説明

電池パック

【課題】電池ケースが変形あるいは破損する程度の軽度の衝撃が作用した場合に、電池に付随する電装部材が電池ケース等の金属製の部材に電気的に接触することを回避可能でありつつ、コンパクトな構成の電池パックの提供を目的とした。
【解決手段】電池パック10においては、電池ケース12の外縁側であって外部から所定方向への衝撃Fの作用が想定される箇所に配置された電装部材50に、座屈を促進させる座屈促進部62が設けられている。衝撃Fの作用により電池ケース12が変形すると、電装部材50が座屈促進部62を起点として座屈し、電装部材50と電池ケース12とが電気的に接触することを回避できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車、ハイブリッド車等の車両に用いられる電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車、ハイブリッド車等の電池パックを搭載した車両が提供されている。電気自動車、ハイブリッド車等の車両に用いられる電池パックは、リチウムイオン二次電池若しくはニッケル水素二次電池等の高電圧かつ高容量の電池と、これに付随する電装部材を電池ケース内に収容した構成とされることが多い。このような構成とすることにより、高電圧となる部分を閉空間内に閉じ込め、乗員から隔離及び絶縁することとしている。
【0003】
また、下記特許文献1に開示されているような燃料電池を搭載した車両が提供されている。この車両においては、車体に衝突変形促進部を設けると共に、衝突変形促進部の上に配置された燃料電池ケースにハウジング変形促進部を設け、車体及び燃料電池ケースを含む燃料電池の変形により衝突時に作用する衝撃を吸収し、緩和させようとする試みがなされている。
【0004】
具体的には、上記特許文献1に開示されている燃料電池システムの取付構造及び燃料電池ケースにおいては、車両が衝突等したときの衝撃を緩和すべく、車体の骨格をなすフレームサイドメンバに衝突時のエネルギーを吸収するためのエネルギー吸収部を設けると共に、サイドメンバ上に燃料電池を設置した構成とされている。この従来技術においては、車体の衝突時に車両が衝突した際に、エネルギー吸収部においてフレームサイドメンバが変形すること、及び燃料電池が二つに分断されて破壊されることにより、衝突によるエネルギーを吸収しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−192639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、電池パックの絶縁性を考慮した場合、電池ケースを構成する素材は樹脂等の絶縁性を有する素材によって構成されることが望ましい。しかしながら、電磁ノイズへの対策、及び製造コストの抑制等の観点からすると、電池ケースを鋼板等の金属によって形成することが望ましい。その反面、絶縁性及び安全性の観点から検討すると、電池パックに対して何らかの衝撃が加わって電池ケースが変形あるいは破損した場合であっても、電池に付随する電装部材が、電池ケース等の金属製の部材に電気的に接触することを回避する必要がある。
【0007】
かかる問題に対処するための方策として、上述した電装部材を樹脂等の絶縁体によってカバーする方策、あるいは電装部材と電池ケースの壁面との間に十分なスペースを設ける方策等が想定される。しかしながら、前者の方策を採用した場合には、電池ケースの変形あるいは破損に伴い電池パック内に浸入してくる異物、あるいは変形した電池ケースとの電気的接触に対して十分な対策がなされているとは言えない。また、後者の方策を採用した場合には、スペース効率が悪くならざるを得ない。そのため、後者の方策は、車両を小型化する上で不利であり、特に軽自動車等の小型車両を電気自動車化する上で大きな障害となりうる。
【0008】
上述したように、車両に搭載される電池パックは、リチウムイオン二次電池のように高電圧かつ高容量の電池を備えたものであり、安全性確保のために様々な状況下において絶縁性が確保されるよう対策を講じることが必要である。そのため、車体の変形には及ばないものの、電池パックのケースが変形する程度の軽度の衝撃が作用した場合についても絶縁性が確保されるよう、十分配慮する必要がある。しかしながら、上記特許文献1に開示されている燃料電池システムの取付構造及び燃料電池ケースは、車体が変形する程度の大きな衝撃が作用した場合を想定し、対策を講じたものであるが、電池パックのケースが変形する程度の軽度の衝撃が作用した場合にまで配慮が及んでいないという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、電池ケースが変形あるいは破損する程度の軽度の衝撃が作用した場合に、電池に付随する電装部材が電池ケース等の金属製の部材に電気的に接触することを回避可能でありつつ、コンパクトな構成の電池パックの提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決すべく提供される本発明は、車体に装着された電池ケース内に電池、及び前記電池に付随する電装部材が収容された電池パックであって、前記電池ケースの外縁側であって外部から所定方向への衝撃の作用が想定される箇所に配置された前記電装部材に、座屈を促進させる座屈促進部が設けられており、前記所定方向への衝撃の作用による前記電池ケースの変形に伴い、前記電装部材が座屈し、当該電装部材に隣接する位置に存在する導電性を有する部材との電気的接触を回避する方向に屈曲することを特徴とするものである。
【0011】
本発明の電池パックにおいては、電池ケースの外縁側であって、外部から所定方向への衝撃の作用が想定される箇所に配置された電装部材に座屈促進部が設けられている。また、電池ケースが変形するような衝撃が作用した場合に、電装部材が電気的接触を回避する方向に座屈した状態になる。これにより、電池ケースが衝撃を受けて変形あるいは破損した場合であっても、電池に付随する電装部材が電池ケース等の金属製の部材に電気的に接触し、絶縁破壊の発生を確実に防止でき、安全性を確保することができる。
【0012】
また、上述したように電装部材が座屈することにより、電装部材と導電性部材との電気的接触を回避することとした場合、電装部材と電池ケースとの間等に過度に大きな隙間を設ける必要がない。従って、本発明によれば、電池パックをコンパクトな構成とすることができる。
【0013】
上述したようような構成とすることにより、電池パックに加わった衝撃を電装部材の座屈により緩衝することができる。また、電装部材を座屈させることにより、衝撃の入力方向奥側に位置している他部材等に対して衝撃が伝播することを防止できる。さらに、衝撃を受けて座屈する電装部材を設けることにより、電池パックに対して衝撃が加わった際に、電池パックが想定外の潰れ方をすること、及びこれに伴う副次的な不具合が発生することを防止できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電池ケースが変形あるいは破損する程度の軽度の衝撃が作用した場合に、電池に付随する電装部材が電池ケース等の金属製の部材に電気的に接触することを回避し、安全性の面において優れた電池パックを提供できる。また、本発明によれば、コンパクトな構成の電池パックを提供することができる。さらに、本発明によれば、電池パックに作用した衝撃を電装部材の座屈により緩衝し、他部材の破損等を回避できる。さらに、衝撃により電池パックが想定外の潰れ方をすること、及びこれに伴う副次的な不具合が発生することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る電池パックを搭載した車両を示す側面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る電池パックを示す平面図である。
【図3】図2に示す電池パックを構成する電装部材を示す斜視図である。
【図4】(a)は平常時における電装部材を示す側面図、(b)は平常時における電池パックの端部を拡大した断面図、(c)は衝撃の作用により座屈した電装部材を示す側面図、(d)は衝撃の作用により電装部材が座屈した状態における電池パックの端部を拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
続いて、本発明の一実施形態に係る電池パック10について、図面を参照しつつ詳細に説明する。電池パック10は、ハイブリッド型の自動車、あるいは電気自動車等の車両に搭載されるものである。図1に示すように、電池パック10は、車両Aの長さ方向略中央部においてフロア下に設置されている。
【0017】
図2に示すように、電池パック10は、電池ケース12の内部に電池14、及び電池14に付随する電装部材50,70等を内蔵させたものである。電池ケース12は、天面部分に開口を有し、開口を取り囲むように設けられたフランジ12aを有し、内部に収容空間20を有する有底の箱体によって構成されている。電池ケース12は、鋼板あるいは樹脂等、いかなる素材によって構成されていても良いが、本実施形態においては電磁ノイズへの対策、及び製造コストの抑制、耐衝撃性等の観点から鋼板製とされている。
【0018】
電池ケース12は、外周部分をなす側面22と底面24とを有し、側面22と底面24とが略直交するように形成されている。側面22のうちの一面(以下、「側面22a」とも称す)と、これに隣接する他の側面22bとによって形成された角部26には、ケーブル挿通孔28が複数(本実施形態においては5つ)形成されている。ケーブル挿通孔28には、高電圧ケーブル30が挿通されている。
【0019】
電池14は、従来公知のリチウムイオン二次電池、あるいはニッケル水素二次電池等の二次電池によって構成されている。電池14は、電池ケース12の収容空間20内に設けられた電池収容領域32に収容されている。電池収容領域32は、上述した側面22a側であって、側面22bに対向する側面22c側の領域に設けられている。
【0020】
また、上述した電池ケース12の収容空間20内であって、電池収容領域32に対して側面22b側、すなわち角部26近傍には、第一電装部材配置領域34が設けられている。第一電装部材配置領域34には、電装部材50が収容されている。
【0021】
電装部材50は、リレー等の電装部品52と、電装部品52間をつなぐバスバー54(導電部)と、隣接するバスバー54同士の絶縁距離を確保するためのリブ56とを有する。また、電装部材50の側面22a側の端部には、上述した高電圧ケーブル30を接続するための端子58が設けられている。電装部材50の高電圧ケーブル30の接続箇所には、樹脂製のカバー60が装着されている。
【0022】
リブ56は、側面22aに対して交差(略直行)し、側面22bに沿う方向に延びるように形成されている。また、各リブ56の長手方向中間部分には、座屈促進部62が設けられている。座屈促進部62は、リブ56の上辺側に設けられた切り欠きによって形成されている。座屈促進部62が設けられているため、リブ56に対して長手方向への圧縮力(衝撃F)を作用させることにより、座屈促進部62を起点としてリブ56を座屈させることができる(図4(c),(d)参照)。
【0023】
また、図3に示すように、リブ56の下辺側には、通風孔64が形成されている。通風孔64は、第一電装部材配置領域34内における通風を促進するために設けられたものであり、略半円状の切り欠きによって形成されている。また、通風孔64は、座屈促進部62の略直下に設けられている。そのため、リブ56は、座屈促進部62が設けられた箇所において他よりも強度が低くなっている。従って、リブ56に対して長手方向への圧縮力を作用させることにより、座屈促進部62を起点としてリブ56を確実に座屈させることができる。
【0024】
また、リブ56は、電池ケース12に電装部材50が収容された状態において側面22a側となる部分に切欠66を有する。切欠66は、電装部材50が座屈促進部62を起点として折れ曲がる際に、リブ56が電池ケース12の天面側、すなわち電池ケース12の取り付け面たる車両Aのフロア面と緩衝することを防止するために設けられている。
【0025】
また、図2に示すように、上述した電池ケース12の収容空間20内であって、電池収容領域32に対して側面22d側、すなわち側面22a側から見て電池収容領域32及び第一電装部材配置領域34よりも奥側には、第二電装部材配置領域36が設けられている。第二電装部材配置領域36には、第一電装部材配置領域34に配置されている電装部材50とは別の電装部材70が収容されている。
【0026】
ここで上述したように、電池パック10は、車両Aのフロア下に設置されている。そのため、縁石等との衝突等により、車体を変形させる程ではないものの電池ケース12が変形する程度の軽度の衝撃が電池パック10に対して作用する場合がある。このようにして電池パック10に加わる衝撃としては、図2等に矢印で示すように、電池ケース12の側面22aに対して交差する方向への衝撃Fが想定される。さらに詳細には、側面22aに対して斜め下方から衝撃Fが加わるものと想定される。
【0027】
電池パック10においては、上述した衝撃Fが作用することにより想定される電池ケース12の変形あるいは破損が生じても電装部材50が導電性を有する電池ケース12と電気的に接触することを防止できる構成とされている。具体的には、衝撃Fが作用して角部26において電池ケース12が変形等した場合には、図4(c),(d)に示すように第一電装部材配置領域34内の電装部材50の端部が上方に持ち上がる。これにより、電装部材50をなす各リブ56が座屈促進部62において折れ曲がり、電装部材50が座屈した状態になる。具体的には、座屈促進部62よりも衝撃Fの入力側(側面22a側)の部分が上方に持ち上がり、電装部材50が中間に設けられた座屈促進部62において電装部材50が折れた状態になる。これにより、電装部材50における導電部たるバスバー54と、電装部材50に隣接する位置に存在する導電性部材たる電池ケース12との電気的接触を回避しうる。
【0028】
また、電装部材50をなすリブ56が座屈することにより、衝撃Fの吸収効果が得られる。さらに、衝撃Fを受けて電装部材50が座屈することにより、電装部材50がこれよりも奥側(側面22d側)に位置している他の電装部材70に対して玉突き状態となって衝突する等、電池パック10が想定外の潰れ方をすること、及び想定外の潰れ方をすることによる副次的な不具合を防止できる。
【0029】
また、電池パック10においては、電池ケース12内において衝撃Fの入力側の外縁部分に位置している電装部材50が座屈することで電装部材50と電池ケース12との電気的接触を回避することが可能である。これにより、電装部材50と電池ケース12との間に過度に大きな隙間を設ける必要がなく、電池パック10をコンパクトな構成とすることができる。
【0030】
電池パック10においては、電装部材50の座屈により、電池パック10に加わった衝撃Fを緩和することができる。また、電装部材50を座屈させることにより、衝撃Fの入力方向奥側に位置している他の電装部材70等の他部材に対して衝撃が伝播することを防止できる。
【0031】
電池パック10の設置箇所は、車両Aのフロア下略中央部に限定されるものではなく、車両Aの荷室内、あるいはドア内等、いかなる箇所であっても良い。また、電池パック10は、車両Aのフロア下であって前方側あるいは後方側に偏った位置に設置されても良い。なお、電池パック10を荷室内、あるいはドア内等の各所に設置する場合には、電装部材50が、荷室あるいはドア等を構成する鋼板等の導電性部材との接触を回避する方向に屈曲して座屈するように座屈促進部62を設ける必要がある。
【0032】
また、電装部材50を構成するリブ56の形状は上述したように直線状のものである必要はなく、中途において屈曲あるいは湾曲等していても良い。また、リブ56は、座屈促進部62の直下に通風孔64を設けることにより、座屈促進部62を起点とする電装部材50(リブ56)の座屈を一層促進したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、通風孔64を設けないこと、あるいは通風孔64をリブ56から離れた位置に設けることとしても良い。また、座屈促進部62及び通風孔64をなす切り欠きの形状は、上述あるいは図示したものに限定されず、いかなるものであっても良い。
【0033】
上述した電装部材50は、リブ56において衝撃Fの入力側の端部に切欠66を設けることにより電装部材50が他部材に引っかかり座屈が阻害されることを防止したものであるが、本発明はこれに限定されるものではなく、切欠66を設けない構成としても良い。また、切欠66の形状は、上述あるいは図示したものに限定されず、いかなるものであっても良い。
【0034】
上述したように電池パック10においては、電装部材50の端子58にカバー60を装着し、衝撃Fを受けて電装部材50が座屈する際に先ずカバー60が電池ケース12に接触する構成とされている。これにより、電池ケース12と導電性を有する端子58とが接触することを確実に防止できる。なお、カバー60を設けなくても端子58と電池ケース12との接触を回避できる場合には、カバー60を設けない構成としても良い。
【0035】
また、上述した電池パック10は、電装部材50のリブ56に座屈促進部62を設けた構成を例示したが、電装部材50をなす他部材にも座屈促進部62に相当するものを設けた構成としても良い。また、電池ケース12の第一電装部材配置領域34等にも、座屈を促進させるための切り欠き等を設けた構成としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、ハイブリッド型の自動車、あるいは電気自動車等の車両に搭載される電池パックとして好適に利用することができる。また特に、軽自動車をはじめとするコンパクトカーにおいて好適に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0037】
10 電池パック
12 電池ケース
14 電池
50 電装部材
62 座屈促進部
A 車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に装着された電池ケース内に電池、及び前記電池に付随する電装部材が収容された電池パックであって、
前記電池ケースの外縁側であって外部から所定方向への衝撃の作用が想定される箇所に配置された前記電装部材に、座屈を促進させる座屈促進部が設けられており、
前記所定方向への衝撃の作用による前記電池ケースの変形に伴い、前記電装部材が座屈し、当該電装部材に隣接する位置に存在する導電性を有する部材との電気的接触を回避する方向に屈曲することを特徴とする電池パック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−114883(P2013−114883A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259690(P2011−259690)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】