説明

電池モジュール

【課題】各単電池間の接続と、単電池の電圧検知とを少数の部品点数によって可能とする電池モジュールを提供する。
【解決手段】それぞれ正極及び負極の両電極ポスト13を有する複数個の単電池11と、エナメル線14からなり電極ポストのうち隣り合う単電池の異極の一対の電極ポスト間にわたって巻き付けられた後に電極ポストに溶接されることで異極の電極ポスト間を接続状態とする電極間接続導電線部15と、電極間接続導電線部を構成するエナメル線から連続して引き出された電圧検知用導電線部16とを備え、各単電池の正極及び負極の各電極ポストが複数本のエナメル線からなる複数個の電極間接続導線部によって直列接続され、かつ、複数本のエナメル線からなる複数本の電圧検知用導電線部によって各電極間接続導電線部の電位測定が可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個の単電池からなる電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば電気自動車やハイブリッド車両に搭載される動力用の電池モジュールは、一般に、バスバーを介して多数の単電池を直列接続して構成されている。
【0003】
近年、この種の電池モジュールでは、構成する単電池毎の端子電圧を測定し、より適切な充放電制御を達成することが試みられている。そのためには、各単電池の正負の端子に電圧検知線を接続する必要がある。
【0004】
そこで従来、電池モジュールの電圧検知線は、下記特許文献1記載のように、絶縁被覆電線の先端を皮剥ぎして芯線に丸型端子を加締接続し、その丸型端子を単電池の電極ポストに嵌合し、電極ポストにバスバーと共にナットで共締めする構造が採用されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−333343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の構造では、バスバーと電線と丸型端子との3種の部品を必要とするため、部品点数が多くなるという問題点があった。また、丸型端子を電線に繋いだ後に丸型端子とバスバーとを固定する構造では、配線作業に手間がかかるという問題もあった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、部品点数を減らすことが可能で、また、配線構造を簡略化することも可能な電池モジュールを提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電池モジュールは、それぞれ正極及び負極の両電極ポストを有する複数個の単電池と、導電線からなり前記電極ポストのうち隣り合う前記単電池の異極の一対の電極ポスト間にわたって巻き付けられた後に前記電極ポストに溶接されることで前記異極の電極ポスト間を接続状態とする電極間接続導電線部と、前記電極間接続導電線部を構成する前記導電線から連続して延出された電圧検知用導電線部とを備え、前記各単電池の正極及び負極の各電極ポストが複数本の前記導電線からなる複数個の前記電極間接続導線部によって直列接続され、かつ、前記複数本の導電線からなる複数本の前記電圧検知用導電線部によって前記各電極間接続導電線部の電位測定が可能となっているところに特徴を有する。
【0009】
この構造によれば、各単電池の電極ポストに導電線を巻きつけて電極ポストに溶接することにより電極間接続導電線部が構成され、これにより電極ポスト間を接続できるから、電極ポスト間を接続するバスバーを用いる必要がなくなる。
【0010】
また、上記電極間接続導電線部を構成する同じ導電線を利用して電圧検知用導電線部が構成されるから、その電圧検知用導電線部により電極ポストにおける電圧信号を外部に取り出すことができるようになる。
【0011】
なお、導電線をエナメル線とすれば、その溶接手法として超音波溶接、レーザー溶接、フュージング(熱カシメ)等を利用することができ、それらによれば、エナメル線の絶縁被覆を溶接部分において逐一剥がす手間が不要になるという利点がある。しかも、溶接部以外の部分においては絶縁被覆が残るから電圧検知用導電線部間の絶縁も確保され、更に、絶縁被覆電線を用いる場合に比べて線束を細くできるから、電池モジュールの一層の小型化も可能になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、従来構造と比べて部品点数を減らすことが可能となり、かつ、配線構造を簡略化させることも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態における電池モジュールを示す斜視図である。
【図2】第1実施形態における電極ポストにエナメル線を配線した状態の側面図である。
【図3】第1実施形態における電極ポストにエナメル線を配線した状態の平面図である。
【図4】第1実施形態における電極ポストにエナメル線を配線した状態の底面図である。
【図5】本発明の第2実施形態における電極ポストに装着前のエナメル線と単電池群の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態について図1ないし図4を参照して説明する。本実施形態の電池モジュール10は、複数個の単電池11を直列に接続して例えば電気自動車やハイブリッド自動車等の駆動用として構成したものである。
【0015】
各単電池11は、円柱状の本体部12内に図示しない電池要素を収容してなると共に、その本体部12の上下両端面には正負一対の電極ポスト13が突設されている。正負の各電極ポスト13は共に同一の構造である。
【0016】
図1に示すように、第1実施形態の電池モジュール10では、各列複数個の単電池11を同一ピッチで例えば2列に並べた配列をなしており、同一の列で隣り合う単電池11については異なる極性の電極ポスト13が交互に並んでいる。
【0017】
各単電池11はエナメル線14によって電気的に直列接続されている。図2に示すように、エナメル線14は、同一の列で隣り合う異なる極性の2本の電極ポスト13に渡って所定回数巻かれた後に、例えば超音波溶接により各電極ポスト13に溶着されている。この電極ポスト13間に巻回されて溶接されたエナメル線14によって、異極の一対の電極ポスト13間を接続状態とする電極間接続導電線部15が形成されている。
【0018】
電極ポスト13間に巻回する回数については、単電池11の電流容量とエナメル線14の導体断面積によって決定することができる。エナメル線14としては、例えば直径0.6mmの銅導体に14ミクロンのポアミドイミド系樹脂の絶縁被膜を形成したものを利用することができる。
【0019】
単電池11群の下面側においては、図2及び図4に示すように、同じ列で隣り合う2本の異極の電極ポスト13間毎に独立した電極間接続導電線部15が形成されている。
【0020】
一方、単電池11群の上面側においても、図3に示すように、下面側に対して1本分ずれながら同じ列で隣り合う2本の電極ポスト13間に同様に電極間接続導電線部15が形成され、上下両面の各電極間接続導電線部15によって全ての単電池11は互いに直列接続された状態にある。
【0021】
また、単電池11群の上面側では、さらに前記電極間接続導電線部15を形成して余されたエナメル線14が電極間接続導電線部15から連続して延びており、その部分が電圧検知用導電線部16となっている。電圧検知用導電線部16は単電池11群の上面側にのみ形成されているから、単電池11の2本分の直列回路毎に電圧検知用導電線部16が引き出された状態にある。
【0022】
これらの電圧検知用導電線部16は、2列に並ぶ単電池11群の1列毎に複数本を束ねてハーネス化されており、各ハーネス17は単電池11群の外側を長辺側の列に沿って配されている。各電圧検知用導電線部16の先端は図示しないECUに接続され、2本の単電池11の直列回路毎に電圧測定が可能となっている。
【0023】
なお、図3に示すように、単電池11群の上面側の端部においては異なる列に属する2本の電極ポスト13間に渡るようにして電極間接続導電線部15が設けられ、両列の単電池11群が直列接続されている。また、これとは反対側の端部には、エナメル線14を電極間接続導電線部15と同等回数だけ巻回して電極ポスト13に溶接されたリード線部18が設けられている。このリード線部18は、直列接続された単電池11群の両端部に位置して、単電池11群の正負の入出力端子を構成する。
【0024】
以上の構成によれば、エナメル線14を隣り合う2本の電極ポスト13に渡って巻き付けた後にエナメル線14を各電極ポスト13に溶接することにより、溶接されたエナメル線14によって電極ポスト13間を接続する電極間接続導電線部15が形成され、そのエナメル線14の余長部を引き出すだけで電圧検知用導電線部16が形成される。
【0025】
このように1本のエナメル線14によって、従来必要であったバスバー、バスバーを固定するナット、電圧検知用の電線、その電線の先端にカシメ付けて電極ポストにバスバーと共締めされる端子等の各部品が不要になり、構成部品点数を極めて少数にすることができる。
【0026】
しかも、組立作業としては、エナメル線14を巻回して電極ポスト13に溶接するだけであるから、バスバーや端子金具を電極ポストに嵌合させた後に電極ポスト毎にナット締めを行う必要があった従来の構造に比べて、組立の作業工数も少なくなる。
【0027】
また、特に第1実施形態ではエナメル線14を導電線として用いたため、エナメル線14を電極ポスト13に溶接する手法として、超音波溶接を利用することができる。これにより、エナメル線14の絶縁被覆を溶接部分で剥離する必要がなく、絶縁被覆が付着したままで溶接を行っても、絶縁被覆は超音波振動によって自ずと除去されて金属同士を溶着させることができる。
【0028】
従って、溶接された場所以外についてはエナメル線14の絶縁被覆を残すことができるから、電圧検知用導電線部16における絶縁性を保持することができる。これによって、電圧検知用導電線部16を複数本集結させてハーネス化することができ、電池モジュール10を小型化することができる。
【0029】
以上のように第1実施形態によれば、1本のエナメル線14を電極間接続導電線部15とそれに連なる電圧検知用導電線部16とに利用できるから、バスバーと端子金具と電線という3つの部品を1本のエナメル線14に置き換えることができ、部品点数を大幅に減少させることができる。また、エナメル線14を電極ポスト13間に巻きつけて溶接するだけで配線作業を行うことができるから配線構造を簡素化することもできる。
【0030】
<第2実施形態>
以下、本発明の第2実施形態について図5を参照して説明する。なお、前記第1実施形態と同一部分には同一符号を付して重複する説明を省略し、異なるところのみを説明する。
【0031】
前記第1実施形態では、エナメル線14を2本の電極ポスト13間に直接に巻回して溶接したが、この第2実施形態では、1本のエナメル線14によって、予め所定回数輪状に巻回した予備巻回部19と、その予備巻回部19に連なる余長部からなる電圧検知用導電線部16とが形成されている。これらのエナメル線14は複数本が、その電圧検知用導電線部16において束ねられてハーネス化されている。
【0032】
そして、予め所定の間隔に並べられた単電池11群のうち、同一の列で隣り合う異なる極性の2本の電極ポスト13に渡って上記予備巻回部19を嵌め込み、これを各電極ポスト13に超音波溶接する。各電極ポスト13に貼着された予備巻回部19によって電極間接続導電部14が形成される。
【0033】
この構造によっても、第1実施形態と同様な効果を奏する。その上、別工程によってエナメル線14に予備巻回部19を予め所定形状に形成しておくから、エナメル線14を電極ポスト13に直接に何重にも巻き付ける工程が必要なくなり、配線作業を一層簡素化することができる。
【0034】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0035】
(1)上記実施形態では、単電池11の形状を円柱状としたが、例えば多角形の柱状や断面が長円形や角型の単電池11であってもよい。
【0036】
(2)上記実施形態では、エナメル線14を使用したが、これに限らず被覆電線を使用してもよい。この場合には、電極ポスト13に巻回する部分については予め絶縁被覆を剥がしておき、その部分の芯線を電極ポスト13間に巻き付けた後に芯線を電極ポスト13に溶接すればよい。また、エナメル線14や絶縁電線を使用するに限らず、例えば銅の裸線を使用して電極ポスト13間に巻回して溶接し、余長部分に絶縁チューブを被せて束ねることで複数本の電圧検知用導電線部16としてもよい。
【0037】
(3)上記各実施形態では、超音波溶接によって導電線を電極ポスト13に溶接したが、これに限らず、レーザー溶接やヒュージング(熱カシメ)によって溶接してもよい。
【0038】
(4)上記各実施形態では直列に連なる2本の単電池11毎に電圧を検出できる構成としたが、例えば単電池11群の下面側において上面側と同様に電圧検知用導電線部16を有する接続構造とすれば、1本の単電池11毎に電圧を検出することができる。また、3本以上の単電池11毎に電圧を検知できる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0039】
10… 電池モジュール
11… 単電池
12… 本体部
13… 電極ポスト
14…エナメル線
15… 電極間接続導電線部
16… 電圧検知用導電線部
17… ハーネス
18…リード線部
19…予備巻回部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ正極及び負極の両電極ポストを有する複数個の単電池と、
導電線からなり前記電極ポストのうち隣り合う前記単電池の異極の一対の電極ポスト間にわたって巻き付けられた後に前記電極ポストに溶接されることで前記異極の電極ポスト間を接続状態とする電極間接続導電線部と、
前記電極間接続導電線部を構成する前記導電線から連続して延出された電圧検知用導電線部とを備え、前記各単電池の正極及び負極の各電極ポストが複数本の前記導電線からなる複数個の前記電極間接続導線部によって直列接続され、かつ、前記複数本の導電線からなる複数本の前記電圧検知用導電線部によって前記各電極間接続導電線部の電位測定が可能となっている電池モジュール。
【請求項2】
前記導電線はエナメル線であることを特徴とする請求項1記載の電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−251052(P2010−251052A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−97999(P2009−97999)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】