説明

電池収納部カバーおよび電子機器

【課題】
電子機器の本体と電池収納部カバーとの隙間が変動してもその変動に十分対応して、電子機器の構成部材への過度な負荷を低減し、かつ高い防水性を図る。
【解決手段】
本発明は、電子機器に電池を収納する電池収納部に対向して固定される電池収納部カバー20であって、電池収納部の外側を囲むように配置され、電池収納部の外周面と密着して電池収納部内への液体の浸入を防止する環状の防水シール材31を備え、防水シール材31に、その周方向に形成され高さ方向に圧縮変形可能なドーム32を備え、ドーム32の突出側を外周面に向けて、カバー裏面に固定した電池収納部カバー20である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池を収納する電池収納部を覆う電池収納部カバーおよび電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
最近では、防水性の高い電子機器(例えば、携帯電話)の需要が高くなってきている。電子機器の防水性を高めるには、電池の出し入れの度に開閉する電池収納部カバーと電池収納部との隙間の防水性が不可欠である。電池収納部への水の浸入は、即、電気ショートにつながるからである。電池収納部への防水を図る代表的な構造として、例えば、電池収納部の外周面と電池収納部カバーとの隙間に、弾性材料から成る環状の防水シール材を挟む構造が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−134948
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、電池収納部を備える電子機器の本体および電池収納部カバーの双方の設計寸法のばらつきに起因して、当該本体と電池収納部カバーとの隙間が変動しやすい。このため、防水シール材に対する圧力も変動しやすい。例えば、隙間が防水シール材の厚みより小さすぎる場合には、防水シール材が十分に変形しないため、電池収納部カバーが本体に固定しにくい、あるいは固定できても電池収納部カバーの固定部位に負荷がかかり、破損の原因になりやすいという問題がある。加えて、変形量の小さな防水シール材は、電子機器の薄型化の障害にもつながる。一方、隙間が防水シール材の厚みより大きすぎる場合には、防水シール材と電池収納部の外周面とのシールが不十分となり、防水性が低下するという問題がある。
【0005】
本発明は、かかる問題を解消すべくなされたものであって、電子機器の本体と電池収納部カバーとの隙間が変動してもその変動に十分対応して、電子機器の構成部材への過度な負荷を低減し、かつ高い防水性を図ることのできる電池収納部カバーおよび電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一実施形態は、電子機器に電池を収納する電池収納部に対向して固定される電池収納部カバーであって、電池収納部の外側を囲むように配置され、電池収納部の外周面と密着して電池収納部内への液体の浸入を防止する環状の防水シール材を備え、防水シール材に、その周方向に形成され高さ方向に圧縮変形可能なドームを有し、当該ドームの突出側を外周面に向けて、防水シール材をカバー裏面に固定した電池収納部カバーである。
【0007】
本発明の別の一実施形態は、 さらに、防水シール材において、ドームの開口端部であってカバー裏面の径方向外側に位置する外側開口端部を、カバー裏面と固着した電池収納部カバーである。
【0008】
本発明の別の一実施形態は、さらに、防水シール材において、ドームの開口端部であってカバー裏面の径方向内側に位置する内側開口端部の底面に、ドームの内外に連通する1または複数の溝を有する電池収納部カバーである。
【0009】
本発明の別の一実施形態は、ドームの内側に、ドームの開口側に向けて突出する突出部をさらに備え、突出部を、カバー裏面との間に隙間を形成する長さにて備える電池収納部カバーである。
【0010】
本発明の別の一実施形態は、ドームの開口側と反対側に、その反対側に開口する第二ドームをさらに備える電池収納部カバーである。
【0011】
本発明の別の一実施形態は、ドームの開口側と反対側に、高さ方向への圧縮変形時に外周面に接触する面積を増大可能な変形部を、さらに備える電池収納部カバーである。
【0012】
本発明の一実施形態は、上述のいずれかの電池収納部カバーを備える電子機器である。
【0013】
本発明の一実施形態は、電池を収納する電池収納部と、電池収納部を覆う電池収納部カバーと、電池収納部の外側を囲むように配置され、電池収納部の外周面と電池収納部カバーとの間に密着して電池収納部内への液体の浸入を防止する環状の防水シール材と、を備え、防水シール材に、その周方向に形成され高さ方向に圧縮変形可能なドームを有し、ドームの突出側を電池収納部カバーのカバー裏面に向けて、防水シール材を電池収納部の外周面に固定した電子機器である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電子機器の本体と電池収納部カバーとの隙間が変動しても、その変動に十分対応して、電子機器の構成部材への過度な負荷を低減し、かつ高い防水性を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の第一の実施形態に係る電子機器の電池収納状況を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す電子機器の背面図である。
【図3】図3は、図1に示す電池収納部カバーの裏面側の斜視図である。
【図4】図4は、図3に示す電池収納部カバーの裏面図である。
【図5】図5は、図2に示す電子機器の本体側のみをA−A線で切断した断面であって、電池収納部カバーを本体に取り付けようとする状況を示す断面図である。
【図6】図6は、図5に示す状態から、電池収納部カバーを本体に取り付け完了した状態を示す断面図である。
【図7】図7は、図5に示す電池収納部カバーを本体に取り付ける前後における防水シール材の変形状況を示す断面図である。
【図8】図8は、本発明の第二の実施形態に係る電子機器の電池収納部カバーの防水シール材近傍を拡大して示す断面図である。
【図9】図9は、本発明の第三の実施形態に係る電子機器の電池収納部カバーの防水シール材の一部を示す斜視図である。
【図10】図10は、本発明の第四の実施形態に係る電子機器の電池収納部カバーの防水シール材近傍を拡大して示す断面図である。
【図11】図11は、図10に示す防水シール材を用いたときのストローク量−圧力曲線の一例を示すグラフである。
【図12】図12は、本発明の第五の実施形態に係る電子機器の電池収納部カバーの防水シール材近傍を拡大して示す断面図である。
【図13】図13は、図12に示す防水シール材を用いたときのストローク量−圧力曲線の一例を示すグラフである。
【図14】図14は、本発明の第六の実施形態に係る電子機器の電池収納部カバーの防水シール材近傍を拡大して示す断面図である。
【図15】図15は、第七の実施形態に係る電子機器の本体を図2に示すA−A線と同様の線で切断した断面図である。
【図16】図16は、図15に示す領域Bにおいて、電池収納部カバーを本体に取り付ける前後における防水シール材の変形状況を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の電池収納部カバーおよび電子機器の各実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下、電子機器の実施形態の説明の中で、電池収納部カバーの実施形態も説明する。
【0017】
<第一の実施形態>
【0018】
図1は、本発明の第一の実施形態に係る電子機器の電池収納状況を示す斜視図である。図2は、図1に示す電子機器の背面図である。
【0019】
本発明の第一の実施形態に係る電子機器の一例である携帯電話機器1は、折りたたみ型の機器であり、操作部を備える薄型で略直方体の本体1aに、ディスプレイを備える薄型で略直方体のディスプレイ部1bを、回動部を介して結合した構造を有する。本体1aは、操作部と反対側に相当する背面側に、薄型で略直方体の電池2を収納する電池収納部10と、電池収納部10を覆う電池収納部カバー20を着脱可能に備える。電池収納部10の周囲は、電池収納部カバー20を取り付けた状態で、本体1aの裏面および両側面が共に略平面になるように、電池収納部カバー20の裏面(カバー裏面)20aの形状に沿った立体形状を備える。具体的には、次のとおりである。電池収納部10の外周には、略水平な外周面11を備える。外周面11の面内左右方向および下方向の縁部は、本体1aの内方に窪みかつ幅の狭い段差面16を備える。外周面11の面内上方向の縁部は、電池収納部カバー20の厚さにほぼ等しい厚さだけ一段高く形成されている。外周面11は、その面内の左右各方向に、該面内上下方向に間隔をあけて係合凹部12,13を、それぞれ備える。また、外周面11は、その面内の下方向に、1つの係合凹部14を備える。
【0020】
電池収納部カバー20は、その面内左右方向および下方向に連続形成される側面21を備える。側面21は、それにより囲まれる内側の面よりも電池2側に突出しており、電池収納部カバー20を本体1aに取り付けた状態において本体1a側に形成される段差面16と当接可能な突出面26を備える。電池収納部カバー20は、その面内上方に、突出する爪部25を備える。爪部25は、本体1aの外周面11の面内上方において形成される係合凹部15(図5を参照)に挿入可能な位置と形状に形成されている。なお、電池収納部カバー20は、その外面であって爪部25に近い位置に、当該外面からわずかに突出する線状の凸部27を備える。凸部27は、電池収納部カバー20の着脱の際に、ユーザが操作しやすいように形成されている。
【0021】
図3は、図1に示す電池収納部カバーの裏面側の斜視図である。図4は、図3に示す電池収納部カバーの裏面図である。
【0022】
電池収納部カバー20は、カバー裏面20aであって突出面26に近い位置に、それぞれ1個ずつの係合凸部22,23と、1個の係合凸部24とを備える。2組の係合凸部22,23は、本体1aの外周面11に形成される2組の係合凹部12,13と係合可能な位置と大きさで形成されている。同様に、1つの係合凸部24も、本体1aの外周面11に形成される1つの係合凹部14と係合可能な位置と大きさで形成されている。電池収納部カバー20を本体1aに取り付ける際には、係合凸部22,23,24をそれぞれ係合凹部12,13,14に挿入し、電池収納部カバー20をその面内上方に向けてスライドさせて、爪部25を本体1a側の係合凹部15に挿入する。電池収納部カバー20のカバー裏面20aにおいて係合凸部22,23,24に囲まれる内側の領域には、四角枠状の防水シール材31が固定されている。防水シール材31は、電池収納部10の外側を囲むように配置され、電池収納部10の外周面11と密着して電池収納部10内への液体の浸入を防止する環状の弾性部材である。
【0023】
防水シール材31は、2つの開口端部を、カバー裏面20aと接着により固定している。ただし、防水シール材31は、カバー裏面20aに接着せず、カバー裏面20aに形成した凹部に嵌め込んでも良い。ここで、「固定」とは、嵌め込み、接着、溶着等の手段を問わず、また、容易に脱着可能な否かも問わずに広義に解釈される。一方、後述の「固着」は、固定よりも狭義に解釈され、接着や溶着のように容易に分離できない固定方式であって、強引に分離する場合には固着した両者のいずれか一方の破壊を招くおそれのある固定方式を意味する。
【0024】
図5は、図2に示す電子機器の本体側のみをA−A線で切断した断面であって、電池収納部カバーを本体に取り付けようとする状況を示す断面図である。図6は、図5に示す状態から、電池収納部カバーを本体に取り付け完了した状態を示す断面図である。図7は、図5に示す電池収納部カバーを本体に取り付ける前後における防水シール材の変形状況を示す断面図である。
【0025】
防水シール材31は、図5〜図7に示すように、断面略U字状であって防水シール材31の周長に沿って形成され、高さ方向に圧縮可能なドーム32を有し、そのドーム32の開口側をカバー裏面20a側に向けて、カバー裏面20aに固定されている。ドーム32の開口側の開口端部33,34は、ドーム32より外側に突出して形成されている。開口端部33は、もう一方の開口端部34よりもカバー裏面20aの中心から離れているため、以後、開口端部33を「外側開口端部33」と称する。同様の趣旨から、開口端部34を「内側開口端部34」と称する。ドーム32は、その周方向に連続する尾根部分に、外周面11側に突出する断面長方形状の突出部35を備える。ただし、突出部35は、必須の構成ではなく、ドーム32の尾根部分を略曲面に構成しても良い。
【0026】
防水シール材31は、好適には、弾性に富むエラストマーにて形成される。エラストマーとしては、例えば、シリコーンゴム、ウレタンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、フッ素ゴム、ニトリルゴム(NBR)、天然ゴム等を例示できる。防水シール材31は、上記のように、ドーム32の内側に略U字状の溝を有しており、ドーム32の高さ方向に変形しやすい。このため、図7に示すように、防水シール材31は、電池収納部カバー20を本体1aに取り付けた際に、距離Lだけ圧縮変形し、外から電池収納部カバー20と本体1aの外周面11との隙間に液体が浸入するのを有効に防止することができる。また、防水シール材31の変形容易な構造は、上記隙間が大きい場合にも有効に寄与する。電池収納部カバー20と本体1aの設計寸法公差上、最も隙間が大きくなる場合を想定して、防水シール材31の高さを選択することにより、その想定上の隙間よりも実際の隙間が狭くなっても、防水シール材31はその高さ方向に容易に圧縮変形して、高い防水性を発揮できる。
【0027】
<第二の実施形態>
【0028】
次に、本発明の電池収納部カバーおよび電子機器の第二の実施形態について説明する。第二の実施形態は、防水シール材の外側開口端部の底面のみをカバー裏面に固着し、内側開口端部をカバー裏面に固定していない点を除き、第一の実施形態と共通である。このため、第二の実施形態において、第一の実施形態と共通する部分の説明を省略する。
【0029】
図8は、本発明の第二の実施形態に係る電子機器の電池収納部カバーの防水シール材近傍を拡大して示す断面図である。
【0030】
第二の実施形態において、防水シール材31は、外側開口端部33のみを接着層36を介在させてカバー裏面20aに固着する一方、内側開口端部34をカバー裏面20aに固定していない。かかる状況下において、電池収納部カバー20を本体1aに固定すると、防水シール材31は、カバー裏面20aと本体1aの外周面11との間で圧縮される。その結果、内側開口端部34がカバー裏面20aの径方向内側に少し移動するように、ドーム32が圧縮変形して、内側突出部35は外周面11に、内側開口端部34の底面はカバー裏面20aに、それぞれ密着する。本体1aと電池収納部カバー20との隙間に液体(水等)が浸入しようとしても、接着材36と突出部35の両箇所が当該液体の浸入をくいとめることができる。さらに、ドーム32内の空気は、ドーム32の圧縮時に、内側開口端部34から外に抜けるので、カバー裏面20aと外周面11との隙間に応じて、防水シール材31のドーム32は容易に圧縮変形可能である。このように、第二の実施形態に係る電池収納部カバー20は、第一の実施形態と比べて、その高さ方向に変形しやすい。
【0031】
<第三の実施形態>
【0032】
次に、本発明の電池収納部カバーおよび電子機器の第三の実施形態について説明する。第三の実施形態は、防水シール材の内側開口端部の形状を除き、第一の実施形態と共通である。このため、第三の実施形態において、第一の実施形態と共通する部分の説明を省略する。
【0033】
図9は、本発明の第三の実施形態に係る電子機器の電池収納部カバーの防水シール材の一部を示す斜視図である。
【0034】
第三の実施形態において、防水シール材31は、内側開口端部34の底面に、ドーム32の内外に連通する半円柱形状の溝34aを複数備える。溝34aは、防水シール材31の圧縮時にドーム32内の空気を外に向けて抜くと共に、防水シール材31の伸張時に外からドーム32内に空気を入れるために形成されている。なお、溝34aは、防水シール材31の全周にわたって複数設けずに、1つのみを設けても良い。溝34aによって、ドーム32の内外に空気を移動自在にすることができるため、外側開口端部33の底面と、溝34aを除く内側開口端部34の底面とを接着材を介してカバー裏面20aに固着しても、防水シール材31は、ドーム32内の空気の抵抗を過度に受けることなく、容易に弾性変形できる。ただし、内側開口端部34をカバー裏面20aに固着せず、外側開口端部33のみをカバー裏面20aに固着しても良い。
【0035】
<第四の実施形態>
【0036】
次に、本発明の電池収納部カバーおよび電子機器の第四の実施形態について説明する。第四の実施形態は、防水シール材のドーム内側に突出部を備えることを除き、第二の実施形態と共通である。このため、第四の実施形態において、第二の実施形態と共通する部分の説明を省略する。
【0037】
図10は、本発明の第四の実施形態に係る電子機器の電池収納部カバーの防水シール材近傍を拡大して示す断面図である。図11は、図10に示す防水シール材を用いたときのストローク量−圧力曲線の一例を示すグラフである。
【0038】
第四の実施形態において、防水シール材31は、断面略U字状のドーム32の内側に、防水シール材31の周長に沿って、ドーム32の頂部から開口側に向かって突出する突出部37を備える。突出部37の長さは、その先端とカバー裏面20aとの間に隙間を形成する長さである。このため、電池収納部カバー20と本体1aの外周面11との隙間の大きさに応じて、突出部37がカバー裏面20aに届かない状態、カバー裏面20aに届く状態となり得る。防水シール材31の圧縮変形が開始する位置からのストローク量(図11の横軸にSで表す)と、防水シール材31に加わる圧力(図11の縦軸にFで表す)との関係をグラフに示すと、図11に例示するような曲線形状になる。突出部37がカバー裏面20aに接触する前までは、ストローク量と圧力の関係は、第二変曲点Mまでの曲線上にある。カバー裏面20aと外周面11との隙間がもっと狭く、突出部37がカバー裏面20aに接触する状態の場合には、防水シール材31にかかる圧力は急上昇する。突出部37は、防水シール材31の過度な圧縮変形を防止するためのストッパーとして機能する。なお、突出部37の長さは、ドーム32の開口面を超えない限り、カバー裏面20aに接する長さとしても良い。
【0039】
<第五の実施形態>
【0040】
次に、本発明の電池収納部カバーおよび電子機器の第五の実施形態について説明する。第五の実施形態は、防水シール材の形状を除き、第四の実施形態と共通である。このため、第五の実施形態において、防水シール材の形状につき主に説明し、第四の実施形態と共通する部分の説明を省略する。
【0041】
図12は、本発明の第五の実施形態に係る電子機器の電池収納部カバーの防水シール材近傍を拡大して示す断面図である。図13は、図12に示す防水シール材を用いたときのストローク量−圧力曲線の一例を示すグラフである。
【0042】
第五の実施形態において、防水シール材41は、先に説明した防水シール材31と同様、平面視にて四角枠形状を有する環状のシール材である。防水シール材41は、その周長に沿って、カバー裏面20a側に大きく開口する断面略U字状のドーム42を備える。ドーム42は、その尾根近傍に貫通溝を有し、その貫通溝の両側に立接板45,46を連接して備える。立接板45,46の端面45a,46bは、本体1aの外周面11に接する箇所である。立接板45,46間は、外周面11側に窪む断面略U字状の第二ドーム48により接続されている。第二ドーム48の開口容積は、ドーム42の開口容積に比べて小さい。第二ドーム48の頂上であってドーム42の内側には、ドーム42の開口側に向かって突出する突出部49を備える。突出部49の長さは、その先端とカバー裏面20aとの間に隙間を形成する長さである。また、ドーム42の外側開口端部43は、カバー裏面20aに接着層47を介して固着される一方、内側開口端部44は、カバー裏面20aに固定されていない。ただし、内側開口端部44をカバー裏面20aに固定しても良い。
【0043】
このような形状を有する防水シール材41を用いると、電池収納部カバー20と本体1aの外周面11との隙間の大きさに応じて、突出部49がカバー裏面20aに届かない状態、カバー裏面20aに届く状態、さらに、突出部49がカバー裏面20aに届いた後に第二ドーム48によって圧力を緩和する状態となり得る。防水シール材41の圧縮変形が開始する位置からのストローク量(図13の横軸にSで表す)と、防水シール材41に加わる圧力(図13の縦軸にFで表す)との関係をグラフに示すと、図13に実線で示す曲線形状になる。突出部49がカバー裏面20aに接触する前までは、グラフ中の点Pまでのストローク量と圧力との関係である。カバー裏面20aと外周面11との隙間がもっと狭く、突出部49がカバー裏面20aに接触する状態の場合には、第二ドーム48の変形により圧力を逃がすことができるため、防水シール材41に加わる圧力がほぼ一定になる。それ以上に隙間が狭い場合には、第二ドーム48の変形による圧力緩和が限界になるので、点Q以降では、急激に防水シール材41への圧力が大きくなる。図11に示すストローク量−圧力曲線に相当する曲線(図13中、点線で示す曲線)と比較すると、実線の曲線では、圧力が急上昇するときのストローク量がXだけ右側に存在する。これは、第二ドーム48の存在によって、圧力が緩和される範囲が広いことを意味する。このように、突出部49は、前述の突出部37と同様、ストッパーとして機能し、第二ドーム48は、隙間が多少変動しても、電池収納部カバー20や本体1aに与える圧力をほぼ一定にするように機能する。また、第二ドーム48は、開口面以外に、その内外への空気の入出口を有していない。このため、第二ドーム48は、外周面11に密着後、吸盤として機能し、外周面11と防水シール材41との間の防水性をより高めることが可能である。
【0044】
<第六の実施形態>
【0045】
次に、本発明の電池収納部カバーおよび電子機器の第六の実施形態について説明する。第六の実施形態は、防水シール材の形状を除き、第四の実施形態と共通である。このため、第六の実施形態において、防水シール材の形状につき主に説明し、第四の実施形態と共通する部分の説明を省略する。
【0046】
図14は、本発明の第六の実施形態に係る電子機器の電池収納部カバーの防水シール材近傍を拡大して示す断面図である。
【0047】
第六の実施形態において、防水シール材51は、断面略U字状であって防水シール材51の周長に沿って形成され、高さ方向に圧縮可能なドーム52を有し、そのドーム52の開口側をカバー裏面20a側に向けて、カバー裏面20aに固定されている。ドーム52の外側開口端部53および内側開口端部54は、ドーム52より外側に突出して形成されている。外側開口端部53は、接着層57を介してカバー裏面20aに固着される一方、内側開口端部54は、カバー裏面20aに固定されていない。ただし、内側開口端部54をカバー裏面20aに固定しても良い。ドーム52の尾根部分には、ドーム52の尾根部分の近傍から互いに離れる方向にカーブした2枚の変形部55,56を備える。変形部55,56は、防水シール材51が圧縮変形すると、外周面11に接触する面積を増大可能に変形する。この結果、変形部55,56は、電池収納部カバー20と本体1aの外周面11との隙間が非常に狭い場合、変形部55,56間の空間59を拡げ、吸盤のように外周面11に吸着可能である。このため、外周面11と防水シール材51との間の防水性をより高めることが可能である。
【0048】
また、ドーム52は、その内側に、その頂部から開口側に向かって突出する突出部58を備える。突出部58の長さは、カバー裏面20aとの間にわずかに隙間を形成する長さである。このため、ドーム52がわずかに圧縮される状況下では、突出部58は、ストッパーとして機能し、ドーム52の圧縮変形の抵抗となる。これに対して、変形部55,56は、ドーム52よりも容易に変形しやすく、防水シール材51が大きく圧縮を受けると、優先的に、変形部55,56が外周面11に押しつけられる。ただし、突出部58の先端位置とカバー裏面20aとの隙間をより大きくして、ドーム52が圧縮変形できる範囲をもっと拡大しても良い。
【0049】
<第七の実施形態>
【0050】
次に、本発明の電池収納部カバーおよび電子機器の第七の実施形態について説明する。第七の実施形態は、防水シール材を、電池収納部カバーに取り付けずに、電子機器の本体側に取り付けていることを除き、第二の実施形態と共通である。このため、第七の実施形態において、第二の実施形態と共通する部分の説明を省略する。
【0051】
図15は、第七の実施形態に係る電子機器の本体を図2に示すA−A線と同様の線で切断した断面図である。図16は、図15に示す領域Bにおいて、電池収納部カバーを本体に取り付ける前後における防水シール材の変形状況を示す断面図である。
【0052】
図15および図16に示すように、電子機器の一例である携帯電話機器1の本体1aは、電池収納部10の外周を囲む略水平な外周面11に防水シール材31を固定する。防水シール材31は、ドーム32の尾根部分をカバー裏面20a側に向けて、ドーム32の開口側を外周面11に向けて固定されている。図16に示すように、電池収納部カバー20を本体1aに取り付けると、その隙間に応じて、防水シール材31は、例えば、距離Lだけ圧縮変形する。ドーム32の外側開口端部33は、接着層36を介して外周面11に固着される一方、内側開口端部34は、外周面11に固定されていない。また、電池収納部カバー20を本体1aに取り付けると、ドーム32の尾根部分にある突出部35はカバー裏面20aに密着し、ドーム32内の空気は内側開口端部34から外に抜ける。このため、防水シール材31のドーム32は容易に圧縮変形できる。その結果、本体1aと電池収納部カバー20との隙間に液体(水等)が浸入しようとしても、接着材36と突出部35の両箇所が当該液体の浸入をくいとめることができる。なお、内側開口端部34を外周面11に固定しても良い。
【0053】
<その他の実施形態>
【0054】
以上、本発明の電池収納部カバーおよび電子機器の好適な各実施形態を説明してきたが、本発明は、上述の各実施形態に限定されず、種々の変形を施して実施することができる。
【0055】
第三の実施形態における溝34aは、第四〜第七の各実施形態における防水シール材31,41,51に形成しても良い。また、第七の実施形態は、第二の実施形態における防水シール材31を本体1aに固定する形態であるが、第一の実施形態、あるいは第三〜第六の各実施形態にて説明した防水シール材31,41,51を本体1a側に固定しても良い。また、第四の実施形態に係る防水シール材31の突出部37を、第一の実施形態に係る防水シール材31に設けても良い。このように、第一〜第七の各実施形態の構成要素は、組み合わせ可能な範囲で、互いに組み合わせることができる。また、図14に示す変形部55,56の代わりに、第二ドーム48と同様の形態を持つ変形部を採用しても良い。上述の実施形態において、突出部37,49,58は、それぞれ、防水シール材31,41,51の周長に沿って連続形成されているが、周長によって断続的に形成されていても良い。
【0056】
また、図8等において、防水シール材31,41,51を、接着層36,47,57を介して電池収納部カバー20あるいは本体1aに固着しているが、接着層36,47,57は必須ではない。例えば、防水シール材31,41,51と電池収納部カバー20あるいは本体1aを一体成形し、あるいは中板を介して両者を固定しても良い。また、防水シール材31,41,51を電池収納部カバー20あるいは本体1aの面内にて移動できないように、電池収納部カバー20あるいは本体1aに側壁を設け、その側壁に防水シール材31,41,51を当接させても良い。
【0057】
本発明は、携帯電話機器1以外に、電池を収納するタイプの如何なる電子機器にも応用可能であって、例えば、固定電話機器、ホームオーディオ機器、車載用オーディオ機器、カーナビゲーション機器、バッテリーを搭載する電気自動車等の機器にも応用できる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、電池収納部内の電池を覆う電池収納部カバーおよびそれを取り付ける電子機器に用いることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 携帯電話機器(電子機器の一例)
2 電池
10 電池収納部
11 外周面
20 電池収納部カバー
20a カバー裏面
31 防水シール材
32 ドーム
33 内側開口端部(開口端部)
34 外側開口端部(開口端部)
34a 溝
37 突出部
41 防水シール材
42 ドーム
43 内側開口端部(開口端部)
44 外側開口端部(開口端部)
48 第二ドーム
49 突出部
51 防水シール材
52 ドーム
53 内側開口端部(開口端部)
54 外側開口端部(開口端部)
55 変形部
56 変形部
58 突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器に電池を収納する電池収納部に対向して固定される電池収納部カバーであって、
上記電池収納部の外側を囲むように配置され、上記電池収納部の外周面と密着して上記電池収納部内への液体の浸入を防止する環状の防水シール材を備え、
上記防水シール材は、その周方向に形成され高さ方向に圧縮変形可能なドームを有し、当該ドームの突出側を上記外周面に向けて、カバー裏面に固定されていることを特徴とする電池収納部カバー。
【請求項2】
前記防水シール材は、前記ドームの開口端部であって前記カバー裏面の径方向外側に位置する外側開口端部を、前記カバー裏面と固着することを特徴とする請求項1に記載の電池収納部カバー。
【請求項3】
前記防水シール材は、前記ドームの開口端部であって前記カバー裏面の径方向内側に位置する内側開口端部の底面に、前記ドームの内外に連通する1または複数の溝を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電池収納部カバー。
【請求項4】
前記ドームの内側に、前記ドームの開口側に向けて突出する突出部をさらに備え、
上記突出部を、前記カバー裏面との間に隙間を形成する長さにて備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電池収納部カバー。
【請求項5】
前記ドームの開口側と反対側に、その反対側に開口する第二ドームを備えることを特徴とする請求項4に記載の電池収納部カバー。
【請求項6】
前記ドームの開口側と反対側に、前記高さ方向への圧縮変形時に前記外周面に接触する面積を増大可能な変形部を、さらに備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電池収納部カバー。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の電池収納部カバーを備えることを特徴とする電子機器。
【請求項8】
電池を収納する電池収納部と、
上記電池収納部を覆う電池収納部カバーと、
上記電池収納部の外側を囲むように配置され、上記電池収納部の外周面と上記電池収納部カバーとの間に密着して上記電池収納部内への液体の浸入を防止する環状の防水シール材と、
を備え、
上記防水シール材は、その周方向に形成され高さ方向に圧縮変形可能なドームを有し、当該ドームの突出側を上記電池収納部カバーのカバー裏面に向けて、上記電池収納部の上記外周面に固定されていることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−74335(P2012−74335A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220260(P2010−220260)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】