説明

電池パックの取付構造

【課題】サイドメンバ間に電池を配設するハイブリッド車や電気自動車の電池パックの取付構造を提供する。
【解決手段】電池パックの取付構造複数では、上向き凸形状の曲げ加工がなされた第一ブラケット3と、該第一ブラケット3の曲げ加工に対応した位置に複数の上向き凹形状の曲げ加工がなされた第二ブラケット8とを有し、前記第一ブラケット3の凸形状の曲げ加工がなされた部分と前記第二ブラケット8の曲げ加工がなされた部分とを上下方向に接合することで複数の閉断面を形成し、該複数の閉断面の間に電池パックの取付用ボルト5の挿入穴が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車やハイブリッド車に使用される電池パックの取付構造、とりわけ剛性が高い構造であり、かつ路面干渉等による取付用ボルトの緩みを防止し得る電池パックの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド車に使用される電池パックは、通常サイドメンバやクロスメンバに取り付けられる。例えば、特許文献1ではサイドメンバに電池パックを取り付けるためにブラケットをクロスメンバの取付部に対して下向きコの字形状のブラケットの開口が開かないように閉断面を形成する平板を接合している。
【0003】
しかしながら、平板とブラケットで形成される閉断面(閉空間)では断面積が小さく、また取付用ボルトの頭が閉断面に位置するためブラケットに開口を設ける必要があるため、剛性が低く強度の点で問題点がある。また、下面が平板である場合、必然的に取付用ボルトの端部が平板より下に突出する構成となるため路面干渉により取付用ボルトが緩んだり、取付部が破損したりするおそれがある。さらに、取付用ボルトが下に突出するとアンダーカバーを平板に取り付けることができないため別途それ専用のブラケットを設ける必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4386131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の事情に鑑みて創作されたものであり、電気自動車やハイブリッド車の電池パックをサイドメンバ間に配設するためのブラケットを剛性の高い構造で形成することができるとともに路面干渉等による取付用ボルトの緩みを防止することができ、さらにはアンダーカバーを直接取り付けることができる電池パックの取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明では、サイドメンバ間に電池を配設するハイブリッド車や電気自動車の電池パックの取付構造を提供する。本電池パックの取付構造は、複数の上向き凸形状の曲げ加工がなされた第一ブラケットと、該第一ブラケットの曲げ加工に対応した位置に複数の上向き凹形状の曲げ加工がなされた第二ブラケットとを有し、前記第一ブラケットの凸形状の曲げ加工がなされた部分と前記第二ブラケットの曲げ加工がなされた部分とを上下方向に接合することで複数の閉断面を形成し、該複数の閉断面の間に電池パックの取付用ボルトの挿入穴が形成されている。
【0007】
本発明の電池パックの取付構造によれば、第一ブラケットは上向き凸形状(すなわち下向きに開口を有する凹形状)に曲げ加工された部分が複数存在し、第二ブラケットは上向き凹形状(すなわち下向き凸形状)に曲げ加工された部分が複数存在する。第一ブラケットの曲げ加工された部分と第二ブラケットの曲げ加工された部分とは、その開口が対向するように位置決めされて接合される。この接合により、第一ブラケットと第二ブラケットとの曲げ加工された部分で複数の閉断面を形成する。
【0008】
したがって、本電池パックの取付構造では、従来のように第一ブラケットの下面に平板が接合されるわけではなく上述のように上向き凹形状の第二ブラケットが接合されているため複数の大きな閉断面が形成されることとなり、取付構造全体としての剛性が高くなる。また、この各閉断面の間に形成された空間(すなわち下向き凹空間)に取付用ボルトの挿入穴を設けたため、該取付用ボルトの下端(ボルト頭)が突出しない構造を形成し、突出部分への石当たり、路面干渉等で取付用ボルトが緩んでいくことを防止することができる。さらに、取付用ボルトの下端が突出しないのでアンダーカバーを取り付ける場合に直接第二ブラケットにボルト締結することができ、別途アンダーカバー取付用のブラケットを準備する必要がなく部品点数を減らすこともできる。
【発明の効果】
【0009】
換言すれば本発明は、電気自動車やハイブリッド車の電池パックをサイドメンバ間に配設するためのブラケットを剛性の高い構造で形成することができる。また、本電池パックの取付構造では、石当たりや路面干渉等による取付用ボルトの緩みをプロテクト等を追加設定することなく防止でき、アンダーカバーを専用ブラケットを設けることなく直接取り付けることができるため部品点数が増えるのを抑制でき、その結果として重量増やコストアップを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】電池パック1の一例の斜視図を示している。
【図2】図1の電池パック1の底面図を示している。
【図3】従来の電池パックの取付構造を示す断面図である。
【図4】本発明の電池パックの取付構造の1つの実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
続いて、本発明の一実施形態に係る電池パックの取付構造について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本電池パックの取付構造の説明に先立って、電池パック及び従来の電池パックの取付構造について概略を説明する。
【0012】
≪電池パック及び従来の電池パックの取付構造の構成について≫
図1は電池パック1の一例の斜視図を示しており、図2は図1の電池パック1の底面図である。この電池パック1は、バッテリ及びその附属装置を内包した所謂バッテリユニットであり、その外殻(容器本体)は通常、樹脂製又は金属製である。この電池パック1は車両のサイドメンバ(図示しないが図1の一点鎖線A、Bで配設場所イメージを示している)の間に配設される。実際には電池パック1はその底面でサイドメンバ間に垂直に亘って設けられるクロスメンバ2に取り付けられる。
【0013】
図3は、図2で点線Aで囲んだ部分を車幅方向(図2の紙面下側)から見た断面図である。
参照番号1aは電池パック1の外殻1aであり、電池パック1はその外殻1aの底部に取付板1bが設けられている。電池パック1は取付板1bによってクロスメンバ2に取り付けられる。クロスメンバ2は、概ねブラケット3と、平板4とで構成されている。ブラケット3は、複数の箇所で曲げ加工がなされている。図3の左半分を参照すれば曲げ加工により略直角のアール部分3a、3b、3c、3dが形成されており、これにより上向き凸形状の曲げ加工部分3eが形成される。同様に図3の右側にも上向き凸形状の曲げ加工部分3fを有する。電池パック1の取付板1bは曲げ加工部分3e、3fで接合される。また、ブラケット3の平坦部分3g、3h等には平板4が接合される。
【0014】
ブラケット3と取付板1bとの接合、ブラケット3と平板4との接合は、外殻1aと取付板1bとブラケット3と平板4とを上下方向に順に重ねた状態で、取付用ボルト5とナット6とを締結することでなされる。この取付用ボルト5は、それぞれ順に鉛直方向に覗く位置に設けられた、外殻1a及び取付板1bの穴1c、ブラケット3の穴3i、平板の穴4を貫通させてナット6で締結される。取付用ボルト5はボルトヘッド(ボルト頭)5aが下端になり、外殻1aの内部で取付用ボルト5をナット6で締結する。なお、ブラケット3と平板4との隙間には上下方向に伸びるスリーブ形状のガイド部材7が設けられ、取付用ボルト5の足はガイド部材7の内部を貫通する。これにより締結時の上下方向の強度を増大させる。
【0015】
このような従来式の電池パックの取付構造の場合、ガイド部材7以外では曲げ加工をしたブラケット3を中心に剛性が高められているに過ぎず、取付構造全体としての強度が小さいという問題がある。また、この取付構造では底面が平板4であるためボルトヘッド5aが最下端として突出しており、路面干渉や石当たり等があるとその都度、ボルトヘッド5aに直接衝撃が加えられ、取付用ボルト5とナット6の間の締結が緩んでくる可能性がある。さらに、ボルトヘッド5aが突出していると、平板5の下にさらにアンダーカバーを取り付けようとしてもボルトヘッド5aが邪魔になるため、別途ブラケットを準備し、これを介してアンダーカバーを取り付ける必要があるという問題もある。
【0016】
《本発明の電池パックの取付構造の実施形態》
次に、本発明の電池パックの取付構造の具体的な構成例を、上記従来型の電池パックの取付構造と対比しつつ説明する。なお、本電池パックの取付構造の説明において、上記図1〜図3で示した部材と同一も部材については同一の参照番号を付与する。また、本電池パックの取付構造において取付対象となる電池パック1は従来ともに共通であるため図1〜図2における説明は本電池パックの取付構造においても概ね援用できる。したがって、ここでは説明を割愛し、図3の電池パックの取付構造と対比し得る図4の本電池パックの取付構造について説明する。
【0017】
図4は従来の取付構造を示す図3同様、図2において点線Aで囲んだ部分を車幅方向(図2の紙面下側)から見た断面図である。
電池パック1は取付板1bによってクロスメンバ2に取り付けられる。クロスメンバ2は、概ね第一ブラケット3と、第二ブラケット8とで構成されている。第一ブラケット3は、複数の箇所で曲げ加工がなされている。図4の左半分を参照すれば曲げ加工により略直角のアール部分3a、3b、3c、3dが形成されており、これにより上向き凸形状の曲げ加工部分3eが形成される。同様に図4の右側にも上向き凸形状の曲げ加工部分3fを有する。電池パック1の取付板1bは曲げ加工部分3e、3fで接合される。
【0018】
また、第二ブラケット8は、図3における平板4と違い第一ブラケット3同様に、複数の箇所で曲げ加工がなされている。図4の左半分を参照すれば曲げ加工により略直角のアール部分8a、8b、8c、8dが形成されており、これにより上向き凹形状の曲げ加工部分8eが形成される。同様に図4の右側にも上向き凹形状の曲げ加工部分8fを有する。第一ブラケット3の平坦部分3g、3h等は、それぞれ対応する第二ブラケット8の平坦部分8a、8h等に接合される。また、第一ブラケット3の上向き凸形状の曲げ加工部分3eには第二ブラケット8の上向き凹形状8eの位置に位置決めされる。両曲げ加工部分3e、8eはそれぞれの開口が互いに対向する位置に位置決めされ、両開口が結合して一つの閉断面(閉空間)を有することとなる。
【0019】
第一ブラケット3と取付板1bとの接合、第一ブラケット3と第二ブラケット8との接合は、外殻1aと取付板1bと第一ブラケット3と第二ブラケット4とを上下方向に順に重ねた状態で、取付用ボルト5とナット6とを締結することでなされる。この取付用ボルト5は、それぞれ順に鉛直方向に覗く位置に設けられた、外殻1a及び取付板1bの穴1c、第一ブラケット3の穴3i、第二ブラケット8の穴8iを貫通させてナット6で締結される。取付用ボルト5はボルトヘッド(ボルト頭)5aが下端になり、外殻1aの内部においてナット6で締結する。なお、第一ブラケット3と第二ブラケット8との隙間には上下方向に伸びるスリーブ形状のガイド部材7が設けられ、取付用ボルト5の足はガイド部材7の内部を貫通する点では図3と同様である。
【0020】
このような取付構造を採用すると、第一ブラケット3と第二ブラケット8とで曲げ加工で作った複数の閉断面により図3の取付構造に比べて格段に剛性が大きくなり強度が増大する。また、図4から明らかなように取付用ボルト5のボルトヘッド5aは第二ブラケット8の最下面である平坦部分8e、8fより内側(点線Cより上側)に配設される。したがって、ボルトヘッド5aに直接衝撃が加わることがないため従来問題となっていた路面干渉や石当たりによるボルトの緩みを防止することができる。
【0021】
さらに、第二ブラケット8にアンダーカバー(図示せず)を取り付けた場合について考える。図3に示す従来の電池パックの取付構造の場合、ボルトヘッド5aが下方に突出しているためアンダーカバーを直接平板4に接合することができず別途のブラケットが必要であったが、図4に示す本電池パックの取付構造の場合、ボルトヘッド5aが第二ブラケット8の平坦部分8e、8fより上側に配設されるため点線Cの位置にアンダーカバーを取り付けることができ、別途のブラケットを準備せず直接アンダーカバーを取り付けることができる。
【0022】
以上、本発明の電池パックの取付構造についての実施形態およびその概念について説明してきたが本発明はこれに限定されるものではなく特許請求の範囲および明細書等に記載の精神や教示を逸脱しない範囲で他の変形例、改良例が得られることは当業者は理解できるであろう。
【符号の説明】
【0023】
1 電池パック
2 クロスメンバ
3 第一ブラケット
4 平板
5 取付用ボルト
6 ナット
7 ガイド部材
8 第二ブラケット
9 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイドメンバ間に電池を配設するハイブリッド車や電気自動車の電池パックの取付構造において、
複数の上向き凸形状の曲げ加工がなされた第一ブラケットと、
該第一ブラケットの曲げ加工に対応した位置に複数の上向き凹形状の曲げ加工がなされた第二ブラケットとを有し、
前記第一ブラケットの凸形状の曲げ加工がなされた部分と前記第二ブラケットの曲げ加工がなされた部分とを上下方向に接合することで複数の閉断面を形成し、該複数の閉断面の間に電池パックの取付用ボルトの挿入穴が形成されていることを特徴とする電池パックの取付構造。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−112166(P2013−112166A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260241(P2011−260241)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】