説明

電池パックの構造

【課題】複数の電池パックやダミー電池などを用意することなく、電気機器の駆動電圧に応じて電池電圧を容易に調整すること。
【解決手段】電池3が挿抜自在に挿入される複数の挿入部4の両端に、それぞれ、電池電極3a,3bに接触して電池電圧を出力端子2a,2bに出力するためのプラス側とマイナス側の電池端子9a,9bを設けた電池パック1である。少なくとも1つ以上の挿入部4に、電池3の挿抜を検出する電池検出手段5と、電池検出手段5の検出に連動してスイッチ動作を行うスイッチング手段6とをそれぞれ設ける。スイッチング手段6は、電池挿入が検出されない挿入部4の両端の電池端子9a,9b間を電気的に接続状態とし且つ電池挿入が検出された挿入部4の両端の電池端子9a,9b間の接続を遮断するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電動工具などの電気機器に装着される電池パックの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動工具の電池パックは、出力電圧に応じて直列に接続する電池数を変えた電池パックが各々用意されている。そのため、作業に合わせて電池パックと電動工具本体とを交換するか、或いは、大きな作業ができる電動工具と電池パックとを使ってすべての作業を行うことが多い。しかし、前者の場合は、複数の電池パックを用意する必要があるため、コストがかさむという問題がある。また後者の場合は、大きな作業ができる電動工具ですべての作業を兼用することになり、特に、軽作業をする際には、非常に微妙な操作が求められ、熟練が求められるという問題がある。
【0003】
そこで、従来の電池パックとして、蓄電池を着脱自在に挿入する挿脱口を有すると共に、複数の蓄電池による起電力を適宜変更するためにこの電池パックのケーシング内部に蓄電池と同じ大きさのダミー電池を一部の蓄電池の替わりに装填し、ダミー電池を入れることで、1つの電池パックで出力電圧が調整できるようにした電池パックが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−29172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に示される従来例にあっては、作業中に電圧を調整するためには、常にダミー電池を携帯する必要があり、ダミー電池を忘れたり紛失したような場合は電池パックが使えなくなるなど、実用的ではなかった。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、複数の電池パックやダミー電池などを用意することなく、電気機器の駆動電圧に応じて、電池電圧を容易に調整できるようにした電池パックの構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するために、本発明は、電気機器に着脱可能に装着される電池パックに、該電気機器に直流電圧を供給するための出力端子と、電池が挿抜自在に挿入される複数の挿入部とが設けられると共に、各挿入部にはそれぞれ、電池電極に接触して電池電圧を前記出力端子に出力するためのプラス側とマイナス側の電池端子が設けられた電池パックの構造であって、少なくとも1つ以上の前記挿入部に、電池の挿抜を検出する電池検出手段と、この電池検出手段の検出に連動してスイッチ動作を行うスイッチング手段とをそれぞれ設ける。前記スイッチング手段は、電池挿入が検出されない前記挿入部の両端の電池端子間を電気的に接続状態とし且つ電池挿入が検出された前記挿入部の両端の電池端子間の接続を遮断することを特徴とする。
【0008】
また、前記電池検出手段として、前記挿入部に電池を挿入したときに機械的に変位する変位部材を備え、この変位部材の変位に連動して前記スイッチング手段がスイッチ動作を行うようにするのが好ましい。
【0009】
また、前記複数の挿入部のうち少なくとも1つの挿入部に、前記電池検出手段及び前記スイッチング手段を設けないようにするのが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、複数の電池パックやダミー電池などを用意することなく、電気機器の駆動電圧に応じて、1つの電池パックの電池電圧を容易に調整できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態の電池検出手段、スイッチング手段を備えた電池パック内部における電池の直列接続状態の一例を示す配線図である。
【図2】同上の電池パックの電池ケースの斜視図である。
【図3】同上の電池パック全体の斜視図である。
【図4】同上の電池ケースの各挿入部に電池を挿入した状態の斜視図である。
【図5】本発明の他の実施形態であり、電池検出手段をフォトセンサで構成した場合の一例を示し、(a)は電池を挿入部に挿入する前、(b)は挿入した後のそれぞれの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
図3は電池パック1の全体図であり、電池パック1のハウジング7には、充電式の電動工具(図示せず)に直流電圧を供給するためのプラス側の出力端子2aとマイナス側の出力端子2bとが設けられている。ハウジング7は、電池ケース7aとケースカバー7bとに分かれており、電池ケース7aにケースカバー7bをネジで固定している。図4はケースカバー7bを取り外した状態の電池ケース7aの斜視図である。電池3は例えばリチウムイオン電池等の2次電池である。
【0014】
電池ケース7aには、図2に示すように、電池3(図4)を挿入するための挿入部4として、複数(本例では4つ)のセルスペース4a〜4dが並列的に設けられている。各セルスペース4a〜4dの両端には、それぞれ、電池3のプラス電極3aに接触するプラス電池端子9aと、マイナス電極3bに接触するマイナス電池端子9bとが設けられている。
【0015】
図1は電池ケース7aの配線の一例を示している。セルスペース列の始端に位置する1列目のセルスペース4aのプラス側電池端子9aは、プラス側の出力端子2aに接続されている。セルスペース4aのマイナス側電池端子9bはリード線8aを介して次列のセルスペース4bのプラス側電池端子9aに接続されている。セルスペース4bのマイナス側電池端子9bはリード線8cを介して次列のセルスペース4cのプラス側電池端子9aに接続されている。セルスペース4cのマイナス側電池端子9bはリード線8dを介してセルスペース列の終端に位置する4列目のセルスペース4dのプラス側電池端子9aに接続されている。4列目のセルスペース4dのマイナス側電池端子9bはマイナス側の出力端子2bに接続されている。これらプラス側とマイナス側の出力端子2a、2bから、電動工具に直流電圧が供給されるようになっている。
【0016】
上記1列目のセルスペース4aを除いて、2〜4列目のセルスペース4b〜4dには、それぞれ、電池検出手段5を構成する突起5aと、スイッチング手段6を構成する機械的スイッチ6aとが設けられる。
【0017】
以下、図1の2列目のセルスペース4bに設けられた突起5aと機械的スイッチ6aとを説明する。
【0018】
セルスペース4bの底面中央部には電池検出手段5として突起5a(図2)が設けられている。突起5aは、機械的に変位する変位部材を構成しており、本例では押上バネ(図示せず)によって常に上方にバネ付勢されている。突起5aは、電池3を挿入しない時は上方に突出した位置で保持され、電池3が挿入されるとバネ力に抗して下に押し込まれて、機械的スイッチ6aをONからOFFに切り替える働きをする。
【0019】
機械的スイッチ6aは、ON状態ではセルスペース4bの両端に位置する電池端子9a,9b間を導通状態とし、OFF状態では電池端子9a,9b間を遮断状態とするものである。本例の機械的スイッチ6aは、プラス側電池端子9aに接続される入力側の接点6bと、マイナス側電池端子9bに接続される出力側の接点6cと、両接点6b,6cに接離する可動接片6dとからなる。この可動接片6dは、上記突起5aの上下動に連動して上下動するものである。突起5aが上昇しているときは可動接片6dが両接点6b,6cに接触して、電池端子9a,9b間が電気的に接続された状態となる。一方、突起5aが電池3で押し下げられたときは可動接片6dが両接点6b,6cから離れて、電池端子9a,9b間の接続状態が遮断されるようになっている。
【0020】
尚、3列目以降のセルスペース4c,4dに設けられる突起5a及び機械的スイッチ6aにおいても、上記2列目のセルスペース4bに設けられる突起5a及び機械的スイッチ6aと同じ構造及び機能を有しており、説明は省略する。
【0021】
次に、使用例を説明する。
【0022】
図1に示すように、電池3を1列目〜3列目のセルスペース4a〜4cにそれぞれ挿入すると、2列目と3列目のセルスペース4b,4cにそれぞれ設けられている突起5aが押し下げられる。これにより2列目と3列目の機械的スイッチ6aがそれぞれOFFとなる。このとき電池3が挿入されない4列目のセルスペース4dの突起5aは下降せず、4列目の機械的スイッチ6aはONに保たれるので、3本の電池電圧の合計の電圧が出力端子2a,2b間から出力されるようになる。さらに図1の状態から4列目のセルスペース4dにも電池3を挿入したときは、4列目の機械的スイッチ6aもOFFとなる。このとき4本の電池電圧の合計の電圧が出力端子2a,2b間から出力されるようになる。
【0023】
一方、2〜4列目のセルスペース4b〜4dのいずれかから、任意の数の電池3を取り出すと、電池3が取り出されたセルスペースの突起5aが上方に突出して機械的スイッチ6aがONに切り替えられる。これにより残った電池電圧の合計の電圧が出力端子2a,2b間から出力されるようになる。
【0024】
しかして、上記構成の電池パック1においては、1列目のセルスペース4aには電池3を必ず挿入しておき、他の2〜4列目のセルスペース4b〜4dを自由に選んで電池3を挿入できるようにした。これにより挿入した電池電圧を合計した電圧を出力端子2a,2bから出力して電動工具に供給できるものであり、また挿入する電池3の数を調整することで1つの電池パック1から異なる電池電圧を出力できるものである。従って、1つの電池パック1で駆動電圧が異なる複数の電動工具に対応することができるので、従来のように使用者が電動工具ごとに異なる出力の電池パック1を購入する必要がなくなり、コスト削減を図ることができる。しかも従来のようなダミー電池を使用する必要もなく、そのうえ作業に合わせて必要な電池3を挿抜することですべての作業に対応できるようになるので、実用性が飛躍的に向上する。
【0025】
また電動工具による作業時には電動工具はさまざまな方向に向けられるが、このとき、手に持ったときの重量バランスが作業性に大きく影響する。本例の電池パック1では、2〜4列目のセルスペース4b〜4dを自由に選んで電池3を挿入できるので、電池3全体の重量バランスや重心位置を考慮して電池3の挿入位置を調整できるようになり、作業性を向上させることができる。
【0026】
また本例では、電池検出手段5として機械的に変位する突起5aを用いたので、電池検出手段5を単純な構造で且つ容易に実現できる。またスイッチング手段6として突起5aにより駆動される機械的スイッチ6aを用いた。この結果、不要な電池3の取り外しや、必要な電池3の追加のたびに、スイッチ操作を行う必要がなく、スイッチ動作のための電源も不要となり、コスト節約に寄与できる。もちろん、突起5aに限らず、電池3の押し込み時に機械的に変位する部材であれば電池検出手段5として機能させることができる。
【0027】
さらに本例では、1列目のセルスペース4aには電池検出手段5とスイッチング手段6とを設けない構造とした。つまり、1列目のセルスペース4aは電気機器が動作する最低駆動電圧を確保する部分であり、この部分では突起5aと機械的スイッチ6aを省くことができるため、より一層のコスト削減を実現できる。また、1列目のセルスペース4aに電池3が挿入されていないと、電池パック1として動作しないため、1列目のセルスペース4aには電池3が外されないようにするための固着手段を設けるようにしてもよい。
【0028】
なお、使用する電動工具によっては、動作させるために必要な最低電圧が異なり、それに合わせて、突起5aと機械的スイッチ6aを備えないセルスペースの数を調整すればよい。例えば必要な最低電圧が高い場合は突起5aと機械的スイッチ6aを備えないセルスペースの数を増やすことができるのであり、一層のコスト削減を図ることができる。
【0029】
本発明の他の実施形態として、電池検出手段5を例えばフォトセンサで構成し、スイッチング手段6を例えばFET等の半導体素子からなる電気的スイッチで構成してもよい。本例の具体例を図5に示す。図5において、セルスペース4b(或いは4c或いは4d)の対向する両側壁にフォトセンサ10の発光部10aと受光部10bとを対向して配置する。電池3がセルスペース4bに挿入されると受光部10bへの光Lが遮断されることで、フォトセンサ10が電池3を光学的に検知して、FET(図示せず)をOFFにする。これにより、前記実施形態と同様な電池3の検知動作とスイッチング動作とを、電子的に実現できるものとなる。
【0030】
電池検出手段の更に他の実施形態として、電池3の挿入を例えばホール素子を用いて磁気的に検出する方法であってもよい。
【0031】
前記実施形態では挿入部4として、4つのセルスペース4a〜4dを例示したが、セルスペース4a〜4dの数は適宜に設計変更自在である。
【0032】
前記実施形態では、セルスペース4aには電池検出手段5とスイッチング手段6とを設けない構成を例示したが、これに限らず、セルスペース4aにも電池検出手段5とスイッチング手段6を設けるようにしてもよい。
【0033】
前記実施形態では、挿入する電池3として電池単体を例示したが、これに限らず、複数個の電池が直列又は並列に繋がって一体化された組電池を使用する場合でも、同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 電池パック
2a,2b 出力端子
3 電池
3a 電池電極
4 挿入部
5 電池検出手段
5a 突起
6 スイッチング手段
9a,9b 電池端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器に着脱可能に装着される電池パックに、該電気機器に直流電圧を供給するための出力端子と、電池が挿抜自在に挿入される複数の挿入部とが設けられると共に、各挿入部の両端には、それぞれ、電池電極に接触して電池電圧を前記出力端子に出力するためのプラス側とマイナス側の電池端子が設けられた電池パックの構造であって、少なくとも1つ以上の前記挿入部に、電池の挿抜を検出する電池検出手段と、この電池検出手段の検出に連動してスイッチ動作を行うスイッチング手段とをそれぞれ設け、前記スイッチング手段は、電池挿入が検出されない前記挿入部の両端の電池端子間を電気的に接続状態とし且つ電池挿入が検出された前記挿入部の両端の電池端子間の接続を遮断することを特徴とする電池パックの構造。
【請求項2】
前記電池検出手段として、前記挿入部に前記電池を挿入したときに機械的に変位する変位部材を備え、この変位部材の変位に連動して前記スイッチング手段がスイッチ動作を行うことを特徴とする請求項1記載の電池パックの構造。
【請求項3】
前記複数の挿入部のうち少なくとも1つの挿入部に、前記電池検出手段及び前記スイッチング手段を設けないようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の電池パックの構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−212554(P2012−212554A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77503(P2011−77503)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(509119153)パナソニックESパワーツール株式会社 (107)
【Fターム(参考)】