説明

電池材料積層用基板、電池材料の積層方法、及び電池の製造方法

【課題】湾曲状態を容易に制御することが可能な電池材料積層用基板、並びに、該基板を用いる電池材料の積層方法及び電池の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】温度によって湾曲状態を制御可能な温度感応性金属積層体を有する、電池材料積層用基板とし、該電池材料積層用基板を少なくとも含む基材の表面にマスクを配置するマスク配置工程と、電池材料積層用基板の温度を調整することによりマスクが配置された基材の湾曲状態を調整する、湾曲状態調整工程と、湾曲状態を調整された、マスクが配置された基材に電池材料を積層させる、電池材料積層工程とを含む、電池材料の積層方法及び電池の製造方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の製造時に使用可能な電池材料積層用基板、並びに、該基板を用いる電池材料の積層方法、及び電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜電池は、デバイスの小型軽量化を図りやすく、電源容量に比して原材料を節約しうること、また、柔軟性を持たせることが容易であること等の利点を有している。そのため、例えば薄膜太陽電池を自動車や建築物の外周に張り付けるなど、種々の応用が期待されている。
【0003】
薄膜電池はその製造工程において、電池を構成すべき各層の位置、形状、大きさを画定するためにマスク部材が用いられる。薄膜電池の製造時には、可撓性を有するフレキシブル基板が用いられ、各層を形成する前に、フレキシブル基板の表面にマスク部材が配設される。電池の各層は、マスク部材によって画定された位置に形成されるため、基板とマスク部材とを密着させる必要があり、マスク部材には皺や緩みが生じないことが望まれる。
【0004】
基板表面にマスク部材を配設する方法(以下において、「マスキング方法」ということがある。)に関する技術として、例えば、特許文献1には、少なくとも1つの基板を曲げ、湾曲した基板表面を提供することと、少なくとも一つのフレキシブルシートを該湾曲した表面に提供することとを包含するマスキング方法が開示されており、特許文献1には、ばねピン等を用いてシートに力を加えることによりシートに皺や弛みが生じないようにする技術も開示されている。また、特許文献2には、正極基板表面側が凹で正極基板裏面側が凸となる形態に湾曲している複数の正極板と、負極基板表面側が凹で負極基板裏面側が凸となる形態に湾曲している複数の負極板とについて、正極基板表面と負極基板表面とを積層方向の同一側に向けて、セパレータを挟んで交互に積層して電極体を形成する電極体形成工程を有する電池の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2010−505044号公報
【特許文献2】特開2007−242320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている技術によれば、基板表面にマスク部材を皺や弛みのない状態で配置することが可能になると考えられる。しかしながら、特許文献1に開示されている技術では、ばねピン等の機構を用いて基板を湾曲させるため、基板を湾曲させる機構が複雑化しやすく、基板の湾曲状態を制御する機構も複雑化しやすいという問題があった。かかる問題は、特許文献1に開示されている技術と特許文献2に開示されている技術とを組み合わせたとしても、解決することが困難であった。
【0007】
そこで本発明は、湾曲状態を容易に制御することが可能な電池材料積層用基板、並びに、該基板を用いる電池材料の積層方法及び電池の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段をとる。すなわち、
本発明の第1の態様は、温度によって湾曲状態を制御可能な温度感応性金属積層体を有する、電池材料積層用基板である。
【0009】
ここで、「温度感応性金属積層体」とは、熱膨張率の異なる複数の金属が積層された板状の部材で、温度変化によって反り量が変化するものを意味する。すなわち、熱膨張率の異なる2種類の金属を積層させたバイメタルや、熱膨張率の異なる3種類の金属を積層させたトリメタルを含む概念である。
【0010】
本発明の第1の態様において、温度感応性金属積層体を構成する複数の金属のうち、一の金属がアンバー鋼であることが好ましい。
【0011】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様にかかる電池材料積層用基板を少なくとも含む基材の表面にマスクを配置する、マスク配置工程と、電池材料積層用基板の温度を調整することにより、マスクが配置された基材の湾曲状態を調整する、湾曲状態調整工程と、湾曲状態を調整された、マスクが配置された基材に、電池材料を積層させる、電池材料積層工程と、を含むことを特徴とする、電池材料の積層方法である。
【0012】
ここに、本発明において、「電池材料積層用基板を少なくとも含む基材」とは、基材に、少なくとも上記本発明の第1の態様にかかる電池材料積層用基板が含まれることを意味し、基材に、当該電池材料積層用基板及び他の部材が含まれる形態をも含む概念である。電池材料積層用基板以外に基材に含まれ得る他の部材としては、例えば、電池材料積層用基板の表面に配置可能な可撓性を有するフレキシブル基板や、当該フレキシブル基板の表面に形成される電池材料層等を例示することができる。また、本発明において、「マスク」とは、電池材料が配設されるべき基材表面の部位を覆うことなく、電池材料が配設されるべきではない基材表面の部位を覆う可撓性を有する部材をいう。
【0013】
本発明の第3の態様は、本発明の第1の態様にかかる電池材料積層用基板を少なくとも含む基材の表面にマスクを配置するマスク配置工程と、電池材料積層用基板の温度を調整することにより、マスクが配置された基材の湾曲状態を調整する湾曲状態調整工程と、湾曲状態を調整された、マスクが配置された基材に、電池材料を積層させる電池材料積層工程と、を有することを特徴とする、電池の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第1の態様にかかる電池材料積層用基板は、温度感応性金属積層体を有している。ここで、温度感応性金属積層体の湾曲状態は温度を変更することによって制御することができ、その反り量Dは湾曲係数K、厚さt、長さL、及び温度変化ΔTを用いて、
D=KLΔT/t …(1)
で表わされる。すなわち、本発明の第1の態様にかかる電池材料積層用基板は、温度感応性金属積層体の温度を変更することによって、その湾曲状態を制御することができる。そのため、本発明の第1の態様によれば、湾曲状態を容易に制御することが可能な、電池材料積層用基板を提供することができる。
【0015】
本発明の第1の態様において、温度感応性金属積層体を構成する複数の金属のうち、一の金属がアンバー鋼であることにより、アンバー鋼は温度膨張係数が小さいので、温度感応性金属積層体の湾曲係数Kを大きくすることができる。したがって、かかる形態とすることにより、上記効果に加え、望ましい湾曲状態を小さな温度変化で得ることが可能な、電池材料積層用基板を提供することができる。
【0016】
本発明の第2の態様にかかる電池材料の積層方法では、本発明の第1の態様にかかる電池材料積層用基板を用いて電池材料を積層する。本発明の第1の態様にかかる電池材料積層用基板は、湾曲状態を容易に制御可能であるため、当該基板の表面に配置されるマスクに皺や弛みが発生する事態を抑制することができる。マスクに皺や弛みを発生させないことにより、電池材料が配設されるべき領域を正確に画定することが可能になる。したがって、本発明の第2の態様によれば、配設される電池材料の位置を正確に制御することが可能な、電池材料の積層方法を提供することができる。
【0017】
本発明の第3の態様にかかる薄膜電池の製造方法は、本発明の第1の態様にかかる電池材料積層用基板を用いて電池材料を積層する工程を有している。本発明の第1の態様にかかる電池材料積層用基板は、湾曲状態を容易に制御可能であるため、当該基板の表面に配置されるマスクに皺や弛みが発生する事態を抑制することができる。マスクに皺や弛みを発生させないことにより、電池材料が配設されるべき領域を正確に画定することが可能になる。したがって、本発明の第3の態様によれば、配設される電池材料の位置を正確に制御することが可能な、電池の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の電池材料積層用基板1を説明する断面図である。
【図2】本発明の電池材料積層用基板1が湾曲した姿勢を説明する断面図である。
【図3】本発明の電池材料の積層方法S10を説明するフロー図である。
【図4】本発明の電池材料の積層方法に用いる装置10の構成を説明する断面図である。
【図5】本発明の電池材料の積層方法において、マスク配置工程S1前の状態を説明する断面図である。
【図6】本発明の電池材料の積層方法において、マスク配置工程S1終了後の状態を説明する断面図である。
【図7】本発明の電池材料の積層方法において、湾曲状態調整工程S2後の状態を説明する断面図である。
【図8】本発明の電池の製造方法S20を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明について説明する。なお、以下に示す形態は本発明の例示であり、本発明は以下に示す形態に限定されるものではない。図面では、一部符号の記載を省略することがある。
【0020】
1.電池材料積層用基板
図1は、本発明の第1の態様にかかる電池材料積層用基板1(以下において、「基板1」ということがある。)を説明する断面図である。図1に示すように、基板1は、第一金属1aと第二金属1bとが積層されてなるバイメタルである。第一金属1aは第二金属1bよりも熱膨張率の小さい金属であり、第二金属1bは第一金属1aよりも熱膨張率の大きい金属である。基板1は、加熱して温度を上げることにより、図1の紙面上側に凸となるように湾曲する。図2に、基板1が湾曲した状態を示した。第一金属1aとしては、バイメタルの熱膨張率の小さい方の金属として利用可能な公知の金属材料を特に制限なく用いることができる。バイメタルの湾曲係数Kを大きくし、望ましい湾曲状態を小さな温度変化で得られるようにする観点からは、第一金属1aとしてアンバー鋼(Invar鋼)を用いることが好ましい。ここでいう「アンバー鋼」とは、Fe−Ni合金であるアンバー鋼、Fe−Ni−Co合金であるスーパーアンバー鋼、及びFe−Co−Cr合金であるステンレスアンバー鋼を含む概念であり、いずれを用いてもよい。入手性やコストの観点からは、Fe−Ni合金であるアンバー鋼を用いることがより好ましい。また、腐食性を有する材料を真空蒸着する場合など、耐食性が要求される場面においては、ステンレスアンバー鋼が好ましいこともある。第二金属1bとしては、バイメタルの熱膨張率の大きい方の金属として利用可能な公知の金属材料を特に制限なく用いることができる。第二金属1bとしては、ニッケル、Fe−Ni−Mn合金、Fe−Ni−Cr合金などを例示することができる。
【0021】
本発明の電池材料積層用基板に関する上記説明では、基板1がバイメタルにより構成される形態を示したが、本発明は当該形態に限定されない。熱膨張率の異なる3種類の金属が積層されてなるトリメタルや、それ以上の数の金属が積層されてなる積層体によって、基板1を構成することも可能である。
【0022】
また、本発明の電池材料積層用基板に関する上記説明では、基板1がバイメタルのみから構成される形態を示したが、本発明は当該形態に限定されない。バイメタルの他に、可撓性を有するフレキシブル基板を固定するための粘着剤層や、腐食性を有する電池材料からバイメタルを構成する金属を保護するための耐食コーティング層などを有する形態とすることも可能である。また、基板1上の正確な位置にフレキシブル基板及びマスクを配置できるように、位置決め手段を備えることも好ましい。位置決め手段を備えることにより、フレキシブル基板とマスクとの相互の位置関係を正確に決定することが可能となる。このような位置決め手段としては、例えばフレキシブル基板及びマスクが同一の輪郭を有する長方形状である場合には、フレキシブル基板及びマスクの四隅を合わせるように配設されたL字状の部材を例示することができる。
【0023】
2.電池材料の積層方法
図3は、本発明の第2の態様にかかる電池材料の積層方法S10を説明するフロー図である。図3に示すように、電池材料の積層方法S10は、マスク配置工程S1と、湾曲状態調整工程S2と、電池材料積層工程S3とを有する。
【0024】
図4は、本発明の電池材料の積層方法に用いる装置10の構成を説明する断面図である。電池材料積層用装置10は、電池材料積層用基板1と、固定手段2、2、…と、温度調整手段3と、温度測定手段4と、を有している。図4に示すように、温度調整手段3は基板1の、第一金属1a側の面を全て覆うように接して配され、温度測定手段4は、温度調整手段3の基板1とは反対側の面に接して配されている。さらに、固定手段2、2、…は弾性を有する材料からなる着脱可能な部材であって、基板1と温度調整手段3との積層体を挟みつけるように、該積層体の端部に均等に配されている。
【0025】
2.1.マスク配置工程S1
マスク配置工程S1前の状態を図5に示した。図5は、固定手段2、2、…が取り外された電池材料積層用装置10の、電池材料積層用基板1上にフレキシブル基板20が戴置された姿勢を示す断面図である。固定手段2の取り外しは、これを押し開いて固定手段2と基板1等との間に間隙を作った後、押し開いた固定手段2を図4の紙面水平方向に移動させることにより行う。マスク配置工程S1前においては、基板1は湾曲しておらず、その表面は略平面をなしている。フレキシブル基板20は、電池材料が積層されるべき面(以下において、「上面」ということがある。)を基板1とは反対側に向けて戴置されている。マスク配置工程S1は、このフレキシブル基板20の上に、マスク30を配置する工程である。マスク配置工程S1終了後の姿勢を図6に示した。マスク配置工程S1では、フレキシブル基板20の上面にマスク30を配置した後、固定手段2を押し開いてマスク30とフレキシブル基板20とを基板1及び温度調整手段3ごと挟み込むことにより、マスク30とフレキシブル基板20とを共に基板1上に押圧力によって固定することができる。
【0026】
2.2.湾曲状態調整工程S2
湾曲状態調整工程S2は、少なくとも加熱を行うことが可能な温度調整手段3により、基板1の温度を調整することによって、基板1を所望の湾曲状態とする工程である。温度調整手段3には、エネルギー供給手段(不図示)によって電気エネルギー等必要なエネルギーが供給される。基板1の温度の調整は、温度調整手段3に接続された温度測定手段4により温度を監視しながら行われる。図7は基板1を所定の湾曲状態に調整した姿勢を示す断面図である。基板1を湾曲させることにより、マスク30が皺や弛みのない状態となり、マスク30による被覆(マスキング)領域を正確に画定することができる。このとき、基板1の湾曲状態の調整は温度調整のみで容易に行うことができる。
【0027】
2.3.電池材料積層工程S3
電池材料積層工程S3は、湾曲状態調整工程S2によって湾曲状態を制御された基板1、フレキシブル基板20及びマスク30を含む積層体の、マスク30側(以下において、「上側」ということがある。)に電池材料を配設することにより、フレキシブル基板20の、マスク30によって被覆(マスキング)されていない部分、すなわち、電池材料を積層させるべき部分にこれを積層させる工程である。電池材料を積層させる手段としては、真空蒸着、塗工液の塗布や吹き付けなど、公知の手段を特に制限なく用いることができる。湾曲状態調整工程S2を経たことにより、マスク30による被覆(マスキング)領域が正確に画定されているので、フレキシブル基板20上の適切な部分のみに電池材料を積層させることができる。
【0028】
図4に示した装置10について、以下に説明を続ける。
基板1の温度を調整可能な温度調整手段3としては、電池材料の積層に悪影響を及ぼさないものが好ましい。このような温度調整手段3としては、抵抗式電気ヒーター、ペルチェ素子等を例示できる。また、温度調整手段3は、放冷による自然冷却以外に、能動的に基板1を冷却できるものであると、温度調整をより精密に行うことができ好ましい。このようなものとしてペルチェ素子を例示できる。また、基板1の湾曲状態の制御精度を良好とする観点からは、温度調整手段3は基板1の全体を略均一な温度に保ちながら温度調整できることが好ましい。このような観点からは、図4乃至図7に示したように温度調整手段3が基板1の一面を全て覆う形態とすることが好ましい。また、温度調整手段は、一の加熱素子又は加熱・冷却素子から構成する代わりに、個別に制御される多数の素子の集合体で構成することも可能である。
【0029】
基板1の温度を測定可能な温度測定手段4としては、サーミスタ、熱電対、放射温度計等、公知の温度測定手段を特に制限なく用いることができる。また、基板1の温度が全面にわたって略均一になっているか否かを監視可能な形態にする等の観点からは、単一の素子を配置する代わりに、個別に監視される多数の素子が温度調整手段3の一面に満遍なく配置された形態とすることが好ましい。
【0030】
なお、本発明の電池材料の積層方法に関する上記説明では、押圧力を用いて挟持する形態の固定手段2を例示したが、本発明で使用可能な固定手段2は当該形態に限定されない。例えば、基板1の第二金属1b側の面に粘着層を配置し、粘着力によってフレキシブル基板20及びマスク30を保持する形態や、粘着力によってフレキシブル基板20を保持し、押圧力によってマスク30を保持する形態とすることも可能である。これらの形態においては、当該粘着層はフレキシブル基板20及び/又はマスク30を確実に保持できる一方で、作業完了後にフレキシブル基板20及び/又はマスク30を剥離することが可能なものでなければならない。
【0031】
また、本発明の電池材料の積層方法に関する上記説明では、温度調整手段3が基板1に直接接して配置される形態を示したが、本発明は当該形態に限定されない。例えば、雰囲気ガスの温度を調整することにより基板1の温度を調整する形態であってもよいし、赤外線輻射によって基板1の温度を調整する形態であってもよい。これらの形態とすることにより、電池材料積層用装置10の製造コストを削減することが可能である。
【0032】
また、本発明の電池材料の積層方法に関する上記説明では、温度測定手段4を用いる形態を示したが、本発明は当該形態に限定されない。所望の湾曲状態を実現できる加熱条件が予備実験等により予め分かっていれば、温度調整手段4を用いない形態とすることも可能である。このような形態とすることにより、電池材料積層用装置10の製造コストを削減することが可能である。
【0033】
また、本発明の電池材料の積層方法に関する上記説明では、電池材料の層が配設されていないフレキシブル基板20に電池材料を新たに積層させる形態を示したが、本発明は当該形態に限定されない。フレキシブル基板20には、電池材料の層が既に設けられていてもよいし、設けられていなくてもよい。すなわち、例えば本発明の電池材料の積層方法によって第1の層をフレキシブル基板20に積層させた後、本発明の電池材料の積層方法によって、同じフレキシブル基板20の上に、第1の層の上から第2の層を新たに積層させることも可能である。
【0034】
また、本発明の電池材料の積層方法に関する上記説明では、フレキシブル基板20上に電池材料を積層させる形態を示したが、本発明は当該形態に限定されない。例えば、基板1に直接マスク30を配置して、基板1に直接電池材料を積層させる形態とすることも可能である。この形態は、基板1を電極板としてそのまま用いる場合に有用である。
【0035】
3.電池の製造方法
図8は、本発明の第3の態様にかかる電池の製造方法S20を説明するフロー図である。電池の製造方法S20は、マスク配置工程S21と、湾曲状態調整工程S22と、電池材料積層工程S23と、判断工程S24と、電極配設工程S25と、封入工程S26とを有する。
【0036】
マスク配置工程S21、湾曲状態調整工程S22及び電池材料積層工程S23は、それぞれ上述したマスク配置工程S1、湾曲状態調整工程S2及び電池材料積層工程S3と同様の工程であり、本発明の電池材料積層用基板1を用いて、フレキシブル基板20上へのマスク30の配置、基板1の湾曲状態の調整、及び電池材料の積層をこの順に行う。上述したように、本発明の電池材料積層用基板1は、その温度を調整することによって湾曲状態を容易に制御できる。そのため、湾曲状態調整工程S22においてマスキング領域を正確に画定することが容易である。ゆえに、電池材料積層工程S23において、フレキシブル基板20上の適切な位置のみに電池材料を積層させることが容易である。よって、電池の製造方法S20によれば、電池の生産歩留まりを向上させることが容易であり、したがって電池の生産効率を向上させることが可能である。
【0037】
判断工程S24は、マスク配置工程S21、湾曲状態調整工程S22及び電池材料積層工程S23を順に経た後に、必要な電池材料層が全て配設されたか否かを判断する工程である。判断工程S24で肯定判断がなされた場合には、次の電極配設工程S25へと進む。これに対し、判断工程S24で否定判断がなされた場合には、マスク配置工程S21へと戻され、判断工程S24で肯定判断がなされるまで、マスク配置工程S21乃至電池材料積層工程S23が繰り返される。
【0038】
電極配設工程S25は、上記の工程により形成された積層体に、電力を取り出すのに必要な一対の電極を配設する工程である。ここで「一対の電極」とは、正極及び負極を意味する。電極配設工程S25により、電池として機能するための最小限の構成要素が揃った、電池構造体が作成される。
【0039】
封入工程S26は、上記電極配設工程S25で作製された電池構造体を、外装体に封入する工程である。外装体は、電池構造体を保護する役割を果たす。可撓性を有するフレキシブル基板20上に形成された電池構造体を封入する外装体には、樹脂フィルム等、可撓性のある材料が選択される。また、本発明の電池の製造方法により製造される電池が薄膜太陽電池である場合には、外装体には光透過性に優れた材料が選択される。
【0040】
本発明の電池の製造方法に関する上記説明では、マスク配置工程S21、湾曲状態調整工程S22、電池材料積層工程S23、判断工程S24、電極配設工程S25、及び封入工程S26を有する形態を示したが、本発明は当該形態に限定されない。製造する電池の種類に応じて、これらの工程の他に、集電体を配設する集電体配設工程や、電池構造体を捲回する捲回工程等、他の工程を有していてもよい。また、これらの工程の一部が省略された形態であってもよい。例えば、既に電極が配設されている外装フィルムとフレキシブル基板とを熱圧着するなどして、電極配設工程と封入工程とを一工程で済ませる形態とすることも可能である。
【0041】
また、本発明の電池の製造方法に関する上記説明では、可撓性を有する材料からなる外装体に電池構造体を封入する形態の封入工程S26を例示したが、本発明は当該形態に限定されない。電池の種類によっては、例えば、電極配設工程S25の後に、電池構造体を捲回する捲回工程を経て得られた捲回体を、剛性の高い外装箱に封入する形態とすることも可能である。
【0042】
また、本発明の電池の製造方法に関する上記説明では、フレキシブル基板20上に電池材料を積層させる形態を示したが、本発明は当該形態に限定されない。例えば、基板1に直接マスク30を配置して、基板1に直接電池材料を積層させる形態とすることも可能である。この形態は、基板1を電極板としてそのまま用いる場合に有用である。
【実施例】
【0043】
<実施例>
Fe−Ni(アンバー鋼)/Niクラッド材のバイメタル(日立電線HM−2)を電池材料積層用基板として用い、この電池材料積層用基板上に戴置されたフレキシブル基板の上にマスクを配置した後、これらを固定した。その後、電池材料積層用基板を100℃に加熱することにより、所望の湾曲状態を得ることができた。その結果、マスキング領域を正確に画定することができた。すなわち、本発明の電池材料積層用基板によれば、マスキング領域を正確に画定するために必要な湾曲状態の制御が容易な、電池材料積層用基板を提供することができた。
【0044】
<比較例>
上記実施例で使用したバイメタルに代えて、ニッケル板を電池材料積層用基板として用いた以外は実施例と同様にしてマスクを配置し、固定した(比較例)。比較例では、基板が湾曲しないために、マスキング領域を正確に画定することができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の電池材料積層用基板、電池材料の積層方法、及び電池の製造方法は、薄膜太陽電池等に代表される電池の製造に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1…電池材料積層用基板(基材)
1a…第一金属
1b…第二金属
2…固定手段
3…温度調整手段
4…温度測定手段
10…電池材料積層用装置
20…フレキシブル基板(基材)
30…マスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度によって湾曲状態を制御可能な温度感応性金属積層体を有する、電池材料積層用基板。
【請求項2】
前記温度感応性金属積層体を構成する複数の金属のうち、一の金属がアンバー鋼であることを特徴とする、請求項1に記載の電池材料積層用基板。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電池材料積層用基板を少なくとも含む基材の表面にマスクを配置する、マスク配置工程と、
前記電池材料積層用基板の温度を調整することにより、前記マスクが配置された前記基材の湾曲状態を調整する、湾曲状態調整工程と、
湾曲状態を調整された、前記マスクが配置された前記基材に、電池材料を積層させる、電池材料積層工程と、
を含むことを特徴とする、電池材料の積層方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の電池材料積層用基板を少なくとも含む基材の表面にマスクを配置する、マスク配置工程と、
前記電池材料積層用基板の温度を調整することにより、前記マスクが配置された前記基材の湾曲状態を調整する、湾曲状態調整工程と、
湾曲状態を調整された、前記マスクが配置された前記基材に、電池材料を積層させる、電池材料積層工程と、
を含むことを特徴とする、電池の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図8】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−54149(P2012−54149A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196811(P2010−196811)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】