説明

電池パックの内部抵抗推定装置及び方法

【課題】本発明は、電池パックの内部抵抗推定装置及び方法に関する。
【解決手段】本発明による電池パックの内部抵抗推定装置は、電池パックの電圧値を測定する電圧センシング部と、前記電池パックの電流値を測定する電流センシング部と、前記電池パックの温度値を測定する温度センシング部と、前記電圧センシング部、前記電流センシング部、前記温度センシング部から伝達される値を用いて前記電池パックの内部抵抗を計算するMCU部と、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池パックの内部抵抗の計算に関するものであって、より詳細には、電池パックに流れる電流の変化を観察して、設定した電流変化の条件を満たす電流値とこれによる電圧値を用いて電池パックの内部抵抗を計算する電池パックの内部抵抗推定装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリンや重油を主燃料として用いる内燃エンジンを利用する自動車は、大気汚染などの公害発生に深刻な影響を与えている。
【0003】
従って、公害発生を減らすために、最近、電気自動車またはハイブリッド自動車の開発に多くの努力が注がれている。
【0004】
電気自動車は、電池から出力される電気エネルギーのみを用いて動作する自動車である。このような電気自動車は、充放電が可能な多数の二次電池が一つのパックに形成された電池を主動力源として用いるため、排気ガスが全くなく、騷音が非常に少ないという長所を有する。
【0005】
一方、ハイブリッド自動車とは、内燃エンジンを用いる自動車と電気自動車の中間段階の自動車であり、二つ以上の動力源、例えば内燃エンジン及び電池エンジンを用いる自動車である。
【0006】
このように電気エネルギーを用いる自動車は、電池の性能が自動車の性能に直接的な影響を与えるため、各電池セルが優れた性能を有していなければならないだけでなく、各電池セルの電圧、全体電池の電圧及び電流などを測定して各電池セルの充放電及び寿命を効率的に管理することができる電池管理システムが強く要求されている状況である。
【0007】
韓国特許公開2011−0006266には、車両用高電圧電池のセル内部抵抗測定方法が開示されている。開示された車両用高電圧電池のセル内部抵抗測定方法は、電池の電流及び電圧を測定する段階と、測定された電流及び電圧値の入力を受けて最小二乗法により電池抵抗を測定する段階と、を含む。
【0008】
本発明は上述したように、電池パックに用いられる電流の変化を観察して、設定した電流変化の条件を満たす電流値とこれによる電圧値、温度値を用いて電池パックの内部抵抗を推定する装置及び方法に関するものである。
【0009】
韓国特許公開2011−0006266に明示された条件は、本発明とは条件の基準及び性格が異なっており、本発明で明示した段階の次の段階での条件であるため、本発明とは類似していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】韓国特許公開2011−0006266
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記のような問題点を解決するために導き出されたものであって、電池パックに用いられる電流の変化を観察して、設定した電流変化の条件を満たす電流値とこれによる電圧値を用いて電池パックの内部抵抗を計算する電池パックの内部抵抗推定装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施例による電池パックの内部抵抗推定装置は、電池パックの電圧値を測定する電圧センシング部と、前記電池パックの電流値を測定する電流センシング部と、前記電池パックの温度値を測定する温度センシング部と、前記電圧センシング部、前記電流センシング部、前記温度センシング部から伝達される値を用いて前記電池パックの内部抵抗を計算するMCU部と、を含むことを特徴とする。
【0013】
前記MCU部は、前記電流センシング部で予め測定された電流値を用いて条件を設定するために必要な条件変数を初期化する条件初期化部と、前記電圧、電流、温度センシング部から受信した電流、電圧、温度値を仮に設定した変数に格納する電流、電圧、温度測定部と、前記測定された電流値が、設定された電流値の条件を満たすかを判断する電流条件判断部と、前記電流値の条件を満たす電流値を抽出して格納し、前記電流値の測定時に前記電流値とともに測定された電池パックの電圧及び温度値を格納する電流値、電圧値、温度値格納部と、を含んでなり、前記MCU部は、前記電流値の条件を満たす電流値の抽出及び格納過程を二回以上繰り返して得られた、格納された電流値、電圧値及び温度値を用いて電池パックの内部抵抗を推定することを特徴とする。
【0014】
前記電流条件判断部は、電流センシング部でセンシングされた初期電流値の条件を判断して、電流値を抽出するのに適する条件であるかを判断する初期条件判断部と、前記初期条件判断部で前記初期電流値の条件が電流値を抽出するのに適する条件であと判断されると、初期電流値を用いて、抽出しようとする電流値区間を指定する条件範囲設定部と、前記電流センシング部で前記初期電流値以後に測定された電流値が、前記条件範囲設定部により設定された前記電流値区間内に含まれると、時間をカウントするサイクルカウント部と、前記サイクルカウント部でカウントされた前記時間が、予め設定された一定の時間になるまで前記サイクルカウント作業を繰り返し、この繰り返しの結果、前記カウントされた時間が前記一定の時間になる場合、その時の電流値を抽出する電流値抽出部と、前記電流値抽出部で最初に一つの電流値を抽出した以後、及び前記電流値が低電流区間に入る前に電流値を抽出せず、前記電流値が前記低電流区間に入ると前記電流値をリセットさせる電流値リセット部と、を含むことを特徴とする。
【0015】
前記条件初期化部は、初期電流値を格納する変数値及び条件充足回数をカウントする変数値を0に初期化する変数初期化部を含むことを特徴とする。
【0016】
前記初期条件判断部は、初期電流値が予め設定された低電流区間を外れるかを判断し、初期電流値の絶対値と以前(previous)電流値の絶対値とを比較して、初期電流値の条件が電流値を抽出するのに適する条件であるかを判断する初期条件判断計算部を含むことを特徴とする。
【0017】
前記条件範囲設定部は、前記初期電流値に予め設定された一定比率を乗じて、前記電流値区間の上下限幅を計算する上下限幅計算部と、前記上下限幅計算部で計算された前記上下限幅を用いて、前記電流値区間の上限と下限を決定する電流範囲決定部と、を含むことを特徴とする。
【0018】
前記電流値リセット部は、前記電流値リセット部以前の前記作業を繰り返して実行して、前記電流値抽出部で最初に抽出された前記電流値以外の前記他の電流値は追加で抽出しない追加電流値抽出制限部と、前記追加電流値抽出部で抽出された前記電流値が前記低電流区間内の値になるまで前記追加電流値抽出制限作業を繰り返して実行し、前記繰り返しの結果前記電流値が前記低電流区間内の値になる場合、プロセスが前記条件初期化部から再開されるようにするプロセス初期化部と、を含むことを特徴とする。
【0019】
本発明の一実施例による電池パックの内部抵抗推定方法は、一定条件を満たす電流値とこれによる電圧値、温度値を抽出する電流、電圧、温度値抽出段階と、前記電流、電圧、温度値抽出段階を二セット以上繰り返す繰り返し段階と、前記繰り返し段階により求められた値を用いて、前記電池パックの内部抵抗を計算する内部抵抗計算段階と、を含むことを特徴とする。
【0020】
前記電流、電圧、温度値抽出段階は、予め設定された一定の周期毎に前記電池パックの電流値を測定する電流値測定段階と、前記電流値測定段階で最初に測定された初期電流値を用いて、抽出しようとする電流値区間を指定する条件範囲設定段階と、前記電流値測定段階で前記初期電流値以後に測定された電流値が前記条件範囲設定段階により設定された前記電流値区間内に含まれている場合、時間をカウントするサイクルカウント段階と、前記サイクルカウント段階でカウントされた前記時間が予め設定された一定の時間になるまで前記サイクルカウント段階を繰り返し、前記繰り返しの結果、前記カウントされた時間が前記一定の時間になる場合、その時の電流値を抽出する電流値抽出段階と、前記電流値抽出段階で最初に前記一つの電流値を抽出した以後、及び前記電流値が前記低電流区間に入る前に電流値が抽出されないようにし、前記電流値が前記低電流区間に入ると前記電流値をリセットさせて、プロセスが前記電流値測定段階から再開されるようにする電流値リセット段階と、前記電流値抽出段階を二回以上繰り返して、抽出された電流値と電圧値を用いて前記電池パックの内部抵抗を計算する内部抵抗計算段階と、を含むことを特徴とする。
【0021】
前記条件範囲設定段階は、前記初期電流値に予め設定された一定比率を乗じて、前記電流値区間の上下限幅を計算する上下限幅計算段階と、前記上下限幅計算段階で計算された前記上下限幅を用いて、前記電流値区間の上限と下限を決定する電流範囲決定段階と、を含むことを特徴とする。
【0022】
前記電流値リセット段階は、前記電流値リセット段階前の前記段階を繰り返して実行して、前記電流値抽出段階で最初に抽出された前記電流値以外の前記他の電流値を抽出することを制限する追加電流値抽出制限段階と、前記追加電流値抽出制限段階で測定された前記電流値が前記低電流区間内の値になるまで前記追加電流値測定段階を繰り返して実行し、前記繰り返しの結果、前記電流値が前記低電流区間内の値になる場合、プロセスが前記電流値測定段階から再開されるようにするプロセス初期化段階と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一実施例による電池パックの内部抵抗推定装置及び方法によると、電池パックに流れる電流の変化を観察して、設定した電流変化の条件を満たす電流値とこれによる電圧値、温度値を用いることにより、電池パックの内部抵抗を計算することができ、計算された電池パックの内部抵抗値をハイブリッド電気車、または純電気車の車両制御機に送信することができる。また、計算された電池パックの内部抵抗値を電池パックの入れ替え時期の予測及びA/S(After Service)の提供に用いることもでき、電池状態の制御及び診断にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施例による電池パックの内部抵抗推定装置の構成を概略的に図示した図面である。
【図2】本発明の一実施例による電池パックの内部抵抗推定方法を概略的に図示したフローチャートである。
【図3】本発明の一実施例による電池パックの内部抵抗推定方法を詳細に図示したフローチャートである。
【図4】本発明の一実施例による電池パックの内部抵抗推定方法において、電流値抽出段階の結果の例を示した図面である。
【図5】本発明の一実施例による電池パックの内部抵抗計算方法の一例を示した図面である。
【図6】本発明の一実施例による温度毎の電池パックの内部抵抗計算結果の例を示した図面である。
【図7】本発明の一実施例による電池パックの内部抵抗及びR2計算結果の例を示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。
【0026】
図1は本発明の一実施例による電池パックの内部抵抗推定装置を概略的に図示したシステム構成図である。図1に図示されたシステムは大きく、電池パックS110と、この電池パックの電圧、電流及び温度をセンシングするセンシング部からデータを受信して内部抵抗を推定するMCU(マイクロコントローラユニット:Micro Controller Unit)部を含む内部抵抗推定装置S120などで構成される。
【0027】
本発明の一実施例による電池パックの内部抵抗推定方法は、電池パックの内部抵抗を計算するための前処理作業として、毎秒または一定の時間毎に電流値を抽出するのではなく、一定条件を満たす電流値を抽出して、電池パックの内部抵抗の計算に用いる。
【0028】
図2は本発明の一実施例による電池パックの内部抵抗推定方法を概略的に図示したフローチャートである。まず、電池パックの電流をセンシングする電流センシング部は、予め測定された電流値を用いて内部抵抗を計算するために必要な条件変数を初期化(S210)し、電池パックの電流、電圧、温度値を測定(S220)して、前記測定された電流値が設定された電流値条件を満たすかを判断(S230)した後、前記電流条件を満たす電流値と、前記電流値の測定時にともに測定された電池パックの電圧及び温度値を格納(S240)する。前記電流条件を満たす電流値の抽出及び格納過程が二回以上繰り返されると(S250、N>=2)、格納された二セット以上の電流値と電圧値、温度値を用いて電池パックの内部抵抗を推定する。
【0029】
図3は本発明の一実施例による電池パックの内部抵抗推定方法を詳細に図示したフローチャートである。より詳細に説明すると次のとおりである。
【0030】
まず、予め条件を設定するために必要な初期電流値を格納する変数値I[0]、I[1]、I[2]、I_ini(n)と電流値リセットを判断するために用いられるReset(n)、電流条件を満たすとカウントされる変数値K(n)、上下限幅を決定するためのDev(n)を0に初期化する(S310)。
【0031】
段階S310を実行した後、設定された測定周期毎に電池パックの電流値を測定する(S320)。
【0032】
段階S320で測定された初期電流値が低電流区間である−α_3と+α_3の間に含まれるかを判断して、低電流区間を外れる場合には、格納されている前段階の電流値であるI[0]とI[1]に一定比率α_1を乗じた値と絶対値で比較して、条件を満たすかを判断する(S330)。
【0033】
段階S330でReset(n)は初期値が0であるため、初期には考慮しなくてもよい。
【0034】
段階S330を満たすと、段階S320で測定された電流値Current(n)を格納した前段階の電流値であるI[1]を初期電流値I_ini(n)とし、最初に測定された初期電流値を用いて、抽出しようとする電流値区間を指定する(S340)。
【0035】
段階S340では、格納された前段階の電流値であるI[1]に予め設定された一定比率を乗じて電流値区間の上下限幅を計算し、計算された上下限幅を用いて電流値区間の上限と下限を決定することができる。格納された前段階の電流値I[1]に一定比率α_2を乗じて、電流値区間の上下限幅Dev(n)を計算する。例えば、格納された前段階電流値I[1]が10Aで、一定比率α_2が0.3である場合、電流値区間の上下限幅Dev(n)は3Aである。この場合、電流値区間は7Aと13Aの間であることができる。
【0036】
段階S320で初期電流値以後に測定された電流値が、段階S340で設定された電流値区間内に含まれている場合、時間をカウントする(S350)。即ち、格納された前段階の電流値I[1]以後に測定された電流値I[2]が、段階S340で設定された条件範囲I_ini(n)−Dev(n)とI_ini(n)+Dev(n)との間に含まれるかを判断する。判断結果、上記の条件を満たすと初期時間K(n)=0に1を加え、加えた結果K(n+1)が一定時間α_4になるまで段階S350を繰り返す。
【0037】
上述したように、段階S350を繰り返した結果、カウントされた時間が一定時間になると、その時の電流値を抽出する(S360)。段階S360では、一定時間K(n+1)の電流値と電圧値、セルの平均温度を抽出する。
【0038】
段階S360で最初に一つの電流値を抽出した以後に測定された電流値が電流値リセット段階を満たすと、段階S330に戻る(S370)。
【0039】
段階S370では、段階S360の前段階(S330〜S350)を繰り返して実行して、段階S360で最初に抽出された電流値以外の他の電流値は抽出せず、電流値が低電流区間内の値になると段階S330を再開することができる。段階S350で言及した条件を満たす電流値が多数存在することがありえる。しかし、最初に抽出された一つの電流値を除いた残りの電流値は信頼性がない。従って、段階S360に段階S370を追加することの目的は、信頼できない残りの電流値は抽出せず、最初に抽出された電流値のみを扱うことである。この場合、電流値が低電流区間内の値になると電流値の初期条件の判断(段階S330)を実行することができる。段階S370では、段階S360で最初に電流値が抽出されるとReset(n)値が1と設定される。その後、測定された電流値Current(n)が低電流区間、即ち、−α_3とα_3との間に含まれると、Reset(n)値は0となり、プロセスは段階S310に戻る。段階S370により、信頼性のない電流値Currnet(n)をリセットさせると、プロセス初期化が行われ、段階S320の初期時間K(n)=0、初期電流値I_ini(n)=0、Dev(n)=0となる。
【0040】
図2の段階S260では、図3の段階S360を二回以上繰り返して抽出された電流値と電圧値を用いて電池パックの内部抵抗を計算する。例えば、段階S260では、ジェイパルス(J_Pulse)方法を用いて電池パックの内部抵抗を推定することができる。これについて簡略に説明すると、段階的な充放電電流による一定基準時間、例えば、10秒時の電圧値を用いて、電流値の変化量による電圧値の変化量で内部抵抗を推定することができる。
【0041】
また、抽出された電流値、電圧値の他に、セルの平均温度値を抽出して格納する理由は、予め実験によって求めた温度毎の内部抵抗値と計算された内部抵抗値とを比較するためである。
【0042】
図4は本発明の一実施例による電池パックの内部抵抗推定方法において、電流値抽出段階の結果の例を示した図面である。図4は、一定比率α_1とα_2が0.3、低電流区間の上限α_3が3A、カウント一定時間α_4が2秒である場合の結果である。
【0043】
図4に図示されたように、電池パックの内部抵抗は毎秒毎に測定される電流値から設定された条件を満たす電流値のみを抽出することにより計算される。この場合、電池パックの内部抵抗を計算するために必要な電流値の抽出周期は、時間でなく、抽出された電流値に基づく。
【0044】
図4のように、抽出された電流値と該当電圧値、温度値を用いて内部抵抗を計算することができる。
【0045】
[数学式1]

【0046】
図5は本発明の一実施例による電池パックの内部抵抗を計算する方法の一例を示す。ここで、内部抵抗を求める基本方式は数学式1で表される。
【0047】
例えば、設定した低電流区間以上のI1値とこれによるV1値を抽出した後、電流が流れない状態での電流値をI0、その時の電圧値をV0としたときに、IR値は数学式2のように計算することができる。
【0048】
[数学式2]

【0049】
しかし、IR値を一つのデータを用いて計算する場合は信頼性が劣るため、IR値は二つ以上のデータを抽出し用いて計算することができる。二つのデータを抽出した場合、IR値は数学式3で表されるように計算することができる。
【0050】
[数学式3]

【0051】
このような内部抵抗を求める基本概念を拡張させると、抽出された多数のデータを考慮した最適値を推測するとともに、信頼性も評価することができる最小二乗法(Method of Least Squares)を用いることができる。
【0052】
抽出された電流値と電圧値に基づいて求めることができる最適関数を数学式4とすると、推定された直線値であるVと実際測定値であるVi値との差が最小値になる。
【0053】
[数学式4]

【0054】
最小二乗法は、この偏差の二乗を最小化するための方法である。偏差二乗の総和をxとすると、これは数学式5で表されるように計算される。
【0055】
[数学式5]

【0056】
ここで、データに適した直線を探すためには、この誤差を最大限減らさなければならない。即ち、IR値とV値はxを最小化する値とならなければならない。
【0057】
IR値とV値を求めるためには、抽出されたデータの数をNとしたときに、IRとVに対してそれぞれ偏微分した値が0となればよい。
【0058】
[数学式6]

【0059】
[数学式7]

【0060】
これら数学式を満たすIRとVを計算することにより得られた最終結果は次のとおりである。
【0061】
[数学式8]

【0062】
[数学式9]

【0063】
計算されたIR値は、抽出された二セット以上のN個の電流値と電圧値に基づいて求められた最適値であるといえる。しかし、計算されたIR値の信頼性を判断するためには、他の方法が必要である。計算されたIR値の適合性はr2計算によって判断することができるが、r2計算は、二つのデータ間の相関関係を如何によく表現しているかを示す基準を数値的な意味で表現する。
【0064】
相関係数rは、0と1の間の値を有する。全てのデータが直線と正確に一致する場合、r=1となる。一致してはいないが、直線に近接する場合、rは1に近い値を有し、グラフ上の全てのデータ座標が均一に分布して直線に近接していないと、r=0となる。これは、二つのデータ集合の間に線形的な関係が全くないということを意味する。
【0065】
相関係数r値を求めるために、まず、全てのV値の平均を計算しなければならない。グラフ上でVの平均を示す直線Vmeanは、全てのV値の中間程度の高さを水平に通る。Vmeanを計算する理由は、平均直線が該当データを表現することができる直線のうち最悪のモデルであり、これを基準として他の直線を比較評価するためである。
【0066】
実際値と平均値との差を求めた後、全部加えると、平均の定義によって値が0となる。従って、これを解決するために、全ての値を二乗して正数にし、それを加える。
【0067】
[数学式10]

【0068】
この値は、上記で求めた最適関数が如何に適するかを比較する手段として用いられる。この値が小さいほど、全てのデータが平均に近接することを意味し、大きい場合にはデータが広く散布されていることを意味する。
【0069】
次に、各I値に対応するV値は、データに最適の直線方程式を用いて数学式11で表するように計算することができる。
【0070】
[数学式11]

【0071】
同様の方法で測定値と直線値の差の二乗の総和を計算する。これは数学式12のとおりである。
【0072】
[数学式12]

【0073】
数学式10と数学式12の単純な差が、その直線のデータを表現するに如何に適するかを検討する方法として用いられることができる。二つの式を引くと次のような式を求めることができる。
【0074】
[数学式13]

【0075】
数学式13を数学式10で徐した式が相関係数r2であり、この値を参照して、求めたIR値の信頼性を判断することができる。
【0076】
従来と同様の方法で電池パックの内部抵抗を計算するにも関らず、本発明が従来技術と差別化される点は、本発明では、電池パックの内部抵抗の計算に用いられるデータを抽出する方式も定義するということにある。即ち、本発明によって抽出された電流値とこれによる電圧値を用いて、最小二乗法などによって電池パックの内部抵抗を計算することができる。
【0077】
図6は本発明の一実施例による温度毎の電池パックの内部抵抗計算結果の例を示した図面である。図6には、図3で説明された方法を用いて抽出された電流値及び最小二乗法を用いて計算された温度毎の電池パックの内部抵抗値が図示されている。
【0078】
図7は本発明の一実施例による電池パックの内部抵抗及び最小二乗法を用いたR2計算結果の例を示した図面である。
【0079】
以上のように、限定された実施例と図面によって本発明を説明したが、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、本発明が属する分野で通常の知識を有する者であれば、このような記載から様々な修正及び変形が可能である。従って、本発明の思想は添付の特許請求範囲のみによって把握されるべきであり、その均等または等価的な変形は全て本発明の思想の範囲に属するといえる。
【符号の説明】
【0080】
S110 電池パック
S120 内部抵抗推定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池パックの電圧値を測定する電圧センシング部と、
前記電池パックの電流値を測定する電流センシング部と、
前記電池パックの温度値を測定する温度センシング部と、
前記電圧センシング部、前記電流センシング部、前記温度センシング部から伝達される値を用いて前記電池パックの内部抵抗を計算するMCU部と、
を含むことを特徴とする電池パックの内部抵抗推定装置。
【請求項2】
前記MCU部は、
前記電流センシング部で予め測定された電流値を用いて条件を設定するために必要な条件変数を初期化する条件初期化部と、
前記電圧、電流、温度センシング部のそれぞれから受信した電流、電圧、温度値を仮に設定した変数に格納する電流、電圧、温度測定部と、
前記測定された電流値が、設定された電流値の条件を満たすかを判断する電流条件判断部と、
前記電流値の条件を満たす電流値を抽出して格納し、前記電流値の測定時に前記電流値とともに測定された電池パックの電圧及び温度値を格納する電流値、電圧値、温度値格納部と、
を含んでなり、
前記MCU部は、前記電流値の条件を満たす電流値の抽出及び格納過程を二回以上繰り返して得られた、格納された電流値、電圧値及び温度値を用いて電池パックの内部抵抗を推定することを特徴とする請求項1に記載の電池パックの内部抵抗推定装置。
【請求項3】
前記電流条件判断部は、
前記電流センシング部でセンシングされた初期電流値の条件を判断して、前記初期電流値の条件が電流値を抽出するのに適する条件であるかを判断する初期条件判断部と、
前記初期条件判断部で前記初期電流値の条件が電流値を抽出するのに適する条件であると判断されると、初期電流値を用いて、抽出しようとする電流値区間を指定する条件範囲設定部と、
前記電流センシング部で前記初期電流値以後に測定された電流値が、前記条件範囲設定部により設定された前記電流値区間内に含まれると、時間をカウントするサイクルカウント部と、
前記サイクルカウント部でカウントされた前記時間が、予め設定された一定の時間になるまで前記サイクルカウント作業を繰り返し、この繰り返しの結果、前記カウントされた時間が前記一定の時間になる場合、その時の電流値を抽出する電流値抽出部と、
前記電流値抽出部で最初に一つの電流値を抽出した以後、及び前記電流値が低電流区間に入る前には電流値を抽出せず、前記電流値が前記低電流区間に入ると前記電流値をリセットさせる電流値リセット部と、
を含むことを特徴とする請求項2に記載の電池パックの内部抵抗推定装置。
【請求項4】
前記条件初期化部は、
初期電流値を格納する変数値及び条件充足回数をカウントする変数値を0に初期化する変数初期化部を含むことを特徴とする請求項2に記載の電池パックの内部抵抗推定装置。
【請求項5】
前記初期条件判断部は、
初期電流値が予め設定された低電流区間を外れるかを判断し、初期電流値の絶対値と以前の電流値の絶対値とを比較して、初期電流値の条件が電流値を抽出するのに適する条件であるかを判断する初期条件判断計算部を含むことを特徴とする請求項3に記載の電池パックの内部抵抗推定装置。
【請求項6】
前記条件範囲設定部は、
前記初期電流値に予め設定された一定比率を乗じて、前記電流値区間の上下限幅を計算する上下限幅計算部と、
前記上下限幅計算部で計算された前記上下限幅を用いて、前記電流値区間の上限と下限を決定する電流範囲決定部と、
を含むことを特徴とする請求項3に記載の電池パックの内部抵抗推定装置。
【請求項7】
前記電流値リセット部は、
前記電流値リセット部よりも前の前記作業を繰り返して実行して、前記電流値抽出部で最初に抽出された前記電流値以外の前記他の電流値は追加で抽出しない追加電流値抽出制限部と、
前記追加電流値抽出部で抽出された前記電流値が前記低電流区間内の値になるまで前記追加電流値抽出制限作業を繰り返して実行し、前記繰り返しの結果、前記電流値が前記低電流区間内の値になる場合、プロセスが前記条件初期化部から再開されるようにするプロセス初期化部と、
を含むことを特徴とする請求項3に記載の電池パックの内部抵抗推定装置。
【請求項8】
一定条件を満たす電流値とこの電流値に応じた電圧値及び温度値を抽出する電流、電圧、温度値抽出段階と、
前記電流、電圧、温度値抽出段階を二セット以上繰り返す繰り返し段階と、
前記繰り返し段階により求められた値を用いて、前記電池パックの内部抵抗を計算する内部抵抗計算段階と、
を含むことを特徴とする電池パックの内部抵抗推定方法。
【請求項9】
前記電流、電圧、温度値抽出段階は、
予め設定された一定の周期毎に前記電池パックの電流値を測定する電流値測定段階と、
前記電流値測定段階で最初に測定された初期電流値を用いて、抽出しようとする電流値区間を指定する条件範囲設定段階と、
前記電流値測定段階で前記初期電流値以後に測定された電流値が前記条件範囲設定段階により設定された前記電流値区間内に含まれている場合、時間をカウントするサイクルカウント段階と、
前記サイクルカウント段階でカウントされた前記時間が予め設定された一定の時間になるまで前記サイクルカウント段階を繰り返し、前記繰り返しの結果、前記カウントされた時間が前記一定の時間になる場合、その時の電流値を抽出する電流値抽出段階と、
前記電流値抽出段階で最初に前記一つの電流値を抽出した以後、及び前記電流値が前記低電流区間に入る前には電流値が抽出されないようにし、前記電流値が前記低電流区間に入ると前記電流値をリセットさせて、プロセスが前記電流値測定段階から再開されるようにする電流値リセット段階と、
前記電流値抽出段階を二回以上繰り返して、抽出された電流値と電圧値を用いて前記電池パックの内部抵抗を計算する内部抵抗計算段階と、
を含むことを特徴とする請求項8に記載の電池パックの内部抵抗推定方法。
【請求項10】
前記条件範囲設定段階は、
前記初期電流値に予め設定された一定比率を乗じて、前記電流値区間の上下限幅を計算する上下限幅計算段階と、
前記上下限幅計算段階で計算された前記上下限幅を用いて、前記電流値区間の上限と下限を決定する電流範囲決定段階と、
を含むことを特徴とする請求項9に記載の電池パックの内部抵抗推定方法。
【請求項11】
前記電流値リセット段階は、
前記電流値リセット段階前の前記段階を繰り返して実行して、前記電流値抽出段階で最初に抽出された前記電流値以外の前記他の電流値を抽出することを制限する追加電流値抽出制限段階と、
前記追加電流値抽出制限段階で測定された前記電流値が前記低電流区間内の値になるまで前記追加電流値測定段階を繰り返して実行し、前記繰り返しの結果、前記電流値が前記低電流区間内の値になる場合、プロセスが前記電流値測定段階から再開されるようにするプロセス初期化段階と、
を含むことを特徴とする請求項9に記載の電池パックの内部抵抗推定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−113847(P2013−113847A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−242797(P2012−242797)
【出願日】平成24年11月2日(2012.11.2)
【出願人】(308007044)エスケー イノベーション  カンパニー リミテッド (53)
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【Fターム(参考)】