説明

電池及び非水電解液

【課題】高温及び高電圧に対する耐久性に優れる電池を提供する。
【解決手段】本発明は正極、負極、及び、非水電解液を備える電池であって、
前記非水電解液が、
(i)一般式(1):
Rf−SOF (1)
(式中、Rfは、エーテル結合を含んでいてもよい、炭素数1〜13の直鎖又は分岐の含フッ素アルキル基であり、二重結合を含んでもよい。)で表される化合物を含有することを特徴とする電池である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温及び高電圧に対する耐久性が要求される分野で好適に用いられる電池、及び、該電池に好適に使用できる非水電解液に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電気製品の軽量化、小型化にともない、高いエネルギー密度をもつリチウムイオン二次電池の開発が進められている。また、リチウムイオン二次電池の適用分野が拡大するにつれて電池特性の改善が要望されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、電池化学的特性に優れたリチウム二次電池を提供することを目的として、ベンゼンスルホニルフルオライドやp−トルエンスルホニルフルオライドを含むリチウム二次電池用電解液が開示されている。
【0004】
特許文献2には、高温においても安全で、電池特性の高い非水電解液二次電池を提供することを目的として、酢酸クロリドやエタン酸クロリド等のアルコールと反応する化合物を含む非水電解液を用いた二次電池が開示されている。
【0005】
特許文献3及び4には、ガス発生が抑制され、連続充電特性や高温保存特性を向上させるための添加物を検討しており、添加物としてメタンスルホニルフルオライドや(SOF)−C−(SOF)を用いた電解液が開示されている。
【0006】
特許文献5には、保存特性およびサイクル特性を向上させることを目的とした電解液として、CHOCOCFCFSOFで表されるスルホン化合物を含有し、溶媒として炭酸エチレン及び炭酸ジエチルを用いた電解液が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−359001号公報
【特許文献2】特開2002−21412号公報
【特許文献3】特開2006−49152号公報
【特許文献4】特開2006−49112号公報
【特許文献5】特開2008−146983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、電気自動車及びハイブリッド電気自動車等に用いられる電池には、より優れた高温及び高電圧に対する耐久性が要求されており、従来の電池の性能は充分とはいえなかった。
【0009】
本発明は、高温及び高電圧に対する耐久性に優れる電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記課題を解決するために種々の検討を重ねた結果、特定の化合物を含有する非水電解液を備える電池が、高温及び高電圧に対する耐久性に優れることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、正極、負極、及び、非水電解液を備える電池であって、前記非水電解液が、(i)一般式(1):
Rf−SOF (1)
(式中、Rfは、エーテル結合を含んでいてもよい、炭素数1〜13の直鎖又は分岐の含フッ素アルキル基であり、二重結合を含んでもよい。)で表される化合物、を含有することを特徴とする電池である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電池は、上記構成を有することによって、高温及び高電圧に対する耐久性に優れる。また、本発明の非水電解液を用いると、高温及び高電圧に対する耐久性に優れる電池とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、実施例及び比較例の電池特性試験で作製するラミネートセルの概略組立て斜視図である。
【図2】図2は、実施例及び比較例の電池特性試験で作製するラミネートセルの概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の電池は、正極、負極、及び、非水電解液を備える。
【0015】
非水電解液は、
(i)一般式(1):
Rf−SOF (1)
(式中、Rfは、エーテル結合を含んでいてもよい、炭素数1〜13の直鎖又は分岐の含フッ素アルキル基であり、二重結合を含んでもよい。)で表される化合物を含有する。
【0016】
従来、−SOFを有する化合物を添加した電解液は知られていたが、−SOFを有するだけでは、高温時の容量維持率、回復率等の高温耐久性、高電圧に対する耐久性が充分ではなかった。
本発明の電池は、非水電解液が、−SOF及び上記特定の含フッ素アルキル基の両方を有する化合物(i)を含むことによって、高温及び高電圧に対する耐久性が優れるものである。例えば、45℃以上の高温で使用することもできるし、60℃以上の高温でも良好なサイクル特性を示す。本発明はまた、上記構成の非水電解液でもある。
【0017】
化合物(i)として、具体的には、CF(CF−SOF(n=2〜10)、CF(CFO(CF(CF)CF−CF(CF)SOF(n=0〜4、m=1〜3)、CFCFHO−(CF(CF)CFO)−CFCFSOF(n=0〜3)、CF=CFO−(CF(CF)CFO)−CFCFSOF(n=0〜3)、CFCF−(OCF−(OCFCF−SOF(n=0〜3、m=1〜8)、CFCFCF−(OCFCFCF−SOF(n=1〜8)、CHCFCF−(OCFCFCF−SOF(n=1〜8)等が挙げられる。
【0018】
非水電解液への溶解性の点からは、化合物(i)は、エーテル結合を有する化合物が好ましい。
【0019】
また、高温及び高電圧に対する耐久性をより向上させる観点から、Rfは、−SOFが直接結合した炭素に、フッ素原子又は含フッ素アルキル基を有する化合物が好ましい。
【0020】
例えば、化合物(i)としては、一般式(1−1):
Rf−CX−SOF (1−1)
(式中、Rfは、エーテル結合を含んでいてもよく、水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキル基であり、二重結合を含んでもよい。X及びXは、同一若しくは異なって、H、F、又は、炭素数1〜10の含フッ素アルキル基である。但し、X及びXの少なくともいずれかは、F又は炭素数1〜3の含フッ素アルキル基である。)で表される化合物であることがより好ましい。
【0021】
高温及び高電圧に対する耐久性をより向上させる観点から、Rfは、エーテル結合を含んでいてもよい、含フッ素アルキル基であることが好ましい。
より好ましくは、エーテル結合を含んでいてもよい、ハイドロフルオロアルキル基である。Rfの炭素数は、1〜10であることが好ましく、1〜8であることがより好ましい。なお、本明細書中で「エーテル結合」は、−O−で表される結合である。
【0022】
電解液との相溶性をより向上させる観点から、Rfは、エーテル結合を含んでもよいハイドロフルオロアルキル基であることが好ましい。また、Rfは、エーテル結合を含む、ハイドロフルオロアルキル基であることがより好ましい。
【0023】
電解液との相溶性をより向上させる観点から、Rfは、エーテル結合を含み、かつ末端の炭素−炭素結合が二重結合のパーフルオロアルキル基であることも好ましい。末端の炭素−炭素結合が二重結合のパーフルオロアルキル基は、例えば、CF=CFO(CF(CF)CFO)CF−(nは0〜3)で表される基のように、末端の炭素原子と末端の炭素原子に結合した炭素原子との結合が二重結合であるパーフルオロアルキル基である。
【0024】
高温及び高電圧に対する耐久性をより向上させる観点から、化合物(i)は、一般式(1−2):
Rf−CF−SOF (1−2)
(式中、Rfは、エーテル結合を含んでいてもよく、水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキル基であり、二重結合を含んでもよい。)で表される化合物、一般式(1−3):
Rf−CF(CF)−SOF (1−3)
(式中、Rfは、エーテル結合を含んでいてもよく、水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜11のアルキル基であり、二重結合を含んでもよい。)で表される化合物、及び、一般式(1−4):
Rf−CH(CF)−SOF (1−4)
(式中、Rfは、エーテル結合を含んでいてもよく、水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜11のアルキル基であり、二重結合を含んでもよい。)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
より好ましくは、一般式(1−2)で表される化合物である。Rf、Rf及びRfは、それぞれ、エーテル結合を含んでいてもよく、二重結合を含んでもよい、含フッ素アルキル基であることが好ましい。Rf、Rf及びRfの炭素数は、それぞれ、1〜8であることが好ましく、1〜5であることがより好ましい。
【0025】
Rf、Rf、Rf及びRfとしては、例えば、CF(CF−(n=1〜9)、CF(CFO(CF(CF)CFO)−(n=0〜4、m=1〜3)、CFCFHO−(CF(CF)CFO)−CF−(n=0〜3)、CF=CFO−(CF(CF)CFO)−CF−(n=0〜3)、CFCF−(OCF−(OCFCF−OCF−(n=0〜3、m=0〜7)、CFCFCF−(OCFCFCF−OCFCF−(n=0〜7)、CHCFCF−(OCFCFCF−OCF−(n=0〜7)、CH=CFCFO−(CF(CF)CFO)−(n=0〜3)等が挙げられる。これらの中でも、CFCFHO−(CF(CF)CFO)−CF−(n=0〜3)、又は、CF=CFO−(CF(CF)CFO)−CF−(n=0〜3)、CH=CFCFO−(CF(CF)CFO)−(n=0〜3)が好ましい。
【0026】
式(1−2)〜(1−4)で表される化合物(i)としては、CFCFHO−(CF(CF)CFO)−CFCFSOF(n=0〜3)、及び、CF=CFO−(CF(CF)CFO)−CFCFSOF(n=0〜3)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物が好ましい。
【0027】
化合物(i)は、非水電解液に対して、0.01〜20体積%であることが好ましい。高温及び高電圧に対する耐久性を向上させる観点からは、0.1〜15体積%であることがより好ましく、0.2〜10体積%であることが更に好ましい。特に好ましくは、5体積%以下である。
【0028】
非水電解液は、更に、(ii)含フッ素鎖状カーボネート、含フッ素環状カーボネート及び含フッ素エーテルからなる群より選択される少なくとも1種のフッ素系溶媒を含むことが好ましい。これにより、本発明の電池は、高温及び高電圧に対して、より優れた耐久性を有する。
【0029】
高温及び高電圧に対する耐久性が優れる点から、フッ素系溶媒(ii)は、非水電解液に対して、0.1体積%以上であることが好ましく、1体積%以上であることがより好ましい。また、100体積%以下であることが好ましい。
【0030】
(含フッ素鎖状カーボネート)
含フッ素鎖状カーボネートを配合するときは、耐酸化性向上という効果が期待できる。
【0031】
含フッ素鎖状カーボネートとしては、たとえば一般式(4):
RfOCOORf (4)
(式中、Rf及びRfは、同じかまたは異なり、炭素数1〜4のアルキル基である。但し、Rf及びRfの少なくともいずれかは含フッ素アルキル基である。)で示される含フッ素カーボネートが、難燃性が高く、かつレート特性や耐酸化性が良好な点から好ましい。
【0032】
RfおよびRfとしては、たとえば、−CH、−CF、−CFCF、−CH(CF、CFCH−、CCH−、HCFCFCH−、CFCFHCFCH−などが例示でき、なかでもCFCH−、又は、CCH−が、難燃性が高く、レート特性や耐酸化性が良好な点から特に好ましい。
【0033】
含フッ素鎖状カーボネートとして具体的には、CFCHOCOOCHCF、CFCHOCOOCH、CFCFCHOCOOCHCFCF、CFCFCHOCOOCH、CFCHOCOOCHなどの含フッ素鎖状カーボネートが例示できる。なかでも、CFCHOCOOCHCF、CFCHOCOOCH、及び、CFCFCHOCOOCHCFCFからなる群より選択される少なくとも1種が、粘性が適切で、難燃性、他溶媒との相溶性およびレート特性が良好な点から特に好ましい。また、たとえば特開平06−21992号公報、特開2000−327634号公報、特開2001−256983号公報などに記載された化合物も例示できる。
【0034】
含フッ素鎖状カーボネートは、非水電解液に対して、95体積%以下であることが好ましい。含フッ素鎖状カーボネートの含有量が95体積%を超えると、抵抗が高くなる傾向にある。含フッ素鎖状カーボネートは、90体積%以下がより好ましく、85体積%以下が更に好ましく、80体積%以下が特に好ましい。また、1体積%以上が好ましく、2体積%以上がより好ましく、5体積%以上が更に好ましい。
【0035】
(含フッ素環状カーボネート)
含フッ素環状カーボネートを含有させることにより、誘電率を上昇させる作用や耐酸化性、イオン伝導度の向上といった効果が得られる。
【0036】
含フッ素環状カーボネートとしては、たとえば下記式(5):
【化1】

(式中、X〜Xは同じかまたは異なり、−H、−F、−CF、−CFH、−CFH、−(CFCF(n=0〜8)、−CH(CFCF(n=0〜8)または−CHOCHCFCF、−CHOCHCFCFHである。)で示されるものが好ましい。
【0037】
ただし、X〜Xの少なくとも1つは−F、−CF、−CFH、−CFH、−(CFCF(n=0〜8)、−CH(CFCF(n=0〜8)、−CHOCHCFCF、または、−CHOCHCFCFHで示されるものである。
【0038】
〜Xは、−H、−F、−CF、−CFH、−CFH、−CFCF、−CHCF、−CHCFCF、又は、−CHOCHCFCFHであることが好ましく、誘電率、粘性が良好で、他の溶媒との相溶性に優れる点から−F、−CF、−CHCF3、−CHCFCF、又は、−CHOCHCFCFHがより好ましい。
【0039】
式(5)において、X〜Xの少なくとも1つが、−F、−CF、−CFH、−CFH、−(CFCF(n=0〜8)、−CH(CFCF(n=0〜8)、−CHOCHCFCF、または、−CHOCHCFCFHであれば、−H、−F、−CF、−CFH、−CFH、−(CFCF(n=0〜8)、−CH(CFCF(n=0〜8)または−CHOCHCFCF、−CHOCHCFCFHは、X〜Xの1箇所のみに置換していてもよいし、複数の箇所に置換していてもよい。なかでも、誘電率、耐酸化性が良好な点から、置換箇所は1〜2個が好ましい。
【0040】
また、式(5)において、X〜Xの少なくとも1つが、エーテル結合を含む、炭素数2〜4のハイドロフルオロアルキル基、又は、炭素数1〜3のフルオロアルキル基であることも好ましい。
エーテル結合を含むハイドロフルオロアルキル基としては、HCFCFCH−O−CH−が挙げられる。炭素数1〜3のフルオロアルキル基としては、CFCH−、CFCFCH−が挙げられる。
【0041】
含フッ素環状カーボネートは、非水電解液に対して、60体積%以下であることが好ましい。含フッ素環状カーボネートの含有量が60体積%を超えると、粘度が悪くなるため、レート特性が悪くなる傾向にある。レート特性が良好な点から、50体積%以下がより好ましく、40体積%以下が更に好ましい。耐酸化性が良好な点から、0.2体積%以上が好ましく、0.5体積%以上がより好ましい。また、1体積%以上が更に好ましく、2体積%以上が特に好ましい。
【0042】
含フッ素環状カーボネートのなかでも、高い誘電率、高い耐電圧といった優れた特性がとくに発揮できる点、そのほか電解質塩の溶解性、内部抵抗の低減が良好な点で本発明におけるリチウムイオン二次電池としての特性が向上する点から、次のものが好ましい。
【0043】
耐電圧が高く、電解質塩の溶解性も良好な含フッ素環状カーボネートとしては、たとえば、
【0044】
【化2】

などがあげられる。
【0045】
他にも、含フッ素環状カーボネートとしては、
【0046】
【化3】

なども使用できる。
【0047】
中でも、耐酸化性の点からは、下記式
【化4】

【0048】
で表される化合物、下記式:
【化5】

で表される化合物(フルオロエチレンカーボネート:FEC)、及び、下記式
【0049】
【化6】

で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種が特に好ましい。
【0050】
(含フッ素エーテル)
含フッ素エーテルを含有させることにより、高温高電圧での安定性、安全性が向上する。
【0051】
含フッ素エーテルとしては、たとえば下記式(6):
Rf−O−Rf (6)
(式中、RfおよびRfは同じかまたは異なり、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数1〜10のフルオロアルキル基である。ただし、RfおよびRfの少なくとも一方はフルオロアルキル基である。)で示される化合物が例示できる。
【0052】
含フッ素エーテルの具体例としては、たとえばHCFCFCHOCFCFH、CFCFCHOCFCFH、HCFCFCHOCFCFHCF、CFCFCHOCFCFHCF、C13OCH、C13OC、C17OCH、C17OC、CFCFHCFCH(CH)OCFCFHCF、HCFCFOCH(C、HCFCFOC、HCFCFOCHCH(C、HCFCFOCHCH(CHなどがあげられ、特に、HCFCFCHOCFCFH、CFCFCHOCFCFH、HCFCFCHOCFCFHCF、及び、CFCFCHOCFCFHCFからなる群より選択される少なくとも1種が、相溶性が高く、電解液に用いた場合の抵抗が小さい点から好ましい。
【0053】
また、本発明で用いる含フッ素エーテルのフッ素含有率は50質量%以上であることが、耐酸化性、安全性が良好な点から好ましい。特に好ましいフッ素含有率は55〜66質量%である。フッ素含有率は構造式から算出したものである。
【0054】
含フッ素エーテルは、非水電解液に対して、60体積%以下であることが好ましい。含フッ素エーテルの含有量が60体積%を超えると、相溶性が低くなるほか、レート特性が悪くなる傾向にある。相溶性、レート特性が良好な点から、45体積%以下であることがより好ましく、40体積%以下であることが更に好ましい。耐酸化性、安全性が良好な点から0.5体積%以上が好ましく、2体積%以上がより好ましい。
【0055】
非水電解液を構成する溶媒は、含フッ素鎖状カーボネート、含フッ素環状カーボネート及び含フッ素エーテルからなる群より選択される少なくとも1種のみからなるものであってもよいが、上記所望の充電電圧が得られる範囲であれば、含フッ素環状カーボネート、含フッ素鎖状カーボネート及び含フッ素エーテル以外の溶媒を含んでいてもよい。
例えば、含フッ素エステル、含フッ素ラクトン、フルオロアミド、非フッ素系エステル、非フッ素系鎖状カーボネート、非フッ素系環状カーボネート、ニトリル、スルホン、スルホラン等を含んでいてもよい。
【0056】
(含フッ素エステル)
含フッ素エステルとしては、下記式(7):
RfCOORf (7)
(式中、Rfは炭素数1〜2の含フッ素アルキル基、Rfは炭素数1〜4の含フッ素アルキル基)で示される含フッ素エステルが、難燃性が高く、かつ他溶媒との相溶性や耐酸化性が良好な点から好ましい。
【0057】
Rfとしては、たとえばCF−、CFCF−、HCFCF−、HCF−、CHCF−、CFCH−などが例示でき、なかでもCF−、CFCF−が、レート特性が良好な点から特に好ましい。
【0058】
Rfとしては、たとえば−CF、−CFCF、−CH(CF、−CHCF、−CHCHCF、−CHCFCFHCF、−CH、−CHCFCFH、−CHCH、−CHCFCF、−CHCFCFCFなどが例示でき、なかでも−CHCF、−CH(CF−CH、−CHCFCFHが、他溶媒との相溶性が良好な点から特に好ましい。
【0059】
含フッ素エステルの具体例としては、たとえばCFC(=O)OCHCF、CFC(=O)OCHCHCF、CFC(=O)OCH、CFC(=O)OCHCFCFH、CFC(=O)OCH(CFなどの1種または2種以上が例示でき、なかでもCFC(=O)OCH、CFC(=O)OCHCFCFH、CFC(=O)OCHCF、CFC(=O)OCH(CFが、他溶媒との相溶性およびレート特性が良好な点から特に好ましい。
【0060】
含フッ素エステルを配合するときは、耐酸化性向上という効果が期待できる。
【0061】
(含フッ素ラクトン)
含フッ素ラクトンとしては、たとえば、下記式(8):
【0062】
【化7】

(式中、X〜X10は同じかまたは異なり、いずれも−H、−F、−Cl、−CHまたは含フッ素アルキル基;ただし、X〜X10の少なくとも1つは含フッ素アルキル基である)で示される含フッ素ラクトンがあげられる。
【0063】
〜X10における含フッ素アルキル基としては、たとえば、−CFH、−CFH、−CF、−CHCF、−CFCF、−CHCFCF、−CF(CFなどがあげられ、耐酸化性が高く、安全性向上効果がある点から−CHCF、−CHCFCFが好ましい。
【0064】
〜X10の少なくとも1つが含フッ素アルキル基であれば、−H、−F、−Cl、−CHまたは含フッ素アルキル基は、X〜X10の1箇所のみに置換していてもよいし、複数の箇所に置換していてもよい。好ましくは、電解質塩の溶解性が良好な点から1〜3箇所、より好ましくは1〜2箇所である。
【0065】
含フッ素アルキル基の置換位置はとくに限定されないが、合成収率が良好なことから、Xおよび/またはXが、特にXまたはXが含フッ素アルキル基、なかでも−CHCF、−CHCFCFであることが好ましい。含フッ素アルキル基以外のX〜X10は、−H、−F、−Clまたは−CHであり、とくに電解質塩の溶解性が良好な点から−Hが好ましい。
【0066】
含フッ素ラクトンとしては、前記式で示されるもの以外にも、たとえば、下記式(9):
【0067】
【化8】

(式中、AおよびBはいずれか一方がCX1617(X16およびX17は同じかまたは異なり、いずれも−H、−F、−Cl、−CF、−CHまたは水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよくヘテロ原子を鎖中に含んでいてもよいアルキレン基)であり、他方は酸素原子;Rfはエーテル結合を有していてもよい含フッ素アルキル基または含フッ素アルコキシ基;X11およびX12は同じかまたは異なり、いずれも−H、−F、−Cl、−CFまたは−CH;X13〜X15は同じかまたは異なり、いずれも−H、−F、−Clまたは水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよくヘテロ原子を鎖中に含んでいてもよいアルキル基;n=0または1)
で示される含フッ素ラクトンなどもあげられる。
【0068】
式(9)で示される含フッ素ラクトンとしては、下記式(10):
【0069】
【化9】

(式中、A、B、Rf、X11、X12およびX13は式(9)と同じである)
で示される5員環構造が、合成が容易である点、化学的安定性が良好な点から好ましくあげられ、さらには、AとBの組合せにより、下記式(11):
【化10】

(式中、Rf、X11、X12、X13、X16およびX17は式(9)と同じである)
で示される含フッ素ラクトンと、下記式(12):
【化11】

(式中、Rf、X11、X12、X13、X16およびX17は式(9)と同じである)
で示される含フッ素ラクトンがある。
【0070】
これらのなかでも、高い誘電率、高い耐電圧といった優れた特性が特に発揮できる点、そのほか電解質塩の溶解性、内部抵抗の低減が良好な点で本発明における電解液としての特性が向上する点から、
【化12】

が好ましい。
【0071】
その他、
【化13】

なども使用できる。
【0072】
含フッ素ラクトンを含有させることにより、イオン伝導度の向上、安全性の向上、高温時の安定性向上といった効果が得られる。
【0073】
(フルオロアミド)
フルオロアミドは、式:
【0074】
【化14】

で示される化合物である。
【0075】
Rfは、−CF、−CFCF、フルオロフェニル基またはフルオロアルキルフェニル基である。フルオロフェニル基としてはフッ素原子を1〜5個含むものが好ましく、耐酸化性が良好な点から3〜5個含むものがより好ましい。また、フルオロアルキルフェニル基のフルオロアルキル基としては、たとえば−CF、−C、−HC(CFなどがあげられ、相溶性が良好な点、粘性が低くできる点から−CF、−Cが好ましい。
【0076】
およびRは同じかまたは異なり、いずれも炭素数1〜8のアルキル基である。具体的には、−CH、−C、−C、−Cなどが例示でき、なかでも粘性が低い点から−CH、−Cが好ましい。
【0077】
フルオロアミドとして特に好ましい化合物は、つぎの化合物である。
【0078】
【化15】

【0079】
フルオロアミドは本発明の非水電解液中に10体積%以下含ませてもよい。フルオロアミドの含有量が10体積%を超えると、粘度が高くなりイオン伝導性が低くなる傾向にある。好ましくは粘度を下げても高温高電圧での安定性が良好な点から6体積%以下、さらに好ましくは高温高電圧での安定性が特に良好な点から3体積%以下である。好ましい下限は、高温高電圧での安定性の点から0.01体積%、より好ましくは0.05体積%である。
【0080】
(非フッ素系エステル)
非フッ素系エステルはレート特性を向上させる効果がある。非フッ素系エステルとしては、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、ブチル酸エステル、などが好ましい。添加量としては、30体積%以下、さらには20体積%以下が電解質塩との相溶性を担保するうえで好ましい。レート特性の向上の点から下限は好ましくは1体積%、より好ましくは3体積%である。
【0081】
(非フッ素系環状カーボネート)
非フッ素系環状カーボネートのなかでも、エチレンカーボネート(EC)、ビニレンカーボネート(VC)、プロピレンカーボネート(PC)は誘電率が高く、また電解質塩の溶解性に特に優れており、本発明の電解液に好ましい。また、黒鉛系材料を負極に用いる場合には、安定な被膜を負極に形成させることもできる。また、ブチレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネートなどを使用することもできる。これらの中でも、特に、エチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、プロピレンカーボネート、及び、ブチレンカーボネートからなる群より選択される少なくとも1種であることが、誘電率、粘度の点から好ましい。添加量としては、0〜50体積%が好ましく、0〜40体積%がより好ましい。
【0082】
(非フッ素系鎖状カーボネート)
非フッ素系鎖状カーボネートとしては、たとえば、CHCHOCOOCHCH(ジエチルカーボネート:DEC)、CHCHOCOOCH(エチルメチルカーボネート:EMC)、CHOCOOCH(ジメチルカーボネート:DMC)、CHOCOOCHCHCH(メチルプロピルカーボネート)などの炭化水素系鎖状カーボネートなどの1種または2種以上があげられる。これらのうち沸点が高く、粘性が低く、かつ低温特性が良好なことから、DEC、EMC、及び、DMCからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。添加量としては、0〜85体積%が好ましく、0〜80体積%がより好ましい。
【0083】
非フッ素系鎖状カーボネートを含有させることにより、低温特性、粘性低下により負荷特性向上といった効果が得られる。
【0084】
(ニトリル)
ニトリルとしてはアセトニトリル、プロピオニトリル、フェニルニトリルなどのモノニトリル;スクシノニトリル、グルタノニトリルなどのジニトリル等が好ましい。
【0085】
(スルホン、スルホラン)
スルホンおよびその誘導体、スルホランおよびその誘導体等が挙げられる。
【0086】
本発明の非水電解液は、電解質塩(iii)を含む。上記電解質塩(iii)としては、任意のものを用いることができるが、中でも、リチウム塩が好ましい。リチウム塩としては、例えば、LiClO、LiPF及びLiBF等の無機リチウム塩;LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiN(CFSO)(CSO)、LiC(CFSO、LiPF(CFSO、LiPF(CSO、LiBF(CF、LiBF(C、LiBF(CFSO、LiBF(CSO、リチウムジフルオロ(オキサレート)ボレート〔LiFOB〕、リチウムビス(オキサレート)ボレート〔LiBOB〕、式:LiPF(C2n+16−a(式中、aは0〜5の整数であり、nは1〜6の整数である)で表される塩等の含フッ素有機酸リチウム塩などが挙げられ、これらを単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、リチウムジフルオロ(オキサレート)ボレート、リチウムビス(オキサレート)ボレートまたは式:LiPF(C2n+16−a(式中、aは0〜5の整数であり、nは1〜6の整数である)で表される塩、特にLiPFまたはLiBFが好ましい。また、LiPFまたはLiBF等の無機リチウム塩と、LiCFSO、LiN(CFSOまたはLiN(CSO等の含フッ素有機リチウム塩とを併用すると、高温保存した後の劣化が少なくなるので、好ましい。
式:LiPF(C2n+16−aで表される塩としては、LiPF(CF、LiPF(C、LiPF(C、LiPF(C、LiPF(CF、 LiPF(C、LiPF(C、LiPF(C(但し、式中のC、Cで表されるアルキル基は、直鎖、分岐構造のいずれであってもよい。)等が挙げられる。
【0087】
電解質塩(iii)としては、中でも、LiBF、LiPF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、リチウムジフルオロ(オキサレート)ボレート、リチウムビス(オキサレート)ボレート、及び、式:LiPF(C2n+16−a(式中、aは0〜5の整数であり、nは1〜6の整数である)で表される塩よりなる群から選ばれるリチウム塩が好ましい。
【0088】
非水電解液中の電解質塩(iii)の濃度は、0.5〜3モル/リットルが好ましい。この範囲以外では、電解液の電気伝導率が低くなり、電池性能が低下してしまう傾向がある。
【0089】
非水電解液は、本発明の効果を損なわない範囲で、不燃(難燃)化剤、界面活性剤、高誘電化添加剤、サイクル特性およびレート特性改善剤や過充電防止剤などの他の添加剤を配合してもよい。
【0090】
不燃性や難燃性の向上のため配合する不燃(難燃)化剤としてはリン酸エステルがあげられる。リン酸エステルとしては、含フッ素アルキルリン酸エステル、非フッ素系アルキルリン酸エステル、アリールリン酸エステルなどがあげられるが、含フッ素アルキルリン酸エステルが電解液の不燃化に寄与する程度が高く、少量で不燃効果をあげることから好ましい。
【0091】
含フッ素アルキルリン酸エステルとしては、特開平11−233141号公報に記載された含フッ素ジアルキルリン酸エステル、特開平11−283669号公報に記載された環状のアルキルリン酸エステルのほか、含フッ素トリアルキルリン酸エステルがあげられる。
【0092】
難燃性を向上させることを目的として、(CHO)P=O、(CFCHO)P=Oなどの難燃化剤も添加することができる。
【0093】
界面活性剤は、容量特性、レート特性の改善を図るために配合してもよい。
【0094】
界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれでもよいが、含フッ素界面活性剤が、サイクル特性、レート特性が良好な点から好ましい。
【0095】
たとえば、下記式(14):
Rf10COO (14)
(式中、Rf10は炭素数3〜10のエーテル結合を含んでいてもよい含フッ素アルキル基;MはLi、Na、KまたはNHR’(R’は同じかまたは異なり、いずれもHまたは炭素数が1〜3のアルキル基)である)で示される含フッ素カルボン酸塩や、下記式(15):
Rf11SO (15)
(式中、Rf11は炭素数3〜10のエーテル結合を含んでいてもよい含フッ素アルキル基;MはLi、Na、KまたはNHR’(R’は同じかまたは異なり、いずれもHまたは炭素数が1〜3のアルキル基)である)で示される含フッ素スルホン酸塩などが好ましく例示される。
【0096】
界面活性剤の配合量は、充放電サイクル特性を低下させずに電解液の表面張力を低下させるという点から、非水電解液の0.01〜2質量%が好ましい。
【0097】
高誘電化添加剤としては、たとえばスルホラン、メチルスルホラン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、アセトニトリル、プロピオニトリルなどが例示できる。
【0098】
サイクル特性およびレート特性改善剤としては、酢酸メチル、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどが例示できる。
【0099】
過充電防止剤としては、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化物、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、ヘキサフルオロベンゼン、フルオロベンゼン、シクロヘジクロロアニリン、トルエン等の芳香族化合物;2−フルオロビフェニル等の前記芳香族化合物の部分フッ素化物;2,4−ジフルオロアニソール、2,5−ジフルオロアニソール及び2,6−ジフルオロアニソール等の含フッ素アニソール化合物などが挙げられる。これらを非水電解液中に0.1〜5重量%含有させると、過充電等のときに電池の破裂・発火を抑制することができる。
【0100】
本発明の電池は、正極及び負極を備える。
【0101】
正極に使用する正極活物質は、コバルト系複合酸化物、ニッケル系複合酸化物、マンガン系複合酸化物、鉄系複合酸化物、及び、バナジウム系複合酸化物よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが、エネルギー密度が高く、高出力な二次電池となることから好ましい。コバルト系複合酸化物、ニッケル系複合酸化物、マンガン系複合酸化物、鉄系複合酸化物及びバナジウム系複合酸化物としては、下記するものが挙げられる。また、本発明の電池は、充電電圧が3.5V以上であることが好ましい。充電電圧の上限は特に限定されないが、例えば、5.0Vである。
【0102】
本発明の電池としては、高い充電電圧が得られる点から、正極が、下記式(2−1):
Li2−(a+b) (2−1)
(Mは、Mn、Ni、V、又は、Feであり、Mは、Fe、Co、Ni、Mn、Mg、Cu、Zn、Al、Sn、B、Ga、Cr、V、Sr、Ca、In、Si、Ge、及び、Tiからなる群より選択される少なくとも1種である。但し、0.4≦a≦1.2、0≦b≦0.6であり、MとMとは異なる。)で表されるリチウム遷移金属酸化物、又は、下記式(2−2):
Li2−d (2−2)
(Mは、Mn、Ni、V、Co、Al、又は、Feであり、Mは、Fe、Co、Ni、Mn、Mg、Cu、Zn、Al、Sn、B、Ga、Cr、V、Sr、Ca、In、Si、Ge、及び、Tiからなる群より選択される少なくとも1種である。但し、0.9≦c、0≦d≦1.5であり、MとMとは異なる。)で表されるリチウム遷移金属酸化物を正極活物質とするものであり、かつ充電電圧が4.3V以上であるものが好ましい形態の一つである。
例えば、LiCoOを正極活物質とする正極を用いた場合には、従来の非水電解液を用いても高温及び高電圧に対する耐久性の向上の効果がみられる場合がある。しかしながら、上記のようなMn、Ni、V、又は、Feを含むリチウム遷移金属酸化物を正極活物質とする正極では、従来の非水電解液を用いても充分な向上効果が得られなかった。
上記のリチウム遷移金属酸化物を正極活物質とする正極を用いた場合であっても、上記化合物(i)を含む非水電解液を用いることによって、本発明の電池は、高温及び高電圧に対する耐久性が特に優れる。
正極が、式(2−1)又は(2−2)で表されるリチウム遷移金属リン酸化合物を正極活物質とするものである場合、本発明の電池は、充電電圧が4.35V以上であることも好ましい。
【0103】
充電電圧を高くする観点からは、Mは、Ni、又は、Mnであることが好ましい。
は、Fe、Co、及び、Alからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
は、Fe、Co、又は、Alであることが好ましく、Fe、又は、Coであることがより好ましい。
は、Ni、及び、Mnからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0104】
また、正極は、エネルギー密度が高く、高出力なリチウム二次電池を提供できる点から、LiMnO、LiNiO、LiMn、LiNi0.5Mn1.5、LiNi0.8Co0.15Al0.05、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiNi0.8Co0.2、Li1.2Fe0.4Mn0.4、及び、LiNi0.5Mn0.5からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を正極活物質とするものが好ましい。より好ましくは、LiMnO、LiNiO、LiMn、LiNi0.5Mn1.5、LiNi0.8Co0.15Al0.05、及び、LiNi1/3Co1/3Mn1/3からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を正極活物質とするものである。
【0105】
また、安全性、サイクル特性の点から、本発明の電池は、正極が、下記式(3):
Li1−fPO (3)
(式中、Mは、Fe、V、Ni、Co、又は、Mnであり、Mは、Fe、Co、Ni、Mn、Mg、Cu、Zn、Al、Sn、B、Ga、Cr、V、Sr、Ca、In、Si、Ge、及び、Tiからなる群より選ばれた少なくとも1種以上である。但し、0.9≦e≦1.2、0≦f≦0.3であり、MとMとは異なる。)で表されるリチウム遷移金属リン酸化合物を正極活物質とするものであることも好ましい形態の一つである。
上記のようなリチウム遷移金属リン酸化合物を正極活物質とする正極を用いた場合、従来の非水電解液では、高温及び高電圧に対する耐久性の向上効果が充分には得られなかった。上記化合物(i)を含む非水電解液を用いることによって、上記のリチウム遷移金属リン酸化合物を正極活物質とする正極を用いた場合であっても、本発明の電池は、高温及び高電圧に対する耐久性が特に優れたものとなる。
正極が、式(3)で表されるリチウム遷移金属リン酸化合物を正極活物質とするものである場合、本発明の電池は、充電電圧が3.5V以上であることが好ましい。
LiFePO等のリチウム遷移金属リン酸化合物を正極活物質として用いる場合、通常、3.1〜3.3Vの充電電圧で用いられるが、本発明の電池は、3.5V以上の高電圧で用いたとしても優れた耐久性を示す。
【0106】
サイクル特性、安全性の観点からは、Mは、Fe、V、又は、Coであることが好ましく、Fe、又は、Vであることがより好ましい。
は、Fe、Ni、及び、Mnからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0107】
正極は、高電圧特性と安全性を両立するものとして、LiFePO、LiCoPO、LiVPO、LiMnPO、LiCoPO、LiNiPO、及び、それらの変性体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物が好ましい。中でも、安全性、サイクル特性の観点から、LiFePO、LiVPO、LiMnPO、LiNiO、及び、LiCoPOからなる群より選択される少なくとも1種の化合物がより好ましい。
【0108】
上記式(2−1)、(2−2)及び(3)で表される化合物以外の正極活物質としては、LiV、LiMnOなども例示できる。
【0109】
電池容量が高い点から、正極活物質の配合量は、正極合剤の50〜99質量%が好ましく、80〜99質量%であることがより好ましい。
【0110】
本発明において、とくにハイブリッド自動車用や分散電源用の大型リチウムイオン二次電池に使用される場合は、高出力が要求されるため、正極活物質の粒子は二次粒子が主体となり、その二次粒子の平均粒子径が40μm以下で平均一次粒子径1μm以下の微粒子を0.5〜7.0体積%含有することが好ましい。平均一次粒子径が1μm以下の微粒子を含有させることにより、電解液との接触面積が大きくなり、電極と電解液の間でのリチウムイオンの拡散をより早くすることができ、出力性能を向上させることができる。
【0111】
正極の結着剤としては、電極製造時に使用する溶媒や電解液に対して安全な材料であれば、任意のものを使用することができる。例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン−アクリル酸共重合体、及び、エチレン−メタクリル酸共重合体等が挙げられる。
【0112】
正極の増粘剤については、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン等が挙げられる。
【0113】
正極用集電体の材質としては、アルミニウム、チタンもしくはタンタル等の金属またはその合金が挙げられる。これらのうち、アルミニウムまたはその合金が好ましい。
【0114】
導電材としては、グラファイト、カーボンブラック等の炭素材料などが挙げられる。
【0115】
上記溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、メチルイソブチルケトン、キシレン等が挙げられる。なかでも、N−メチル−2−ピロリドンが好ましい。
【0116】
リチウムイオン二次電池を構成する負極の材料としては、様々な熱分解条件での有機物の熱分解物や人造黒鉛、天然黒鉛等のリチウムを吸蔵・放出可能な炭素質材料;酸化錫、酸化珪素等のリチウムを吸蔵・放出可能な金属酸化物材料;リチウム金属;種々のリチウム合金などを用いることができる。これらの負極材料の2種類以上を混合して用いてもよい。
【0117】
リチウムを吸蔵・放出可能な炭素質材料としては、種々の原料から得た易黒鉛性ピッチの高温処理によって製造された人造黒鉛もしくは精製天然黒鉛、またはこれらの黒鉛に、ピッチ、その他の有機物で表面処理を施した後炭化して得られるものが好ましい。
【0118】
負極の製造は、常法によればよい。例えば、負極材料に、結着剤、増粘剤、導電材、溶媒等を加えてスラリー状とし、集電体に塗布し、乾燥した後にプレスして高密度化する方法が挙げられる。
【0119】
結着剤としては、電極製造時に使用する溶媒や電解液に対して安全な材料であれば、任意のものを使用することができる。例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン−アクリル酸共重合体、及び、エチレン−メタクリル酸共重合体等が挙げられる。
【0120】
増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、及び、カゼイン等が挙げられる。
【0121】
導電材としては、銅やニッケル等の金属材料;グラファイト、カーボンブラック等の炭素材料などが挙げられる。
【0122】
負極用集電体の材質としては、銅、ニッケルまたはステンレス等が挙げられる。これらのうち、薄膜に加工しやすいという点、及び、コストの点から銅箔が好ましい。
【0123】
本発明の電池は、更に、セパレータからなることが好ましい。本発明の電池に使用するセパレータの材質や形状は、電解液に安定であり、かつ保液性に優れていれば任意である。中でも、上記セパレータは、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを原料とする多孔性シートまたは不織布等が好ましい。
【0124】
本発明の電池の形状は任意であり、例えば、円筒型、角型、ラミネート型、コイン型、大型等の形状が挙げられる。なお、正極、負極、セパレータの形状及び構成は、それぞれの電池の形状に応じて変更して使用することができる。
【0125】
本発明の電池は、上記のハイブリッド自動車用や分散電源用の大型リチウムイオン二次電池用の電解液として特に有用であるが、そのほか小型のリチウムイオン二次電池などの非水系電解液としても有用である。
【実施例】
【0126】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0127】
実施例1〜48及び比較例1〜12
(電池の作成)
正極活物質として下記4種を用い、それぞれの電極を作成した。
燐酸鉄リチウム(LiFePO:以下「LFP」ともいう。)
LiNi1/3Mn1/3Co1/3 (Ni,Mn,Coのモル比は1:1:1)(以下「NCM」ともいう。)
スピネルマンガン(LiMn:以下「LMO」ともいう。)
ニッケルマンガン(LiNi0.5Mn1.5:以下「NiMn」ともいう。)
【0128】
負極活物質としては人造黒鉛を用いて電極を作成した。
【0129】
正極活物質としては、実施例1〜13及び比較例1〜3ではLFP、実施例14〜26及び比較例4〜6ではNCM、実施例27〜39及び比較例7〜9ではLMO、実施例40〜48及び比較例10〜12ではNiMnを用いて電極を作成した。
【0130】
(電解液の調製)
成分A、B、C、D、E及びその他の成分を、下記表1〜4に示す体積割合で混合して電解質塩溶解用非水溶媒を調製した。この電解質塩溶解用非水溶媒に電解質塩を1モル/リットル濃度となるように加えたところ、均一に溶解した。
【0131】
電解液に用いた成分は、以下の通りである。
【0132】
成分A:Rf−SO
A1:CFCFHOCFCFSO
A2:CFCFHOCF(CF)CFOCFCFSO
A3:CF=CFOCFCFSO
A4:CF=CFOCF(CF)CFOCFCFSO
【0133】
成分B:環状カーボネート
B1:EC
B2:PC
B3:VC
B4:FEC
B5:CFCH−EC
B6:HCFCFCHOCH−EC
【0134】
成分C:鎖状カーボネート
C1:DMC
C2:EMC
C3:DEC
C4:CFCHOCOOCH
C5:CFCHOCOOCHCF
【0135】
成分D:フルオロエーテル
D1:CFCFCHOCFCFHCF
D2:HCFCFCHOCFCF
【0136】
成分E:電解質塩
E1:LiPF
E2:LiBF
E3:LiN(CFSO
E4:LiBOB
【0137】
その他
PS:プロパンスルトン
SN:スクシノニトリル
CHSO
CHPh−SO
【0138】
(ラミネートセルの作製)
各種正極活物質とカーボンブラックとポリフッ化ビニリデン(呉羽化学(株)製。商品名KF−1000)を92/3/5(質量%比)で混合した正極活物質を、N−メチル−2−ピロリドンに分散してスラリー状のものを得た。これを正極集電体(厚さ15μmのアルミニウム箔)上に均一に塗布し、乾燥して、正極合剤層を形成した。そして、これをローラプレス機により圧縮成形した後、切断し、リード体を溶接して、帯状の正極を作製した。
【0139】
別途、人造黒鉛粉末(日立化成(株)製。商品名MAG−D)に、蒸留水で分散させたスチレン−ブタジエンゴムを固形分で6質量%となるように加え、ディスパーザーで混合してスラリー状のものを得た。これを負極集電体(厚さ10μmの銅箔)上に均一に塗布し、乾燥して、負極合剤層を形成した。そして、これをローラプレス機により圧縮成形し、切断した後、乾燥し、リード体を溶接して、帯状の負極を作製した。
【0140】
図1の概略組立て斜視図に示すように、上記帯状の正極1を40mm×72mm(10mm×10mmの正極端子4付)に切り取り、また上記帯状の負極2を42mm×74mm(10mm×10mmの負極端子5付)に切り取り、各端子にリード体を溶接した。また、厚さ20μmの微孔性ポリエチレンフィルムを78mm×46mmの大きさに切ってセパレータ3とし、セパレータ3を挟むように正極と負極をセットした。これらを図2に示すように、アルミニウムラミネート包装材6内に入れ、ついで包装材6中に、実施例および比較例用に調製した電解液を2mlずつ入れて密封して、容量約80mAhのラミネートセルを作製した。
【0141】
(サイクル特性)
得られたラミネートセルにおいて、充電放電は、1.0Cで各種正極活物質に応じて規定の電圧まで充電電流が1/10Cになるまで充電し、0.2C相当の電流で2.5Vまで放電し、引き続き、1.0Cで各種正極活物質に応じて規定の電圧にて充電電流が1/10Cになるまで充電するサイクルで行った。温度は60℃とした。
充電/放電を1サイクルとし、5サイクル後の放電容量と100サイクル後の放電容量を測定し、5サイクル後の放電容量に対する100サイクル後の放電容量の割合を容量維持率(%)として算出した。
維持率は、初期の放電容量を100%として、充電したのち85℃、5hr保存後の残存容量を測定し算出した。そののち室温で1サイクルさせたのちの放電容量を測定し回復率を算出した。
【0142】
上記の方法で作製したラミネートセルを用いて、下記条件でサイクル特性の測定、維持率/回復率の測定を行った。
【0143】
燐酸鉄リチウム(LFP)を正極に用いた場合の充電電圧は3.6V、
NCMを正極に用いた場合の充電電圧は4.35V、
スピネルマンガン(LMO)を正極に用いた場合の充電電圧は4.2V、
ニッケルマンガン(NiMn)を正極に用いた場合の充電電圧は4.95V
とした。放電電圧は2.5Vとして試験をおこなった。
【0144】
結果を表1〜4に示す。
【0145】
【表1】

【0146】
【表2】

【0147】
【表3】

【0148】
【表4】

【0149】
表1〜4中のA1、A2、A3、A4、B1、B2、B3、B4、B5、B6、C1、C2、C3、C4、C5、D1、D2、PS、SN、CHSOF、CHPh−SOFの項目に記載の数値の単位は「体積%」である。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明の電池は、電気自動車、ハイブリッド電気自動車等の高温高電圧に対する耐久性が要求される分野の電池として好適に使用できる。
【符号の説明】
【0151】
1 正極
2 負極
3 セパレータ
4 正極端子
5 負極端子
6 アルミニウムラミネート包装材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極、及び、非水電解液を備える電池であって、
前記非水電解液が、
(i)一般式(1):
Rf−SOF (1)
(式中、Rfは、エーテル結合を含んでいてもよい、炭素数1〜13の直鎖又は分岐の含フッ素アルキル基であり、二重結合を含んでもよい。)で表される化合物を含有する
ことを特徴とする電池。
【請求項2】
前記非水電解液が、更に、
(ii)含フッ素鎖状カーボネート、含フッ素環状カーボネート及び含フッ素エーテルからなる群より選択される少なくとも1種のフッ素系溶媒、及び、
(iii)電解質塩を含み、
一般式(1)で表される化合物(i)の含有量が、非水電解液の全体積に対して、0.01〜20体積%である
ことを特徴とする請求項1記載の電池。
【請求項3】
正極は、下記式(2−1):
Li2−(a+b) (2−1)
(Mは、Mn、Ni、V、又は、Feであり、Mは、Fe、Co、Ni、Mn、Mg、Cu、Zn、Al、Sn、B、Ga、Cr、V、Sr、Ca、In、Si、Ge、及び、Tiからなる群より選択される少なくとも1種である。但し、0.4≦a≦1.2、0≦b≦0.6であり、MとMとは異なる。)で表されるリチウム遷移金属酸化物、又は、下記式(2−2):
Li2−d (2−2)
(Mは、Mn、Ni、V、Co、Al、又は、Feであり、Mは、Fe、Co、Ni、Mn、Mg、Cu、Zn、Al、Sn、B、Ga、Cr、V、Sr、Ca、In、Si、Ge、及び、Tiからなる群より選択される少なくとも1種である。但し、0.9≦c、0≦d≦1.5であり、MとMとは異なる。)で表されるリチウム遷移金属酸化物を正極活物質とするものである
請求項1又は2記載の電池。
【請求項4】
充電電圧が4.3V以上である請求項1、2又は3記載の電池。
【請求項5】
正極は、下記式(3):
Li1−fPO (3)
(式中、Mは、Fe、V、Ni、Co、又は、Mnであり、Mは、Fe、Co、Ni、Mn、Mg、Cu、Zn、Al、Sn、B、Ga、Cr、V、Sr、Ca、In、Si、Ge、及び、Tiからなる群より選ばれた少なくとも1種以上である。但し、0.9≦e≦1.2、0≦f≦0.3であり、MとMとは異なる。)で表されるリチウム遷移金属リン酸化合物を正極活物質とするものである
請求項1又は2記載の電池。
【請求項6】
化合物(i)は、一般式(1−1):
Rf−CX−SOF (1−1)
(式中、Rfは、エーテル結合を含んでいてもよく、水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜12のアルキル基であり、二重結合を含んでもよい。X及びXは、同一若しくは異なって、H、F、又は、炭素数1〜10の含フッ素アルキル基である。但し、X及びXの少なくともいずれかは、F又は炭素数1〜3の含フッ素アルキル基である。)で表される化合物である
請求項1、2、3、4又は5記載の電池。
【請求項7】
Rfは、エーテル結合を含んでもよい、ハイドロフルオロアルキル基である請求項6記載の電池。
【請求項8】
Rfは、エーテル結合を含む、ハイドロフルオロアルキル基である請求項6又は7記載の電池。
【請求項9】
Rfは、エーテル結合を含み、かつ末端の炭素−炭素結合が二重結合のパーフルオロアルキル基である請求項6記載の電池。
【請求項10】
(i)一般式(1):
Rf−SOF (1)
(式中、Rfは、エーテル結合を含んでいてもよい、炭素数1〜13の含フッ素アルキル基であり、二重結合を含んでもよい。)で表される化合物、
(ii)含フッ素環状カーボネート、含フッ素鎖状カーボネート及び含フッ素エーテルからなる群より選択される少なくとも1種のフッ素系溶媒、及び、
(iii)電解質塩、
を含む
ことを特徴とする非水電解液。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−93322(P2013−93322A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−221604(P2012−221604)
【出願日】平成24年10月3日(2012.10.3)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】