説明

電池モジュール搭載用構造体

【課題】本発明は簡単な構造でありながら水の浸入や結露による電池モジュールの短絡を防止した電池モジュール搭載用構造体の提供を目的とする。
【解決手段】車両に電池モジュールを搭載するための構造体であって、当該構造体は内部に固定した電池モジュールの上部を覆う上パネル体を有し、当該上パネル体は複数のパネルに分割されるとともに隣り合うパネルは相互に重なり部を有し、一方のパネルの重なり部に排水のための凹部溝を形成し、他方のパネルの重なり部は前記一方のパネルの凹部溝内に垂下する垂下部を形成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電池モジュールを車両に搭載するための構造体に関し、特に水の浸入や結露による電池モジュールの短絡を防止する構造に係る。
【背景技術】
【0002】
電気自動車や、モーターとエンジンとを組み合せたハイブリッド自動車は駆動用電源として電池モジュールを搭載する必要がある。
この種の車両に搭載される電池モジュールは繰り返し充放電が可能なニッケル−カドミウム電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池等の二次電池モジュールが例として挙げられる。
走行用モーターの駆動電源として使用される電池モジュールは、一般的に200V以上の高電圧になっているため、カバー類で覆った構造体の内部に電池モジュールが収納されている。
特許文献1は電池モジュールの周囲をカバープレートで覆い、このカバープレートの見切り部にパッキンを取り付けることで防水を図っている。
しかし、パッキンによるシール構造にあってはパッキンを配設するためのスペースや構造が必要であるのみならず、パッキンの組付けに工数を要し、材料費の観点からもコストアップの要因になる。
また、電池モジュールの短絡を防止するには外部からの水の浸入を抑えるだけでなく、内部の結露対策も必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−18625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は簡単な構造でありながら水の浸入や結露による電池モジュールの短絡を防止した電池モジュール搭載用構造体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る電池モジュール搭載用構造体は、車両に電池モジュールを搭載するための構造体であって、当該構造体は内部に固定した電池モジュールの上部を覆う上パネル体を有し、当該上パネル体は複数のパネルに分割されるとともに隣り合うパネルは相互に重なり部を有し、一方のパネルの重なり部に排水のための凹部溝を形成し、他方のパネルの重なり部は前記一方のパネルの凹部溝内に垂下する垂下部を形成したことを特徴とする。
ここで上パネル体は電池モジュールの上部を保護するものであり、複数のパネルを端部が重なり合うように配置したものであれば、上パネル体の周囲を枠体に取り付けてもよい。
電池モジュールとは複数の発電要素を積層したもののみならず、個々の電池を複数個パーケージングしたもの等、車両の駆動電源等に用いられる電池の集合体をいう。
【0006】
ここで凹部溝に流れ込んだ水が排水されやすいように、上パネル体は前記凹部溝が排水方向に沿って下方に傾斜しているのが好ましい。
また、複数の凹部溝の排水側端末を排水用フレームにて連結してもよい。
【0007】
本発明で上パネル体から内部に水が浸入するのを防ぐのみならず、内部に発生した結露水による短絡を防止するには構造体は内部に電池モジュールを載置及び固定するフロアパネル体を有し、当該フロアパネル体は電池モジュールに発生した結露水を流し込むための凹部を有するようにするのが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明では相互に重なり合うように分割したパネルの一方の重なり部に排水のための凹部溝を形成し、他方のパネルの重なり部にこの一方の凹部溝内に垂下する垂下部を形成したので、従来のようにパッキン等のシール材を用いることなく、パネル同士の端部を相互に重なり合せるだけで止水できる。
また、凹部溝に長手方向の傾斜を設けると水の排水を促進、さらに分割したパネルの各凹部溝を別の排水用フレームに連結するとさらに電池モジュールを収納した構造体の内部に水が浸入するのを抑えることができる。
【0009】
また、電池モジュールを載置及び固定したフロアパネル体に凹部を形成すると内部に結露水が発生してもこの凹部に流れ込み、電池モジュールの短絡を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)は構造体の斜視図を示し、(b)はA−A線端面図、(c)はB−B線端面図を示す。
【図2】(a)はA−A線端面の部分拡大図を示し、(b)はB−B線端面の部分拡大図を示す。
【図3】(a),(b)は断面斜視図を示す。
【図4】(a)は上パネル体の構造例、(b)はフロアパネル体の構造例を示す。
【図5】(a)は上枠体にフロント縦フレームを連結した状態、(b)は下枠体にリア縦フレームを連結した状態を示す。
【図6】カバー類の構造例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る構造体は図1に示すように、上枠体20と下枠体10をフロント縦フレーム30及びリ縦フレーム40にて連結した略箱型の構造を有し、内部に電池モジュール1が収納されている。
図1(a)では記載を省略したが、(b)及び(c)に二点鎖線で示すようにサイドカバー70、フロントカバー31及びリアカバー41にて側面周囲を覆ってある。
これらのカバー類の例を図6に示し、構造体のサイド側面、フロント側面、リア側面にそれぞれ取り付ける。
【0012】
上枠体20は、構造体を車体に固定した際に車両の前方側に位置する上枠フロントフレーム21と後方側に位置する上枠リアフレーム22との両端部付近を左右一対の上枠サイドフレーム23,24にて連結した枠体になっていて、枠の内側に上パネル体60を配置した例になっている。
本実施例は図5に示すように上枠フロントフレーム21にフロント縦フレーム30が予め連結した例となっている。
上枠体20の枠内に配設した上パネル体60は、複数のパネル61,62,63にて分割されている。
その拡大図を図2〜4に示す。
中央のパネル61の両側に端部が部分的に重なり合うようにパネル62を配置し、その外側に部分的に重なるようにパネル63を配設し、このパネル63の外側端部はそれぞれ上枠サイドフレーム23,24と部分的に重なりあっている。
本実施例では両側の上枠サイドフレーム23,24もパネル状に形成し、パネルと上枠サイドフレームとが一体的に上パネル体60を形成した例になっているが、上枠サイドフレームは枠を形成するためだけのフレーム形状でもよい。
上枠サイドフレーム23,24、パネル61,62,63は、それぞれアルミニウム合金の押出形材を用いて製作してあり、剛性向上を目的に中空断面形状にした例になっている。
なお、分割するパネルの数や幅に制限はない。
重なり部の構造を例えば図2(a)にて説明すると、上枠サイドフレーム23から構造体の幅方向内側に重なり部23aを張り出し、この重なり部の上面に排水のための凹部溝23bを形成する。
これに対して、パネル63から外側に張り出した重なり部63aの端部を下方に折り曲げた垂下部63bを形成し、上記凹部溝23b内に垂下させてある。
パネル63の他方の端部は下面側から内側方向に張り出した重なり部63cを形成し、この重なり部63cの上面に突条部63dを形成することで凹部溝63eを形成した例になっている。
パネル62は途中に凹部溝62dを形成しつつ、重なり部62aを断面コ字形状に形成し、この断面コ字形状の一片を垂下部として凹部溝63eの内側に垂下させた例となっている。
本発明は重なり部の一方に凹部溝を有し、他方にこの凹部溝内に垂下する垂下部を有する構造であれば本実施例に限定されるものではない。
重なり部の一方に凹部溝を有し、他方にこの凹部溝内に垂下する垂下部を設けたことで重なり部に複数の立ち上がり壁が形成され、重なり部の横方向からの水の浸入を効果的に抑える。
また、重なり形状として垂下部63bのように、凹部溝23bの側壁に沿って重なる場合でも、突条部63dのように、突条部の両側に空間ができるように重なり部62aと重なる場合でも良いが、突条部の両側に空間があると、毛細管現象による浸入を抑えることができる。
【0013】
上パネル体60は図2(b)に拡大図を示すように各パネルのフロント側下からリア側Rに向けて水が流れるようにリア側がフロント側よりも下方に位置されることで凹部溝に傾斜を設け、この凹部溝の排水側溝部を上枠リアフレーム22に形成した断面コ字形状の排水用フレーム22aにて連結してある。
これにより排水用フレーム22aの両側端部から構造体の外側に水が落下する。
なお、凹部溝に長手方向の傾斜があれば上パネル体全体が傾斜している必要はない。
【0014】
下枠体10は車両の前方側に位置する下枠フロントフレーム11と車両の後方側に位置する下枠リアフレーム12との両端部付近を左右一対の下枠サイドフレーム13,14にて連結した枠体になっている。
本実施例では下枠フロントフレーム11、下枠リアフレーム12及び下枠サイドフレーム13,14がいずれもアルミニウム合金の中空断面形状から成る押出形材を用いて製作されている。
下枠体の枠内には、フロアパネル体50が配置されている。
フロアパネル体50は電池モジュールの底部を支える載置パネル52と隣り合う電池モジュールの間に配置したフロアフレーム51とからなり、載置パネル52の幅方向両端部52aはフロアフレーム51の端部51aと連結されている。
載置パネル52及びフロアフレーム51はアルミニウム合金の押出形材を用いて製作されている。
図4(b)に示すように載置パネル52の上面には平面状の載置部52bを形成し、この載置部52bの上からピンPを立設し電池モジュールを固定する。
載置部52b,52bの間に凹部52cを形成することで、図2(a)に示すように電池モジュール1の底部に空間を形成したので結露水が発生してもこの凹部52cに流れ込むので電池モジュール1の短絡を防止する。
本実施例では図1,2に示すように、下枠フロントフレーム11の上面に連結する断面L字形状のパネル体30bの上端部と上枠フロントフレーム21とを側面視でアーチ形状のアーチ連結部30aで連結してある。
アーチ状連結部30aは複数の中リブを有する中空断面形状になっていて、下端側は対向する一対の連結リブを有し、この連結リブの間にパネル体30bの上端部を嵌合させ、溶接等にて連結する。
また、上枠フロントフレーム21も中空断面形状になっているとともに対向する一対の連結リブを形成し、その間にアーチ状連結部30aの上端を嵌合し、溶接等にて連結した例になっている。
隣り合うアーチ状連結部30aの間に形成された隙間からアクセスできるように高電圧部品2を配置してあり、メンテナンスが容易になっている。
【符号の説明】
【0015】
1 電池モジュール
10 下枠体
11 下枠フロントフレーム
12 下枠リアフレーム
13 下枠サイドフレーム
14 下枠サイドフレーム
20 上枠体
21 上枠フロントフレーム
22 上枠リアフレーム
22a 排水用クレーム
23 上枠サイドフレーム
24 上枠サイドフレーム
30 フロント縦フレーム
40 リア縦フレーム
50 フロアパネル体
60 上パネル体
61 パネル
62 パネル
62 パネル
100 構造体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に電池モジュールを搭載するための構造体であって、
当該構造体は内部に固定した電池モジュールの上部を覆う上パネル体を有し、
当該上パネル体は複数のパネルに分割されるとともに隣り合うパネルは相互に重なり部を有し、
一方のパネルの重なり部に排水のための凹部溝を形成し、他方のパネルの重なり部は前記一方のパネルの凹部溝内に垂下する垂下部を形成したことを特徴とする電池モジュール搭載用構造体。
【請求項2】
前記上パネル体は前記凹部溝が排水方向に沿って下方に傾斜していることを特徴とする請求項1記載の電池モジュール搭載用構造体。
【請求項3】
前記複数の凹部溝の排水側端末を排水用フレームにて連結したことを特徴とする請求項2記載の電池モジュール搭載用構造体。
【請求項4】
前記構造体は内部に電池モジュールを載置及び固定するフロアパネル体を有し、当該フロアパネル体は電池モジュールに発生した結露水を流し込むための凹部を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電池モジュール搭載用構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−89449(P2013−89449A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228730(P2011−228730)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000100791)アイシン軽金属株式会社 (137)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】