説明

電池パックの車両搭載構造

【課題】電池パックの車両搭載構造において、電池パックと車体フレームとの締結点を増加をすることなく、車両に対して衝撃が作用して支持部材と車体フレームとの締結が外れた際、電池パックの車両前方方向に移動することを抑制する。
【解決手段】電池パックの車両搭載構造であって、電池パックは、電池パックを締結支持する搭載ブラケット40(支持部材)を介してサイドフレーム(車体フレーム)に締結されて連結されており、搭載ブラケット40(支持部材)は、車両に対して衝撃が作用して搭載ブラケット40(支持部材)とサイドフレーム(車体フレーム)との締結が外れ電池パックが車両前方方向に移動する際に、ガセット20と干渉する干渉部46を有しており、搭載ブラケット40(支持部材)の干渉部46がガセット20と干渉することによって、ガセット20が電池パックを支える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池パックの車両搭載構造に関する。詳しくは、車両の車体側部において前後方向に配置構成される車体フレームに対し電池パックを連結して、該電池パックを搭載する電池パックの車両搭載構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電動機を駆動源として用いる電気自動車、電動機とその他の駆動源とを組み合わせたいわゆるハイブリッド電気自動車が実用化されている。このような、自動車においては、電動機に電気を供給するための蓄電機器が搭載される。蓄電機器としては、例えば、繰り返し充放電が可能なニッケルーカドミウム電池、ニッケルー水素電池、または、リチウムイオン電池などに代表される二次電池やキャパシタなどが用いられる。この蓄電機器は、ケースに収容された電池パックとして車体に搭載される。
この電池パックの車両搭載構造として、例えば、特許文献1及び特許文献2のような技術開示がなされている。
【0003】
特許文献1は、車両後部のリヤシートバックを斜め後方側に配置させると共に、このリヤシートバックの背面に近接させた状態で、電池パックを斜め後方に傾斜させて配置し、枠状のフレームで固定されている。そして、枠状のフレームの下端部には脚部が構成されており、この脚部と車体フレームとを締結する電池パックの車両搭載構造が開示されている。この特許文献1の電池パックの車両搭載構造においては、枠状のフレームと車体フレームの締結は、枠状のフレームの下端部に配置構成される左右の脚部における締結であり、車両に対して衝撃が作用した場合、衝撃に伴う荷重が枠状のフレームの脚部に集中するため、締結が外れやすいという懸念がある。
【0004】
特許文献2は、電池パックはバッテリーモジュールと、バッテリーモジュールを覆うバッテリーカバーと、バッテリーモジュールを支持すると共に、バッテリーカバーを左右方向に貫通するバッテリー支持フレームとを備える。このバッテリー支持フレームの左右両端部を車体前後方向に延びる左右のサイドフレームに連結する電池パックの車両搭載構造が開示されている。この特許文献2の電池パックの車両搭載構造におけるバッテリー支持フレームは、左右両端部を車体前後方向に延びる左右のサイドフレームに直接、載せ掛けて連結する構成のものである。そのため、バッテリー支持フレームの締結点の位置は、サイドフレームの形状によって制約を受けやすいといった懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−112284号公報
【特許文献2】特開2006−335243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1及び特許文献2の技術において、車両に対して衝撃が作用した場合に、車体フレームとの締結が外れて、電池パックが車両前方方向に移動することが懸念される。この防止対策として、電池パックと車体フレームの締結点を増やすことができれば、各締結部の荷重を分散し、電池パックと車体フレームとの締結外れを防止することができる。しかしながら、締結点の増加は、車両構造体上の制約、取付けコスト、材料コスト等を鑑みると困難な場合もある。
【0007】
而して、本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、車両の車体側部において前後方向に配置構成される車体フレームに対し電池パックを連結して、該電池パックを搭載する電池パックの車両搭載構造において、電池パックと車体フレームとの締結点の増加をすることなく、車両に対して衝撃が作用して支持部材と車体フレームとの締結が外れた際、電池パックの車両前方方向に移動することを抑制する電池パックの車両搭載構造とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の電池パックの車両搭載構造は次の手段をとる。
先ず、第1の発明は、車両の車体側部において前後方向に配置構成される車体フレームに対し電池パックを連結して、該電池パックを搭載する電池パックの車両搭載構造であって、前記電池パックは、該電池パックを締結支持する支持部材を介して前記車体フレームに締結されて連結されており、前記支持部材は、車両に対して衝撃が作用して前記支持部材と前記車体フレームとの締結が外れて、前記電池パックが車両前方方向に移動する際に、車両構造体と干渉する干渉部を有しており、前記支持部材の干渉部が前記車両構造体と干渉することによって、前記車両構造体が前記電池パックを支える構成とされていることを特徴とする。
【0009】
この第1の発明によれば、電池パックと車体フレーム間に介在する支持部材には、干渉部が構成されている。この干渉部は、車両に対して衝撃が作用して支持部材と車体フレームとの締結が外れて、電池パックが車両前方方向に移動する際に、車両構造体と干渉することによって、車両構造体が電池パックを支える構成とされている。
これにより、車両に対する衝撃が作用して電池パックへ及ぼされる衝撃荷重を車両構造体で受ける経路を増やすことができる。すなわち、支持部材と車体フレームとの締結点を通じて車両構造体で衝撃荷重を受ける構成に加えて、支持部材の干渉部と車両構造体とが干渉する構成によって、かかる衝撃荷重を車両構造体で受ける経路を増やすことができる。これにより、電池パックと車体フレームとの締結点を増加することなく、車両に対して衝撃が作用して支持部材と車体フレームとの締結が外れた際に、電池パックの車両前方方向への移動を抑制することができる。
また、電池パックと車体フレーム間に介在する支持部材は、電池パックの形状及び車両構造体の形状を考慮しつつ、締結位置を選択することができる。
また、電池パックが、直接、車体フレームと連結する構成であると、電池パックや車両構造体の設計変更等が行われると、これに伴う形状変更が大掛かりなものとなる。しかしながら、上記態様によれば、電池パックと車体フレーム間に介在する支持部材を有している。そのため、電池パックの形状又は車両構造体の形状変更があった場合に支持部材の形状変更することで対応できる。すなわち、支持部材によって電池パックの形状又は車両構造体の形状変更を吸収することができる。これにより、大掛かりな形状変更をすることを防ぐことができる。
【0010】
次に、第2の発明は、第1の発明の電池パックの車両搭載構造において、前記支持部材の干渉部は、前記車両構造体に向かって突出して延出形成されていることを特徴とする。
【0011】
この第2の発明によれば、支持部材の干渉部は、車両構造体に向かって突出して延出形成されている。すなわち、支持部材の形状変更によって干渉部を構成することができる。そのため、新規部品の追加をすることなく支持部材に干渉部を構成することができ、材料コストの増加を抑制することができる。また、かかる干渉部の構成を支持部材の形状変更によって達成しているため、重量の増加も最小限に抑制できる。また、干渉部として突出して延出形成される量を調整することで、干渉部が車両構造体と干渉する量を調整できる。例えば、干渉部の突出量を大きくして車両構造体との干渉を大きくした場合には、支持部材の干渉部から車両構造体へ流れる衝撃荷重は大きくなる。これにより、電池パックの車両前方方向に移動する抑制力を調整することができる。
【0012】
次に、第3の発明は、第2の発明の電池パックの車両搭載構造において、前記電池パックは、車両の後輪用のホイールハウス間に配置構成されており、前記車両構造体は、前記ホイールハウスを補強する補強構造体であることを特徴とする。
【0013】
この第3の発明によれば、車両構造体は、ホイールハウスを補強する補強構造体である。そのため、既存の車両構造を有効に利用することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は上記各発明の手段をとることにより、車両の車体側部において前後方向に配置構成される車体フレームに対し電池パックを連結して、該電池パックを搭載する電池パックの車両搭載構造において、締結点の増加をすることなく、車両に対して衝撃が作用して支持部材と車体フレームとの締結が外れた際、電池パックの車両前方方向に移動することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1に係る電池パックの車両搭載構造において、電池パックの搭載される車両の構成を概略的に示した構成図である。
【図2】図1の車両後方部位を拡大した拡大図である。
【図3】実施例1に係る電池パックの車両搭載構造の分解斜視図である。
【図4】実施例1に係る電池パックの車両搭載構造の支持部材を示した斜視図である。
【図5】実施例1に係る電池パックの車両搭載構造の支持部材の干渉部と車両構造体との位置関係を示した平面図である。
【図6】実施例1に係る電池パックの車両搭載構造の支持部材と車両構造体が当接した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0017】
始めに、実施例1の電池パックの車両搭載構造の構成について、図1〜図6を用いて説明する。
なお、図1においては、電池パック30の搭載される車両10の構成を概略的に示したものであるため、車両構成品は概略的な図示とされており、適宜詳細な図示を省略している(例えば、前輪側のホイールハウスは、図示を省略)。また、図2及び図3において、電池パック30の前方に配置形成され前方脚部34と車両との締結構成については図示を省略している。また、図4は、搭載ブラケット40(支持部材)の構成を明確に図示するために、電池パック30の構成を省略している。図5及び図6においては、ガセット20(補強構造体)に対する搭載ブラケット40(支持部材)の配設位置を明確にするために電池パック30等の詳細構成は省略している。また、各図には、車両10の前後左右の方向を矢印にて示している。
【0018】
本実施例の電池パック30の車両搭載構造は、車両10の車体側部において前後方向に配置構成されるサイドフレーム12(車体フレーム)に対し電池パック30を連結して、電池パック30を車両10に搭載するものである。
先ず、電池パック30が搭載される車両10の構造について説明する。図1から図3に図示されるように、車両10の骨格は、その一部として車両10の下面かつ、車体側部において前後方向に左右一対で配置構成されるサイドフレーム12(車体フレーム)を備えている。この左右のサイドフレーム12(車体フレーム)の間は、前後方向に間隔を隔てて車幅方向に沿ったクロスメンバ14(図3参照)によって接続されている。このサイドフレーム12(車体フレーム)及びクロスメンバ14(図3参照)の上面には車両10の床面を構成するフロアパネル16が配置構成されている。このフロアパネル16は、左右のサイドフレーム12を跨ぐように配置されている。また、車両10の前部及び後部には、前輪(図示省略)及び後輪(図示省略)がそれぞれ配置構成されることに伴い、前輪及び後輪の上部を覆うように湾曲形成されるホイールハウス18がフロアパネル16と結合されている。そして、車両10の後部座席の後方側のいわゆる荷室における後輪用のホイールハウス18間に電池パック30が配設されている。
【0019】
次に電池パック30について説明する。図1から図3に図示されるように、この電池パック30は、ケースと、このケースに収容される二次電池やキャパシタ等の蓄電機器(図示省略)とを含む機器をいう。この電池パック30には、その他の内部構成品を含むものでもかまわない。例えば、蓄電機器を制御するコンピュータ(図示省略)、蓄電機器を冷却するための冷却ファン、冷却ダクト等の冷却装置(図示省略)、電力を変換する電気機器等(図示省略)が含まれる。ケースは、鉄で形成されているものを例示するが、任意の材料で形成することができる。この電池パック30のケースの下面かつ前方及び両側方には、外周に向かって突出形成された側方脚部32、前方脚部34が形成されている。この脚部のうち電池パック30の両側方に配置形成されるのが側方脚部32であり、この側方脚部32により、電池パック30が搭載ブラケット40(支持部材)に締結支持される。そして、この搭載ブラケット40(支持部材)を介してフロアパネル16の下面のサイドフレーム12(車体フレーム)に対しボルト52によって締結されて連結される。なお、詳細な図示及び説明は省略するが、電池パック30の前方に配置形成され前方脚部34は、フロアパネル16上に構成されるマウント(図示省略)に対しボルト(図示省略)によって締結固定されている。
【0020】
次に、搭載ブラケット40(支持部材)について説明する。図3及び図4に図示されるように、搭載ブラケット40(支持部材)は、電池パック30を車両10に搭載するものである。搭載ブラケット40(支持部材)は、電池パック30の両側部を締結支持すると共に、サイドフレーム12(車体フレーム)に締結される連結構成である。この搭載ブラケット40(支持部材)は、左右対称な形状である以外に構成は、実質的に同一のため代表して車両10の右側に配置構成される搭載ブラケット40(支持部材)について説明する。
【0021】
図3及び図4に図示されるように、この搭載ブラケット40(支持部材)は、金属製の帯板状部材によって電池パック30の前後方向長さに略同一の長さに形成され、サイドフレーム12(車体フレーム)上に位置するフロアパネル16の凹凸面形状に沿って屈曲形成されている。また、この搭載ブラケット40(支持部材)は、ホイールハウス18に隣接した配置構成であるため、ホイールハウス18の内方側に配置構成される車両構造体を避けた外形形状に形成されている。また、搭載ブラケット40(支持部材)には、ボルト50によって電池パック30と締結固定される電池パック30用の孔部42と、ボルト52によってサイドフレーム12(車体フレーム)に締結固定されるサイドフレーム12用の孔部44が形成されている。搭載ブラケット40(支持部材)のサイドフレーム12用の孔部44は、前端部近傍に二つ形成され、後端部に一つ形成されている。また、電池パック30用の孔部42は、長手方向において、電池パック30の両側方に配置形成される側方脚部32の取付け孔に対応する位置に複数形成されている。
【0022】
上述したように、搭載ブラケット40(支持部材)は、ホイールハウス18の内方側に配置構成される車両構造体を逃げた外形形状に形成されていることに加えて、さらに車両10に対して衝撃が作用して搭載ブラケット40(支持部材)とサイドフレーム12(車体フレーム)との締結が外れて、電池パック30が車両前方方向に移動する際に、車両構造体と干渉する干渉部46を有している。本実施例においては、この搭載ブラケット40(支持部材)の干渉部46が車両構造体であるガセット20(補強構造体)と干渉することによって、このガセット20(補強構造体)が電池パック30を支える構成とされている。
【0023】
ガセット20(補強構造体)について説明する。車両の後輪用のホイールハウス18には、サスペンション(図示省略)のダンパー(図示省略)を支持するダンパー支持部(図示省略)が設けられており、後輪に作用する大きな荷重がダンパー支持部(図示省略)に作用する。また、ホイールハウス18の付近のサイドフレーム12(車体フレーム)には、サスペンション装置(図示省略)のサスクロスメンバ(図示省略)が連結されるため、このサスクロスメンバ(図示省略)からもサイドフレーム12(車体フレーム)やホイールハウス18に大きな荷重が作用する。そこで、ダンパー支持部(図示省略)やホイールハウス18などを補強するための補強部材としてガセット20(補強構造体)が設けられている。このガセット20(補強構造体)は、ホイールハウス18とフロアパネル16の隅部において、ホイールハウス18とフロアパネル16に直交するフランジ面を形成して車両内方側に突出する膨出部20bが形成されている。
【0024】
図4及び図5に図示されるように、搭載ブラケット40(支持部材)の干渉部46は、搭載ブラケット40(支持部材)が電池パック30を車両10に搭載する位置に配置された配置状態において、ガセット20(補強構造体)のフランジ面20aに対向した位置関係の車両10の後方側の位置に形成されている。詳しくは、ガセット20(補強構造体)に対し車両10の後方側の位置において、車両10の外方(車両10の右側壁方向)に向かって突出した幅を保持して車両10の後方側まで延出形成(車両構造体に向かって突出して延出形成)される帯状部位を有している。この構成により、搭載ブラケット40(支持部材)に形成される干渉部46とガセット20(補強構造体)のフランジ面20aとの配置位置関係は、幅方向で重なる重なり領域60を有する構成となっている。
【0025】
次に、実施例1の電池パック30の車両搭載構造において、車両10に対して衝撃が作用したときの動作について説明する。
図1から図6に図示されるように、例えば、車両10の後方から衝撃が作用すると、電池パック30は車両前方側に移動する方向に荷重がかかる。そうすると、この荷重は、搭載ブラケット40(支持部材)とサイドフレーム12(車体フレーム)の連結点であるボルト52に作用する。衝撃荷重に比べてボルト52の締付力が上まわる場合には、ボルト52の締結は外れない。ところが、ボルト52の締付力を上まわる衝撃荷重が及ぼされるとボルト52は順次外れて搭載ブラケット40(支持部材)はサイドフレーム12(車体フレーム)から剥離する。そうすると、電池パック30は、車両前方方向にスライド移動する。ここで、搭載ブラケット40(支持部材)には干渉部46が形成されており、この干渉部46よりも前方側にはガセット20(補強構造体)が配置構成されている。この干渉部46とガセット20(補強構造体)のフランジ面20aとの配置位置関係において、幅方向で重なる重なり領域60を有しているため、干渉部46がフランジ面20aに当接する。そうすると、ガセット20(補強構造体)が電池パック30を支える構成となって、電池パック30に及んだ衝撃荷重が搭載ブラケット40(支持部材)の干渉部46を介してガセット20(補強構造体)に作用し、電池パック30が車両前方方向に移動するのを抑制する。
車両10に対して衝撃が作用する態様として、車両衝突がある。車両衝突のうち全面正面衝突の場合は、車両の前面(又は後面)の全面で衝撃が及ぼされる。これに対し、車両の左右どちらかに少しズレて衝突するいわゆるオフセット衝突の態様がある。このオフセット衝突の場合、左右どちらかの前面(又は後面)に衝撃が集中するため、車のダメージが全面正面衝突のときより大きくなる傾向にある。そのため、オフセット衝突の場合、衝突した方のサイドフレーム12(車体フレーム)は、衝撃荷重が大きく及んで、変形が顕著となる。そうすると、衝突した方のサイドフレーム12(車体フレーム)と搭載ブラケット40(支持部材)は、剥離して車両前方方向にスライド移動する。これに伴い、衝突しない方のサイドフレーム12(車体フレーム)に連結した搭載ブラケット40(支持部材)は車両前方に引っ張られてボルト52が順次外れる。このような場合に、搭載ブラケット40(支持部材)の干渉部46を介してガセット20(補強構造体)で衝撃荷重を受けることで電池パック30の車両前方方向に移動することを抑制することができる。
【0026】
このように、本実施例1の電池パック30の車両搭載構造によれば、電池パック30とサイドフレーム12(車体フレーム)間に介在する搭載ブラケット40(支持部材)には、干渉部46が構成されている。この干渉部46は、車両10に対して衝撃が作用して搭載ブラケット40(支持部材)とサイドフレーム12(車体フレーム)との締結が外れて、電池パック30が車両10の前方方向に移動する際に、車両構造体であるガセット20(補強構造体)と干渉することによって、ガセット20(補強構造体)が電池パック30を支える構成とされている。
すなわち、車両10に対する衝撃が作用して電池パック30へ及ぼされる衝撃荷重を、搭載ブラケット40(支持部材)とサイドフレーム12(車体フレーム)との締結点を通じて車両構造体で受ける構成に加え、搭載ブラケット40(支持部材)の干渉部46と、ガセット20(補強構造体)との干渉によって、かかる荷重を車両構造体で受ける経路を増やすことができる。これにより、電池パック30とサイドフレーム12(車体フレーム)との締結点を増加することなく、車両10に対して衝撃が作用して搭載ブラケット40(支持部材)とサイドフレーム12(車体フレーム)との締結が外れた際に、電池パック30の車両前方方向への移動を抑制することができる。
また、電池パック30とサイドフレーム12(車体フレーム)間に介在する搭載ブラケット40(支持部材)は、電池パック30の形状及び車両構造体の形状を考慮しつつ、締結位置を選択することができる。
また、電池パック30が、直接、サイドフレーム12(車体フレーム)と連結する構成であると、電池パック30や車両構造体の設計変更等が行われると、これに伴う形状変更が大掛かりなものとなる。しかしながら、上記態様によれば、電池パック30とサイドフレーム12(車体フレーム)間に介在する搭載ブラケット40(支持部材)を有している。そのため、電池パック30の形状又は車両構造体の形状変更があった場合に搭載ブラケット40(支持部材)の形状変更することで対応できる。すなわち、搭載ブラケット40(支持部材)によって電池パック30の形状又は車両構造体の形状変更を吸収することができる。これにより、大掛かりな形状変更をすることを防ぐことができる。
【0027】
また、搭載ブラケット40(支持部材)の干渉部46は、ガセット20(補強構造体)に向かって突出して延出形成されている。すなわち、搭載ブラケット40(支持部材)の形状変更によって干渉部46を構成することができる。そのため、新規部品の追加をすることなく搭載ブラケット40(支持部材)に干渉部46を構成することができ、材料コストの増加を抑制することができる。また、かかる干渉部46の構成を搭載ブラケット40(支持部材)の形状変更によって達成しているため、重量の増加も最小限に抑制できる。また、干渉部46として突出して延出形成される量を調整することで、干渉部46がガセット20(補強構造体)と干渉する量を調整できる。例えば、干渉部46の突出量を大きくしてガセット20(補強構造体)との干渉を大きくした場合には、搭載ブラケット40(支持部材)の干渉部46からガセット20(補強構造体)に作用する衝撃荷重は大きくなる。これにより、電池パック30の車両前方方向に移動する抑制力を調整することができる。
また、ガセット20(補強構造体)は、ホイールハウス18を補強する既存の補強構造体である。そのため、新規に専用の構成を設ける必要がない。
【0028】
以上、本発明の実施形態を実施例1について説明したが、本発明の電池パックの車両搭載構造は、本実施の形態に限定されず、その他各種の形態で実施することができる。例えば、本実施例においては、ボルト50、52を用いて各部材を固定している。ボルトの固定構造としてはナットを用いてもよいし、ボルトの頭部と反対側の部材の孔部にネジ溝を形成してもよい。
また、本実施例においては、車両構造体は、ホイールハウス18等を補強するガセット20(補強構造体)が選択されているが、本発明における車両構造体は、ガセット20(補強構造体)に限定されるものではなく、車両10に対して衝撃が作用して搭載ブラケット40(支持部材)とサイドフレーム12(車体フレーム)との締結が外れて、電池パック30が車両10の前方方向に移動する際に搭載ブラケット40(支持部材)と干渉して電池パック30を支える構成とされるものであればよい。例えば、車両10に構成される構造物であれば適宜適用できるものである。好ましくは、車両10の剛性を担う強度部材が選択されることが好ましい。
【符号の説明】
【0029】
10 車両
12 サイドフレーム(車体フレーム)
14 クロスメンバ
16 フロアパネル
18 ホイールハウス
20 ガセット(補強構造体)
20a フランジ面
20b 膨出部
30 電池パック
32 側方脚部
34 前方脚部
40 搭載ブラケット(支持部材)
42 電池パック用の孔部
44 サイドフレーム用の孔部
46 干渉部
50 ボルト
52 ボルト
60 重なり領域


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車体側部において前後方向に配置構成される車体フレームに対し電池パックを連結して、該電池パックを搭載する電池パックの車両搭載構造であって、
前記電池パックは、該電池パックを締結支持する支持部材を介して前記車体フレームに締結されて連結されており、
前記支持部材は、車両に対して衝撃が作用して前記支持部材と前記車体フレームとの締結が外れて、前記電池パックが車両前方方向に移動する際に、車両構造体と干渉する干渉部を有しており、
前記支持部材の干渉部が前記車両構造体と干渉することによって、前記車両構造体が前記電池パックを支える構成とされていることを特徴とする電池パックの車両搭載構造。
【請求項2】
請求項1に記載された電池パックの車両搭載構造であって、
前記支持部材の干渉部は、前記車両構造体に向かって突出して延出形成されていることを特徴とする電池パックの車両搭載構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載された電池パックの車両搭載構造であって、
前記電池パックは、車両の後輪用のホイールハウス間に配置構成されており、
前記車両構造体は、前記ホイールハウスを補強する補強構造体であることを特徴とする電池パックの車両搭載構造。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−62018(P2012−62018A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209722(P2010−209722)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【Fターム(参考)】