説明

電池外装用包装材

【課題】 本発明は、リチウムイオン電池本体、キャパシタ、電気二重層キャパシタ等の電気化学セル本体を密封収納する外装体に用いられ、耐熱性、耐電解液性、耐ガス透過性、成形性に優れる電気化学セル用包装材料を提供することを目的とする。
【解決手段】 正極活物質及び正極集電体から成る正極と、負極活物質及び負極集電体から成る負極と、正極及び負極間に充填される電解質と、を含む電気化学セル本体を収納し周縁部をヒートシールして密封収納する外装体に用いられ、基材層と、表面に化成処理が施された金属箔層と、酸変性ポリオレフィン層と、熱接着性樹脂層とを、少なくとも順次積層して構成される電気化学セル用包装材料で、酸変性ポリオレフィン層が、融点が145℃〜165℃である酸変性ポリプロピレンにより形成されており、熱接着性樹脂層が、ポリプロピレンにより形成されていることを特徴とする電気化学セル用包装材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定した耐熱性、耐電解液性、耐ガス透過性、成形性を示す電池化学セル用包装材料に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化、軽量化、薄型化、ポータブル化が進み、近年では、携帯電話、ノート型パソコンなどのモバイル情報機器が普及するに至っている。それに伴って、これらの電子機器の電源として用いられている電池にも、小型化、軽量化、薄型化、高性能化が求められるようになっている。
【0003】
電子機器用の電池としては、高エネルギー密度二次電池が適している。そのため、単位重量及び単位体積当たりの放電容量が大きく、かつ高い電圧を可能とする電極活物質の開発が進められ、非水電解質を用いたリチウムイオン二次電池などの非水電解質電池が実用化されるに至っている。リチウムイオン二次電池などの高性能二次電池では、充放電に金属リチウムまたはこれと同等の電位を有する材料を用いるため、水溶液電解質を用いることができず、例えば、リチウム塩を有機溶媒に溶解した有機電解液などの非水電解質が用いられている。このような非水電解質を用いた高性能二次電池は、非水電解質電池と呼ばれている。
【0004】
非水電解質電池として代表的なリチウムイオン二次電池は、正極、負極、セパレーター、及び非水電解質を備えており、リチウムイオンの移動により電流を発生する電池である。正極及び負極は、一般に、集電体と呼ばれている金属箔やエクスパンテッドメタルなどの金属基材上に、活物質層が形成された構造を有している。
【0005】
正極としては、アルミニウム、ニッケルなどから形成された正極集電体上に、金属酸化物、カーボンブラック、金属硫化物、ポリアクリロニトリル等の高分子正極材料などの正極活物質からなる層を形成したものが用いられている。負極としては、銅、ニッケル、ステンレスなどから形成された負極集電体上に、リチウム金属、リチウム合金、カーボンブラック、ポリアクリロニトリル等の高分子負極材料などの負極活物質からなる層を形成したものが用いられている。
【0006】
セパレーター材料としては、有機電解液を用いたリチウムイオン二次電池ではポリエチレン系微多孔膜が主流である。ポリマー電池用では、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリルなどに電解液を含浸させたゲル化シートが用いられている。非水電解質としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル等のカーボネート系電解液;リチウム塩からなる無機固体電解質;ゲル電解質などが用いられている。
【0007】
非水電解質電池は、パソコン、携帯端末装置(例えば、携帯電話、PDA)、ビデオカメラ、電気自動車、エネルギー貯蔵用蓄電池、ロボット、人工衛星等の電源として用いられている。
【0008】
非水電解質電池は、正極、負極、セパレーター、及び非水電解質を外装体内に密封したものである。従来、外装体として、金属をプレス加工して円筒状または直方体状の容器に成形した金属製缶が用いられていた。しかし、金属製缶は、小型化、軽量化、薄型化に限界があり、しかも容器外壁がリジッドであるため、電池形状の自由度が小さく、ひいては、該電池を収容する電子機器の形状の自由度が小さくなるという問題があり、近年、金属製缶に替わって多層フィルムが包装材料として用いられる傾向にある。
【0009】
図4は従来の包装材料30の層構成を示す断面図であり、図4に示すように、従来の包装材料30は、少なくとも基材層31、金属箔層32、熱接着性樹脂層35で構成され、金属箔層32表面には化成処理層33が形成されるとともに、金属箔層32と熱接着性樹脂層35とは酸変性ポリオレフィン層34により接着されている。また、基材層31と金属箔層32は接着剤層37により接着されている。また、この包装材料30を袋状に形成し電池本体を収納するパウチタイプ、または、包装材料30をプレス加工して凹部を形成し、凹部に電池本体を収納するエンボスタイプの電池用外装体が形成される。
【0010】
図5は、従来のパウチタイプのリチウムイオン電池41の斜視図であり、図6は、図5に示したパウチタイプのリチウムイオン電池41を分解して示す分解斜視図である。図5及び図6に示すように、パウチタイプのリチウムイオン電池41は最内層の熱接着性樹脂層35(図4参照)同士を重ね合わせ、外装体40の周縁部であるヒートシール部40aをヒートシールすることによりパウチタイプの外装体40が形成され、外装体40内にリチウムイオン電池本体42を収納し、開口部をヒートシールしてリチウムイオン電池本体42を密封収納する。
【0011】
また、図7は従来のエンボスタイプのリチウムイオン電池51の斜視図であり、図8は図7に示したエンボスタイプのリチウムイオン電池51を分解して示す分解斜視図である。図7及び図8に示すように、エンボスタイプのリチウムイオン電池51はエンボス部が形成されたトレイ50tの内部にリチウムイオン電池本体52を収納し、トレイ50tとシート50sの熱接着性樹脂層35(図4参照)同士を重ね合わせ外装体50の周縁部であるヒートシール部50aをヒートシールすることにより、トレイ50tとシート50sから構成されるエンボスタイプの外装体50内部にリチウムイオン電池本体52を密封収納する。
【0012】
なお、リチウムイオン電池本体42、52は、正極活物質及び正極集電体から成る正極と、負極活物質及び負極集電体から成る負極と、正極及び負極間に充填される電解質と(いずれも図示せず)を含むセル(蓄電部)と、セル内の正極及び負極に連結されるとともに先端が外装体40、50の外部に突出する金属端子44、54から構成されている。
【0013】
また、図9は従来のエンボスタイプのリチウムイオン電池61の斜視図であり、図10はリチウムイオン電池61のB−B’における断面図である。図10に示すように、外装体60は最内層の熱接着性樹脂層35同士を重ね合わせ、外装体60の周縁部をヒートシールすることにより外装体周縁部(ヒートシール部60a)を接着し、ヒートシール以外の第1領域60bにリチウムイオン電池本体62を密封収納している。しかし、第1領域60bにおいて、リチウムイオン電池61の長期間の使用又は急速な充電により、リチウムイオン電池本体62が発熱し、外装体60の最内層に配された熱接着性樹脂層35の一部が溶融することがある。このとき、外装体60内部に充填された電解質が溶融した熱接着性樹脂層35の一部から金属箔層32に浸透し、リチウムイオン電池61は短絡を発生することが問題となっていた。
【0014】
一方、熱接着性樹脂層35が容易に溶融しないよう、熱接着性樹脂層35に耐熱性に優れた樹脂を使用した場合、ヒートシール時の温度を高く設定する必要があり、外装体60の製造効率が低下するという問題があった。そこで、これらの問題を解決するため、従来、熱接着性樹脂層35と金属箔層32との間に耐熱性に優れた4−メチル−1−ペンテン系樹脂からなる絶縁性樹脂層を介在させることにより、リチウムイオン電池本体62が発熱し、外装体60の最内層に配された熱接着性樹脂層35の一部が溶融した場合でも、絶縁性樹脂層が溶融することなく、外装体60内部に充填された電解液が溶融した熱可塑性樹脂層35の一部から金属箔層32に浸透しリチウムイオン電池61が短絡することを防止した包装材料が提案されている。(例えば、特許文献1)
【特許文献1】特開2002−151023号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、熱接着性樹脂層35と金属箔層32との間に4−メチル−1−ペンテン系樹脂からなる絶縁性樹脂層を介在させた包装材料においては、4−メチル−1−ペンテン系樹脂は、金属箔層及び熱接着性樹脂層として主に用いられるポリオレフィン系樹脂と接着性に低いため、4−メチル−1−ペンテン系樹脂からなる絶縁性樹脂層を熱接着性樹脂層35と金属箔層32との間に介在させた場合、接着剤層としてポリオレフィンポリオールとイソシアネート系硬化剤からなる接着剤を設ける必要があり、この場合、新たに設けた接着剤層は水蒸気ガスバリア性及び耐電解液性に劣るため、包装材料全体に安定した水蒸気ガスバリア性、耐電解液性を付与することができないという問題があった。さらに、4−メチル−1−ペンテン系樹脂からなる絶縁性樹脂層を熱接着性樹脂層35と金属箔層32との間に介在させた場合、包装材料をプレス成形加工しトレイを成形する際、金属箔層32と絶縁性樹脂層とは延伸性が異なり、絶縁性樹脂層に十分な追従性がないため、所定深さに成形できなかったり成形後の稜線部および角部がシャープに成形できない場合が発生しやすくなり、成形性が低下することが問題となっていた。
【0016】
また、上記リチウムイオン電池本体42、52,62を外装体40、50、60に収納する場合の他、キャパシタ、電気二重層キャパシタ等の電気化学セル本体を収納し密封シールした場合にも同様の問題が生じていた。
【0017】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、リチウムイオン電池本体、キャパシタ、電気二重層キャパシタ等の電気化学セル本体を密封収納する外装体に用いられ、耐熱性、耐電解液性、水蒸気ガスバリア性、成形性に優れる電気化学セル用包装材料を提供することを目的とする。
【発明の効果】
【0018】
上記課題を解決するため、請求項1記載の電気化学セル用包装材料では、正極活物質及び正極集電体から成る正極と、負極活物質及び負極集電体から成る負極と、前記正極及び前記負極間に充填される電解質と、を含む電気化学セル本体を収納し周縁部をヒートシールすることで前記電気化学セル本体を内部に密封収納する外装体に用いられ、基材層と、表面に化成処理が施された金属箔層と、酸変性ポリオレフィン層と、熱接着性樹脂層とを、少なくとも順次積層して構成される電気化学セル用包装材料であって、前記酸変性ポリオレフィン層が融点が145℃〜165℃である酸変性ポリプロピレンにより形成されており、前記熱接着性樹脂層がポリプロピレンにより形成されていることを特徴としている。このように構成することにより、表面に化成処理が施された金属箔層とポリプロピレンからなる熱接着性樹脂層との間に、融点が145℃〜165℃である酸変性ポリプロピレンからなる酸変性ポリオレフィン層が介在しているため、外装体内部で電解質を含む電気化学セル本体が発熱し、最内層の熱接着性樹脂層が溶融した場合でも、耐熱性を有する酸変性ポリオレフィン層が溶融することがなく、金属箔層が表出することが防止できる。このため、溶融した熱接着性樹脂層の一部から金属箔層に浸透しようとする電解質を耐熱性を有する酸変性ポリオレフィン樹脂層が遮断し、電解質と金属箔層との接触を原因とする電気化学セルの短絡を防止することができる。したがって、本構成の電気化学セル用包装材料は優れた耐熱性を有し、本構成の電気化学セル用包装材料を用いて作成された外装体は外装体内部の発熱に対して優れた絶縁性を有する。
【0019】
また、従来のように、中間層として耐熱性樹脂フィルムを介在させる場合に比べて、金属箔層と熱接着性樹脂層との接着性に与える影響が少ない。このため、本構成の電気化学セル用包装材料はプレス成形性が低下することを防止できる。
以上のように、本発明によれば、表面に化成処理を施した金属箔層と熱接着性樹脂層との間に耐熱性の高い酸変性ポリオレフィン層を介在させることにより、耐熱性、耐電解液性、水蒸気ガスバリア性、成形性に優れた電気化学セル用包装材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、耐熱性、耐ガス透過性、成形性に優れる電気化学用包装材料である。以下に、図面を用いて、本発明の電気化学セル用包装材料について、詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明に係る電気化学セル用包装材料10の一部分の層構成を示す断面図であり、図1を用いて本発明の電気化学セル用包装材料10を構成する各層の材料について説明する。本発明の電気化学セル用包装材料10は最外層に基材層11、最内層に熱接着性樹脂層15、その間に金属箔層12が配されたものであり、熱接着性樹脂層15と金属箔層12は酸変性ポリオレフィン層14を介して接着している。また、基材層11と金属箔層12は接着剤層17を介して接着されている。なお、本発明の電気化学セル用包装材料10は上記各層を含むとともに各層間に異なる層を介在させた場合も本発明の技術範囲に含むものとする。
また、図2は本発明の電気化学セル用包装材料10を用いて形成されたパウチ型の外装体20内にリチウムイオン電池本体22(図2中、不図示)を収納したリチウムイオン電池21の斜視図であり、図3は図2中のリチウムイオン電池21のA−A’における断面図である。図2及び図3に示すように、外装体20は金属端子24を挟持した状態で、その挟持部分を含む周縁部がヒートシールされ(以下、ヒートシールされた部分をヒートシール部20aとする)、外装体20内部に電解質を含むリチウムイオン電池本体22を密封収納している。
【0022】
次に、図1に示した本発明に係る電気化学セル用包装材料10を構成する各層について具体的に説明する。最内層の熱接着性樹脂層15が対向され、リチウムイオン電池本体22の金属端子24(図2参照)介在し外側に突出した状態で挟持しその周縁部において熱接着されることによりリチウムイオン電池本体22を密封されている。なお、図示はしないが、熱接着性樹脂層15と金属端子24との間に、金属接着性を有する金属端子密封用接着性フィルムが介在されている。金属端子密封用接着性フィルムとしては、中間層に耐熱性及び水蒸気ガスバリアー性に優れたポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートを用い、その表裏面に酸変性ポリオレフィン層を積層した3層構成のものを使用することができる。
【0023】
なお、熱接着性樹脂層15としては耐熱性の点からポリプロピレンが用いられる。ポリプロピレンは、ランダムプロピレン、ホモプロピレン、ブロックプロピレン等各タイプに分けることができる。
【0024】
また、上記各タイプのポリプロピレン、すなわち、ランダムポリプロピレン、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレンには、低結晶性のエチレンーブテン共重合体、低結晶性のプロピレンーブテン共重合体、エチレンとブテンとプロピレンの3成分共重合体からなるターポリマー、シリカ、ゼオライト、アクリル樹脂ビーズ等のアンチブロッキング剤(AB剤)、脂肪酸アマイド系のスリップ剤等を添加してもよい。
【0025】
また、本発明に係る熱接着性樹脂層15は上記各タイプのポリプロピレン層を適時組み合わせて多層化してもよい。
【0026】
次に酸変性ポリオレフィン層14について説明する。酸変性ポリオレフィン層14は金属箔層12とポリプロピレンからなる熱接着性樹脂層15とを接着するために設ける層であり、ポリプロピレンからなる熱接着性樹脂層15と接着性に優れた酸変性ポリプロピレンが用いられ、不飽和カルボン酸でグラフト変性したポリプロピレン、プロピレンとアクリル酸、または、メタクリル酸との共重合体等であり、必要に応じてブテン成分、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体等を5%以上添加してもよいものである。なお、酸変性ポリオレフィン層は、融点が145℃〜165℃の酸変性ポリプロピレンが用いられ、融点が145℃未満であると外装体内部で電解質を含む電気化学セル本体が発熱し、最内層のポリプロピレンからなる熱接着性樹脂層が溶融した場合に酸変性ポリオレフィン層も溶融してしまい、また、融点が165℃を超える場合には溶融押出し時の溶融張力が小さく熱安定性に劣り分子切断を起こしやすくサージングが出やすい、ネックインが大きい等の問題があり、熱溶融押出しが困難となったり所定厚みで製膜できない虞があり好ましくない。
【0027】
なお、ポリプロピレンからなる熱接着性樹脂層及び酸変性ポリプロピレンからなる酸変性ポリオレフィンには、冷間成形工程、ヒートシール工程及びヒートシール後の折り曲げ工程での応力により微細なクラックが発生することを防止するため、密度が900kg/m3以下の低結晶性のエチレンーブテン共重合体、低結晶性のプロピレンーブテン共重合体、あるいは、非晶性のエチレンープロピレン共重合体、非晶性のプロピレンーエチレン共重合体やエチレン−ブテン−プロピレン共重合体(ターポリマー)等を添加することができる。
【0028】
次に基材層11について説明する。基材層11は、一般に、延伸ポリエステルまたはナイロンフィルムからなるが、この時、ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、共重合ポリエステル、ポリカーボネート等が挙げられる。またナイロンとしては、ポリアミド樹脂、すなわち、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6とナイロン6,6との共重合体、ナイロン6,10、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等が挙げられる。
【0029】
また、基材層11は耐ピンホール性および電池の外装体とした時の絶縁性を向上させるために、ポリエステルフィルム又はナイロンフィルムの他、異なる材質のフィルムを積層化することも可能である。基材層11を積層体化する場合、基材層が2層以上の樹脂層を少なくとも一つを含み、各層の厚みが6μm以上、好ましくは、6〜25μmである。基材層を積層化する例としては、図示はしないが次の1)〜7)が挙げられる。
1)延伸ポリエチレンテレフタレート/延伸ナイロン
2)延伸ナイロン/延伸ポリエチレンテレフタレート
3)フッ素系樹脂/延伸ポリエチレンテレフタレート(フッ素系樹脂は、フィルム状物、または液状コーティング後乾燥で形成)
4)シリコーン系樹脂/延伸ポリエチレンテレフタレート(シリコーン系樹脂は、フィルム状物、または液状コーティング後乾燥で形成)
5)フッ素系樹脂/延伸ポリエチレンテレフタレート/延伸ナイロン
6)シリコーン系樹脂/延伸ポリエチレンテレフタレート/延伸ナイロン
7)アクリル系樹脂/延伸ナイロン(アクリル系樹脂はフィルム状、または液状コーティング後乾燥で硬化)
【0030】
なお、3)〜7)に示すように、包装材料の機械適性(包装機械、加工機械の中での搬送の安定性)、表面保護性(耐熱性、耐電解質性)、2次加工とてリチウムイオン電池用の外装体20をエンボスタイプとする際に、エンボス時の金型と基材層11との摩擦抵抗を小さくする目的あるいは電解液が付着した場合に基材層11を保護するために、基材層11を多層化、基材層表面にフッ素系樹脂層、アクリル系樹脂層、シリコーン系樹脂層、ポリエステル系樹脂層、及びこれらのブレンド物層等の保護層(図1中、不図示)を設けることが好ましい。
【0031】
また、上記延伸ポリエチレンテレフタレートの代わりに延伸ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートを用いた場合にも同様の効果が得られる。また、基材層11は金属箔層12と、ドライラミネーション法等により接着剤層17を介して貼り合わされる。
【0032】
次に金属箔層12について説明する。金属箔層12は、外部からリチウムイオン電池の内部に水蒸気が浸入することを防止するための層で、金属箔層単体のピンホール、及び加工適性(パウチ化、エンボス成形性)を安定化し、かつ耐ピンホール性をもたせるために厚さ15μm以上のアルミニウム、ニッケルなどの金属、又は、無機化合物、例えば、酸化珪素、アルミナ等を蒸着したフィルムなども挙げられるが、金属箔層12として好ましくは厚さが20〜80μmのアルミニウムとする。
【0033】
また、ピンホールの発生を改善し、リチウムイオン電池の外装体のタイプをエンボスタイプとする場合、エンボス成形におけるクラックなどの発生のないものとするために、金属箔層12として用いるアルミニウムの材質を、鉄含有量が0.3〜9.0重量%、好ましくは0.7〜2.0重量%とすることが望ましい。
【0034】
これによって、鉄を含有していないアルミニウムと比較して、アルミニウムの展延性がよく、外装体として折り曲げによるピンホールの発生が少なくなり、包装材料をエンボス成形する時に側壁を容易に形成することができる。なお、鉄含有量が、0.3重量%未満の場合は、ピンホールの発生の防止、エンボス成形性の改善等の効果が認められず、アルミニウムの鉄含有量が9.0重量%を超える場合は、アルミニウムとしての柔軟性が阻害され、包装材料として製袋性が悪くなる。
【0035】
また、冷間圧延で製造されるアルミニウムは焼きなまし(いわゆる焼鈍処理)条件でその柔軟性・腰の強さ・硬さが変化するが、本発明において用いるアルミニウムは焼きなましをしていない硬質処理品より、多少または完全に焼きなまし処理をした軟質傾向にあるアルミニウムがよい。
【0036】
すなわち焼きなましの条件は、加工適性(パウチ化、エンボス成形)に合わせ適宜選定すればよい。たとえば、エンボス成形時のしわやピンホールを防止するためには、成形の程度に応じて焼きなましされた軟質アルミニウムを用いることができる。
【0037】
また、金属箔層12であるアルミニウムの表、裏面に化成処理を施し化成処理層13を形成することによって、接着剤との接着強度を向上させることができる。
【0038】
次にこの化成処理層13について説明する。図1に示すように、化成処理層13は少なくとも金属箔層12の熱接着性樹脂層15側の面に形成するものである。化成処理層13は酸変性ポリオレフィン層14と金属箔層12とを安定的に接着し、金属箔層12と熱接着性樹脂層15のデラミネーションを防止することができる。また、化成処理層13は金属箔層12の腐食を防止する働きも有る。
【0039】
具体的には、リン酸塩、クロム酸塩、フッ化物、トリアジンチオール化合物等の耐酸性皮膜を形成することによってエンボス成形時の金属箔層12と熱接着性樹脂層15との間のデラミネーション防止と、リチウムイオン電池の電解質と水分とによる反応で生成するフッ化水素により、アルミニウム表面の溶解、腐食、特にアルミニウムの表面に存在する酸化アルミが溶解、腐食することを防止し、かつ、アルミニウム表面の接着性(濡れ性)を向上させることができる。
【0040】
化成処理層13は、クロム酸クロメート処理、リン酸クロメート処理、塗布型クロメート処理等のクロム系化成処理、あるいは、ジルコニウム、チタン、リン酸亜鉛等の非クロム系(塗布型)化成処理等により金属箔層12面に形成されるものであるが、フッ素系樹脂と強固に接着するという点、また、連続処理が可能であると共に水洗工程が不要で処理コストを安価にすることができるという点などから塗布型化成処理、特にアミノ化フェノール重合体、3価クロム化合物、リン化合物、を含有する処理液で処理するのが最も好ましい。
【0041】
また、化成処理層13の形成方法としては、処理液をバーコード法、ロールコート法、グラビアコート法、浸漬法等の周知の塗布法を選択して成形すればよい。また、化成処理層13を形成する前に金属箔層12表面に、予め、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、酸活性化法等の周知の脱脂処理法で処理を施しておく方が、化成処理層13の機能を最大限に発現させるとともに、長期間維持することができる点から好ましい。
【0042】
また、前記の各層には、適宜、製膜性、積層化加工、最終製品2次加工(パウチ化、エンボス成形)適性を向上、安定化する目的のために、コロナ処理、ブラスト処理、酸化処理、オゾン処理等の表面活性化処理をしてもよい。
【0043】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明の作用及び効果について、実施例を用いて具体的に説明する。実施例1は、金属箔層と熱接着性樹脂層との間に、融点150℃の酸変性ポリプロピレンからなる酸変性ポリオレフィン層を積層した電気化学セル用包装材における耐熱性及び絶縁性について評価したものである。
【0045】
本実施例で用いる電気化学セル用包装材料の製造方法は、まず、アルミニウムの一方の面に化成処理を施し、化成処理を施していない面に、延伸ナイロンフィルムを2液硬化型ポリウレタン系接着剤を介してドライラミネート法により貼り合わせた。次に、化成処理を施した面に以下に示す酸変性ポリプロピレン(以下酸変性PPと略す)を溶融押出しポリプロピレンフィルム(以下PPフィルムと略す、厚さ23μm)をサンドイッチラミネート法により積層して実施例1の電気化学セル用包装材料を得た。
【0046】
なお、本実施例において、基材層は延伸ナイロンフィルム(厚さ25μm)、金属箔層はアルミニウム(厚さ40μm)を用い、化成処理は、フェノール樹脂、フッ化クロム化合物、リン酸からなる処理液をアルミ二ウム表面にロールコート法により塗布し、皮膜温度が90℃以上となる条件において焼付けた。ここで、クロムの塗布量は10mg/m2(乾燥重量)であり、酸変性PPは、30μmとなるように溶融押出し法により積層した。
【0047】
次に、上記実施例1の酸変性ポリプロピレンに替えて、以下の融点を有する酸変性ポリプロピレンを溶融押出し法により30μmした以外は実施例1と同様とし、実施例2〜5及び比較例1、2の電気化学セル包装材料を得た。

【表1】

【0048】
次に、正極端子をニッケルタブにセットし、負極端子を上記電気化学セル用包装材料を構成するアルミニウムにセットして、電圧25Vを印加し、ニッケルタブを挟持した部分を含み7mm幅でシール温度170℃、シール圧0.5MPaでシールを行い、抵抗値が1000MΩ以下になる時間(以下、絶縁破壊時間とする)をそれぞれ測定した。本評価法においては、実施例1〜4及び比較例1、比較例2のサンプルを各2つずつ用意し、電気化学セル用包装材料として上記評価方法により各評価を行なった。その結果を表1に示す。
【0049】
次に、正極端子をニッケルタブにセットし、負極端子を上記電気化学セル用包装材料を構成するアルミニウムにセットし、電圧25Vを印加し抵抗値が1000MΩ以下になる時間(以下、絶縁破壊時間とする)をそれぞれ測定した。本評価法においては、比較例1及び本発明1、2のサンプルを各2つずつ用意し、電気化学セル用包装材料として上記評価方法により各評価を行なった。その結果を表1に示す。
【表2】

【0050】
表2に示すように、融点が145℃〜165℃の酸変性ポリプロピレンを酸変性ポリオレフィン層として用いた実施例1〜4に係る電気化学セル用包装材料は、融点140℃の酸変性ポリプロピレンを用いた比較例1、融点120℃の酸変性ポリプロピレンを用いた比較例2に係る電気化学セル用包装材料と比較して絶縁性に優れることがわかった。
【0051】
このことから、融点が145℃〜165℃の酸変性ポリプロピレンを酸変性ポリオレフィン層として用いた電気化学セル用包装材料を用いて作成した外装体は耐熱性に優れると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の電気化学セル用包装材料の層構造を示す断面図
【図2】本発明の電気化学セル用包装材料を外装体に用いたリチウムイオン電池の斜視図
【図3】図2で示したリチウムイオン電池のA−A’における断面図
【図4】従来の電気化学セル用包装材料の層構造を示す断面図
【図5】従来の電気化学セル用包装材料を外装体に用いたリチウムイオン電池の斜視図
【図6】図5で示したリチウムイオン電池の分解斜視図
【図7】従来の電気化学セル用包装材料を外装体に用いたリチウムイオン電池の斜視図
【図8】図7で示したリチウムイオン電池の分解斜視図
【図9】従来の電気化学セル用包装材料を外装体に用いたリチウムイオン電池の斜視図
【図10】図9で示したリチウムイオン電池のB−B’における断面図
【符号の説明】
【0053】
10、30 電気化学セル用包装材料
11、31 基材層
12、32 金属箔層
13、33 化成処理層
14、34 酸変性ポリオレフィン層
15、35 熱接着性樹脂層
17、37 接着剤層
20、40、50、60 外装体
20a、40a、50a、60a ヒートシール部
20b、60b 第1領域
20c 第2領域
21、41、51、61 リチウムイオン電池
22、42、52、62 リチウムイオン電池本体
24、44、54、64 金属端子(タブ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質及び正極集電体から成る正極と、負極活物質及び負極集電体から成る負極と、前記正極及び前記負極間に充填される電解質と、を含む電気化学セル本体を収納し周縁部をヒートシールすることで前記電気化学セル本体を内部に密封収納する外装体に用いられ、基材層と、表面に化成処理が施された金属箔層と、酸変性ポリオレフィン層と、熱接着性樹脂層とを、少なくとも順次積層して構成される電気化学セル用包装材料であって、
前記酸変性ポリオレフィン層が、融点が145℃〜165℃である酸変性ポリプロピレンにより形成されており、前記熱接着性樹脂層が、ポリプロピレンにより形成されていることを特徴とする電気化学セル用包装材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−86744(P2010−86744A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−253281(P2008−253281)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】