説明

電池モジュールの検査方法と電池モジュール

【課題】溶接ちりの発生した電池モジュールを簡単かつ容易に、しかも速やかに選別する。溶接ちりによる素電池のショートを防止する。
【解決手段】電池モジュールの検査方法は、複数の素電池10を電池間の接続金具20に溶接して電気接続している電池モジュール50の溶接ちりAによるショートを検査する方法である。電池モジュールの検査方法は、接続金具20に、磁気的な作用で吸引される磁性金属を使用すると共に、電池モジュール50に磁界を作用させて、接続金具20を溶接する時に発生する溶接ちりAを磁気的吸着力で移動させ、素電池10の電圧を検出して溶接ちりAのショートを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、素電池の対向面に接続金具を配設して、接続金具を対向する素電池に溶接して、素電池を電気接続している電池モジュールの、溶接ちりに起因する短絡を検査する方法と、溶接ちりによる短絡検査を能率よくでき、あるいは溶接ちりによる短絡を防止できる電池モジュールに関する。
特に、本発明は、ハイブリッドカー、電気自動車、あるいは燃料電池車等のように、車両を走行させるモーターに電力を供給する電池モジュールの検査方法と、この用途に最適な電池モジュールに関する。ただし、かかる発明は、使用用途を電動車両以外の用途であっても、大出力が要求される用途や、素電池複数接続部分の省スペース化が要求される用途の電池モジュール全般に関する。
【背景技術】
【0002】
電動車両のモーターを駆動する電池モジュールは、接続部の電気抵抗を小さくすることが大切である。この種の用途に使用される電池モジュールは、多数の素電池を直列に接続して出力電圧を高くしているからである。すなわち、多数の素電池を直列に接続するので、接続部の電気抵抗が大きいと、トータルの電気抵抗が極めて大きくなるからである。接続部の電気抵抗を小さくする電池モジュールは開発されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−223878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この公報に記載される電池モジュールは、図1と図2に示す接続構造で素電池10を直列に接続している。これ等の図に示す電池モジュールは、素電池10の端面を接続金具20を介して直列に接続している。接続金具20は、互いに接近して配設する素電池10の端面間に配設されて、対向する素電池10の電極に溶接して電気接続される。図1の電池モジュールは、接続金具20の中心部を封口板12に、外周部を外装缶11に溶接して電気接続している。図2の電池モジュールは、接続金具20の外周に、素電池10の外装缶11の端部を挿入する筒部28を設け、筒部28の内側にプレート部27を設けている。接続金具20は、筒部28を外装缶11に、プレート部27を封口板12に溶接して、素電池10を直列に接続する。
【0004】
これ等の図に示す電池モジュールは、接続金具を介して、低抵抗な状態で接続される。しかしながら、接続金具を溶接するときに、接続金具の溶融部の一部が溶接ちりとして飛散することがある。溶接ちりは、導電性があるので、図3に示すように、素電池10の封口板12と外装缶11の間に移動して、素電池10をショートすることがある。このため、溶接ちりAが発生している電池モジュールは、溶接ちりAにより素電池10をショートさせることがあるので、正常品としては使用できない。このため、溶接ちりが発生した電池モジュールは、不良品として選別される必要がある。
【0005】
ただ、接続金具を溶接するときに溶接ちりが発生した電池モジュールの選別は簡単にはできない。それは、溶接ちりが必ずしも封口板と外装缶とをショートする位置に移動するとは限らず、また溶接ちりのショート電流が極めて小さいので、各々の素電池の電圧を検出して、溶接ちりのショートを検出するのが難しいからである。溶接ちりのショート電流が大きければ、これが素電池をショートすると、ショートされた素電池の電圧低下が大きくなる。このため、素電池の電圧低下を検出して溶接ちりの発生を検出できる。ところが、現実には溶接ちりのショート電流が小さいので、これが素電池を一時的にショートしても、素電池の電圧低下は小さく、電圧低下が顕著化するためには、一定の熟成期間を有する必要がある。このことが、溶接ちりのある電池モジュールの選別を難しくしている。
【0006】
本発明は、従来のこのような欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、溶接ちりの発生した電池モジュールを簡単かつ容易に、しかも速やかに選別できる電池モジュールとその検査方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、溶接ちりによる素電池のショートを防止できる電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電池モジュールの検査方法は、複数の素電池10を電池間の接続金具20に溶接して電気接続している電池モジュール50の溶接ちりAによるショートを検査する方法である。
本発明の請求項1の電池モジュールの検査方法は、接続金具20に、磁気的な作用で吸引される磁性金属を使用すると共に、電池モジュール50に磁界を作用させて、接続金具20を溶接する時に発生する溶接ちりAを磁気的吸着力で移動させ、素電池10の電圧を検出して溶接ちりAのショートを検出する。
【0008】
本発明の請求項2の電池モジュールの検査方法は、電池モジュール50を強制的に振動させて、接続金具20を溶接する時に発生する溶接ちりAを移動させ、素電池10の電圧を検出して溶接ちりAのショートを検出する。この検査方法は、電池モジュール50を複数のローラー41の上に移動させて強制的に振動させ、あるいは、電池モジュール50を傾斜面43に落下させて、強制的に振動させることができる。
【0009】
本発明の請求項5の電池モジュールの検査方法は、電池モジュール50を超音波振動し、あるいは素電池10の間に超音波振動を加えて、超音波振動で接続金具20を溶接する時に発生する溶接ちりAを移動させ、素電池10の電圧を検出して溶接ちりAのショートを検出する。
【0010】
本発明の請求項6の電池モジュールの検査方法は、電池モジュール50の素電池10の間に空気を強制送風し、この空気流でもって、接続金具20を溶接する時に発生する溶接ちりAを移動させ、素電池10の電圧を検出して溶接ちりAのショートを検出する。
【0011】
本発明の電池モジュールは、複数の素電池10の間に接続金具20を配設し、この接続金具20を素電池10に溶接して電気接続している。
本発明の請求項7の電池モジュールは、素電池10の接続金具20との対向面に、溶接ちりAの移動をスムーズにする絶縁低摩擦層17を設けている。
【0012】
本発明の請求項8の電池モジュールは、接続金具20で接続している素電池10の対向面に、溶接ちりAを付着して移動を阻止する絶縁接着層18を設けている。
【0013】
本発明の請求項9の電池モジュールは、接続金具20で接続している素電池10の対向面であって、封口板12と外装缶11との境界を絶縁塗膜19で被覆して溶接ちりAの短絡を防止している。
【0014】
本発明の請求項10の電池モジュールは、接続金具20が、素電池10の外装缶11の端部を挿入して電気接続している筒部28と、この筒部28の内側にあって、素電池10の封口板12に溶接しているプレート部27を有する。さらに、電池モジュールは、筒部28に、素電池10の間に溶接ちりAを移動する空気を強制送風する送風開口29を設けており、この送風開口29から素電池10間に強制送風して、溶接ちりAを素電池10の間で移動できるようにしている。
【0015】
本発明の請求項11の電池モジュールは、素電池10の短絡を防止する絶縁キャップ30を素電池10の端面に備えている。この絶縁キャップ30は、素電池10の外装缶11の端部を挿入する筒部31と、この筒部31の内側にあって、接続金具20と外装缶11とを絶縁している絶縁リング部32を有する。電池モジュールは、筒部31に、素電池10の間に、溶接ちりAを移動する空気を強制送風する送風開口39を設けており、この送風開口39から素電池10間に強制送風して、溶接ちりAを素電池10の間で移動できるようにしている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の電池モジュールの検査方法は、溶接ちりの発生した電池モジュールを簡単かつ容易に、しかも速やかに選別できる特長がある。それは、本発明の電池モジュールの検査方法が、接続金具を溶接する時に発生する溶接ちりを移動させると共に、素電池の電圧を検出して溶接ちりのショートを検出しているからである。接続金具を溶接するときに発生する溶接ちりは、常にショート位置にあるとはかぎらない。溶接ちりがショート位置にない電池モジュールは、使用中に溶接ちりがショート位置に移動すると素電池の性能を著しく低下させ、また素電池の寿命を著しく短くする。このため、溶接ちりの発生した電池モジュールは、溶接ちりがショート位置になくても、不良モジュールとして選別する必要がある。本発明の電池モジュールの検査方法は、溶接ちりをショート位置に移動させて、溶接ちりが素電池をショートさせる電池モジュールを不良品として選別する。したがって、溶接ちりがショート位置にない電池モジュールであっても、溶接ちりを速やかにショート位置に移動させて不良モジュールとして識別できる。
【0017】
さらに、本発明の請求項7、請求項10及び請求項11の電池モジュールは、接続金具を溶接する時に発生する溶接ちりを速やかにショート位置に移動させて、不良モジュールとして識別できる特長がある。請求項7の電池モジュールは、素電池の接続金具との対向面に絶縁低摩擦層を設けているので、溶接ちりの移動をスムーズにして、速やかにショート位置に移動できる。請求項10の電池モジュールは、接続金具の筒部に、素電池の間に溶接ちりを移動する空気を強制送風する送風開口を設けているので、この送風開口から素電池間に強制送風して、溶接ちりを速やかにショート位置に移動できる。請求項11の電池モジュールは、素電池の短絡を防止する絶縁キャップの筒部に、素電池の間に溶接ちりを移動する空気を強制送風する送風開口を設けているので、この送風開口から素電池間に強制送風して、溶接ちりを速やかにショート位置に移動できる。
【0018】
さらに、本発明の請求項8と請求項9の電池モジュールは、接続金具を溶接する時に発生する溶接ちりによる素電池のショートを有効に防止できる特長がある。請求項8の電池モジュールは、接続金具で接続している素電池の対向面に絶縁接着層を設けているので、発生した溶接ちりをこの絶縁接着層に付着させて溶接ちりの移動を阻止して素電池のショートを有効に防止する。また、請求項9の電池モジュールは、封口板と外装缶との境界を絶縁塗膜で被覆しているので、この部分における溶接ちりの短絡を有効に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための電池モジュールとこの電池モジュールの検査方法を例示するものであって、本発明は電池モジュールと検査方法を以下に特定しない。
【0020】
さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0021】
図4に示す電池モジュール50は、複数の素電池10を直列に接続している。さらに電池モジュール50は、素電池10を直線状に連結している。この構造の電池モジュール50は、主としてハイブリッドカーや電気自動車、あるいは燃料電池車等のように、車両を走行させるモーターを駆動する電源として使用される。ただ、本発明の電池モジュールは、電動車両以外の用途であって、大出力が要求される用途にも使用できる。図の電池モジュール50は、素電池10を円筒型電池とする。ただし、電池モジュールは、素電池を角型電池として、これを直列に、直線状に連結することもできる。
【0022】
電池モジュール50は、図5に示すように、同一平面に平行に並べてケース70に収納される。横に並べている電池モジュール50は、互いに直列に接続されて出力電圧を高くしている。電池モジュール50は、その両端をケース70に固定している。この電池モジュール50は、ケース70に連結する端子60を、両端の電池端面から突出して固定している。図の電池モジュール50は、電池端面に垂直に端子60を固定している。端子60は、下ケース71の定位置に嵌入されるバスバー72にネジ止めして固定される。バスバー72は、隣接する電池モジュールを互いに連結すると共に、電池モジュールを直列に電気接続する。バスバー72と端子60は、下ケース71と上ケース(図示せず)に挟着されて、定位置に固定される。
【0023】
素電池10は、ニッケル−水素電池、リチウムイオン二次電池、ニッケル−カドミウム電池等の充電できる全ての電池を使用することができる。ただ、電動車両用の電池モジュールに使用される二次電池には、ニッケル−水素電池が適している。体積と重量に対する出力が大きくて、優れた大電流特性かつ安全性が高いという性能を有するからである。
【0024】
図6と図7の断面図に示す素電池10は、外装缶11の開口部を封口板12で気密に密閉している。外装缶11と封口板12は、鉄、鉄合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属板である。外装缶11は、金属板を底を閉塞している筒状にプレス成形して製作される。封口板12は、中央に凸部電極13を設けている。外装缶11の内部には、電極(図示せず)を内蔵している。さらに、電解液も充填している。外装缶11は、開口部の端部をかしめ加工して封口板12を気密に固定している。封口板12は、ガスケット14を介して外装缶11のかしめ部に挟着されて気密に固定される。ガスケット14は絶縁材のゴム状弾性体で、封口板12と外装缶11とを絶縁すると共に、封口板12と外装缶11との隙間を気密に閉塞する。この構造の素電池10は、封口板12をかしめて挟着するために、封口板12を設けている端部に、周囲に沿って溝部15が設けられる。さらに、封口板12の周縁にはカシメ凸条16が設けられる。この素電池10は、封口板12を第1の電極として、外装缶11を第2の電極としている。ニッケル−水素電池は、封口板12からなる第1の電極を正極として、外装缶11からなる第2の電極を負極としている。ただし、素電池は、第1の電極を負極とし、第2の電極を正極とすることもできる。
【0025】
図4ないし図7の電池モジュール50は、複数の素電池10を直線状に連結して、直列に接続している。この電池モジュール50は、直線状に連結している素電池10の対向する端面の間に、素電池10を電気接続する接続金具20を配設している。さらに、電池モジュール50は、電池端面の外周縁と接続金具20との間に絶縁キャップ30を配設している。
【0026】
接続金具20は、磁気的な作用で吸引される磁性金属をプレス成形して製作される。接続金具20は、鉄板や鉄合金である下地金属板の両面に金属メッキ層を設けている。金属メッキ層は、導電性に優れた電気抵抗の小さい導電メッキ層と、この導電メッキ層の表面に積層している溶接に適した抵抗メッキ層とからなる。導電メッキ層は、銅や銀、あるいはこれ等の合金であって、下地金属板と抵抗メッキ層よりも電気抵抗の小さいメッキ層である。抵抗メッキ層は、ニッケルやクローム、あるいはこれらの合金であって、導電メッキ層よりも電気抵抗が大きいメッキ層である。この接続金具20は、抵抗メッキ層で発熱しやすく、電池端面に速やかに溶接される。また導電メッキ層によって電気抵抗が小さく、素電池10を低抵抗な状態で直列に接続できる。
【0027】
接続金具20は、対向して配設される隣接する素電池10の電池端面に溶接して接続されて、素電池10を直列に電気接続する。図8と図9の接続金具20は、金属板を中心孔21のあるリング状に成形している。図8の接続金具20は、素電池10の外装缶11の端部を挿入して電気接続する筒部28と、この筒部28の内側にあって、素電池10の封口板12に溶接しているプレート部27を有する。筒部28は、第2の電極である外装缶11の外周面に溶接させる溶接凸部22を内面に突出して設けている。プレート部27は、第1の電極である電池端面の封口板12に溶接される複数の溶接凸部22を、図において下面に突出して設けている。図9の接続金具20は、両面に突出して電池端面に溶接される複数の溶接凸部22を設けている。両面に突出している溶接凸部22は、対向する電池端面の第1の電極と第2の電極に溶接されて、隣接して配設している素電池10を直列に接続する。
【0028】
接続金具20は、中心孔21を設けて、ここに凸部電極13を配設している。接続金具は、中心孔を開口することなく、凸部電極を案内する部分を突出させる形状とすることもできる。接続金具20は、電池端面に設けているカシメ凸条16の内形よりも外形を大きくしている。図6と図7の接続金具20は、素電池10の外形にほぼ等しい外形としている。
【0029】
図8と図9の接続金具20は、内周部23と外周部24とに段差のある形状に、金属板をプレス成形している。ただし、図8の接続金具20は、プレート部27を段差のある形状にプレス成形している。内周部23は、封口板12の表面に接近する位置に配設され、外周部24は絶縁キャップ30の表面で外装缶11の底面に接近する位置に配設される。図9の接続金具20は、内周部23と外周部24に、各々溶接するために複数の溶接凸部22を設けている。内周部23の溶接凸部22は、封口板12の方向に突出して封口板12に溶接される。外周部24の溶接凸部22は、外装缶11の底面に向かって突出して外装缶11の底面の外周部に溶接される。図8の接続金具20は、プレート部27の内周部23の溶接凸部22と、筒部28の溶接凸部22とを対向する電池に溶接し、図9の接続金具20は、内周部23と外周部24の溶接凸部22を、対向する素電池10に溶接して、素電池10を直列に接続する。
【0030】
絶縁キャップ30は、図6と図7に示すように、プラスチックや合成ゴム等の絶縁材をリング状に成形したものである。素電池10は、封口板12を第1の電極、外装缶11を第2の電極としているので、封口板12に接続している接続金具20が外装缶11の一部であるカシメ凸条16に接触するとショートする。封口板12と外装缶11とを絶縁するために、封口板12に接続している接続金具20と、外装缶11のカシメ凸条16との間に絶縁キャップ30を配設して絶縁している。図の絶縁キャップ30は、封口板12に接続している接続金具20と外装缶11の一部であるカシメ凸条16とを絶縁している絶縁リング部32と、この絶縁リング部32の外周に連結するように成形している筒部31とを備える。プラスチック製の絶縁キャップ30は、筒部31と絶縁リング部32からなる全体を一体的に成形できるので、絶縁リング部32と筒部31を別々に製作して連結する必要がない。
【0031】
絶縁キャップ30は、隣接する素電池10の間に配設される。絶縁キャップ30は、接続金具20の両面を対向する電池端面に溶接するために貫通孔33を設けている。貫通孔33は、絶縁リング部32に開口される。さらに、図の絶縁キャップ30は、絶縁リング部32の貫通孔33の内周面を接続金具20の段差部25の外周面に当接させて接続金具20を所定の位置に配置している。さらに、図6と図7の絶縁キャップ30は、カシメ凸条16の内面を被覆するリング凸条35を絶縁リング部32の内周縁に一体成形して設けている。リング凸条35は、カシメ凸条16の内側に嵌入される形状である。この絶縁キャップ30は、リング凸条35をカシメ凸条16の内側に嵌入して定位置に配設されて、接続金具20とカシメ凸条16とを絶縁する。
【0032】
筒部31は、素電池10の外装缶11の端部を隙間なく挿入できる筒状に成形される。円筒型電池の素電池10を挿入する筒部31は円筒形で、その内径を円筒型電池の外径にほぼ等しく、正確には内径を円筒型電池の外径よりもわずかに小さくする。わずかに小さい円筒状の筒部31は、素電池10を挿入するとわずかに伸びて、素電池10の外装缶11にぴったりと隙間なく密着する。また、素電池10の外装缶11は、製造工程によって外径にわずかなバラツキがある。規定の寸法よりもわずかに小さく成形している筒部31は、外径にバラツキのある外装缶、とくに細い外装缶の素電池を隙間なく挿入できる。筒部31が弾性的に伸びて、外装缶の太さのバラツキを吸収するからである。
【0033】
溶接ちりは、接続金具20と封口板12との間に発生する。接続金具20が封口板12に溶接されるからである。ここに発生する溶接ちりは、外周方向に移動して、かしめ部で封口板12と外装缶11とをショートさせる。図10に示す電池モジュール50は、溶接ちりAをスムーズに移動させて、速やかに溶接ちりAで封口板12と外装缶11とをショートさせる。溶接ちりAは、接続金具20と封口板12との間を移動する。この隙間を溶接ちりAがスムーズに移動するように、素電池10は、接続金具20との対向面に絶縁低摩擦層17を設けている。図の電池モジュール50は、接続金具20との対向面が封口板12となるので、封口板12の表面に絶縁低摩擦層17を設けている。絶縁低摩擦層17は、フッ素樹脂やポリエチレン等のプラスチックシートを封口板12の表面に接着して設けている。絶縁低摩擦層17は、接続金具20の溶接凸部22よりも外側に設けている。溶接凸部22を封口板12に溶接する部分に絶縁低摩擦層17があると、これが電流を遮断して、接続金具20を確実に封口板12に溶接できなくなるからである。この電池モジュール50は、溶接ちりAを絶縁低摩擦層17でスムーズに外周に向かって移動できる。さらに、図示しないが、電池モジュールは、接続金具の封口板との対向面にも絶縁低摩擦層を設けて、溶接ちりを接続金具と封口板との間でよりスムーズに移動できる。このため、溶接ちりを速やかに封口板と外装缶との間に移動してショートでき、不良電池モジュールを速やかに選別できる。
【0034】
電池モジュールは、溶接ちりの移動を阻止して、溶接ちりによるショートを防止することもできる。この電池モジュール50は、図11に示すように、素電池10の接続金具20との対向面となる封口板12の表面に、溶接ちりAを付着して移動を阻止する絶縁接着層18を設けている。絶縁接着層18は、粘着層、あるいは溶接後に一定の時間経過すると硬化する層で、接続金具20と封口板12との間に発生する溶接ちりAを付着して移動しないようにする。溶接ちりAが移動しない電池モジュール50は、溶接ちりAによるショートを阻止できるので、溶接ちりが発生しても、電池モジュールが不良とならない。
【0035】
さらに、図12の電池モジュール50は、接続金具20で接続している素電池10の対向面であって、封口板12と外装缶11との境界を絶縁塗膜19で被覆して溶接ちりAによる短絡を防止している。絶縁被膜は、エポキシ塗料やウレタン塗料等の合成樹脂塗料を塗布して設けることができる。この電池モジュール50は、封口板12と外装缶11との間を絶縁塗膜19で絶縁するので、溶接ちりAによる素電池10のショートを防止できる。このため、溶接ちりが発生して電池モジュールが不良となるのを阻止できる。
【0036】
本発明の電池モジュールの検査方法は、溶接ちりをショート位置に移動させて、溶接ちりが素電池10をショートさせる電池モジュールを不良品として選別する。図6の電池モジュール50は、溶接ちりが封口板12と外装缶11のかしめ部とをショートして、素電池10をショートさせる。溶接ちりが発生した電池モジュールを速やかに選別するには、発生した溶接ちりが素電池10をショートすることが大切である。発生した溶接ちりがショート位置に移動すると、素電池10はショートされる。素電池10がショートされると、素電池10はショート電流で放電されて電圧が低下する。したがって、各々の素電池10の電圧を検出すると、ショートしている素電池10の電圧が他のものよりも低くなる。このため、いずれかの素電池10の電圧が低下した電池モジュールは、溶接ちりによる不良電池モジュールと識別できる。
【0037】
接続金具20を溶接するときに発生する溶接ちりは、常にショート位置にあるとはかぎらない。溶接ちりがショート位置にない電池モジュールは正常に動作する。ただ、この電池モジュールが、たとえば車両用の電源装置等に使用されると、車両の振動等の影響で、使用している時に溶接ちりがショート位置に移動することがある。溶接ちりがショート位置に移動すると、素電池10の性能を著しく低下させ、また素電池10の寿命を著しく短くする。このため、溶接ちりの発生した電池モジュールは、溶接ちりがショート位置になくても、不良モジュールとして選別する必要がある。ただ、溶接ちりがショート位置にないと、不良モジュールとして識別できない。このため、溶接ちりの発生した電池モジュールを不良モジュールとして選別するには、発生した溶接ちりを速やかにショート位置に移動させることが大切である。
【0038】
以下、溶接ちりを速やかにショート位置に移動させる方法を詳述する。
接続金具20に、磁気的な作用で吸引される磁性金属、たとえば鉄や鉄合金を使用する。磁性金属の接続金具20から分離した溶接ちりは、磁気に吸引される。このため、図13に示すように、電池モジュール50に磁界を作用させて、接続金具20を溶接する時に発生する溶接ちりを磁気的吸着力で移動させる。図の方法は、素電池10の境界に外部から磁石40を接近させる。磁石40は、永久磁石または電磁石である。磁石40は、素電池10の境界で発生した溶接ちりを吸引して外周方向に移動させる。外周方向に移動される溶接ちりは、封口板12と外装缶11のかしめ部との境界に移動して、封口板12と外装缶11とをショートさせる位置に移動する。磁石40で溶接ちりをショート位置に移動させた後、各々の素電池10の電圧を検出し、いずれかの素電池10の電圧が低下していると、不良モジュールとして選別する。
【0039】
接続金具20は、充電していない素電池に溶接される。この状態の電池モジュールは、ショート位置に移動した溶接ちりが残容量の少ない素電池をショートする。溶接ちりが素電池10をショートする状態は、一般的に「軽ショート」と呼ばれるように、たとえば数mA〜数十mAのオーダーの小さい電流で素電池10をショートする。小さいショート電流は、素電池10の電圧低下を少なくする。ただ、充電していない素電池は、残容量が小さいので電圧が低下しやすく、溶接ちりのショートを速やかに検出できる。したがって、溶接ちりを強制的にショート位置に移動させて、素電池の電圧検出して不良モジュールを識別する方法は、たとえば素電池の残容量を30%以下、好ましくは20%以下、さらに好ましくは10%以下、最適には全く充電しない状態とする。
【0040】
各々の素電池の電圧を検出して、不良モジュールを識別する方法は、検出した素電池の電圧を他の素電池の電圧に比較して、特定の素電池の電圧が他の素電池の電圧よりも設定電圧以上に低いと不良モジュールと判別する。また、各々の素電池の電圧が、基準電圧よりも低いと、不良モジュールと識別する。たとえば、素電池の電圧が他の素電池の電圧よりも数mV〜数十mV以上低いと、不良モジュールと判別する。
【0041】
溶接ちりは、電池モジュールを強制的に振動させて、ショート位置に移動させることもできる。図14ないし図16は、電池モジュールに振動を与えて、溶接ちりをショート位置に移動させる。図14は、ローラー41を矢印で示す方向に回転させて、電池モジュール50を、ローラー41を越えるときに上下に振動させながら移送する。図15は、ローラー41の表面に多数の凸起42を設けて、さらに効果的に電池モジュール50を振動させる。図16は、電池モジュール50の素電池10の間に超音波振動を加えて、超音波振動で溶接ちりをショート位置に移動させる。超音波振動は、溶接ちりを移動しやすい状態として、溶接ちりを落下させてショート位置に移動させる。図の方法は、素電池10の間の空気に超音波振動を加え、この空気振動で溶接ちりを超音波振動させる。図示しないが、電池モジュールを超音波振動させて、溶接ちりをショート位置に移動させることもできる。この方法は、超音波ホーンの先端を電池モジュールに接触させて、電池モジュールを超音波振動させる。
【0042】
さらに、図17は、電池モジュール50を下り勾配の傾斜面43を転動させて、回転落下させて、溶接ちりをショート位置に移動させる。この方法は、電池モジュール50を回転させて、溶接ちりに衝撃を与えてショート位置に移動させる。とくに、傾斜面43から水平面44に移動する境界で、電池モジュール50に衝撃を加え、この衝撃で溶接ちりをショート位置に移動させる。この方法は、図示しないが、複数段の傾斜面に落下させて、さらに効果的に溶接ちりをショート位置に移動できる。
【0043】
さらに、図18は、電池モジュール50の素電池10の間に空気を強制送風し、この空気流でもって、溶接ちりをショート位置に移動させる。図の方法は、素電池10の間で外装缶11のかしめ部と絶縁キャップ30との間に注射針のように吸入管45を挿入し、この吸入管45で空気を吸入して、溶接ちりをショート位置に移動させる。図の電池モジュール50は、素電池10の間に吸入管を挿入するために、接続金具20と絶縁キャップ30に送風開口29、39を開口している。図に示す接続金具20は、筒部28に送風開口29を設けており、この送風開口29から素電池10の間に空気を強制送風して溶接ちりを移動させるようにしている。さらに、絶縁キャップ30は、筒部31に送風開口39設けており、この送風開口39から素電池10の間に空気を強制送風して溶接ちりを移動させるようにしている。図の電池モジュール50は、筒部28に設ける送風開口29と絶縁キャップ30に設ける送風開口39とを、図19に示すように貫通孔としている。ただ、送風開口29、39は、図20に示すように、筒部28、31を切欠して開口することもできる。
【0044】
このように、素電池10の間に空気を強制送風し、この空気流でもって溶接ちりを移動する方法は、吸入管45が接続金具20と封口板12との間の空気を吸入して、ここに発生する溶接ちりを空気流でショート位置に移動させる。ただし、図示しないが、素電池の間に空気を吹き込み、この空気流で溶接ちりをショート位置に移動させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本出願人が先に出願した電池モジュールの一例を示す断面図である。
【図2】本出願人が先に出願した電池モジュールの他の一例を示す断面図である。
【図3】図1に示す電池モジュールの素電池が溶接ちりでショートする状態を示す断面図である。
【図4】本発明の一実施例にかかる電池モジュールの側面図である。
【図5】図4に示す電池モジュールをケースに収納する状態を示す斜視図である。
【図6】図4に示す電池モジュールの連結構造を示す拡大断面図である。
【図7】本発明の他の実施例にかかる電池モジュールの連結構造を示す拡大断面図である。
【図8】図6に示す電池モジュールの接続金具を示す斜視図である。
【図9】図7に示す電池モジュールの接続金具を示す斜視図である。
【図10】本発明の他の実施例にかかる電池モジュールの連結構造を示す拡大断面図である。
【図11】本発明の他の実施例にかかる電池モジュールの連結構造を示す拡大断面図である。
【図12】本発明の他の実施例にかかる電池モジュールの連結構造を示す拡大断面図である。
【図13】溶接ちりをショート位置に移動させる方法の一例を示す平面図である。
【図14】溶接ちりをショート位置に移動させる方法の他の一例を示す斜視図である。
【図15】溶接ちりをショート位置に移動させる方法の他の一例を示す斜視図である。
【図16】溶接ちりをショート位置に移動させる方法の他の一例を示す平面図である。
【図17】溶接ちりをショート位置に移動させる方法の他の一例を示す斜視図である。
【図18】溶接ちりをショート位置に移動させる方法の他の一例を示す拡大断面図である。
【図19】図18に示す電池モジュールの分解斜視図である。
【図20】本発明の他の実施例にかかる電池モジュールの分解斜視図である。
【符号の説明】
【0046】
10…素電池
11…外装缶
12…封口板
13…凸部電極
14…ガスケット
15…溝部
16…カシメ凸条
17…絶縁低摩擦層
18…絶縁接着層
19…絶縁塗膜
20…接続金具
21…中心孔
22…溶接凸部
23…内周部
24…外周部
25…段差部
27…プレート部
28…筒部
29…送風開口
30…絶縁キャップ
31…筒部
32…絶縁リング部
33…貫通孔
35…リング凸条
39…送風開口
40…磁石
41…ローラー
42…凸起
43…傾斜面
44…水平面
45…吸入管
50…電池モジュール
60…端子
70…ケース
71…下ケース
72…バスバー
A…溶接ちり

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の素電池(10)を電池間の接続金具(20)に溶接して電気接続している電池モジュールの検査方法であって、
接続金具(20)に、磁気的な作用で吸引される磁性金属を使用すると共に、電池モジュール(50)に磁界を作用させて、接続金具(20)を溶接する時に発生する溶接ちり(A)を磁気的吸着力で移動させ、素電池(10)の電圧を検出して溶接ちり(A)のショートを検出する電池モジュールの検査方法。
【請求項2】
複数の素電池(10)を電池間の接続金具(20)に溶接して電気接続している電池モジュールの検査方法であって、
電池モジュール(50)を強制的に振動させて、接続金具(20)を溶接する時に発生する溶接ちり(A)を移動し、素電池(10)の電圧を検出して溶接ちり(A)のショートを検出する電池モジュールの検査方法。
【請求項3】
電池モジュール(50)を複数のローラー(41)の上に移動させて強制的に振動させる請求項2に記載される電池モジュールの検査方法。
【請求項4】
電池モジュール(50)を傾斜面(43)に落下させて、強制的に振動させる請求項2に記載される電池モジュールの検査方法。
【請求項5】
複数の素電池(10)を電池間の接続金具(20)に溶接して電気接続している電池モジュールの検査方法であって、
電池モジュール(50)を超音波振動し、あるいは素電池(10)の間に超音波振動を加えて、超音波振動で接続金具(20)を溶接する時に発生する溶接ちり(A)を移動させ、素電池(10)の電圧を検出して溶接ちり(A)のショートを検出する電池モジュールの検査方法。
【請求項6】
複数の素電池(10)を電池間の接続金具(20)に溶接して電気接続している電池モジュールの検査方法であって、
電池モジュール(50)の素電池(10)の間に空気を強制送風し、この空気流でもって、接続金具(20)を溶接する時に発生する溶接ちり(A)を移動させ、素電池(10)の電圧を検出して溶接ちり(A)のショートを検出する電池モジュールの検査方法。
【請求項7】
複数の素電池(10)の間に接続金具(20)を配設し、この接続金具(20)を素電池(10)に溶接して電気接続している電池モジュールであって、
素電池(10)の接続金具(20)との対向面に、溶接ちり(A)の移動をスムーズにする絶縁低摩擦層(17)を設けている電池モジュール。
【請求項8】
複数の素電池(10)の間に接続金具(20)を配設し、この接続金具(20)を素電池(10)に溶接して電気接続している電池モジュールであって、
接続金具(20)で接続している素電池(10)の対向面に、溶接ちり(A)を付着して移動を阻止する絶縁接着層(18)を設けている電池モジュール。
【請求項9】
複数の素電池(10)の間に接続金具(20)を配設し、この接続金具(20)を素電池(10)に溶接して電気接続している電池モジュールであって、
接続金具(20)で接続している素電池(10)の対向面であって、封口板(12)と外装缶(11)との境界を絶縁塗膜(19)で被覆して溶接ちり(A)の短絡を防止するようにしてなる電池モジュール。
【請求項10】
複数の素電池(10)の間に接続金具(20)を配設し、この接続金具(20)を素電池(10)に溶接して電気接続している電池モジュールであって、
接続金具(20)が、素電池(10)の外装缶(11)の端部を挿入して電気接続している筒部(28)と、この筒部(28)の内側にあって、素電池(10)の封口板(12)に溶接しているプレート部(27)を有し、
筒部(28)に、素電池(10)の間に、溶接ちり(A)を移動する空気を強制送風する送風開口(29)を設けており、この送風開口(29)から素電池(10)間に強制送風して、溶接ちり(A)を素電池(10)の間で移動できるようにしてなる電池モジュール。
【請求項11】
複数の素電池(10)の間に接続金具(20)を配設し、この接続金具(20)を素電池(10)に溶接して電気接続している電池モジュールであって、
素電池(10)の短絡を防止する絶縁キャップ(30)を素電池(10)の端面に備えており、この絶縁キャップ(30)が、素電池(10)の外装缶(11)の端部を挿入する筒部(31)と、この筒部(31)の内側にあって、接続金具(20)と外装缶(11)とを絶縁している絶縁リング部(32)を有し、
筒部(31)に、素電池(10)の間に、溶接ちり(A)を移動する空気を強制送風する送風開口(39)を設けており、この送風開口(39)から素電池(10)間に強制送風して、溶接ちり(A)を素電池(10)の間で移動できるようにしてなる電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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