説明

電池パック

【課題】電池パックに設けられるリレーが駆動することで生じるノイズを抑制する。
【解決手段】負極側リレー22は、L字形状の固定具50に形成された複数の固定点を介して電池パックのロワーケース14の底面上部14a及び内側壁面14bに固定される。
各固定点を頂点とする多角形の内側に負極側リレー22の重心が位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両に搭載される電池パックに関し、特に電池パックに収容されるリレーの配置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ハイブリッド電気自動車や燃料電池自動車、あるいは電気自動車は、駆動モータに供給される電力を蓄積するため電池パックを備えている。電池パックは、複数の電池モジュールを組み合わせて構成された電池スタック、電池スタックを制御するための各種機器、さらに電池スタックや各種機器を保護するためのアッパーケース及びロワーケースを有する。各種機器の1つとしては、特許文献1に記載されているように、電池スタックから駆動モータに供給される電力を必要に応じて遮断するリレー(接点開閉装置)がある。
【0003】
図6A,6B,6Cは、リレーの動作原理を説明するための図である。リレー1は、例えばロワーケース14の底面上部14aに固定具2を介して固定ネジ2aにより取り付けられる。リレー1は、いわゆるメカニカルリレーであり、励磁コイル1aと、励磁コイル1aの電磁力で駆動される可動鉄心(駆動軸)1bと、励磁コイル1aや可動鉄心1b等を収納するケース1dとを有する。
【0004】
図6Aにおいて、リレー1がオン状態になると、励磁コイル1aが励磁され電磁気力が発生する。これにより、図6Bに示す通り、可動鉄心1bが上昇し、復帰バネ1eが収縮するとともに、可動鉄心1bの上部に設けられた内部接点端子1cが、外部入力端子3a及び外部出力端子3bと接触し、通電する。また、リレー1がオフ状態になると、励磁コイル1aの電磁気力がなくなり、収縮した復帰バネ1eの復元力により可動鉄心1bが下降し、内部接点端子1cは、外部入力端子3a及び外部出力端子3bから離れる。
【0005】
リレー1がオン状態からオフ状態となった場合、図6Cに示す通り、可動鉄心1bが復帰バネ1eの復元力によりケース1dの底面に衝突し、リレー1全体に衝撃振動が伝達される。この衝撃振動は、固定点2bを介してロワーケース14に伝わり、電池パックを振動させ、ノイズを発生させることがある。
【0006】
ところで、自動車に搭載される機器の静穏性はその機器の商品価値の基準として重要な要素を持っている。そのため、電池パックに備えられるリレーから発生する衝突音についても防音することが望ましい。
【0007】
そこで、従来、可動鉄心1bの進退動作時に生じる衝撃を緩和するためにリレー1と固定具2とを衝撃吸収部材4(防振ゴム)を介して取り付けることで防音対策を行っている。
【0008】
【特許文献1】特開2005−328597号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記のように、リレー1を固定具2及び衝撃吸収部材4を介して底面上部14aに取り付けたとしても、衝撃吸収部材4が可動鉄心1bの進退動作時の衝撃を吸収する際に、衝撃振動によりリレー1を底面上部14aに対して平行方向に振動させる力が新たに発生し、この力によりリレー1が振動し、ノイズが発生することがある。
【0010】
そこで、本発明は、電池パックに設けられるリレーが駆動することで生じるノイズを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る電池パックは、車両に搭載される電池パックであって、電池スタックと、前記電池スタックから出力される電流をリレーするリレーユニットと、前記電池スタック及び前記リレーユニットを収容する筐体と、を含み、前記リレーユニットは、前記筐体の少なくとも2つの内側面に衝撃吸収部材を介して固定するための少なくとも3つの固定点を有し、前記各固定点を頂点とする多角形の内側に、前記リレーユニットの重心が位置することを特徴とする。
【0012】
本発明の1つの態様によれば、前記多角形の重心と前記リレーユニットの重心とは一致することを特徴とする。
【0013】
本発明の1つの態様によれば、前記リレーユニットは、駆動軸が軸方向に進退することで接点が開閉するメカニカルリレーを含み、前記リレーユニットが固定される前記内側面には、前記軸方向と垂直な面と、前記軸方向と平行な面とを含み、前記軸方向と垂直な面に固定するための固定点の数よりも前記軸方向と平行な面に固定するための固定点の数が多いことを特徴とする。
【0014】
本発明の1つの態様によれば、前記リレーユニットは、L字形状の固定具を有し、前記固定具を介して前記筐体の内側面に固定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電池パックに設けられるリレーが駆動することで生じるノイズを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態とする)について、以下図面を用いて説明する。
【0017】
図1は、本実施形態における電池パック10の外観展開図である。電池パック10は、例えば、ハイブリッド電気自動車や燃料電池自動車、あるいは電気自動車に搭載され、駆動モータに供給する電力を蓄積する。
【0018】
図1において、電池パック10の筐体である電池ケースは、複数の電池モジュールを組み合わせて構成される電池スタック16の上部をカバーするアッパーケース12及び下部をカバーするロワーケース14を有する。電池パック10内には、電池スタック16の他に、電池ECU(電池電子制御ユニット)28、正極側リレー20(図1には図示せず)、負極側リレー22、プリチャージリレー24(図1には図示せず)、プリチャージ抵抗26(図1には図示せず)などの各種機器が内蔵される。また、ロワーケース14の外側壁面には充放電用出力端子30が取り付けられる。電池スタック16は、正極側リレー20及び負極側リレー22を介して充放電用出力端子30に接続される。なお、本実施形態における各リレーは、メカニカルリレーであり、上述した図6A〜6Cに示すリレー1と同じでよいため、リレーの内部構成や動作原理についての詳しい説明は省略する。
【0019】
図2は、電池パック10から供給される電力により駆動モータ42が駆動する駆動システムのブロック図である。
【0020】
図2において、電池スタック16から出力される直流は、インバータ40を介して交流に変換され駆動モータ42に供給される。ここで、電池スタック16とインバータ40との間には、正極側リレー20、負極側リレー22、プリチャージリレー24が設けられる。自動車のイグニションキーがオンされると、負極側リレー22、プリチャージリレー24の順にオンして、コンデンサ44の充電が始まる。このとき、電流制限用のプリチャージ抵抗26によって大きな突入電流が正極側リレー20に流れるのを制限している。コンデンサ44が充電された後、正極側リレー20がオンして、駆動モータ42のドライブ回路に給電が開始され、プリチャージリレー24がオフされる。イグニションキーをオフしたときには、正極側リレー20、負極側リレー22がオフされ、電池スタック16とインバータ40との間の通電が遮断される。
【0021】
図3Aは、負極側リレー22をロワーケース14に取り付ける際の台座の役目を果たす固定具50の斜視図である。本実施形態では、上記のように構成された電池パック10において、リレーがオンオフ動作することで生じるノイズを抑制するために、ロワーケース14に固定する固定具50が図3Aに示すような形状であることを特徴とする。以下、リレー及び固定具を含めてリレーユニットと称す。なお、本実施形態では、機器設置スペースを考慮して、負極側リレー22をロワーケース14に固定する固定具について説明するが、他のリレーについても機器設置スペースが確保できるのであれば、同様な形状の固定具を介してロワーケース14に取り付けてもよい。
【0022】
図3Bは、負極側リレー22を固定した状態の固定具50の斜視図であり、負極側リレー22を説明上点線で示している。
【0023】
図4は、固定具50を介して負極側リレー22をロワーケース14に取り付けた状態を、図1のA方向から見た場合の模式図である。
【0024】
以下、図3A,3B及び図4を参照して、固定具50についてさらに説明する。
【0025】
固定具50は、筐体の内側面であるロワーケース14の底面上部に固定される底面固定部50aと、筐体の内側面であるロワーケース14の内側壁面に固定される壁面固定部50bとによりL字形状を為す。底面固定部50aには、負極側リレー22を固定する一対のネジ止め部52aが対角線上に形成される。さらに、底面固定部50aには、1つの固定点56aが形成される。固定点56aには、衝撃吸収部材であるゴムスリーブ54aが取り付けられており、底面固定部50aは、ゴムスリーブ54aを介してロワーケース14の底面上部に固定される。また、壁面固定部50bには、2つの固定点56b、56cが形成される。固定点56b、56cにもゴムスリーブ54b,54cが取り付けられており、壁面固定部50bは、ゴムスリーブ54b,54cを介してロワーケース14の内側壁面に固定される。ここで、ゴムスリーブは、可動鉄心1bの動作方向Zに対して十分な振動吸収性をもつ弾性材料を選択することが好ましい。より具体的には、ゴムスリーブとしては、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体(EPDM(Ethylene-Propylene diene terpolymer))、ブチルゴム、シリコンゴムなどを用いることができる。
【0026】
このようなゴムスリーブを選択することで、負極側リレー22を構成する可動鉄心1bがケース1dの底面に衝突した際に生じる衝撃振動を効果的に吸収できる。
【0027】
本実施形態では、負極側リレー22が固定具50を介して、ロワーケース14の底面上部14aの他に、ロワーケース14の内側壁面14bに固定される。よって、負極側リレー22がオンオフ動作した際に生じる衝突振動が異なる2面に分散して伝達されるため、衝突振動を効率的に減衰することができる。また、外的要因により負極側リレー22が振動する場合にも、効率的に負極側リレー22の振動を減衰させることができる。
【0028】
ここで、3つの固定点56a,56b,56cは、固定点56a,56b,56cを頂点とする多角形の重心Gi60が、負極側リレー22と固定具50とを含むリレーユニットの重心Gi62と一致するように、底面固定部50aもしくは壁面固定部50bに形成することが好ましい。これにより、リレーユニットが、ロワーケース14に安定して固定され、負極側リレー22の衝突振動を効率的に減衰させることができる。なお、上記では、重心Gi60と重心Gi62とは一致すると説明したが、重心Gi60と重心Gi62とが近傍にあれば衝撃振動をある程度抑制することができるため、重心Gi60と重心Gi62とは必ずしも完全一致でなくても構わない。すなわち、固定点56a、56b、56cで形成される多角形上に、重心Gi62が少なくとも存在すれば、衝撃振動を抑制する効果を得られる。
【0029】
また、底面固定部50aに形成される固定点の数よりも、壁面固定部50bに形成される固定点の数を多くすることが好ましい。言い換えれば、負極側リレー22を構成する可動鉄心1bの動作方向Zに垂直な面である底面固定部50aの固定点の数よりも、動作方向Zと平行な面である壁面固定部50bの固定点の数を多くすることが好ましい。可動鉄心1bの衝突振動は、可動鉄心1bの動作方向Zに垂直な面よりも、動作方向Zと平行な面に伝達されるほうが、衝突により生じるエネルギーを散逸しやすく、そのエネルギーを吸収しやすい。よって、壁面固定部50bに形成される固定点の数を多くすることで、負極側リレー22の衝突振動を効率的に減衰させることができる。なお、底面固定部50aおよび壁面固定部50bに形成される固定点は上記の数に限定されず、より多くの固定点を形成しても構わない。
【0030】
ここで、図5A〜5Dを参照して、本実施形態に係る固定具50を用いてリレーをロワーケースに固定した場合の効果についてさらに説明する。
【0031】
図5Aは、固定具を介さずにロワーケースの底面上部のみに直接リレーを固定した状態で、リレーをオンオフ動作した際の音圧(Pa)の測定結果を音圧波形で示した図である。
【0032】
図5Bは、衝撃吸収部材を備える従来の固定具を介してロワーケースの底面上部のみにリレーを固定した状態で、リレーをオンオフ動作した際の音圧(Pa)の測定結果を音圧波形で示した図である。
【0033】
図5Cは、図5Bと同様な測定結果であり、横軸(音圧)及び縦軸(時間)の目盛間隔を図5Dと合わせるために変更したものである。
【0034】
図5Dは、本実施形態に係る固定具50を介してロワーケースの底面上部および内側壁面にリレーを固定した状態で、リレーをオンオフ動作した際の音圧(Pa)の測定結果を音圧波形で示した図である。
【0035】
図5A〜5Dに示す通り、本実施形態に係る固定具50を用いてリレーをロワーケースに固定した場合、固定具50を用いない場合に比べてノイズを効果的に低減できることがわかる。また、固定具50を用いた場合、固定具50を用いない場合に比べてノイズの継続時間が短く、短期間にノイズを抑制することができる。これは、上記のように、各固定点を頂点とする多角形の重心Gi60とリレー及び固定具を合わせた重心Gi62(つまり、リレーユニットの重心)とを一致させることで、リレーと固定具との安定性を確保したことにより得られる効果である。
【0036】
以上、本実施形態によれば、ロワーケースの底面上部14aと内側壁面14bとにL字形状の固定具を固定して、固定具にリレーを固定することで、ロワーケースに対してリレーが安定して固定される。よって、リレーが動作した際に生じる衝突振動を抑制し、ノイズの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本実施形態における電池パックの外観展開図である。
【図2】電池パックから供給される電力により駆動モータが駆動する駆動システムのブロック図である。
【図3A】リレーをロワーケースに固定するための固定具の斜視図である。
【図3B】リレーを固定した状態の固定具の斜視図である。
【図4】固定具を介して負極側リレーをロワーケース14に取り付けた状態を示す模式図である。
【図5A】固定具を介さずにロワーケースの底面上部のみに直接リレーを固定した状態で、リレーをオンオフ動作した際の音圧(Pa)の測定結果を音圧波形で示した図である。
【図5B】衝撃吸収部材を備える従来の固定具を介してロワーケースの底面上部のみにリレーを固定した状態で、リレーをオンオフ動作した際の音圧(Pa)の測定結果を音圧波形で示した図である。
【図5C】衝撃吸収部材を備える従来の固定具を介してロワーケースの底面上部のみにリレーを固定した状態で、リレーをオンオフ動作した際の音圧(Pa)の測定結果を音圧波形で示した図である。
【図5D】本実施形態に係る固定具を介してロワーケースの底面上部および内側壁面にリレーを固定した状態で、リレーをオンオフ動作した際の音圧(Pa)の測定結果を音圧波形で示した図である。
【図6A】リレーの動作原理を説明するための図である。
【図6B】リレーの動作原理を説明するための図である。
【図6C】リレーの動作原理を説明するための図である。
【符号の説明】
【0038】
1 リレー、1a 励磁コイル、1b 可動鉄心、1c 内部接点端子、1e 復帰バネ、1d ケース、2a 固定ネジ、2 固定具、2b 固定点、3a 外部入力端子、3b 外部出力端子、4 衝撃吸収部材、10 電池パック、12 アッパーケース、14 ロワーケース、14a 底面上部、16 電池スタック、20 正極側リレー、22 負極側リレー、24 プリチャージリレー、26 プリチャージ抵抗、28 電池ECU、30 充放電用出力端子、40 インバータ、42 駆動モータ、44 コンデンサ、50 固定具、50a 底面固定部、50b 壁面固定部、52a ネジ止め部、54a,54b,54c ゴムスリーブ、56a,56b,56c 固定点。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される電池パックであって、
電池スタックと、
前記電池スタックから出力される電流をリレーするリレーユニットと、
前記電池スタック及び前記リレーユニットを収容する筐体と、
を含み、
前記リレーユニットは、前記筐体の少なくとも2つの内側面に衝撃吸収部材を介して固定するための少なくとも3つの固定点を有し、
前記各固定点を頂点とする多角形の内側に、前記リレーユニットの重心が位置することを特徴とする電池パック。
【請求項2】
請求項1に記載の電池パックにおいて、
前記多角形の重心と前記リレーユニットの重心とは一致することを特徴とする電池パック。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電池パックにおいて、
前記リレーユニットは、
駆動軸が軸方向に進退することで接点が開閉するメカニカルリレーを含み、
前記リレーユニットが固定される前記内側面には、前記軸方向と垂直な面と、前記軸方向と平行な面とを含み、
前記軸方向と垂直な面に固定するための固定点の数よりも前記軸方向と平行な面に固定するための固定点の数が多いことを特徴とする電池パック。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の電池パックにおいて、
前記リレーユニットは、
L字形状の固定具を有し、前記固定具を介して前記筐体の内側面に固定されることを特徴とする電池パック。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【公開番号】特開2008−77881(P2008−77881A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−253272(P2006−253272)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(399107063)パナソニック・イーブイ・エナジー株式会社 (193)
【Fターム(参考)】