電池収納ケース
【課題】板状部どうしが締結部材により締結される構成において、高いシール機能を有する電池収納ケースを提供する。
【解決手段】この電池収納ケース100は、板状部(正面部12および重ね部141)どうしの重なり合う接合部分4がリベット3で締結されており、接合部分4に互いに異なる液状シール部材41およびペースト状シール部材42が備えられている。
【解決手段】この電池収納ケース100は、板状部(正面部12および重ね部141)どうしの重なり合う接合部分4がリベット3で締結されており、接合部分4に互いに異なる液状シール部材41およびペースト状シール部材42が備えられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電池収納ケースに関し、特に、板状部どうしが締結部材により締結される電池収納ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、板状部どうしが締結部材により締結される電池収納ケースが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、内部に電池を収納可能な金属製のケース本体(電池収納本体)と、ケース本体の開口部を覆う蓋板(蓋体)とを備えた金属ケース(電池収納ケース)が開示されている。また、この金属ケースは、ケース本体に対してネジにより蓋板を取り付けるとともに、ケース本体と蓋板との接合部分にシール部材を設けることによりケース本体と蓋板との間のシール機能を確保するように構成されている。一方、上記特許文献1には、ケース本体を鉄材やアルミニウム材により形成する構成が記載されている。ここで、アルミニウム材は、鉄材等に比べて溶接加工が難しいため、上記特許文献1のケース本体をアルミニウム材により形成する場合には、板状のアルミニウム材をリベット等の締結部材により接合して形成する場合が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−200758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のケース本体を、板状のアルミニウム材を締結部材により接合して形成する場合には、溶接接合に比べて隙間が発生しやすいため、ケース本体自体の締結部材による接合部分のシール機能が低くなり、その結果、ケース本体の高いシール機能を確保することができないという問題点が発生すると考えられる。特に、航空分野やロケット分野などでは、人体や金属部品等に悪影響を及ぼす有機溶媒を含む非水系電解質電池(リチウムイオン電池など)の電解液の漏れに対してより高い安全性が要求されており、このような分野において、電池収納本体を締結部材による接合により形成する場合には、高いシール機能の確保が必要不可欠になる。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、板状部どうしが締結部材により締結される構成において、高いシール機能を有する電池収納ケースを提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
この発明の一の局面による電池収納ケースは、板状部どうしの重なり合う接合部分が締結部材で締結されており、接合部分に互いに異なる第1シール部材および第2シール部材が備えられている。
【0008】
この発明の一の局面による電池収納ケースでは、上記のように、板状部どうしの重なり合う接合部分の複数の箇所に、それぞれの箇所の形状に応じて第1シール部材および第2シール部材を備えることにより、単に1種のシール部材によりシールを行う場合と比較して、高いシール機能を確保することができる。その結果、内部に収納された電池から電解液が漏れた場合にも、電解液が電池収納ケースの外部に漏れるのを有効に防止することができるので、高い安全性が求められる航空分野やロケット分野においても十分に対応可能な電池収納ケースを提供することができる。
【0009】
上記一の局面による電池収納ケースにおいて、好ましくは、第1シール部材は、接合部分の接合面間に備えられており、第2シール部材は、ペースト状シール部材を含み、接合部分の端部を覆うように備えられている。このように構成すれば、複数の板状部の接合面が重ね合わされて電池収納ケースが形成される場合に、接合面間には第1シール部材を備えてシールを行うとともに、接合部分(接合面)の端部には液垂れし難いペースト状の第2シール部材を備えてシールを行うことができるので、接合部分の接合面間および端部の両方でシールを行うことができ、その結果、電池収納ケースのシール機能を高くすることができる。
【0010】
上記一の局面による電池収納ケースにおいて、好ましくは、電池収納ケースは、板状部材が折り曲げられることで形成されるとともに、折り曲げ部分の端部には切欠部が設けられており、切欠部を塞ぐ第3シール部材が備えられている。このように構成すれば、切欠部を設けたとしても、切欠部を塞ぐのにより適した第3シール部材を用いて切欠部を効果的に塞ぐことができる。
【0011】
なお、上記の構成において、以下のような構成にしてもよい。すなわち、上記電池収納ケースにおいて、好ましくは、電池収納本体の開口部を覆うとともに、電池収納本体に対して着脱可能に係合して取り付けられる蓋体と、電池収納本体と蓋体との係合部分に設けられる第4シール部材とを備える。このように構成すれば、内部に収納された電池のメンテナンス等において利便性に優れる着脱可能な蓋体を設けた構成でも、第4シール部材により、電池収納本体と着脱可能な蓋体との間のシールを容易に行うことができる。これにより、電池から電解液が漏れた場合に、電池収納本体のみならず、電池収納本体と着脱可能な蓋体との間からも電解液が外部に漏れるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態による電池収納ケースの全体構成を示した斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態による電池収納ケースの分解斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態による電池収納ケースの接合部分を示した部分断面図である。
【図4】図3の300−300線に沿った断面図である。
【図5】本発明の一実施形態による電池収納ケースの蓋体の内側を示した斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態による蓋体が電池収納本体に取り付けられた状態を示した断面図である。
【図7】本発明の一実施形態による蓋体と電池収納本体との係合部分を示した拡大断面図である。
【図8】本発明の一実施形態による電池収納本体が展開された状態(電池収納本体の折り曲げ前の状態)を示した平面図である。
【図9】本発明の一実施形態による電池収納本体の接合部分に液状シール部材を塗布する工程を説明するための斜視図である。
【図10】本発明の一実施形態による電池収納本体をリベットによりカシメ接合する工程を説明するための斜視図である。
【図11】本発明の一実施形態による電池収納本体の切欠穴を示した拡大斜視図である。
【図12】本発明の一実施形態による電池収納本体の切欠穴にパテを塗布する工程を説明するための拡大斜視図である。
【図13】本発明の一実施形態による電池収納本体の切欠穴を塞ぐパテを覆うペースト状シール部材を塗布する工程を説明するための拡大斜視図である。
【図14】本発明の一実施形態による電池収納本体の接合部分にペースト状シール部材を塗布する工程を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
まず、図1〜図7を参照して、本発明の一実施形態による電池収納ケース100の構成について説明する。
【0015】
本発明の一実施形態による電池収納ケース100は、図1および図2に示すように、略直方体形状に形成されており、箱形状の電池収納本体1と、電池収納本体1の開口部1a(図2参照)を覆う蓋体2とを備えている。
【0016】
電池収納本体1は、アルミニウム合金(本実施形態では、JIS規格A6061)からなる約1.6mmの厚みを有する1枚の板状部材が折り曲げられることにより箱形状に形成されている。このように本実施形態では、電池収納本体1を軽量のアルミニウム合金により構成することによって、電池収納ケース100の軽量化を図っている。また、電池収納本体1は、図1および図2に示すように、略矩形形状を有する底面部11と、略矩形形状の底面部11の4辺のそれぞれに連結された正面部12、背面部13および2枚の側面部14とを有している。また、電池収納本体1は、図2に示すように、有機溶媒を含む非水系電解質電池の一種である角形のリチウムイオン電池200を12個収納可能に構成されている。また、電池収納本体1の正面部12、背面部13および側面部14のそれぞれには、蓋体2の突出部21aに設けられた貫通孔21bに対応する位置にネジ6が螺合されるナット61が2個ずつ設けられている。ナット61は、板状の電池収納本体1の厚みと略同じ厚みを有し、正面部12、背面部13および側面部14のそれぞれに設けられた貫通孔12a、13aおよび14aに嵌め込まれている。また、アルミニウム合金からなる電池収納本体1の外側表面は、酸化被膜の形成により塗装の密着性を良くするための化成皮膜処理により下地処理が行われた後、下塗り塗装および上塗り塗装が施されている。
【0017】
また、電池収納本体1の板状の正面部12と2枚の板状の側面部14とは、リベット3によりカシメ接合(締結)されている。詳細には、図2に示すように、側面部14の正面側(Y1方向側)の端部には、板状の重ね部141が一体的に連結されており、正面部12のX方向の両端部12bと正面部12の内側に配置された重ね部141とが互いに重ね合わされた状態で、複数のリベット3によりカシメ接合されている。リベット3は、正面部12の両端部12bおよび重ね部141のそれぞれに設けられた貫通孔121および141a(図4参照)を貫通して正面部12の両端部12bと重ね部141とをカシメ接合している。また、背面部13側においても正面部12側と同様に、背面部13のX方向の両端部13bと背面部13の内側に配置された重ね部142とが複数のリベット3によりカシメ接合されている。背面部13側のリベット3は、背面部13の両端部13bおよび重ね部142のそれぞれに設けられた貫通孔131および142a(図4参照)を貫通して背面部13の両端部13bと重ね部142とをカシメ接合している。このようにして、正面部12の両端部12bと重ね部141との接合、および背面部13の両端部13bと重ね部142との接合にて接合部分4が形成されている。なお、リベット3は、本発明の「締結部材」の一例である。また、正面部12、背面部13、重ね部141および142は、本発明の「板状部」の一例である。
【0018】
また、重ね部141および142は、互いに同様の形状を有し、図3に示すように、側面部14の上端から下端まで上下方向(Z方向)に延びるように形成されている。また、重ね部141(142)は、下部側において、底面部11と側面部14との間の角部に向かって先細り形状になるように形成されている。また、重ね部141(142)は、上部側において、重ね部141(142)の中央部分よりもX方向の内側に突出することによりX方向の幅が大きくなるように形成されている。
【0019】
ここで、本実施形態では、図3および図4に示すように、正面部12および側面部14(背面部13および側面部14)の間の接合部分4には、互いに異なる材料からなる液状シール部材41(図4参照)およびペースト状シール部材42が備えられている。液状シール部材41は、耐電解液性が強いオレフィン系炭化水素を主成分とする液状材料からなり、シール部材に含まれる溶剤が揮発することにより硬化してゴム状の弾性体になる。この液状シール部材41は、図4に示すように、接合部分4の接合面間に備えられている。すなわち、液状シール部材41は、正面部12の端部12bの内側表面12c(背面部13の端部13bの内側表面13c)と、重ね部141の外側表面141b(重ね部142の外側表面142b)との間(接合面間)に備えられている。また、液状シール部材41は、接合部分4の接合面間において電池収納本体1の上端部近傍から下端部近傍まで全体に渡って連続して備えられている。なお、液状シール部材41は、本発明の「第1シール部材」の一例である。
【0020】
また、ペースト状シール部材42は、耐電解液性が強いシリル基含有ポリマーを主成分とするペースト状材料からなり、空気中の水分と反応することにより硬化して弾性体となる。このペースト状シール部材42は、図3および図4に示すように、電池収納本体1の内側において接合部分4のX方向の端部を覆うように備えられている。詳細には、図4に示すように、ペースト状シール部材42は、正面部12(背面部13)の端部12b(13b)の内側表面12c(13c)と重ね部141(142)の端部とにより形成される段差部を覆うように備えられている。また、ペースト状シール部材42は、図3に示すように、重ね部141(142)の端部の形状に沿って電池収納本体1の上端部近傍から下端部近傍まで全体に渡って連続して備えられている。また、ペースト状シール部材42は、電池収納本体1の底面部11側の四隅において、後述の切欠穴1bを塞ぐパテ5を覆うように備えられている。なお、ペースト状シール部材42は、本発明の「第2シール部材」の一例である。
【0021】
電池収納本体1の底面部11側の四隅には、図1〜図3に示すように、正面部12、背面部13および2枚の側面部14を底面部11に対して折り曲げる際の応力集中を緩和するための切欠穴1bが形成されている。なお、切欠穴1bは、本発明の「切欠部」の一例である。また、切欠穴1bには、図3に示すように、切欠穴1bを覆う(塞ぐ)ようにパテ5が備えられている。パテ5は、アルミ粉末を含有するエポキシ系樹脂により構成されている。これにより、パテ5の熱膨張率をアルミニウム合金からなる電池収納本体1の熱膨張率に近づけることが可能となり、その結果、熱膨張に起因してパテ5が電池収納本体1から剥離したり損傷を受けたりするのを抑制することが可能である。また、エポキシ系樹脂からなるパテ5は、シリル基含有ポリマーを主成分とするペースト状シール部材42よりも耐電解液性が弱い。上記のように、エポキシ系樹脂からなるパテ5を覆うように耐電解液性が強いシリル基含有ポリマーを主成分とするペースト状シール部材42を備えることによって、リチウムイオン電池200の電解液が電池収納本体1内に漏れた場合でも、パテ5が直接的に電解液に接触するのが抑制される。これにより、切欠穴1bを塞ぐパテ5が電解液により溶解されることを抑制することが可能である。なお、パテ5は、本発明の「第3シール部材」の一例である。
【0022】
蓋体2は、電池収納本体1と同じ材料であるアルミニウム合金(本実施形態では、JIS規格A6061)からなる約0.8mmの厚みを有する板状部材により形成されている。蓋体2は、図1、図2および図5に示すように、平面的に見て略矩形形状を有し、各辺が下方に向かって折り曲げられることにより形成された側壁部21を有している。各側壁部21には、図2および図5に示すように、電池収納本体1側に突出する突出部21aが設けられているとともに、突出部21aには、ネジ6(図2参照)を通す貫通孔21bが設けられている。また、図5に示すように、蓋体2の内側表面には側壁部21に対向するように対向壁部23が設けられている。蓋体2は、図6および図7に示すように、電池収納本体1の正面部12、背面部13および2枚の側面部14の上端部が側壁部21と対向壁部23との間に挿入されることにより電池収納本体1に対して着脱可能に係合して取り付けられるように構成されている。詳細には、蓋体2は、電池収納本体1に係合した状態で、8つのネジ6が貫通孔21b(図2および図5参照)を介して電池収納本体1のナット61(図2参照)に螺合されることによって電池収納本体1に着脱可能に取り付けられる。また、蓋体2の外側表面は、電池収納本体1と同様に、化成皮膜処理により下地処理が行われた後、下塗り塗装および上塗り塗装が施されている。
【0023】
また、蓋体2が電池収納本体1に取り付けられた状態において、側壁部21と対向壁部23との間には、図5〜図7に示すように、蓋体2の外周形状に沿ってパッキン7が備えられている。このパッキン7は、シリコンスポンジからなり、円形断面(図5参照)を有するとともに、弾性変形可能に構成されている。また、パッキン7は、蓋体2と電池収納本体1との間に挟み込まれるように配置されている。詳細には、パッキン7は、側壁部21と対向壁部23との間に配置された状態で蓋体2が電池収納本体1に取り付けられることによって、蓋体2の側壁部21および対向壁部23の内側表面と電池収納本体1の正面部12、背面部13および側面部14の上端部とにより押しつぶされるように弾性変形される。
【0024】
次に、図1〜図14を参照して、本発明の一実施形態による電池収納ケース100の製造方法について説明する。
【0025】
まず、図8に示すアルミニウム合金からなる板状部材の重ね部141および142を、側面部14と重ね部141および142との間の折り曲げ線14bに沿って内側に向かって折り曲げる。そして、正面部12、背面部13および側面部14を底面部11の4辺の折り曲げ線11a(破線で示した線)に沿って上方に折り曲げる。これにより、図9に示す状態となる。この際、各折り曲げ線11aの両端部に円弧形状の切り欠き11bが形成されていることによって、板状部材の折り曲げによる応力集中を緩和することが可能となる。なお、この切り欠き11bは、電池収納本体1の組み立て後に電池収納本体1の切欠穴1bとなる部分である。
【0026】
そして、正面部12と側面部14との間の接合部分4の接合面間に液状シール部材41を塗布する。具体的には、図9に示すように、正面部12の両端部12bの内側表面12cの重ね部141に重なる領域に液状シール部材41を塗布する。その後、正面部12、背面部13および側面部14をさらに折り曲げて図10に示す状態になるようにする。そして、リベット3を正面部12の両端部12bの貫通孔121および重ね部141の貫通孔141aに貫通させるとともに、正面部12と重ね部141とをカシメ接合する。なお、液状シール部材41は、正面部12と重ね部141とのカシメ接合後にシール部材に含まれる溶剤が揮発することにより硬化してゴム状の弾性体になる。この状態から、図12に示すように、電池収納本体1の四隅の切欠穴1b(図11参照)を覆うように電池収納本体1の内側からパテ5を塗布する。パテ5は主剤と硬化剤とからなり、所定の比率で混合することにより硬化する。また、背面部13と側面部14との接合も同様に、液状シール部材41を塗布し、カシメ接合した後に切欠部1bを覆うようにパテ5を塗布する。
【0027】
その後、図3、図4、図13および図14に示すように、電池収納本体1の内側において接合部分4の端部を覆うようにペースト状シール部材42を塗布する。この際、図3および図14に示すように、ペースト状シール部材42を、重ね部141(142)の端部の形状に沿って電池収納本体1の上端部近傍から下端部近傍まで全体に渡って連続するように塗布する。また、図13に示すように、電池収納本体1の底面部11側の四隅において、パテ5を覆うようにペースト状シール部材42を塗布する。この後、空気中の水分と反応することによってペースト状シール部材42は硬化して弾性体になる。
【0028】
そして、図2に示すように、電池収納本体1の内部に12個のリチウムイオン電池200を収納した後、図1に示すように、電池収納本体1の開口部1a(図2参照)を覆うように蓋体2を電池収納本体1に着脱可能に係合してネジ6により取り付ける。この際、図5に示すように、蓋体2の側壁部21と対向壁部23との間にパッキン7を嵌め込んだ後、図6および図7に示すように、蓋体2を電池収納本体1にネジ6により取り付ける。これにより、蓋体2に設けられたパッキン7が蓋体2と電池収納本体1との間に挟み込まれる。このようにして、本発明の一実施形態による電池収納ケース100が製造される。
【0029】
本実施形態では、上記のように、電池収納本体1の接合部分4の接合面間および段差部のそれぞれの形状により適した液状シール部材41およびペースト状シール部材42を使い分けてシールを行うことができるので、単に1種のシール部材によりシールを行う場合と比較して、高いシール機能を確保することができる。これにより、リチウムイオン電池200から電解液が漏れた場合にも、電解液が電池収納ケース100(電池収納本体1)の外部に漏れるのを有効に防止することができるので、高い安全性が求められる航空分野やロケット分野に対応可能な電池収納ケース100を提供することができる。
【0030】
また、本実施形態では、上記のように、接合部分4の接合面間に液状シール部材41を備えるとともに、接合部分4の端部を覆うようにペースト状シール部材42を備える。このように構成すれば、接合部分4において、液状シール部材41により電池収納本体1の接合面間のシールを行うことができるとともに、液垂れし難いペースト状シール部材42により電池収納本体1の接合部分4(接合面)の端部のシールを行うことができるので、接合部分4の接合面間および端部の両方でシールを行うことができ、その結果、電池収納本体1の接合部分4に対してシール機能を高くすることができる。
【0031】
また、本実施形態では、上記のように、電池収納本体1の折り曲げ部分の端部に板状部材の折り曲げによる応力集中を緩和するための切欠穴1bを形成し、切欠穴1bを塞ぐようにエポキシ系樹脂からなるパテ5を備える。このように構成すれば、切欠穴1bを設けたとしても、エポキシ系樹脂からなるパテ5を用いて電池収納本体1の切欠穴1bを塞ぎ、電池収納本体1のシール機能を確保することができる。
【0032】
また、本実施形態では、上記のように、電池収納本体1に対して着脱可能に係合して取り付けられる蓋体2と、電池収納本体1と蓋体2との係合部分に配置されるパッキン7とを備える。このように構成すれば、リチウムイオン電池200のメンテナンス等において利便性に優れる着脱可能な蓋体2を設けた構成でも、パッキン7により、電池収納本体1と蓋体2との間のシールを容易に行うことができる。これにより、リチウムイオン電池200から電解液が漏れた場合に、電池収納本体1のみならず、電池収納本体1と蓋体2との間からも電解液が外部に漏れるのを防止することができる。
【0033】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0034】
たとえば、上記実施形態では、本発明の締結部材の一例としてのリベットを用いて接合部分を締結する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、ネジなどのリベット以外の締結部材により接合部分を締結するようにしてもよい。
【0035】
また、上記実施形態では、電池収納本体をアルミニウム合金により構成する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、アルミニウム合金以外の金属材料により電池収納本体を構成してもよい。この場合、マグネシウム合金等、比較的軽量な金属材料により電池収納本体を構成すれば、アルミニウム合金の場合と同様に、電池収納ケースの軽量化を図ることが可能である。
【0036】
また、上記実施形態では、液状シール部材(第1シール部材)にオレフィン系炭化水素を主成分とする液状材料を用いるとともに、ペースト状シール部材(第2シール部材)にシリル基含有ポリマーを主成分とするペースト状材料を用いる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、シリコン系やエポキシ系を主成分とする材料など、第1シール部材および第2シール部材のそれぞれに、上記以外の材料を用いてもよい。この場合、第1シール部材には、小さい厚みで(薄く)塗布することが可能な液状材料を用いることが好ましい。また、第1シール部材および第2シール部材には、耐電解液性が強い材料を用いることが好ましい。
【0037】
また、上記実施形態では、パテ(第3シール部材)を、液状シール部材(第1シール部材)およびペースト状シール部材(第2シール部材)の両方と異なるエポキシ系樹脂により構成する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、シリル基含有ポリマーを主成分とする材料やシリコン系を主成分とする材料など、第1シール部材および第2シール部材の一方と同じ材料により第3シール部材を構成してもよいし、エポキシ系樹脂以外の材料で、第1シール部材および第2シール部材とは異なる材料により第3シール部材を構成してもよい。
【0038】
また、上記実施形態では、1枚の板状部材を折り曲げることにより箱形状の電池収納本体を形成する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、複数枚の板状部材を組み合わせて電池収納本体を形成してもよい。
【0039】
また、上記実施形態では、本発明の電池収納ケースに収納する電池として、リチウムイオン電池を収納する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、水系電解質電池の一種であるニッケル水素電池やリチウムイオン電池以外の非水系電解質電池を本発明の電池収納ケースに収納するようにしてもよい。
【0040】
また、上記実施形態では、液状シール部材(第1シール部材)およびペースト状シール部材(第2シール部材)を、電池収納本体の上端部近傍から下端部近傍まで全体に渡って連続して設ける例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1シール部材および第2シール部材を、電池から漏れ出した電解液が電池収納ケース(電池収納本体)の外部に漏れやすい下端部を含む下方側の領域のみに設けてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 電池収納本体
1a 開口部
1b 切欠穴(切欠部)
2 蓋体
3 リベット(締結部材)
4 接合部分
5 パテ(第3シール部材)
7 パッキン(第4シール部材)
12 正面部(板状部)
13 背面部(板状部)
41 液状シール部材(第1シール部材)
42 ペースト状シール部材(第2シール部材)
141、142 重ね部(板状部)
100 電池収納ケース
200 リチウムイオン電池
【技術分野】
【0001】
この発明は、電池収納ケースに関し、特に、板状部どうしが締結部材により締結される電池収納ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、板状部どうしが締結部材により締結される電池収納ケースが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、内部に電池を収納可能な金属製のケース本体(電池収納本体)と、ケース本体の開口部を覆う蓋板(蓋体)とを備えた金属ケース(電池収納ケース)が開示されている。また、この金属ケースは、ケース本体に対してネジにより蓋板を取り付けるとともに、ケース本体と蓋板との接合部分にシール部材を設けることによりケース本体と蓋板との間のシール機能を確保するように構成されている。一方、上記特許文献1には、ケース本体を鉄材やアルミニウム材により形成する構成が記載されている。ここで、アルミニウム材は、鉄材等に比べて溶接加工が難しいため、上記特許文献1のケース本体をアルミニウム材により形成する場合には、板状のアルミニウム材をリベット等の締結部材により接合して形成する場合が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−200758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のケース本体を、板状のアルミニウム材を締結部材により接合して形成する場合には、溶接接合に比べて隙間が発生しやすいため、ケース本体自体の締結部材による接合部分のシール機能が低くなり、その結果、ケース本体の高いシール機能を確保することができないという問題点が発生すると考えられる。特に、航空分野やロケット分野などでは、人体や金属部品等に悪影響を及ぼす有機溶媒を含む非水系電解質電池(リチウムイオン電池など)の電解液の漏れに対してより高い安全性が要求されており、このような分野において、電池収納本体を締結部材による接合により形成する場合には、高いシール機能の確保が必要不可欠になる。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、板状部どうしが締結部材により締結される構成において、高いシール機能を有する電池収納ケースを提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
この発明の一の局面による電池収納ケースは、板状部どうしの重なり合う接合部分が締結部材で締結されており、接合部分に互いに異なる第1シール部材および第2シール部材が備えられている。
【0008】
この発明の一の局面による電池収納ケースでは、上記のように、板状部どうしの重なり合う接合部分の複数の箇所に、それぞれの箇所の形状に応じて第1シール部材および第2シール部材を備えることにより、単に1種のシール部材によりシールを行う場合と比較して、高いシール機能を確保することができる。その結果、内部に収納された電池から電解液が漏れた場合にも、電解液が電池収納ケースの外部に漏れるのを有効に防止することができるので、高い安全性が求められる航空分野やロケット分野においても十分に対応可能な電池収納ケースを提供することができる。
【0009】
上記一の局面による電池収納ケースにおいて、好ましくは、第1シール部材は、接合部分の接合面間に備えられており、第2シール部材は、ペースト状シール部材を含み、接合部分の端部を覆うように備えられている。このように構成すれば、複数の板状部の接合面が重ね合わされて電池収納ケースが形成される場合に、接合面間には第1シール部材を備えてシールを行うとともに、接合部分(接合面)の端部には液垂れし難いペースト状の第2シール部材を備えてシールを行うことができるので、接合部分の接合面間および端部の両方でシールを行うことができ、その結果、電池収納ケースのシール機能を高くすることができる。
【0010】
上記一の局面による電池収納ケースにおいて、好ましくは、電池収納ケースは、板状部材が折り曲げられることで形成されるとともに、折り曲げ部分の端部には切欠部が設けられており、切欠部を塞ぐ第3シール部材が備えられている。このように構成すれば、切欠部を設けたとしても、切欠部を塞ぐのにより適した第3シール部材を用いて切欠部を効果的に塞ぐことができる。
【0011】
なお、上記の構成において、以下のような構成にしてもよい。すなわち、上記電池収納ケースにおいて、好ましくは、電池収納本体の開口部を覆うとともに、電池収納本体に対して着脱可能に係合して取り付けられる蓋体と、電池収納本体と蓋体との係合部分に設けられる第4シール部材とを備える。このように構成すれば、内部に収納された電池のメンテナンス等において利便性に優れる着脱可能な蓋体を設けた構成でも、第4シール部材により、電池収納本体と着脱可能な蓋体との間のシールを容易に行うことができる。これにより、電池から電解液が漏れた場合に、電池収納本体のみならず、電池収納本体と着脱可能な蓋体との間からも電解液が外部に漏れるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態による電池収納ケースの全体構成を示した斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態による電池収納ケースの分解斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態による電池収納ケースの接合部分を示した部分断面図である。
【図4】図3の300−300線に沿った断面図である。
【図5】本発明の一実施形態による電池収納ケースの蓋体の内側を示した斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態による蓋体が電池収納本体に取り付けられた状態を示した断面図である。
【図7】本発明の一実施形態による蓋体と電池収納本体との係合部分を示した拡大断面図である。
【図8】本発明の一実施形態による電池収納本体が展開された状態(電池収納本体の折り曲げ前の状態)を示した平面図である。
【図9】本発明の一実施形態による電池収納本体の接合部分に液状シール部材を塗布する工程を説明するための斜視図である。
【図10】本発明の一実施形態による電池収納本体をリベットによりカシメ接合する工程を説明するための斜視図である。
【図11】本発明の一実施形態による電池収納本体の切欠穴を示した拡大斜視図である。
【図12】本発明の一実施形態による電池収納本体の切欠穴にパテを塗布する工程を説明するための拡大斜視図である。
【図13】本発明の一実施形態による電池収納本体の切欠穴を塞ぐパテを覆うペースト状シール部材を塗布する工程を説明するための拡大斜視図である。
【図14】本発明の一実施形態による電池収納本体の接合部分にペースト状シール部材を塗布する工程を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
まず、図1〜図7を参照して、本発明の一実施形態による電池収納ケース100の構成について説明する。
【0015】
本発明の一実施形態による電池収納ケース100は、図1および図2に示すように、略直方体形状に形成されており、箱形状の電池収納本体1と、電池収納本体1の開口部1a(図2参照)を覆う蓋体2とを備えている。
【0016】
電池収納本体1は、アルミニウム合金(本実施形態では、JIS規格A6061)からなる約1.6mmの厚みを有する1枚の板状部材が折り曲げられることにより箱形状に形成されている。このように本実施形態では、電池収納本体1を軽量のアルミニウム合金により構成することによって、電池収納ケース100の軽量化を図っている。また、電池収納本体1は、図1および図2に示すように、略矩形形状を有する底面部11と、略矩形形状の底面部11の4辺のそれぞれに連結された正面部12、背面部13および2枚の側面部14とを有している。また、電池収納本体1は、図2に示すように、有機溶媒を含む非水系電解質電池の一種である角形のリチウムイオン電池200を12個収納可能に構成されている。また、電池収納本体1の正面部12、背面部13および側面部14のそれぞれには、蓋体2の突出部21aに設けられた貫通孔21bに対応する位置にネジ6が螺合されるナット61が2個ずつ設けられている。ナット61は、板状の電池収納本体1の厚みと略同じ厚みを有し、正面部12、背面部13および側面部14のそれぞれに設けられた貫通孔12a、13aおよび14aに嵌め込まれている。また、アルミニウム合金からなる電池収納本体1の外側表面は、酸化被膜の形成により塗装の密着性を良くするための化成皮膜処理により下地処理が行われた後、下塗り塗装および上塗り塗装が施されている。
【0017】
また、電池収納本体1の板状の正面部12と2枚の板状の側面部14とは、リベット3によりカシメ接合(締結)されている。詳細には、図2に示すように、側面部14の正面側(Y1方向側)の端部には、板状の重ね部141が一体的に連結されており、正面部12のX方向の両端部12bと正面部12の内側に配置された重ね部141とが互いに重ね合わされた状態で、複数のリベット3によりカシメ接合されている。リベット3は、正面部12の両端部12bおよび重ね部141のそれぞれに設けられた貫通孔121および141a(図4参照)を貫通して正面部12の両端部12bと重ね部141とをカシメ接合している。また、背面部13側においても正面部12側と同様に、背面部13のX方向の両端部13bと背面部13の内側に配置された重ね部142とが複数のリベット3によりカシメ接合されている。背面部13側のリベット3は、背面部13の両端部13bおよび重ね部142のそれぞれに設けられた貫通孔131および142a(図4参照)を貫通して背面部13の両端部13bと重ね部142とをカシメ接合している。このようにして、正面部12の両端部12bと重ね部141との接合、および背面部13の両端部13bと重ね部142との接合にて接合部分4が形成されている。なお、リベット3は、本発明の「締結部材」の一例である。また、正面部12、背面部13、重ね部141および142は、本発明の「板状部」の一例である。
【0018】
また、重ね部141および142は、互いに同様の形状を有し、図3に示すように、側面部14の上端から下端まで上下方向(Z方向)に延びるように形成されている。また、重ね部141(142)は、下部側において、底面部11と側面部14との間の角部に向かって先細り形状になるように形成されている。また、重ね部141(142)は、上部側において、重ね部141(142)の中央部分よりもX方向の内側に突出することによりX方向の幅が大きくなるように形成されている。
【0019】
ここで、本実施形態では、図3および図4に示すように、正面部12および側面部14(背面部13および側面部14)の間の接合部分4には、互いに異なる材料からなる液状シール部材41(図4参照)およびペースト状シール部材42が備えられている。液状シール部材41は、耐電解液性が強いオレフィン系炭化水素を主成分とする液状材料からなり、シール部材に含まれる溶剤が揮発することにより硬化してゴム状の弾性体になる。この液状シール部材41は、図4に示すように、接合部分4の接合面間に備えられている。すなわち、液状シール部材41は、正面部12の端部12bの内側表面12c(背面部13の端部13bの内側表面13c)と、重ね部141の外側表面141b(重ね部142の外側表面142b)との間(接合面間)に備えられている。また、液状シール部材41は、接合部分4の接合面間において電池収納本体1の上端部近傍から下端部近傍まで全体に渡って連続して備えられている。なお、液状シール部材41は、本発明の「第1シール部材」の一例である。
【0020】
また、ペースト状シール部材42は、耐電解液性が強いシリル基含有ポリマーを主成分とするペースト状材料からなり、空気中の水分と反応することにより硬化して弾性体となる。このペースト状シール部材42は、図3および図4に示すように、電池収納本体1の内側において接合部分4のX方向の端部を覆うように備えられている。詳細には、図4に示すように、ペースト状シール部材42は、正面部12(背面部13)の端部12b(13b)の内側表面12c(13c)と重ね部141(142)の端部とにより形成される段差部を覆うように備えられている。また、ペースト状シール部材42は、図3に示すように、重ね部141(142)の端部の形状に沿って電池収納本体1の上端部近傍から下端部近傍まで全体に渡って連続して備えられている。また、ペースト状シール部材42は、電池収納本体1の底面部11側の四隅において、後述の切欠穴1bを塞ぐパテ5を覆うように備えられている。なお、ペースト状シール部材42は、本発明の「第2シール部材」の一例である。
【0021】
電池収納本体1の底面部11側の四隅には、図1〜図3に示すように、正面部12、背面部13および2枚の側面部14を底面部11に対して折り曲げる際の応力集中を緩和するための切欠穴1bが形成されている。なお、切欠穴1bは、本発明の「切欠部」の一例である。また、切欠穴1bには、図3に示すように、切欠穴1bを覆う(塞ぐ)ようにパテ5が備えられている。パテ5は、アルミ粉末を含有するエポキシ系樹脂により構成されている。これにより、パテ5の熱膨張率をアルミニウム合金からなる電池収納本体1の熱膨張率に近づけることが可能となり、その結果、熱膨張に起因してパテ5が電池収納本体1から剥離したり損傷を受けたりするのを抑制することが可能である。また、エポキシ系樹脂からなるパテ5は、シリル基含有ポリマーを主成分とするペースト状シール部材42よりも耐電解液性が弱い。上記のように、エポキシ系樹脂からなるパテ5を覆うように耐電解液性が強いシリル基含有ポリマーを主成分とするペースト状シール部材42を備えることによって、リチウムイオン電池200の電解液が電池収納本体1内に漏れた場合でも、パテ5が直接的に電解液に接触するのが抑制される。これにより、切欠穴1bを塞ぐパテ5が電解液により溶解されることを抑制することが可能である。なお、パテ5は、本発明の「第3シール部材」の一例である。
【0022】
蓋体2は、電池収納本体1と同じ材料であるアルミニウム合金(本実施形態では、JIS規格A6061)からなる約0.8mmの厚みを有する板状部材により形成されている。蓋体2は、図1、図2および図5に示すように、平面的に見て略矩形形状を有し、各辺が下方に向かって折り曲げられることにより形成された側壁部21を有している。各側壁部21には、図2および図5に示すように、電池収納本体1側に突出する突出部21aが設けられているとともに、突出部21aには、ネジ6(図2参照)を通す貫通孔21bが設けられている。また、図5に示すように、蓋体2の内側表面には側壁部21に対向するように対向壁部23が設けられている。蓋体2は、図6および図7に示すように、電池収納本体1の正面部12、背面部13および2枚の側面部14の上端部が側壁部21と対向壁部23との間に挿入されることにより電池収納本体1に対して着脱可能に係合して取り付けられるように構成されている。詳細には、蓋体2は、電池収納本体1に係合した状態で、8つのネジ6が貫通孔21b(図2および図5参照)を介して電池収納本体1のナット61(図2参照)に螺合されることによって電池収納本体1に着脱可能に取り付けられる。また、蓋体2の外側表面は、電池収納本体1と同様に、化成皮膜処理により下地処理が行われた後、下塗り塗装および上塗り塗装が施されている。
【0023】
また、蓋体2が電池収納本体1に取り付けられた状態において、側壁部21と対向壁部23との間には、図5〜図7に示すように、蓋体2の外周形状に沿ってパッキン7が備えられている。このパッキン7は、シリコンスポンジからなり、円形断面(図5参照)を有するとともに、弾性変形可能に構成されている。また、パッキン7は、蓋体2と電池収納本体1との間に挟み込まれるように配置されている。詳細には、パッキン7は、側壁部21と対向壁部23との間に配置された状態で蓋体2が電池収納本体1に取り付けられることによって、蓋体2の側壁部21および対向壁部23の内側表面と電池収納本体1の正面部12、背面部13および側面部14の上端部とにより押しつぶされるように弾性変形される。
【0024】
次に、図1〜図14を参照して、本発明の一実施形態による電池収納ケース100の製造方法について説明する。
【0025】
まず、図8に示すアルミニウム合金からなる板状部材の重ね部141および142を、側面部14と重ね部141および142との間の折り曲げ線14bに沿って内側に向かって折り曲げる。そして、正面部12、背面部13および側面部14を底面部11の4辺の折り曲げ線11a(破線で示した線)に沿って上方に折り曲げる。これにより、図9に示す状態となる。この際、各折り曲げ線11aの両端部に円弧形状の切り欠き11bが形成されていることによって、板状部材の折り曲げによる応力集中を緩和することが可能となる。なお、この切り欠き11bは、電池収納本体1の組み立て後に電池収納本体1の切欠穴1bとなる部分である。
【0026】
そして、正面部12と側面部14との間の接合部分4の接合面間に液状シール部材41を塗布する。具体的には、図9に示すように、正面部12の両端部12bの内側表面12cの重ね部141に重なる領域に液状シール部材41を塗布する。その後、正面部12、背面部13および側面部14をさらに折り曲げて図10に示す状態になるようにする。そして、リベット3を正面部12の両端部12bの貫通孔121および重ね部141の貫通孔141aに貫通させるとともに、正面部12と重ね部141とをカシメ接合する。なお、液状シール部材41は、正面部12と重ね部141とのカシメ接合後にシール部材に含まれる溶剤が揮発することにより硬化してゴム状の弾性体になる。この状態から、図12に示すように、電池収納本体1の四隅の切欠穴1b(図11参照)を覆うように電池収納本体1の内側からパテ5を塗布する。パテ5は主剤と硬化剤とからなり、所定の比率で混合することにより硬化する。また、背面部13と側面部14との接合も同様に、液状シール部材41を塗布し、カシメ接合した後に切欠部1bを覆うようにパテ5を塗布する。
【0027】
その後、図3、図4、図13および図14に示すように、電池収納本体1の内側において接合部分4の端部を覆うようにペースト状シール部材42を塗布する。この際、図3および図14に示すように、ペースト状シール部材42を、重ね部141(142)の端部の形状に沿って電池収納本体1の上端部近傍から下端部近傍まで全体に渡って連続するように塗布する。また、図13に示すように、電池収納本体1の底面部11側の四隅において、パテ5を覆うようにペースト状シール部材42を塗布する。この後、空気中の水分と反応することによってペースト状シール部材42は硬化して弾性体になる。
【0028】
そして、図2に示すように、電池収納本体1の内部に12個のリチウムイオン電池200を収納した後、図1に示すように、電池収納本体1の開口部1a(図2参照)を覆うように蓋体2を電池収納本体1に着脱可能に係合してネジ6により取り付ける。この際、図5に示すように、蓋体2の側壁部21と対向壁部23との間にパッキン7を嵌め込んだ後、図6および図7に示すように、蓋体2を電池収納本体1にネジ6により取り付ける。これにより、蓋体2に設けられたパッキン7が蓋体2と電池収納本体1との間に挟み込まれる。このようにして、本発明の一実施形態による電池収納ケース100が製造される。
【0029】
本実施形態では、上記のように、電池収納本体1の接合部分4の接合面間および段差部のそれぞれの形状により適した液状シール部材41およびペースト状シール部材42を使い分けてシールを行うことができるので、単に1種のシール部材によりシールを行う場合と比較して、高いシール機能を確保することができる。これにより、リチウムイオン電池200から電解液が漏れた場合にも、電解液が電池収納ケース100(電池収納本体1)の外部に漏れるのを有効に防止することができるので、高い安全性が求められる航空分野やロケット分野に対応可能な電池収納ケース100を提供することができる。
【0030】
また、本実施形態では、上記のように、接合部分4の接合面間に液状シール部材41を備えるとともに、接合部分4の端部を覆うようにペースト状シール部材42を備える。このように構成すれば、接合部分4において、液状シール部材41により電池収納本体1の接合面間のシールを行うことができるとともに、液垂れし難いペースト状シール部材42により電池収納本体1の接合部分4(接合面)の端部のシールを行うことができるので、接合部分4の接合面間および端部の両方でシールを行うことができ、その結果、電池収納本体1の接合部分4に対してシール機能を高くすることができる。
【0031】
また、本実施形態では、上記のように、電池収納本体1の折り曲げ部分の端部に板状部材の折り曲げによる応力集中を緩和するための切欠穴1bを形成し、切欠穴1bを塞ぐようにエポキシ系樹脂からなるパテ5を備える。このように構成すれば、切欠穴1bを設けたとしても、エポキシ系樹脂からなるパテ5を用いて電池収納本体1の切欠穴1bを塞ぎ、電池収納本体1のシール機能を確保することができる。
【0032】
また、本実施形態では、上記のように、電池収納本体1に対して着脱可能に係合して取り付けられる蓋体2と、電池収納本体1と蓋体2との係合部分に配置されるパッキン7とを備える。このように構成すれば、リチウムイオン電池200のメンテナンス等において利便性に優れる着脱可能な蓋体2を設けた構成でも、パッキン7により、電池収納本体1と蓋体2との間のシールを容易に行うことができる。これにより、リチウムイオン電池200から電解液が漏れた場合に、電池収納本体1のみならず、電池収納本体1と蓋体2との間からも電解液が外部に漏れるのを防止することができる。
【0033】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0034】
たとえば、上記実施形態では、本発明の締結部材の一例としてのリベットを用いて接合部分を締結する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、ネジなどのリベット以外の締結部材により接合部分を締結するようにしてもよい。
【0035】
また、上記実施形態では、電池収納本体をアルミニウム合金により構成する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、アルミニウム合金以外の金属材料により電池収納本体を構成してもよい。この場合、マグネシウム合金等、比較的軽量な金属材料により電池収納本体を構成すれば、アルミニウム合金の場合と同様に、電池収納ケースの軽量化を図ることが可能である。
【0036】
また、上記実施形態では、液状シール部材(第1シール部材)にオレフィン系炭化水素を主成分とする液状材料を用いるとともに、ペースト状シール部材(第2シール部材)にシリル基含有ポリマーを主成分とするペースト状材料を用いる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、シリコン系やエポキシ系を主成分とする材料など、第1シール部材および第2シール部材のそれぞれに、上記以外の材料を用いてもよい。この場合、第1シール部材には、小さい厚みで(薄く)塗布することが可能な液状材料を用いることが好ましい。また、第1シール部材および第2シール部材には、耐電解液性が強い材料を用いることが好ましい。
【0037】
また、上記実施形態では、パテ(第3シール部材)を、液状シール部材(第1シール部材)およびペースト状シール部材(第2シール部材)の両方と異なるエポキシ系樹脂により構成する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、シリル基含有ポリマーを主成分とする材料やシリコン系を主成分とする材料など、第1シール部材および第2シール部材の一方と同じ材料により第3シール部材を構成してもよいし、エポキシ系樹脂以外の材料で、第1シール部材および第2シール部材とは異なる材料により第3シール部材を構成してもよい。
【0038】
また、上記実施形態では、1枚の板状部材を折り曲げることにより箱形状の電池収納本体を形成する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、複数枚の板状部材を組み合わせて電池収納本体を形成してもよい。
【0039】
また、上記実施形態では、本発明の電池収納ケースに収納する電池として、リチウムイオン電池を収納する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、水系電解質電池の一種であるニッケル水素電池やリチウムイオン電池以外の非水系電解質電池を本発明の電池収納ケースに収納するようにしてもよい。
【0040】
また、上記実施形態では、液状シール部材(第1シール部材)およびペースト状シール部材(第2シール部材)を、電池収納本体の上端部近傍から下端部近傍まで全体に渡って連続して設ける例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1シール部材および第2シール部材を、電池から漏れ出した電解液が電池収納ケース(電池収納本体)の外部に漏れやすい下端部を含む下方側の領域のみに設けてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 電池収納本体
1a 開口部
1b 切欠穴(切欠部)
2 蓋体
3 リベット(締結部材)
4 接合部分
5 パテ(第3シール部材)
7 パッキン(第4シール部材)
12 正面部(板状部)
13 背面部(板状部)
41 液状シール部材(第1シール部材)
42 ペースト状シール部材(第2シール部材)
141、142 重ね部(板状部)
100 電池収納ケース
200 リチウムイオン電池
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状部どうしの重なり合う接合部分が締結部材で締結されており、前記接合部分に互いに異なる第1シール部材および第2シール部材が備えられている、電池収納ケース。
【請求項2】
前記第1シール部材は、前記接合部分の接合面間に備えられており、
前記第2シール部材は、ペースト状シール部材を含み、前記接合部分の端部を覆うように備えられている、請求項1に記載の電池収納ケース。
【請求項3】
前記電池収納ケースは、板状部材が折り曲げられることで形成されるとともに、
折り曲げ部分の端部には切欠部が設けられており、前記切欠部を塞ぐ第3シール部材が備えられている、請求項1または請求項2に記載の電池収納ケース。
【請求項1】
板状部どうしの重なり合う接合部分が締結部材で締結されており、前記接合部分に互いに異なる第1シール部材および第2シール部材が備えられている、電池収納ケース。
【請求項2】
前記第1シール部材は、前記接合部分の接合面間に備えられており、
前記第2シール部材は、ペースト状シール部材を含み、前記接合部分の端部を覆うように備えられている、請求項1に記載の電池収納ケース。
【請求項3】
前記電池収納ケースは、板状部材が折り曲げられることで形成されるとともに、
折り曲げ部分の端部には切欠部が設けられており、前記切欠部を塞ぐ第3シール部材が備えられている、請求項1または請求項2に記載の電池収納ケース。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−204101(P2012−204101A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66592(P2011−66592)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(507151526)株式会社GSユアサ (375)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(507151526)株式会社GSユアサ (375)
【Fターム(参考)】
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