説明

電池外装材及びこれを用いた非水電解質二次電池

【課題】金属箔を不要にし得る電池外装材、並びに小型化及び軽量化が図られた非水電解質二次電池を提供すること。
【解決手段】電池素子外装材は、形状維持ポリマー層と、ケイ素、アルミニウム及びチタンなどの元素に係る金属酸化物と、を有する。 非水電解質二次電池は、正極と負極とをセパレータを介して巻回して成る電池素子と、これを包装する電池素子外装材を備え、正極と負極の電極端子を外部に導出したまま電池素子の周囲に沿って電池素子外装材を封止して成る。電池素子外装材を包囲する電池外装材を有し、この外装材が、形状維持ポリマー層と、ケイ素、アルミニウム及びチタンなどの元素に係る金属酸化物と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池を包装する電池外装材及に係り、更に詳細には、金属箔の使用を回避し得る電池外装材、及びこれを用いた電池であって小型化及び軽量化が図られた非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カメラ一体型ビデオテープレコーダ、携帯電話及び携帯用コンピュータ等のポータブル電子機器が数多く登場し、その小型、軽量化が図られている。かかる電子機器の小型、軽量化に伴って、これらのポータブル電源として用いられる電池パックに対しても、高エネルギーを有し、小型、軽量化されることが求められている。
このような電池パックに用いられる電池としては、高容量を有するリチウムイオン二次電池がある。
【0003】
リチウムイオン二次電池は、リチウムイオンをドープ・脱ドープすることができる正極及び負極を有する電池素子を備え、この電池素子と電気的に接続される回路基板によって制御されている。リチウムイオン二次電池は、パックを形成する際に、回路基板とともに収納ケースに収納される(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−93945号公報
【0004】
ここで、収納ケースは、プラスチック等から成り、例えば上下2つに分割され上ケースと下ケースとから構成される。収納ケースは、この上ケースと下ケースとを繋ぎ合わせることによって、内部にリチウムイオン二次電池と回路基板とを収納する空間を有する1つ筐体を形成する。
【0005】
かかる収納ケースを用いて電池パックを形成する際には、内部に収納されているリチウムイオン二次電池や回路基板を外部からの衝撃等から保護するため、収納ケースの肉厚がある程度必要となる。このため、電池パック全体の厚みが厚く、重量が重くなってしまう。
また、上下2つに分割された収納ケースを両面テープで繋ぎ合わせる場合、両面テープの厚みの分さらに電池パックの厚みが増してしまう。更に、分割された収納ケースを超音波溶着により繋ぎ合わせる際、超音波溶着する部分にある程度の厚みが必要となるため、電池パックが大きくなってしまう。
このように、従来の電池パックでは、収納ケースの肉厚を厚くせざるを得ず、全体が大型化され、重量が重くなってしまい、ポータブル電源に適さず用途が限られてしまう。
【0006】
これに対し、電池と回路基板とを囲むようにフレームを配置し、電池と回路基板とフレームとを一括して薄板状の包装体で包むことによって、小型化及び軽量化を図った電池パックが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献2】特開2005−158452号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような特許文献2に記載の電池パックにあっても、包装体に金属板を用いていたために必要な硬度と成形性を得るために、典型的には、100〜200μm程度の厚みと、更に接着剤や接着テープに50〜100μm程度の厚みが必要であり、更なる改善が望まれている。
また、金属酸化物セラミックスを電池パックの外装に用いることも考えられるが、金属酸化物セラミックは金属自体よりも硬さに優れるものの、脆性を有するので、外装に薄く密着させる加工技術に問題があった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、金属箔を不要にし得る電池外装材、並びに小型化及び軽量化が図られた非水電解質二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、所定の金属酸化物を用いることにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明の電池外装材は、形状維持ポリマー層と、
ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、亜鉛、カルシウム、マンガン、マグネシウム、ニオブ、錫、クロム、タングステン、ニッケル及び鉄から成る群より選ばれた少なくとも1種の元素に係る金属酸化物と、を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の電池外装材の好適形態は、上記金属酸化物が上記形状維持ポリマー層の構成樹脂と化合しており、次の一般式(1)
(M−O)n−ORm…(1)
(式中のMはケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、亜鉛、カルシウム、マンガン、マグネシウム、ニオブ、錫、クロム、タングステン、ニッケル及び鉄から成る群より選ばれた少なくとも1種の金属元素、m,nは1以上の整数、Rは相互に同一でも異なっていてもよく炭素数1〜10のアルキル基若しくはアリル基又は炭素数6〜24のアリール基を示す。)で表される構造を有する、シロキサン類似の有機金属酸化物を構成していることを特徴とする。
【0012】
更に、本発明の非水電解質二次電池は、正極と負極とをセパレータを介して巻回して成る電池素子と、この電池素子を包装する電池素子外装材を備え、上記正極と上記負極の電極端子を外部に導出したまま、上記電池素子の周囲に沿って上記電池素子外装材を封止して成る非水電解質二次電池において、
上記電池素子外装材を包囲する電池外装材を有し、
この電池外装材が、形状維持ポリマー層と、
ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、亜鉛、カルシウム、マンガン、マグネシウム、ニオブ、錫、クロム、タングステン、ニッケル及び鉄から成る群より選ばれた少なくとも1種の元素に係る金属酸化物と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、所定の金属酸化物を用いることとしたため、金属箔を不要にし得る電池外装材、並びに小型化及び軽量化が図られた非水電解質二次電池を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の電池外装材について詳細に説明する。なお、本明細書及び請求の範囲において、濃度、含有量及び充填量などについての「%」は特記しない限り質量百分率を表すものとする。
【0015】
上述の如く、本発明の電池外装材は、電池、典型的には、ポリマー型の非水電解質二次電池であって、正極と負極をセパレータを介して巻回して成る電池素子を金属ラミネートフィルムなどの電池素子外装材で包装した電池、を包装するのに用いられるものであり、形状維持ポリマー層と、所定の金属酸化物を有する。
【0016】
ここで、金属酸化物としては、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、カルシウム(Ca)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、ニオブ(Nb)、錫(Sn)、クロム(Cr)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)の酸化物、又はこれら酸化物の任意の混合物を挙げることができる。
【0017】
また、形状維持ポリマー層としては、この電池外装材の形状を維持する機能を有すれば十分であるが、上記金属酸化物と親和性、相溶性ないしは反応性を有するポリマーを構成樹脂とするものが好ましく、例えば、アクリルシリコーンポリマー、メラミンポリマー、ウレタンポリマー又はナイロンを構成樹脂とするポリマー層(ポリマーフィルム)を好適に使用することができる。
なお、形状維持ポリマー層としては、電池素子外装材である金属ラミネートフィルムとの密着性が良好で、寸法安定性や成型性に優れるものが好ましい。
【0018】
本発明の電池外装材において、上記の金属酸化物は、この外装材の硬さを向上する機能を果たし、上記形状維持ポリマー層と接触した状態で配置される。
例えば、この金属酸化物を上記形状維持ポリマー層に混入してもよく、この場合、形状維持ポリマー層の全体に亘って均一に散在していることが好ましい。
【0019】
なお、上記金属酸化物の混入量は、形状維持ポリマー層のポリマー種などに応じて適宜変更することができるが、代表的には、形状維持ポリマー層の質量に対して5〜90%程度とすることが好ましい。
5%未満では、この電池外装材の硬さを十分に向上できないことがあり、90%を超えると、製造時の成形性に問題が発生することがある。
【0020】
また、この電池外装材においては、上記金属酸化物と上記形状維持ポリマー層の構成樹脂とが化合した構造を有することが望ましく、この場合、金属酸化物が形状維持ポリマー層の構成樹脂とは、次の一般式(1)
(M−O)n−ORm…(1)
(式中のMはケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、亜鉛、カルシウム、マンガン、マグネシウム、ニオブ、錫、クロム、タングステン、ニッケル及び鉄から成る群より選ばれた少なくとも1種の金属元素、m,nは1以上の整数、Rは相互に同一でも異なっていてもよく炭素数1〜10のアルキル基若しくはアリル基又は炭素数6〜24のアリール基を示す。)で表される構造を有する、シロキサン類似の有機金属酸化物を構成する。
【0021】
更に、上述の金属酸化物は、形状維持ポリマー層と接していれば十分であるので、このような金属酸化物で金属酸化物層を形成し、この金属酸化物層を形状維持ポリマー層の外表面(得られる電池又は電池パックの表面側)及び内表面(電池素子と対向する面側)の少なくとも一方に被覆してもよい。
【0022】
上述のように、本発明の電池外装材は、形状維持ポリマー層及び所定の金属酸化物を必須の構成要件とするが、これ以外にも各種添加剤を含有することが可能であり、例えば、上記形状維持ポリマー層に、紫外線吸収剤、光安定剤、硬化剤又はこれらの任意の混合物を添加して、金属酸化物と共存させることができる。
【0023】
本発明の電池外装材は、その厚みが薄く、例えば形状維持ポリマー層の厚みが150μm以下である。形状維持ポリマー層の厚みが150μmを超えると、この外装材を用いて製造した電池や電池パックでも、体積エネルギー密度の点でメリットを発揮し難いことがある。
また、本発明の電池外装材は、硬さにも優れており、例えば表面のビッカース硬度は100以上である。ビッカース硬度が100未満では、落下試験などの品質保証試験において良好な結果が得られないことがある。
【0024】
このように、本発明の電池外装材は、従来より薄く高強度な電池パックを実現し得るものであるとともに、その小型化や軽量化も実現し得るものである。
また、上述のような金属酸化物又は有機金属酸化物と共に紫外線吸収材、光安定剤及び硬化剤のいずれかを用い、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂又はナイロンのいずれかを用いることにより、金属板よりも薄く、生産性に優れた加工を施すことができるるため、得られる電池のエネルギー密度が向上するだけでなく、電池パックの形成が容易であり、歩留まりが向上する。
【0025】
また、電池の信頼性を把握するための強制的な短絡試験である釘刺し試験においても、従来のアルミラミネートフィルムを用いた電池では、フィルム部分の巻き込みにより短絡箇所が極少部に集中し、電池の内部温度が上昇する虞があったが、本発明では、外装材の硬度が増加し、フィルムの巻き込み性が低減されるので、短絡箇所の集中を回避でき、このような異常時においても電池の温度上昇が有効に抑制される。
【0026】
次に、本発明の電池外装材及び非水電解質二次電池について、図面を参照して詳細に説明する。
【0027】
図1は、本発明の非水電解質電池の一実施形態において、電池外装材でパックする前の電池を示す分解斜視図である。
同図において、この電池20は、電池素子10が電池素子外装材の一例である金属ラミネートフィルム17に外装されて作製されるものであり、電池素子10はラミネートフィルム17に形成された凹部17a(空所17a)に収容され、その周辺部を封止される。なお、本実施形態においては、空所17aは、矩形板状をなす電池素子10の形状に対応して矩形板状の空間を有している。
【0028】
次に、電池素子10の構成について説明する。
図2は、ラミネートフィルム17に外装・収容される電池素子10の構造を示す斜視図である。同図において、この電池素子10は、帯状の正極11と、セパレータ13aと、正極11と対向して配された帯状の負極12と、セパレータ13bとを順に積層し、長手方向に巻回して形成されており、正極11及び負極12の両面にはゲル状電解質14が塗布されている。
【0029】
電池素子10からは、正極11と接続された正極端子15a及び負極12と接続された負極端子15bが導出されており(以下、特定の端子を指定しない場合は電極端子15と称する)、正極端子15a及び負極端子15bには、後に外装するラミネートフィルム17との接着性を向上させるために、無水マレイン酸変性されたポリプロピレン(PPa)等の樹脂片であるシーラント16a及び16b(以下、特定のシーラントを指定しない場合はシーラント16と適宜称する)が被覆されている。
【0030】
以下、上述の電池(電池外装材によるパック前)の構成要素につき詳細に説明する。
[正極]
正極は、正極活物質を含有する正極活物質層が正極集電体の両面状に形成されたものである。正極集電体は、例えばアルミニウム(Al)箔などの金属箔により構成される。
正極活物質層は、例えば正極活物質と、導電剤と、結着剤とを含有して構成される。ここで、正極活物質、導電剤、結着剤及び溶剤は、均一に分散していればよく、その混合比は問われない。
【0031】
正極活物質としては、目的とする電池の種類に応じて、金属酸化物、金属硫化物又は特定の高分子を用いることができる。例えば、リチウムイオン電池を構成する場合、主として、次式(2)
LiMO…(2)
(式中のMは少なくとも1種の遷移金属を示し、Xは電池の充放電状態によって異なるが、通常は0.05〜1.10である)で表されるリチウムと遷移金属との複合酸化物が用いられる。なお、リチウム複合酸化物を構成する遷移金属(M)としては、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)及びマンガン(Mn)等が用いられる。
【0032】
かかるリチウム複合酸化物として、具体的には、LiCoO、LiNiO、LiMn及びLiNiCo(0<y<1)等が挙げられる。
また、遷移金属元素の一部を他の元素に置換した固溶体も使用可能である。LiNi0.5Co0.5やLiNi0.8Co0.2等がその例として挙げられる。
これらのリチウム複合酸化物は、高電圧を発生でき、エネルギー密度が優れたものである。更に、正極活物質としてTiS、MoS、NbSe及びV等のリチウムを有しない金属硫化物又は酸化物を使用してもよい。これらの正極活物質は、単独で又は複数種を混合して用いてもよい。
【0033】
また、導電剤としては、例えばカーボンブラックやグラファイトなどの炭素材料等が用いられる。更に、結着剤としては、例えばポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン及びポリビニリデンフルオライド等が用いられる。また、溶剤としては、例えばN−メチルピロリドン等が用いられる。
【0034】
上述の正極活物質、結着剤及び導電剤を均一に混合して正極合剤とし、この正極合剤を溶剤中に分散させてスラリー状にする。次いで、このスラリーをドクターブレード法などにより正極集電体上に均一に塗布した後、高温で乾燥させて溶剤を蒸発させ、プレスすることにより正極活物質層が形成される。
【0035】
正極11は、正極集電体の一端部にスポット溶接又は超音波溶接で接続された正極端子15aを有している。この正極端子15aは金属箔や網目状のものが望ましいが、電気化学的及び化学的に安定であり、通電がとれるものであれば金属でなくとも問題はない。正極端子15aの材料としては、例えばアルミニウム等が挙げられる。
【0036】
[負極]
負極は、負極活物質を含有する負極活物質層が、負極集電体の両面上に形成されたものである。負極集電体は、例えば銅(Cu)箔、ニッケル箔又はステンレス箔などの金属箔により構成される。
【0037】
負極活物質層は、例えば負極活物質と、必要に応じて導電剤と、結着剤とを含有して構成される。なお、負極活物質、導電剤、結着剤及び溶剤については、正極活物質と同様に、その混合比は不問である。
【0038】
負極活物質としては、リチウム金属、リチウム合金又はリチウムをドープ・脱ドープ可能な炭素材料又は金属系材料と炭素系材料との複合材料が用いられる。
具体的にリチウムをドープ・脱ドープ可能な炭素材料としては、グラファイト、難黒鉛化炭素及び易黒鉛化炭素等が挙げられる。より具体的には、熱分解炭素類、コークス類(ピッチコークス、ニードルコークス、石油コークス)、黒鉛類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体(フェノール樹脂、フラン樹脂等を適当な温度で焼成し炭素化したもの)、炭素繊維、及び活性炭等の炭素材料を使用することができる。
更に、リチウムをドープ・脱ドープできる材料としては、ポリアセチレン、ポリピロール等の高分子やSnO等の酸化物を使用することができる。
【0039】
また、リチウムを合金化可能な材料としては多様な種類の金属等が使用可能であるが、スズ(Sn)、コバルト(Co)、インジウム(In)、アルミニウム、ケイ素(Si)及びこれらの合金がよく用いられる。金属リチウムを使用する場合は、必ずしも粉体を結着剤で塗布膜にする必要はなく、圧延したリチウム金属箔を集電体に圧着しても構わない。
【0040】
結着剤としては、例えばポリフッ化ビニリデンやスチレンブタジエンゴム等が用いられる。また、溶剤としては、例えばN−メチルピロリドンやメチルエチルケトン等が用いられる。
【0041】
上述の負極活物質、結着剤、導電剤を均一に混合して負極合剤とし、溶剤中に分散させてスラリー状にする。次いで、正極と同様の方法により負極集電体上に均一に塗布した後、高温で乾燥させて溶剤を飛散させ、プレスすることにより負極活物質層が形成される。
【0042】
負極12も正極11と同様に、集電体の一端部にスポット溶接又は超音波溶接で接続された負極端子15bを有しており、この負極端子15bは電気化学的及び化学的に安定であり、通電がとれるものであれば金属でなくとも問題はない。負極端子15bの材料としては、例えば銅、ニッケル等が挙げられる。
【0043】
なお、正極端子15a及び負極端子15bは同じ方向、例えば図2に示すように電池素子10が矩形板状をなす場合には、その一辺(通常は短辺の1つ)、から導出されていることが好ましいが、短絡等が起こらず電池性能にも問題がなければ、どの方向から導出されていても問題はない。
また、正極端子15a及び15bの接続箇所は、電気的接触がとれているのであれば取り付ける場所、取り付ける方法は上記の例に限られない。
【0044】
[電解液]
電解液としては、リチウムイオン電池に一般的に使用される電解質塩と非水溶媒が使用可能である。
【0045】
非水溶媒としては、具体的には、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート及びエチルプロピルカーボネート、又はこれらの炭酸エステル類の水素をハロゲンに置換した溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は1種類を単独で用いてもよいし、複数種を所定の組成で混合して用いてもよい。
【0046】
また、電解質塩の一例であるリチウム塩としては、通常の電池電解液に用いられる材料を使用することが可能である。具体的には、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiClO,LiBF、LiPF、LiNO、LiN(CFSO)2、LiN(CSO、LiAsF、LiCFSO、LiC(SOCF、LiAlCl及びLiSiF等を挙げることができるが、酸化安定性の点からはLiPF、LiBFが望ましい。これらリチウム塩は単独で用いても複数種を混合して用いてもよい。
リチウム塩を溶解する濃度は、上記非水溶媒に溶解することができる濃度であれば問題はないが、リチウムイオン濃度が非水溶媒に対して0.4mol/kg〜2.0mol/kgの範囲であることが好ましい。
【0047】
ゲル状電解質を用いる場合は、上述の電解液をマトリクスポリマでゲル化して用いる。
マトリクスポリマは、上記非水溶媒に上記電解質塩が溶解されてなる非水電解液に相溶可能であり、ゲル化できるものであればよい。このようなマトリクスポリマとしては、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリアクリロニトリル、及びポリメタクリロニトリルを繰り返し単位に含むポリマーが挙げられる。このようなポリマーは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0048】
その中でも特に好ましいのは、マトリクスポリマとして、ポリフッ化ビニリデン又はポリフッ化ビニリデンにヘキサフルオロプロピレンが7.5%以下の割合で導入された共重合体である。
かかるポリマーは、通常、数平均分子量が5.0×10〜7.0×10(50万〜70万)の範囲であるか、又は重量平均分子量が2.1×10〜3.1×10(21万〜31万)の範囲にあり、固有粘度が1.7〜2.1dl/gの範囲にある。
【0049】
[セパレータ]
セパレータは、例えばポリプロピレン(PP)若しくはポリエチレン(PE)などのポリオレフィン系の材料から成る多孔質膜、又はセラミック製の不織布などの無機材料から成る多孔質膜により構成され、これらの2種以上の多孔質膜を積層した構造としてもよい。中でも、ポリエチレン、ポリプロピレンの多孔質フィルムが最も有効である。
【0050】
一般的に、セパレータの厚みとしては5〜50μmが好適に使用可能であるが、7〜30μmがより好ましい。セパレータは、厚すぎると活物質の充填量が低下して電池容量が低下するとともに、イオン伝導性が低下して電流特性が低下する。逆に薄すぎると、膜の機械的強度が低下する。
【0051】
[電池の作製]
上述のようにして作製したゲル状電解質溶液を正極11及び負極12に均一に塗布し、正極活物質層及び負極活物質層に含浸させた後、常温で保存するか、若しくは乾燥工程を経てゲル状電解質層14を形成する。
次いで、ゲル状電解質層14を形成した正極11及び負極12を用い、正極11、セパレータ13a、負極12,セパレータ13bの順に積層して巻回し、電池素子10とする。
次いで、この電池素子10をラミネートフィルム17の凹部(空所)17aに収容して外装し、ゲル状非水電解質二次電池を得る。
【0052】
なお、ラミネートフィルム17としては、従来公知の金属ラミネートフィルム、例えば、アルミラミネートフィルムを用いることができる。
かかるアルミラミネートフィルムとしては、絞り加工に適し、電池素子10を収容する凹部17aを形成するのに適したものがよい。
【0053】
通常、アルミラミネートフィルムは、アルミニウム層の両面に接着層と表面保護層が配設された積層構造を有するもので、内側、即ち電池素子10の表面側から順に、接着層としてのポリプロピレン層(PP層)、金属層としてのアルミニウム層及び表面保護層としてのナイロン層又はポリエチレンテレフタレート層(PET層)が配される。
【0054】
そして、本実施形態では、図1及び図2に示すように、上述のようなラミネートフィルム17で電池素子10を外装し、電池素子10の周囲を溶着・封止して電池20とする。
また、上述のように、電池素子外装材への電池素子10の収容及び封止を行った後、図3(A)及び図3(B)に示すように、電池素子10が収容された凹部17aの両側の部分(以下、サイド封止部と適宜称する)17bを、凹部17aの方向に向けて折り曲げる。
【0055】
上記の折り曲げ角度θは、80゜〜100゜の角度範囲とすることが好ましい。
80゜未満では、凹部17aの両側に設けられたサイド壁17bが開きすぎて電池20の幅が広くなってしまい、電池20の小型化及び電池容量の向上が困難となる。また、上限値の100゜は凹部17aの形状によって規定される値であり、扁平型の電池素子10を収容する場合、折り曲げ角度の限界値は100゜程度となる。なお、サイド封止部17bにおける熱溶着の幅は、好ましくは0.5〜2.5mmm、より好ましくは1.5〜2.5mmである。
【0056】
サイド部17bの折り返し幅Dは、電池20の小型化及び電池容量の向上のためには、凹部17aの高さh又は電池素子10の厚み以下の寸法にすることが好ましい。また、非水電解質二次電池20の小型化及び電池容量の向上のためには、折り返しの回数は1回にすることが好ましい。
【0057】
そして、本実施形態では、以上のようにして得られた電池20のアルミラミネートフィルム(電池素子外装材)17を、上述した本発明の電池外装材で被覆・包囲することにより、目的とする非水電解質二次電池を得る。
【0058】
図4は、電池を電池外装材でパックして本実施形態の非水電解質二次電池を作製する工程を示した平面説明図である。
まず、電池20を図中の破線に沿って折り曲げ(図4(A)及び(B))、更にアルミラミネートフィルム17を電池外装材18で被覆して、本実施形態の非水電解質二次電池30を得る(図4(C))。
得られた非水電解質二次電池30をボトム部に沿って切断した断面図を図5(A)に、電極端子の延在方向に沿って切断した断面図を図5(B)に示す。
【0059】
なお、電池外装材による被覆・包囲の方法は、特に限定されるものではないが、電池外装材を含む液体をアルミラミネートフィルム17に噴霧した後に乾燥したり、電池外装材を含む液体中に電池20を浸漬した後に紫外線や熱で硬化させることにより、行うことができる。
【0060】
上述の実施形態ではゲル状電解質を用いた非水電解質二次電池30について説明したが、本発明は、電解液を用いたラミネートフィルム外装電池にも適用することができる。この場合、上述の実施形態において、ゲル状電解質を正極及び負極表面に塗布する工程を省き、ラミネートフィルム溶着工程の途中で電解液を注液する工程を設ける。
より具体的には、矩形板状をなす電池素子10の周囲の3辺を溶着して封止した後、残りの1辺の開口部から電解液を注液し、その後にこの1辺を溶着して封止すればよい。これにより、封止部の全体形状は矩形枠状になる。
【0061】
なお、本発明の非水電解質二次電池を用いれば、小型化及び軽量化が図られた電池パックを得ることができるが、かかる電池パックは、一例として上述の実施形態のような非水電解質二次電池に対し、この電池を電気的に保護する保護回路及び対象機器と接続する接続端子を備える配線基板と配設することによって作製できる。
【実施例】
【0062】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0063】
(実施例1〜35、比較例1〜3)
紫外線吸収剤としてベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(共同薬品社製商品名:バイオソーブ591又はチバガイギー社製商品名:チヌビン900)を、光安定剤としてヒンダートアミン系光安定剤(三共社製商品名:サノールLS292)を、硬化剤としてイソシアネート系硬化剤〔日本ポリウレタン社製商品名:コロネートHX(固形分濃度:100%、NCO割合:21.3%)又は住友バイエルウレタン社製商品名:ディスモジュールBL3175(固形分濃度:75%、NCO割合:11.1%、溶剤:ソルベントナフサ)〕をそれぞれ用い、表1に示すように配合し、各例の電池外装材用組成物を得た。
【0064】
上述の図1に示すような電池において、アルミ蒸着PETフィルムの内面側に接着剤を塗布した電池素子外装材(ラミネートフィルム17)を有する電池を準備し、このラミネートフィルムの表面に、上述のようにして得られた各例の電池外装材用組成物をコートし、各例の非水電解質二次電池を得た。
なお、当該コート処理は、各例の電池外装材用組成物100重量部にジイソブチルケトン30重量部を添加して得られた溶液を、ラミネートフィルム表面にエアースプレーにて吹き付け、室温にて5分間放置し、次いで、80℃のオーブン中で硬化させ、外装材表面に表1に示した膜厚のコート層を形成させることにより行った。
【0065】
[性能評価]
(1)ビッカース硬度の測定方法
各例の非水電解質二次電池表面のビッカース硬度は、島津製作所HMV−1/2により測定した。得られた結果を表1に併記する。
(2)1m高さ10回落下試験方法
1m高さ試験10回は、1mの高さからランダムな向きで各例の非水電解質二次電池を10回落下させ、試験後に目視で電池の変形が確認されたものをNG,変形していないものをOKと判定した。得られた結果を表1に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
アルミ蒸着PETフィルムの内面側に接着剤を塗布した電池素子外装材(ラミネートフィルム17)の表面に、電池外装材用組成物であるケイ素やアルミニウム等の金属酸化物をコートした実施例1〜17の非水電解質二次電池は、本発明の範囲に属するが、表1より、これらがビッカース硬度試験及び落下試験に優れた特性を有していることが分かる。
【0068】
また、実施例18〜35は上記の(1)式で表される構造を有するシロキサン類似の有機金属化合物を電池外装材に用いたもので、本発明の範囲に属するが、これらもビッカース硬度試験及び落下試験に優れた特性を有していることが分かる。
【0069】
なお、表1には示さなかったが、ケイ素、アルミニウム及びチタン以外の、ジルコニウム、亜鉛、カルシウム、マンガン、マグネシウム、ニオブ、錫、クロム、タングステン、ニッケル及び鉄を含むシロキサン類似の有機金属酸化物を電池外装材に用いても、上記上記同様にビッカース硬度試験及び落下試験に優れた特性が得られることも確認できた。
【0070】
以上、本発明を若干の好適実施形態及び実施例により説明したが、本発明はかかる実施形態や実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
例えば、本発明の電池素子外装材は、図1などに示した電池や電池素子のみならず、各種のゲル状ないしはポリマー型の非水電解質二次電池に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の非水電解質電池の一実施形態において、電池外装材でパックする前の電池を示す分解斜視図である。
【図2】ラミネートフィルムに外装・収容される電池素子の構造を示す斜視図である。
【図3】図1に示す電池のサイド壁近傍を示す端面図である。
【図4】電池を電池外装材でパックして本実施形態の非水電解質二次電池を作製する工程を示した平面説明図である。
【図5】非水電解質二次電池の断面図である。
【符号の説明】
【0072】
10…電池素子、11…正極、12…負極、13a,13b…セパレータ、14…ゲル状電解質、15a…正極端子、15b…負極端子、16a,16b…シーラント、17…ラミネートフィルム、17a…凹部(空所)、17b…サイド封止部、18…電池外装材、20…電池、30…非水電解質二次電池、θ…折り曲げ角度、D…折り返し幅、h…凹部高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
形状維持ポリマー層と、
ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、亜鉛、カルシウム、マンガン、マグネシウム、ニオブ、錫、クロム、タングステン、ニッケル及び鉄から成る群より選ばれた少なくとも1種の元素に係る金属酸化物と、
を有することを特徴とする電池外装材。
【請求項2】
上記形状維持ポリマー層が、アクリルシリコーンポリマー、メラミンポリマー、ウレタンポリマー又はナイロンを構成樹脂とすることを特徴とする請求項1に記載の電池外装材。
【請求項3】
上記形状維持ポリマー層が、紫外線吸収剤、光安定剤及び硬化剤から成る群より選ばれた少なくとも1種の添加剤を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の電池外装材。
【請求項4】
上記金属酸化物が、上記形状維持ポリマー層に混入されていることを特徴とする請求項1に記載の電池外装材。
【請求項5】
上記金属酸化物が上記形状維持ポリマー層の構成樹脂と化合しており、次の一般式(1)
(M−O)n−ORm…(1)
(式中のMはケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、亜鉛、カルシウム、マンガン、マグネシウム、ニオブ、錫、クロム、タングステン、ニッケル及び鉄から成る群より選ばれた少なくとも1種の金属元素、m,nは1以上の整数、Rは相互に同一でも異なっていてもよく炭素数1〜10のアルキル基若しくはアリル基又は炭素数6〜24のアリール基を示す。)で表される構造を有する、シロキサン類似の有機金属酸化物を構成していることを特徴とする請求項1に記載の電池外装材。
【請求項6】
上記金属酸化物が層を形成し、この金属酸化物層が上記形状維持ポリマー層の外表面及び/又は内表面に被覆されていることを特徴とする請求項1に記載の電池外装材。
【請求項7】
上記形状維持ポリマー層の厚さが150μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の電池外装材。
【請求項8】
表面のビッカース硬度が100以上であることを特徴とする請求項1に記載の電池外装材。
【請求項9】
正極と負極とをセパレータを介して巻回して成る電池素子と、この電池素子を包装する電池素子外装材を備え、上記正極と上記負極の電極端子を外部に導出したまま、上記電池素子の周囲に沿って上記電池素子外装材を封止して成る非水電解質二次電池において、
上記電池素子外装材を包囲する電池外装材を有し、
この電池外装材が、形状維持ポリマー層と、
ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、亜鉛、カルシウム、マンガン、マグネシウム、ニオブ、錫、クロム、タングステン、ニッケル及び鉄から成る群より選ばれた少なくとも1種の元素に係る金属酸化物と、を有することを特徴とする非水電解質二次電池。
【請求項10】
上記電池素子外装材が、アルミラミネートフィルムから成ることを特徴とする請求項9に記載の非水電解質二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−323907(P2007−323907A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−151677(P2006−151677)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】