
【0037】
また、リチウムを合金化可能な材料としては多様な種類の金属等が使用可能であるが、スズ(Sn)、コバルト(Co)、インジウム(In)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)およびこれらの合金がよく用いられる。金属リチウムを使用する場合は、必ずしも粉体を結着剤で塗布膜にする必要はなく、圧延したリチウム金属板でも構わない。
【0038】
結着剤としては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)等が用いられる。また、溶剤としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン(NMP)、メチルエチルケトン(MEK)、蒸留水等が用いられる。
【0039】
(電解質)
電解質は、リチウムイオン2次電池に一般的に使用される電解質塩と非水溶媒が使用可能である。非水溶媒としては、具体的には、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、γ−ブチロラクトン、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、またはこれらの炭酸エステル類の水素をハロゲンに置換した溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は1種類を単独で用いてもよいし、複数種を所定の組成で混合してもよい。
【0040】
電解質塩としては、非水溶媒に溶解するものが用いられ、カチオンとアニオンが組み合わされてなる。カチオンにはアルカリ金属やアルカリ土類金属が用いられる。アニオンには、Cl-,Br-,I-,SCN-,ClO4-,BF4-,PF6-,CF3SO3-等が用いら
れる。具体的には、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(
LiBF4)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3SO2)2)、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(C2F5SO2)2)過塩素酸リチウム(LiClO4)等が挙げられる。電解質塩濃度としては、溶
媒に溶解することができる濃度であれば問題ないが、リチウムイオン濃度が非水溶媒に対して0.4mol/kg以上2.0mol/kg以下の範囲であることが好ましい。
【0041】
ポリマー電解質を用いる場合は、非水溶媒と電解質塩とを混合してゲル状とした電解液をマトリクスポリマに取り込むことでポリマー電解質を得る。マトリクスポリマは、非水溶媒に相溶可能な性質を有している。このようなマトリクスポリマとしては、シリコンゲル、アクリルゲル、アクリロニトリルゲル、ポリフォスファゼン変性ポリマー、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドおよびこれらの複合ポリマーや架橋ポリマー、変性ポリマー等が用いられる。また、フッ素系ポリマーとして、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ化ビニリデン(VdF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とを繰り返し単位に含む共重合体、フッ化ビニリデン(VdF)とトリフルオロエチレン(TFE)とを繰り返し単位に含む共重合体等のポリマーが挙げられる。このようなポリマーは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0042】
ポリマー電解質中にはSi、Al、Ti、Zr、Wの何れかを含む金属酸化物、乃至複合酸化物を含むことが好ましい。 異常時の絶縁性を確保し、安全性、信頼性を高めると共に、高温時の膨れ抑制効果も期待できるからである。
【0043】
(セパレータ)
セパレータ23aおよび23bは、例えばポリプロピレン(PP)あるいはポリエチレン(PE)などのポリオレフィン系の材料よりなる多孔質膜、またはセラミック製の不織布などの無機材料よりなる多孔質膜により構成されており、これら2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。中でも、ポリエチレン、ポリプロピレンの多孔質フィルムが最も有効である。
【0044】
一般的にセパレータの厚みは5μm以上50μm以下が好適に使用可能であるが、7μm以上30μm以下がより好ましい。セパレータは、厚すぎると活物質の充填量が低下して電池容量が低下するとともに、イオン伝導性が低下して電流特性が低下する。逆に薄すぎると、膜の機械的強度が低下する。
【0045】
「電池パックの構成要素」
図4は、樹脂成形される前の段階における電池パックの構成要素を示す。電池パックは、上述したように、主要な構成要素として外装部材11、電池12、回路基板13を備える。そして、外装部材11と電池12と回路基板13とが成型部10によって一体化される。成型部10によって一体化されるこれらの外装部材11と電池12と回路基板13とを電池部品30と称する。
【0046】
外装部材11は、例えば、前面、後面、左側面および右側面を有する枠体とされ、外装部材11の内部に収納空間が形成されている。外装部材11の形状は、枠体に限らず、コ字状や一面が開放された箱体などでもよい。外装部材11のトップカバー(前面)には、回路基板13に形成されている端子面に対応した開口14a,14b,14cが形成されている。
【0047】
外装部材11のトップカバーの内面と電池12の端面との間隙に、回路基板13が収納される。収納された回路基板13は、トップカバーの内面に対して、例えば、リベット止めにより密着して固定される。回路基板13を外装部材11の内面に密着して固定することで、流動性の高い反応硬化性樹脂が回路基板13の端子面に流れ込むことを防止できる。さらに、後述の反応硬化性樹脂を充填し、成形を行う工程において、回路基板13を正確に位置決めできる。外装部材11に対して回路基板13が取り付けられると、開口14a,14b,14cを通じて端子面16の端子部17a,17b,17cが外部に露出する。
【0048】
さらに、図5Aおよび図5Bにも示すように、外装部材11の内部空間に電池12が収納される。そして電池12の正極リード25aと負極リード25bとが回路基板13の所定箇所に接続される。この後に、反応性硬化樹脂が充填されて成型部10が形成される。成型部10によって、外装部材11と電池12と回路基板13とが一体化される。
【0049】
「樹脂成形」
次に、電池パックの成型部10の形成の概略について説明する。外装部材11と電池12と回路基板13とからなる電池部品30が図6に示すような成形装置の金型のキャビティ(成形空間)43に収納される。なお、複数の電池および回路基板を樹脂成形するようにしても良い。金型は、上型41および下型42からなる。
【0050】
一方の型例えば下型42に2個のゲート穴(図示しない)が設けられている。一方のゲート穴は、成形時に樹脂例えば反応硬化性樹脂が流れ込む通路であり、他方のゲート穴は、成形時に樹脂が吐き出される通路である。上型41および下型42は、金属、プラスチック、またはセラミック材料からなる。一方の型例えば下型42に対して電池部品30が収納されるキャビティ43が形成される。キャビティ43は、外装部材11の外寸法とほぼ等しいものとされる。
【0051】
図7に示すように、下型42のキャビティ43に電池部品30が格納され、下型42の上に上型41が重ねられる。この状態では、上型41および下型42の互いの周縁の面同士が密着される。図8に示すように、上型41および下型42の両者によって成形用のキャビティが形成され、樹脂の充填時に、キャビティ内に樹脂が流れ込む。なお、必要に応じて電池12の上面および/または下面とキャビティ43の対向面との間にスペーサを配置しても良い。図8および他の図においては、樹脂の部分に対してのみ斜線が付されている。
【0052】
樹脂の硬化後に、上型41および下型42が離型され、電池部品30の電池12および回路基板13が成型部10により被覆された電池パック1(図1参照)が成形される。図8に示すように、回路基板13を被覆する厚みが大きい第1の部位51aと、電池12の主面(上面および下面)の全体または一部並びに電池12の側面を被覆する厚みが小さい第2の部位51bとが一体に形成される。第1の部位51aは、電池12のトップカバー側の端面から回路基板13と対向する外装材11の面までの間に存在する成型部である。第2の部位51bは、電池12の上面および下面、並びにボトムカバー側の端面を覆う成型部である。但し、電池12の上面および下面の中央部分に樹脂を設けないことも可能である。
【0053】
(成型時の条件による異なる物性の付与)
本開示は、成型部10の第1の部位(肉厚部)と第2の部位(肉薄部)との間で、成形時(重合反応時)の樹脂温度を調整して、それぞれの物性を異ならせるものである。すなわち、下記の条件1および条件2の少なくとも一方を満たすようになされる。
【0054】
条件1:JIS K 7127に準じて測定される第2の部位の最大降伏応力が第1の部位の最大降伏応力に比べて、3%以上100%以下大きいこと
条件2:JIS K 7110に準じたアイゾット衝撃試験で測定される第1の部位の衝撃強さが、第2の部位の衝撃強さに比べて、3%以上100%以下大きいこと
【0055】
電池12の主面(上面および下面)の全体または一部並びに電池12の側面を被覆する厚みが小さい第2の部位51bの最大降伏応力が大きいことは、電池12の膨張に対応するゴム状物性が期待される。さらに、回路基板13を被覆する厚みが大きい第1の部位51aの衝撃強さが大きいことは、トップカバー部の衝撃強度を高めることができ、回路基板13を保護することができる。
【0056】
(成型時の反応熱を利用した異なる物性の付与)
このような物性を第1の部位51aおよび第2の部位51bにそれぞれ与えるためには、第1の部位51aの成形時の樹脂の温度が第2の部位51bの成形時の樹脂の温度に比して高いものとされる。図8に示すように、第1の部位51aが第2の部位51bに比して肉厚であるために、第1の部位51aにおいて硬化時に発生する反応熱の量は、第2の部位51bに比してより多くなる。部位51aの樹脂厚をt1、部位51bの樹脂厚をt2とする。
【0057】
すなわち、第1の部位51aの硬化時の樹脂の温度が高く、第2の部位51bの硬化時の樹脂の温度が低いものとなる。成形時の樹脂厚によって、硬化時の温度が異なるので、第1の部位51aに比して第2の部位51bの最大降伏応力を大きくすることができる。これと共に、回路基板13を被覆する厚みが大きい第1の部位51aの衝撃強さを第2の部位52bに比して大きくでき、トップカバー部の衝撃強度を高めることができ、回路基板13の保護を確実とすることができる。
【0058】
さらに、成形温度が低い部分では、樹脂の流動性、成形性が優れるので、電池パック側面の最薄肉部での被覆不良、気泡残りなどの生産不良が起こることを防止でき、生産性を高めることができる。これにより従来は二色成型で行うか、別成型にて部品を用意するしかなかった部位別の機能付与を簡単にできるようになり、本開示により高機能な電池パックを効率よく提供できる。反応熱を利用する場合には、任意の物性を確保するために、反応硬化性樹脂の厚みが大きい厚肉部の樹脂厚t1と、反応硬化性樹脂の厚みが小さい薄肉部の樹脂厚t2との比(t1/t2)が1.2以上100以下とされ、好ましくは、13.5以上50以下とされる。なお、図9に示すように、金型の構成によって、電池12を被覆する樹脂の厚みを厚くし、回路基板13を被覆する樹脂の厚みを薄くすることも可能である。この場合、電池12を被覆する樹脂の厚みをt2、回路基板13を被覆する樹脂の厚みをt1とする。
【0059】
樹脂の硬化時の反応熱を利用して各部位に対して所望の物性を与える場合、金型を通じて反応熱の相違が平均化されることは、望ましくないので、図10および図11に示すように、部位の境界付近に断熱材44および45を設けるようにしても良い。断熱材は、熱伝導率が小さい材料である。
【0060】
すなわち、上型の第1の部位および第2の部位の境界付近で上型を第1の上型41aおよび第2の上型41bに2分割するように、断熱材44が設けられ、この境界付近で下型を第1の下型42aおよび第2の下型42bに2分割するように、断熱材45が設けられる。断熱材44、45によって、樹脂硬化時に発生した反応熱による温度差を維持できる。その結果、異なる所望の物性を第1の部位および第2の部位に対してそれぞれ与えることが容易となる。
【0061】
図12に示すように、下型42aおよび42bのキャビティ43に電池部品30が格納され、下型に上型41aおよび41bが重ねられる。形成されたキャビティに対して樹脂が充填される。樹脂の硬化後に、上型および下型が離型され、電池部品30の電池12および回路基板13が成型部10により被覆された電池パック1(図1参照)が成形される。
【0062】
肉厚の第1の部位51aで発生する反応熱の量が肉薄の第2の部位51bで発生する反応熱の量に比して多くなり、第2の部位51bに比してより高い温度で第1の部位51aの樹脂が硬化する。その結果、成形時の樹脂厚によって、第1の部位51aに比して第2の部位51bの最大降伏応力を大きくすることができる。これと共に、回路基板13を被覆する厚みが大きい第1の部位51aの衝撃強さが第2の部位52bに比して大きくなり、トップカバー部の衝撃強度を高めることができ、回路基板13の保護を確実とすることができる。
【0063】
(金型の温度を外的に調整する方法による異なる物性の付与)
上述した例は、成型部の厚みを変更することによって、樹脂の反応熱を利用して第1の部位51aおよび第2の部位51bに対して異なる物性を付与するものである。これに対して、金型の温度を外部の装置によって調整することによって、第1の部位51aおよび第2の部位51bに対して異なる物性を付与するようにしても良い。
【0064】
図13に示すように、断熱材44,45によって上型および下型がそれぞれ熱的に分離されている。第1の部位51aを成型する上型41aの外表面に接するように、ヒーターブロック46aが配置される。同様に、下型42bの底面および側面のそれぞれの外表面に接するように、ヒーターブロック46bおよび46cが配置される。ヒーターブロック46a、46bおよび46cは、ヒーターを内蔵しており、所望の温度に制御される。なお、ヒーターブロック46a、46bおよび46cとして、加熱機構に代えて、または加熱機構と併用して蓄熱材を使用しても良い。さらに、ヒーターブロックを金型の一部の表面に接触させても良い。
【0065】
第2の部位51bを成型する上型41bの外表面に接するように、コールドブロック47aが配置される。同様に、下型42bの底面および側面のそれぞれの外表面に接するように、コールドブロック47bおよび47cが配置される。コールドブロック47a、47bおよび47cは、水冷または空冷によって、冷却されるものである。なお、コールドブロック47a、47bおよび47cとして、冷却機構に代えて、または冷却機構と併用して保冷材を使用しても良い。さらに、コールドブロックを金型の一部の表面に接触させても良い。
【0066】
ヒーターブロック46a、46b、46cとコールドブロック47a、47b、47cとを使用して金型の温度分布を局所的に制御する場合、成型部の最低温度と、最高温度の差が10℃以上200℃以下であることが好ましい。さらに好ましくは、15℃以上50℃以下である。
【0067】
「外装部材の変形例」
上述した外装部材11は、前面、後面、左側面、右側面、上面および下面により、電池の形状に対応しており且つ電池を収容することができる空間を形成している。外装部材11の上面および下面は、それぞれ、外装部材11に電池12を組み合わせた際に、電池12の上面および下面の一部が露出するように矩形で中抜きされた形状を有している。しかしながら、外装部材の形状は、かかる形状に限定されない。例えば外装部材と電池とを組み合わせた時に電池の左側面、及び右側面一部を露出しているような構造であっても良い。外装部材のさらなる変形例として、閉塞された底面を有する箱状の外装部材を使用しても良い。
【0068】
「外装部材を設けない例」
さらに、本開示では、外装部材を設けることは、必須の事項ではなく、外装部材を有しない構成も可能である。図14に示すように、電池12と回路基板13とからなる電池部品30が成形装置の金型(上型41および下型42)のキャビティ(成形空間)に収納される。なお、複数の電池および回路基板を樹脂成形するようにしても良い。一方の型例えば下型42に2個のゲート穴(図示しない)が設けられている。一方のゲート穴は、成形時に樹脂例えば反応硬化性樹脂が流れ込む通路であり、他方のゲート穴は、成形時に樹脂が吐き出される通路である。上型41および下型42は、金属、プラスチック、またはセラミック材料からなる。
【0069】
そして、図15に示すように、キャビティ内に樹脂が充填される。樹脂の硬化後に、上型41および下型42が離型され、電池部品30の電池12および回路基板13が成型部10により被覆された電池パックが成形される。回路基板13を被覆する厚みが大きい第1の部位51aと、電池12の主面(上面および下面)の全体または一部並びに電池12の側面を被覆する厚みが小さい第2の部位51bとが一体に形成される。第1の部位51aは、電池12のトップカバー側の端面と回路基板13との対向面の間に存在する成型部である。第2の部位51bは、電池12の上面および下面、並びにボトムカバー側の端面を覆う成型部である。但し、電池12の上面および下面の中央部分に樹脂を設けないことも可能である。部位51aの樹脂厚をt1、部位51bの樹脂厚をt2とする。
【0070】
本開示は、成型部10の第1の部位(肉厚部)と第2の部位(肉薄部)との間で、樹脂硬化温度を相違させて、それぞれの物性を異ならせるものである。すなわち、上述した条件1および条件2の少なくとも一方を満たすようになされる。具体的には、硬化時の反応熱の量によって、第1の部位51aの樹脂温度が高く、第2の部位51bの樹脂温度が第1の部位51aに比して低い。その結果、第1の部位51aに比して第2の部位51bの最大降伏応力を大きくすることができ、すなわち、伸び率を高めることができ、電池12の膨張に成型部が追従することができる。これと共に、回路基板13を被覆する厚みが大きい第1の部位51aの衝撃強さが第2の部位52bに比して大きくなり、トップカバー部の衝撃強度を高めることができ、回路基板13の保護を確実とすることができる。
【0071】
さらに、図16に示すように、断熱材44,45によって上型および下型をそれぞれ熱的に分離し、ヒーターブロック46a、46bおよび46cによって、第1の部位51aの成型部分を加熱する。さらに、コールドブロック47a、47bおよび47cによって、第2の部位51bの成型部分を冷却する。このような外的に樹脂成型時の温度を制御することによって、第1の部位51aおよび第2の部位51bのそれぞれに対して異なる物性(条件1および/または条件2)を与えることができる。
【0072】
「成型部の樹脂」
成型部10は、熱と反応して硬化する熱硬化性樹脂、紫外線と反応して硬化する紫外線硬化樹脂などの反応硬化性樹脂で構成される。成型部10は、反応硬化性樹脂が硬化されることにより形成された樹脂成形部材である。
【0073】
(反応硬化性樹脂)
反応硬化性樹脂としては、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。中でも、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコン樹脂から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0074】
(ウレタン樹脂)
ウレタン樹脂は、ポリオールとポリイソシアネートとから製造されるものである。ウレタン樹脂としては、以下で定義する絶縁性ポリウレタン樹脂を用いることが好ましい。絶縁性ポリウレタン樹脂は、25±5℃、65±5%RHで測定した体積固有値(Ω・cm)が、1010Ω・cm以上の硬化物を得ることができるものをいう。絶縁性ポリウレタン樹脂としては、誘電率が6以下で(1MHz)、絶縁性破壊電圧が15KV/mm以上のものが好ましい。
【0075】
絶縁性ポリウレタン樹脂は、ポリオールの酸素含有率、溶出イオン濃度または溶出イオンの種類の数などを調整することによって、得られる絶縁性硬化物の体積固有抵抗値を、1010Ω・cm以上、好ましくは1011Ω・cm以上に調整して得ることができる。特に体積固有抵抗値が1011Ω・cm以上であると、硬化物の絶縁性が良好に保持され、2次電池の保護回路基板と一括封止できる。体積固有抵抗値の測定は、JIS C 2105に従って行う。25±5℃、65±5%RHで、サンプル(厚さ:3mm)に500Vの測定電圧を印加し、60秒後の数値を測定する。
【0076】
ウレタン樹脂としては、ポリエステルポリオールを用いたポリエステル系、ポリエーテルポリオールを用いたポリエーテル系、その他のポリオールを用いたウレタン樹脂などが挙げられる。これらは1種で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。また、ポリオールは、粉体を含有してもよい。この粉体として、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、カーボンなどの無機粒子、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリウレタン、ポリフェノールなどの有機高分子の粒子などが使用できる。これらは、単独または混合物として使用できる。粒子の表面は表面処理が施されても良く、ポリウレタン、ポリフェノールはフォーム粉で使用されてもよい。さらに、本開示において使用される紛体には多孔質のものも含まれる。
【0077】
(ポリオール)
(ポリエステル系)
ポリエステル系のポリオールは、脂肪酸とポリオールとの反応物である。脂肪酸としては、例えば、リシノール酸、オキシカプロン酸、オキシカプリン酸、オキシウンデカン酸、オキシリノール酸、オキシステアリン酸、オキシヘキサンデセン酸のヒドロキシ含有長鎖脂肪酸などが挙げられる。
【0078】
脂肪酸と反応するポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコールおよびジエチレングリコールなどのグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパンおよびトリエタノールアミンなどの3官能ポリオール、ジグリセリンおよびペンタエリスリトールなどの4官能ポリオール、ソルビトールなどの6官能ポリオール、シュガーなどの8官能ポリオール、これらのポリオールに相当するアルキレンオキサイドと脂肪族、脂環族、芳香族アミンとの付加重合物や、該アルキレンオキサイドとポリアミドポリアミンとの付加重合物などが挙げられる。なかでも、リシノール酸グリセライド、リシノール酸と1、1、1−トリメチロールプロパンとのポリエステルポリオールなどが好ましい。
【0079】
(ポリエーテル系)
ポリエーテル系のポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1、3−ブタンジオール、1、4−ブタンジオール、4、4' −ジヒドロキシフェニルプロパン、4、4' −ジヒドロキシフェニルメタンなどの2価アルコールまたはグリセリン、1、1、1−トリメチロールプロパン、1、2、5−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトールなどの3価以上の多価アルコールと、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、α−オレフィンオキサイドなどのアルキレンオキサイドとの付加重合物などが挙げられる。
【0080】
(その他のポリオール)
その他のポリオールとして、主鎖が炭素−炭素よりなるポリオール、例えば、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、水素添加ポリブタジエンポリオール、AN(アクリロニトリル)やSM(スチレンモノマー)を上述した炭素−炭素ポリオールにグラフト重合したポリオール、ポリカーボネートポリオール、PTMG(ポリテトラメチレングリコール)などが挙げられる。電池パックに直接成形するには弾性回復力が高く、耐薬品性に優れ、カーボネート系よりコストパフォーマンスに優れるポリエーテル系ポリオールを用いるのが好ましい。
【0081】
(ポリイソシアネート)
ポリイソシアネートとしては、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネートなどが使用できる。芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(粗MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ポリトリレンポリイソシアネート(粗TDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)などが挙げられる。脂肪族ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などが挙げられる。脂環式ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)などが挙げられる。この他に、上記ポリイソシアネートをカルボジイミドで変性したポリイソシアネート(カルボジイミド変性ポリイソシアネート)、イソシアヌレート変性ポリイソシアネート、エチレンオキシド変性ポリイソシアネート、ウレタンプレポリマー(例えばポリオールと過剰のポリイソシアネートとの反応生成物であってイソシアネート基を分子末端にもつもの)なども使用できる。これらは単独または混合物として使用してもよい。これらの中でも、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、カルボジイミド変性ポリイソシアネート、エチレンオキシド変性ポリイソシアネートが好ましい。
【0082】
反応硬化性樹脂の性状により、電池パックの耐熱性、難燃性、耐衝撃性、水分バリア性などの特性を向上することができる。例えば、ウレタン樹脂を用いた場合には、剛直なベンゼン環構造を持った上で最も低分子なイソシアネートであるジフェニルメタジンイソシアネート(MDI)をハードセグメント構造として用い、主剤のポリオールと硬化剤のイソシアネートの重量混合比率(主剤/硬化剤)を1以下、好ましくは0.7以下にすることが好ましい。これにより、架橋密度が高く、剛直で対称性のある分子鎖をもつ構造が得られ、耐熱性と良好な構造強度、ウレタン結合による難燃性の向上、注液性の高い樹脂粘度が得られる。
【0083】
但し、ジフェニルメタジンイソシアネート(MDI)成分が多いほど強度や水分バリア性の面では優れた特性を示すが、80wt%を越えるとMDIによるハードセグメント構造が多すぎて耐衝撃性に劣る結果となる。耐候性が特に要求される場合には、MDIに無黄変性のポリイソシアネートであるXDI系、IPDI系、HDI系を混合して用いることが好ましい。また架橋密度を高めるために主剤に架橋剤として低分子のトリメチロールプロパンなどを加えることが好ましい。
【0084】
反応硬化性樹脂は、JIS K−7110 Izod Vノッチで求められる、衝撃強度が6kJ/m2 以上であることが好ましく、10kJ/m2 以上であることがより好ましい。衝撃強度が6kJ/m2 以上であると、1.9m落下試験および1m落下試験で優れた特性を持つからである。衝撃強度が10kJ/m2 以上であると、市場で最も発生確率が高いと想定される落下試験で非常に優れた特性を得ることができるからである。ここで分子量分布(数平均分子量/重量平均分子量)が高いほど樹脂の流動性、成形性が向上するが、耐衝撃性は悪くなっていく傾向があるので、流動性は少なくとも粘度が80mPa・s以上であることが好ましく、200mPa・s以上600mPa・s以下の範囲で粘度を調節すると好適に使用できるため、より好ましい。
【0085】
反応硬化性樹脂は、0.05mm以上0.4mm未満の厚みでのUL746C3/4インチ炎燃焼試験の規格で、延焼面積が25cm2 以下である難焼性が確保されることが好ましい。
【0086】
反応硬化性樹脂として、ウレタン樹脂を用いた場合には、難燃性ポリオールとして、式(1)で表される構造を含むものが好ましい。ウレタン樹脂の構造内部に難燃成分を付与することで樹脂厚みが薄い場合に特に難燃性向上に効果があり、構造強度も確保できるからである。
【0087】
PO(XR)3 ・・・・式(1)
(R=H、アルキル基、フェニル基、X=S、O、N、(CH2 )n :nは1以上の整数)
【0088】
上述のウレタン樹脂を用いない場合でも、反応硬化性樹脂は、厚みが薄い場合にはガラス転移点(ガラス転移温度)を低くすれば、耐衝撃性が向上すると共に、樹脂がバーナーの炎で収縮し、実質の樹脂の厚みが厚くなって延焼しにくくなり、難燃性を向上できる。一方、ガラス転移点が低すぎたり、ガラス転移点が高すぎたりすると、強度や安全性が低下する傾向にある。
【0089】
したがって、反応硬化性樹脂のガラス転移点は、60℃以上150℃以下であり、且つ溶融(分解)温度が200℃以上400℃以下であることが好ましい。さらにガラス転移点は、85℃以上120℃以下がより好ましい。溶融(分解)温度は、240℃以上300℃以下がより好ましい。ガラス転移点が60℃未満であると、45℃の環境温度で外装としての強度を確保することが難しくなる。ガラス転移点が150℃を超えると誤使用時に電池が蓄えたエネルギーを放出するのが遅れて重大事故につながるおそれがある。
【0090】
ガラス転移温度を60℃以上150℃以下としても溶融温度(分解温度)が200℃以上400℃以下にすると、溶融分解による吸熱反応の寄与により、難燃性が向上する。溶融(分解)温度が200℃未満だと炭化の促進および断熱層の形成初期に吸熱することになるので、かえって難燃性に寄与できない。溶融(分解)温度が400℃を超えても吸熱のタイミングが遅すぎてやはり難燃性に寄与できない
【0091】
反応硬化性樹脂は、粘度が80mPa・s以上1000mPa・s未満であることが好ましい。粘度をこの範囲に調整することにより、電池の最大面の被覆不良を抑制することができ、これにより、電池パックの特性劣化を抑制することができる。さらに、反応硬化性樹脂は熱可塑性樹脂よりも硬化までの時間が長いために流動性が優れる。しかしながら、粘度が高いと型の保持力も増大して生産装置が高価かつ生産性が低くなってしまい、パックの成形部材の薄肉化による体積エネルギー密度の向上と低コストが達成できない。粘度が低すぎると今後は逆に流動性が高すぎるために、成形金型からのバリ、基板部分への樹脂の染み出しにより生産速度が低下し、不良率があがるおそれがある。
【0092】
反応硬化性樹脂(例えばウレタン樹脂)は、接着性であるために金属に強い接着性を持っており、熱可塑性樹脂とも極性基で接着して強靱な一体構造を得ることが可能である。熱可塑性のポリアミド樹脂も接着性を持つものの、接着力が弱いために、物理的な接着強化と高い充填圧力が必要であるが、反応硬化性樹脂では、そうした制約がない。ウレタン樹脂の接着性と凝集構造の関係は明らかではないが、架橋密度を上げていくと接着性は落ちる傾向が見いだされた。したがって、接着部材として表面に活性水素が多い部材、ウレタン樹脂と水素結合を作りやすい極性基の多い部材を用いるのが好ましい。
【0093】
同様に部材との嵌合部にアンダーカット部を設けることで部材との分離を防ぐことや、部材表面を粗化したり、切れ込みを入れたりすることで実質の接着面積を増やすことは好ましい。さらに、硬化時の温度条件でウレタン樹脂の凝集構造をコントロールし、低温にすることで表面の極性基を増やして接着性を向上することや、高温にすることで接着性を落とし、金型との離型性をコントロールすることは好ましい。
【0094】
(添加剤)
反応硬化性樹脂に、充填剤、難燃剤、消泡剤、防菌剤、安定剤、可塑剤、増粘剤、防黴剤、他の樹脂などの添加剤を含ませてもよい。
【0095】
難燃剤としては、トリエチルフォスフェート、トリス(2、3ジブロモプロピル)フォスフェートなどを用いることができる。その他の添加剤としては、三酸化アンチモン、ゼオライトなどの充填剤や顔料、染料などの着色剤を用いることができる。その他の添加剤としては、三酸化アンチモン、ゼオライトなどの充填剤や顔料、染料などの着色剤を用いることができる。
【0096】
(触媒)
反応硬化性樹脂には、触媒を添加することが好ましい。三級アミン、脂肪酸金属塩などの金属系イソシアヌレート化触媒、有機スズ化合物等の公知の触媒、および樹脂の主剤側鎖にカルボジイミド変性やエチレンオキシド変性させた水素を持たない窒素官能基を持つ主剤から選ばれる同じ温度でも触媒活性の異なる2種類以上の触媒を混合して用いることが好ましい。2種類以上の触媒を用いれば、反応熱を利用した樹脂物性の調整の際に樹脂骨格をコントロールし易いためである。
【0097】
触媒はイソシアネートとポリオール化合物の反応やイソシアネートの二量化、三量化を進行させる役割で添加され、公知の触媒を使用することができる。具体的にはトリエチレンジアミン、2−メチルトリエチレンジアミン、テトラメチルヘキサンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ペンタメチルジプロピレントリアミン、ペンタメチルヘキサンジアミン、ジメチルアミノエチルエーテル、トリメチルアミノプロピルエタノールアミン、トリジメチルアミノプロピルヘキサヒドロトリアジン、三級アンモニューム塩などの三級アミンを用いることができる。
【0098】
金属系イソシアヌレート化触媒は、ポリオールの100重量部に対して0.5重量部以上20重量部以下の範囲で使用するのが好ましい。金属系イソシアヌレート化触媒が0.5重量部より少ないと、十分なイソシアヌレート化が起こらないので好ましくない。また、ポリオール100重量部に対する金属系イソシアヌレート化触媒の量を20重量部より多くしても、添加量に応じた効果が得られない。
【0099】
金属系イソシアヌレート化触媒としては、例えば、脂肪酸金属塩を挙げることができ、具体的には、ジブチルチンジラウレート、オクチル酸鉛、リシノール酸カリウム、リシノール酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、ナフテン酸カリウム、ナフテン酸ナトリウム、オクチル酸カリウム、オクチル酸ナトリウム、およびこれらの混合物を挙げることができる。
【0100】
他に触媒としては、有機スズ化合物が用いられ、例えば、トリ−n−ブチルチンアセテート、n−ブチルチントリクロライド、ジメチルチンジクロライド、ジブチルチンジクロライド、トリメチルチンハイドロオキサイドなどがあげられる。これら触媒はそのまま用いてもよいし、酢酸エチルなどの溶媒に、濃度が0.1〜20%となるように溶解して、イソシアネート100質量部に対して、固形分として0.01〜1質量部となるよう添加してもよい。このように、上記触媒の配合量は、そのまま、または溶剤に溶解した状態のいずれの場合においても、固形分として、イソシアネート100質量部に対して0.01〜1質量部となるよう添加するのが好ましく、特に好ましくは0.05〜0.5質量部である。すなわち、触媒の配合量が0.01部未満のように少な過ぎると、ポリウレタン樹脂成形体の形成が遅く、樹脂状に硬化せず成形が困難となる。逆に、1質量部を超えると、樹脂の形成が極端に速くなり、形状維持ポリマー層として成形しにくいからである。
【0101】
2種類以上の触媒を用いる場合、反応硬化性樹脂がウレタンであり、少なくとも一つの触媒として、以下の化学式で示される主剤プレポリマーを用いるのが好ましい。
【化1】
【0102】
このように、主剤のプレポリマー分子鎖中にN基を持つことで、速硬化性を発揮させるだけでなく、難燃性も改善できる。なお、本分子構造は触媒作用を持つものの有機スズ化合物や金属系イソシアヌレート化触媒と同時に用いることは、反応速度差が出しやすくなるので好ましい。
【0103】
(金属酸酸化物フィラー)
成型部10に金属酸化物フィラーを含むようにしてもよい。金属酸化物フィラーとしては、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)の酸化物、またはこれら酸化物の任意の混合物を挙げることができる。このような金属酸化物フィラーは、この成型部10の硬さを向上する機能を果たし、反応硬化性樹脂を含む層と接触した状態で配置され、例えば、この金属酸化物フィラーを反応硬化性樹脂を含む層に混入してもよく、この場合、反応硬化性樹脂を含む層の全体に亘って均一に散在していることが好ましい。
【0104】
金属酸化物フィラーの混入量は、反応硬化性樹脂を含む層のポリマー種などに応じて適宜変更することができる。しかしながら、反応硬化性樹脂を含む層の質量に対する混入量が3%未満の場合には、この外装材の硬さを十分に高め得ないことがある。一方、混入量が60%を超える場合には、製造時の成形性やセラミックの脆性による問題が発生することがある。したがって、反応硬化性樹脂を含む層の質量に対する金属酸化物フィラーの混入量を2〜50%程度とすることが好ましい。
【0105】
また、金属酸化物フィラーの平均粒径を小さくすると、硬度が上がるものの成形時の充填性に影響して生産性に不具合を来たす可能性がある。一方、金属酸化物フィラーの平均粒径を大きくすると、目的の強度を得にくくなって電池パックとしての寸法精度を十分に得ることができない可能性がある。したがって、金属酸化物フィラーの平均粒径を0.1〜40μmとすることが好ましく、0.2〜20μmとすることがより好ましい。
【0106】
さらに、金属酸化物フィラーの形状としては、球状や鱗片状や板状や針状など様々な形状を採用することができる。特に限定されるものではないが、球状のものは、作製し易く平均粒径の揃ったものを安価に得られるので好ましく、針状でアスペクト比の高いものは、フィラーとして強度を高め易いので好ましい。さらに、鱗片状のものは、フィラーの含有量を増したときに充填性を高め得るので好ましい。なお、用途や材質に応じて、平均粒径の異なるフィラーを混合して用いたり、形状の異なるフィラーを混合して用いたりすることが可能である。
【0107】
成型部10は、金属酸化物の他に各種添加剤を含有することが可能である。例えば、反応硬化性樹脂を含む層中に、紫外線吸収剤や、光安定剤や、硬化剤またはこれらの任意の混合物を添加して、金属酸化物フィラーと共存させることができる。
【0108】
<内部離型剤>
反応硬化性樹脂は接着性に優れるが、接着性が強すぎると、例えば、離型時に製品の変形、外観不良を引き起こす虞がある。このため、カルナバワックスなどの天然系ワックス、ポリエチレンワックスなどのポリオレフィン系ワックス、モンタン酸アミドなどのアミド系ワックス、モンタン酸エステルなどのエステル系ワックス、シリコーンオイルなどのシリコーン化合物、ステアリン酸などの高級脂肪酸、ステアリン酸亜鉛などの高級脂肪酸の金属塩類、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの内部離型剤を添加することは好ましい。
特に、内部離型剤としてダイキン ポリフロンMPA FA500Hなどの繊維状フッ素系高分
子を用いると、燃焼時に発煙物質並びに滴下物が生じたとしても滴下を抑制し、延焼を防止するので、生産性だけでなく難燃性も向上させることができるので好ましい。
【0109】
(エポキシ樹脂)
ここで、本開示に使用できるエポキシ樹脂について説明する。エポキシ樹脂は、エポキシプレポリマーと硬化剤とから製造されるものである。プレポリマーには、粉体を含有してもよい。この粉体として、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、カーボンなどの無機粒子、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリウレタン、ポリフェノールなどの有機高分子の粒子などが使用できる。これらは、単独または混合物として使用できる。粒子の表面は表面処理が施されても良く、ポリウレタン、ポリフェノールはフォーム粉で使用されてもよい。さらに本開示において使用できる紛体には多孔質のものも含まれる。
【0110】
(プレポリマー)
ビスフェノールA系エポキシ樹脂、ビスフェノールF系エポキシ樹脂、フェノールノボラック系エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA系エポキシ樹脂、環式脂肪族エポキシ樹脂、有機カルボン酸類のグリシジルエーテルなど公知のエポキシプレポリマーを用いることができる。さらに、本開示では、これらの1種又は2種以上を使用することができる。シクロヘクセンオキシドやエポキシ化ポリブタジエンなどの内部エポキシ型よりも、グリシジルエーテル型ないしグリシジルエステル型が硬化速度の上で好ましい。グリシジルエーテル型には例えばビスフェノールAのエポクロルヒドリン縮合物が挙げられる。またビスフェノールF型エポキシ樹脂を用いるのが粘度の上で好ましい。
【0111】
(硬化剤)
硬化剤としては、アミン類、およびケチミンなどのアミン変性体、ポリアミド樹脂、イミダゾール類、ポリメルカプタン、酸無水物、光・紫外線硬化剤などが挙げられる。これらは1種で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0112】
(アミン類)
鎖状脂肪族アミン、環状脂肪族アミン、芳香族アミンなどが挙げられる。
鎖状脂肪族アミンは、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、AMINE248などのヘキサメチレンジアミンおよびその誘導体が好ましい。環状脂肪族アミンはN-アミノエチルピペラジン、メンセンジアミン、イソフオロンジアミン、ラミロンC-260、Araldit HY-964、S Cure211 乃至212、ワンダミンHM、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、およびその誘導体が好ましい。
【0113】
脂肪芳香族アミンは、m−キシレンジアミン、ショーアミンX、アミンブラック、ショ
ーアミンブラック、ショーアミンN 、ショーアミン1001,ショーアミン1010、およびその誘導体が好ましい。
【0114】
芳香族アミンは、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、およびその誘導体が好ましい。ポリメルカプタンは液状ポリメルカプタンおよびポリスルフィド樹脂をアミン類と混合して用いることが好ましい。
【0115】
酸無水物としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、グリセロールトリストリメリテート、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、アルキルスチレン−無水マレイン酸共重合体、クロレンド酸無水物、ポリアゼライン酸無水物、およびその誘導体が好ましい。メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、およびその誘導体がさらに好ましい。
【0116】
光・紫外線硬化剤としては、ジフェニルヨードニウムヘキサフロロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフロロホスフェート、およびその誘導体が好ましい。電池パックに直接成形するには、耐薬品性に優れ、速硬化性のアミン系硬化剤、乃至アミン系硬化剤より基板の腐食がしにくい酸無水物類を用いるのが好ましい。
反応硬化樹脂の性状により、電池パックの耐熱性、難燃性、耐衝撃性、水分バリア性などの特性を向上することができる。
【0117】
「外装部材」
外装部材11について説明する。外装部材11を構成する材料としては、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリアミドなどの熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。電池パックとして切り替え頻度の大きな、トップ、ボトムなどの形状変化に対して、熱硬化性樹脂より成形サイクルが短い熱可塑性樹脂を用いることにより、迅速かつ安価に対応できるからである。
【0118】
外装部材11は、前面、後面、左側面、右側面、上面および下面により、電池の形状に対応しており且つ電池12を収容することができる空間を形成している。外装部材11の上面および下面は、それぞれ、外装部材11に電池12を組み合わせた際に、電池の上面および下面の一部が露出するように矩形で中抜きされた形状を有している。
【0119】
「実施例」
本開示の理解を容易にするために、実施例および比較例について説明する。なお、本開示の内容は、以下の実施例および比較例の内容に限定されるものではない。
【0120】
実施例1〜実施例8、および、比較例1〜3について表1、表2および表3を参照して説明する。
【0121】
【表1】
【0122】
【表2】
【0123】
【表3】
【0124】
表1、表2および表3は、本来は一つの表であるが、記載スペースの関係で、横方向に3分割したものである。表1に示す各項目は、順に以下のものである。
反応硬化性樹脂の材料:成型部10を形成する樹脂r1〜r4
r1:ポリエステル系ポリウレタン
r2:ポリエーテル系ポリウレタン
r3:熱可塑性ポリカーボネート
r4:熱可塑性ポリプロピレン
【0125】
成型手法:第1の部位および第2の部位に対して異なる物性を与えるための手法である。手法1は、樹脂の反応熱を利用する方法であり、手法2は、金型を外的に温度調整する方法である。
【0126】
成型部の触媒1:成型部10の樹脂に対する触媒c1〜c7
成型部の触媒2:成型部10の樹脂に対する触媒c8〜c14
c1:トリエチレンジアミン
c2:テトラメチルヘキサンジアミン
c3:n−ブチルチントリクロライド
c4:ジメチルチンジクロライド
c5:トリメチルチンハイドロオキサイド
c6:ジブチルチンジクロライド
c7:トリ−n−ブチルチンアセテート
c8:オレイン酸ナトリウム
c9:(OH)2 −(P=O)CH2 N(OH)2
c10:(CH3 O)2 −(P=O)CH2 N(CH2 OH)2
c11:(C2 H5 O)2 −(P=O)CH2 N(C2 H4 OH)2
c12:(C3 H7 O)2 −(P=O)CH2 N(C3 H6 OH)2
c13:(C3 H7 O)2 −(P=O)CH2 N(C4 H8 OH)3
c14:(C2 H5 O)2 −(P=O)CH2 N(C2 H4 OH)(CH2 OH)
【0127】
内部離型剤:成型部10の樹脂に対する内部離型剤
p1:カルナバワックス
p2:ステアリン酸亜鉛
p3:シリコーンオイル
p4:PTFE
【0128】
反応硬化性樹脂の厚肉部(第1の部位)および薄肉部(第2の部位)のそれぞれの最大降伏応力(N/mm2 )と、両者の差を測定した。
(引っ張り強さの測定)
JIS K7127プラスチック引っ張り試験に基づき常温での引っ張り強さを見積もった。装置は島津製作所社の引っ張り試験機AG−20を用い、1B試験片の1/4縮尺で電池パックの部位毎に5本の試験片を作製し、最大降伏応力の平均値を得た。
【0129】
反応硬化性樹脂の厚肉部(第1の部位)および薄肉部(第2の部位)のそれぞれの衝撃強さ(kJ/mm2 )と、両者の差を測定した。
(耐衝撃性の測定)
JIS K7110アイゾッド衝撃試験に基づき常温での耐衝撃力を見積もった。装置は、東洋精機製作所社のデジタル衝撃試験機DG−UBを用い5本の試験片の平均値を得た。
【0130】
表2に示す各項目は、順に以下のものである。
金型設計値(mm)(薄肉部の厚さt1および厚肉部の厚さt2)
厚さの比(t2/t1)
【0131】
製造条件として、硬化方式および硬化時間を規定した。硬化方式としては、加熱する場合と、常温放置の場合と、h1(200℃溶融押出成型)と、h2(220℃溶融押出成型)とを使用した。実施例1〜8では、60℃〜80℃の加熱を行い、硬化時間を3分〜10分程度とした。比較例1は、常温放置であり、硬化時間が1日であった。比較例2は、硬化方式h1であり、硬化時間が20秒であった。比較例3は、硬化方式h2であり、硬化時間が30秒であった。
【0132】
(ガラス転移点)
反応硬化性樹脂のガラス転移点(Tg)(℃)
熱機械分析装置TMA (ThermoMechanical Analyzer )としてエスアイアイ・ナノテクノロジー社製TMA/SS7100を用い定荷重応力測定モードで昇温速度10℃/minで測定して得た応力−温度曲線のうち、急激に応力が軟化した温度の接線を用いガラス転移温度(Tg)とした。
【0133】
電池包装体w1〜w4
w1:アルミラミネート
w2:ポリエチレンフィルム+PETフィルム2層
w3:真空蒸着ポリエチレンフィルム+PETフィルム2層
w4:真空蒸着ポリプロピレンフィルム単層
【0134】
表3に示す各項目は、順に以下のものである。表3には、効果に関する項目が記載されている。
効果として下記の6項目について測定した。
定格エネルギー密度(Wh/l)、充填泡不良数(100個当たりの個数)、0℃サイクル膨れ(mm)、60℃90%RHで1カ月保存後の膨れ(mm)、0℃1m落下試験不良数(10個当たりの個数)、難燃性(延焼面積(cm2 )
【0135】
(定格エネルギー密度)
23℃の温度下において、上限4.2Vで15時間の1Cの定電流定電圧充電と、終止電圧2.5Vまでの1Cの定電流放電を繰り返し行い、定格エネルギー密度を1サイクル目の放電容量から求めた。
定格エネルギー密度(Wh/l)=(平均放電電圧(V)×定格容量(Ah)/電池パックの体積(l)
なお、1Cは、電池の容量を1時間で放出可能な電流値を示す。
【0136】
(電池パックの膨れ(mm))
作製して初回充放電を行った2次電池パックについて、0℃で再度4.2Vまで3時間充電して、電池パックの厚みを測定したものをサイクル前の厚みとした。設計容量1500mAhに対し、充電は、1500mAの定電流定電圧充電を上限4.2Vまで3時間行い、放電は150mAの定電流放電を終止電圧2.5Vまで行って1サイクルとする。これを60℃の恒温槽内で300回繰り返した。300サイクル後に再度0℃で再度4.2Vまで3時間充電して、電池パックの厚みを測定したものをサイクル後の厚みとした。サイクル後の電池パック厚みからサイクル前の電池パック厚みを引いた値を、保存後の膨れとして求めた。
【0137】
また、別途に初回充放電を行った各二次電池パックについて、電池パックの厚みを測定したのち、再度4.2Vまで3時間充電して60℃、90%RHの恒温恒湿槽内で1ヶ月保管し、保存後の電池パックの厚みを測定した。保存後の電池パック厚みから保存前の電池パック厚みを引いた値を、保存後の膨れとして求めた。
【0138】
(0℃1m落下試験の測定)
0℃で3時間電池パックを保存し、取り出した直後に3回落下させた。ヒビ、穴など内部部品が露出するような外傷が得られたものをNGとした。10個の電池パックをそれぞれ試験し、不良品の数を数えた。
【0139】
(難燃性の測定)
UL746C3/4インチ炎燃焼試験の規格に基づき、電池パックの最薄部と同じ厚みに均一に成形した300mm×300mmの平板状の3個の試験片を用い、平板の試験片の中央下端に3/4インチの炎に調節したバーナー炎をあてて30秒間保持し、その後バーナー炎を試験片から離した。1分の間隔で同じ場所にバーナー炎を更に30秒間あてた後バーナー炎を離した。1回目と2回目の接炎終了後の有炎燃焼持続時間が1分以内、且つ試験片の燃焼面積が電池パックのフットプリント以下の面積である25cm2 以下であることを確認し、所定試験片の厚みがUL746C3/4インチ炎燃焼試験を満たしていると判断した。
【0140】
(実施例1)
成型部10を形成する反応硬化性樹脂として、r1(ポリエステル系ポリウレタン)を使用した。成型手法2(金型を外的に温度調整する方法)を使用した。成型部の反応硬化性樹脂に対する2種類の触媒としてc1(トリエチレンジアミン)およびc8(オレイン酸ナトリウム)を使用した。第1の部位および第2の部位の間の最大降伏応力の差が3.2%であった。衝撃強さの差が10%であった。二つの部位の厚さの比t2/t1が33.3とされた。
【0141】
実施例1の効果は、下記のものである。
定格エネルギー密度:500(Wh/l)
充填泡不良数(100個当たりの個数):8
0℃サイクル膨れ:0.7(mm)
60℃90%RHで1カ月保存後の膨れ:0.7(mm)
0℃1m落下試験不良数(10個当たりの個数):3
難燃性(延焼面積:24(cm2 )
【0142】
(実施例2)
反応硬化性樹脂および成型手法は、実施例1と同一である。成型部の反応硬化性樹脂に対する2種類の触媒としてc2(テトラメチルヘキサンジアミン)およびc7(トリ−n−ブチルチンアセテート)を使用した。第1の部位および第2の部位の間の最大降伏応力の差が50%であった。衝撃強さの差が6%であった。二つの部位の厚さの比t2/t1が25.0とされた。
【0143】
実施例2の効果は、下記のものである。
定格エネルギー密度:500(Wh/l)
充填泡不良数(100個当たりの個数):6
0℃サイクル膨れ:0.6(mm)
60℃90%RHで1カ月保存後の膨れ:0.5(mm)
0℃1m落下試験不良数(10個当たりの個数):2
難燃性(延焼面積:22(cm2 )
【0144】
(実施例3)
成型部10を形成する反応硬化性樹脂として、r2(ポリエーテル系ポリウレタン)を使用した。成型手法2(金型を外的に温度調整する方法)を使用した。成型部の反応硬化性樹脂に対する2種類の触媒としてc3(n−ブチルチントリクロライド)およびc9((OH)2 −(P=O)CH2 N(OH)2 )を使用した。第1の部位および第2の部位の間の最大降伏応力の差が6.4%であった。衝撃強さの差が14.3%であった。二つの部位の厚さの比t2/t1が16.7とされた。
【0145】
実施例3の効果は、下記のものである。
定格エネルギー密度:520(Wh/l)
充填泡不良数(100個当たりの個数):3
0℃サイクル膨れ:0.5(mm)
60℃90%RHで1カ月保存後の膨れ:0.5(mm)
0℃1m落下試験不良数(10個当たりの個数):1
難燃性(延焼面積:19(cm2 )
【0146】
(実施例4)
成型部10を形成する反応硬化性樹脂および成型手法は、実施例3と同一である。成型部の反応硬化性樹脂に対する2種類の触媒としてc4(ジメチルチンジクロライド)およびc10((CH3 O)2 −(P=O)CH2 N(CH2 OH)2 )を使用した。第1の部位および第2の部位の間の最大降伏応力の差が33%であった。衝撃強さの差が22.2%であった。二つの部位の厚さの比t2/t1が13.8とされた。
【0147】
実施例4の効果は、下記のものである。
定格エネルギー密度:520(Wh/l)
充填泡不良数(100個当たりの個数):2
0℃サイクル膨れ:0.5(mm)
60℃90%RHで1カ月保存後の膨れ:0.4(mm)
0℃1m落下試験不良数(10個当たりの個数):1
難燃性(延焼面積:15(cm2 )
【0148】
(実施例5)
成型部10を形成する反応硬化性樹脂は、実施例4と同一である。成型手法1(樹脂の反応熱を利用する方法)が使用された。成型部の反応硬化性樹脂に対する2種類の触媒としてc5(トリメチルチンハイドロオキサイド)およびc11((C2 H5 O)2 −(P=O)CH2 N(C2 H4 OH)2)を使用した。第1の部位および第2の部位の間の最
大降伏応力の差が33%であった。衝撃強さの差が25%であった。二つの部位の厚さの比t2/t1が36.7とされた。
【0149】
実施例5の効果は、下記のものである。
定格エネルギー密度:540(Wh/l)
充填泡不良数(100個当たりの個数):1
0℃サイクル膨れ:0.4(mm)
60℃90%RHで1カ月保存後の膨れ:0.3(mm)
0℃1m落下試験不良数(10個当たりの個数):0
難燃性(延焼面積:11(cm2 )
【0150】
(実施例6)
成型部10を形成する反応硬化性樹脂および成型手法は、実施例5と同一である。成型部の反応硬化性樹脂に対する2種類の触媒としてc6(ジブチルチンジクロライド)およびc12((C3 H7 O)2 −(P=O)CH2 N(C3 H6 OH)2 )を使用した。第1の部位および第2の部位の間の最大降伏応力の差が15%であった。衝撃強さの差が37.5%であった。二つの部位の厚さの比t2/t1が27.5とされた。
【0151】
実施例6の効果は、下記のものである。
定格エネルギー密度:550(Wh/l)
充填泡不良数(100個当たりの個数):1
0℃サイクル膨れ:0.3(mm)
60℃90%RHで1カ月保存後の膨れ:0.2(mm)
0℃1m落下試験不良数(10個当たりの個数):0
難燃性(延焼面積:9(cm2 )
【0152】
(実施例7)
成型部10を形成する反応硬化性樹脂および成型手法は、実施例6と同一である。成型部の反応硬化性樹脂に対する2種類の触媒としてc5(トリメチルチンハイドロオキサイド)およびc13((C3 H7 O)2 −(P=O)CH2 N(C4 H8 OH)3)を使用
した。第1の部位および第2の部位の間の最大降伏応力の差が14%であった。衝撃強さの差が37.5%であった。二つの部位の厚さの比t2/t1が18.3とされた。
【0153】
実施例7の効果は、下記のものである。
定格エネルギー密度:560(Wh/l)
充填泡不良数(100個当たりの個数):0
0℃サイクル膨れ:0.2(mm)
60℃90%RHで1カ月保存後の膨れ:0.2(mm)
0℃1m落下試験不良数(10個当たりの個数):0
難燃性(延焼面積:6(cm2 )
【0154】
(実施例8)
成型部10を形成する反応硬化性樹脂および成型手法は、実施例7と同一である。成型部の反応硬化性樹脂に対する2種類の触媒としてc5(トリメチルチンハイドロオキサイド)およびc14((C2 H5 O)2 −(P=O)CH2 N(C2 H4 OH)(CH2 OH))を使用した。第1の部位および第2の部位の間の最大降伏応力の差が14%であった。衝撃強さの差が37.5%であった。二つの部位の厚さの比t2/t1が18.3とされた。
【0155】
実施例8の効果は、下記のものである。
定格エネルギー密度:560(Wh/l)
充填泡不良数(100個当たりの個数):0
0℃サイクル膨れ:0.2(mm)
60℃90%RHで1カ月保存後の膨れ:0.2(mm)
0℃1m落下試験不良数(10個当たりの個数):0
難燃性(延焼面積:5(cm2 )
【0156】
(比較例1)
成型部10を形成する反応硬化性樹脂として、r1(ポリエステル系ポリウレタン)を使用した。成型手法は、通常の成形方法であり、部位によって形成時の樹脂温度を相違させないものである。触媒としてc7(トリ−n−ブチルチンアセテート)のみを使用した。第1の部位および第2の部位の間の最大降伏応力の差が2%であった。衝撃強さの差が0%であった。二つの部位の厚さの比t2/t1が13.8とされた。
【0157】
比較例1の測定結果は、下記のものである。
定格エネルギー密度:350(Wh/l)
充填泡不良数(100個当たりの個数):93
0℃サイクル膨れ:2.2(mm)
60℃90%RHで1カ月保存後の膨れ:1.5(mm)
0℃1m落下試験不良数(10個当たりの個数):10
難燃性(延焼面積:35(cm2 )
【0158】
(比較例2)
成型部10を形成する樹脂として、r3(熱可塑性ポリカーボネート)を使用した。成型手法は、通常の成形方法である。触媒は、使用しない。第1の部位および第2の部位の間の最大降伏応力の差が0%であった。衝撃強さの差が0%であった。二つの部位の厚さの比t2/t1が13.8とされた。
【0159】
比較例2の測定結果は、下記のものである。
定格エネルギー密度:380(Wh/l)
充填泡不良数(100個当たりの個数):95
0℃サイクル膨れ:1.7(mm)
60℃90%RHで1カ月保存後の膨れ:2.1(mm)
0℃1m落下試験不良数(10個当たりの個数):10
難燃性(延焼面積:78(cm2 )
【0160】
(比較例3)
成型部10を形成する樹脂として、r4(熱可塑性ポリプロピレン)を使用した。成型手法は、通常の成形方法である。触媒は、使用しない。第1の部位および第2の部位の間の最大降伏応力の差が2%であった。衝撃強さの差が0%であった。二つの部位の厚さの比t2/t1が13.8とされた。
【0161】
比較例3の測定結果は、下記のものである。
定格エネルギー密度:420(Wh/l)
充填泡不良数(100個当たりの個数):98
0℃サイクル膨れ:2(mm)
60℃90%RHで1カ月保存後の膨れ:2.3(mm)
0℃1m落下試験不良数(10個当たりの個数):10
難燃性(延焼面積:81(cm2 )
【0162】
(効果に対する評価)
表1、表2および表3から得られる評価について説明する。本開示による電池パックは、下記のような効果を奏する。
【0163】
・樹脂物性が均一な電池パックに比べ、1.9m落下試験の破壊までの回数が大きく向上し、変形も抑制された(高温部)。
・樹脂物性が均一な電池パックに比べ、ねじり試験の変形量が改善された(高温部)。
・樹脂物性が均一な電池パックに比べ、基板への水分透過量が改善された(高温部)。
・樹脂物性が均一な電池パックに比べ、サイクル特性が改善された(低温部)。
・樹脂物性が均一な電池パックに比べ、高温保存試験での変形量が改善された(低温部)。
・二色成型で行うか、別成型にて部品を用意した電池パックに比べ,原材料コストが下がり、低コストになった。
・二色成型で行うか、別成型にて部品を用意した電池パックに比べ、生産性タクトが良くなり低コストになった。
・二色成型で行うか、別成型にて部品を用意した電池パックに比べ、歩留まりが改善し、低コストになった。
【0164】
「応用例」
上述した電池パック1の応用例について説明する。なお、電池パック1の用途は、以下に示す応用例に限られることはない。
【0165】
「応用例としての住宅における蓄電システム」
本開示を住宅用の蓄電システムに適用した例について、図17を参照して説明する。例えば住宅101用の蓄電システム100においては、火力発電102a、原子力発電102b、水力発電102c等の集中型電力系統102から電力網109、情報網112、スマートメータ107、パワーハブ108等を介し、電力が蓄電装置103に供給される。これと共に、家庭内発電装置104等の独立電源から電力が蓄電装置103に供給される。蓄電装置103に供給された電力が蓄電される。蓄電装置103を使用して、住宅101で使用する電力が給電される。住宅101に限らずビルに関しても同様の蓄電システムを使用できる。
【0166】
住宅101には、発電装置104、電力消費装置105、蓄電装置103、各装置を制御する制御装置110、スマートメータ107、各種情報を取得するセンサ111が設けられている。各装置は、電力網109および情報網112によって接続されている。発電装置104として、太陽電池、燃料電池、風車等が利用され、発電した電力が電力消費装置105および/または蓄電装置103に供給される。電力消費装置105は、冷蔵庫105a、空調装置105b、テレビジョン受信機105c、風呂105d等である。さらに、電力消費装置105には、電動車両106が含まれる。電動車両106は、電気自動車106a、ハイブリッドカー106b、電気バイク106cである。電動車両106は、電動アシスト自転車等でもよい。
【0167】
蓄電装置103は、2次電池又はキャパシタから構成されている。例えば、リチウムイオン電池によって構成されている。リチウムイオン電池は、定置型であっても、電動車両106で使用されるものでも良い。この蓄電装置103に対して、上述した本開示の電池パックが適用可能とされる。スマートメータ107は、商用電力の使用量を測定し、測定された使用量を、電力会社に送信する機能を備えている。電力網109は、直流給電、交流給電、非接触給電の何れか一つまたは複数を組み合わせても良い。
【0168】
各種のセンサ111は、例えば人感センサ、照度センサ、物体検知センサ、消費電力センサ、振動センサ、接触センサ、温度センサ、赤外線センサ等である。各種センサ111により取得された情報は、制御装置110に送信される。センサ111からの情報によって、気象の状態、人の状態等が把握されて電力消費装置105を自動的に制御してエネルギー消費を最小とすることができる。さらに、制御装置110は、住宅101に関する情報を、インターネットを介して外部の電力会社等に送信することができる。
【0169】
パワーハブ108によって、電力線の分岐、直流交流変換等の処理がなされる。制御装置110と接続される情報網112の通信方式としては、UART(Universal Asynchronous Receiver-Transmitter: 非同期シリアル通信用送受信回路)等の通信インターフェースを使う方法、Bluetooth、ZigBee、Wi−Fi等の無線通信規格によるセンサネットワークを利用する方法がある。Bluetooth方式は、マルチメディア通信に適用され、一対多接続の通信を行うことができる。ZigBeeは、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers) 802.15.4の物理層を使用するものである。IEEE802.15.4は、PAN(Personal Area Network) またはW(Wireless)PANと呼ばれる短距離無線ネットワーク規格の名称である。
【0170】
制御装置110は、外部のサーバ113と接続されている。このサーバ113は、住宅101、電力会社、サービスプロバイダーの何れかによって管理されていても良い。サーバ113が送受信する情報は、たとえば、消費電力情報、生活パターン情報、電力料金、天気情報、天災情報、電力取引に関する情報である。これらの情報は、家庭内の電力消費装置(たとえばテレビジョン受信機)から送受信しても良いが、家庭外の装置(たとえば、携帯電話機等)から送受信しても良い。これらの情報は、表示機能を持つ機器、たとえば、テレビジョン受信機、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistants) 等に、表示されても良い。
【0171】
各部を制御する制御装置110は、CPU(Central Processing Unit )、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等で構成され、この例では、蓄電装置103に格納されている。制御装置110は、蓄電装置103、家庭内発電装置104、電力消費装置105、各種センサ111、サーバ113と情報網112により接続され、例えば、商用電力の使用量と、発電量とを調整する機能を有している。なお、その他にも、電力市場で電力取引を行う機能等を備えていても良い。
【0172】
以上のように、電力が火力102a、原子力102b、水力102c等の集中型電力系統102のみならず、家庭内発電装置104(太陽光発電、風力発電)の発電電力を蓄電装置103に蓄えることができる。したがって、家庭内発電装置104の発電電力が変動しても、外部に送出する電力量を一定にしたり、または、必要なだけ放電するといった制御を行うことができる。例えば、太陽光発電で得られた電力を蓄電装置103に蓄えると共に、夜間は料金が安い深夜電力を蓄電装置103に蓄え、昼間の料金が高い時間帯に蓄電装置103によって蓄電した電力を放電して利用するといった使い方もできる。
【0173】
なお、この例では、制御装置110が蓄電装置103内に格納される例を説明したが、スマートメータ107内に格納されても良いし、単独で構成されていても良い。さらに、蓄電システム100は、集合住宅における複数の家庭を対象として用いられてもよいし、複数の戸建て住宅を対象として用いられてもよい。
【0174】
「応用例としての車両における蓄電システム」
本開示を車両用の蓄電システムに適用した例について、図18を参照して説明する。図18に、本開示が適用されるシリーズハイブリッドシステムを採用するハイブリッド車両の構成の一例を概略的に示す。シリーズハイブリッドシステムはエンジンで動かす発電機で発電された電力、あるいはそれをバッテリーに一旦貯めておいた電力を用いて、電力駆動力変換装置で走行する車である。
【0175】
このハイブリッド車両200には、エンジン201、発電機202、電力駆動力変換装置203、駆動輪204a、駆動輪204b、車輪205a、車輪205b、バッテリー208、車両制御装置209、各種センサ210、充電口211が搭載されている。バッテリー208に対して、上述した本開示の電池パック1が適用される。
【0176】
ハイブリッド車両200は、電力駆動力変換装置203を動力源として走行する。電力駆動力変換装置203の一例は、モータである。バッテリー208の電力によって電力駆動力変換装置203が作動し、この電力駆動力変換装置203の回転力が駆動輪204a、204bに伝達される。なお、必要な個所に直流−交流(DC−AC)あるいは逆変換(AC−DC変換)を用いることによって、電力駆動力変換装置203が交流モータでも直流モータでも適用可能である。各種センサ210は、車両制御装置209を介してエンジン回転数を制御したり、図示しないスロットルバルブの開度(スロットル開度)を制御したりする。各種センサ210には、速度センサ、加速度センサ、エンジン回転数センサなどが含まれる。
【0177】
エンジン201の回転力は発電機202に伝えられ、その回転力によって発電機202により生成された電力をバッテリー208に蓄積することが可能である。
【0178】
図示しない制動機構によりハイブリッド車両が減速すると、その減速時の抵抗力が電力駆動力変換装置203に回転力として加わり、この回転力によって電力駆動力変換装置203により生成された回生電力がバッテリー208に蓄積される。
【0179】
バッテリー208は、ハイブリッド車両の外部の電源に接続されることで、その外部電源から充電口211を入力口として電力供給を受け、受けた電力を蓄積することも可能である。
【0180】
図示しないが、2次電池に関する情報に基いて車両制御に関する情報処理を行なう情報処理装置を備えていても良い。このような情報処理装置としては、例えば、電池の残量に関する情報に基づき、電池残量表示を行う情報処理装置などがある。
【0181】
なお、以上は、エンジンで動かす発電機で発電された電力、或いはそれをバッテリーに一旦貯めておいた電力を用いて、モータで走行するシリーズハイブリッド車を例として説明した。しかしながら、エンジンとモータの出力がいずれも駆動源とし、エンジンのみで走行、モータのみで走行、エンジンとモータ走行という3つの方式を適宜切り替えて使用するパラレルハイブリッド車に対しても本開示は有効に適用可能である。さらに、エンジンを用いず駆動モータのみによる駆動で走行する所謂、電動車両に対しても本開示は有効に適用できる。
【0182】
「変形例」
以上、本開示の複数の実施形態について説明したが、本開示は、上述した実施形態に限られることなく、種々の変形が可能である。例えば、リチウムイオン2次電池以外の2次電池に対しても本開示を適用できる。
【0183】
なお、各実施形態および変形例における構成等は、技術的矛盾が生じない範囲で適宜組み合わせることができる。
【0184】
本開示は、例えば、以下の構成をとることもできる。
(1)
1または複数の電池と、
前記電池の外表面の少なくとも一部を被覆する反応硬化性樹脂からなる成型部とを備え、
前記成型部は、前記反応硬化性樹脂の厚みが大きい第1の部位と、前記反応硬化性樹脂の厚みが前記第1の部位に比して小さい第2の部位とが一体に形成され、且つ以下の条件1および条件2の少なくとも一つを満たす電池パック。
条件1:JIS K 7127に準じて測定される前記第2の部位の最大降伏応力が前記第1の部位の最大降伏応力に比べて、3%以上100%以下大きいこと
条件2:JIS K 7110に準じたアイゾット衝撃試験で測定される前記第1の部位の衝撃強さが、前記第2の部位の衝撃強さに比べて、3%以上100%以下大きいこと
(2)
前記1または複数の電池は、フィルム包装体により電池素子を包装してなり、前記第2の部位が前記電池を被覆する前記成型部の内に含まれる(1)に記載の電池パック。
(3)
前記電池の保護回路を有し、
前記第1の部位が前記保護回路を被覆する前記成型部の内に含まれる(1)および(2)の何れかに記載の電池パック。
(4)
前記反応硬化性樹脂が、シリコン、エポキシ、アクリル及びウレタンからなる群より選ばれる少なくとも一つであり、
成型後の前記反応硬化性樹脂のガラス転移温度が60℃以上140℃以下である(1)乃至(3)の何れかに記載の電池パック。
(5)
前記反応硬化性樹脂が2種以上の反応硬化性触媒を含有し、
前記反応硬化性触媒の反応活性が60℃で15%以上異なる(1)乃至(4)の何れかに記載の電池パック。
(6)
前記反応硬化性樹脂がウレタンであり、
少なくとも一つの反応硬化性触媒が、上述の化学式で示される主剤プレポリマーである(1)乃至(5)の何れかに記載の電池パック。
(7)
1または複数の電池の外表面の少なくとも一部を反応硬化性樹脂からなる成型部によって被覆する際に、反応硬化性樹脂の反応熱を利用して部位によって異なる物性を与えるようにし、
前記反応硬化性樹脂の厚みが大きい第1の部位の樹脂厚t1と、前記反応硬化性樹脂の厚みが小さい第2の部位の樹脂厚t2との比(t1/t2)が13.5以上50以下である電池パックの製造方法。
(8)
1または複数の電池の外表面の少なくとも一部を反応硬化性樹脂からなる成型部によって被覆する際に、
前記反応硬化性樹脂の厚みが大きい第1の部位を成形する金型の外表面の一部又は全面に、高温ブロックを当接し、
前記反応硬化性樹脂の厚みが前記第1の部位に比して小さい第2の部位を成形する金型の外表面の一部又は全面に、低温ブロックを当接し、
成形時の前記反応硬化性樹脂の温度を異ならせる電池パックの製造方法。
(9)
金型の一部に熱伝導が低い部材を用いる請求項8に記載の電池パックの製造方法。
(10)
(1)乃至(6)の何れかに記載の電池パックが、再生可能なエネルギーから発電を行う発電装置によって充電される蓄電システム。
(11)
(1)〜(6)の何れかに記載の電池パックを有し、前記電池パックに接続される電子機器に電力を供給する蓄電システム。
(12)
(1)〜(6)の何れかに記載の電池パックから電力の供給を受ける電子機器。
(13)
(1)〜(6)の何れかに記載の電池パックから電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と、前記電池パックに関する情報に基づいて、車両制御に関する情報処理を行う制御装置とを有する電動車両。
(14)
他の機器とネットワークを介して信号を送受信する電力情報送受信部を有し、
前記電力情報送受信部が受信した情報に基づき、(1)〜(6)の何れかに記載の電池パックの充放電制御を行う電力システム。
(15)
(1)〜(6)の何れかに記載の電池パックから電力の供給を受け、または、発電装置または電力網から前記電池パックに電力を供給する電力システム。
【符号の説明】
【0185】
1・・・電池パック
10・・・成型部
11,11a・・・外装部材
12・・・電池
13・・・回路基板
14a、14b、14c・・・開口
30・・・電池部品
41・・・上型
42・・・下型
44,45・・・断熱材
46a〜46c・・・ヒーターブロック
47a〜47c・・・コールドブロック
51a・・・第1の部位
51b・・・第2の部位
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1または複数の電池と、
前記電池の外表面の少なくとも一部を被覆する反応硬化性樹脂からなる成型部とを備え、
前記成型部は、前記反応硬化性樹脂の厚みが大きい第1の部位と、前記反応硬化性樹脂の厚みが前記第1の部位に比して小さい第2の部位とが一体に形成され、且つ以下の条件1および条件2の少なくとも一つを満たす電池パック。
条件1:JIS K 7127に準じて測定される前記第2の部位の最大降伏応力が前記第1の部位の最大降伏応力に比べて、3%以上100%以下大きいこと
条件2:JIS K 7110に準じたアイゾット衝撃試験で測定される前記第1の部位の衝撃強さが、前記第2の部位の衝撃強さに比べて、3%以上100%以下大きいこと
【請求項2】
前記1または複数の電池は、フィルム包装体により電池素子を包装してなり、前記第2の部位が前記電池を被覆する前記成型部の内に含まれる請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記電池の保護回路を有し、
前記第1の部位が前記保護回路を被覆する前記成型部の内に含まれる請求項1に記載の電池パック。
【請求項4】
前記反応硬化性樹脂が、シリコン、エポキシ、アクリル及びウレタンからなる群より選ばれる少なくとも一つであり、
成型後の前記反応硬化性樹脂のガラス転移温度が60℃以上140℃以下である請求項1に記載の電池パック。
【請求項5】
前記反応硬化性樹脂が2種以上の触媒を含有し、
前記触媒の反応活性が60℃で15%以上異なる請求項1に記載の電池パック。
【請求項6】
前記反応硬化性樹脂がウレタンであり、
2種以上の触媒を用いる場合、少なくとも一つの触媒が、以下の化学式で示される主剤プレポリマーである請求項1に記載の電池パック。
【化1】
【請求項7】
1または複数の電池の外表面の少なくとも一部を反応硬化性樹脂からなる成型部によって被覆する際に、反応硬化性樹脂の反応熱を利用して部位によって異なる物性を与えるようになし、
前記反応硬化性樹脂の厚みが大きい第1の部位の樹脂厚t1と、前記反応硬化性樹脂の厚みが小さい第2の部位の樹脂厚t2との比(t1/t2)が13.5以上50以下である電池パックの製造方法。
【請求項8】
1または複数の電池の外表面の少なくとも一部を反応硬化性樹脂からなる成型部によって被覆する際に、
前記反応硬化性樹脂の厚みが大きい第1の部位を成形する金型の外表面の一部又は全面に、高温ブロックを当接し、
前記反応硬化性樹脂の厚みが前記第1の部位に比して小さい第2の部位を成形する金型の外表面の一部又は全面に、低温ブロックを当接し、
成形時の前記反応硬化性樹脂の温度を異ならせる電池パックの製造方法。
【請求項9】
金型の一部に熱伝導が低い部材を用いる請求項8に記載の電池パックの製造方法。
【請求項10】
請求項1〜6の何れか1項に記載の電池パックが、再生可能なエネルギーから発電を行う発電装置によって充電される蓄電システム。
【請求項11】
請求項1〜6の何れか1項に記載の電池パックを有し、前記電池パックに接続される電子機器に電力を供給する蓄電システム。
【請求項12】
請求項1〜6の何れか1項に記載の電池パックから電力の供給を受ける電子機器。
【請求項13】
請求項1〜6の何れか1項に記載の電池パックから電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と、前記電池パックに関する情報に基づいて、車両制御に関する情報処理を行う制御装置とを有する電動車両。
【請求項14】
他の機器とネットワークを介して信号を送受信する電力情報送受信部を有し、
前記電力情報送受信部が受信した情報に基づき、請求項1〜6の何れか1項に記載の電池パックの充放電制御を行う電力システム。
【請求項15】
請求項1〜6の何れか1項に記載の電池パックから電力の供給を受け、または、発電装置または電力網から前記電池パックに電力を供給する電力システム。
【請求項1】
1または複数の電池と、
前記電池の外表面の少なくとも一部を被覆する反応硬化性樹脂からなる成型部とを備え、
前記成型部は、前記反応硬化性樹脂の厚みが大きい第1の部位と、前記反応硬化性樹脂の厚みが前記第1の部位に比して小さい第2の部位とが一体に形成され、且つ以下の条件1および条件2の少なくとも一つを満たす電池パック。
条件1:JIS K 7127に準じて測定される前記第2の部位の最大降伏応力が前記第1の部位の最大降伏応力に比べて、3%以上100%以下大きいこと
条件2:JIS K 7110に準じたアイゾット衝撃試験で測定される前記第1の部位の衝撃強さが、前記第2の部位の衝撃強さに比べて、3%以上100%以下大きいこと
【請求項2】
前記1または複数の電池は、フィルム包装体により電池素子を包装してなり、前記第2の部位が前記電池を被覆する前記成型部の内に含まれる請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記電池の保護回路を有し、
前記第1の部位が前記保護回路を被覆する前記成型部の内に含まれる請求項1に記載の電池パック。
【請求項4】
前記反応硬化性樹脂が、シリコン、エポキシ、アクリル及びウレタンからなる群より選ばれる少なくとも一つであり、
成型後の前記反応硬化性樹脂のガラス転移温度が60℃以上140℃以下である請求項1に記載の電池パック。
【請求項5】
前記反応硬化性樹脂が2種以上の触媒を含有し、
前記触媒の反応活性が60℃で15%以上異なる請求項1に記載の電池パック。
【請求項6】
前記反応硬化性樹脂がウレタンであり、
2種以上の触媒を用いる場合、少なくとも一つの触媒が、以下の化学式で示される主剤プレポリマーである請求項1に記載の電池パック。
【化1】
【請求項7】
1または複数の電池の外表面の少なくとも一部を反応硬化性樹脂からなる成型部によって被覆する際に、反応硬化性樹脂の反応熱を利用して部位によって異なる物性を与えるようになし、
前記反応硬化性樹脂の厚みが大きい第1の部位の樹脂厚t1と、前記反応硬化性樹脂の厚みが小さい第2の部位の樹脂厚t2との比(t1/t2)が13.5以上50以下である電池パックの製造方法。
【請求項8】
1または複数の電池の外表面の少なくとも一部を反応硬化性樹脂からなる成型部によって被覆する際に、
前記反応硬化性樹脂の厚みが大きい第1の部位を成形する金型の外表面の一部又は全面に、高温ブロックを当接し、
前記反応硬化性樹脂の厚みが前記第1の部位に比して小さい第2の部位を成形する金型の外表面の一部又は全面に、低温ブロックを当接し、
成形時の前記反応硬化性樹脂の温度を異ならせる電池パックの製造方法。
【請求項9】
金型の一部に熱伝導が低い部材を用いる請求項8に記載の電池パックの製造方法。
【請求項10】
請求項1〜6の何れか1項に記載の電池パックが、再生可能なエネルギーから発電を行う発電装置によって充電される蓄電システム。
【請求項11】
請求項1〜6の何れか1項に記載の電池パックを有し、前記電池パックに接続される電子機器に電力を供給する蓄電システム。
【請求項12】
請求項1〜6の何れか1項に記載の電池パックから電力の供給を受ける電子機器。
【請求項13】
請求項1〜6の何れか1項に記載の電池パックから電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と、前記電池パックに関する情報に基づいて、車両制御に関する情報処理を行う制御装置とを有する電動車両。
【請求項14】
他の機器とネットワークを介して信号を送受信する電力情報送受信部を有し、
前記電力情報送受信部が受信した情報に基づき、請求項1〜6の何れか1項に記載の電池パックの充放電制御を行う電力システム。
【請求項15】
請求項1〜6の何れか1項に記載の電池パックから電力の供給を受け、または、発電装置または電力網から前記電池パックに電力を供給する電力システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
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【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−252932(P2012−252932A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125942(P2011−125942)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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