説明

電池用配線モジュール

【課題】フレキシブルプリント基板を用いて小型化を可能とした電池用配線モジュールを提供する。
【解決手段】正極及び負極の電極端子12,13を備えた単電池11を複数個並べてなる単電池群に取り付けられる電池用配線モジュール10であって、電極端子12,13に連なり端子間電圧を検出する電圧検知導電路46,47を含む複数の導電路が形成され、2列に並列する電極端子12,13群に対応して2列に並列してなる第1及び第2のフレキシブルプリント基板40A,40Bと、第1及び第2フレキシブルプリント基板40A,40B間において、両フレキシブルプリント基板40A,40Bの導電路を接続する接続用フレキシブルプリント基板部50と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池用配線モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリット車用の電池モジュールは、内部に発電要素を有する扁平な形状の本体部と、正極及び負極の電極とを備える複数の単電池を重ねて配置されている。そして、隣り合う単電池の電極間が接続部材で接続されることにより複数の単電池が直列や並列に接続されている。
【0003】
下記特許文献1には、接続部材としてのバスバーと、単電池の電圧を測定するための電圧検知線と、バスバーと電圧検知線とを収容する基部とからなる電池用配線モジュールが記載されている。この電池用配線モジュールを単電池群に装着し、バスバーに形成されている2つの端子挿通孔に隣り合う単電池の電極端子を1つずつ挿通させ、ナットを螺合させて締め付けることで、各単電池間が電気的に接続される。
【0004】
しかしながら、このような構成によると、電池用配線モジュールによって接続する単電池の数が増えれば、バスバー及びそれに接続される電圧検知線の本数も増大し、結果として電池用配線モジュール全体が大型化し、重量も増えて好ましくないという事情がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−008957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、電圧検知線を複数の導電路が形成されたフレキシブルプリント基板(FPC)によって代替することで、配線密度を高め、電池用配線モジュールとしての小型化を図ることが考えられる。しかしながら上記した構成によれば、電極端子は各単電池の上面上の両端に離れて位置するため、ただ単に、電圧検知線をFPCに置き換えるだけでは少なくともそれぞれの電極端子の列に対応した2枚のFPCが必要となり、FPCからの出力を基に電池を制御する電池ECUとの接続部分に従来と変わりはないため、更なる小型化が要求されている。
【0007】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、フレキシブルプリント基板を用いて小型化を可能とした電池用配線モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、正極及び負極の電極端子を備えた単電池を複数個並べてなる単電池群に取り付けられる電池用配線モジュールであって、前記電極端子に連なり端子間電圧を検出する電圧検知導電路を含む複数の導電路が形成され、2列に並列する前記電極端子群に対応して2列に並列してなる第1及び第2のフレキシブルプリント基板と、前記第1及び第2フレキシブルプリント基板間において、両フレキシブルプリント基板の導電路を接続する接続用フレキシブルプリント基板部と、を備えることに特徴を有する。
【0009】
このように、電圧検知導電路をフレキシブルプリント基板上に設けることで、電極端子間の公差に柔軟に対応できる他、第1フレキシブルプリント基板と第2フレキシブルプリント基板とを同じ可撓性を有する接続用フレキシブルプリント基板部により接続することで、単電池内の正負電極端子間の公差にも対応できる。
【0010】
前記第1フレキシブルプリント基板は、対応する前記電極端子群の一列側において前記電極端子間を接続する第1端子間接続導電路に連なり、前記第2フレキシブルプリント基板は、対応する前記電極端子群の他列側において前記電極端子間を接続する第2端子間接続導電路に連なり、各導電路を外部に接続するための外部接続端子は前記第1及び第2フレキシブルプリント基板のいずれか一方に設けられていることが望ましい。このような構成によれば、1つの電池用配線モジュール当たり、外部接続端子を一つにまとめることができるから、電極端子群の列ごとに外部接続端子を設ける場合と比較して、小型化が可能である。
【0011】
前記第1及び第2フレキシブルプリント基板の一方は片面基板であって、他方は両面基板であり、前記接続用フレキシブルプリント基板部は前記一方の片面基板に一体に設けられ、前記一方の片面基板を折り返すことにより前記他方の両面基板側へと延設されていてもよい。このような構成によれば、接続用フレキシブルプリント基板部を第1及第2フレキシブルプリント基板の一方に一体に設けることができるから、部品点数が少なくなり、コスト低減を図ることができる。
【0012】
前記他方の両面基板には、前記第1及び第2電圧検知導電路に連なる電子部品が実装されていることが望ましい。このような構成によれば、電圧検知導電路からの出力を少なくとも電子部品内で検出し、その信号情報のみを外部接続端子から出力することが可能となるから、電圧検知導電路から電子部品までの配線長を短くすることができる。
【0013】
第1及び第2フレキシブルプリント基板はそれぞれ第1及び第2絶縁プロテクタに収容されていてもよい。予め、各絶縁プロテクタに各フレキシブルプリント基板を収容しておけば、電池用配線モジュールとして、単電池群への装着が容易となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、フレキシブルプリント基板を用いて小型化を可能とした電池用配線モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る電池モジュールの分解斜視図
【図2】同平面図
【図3】2穴バスバーを示す斜視図
【図4】同平面図
【図5】1穴バスバーを示す斜視図
【図6】同平面図
【図7】絶縁プロテクタを構成する第1収容ユニットを示す斜視図
【図8】同平面図
【図9】同側面図
【図10】電池用配線モジュールを構成するFPCの斜視図
【図11】同平面図
【図12】FPC上に形成された配線パターンを示した概略図
【図13】バスバー及び電子部品が装着されたFPCの斜視図
【図14】同平面図
【図15】同側面図
【図16】カバーを開けた状態の電池用配線モジュールの斜視図
【図17】同平面図
【図18】カバーを閉じた状態の電池用配線モジュールの斜視図
【図19】同平面図
【図20】同側面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態>
本発明の一実施形態を図1ないし図20によって説明する。
本実施形態の電池用配線モジュール20は、図1に示すように、単電池11が複数個並べられた単電池群に取り付けられて電池モジュール10を構成するものであって、この電池モジュール10は、例えば、電気自動車やハイブリット自動車等の車両の駆動源として使用される。以下、図1の上下方向及び左右方向(接続方向)を上下左右方向、及び図2の上方を後方、下方を前方として、下記構成を説明する。
【0017】
(電池モジュール)
電池モジュール10は、図1に示すように、例えば横並びに配列された複数個の単電池11(単電池群に相当する)と、複数個の単電池11に取り付けられる電池用配線モジュール20とを備えて構成されている。
【0018】
(単電池)
単電池11は、内部に図示しない発電要素が収容された直方体状の本体部を有し、その所定の面(上面)の前後両端には、一対の電極端子12,13が突設されている。この電極端子12,13の一方は正極端子であって、他方は負極端子であり、それぞれの周面にはネジ山が形成されている。各単電池11は、隣り合う単電池11の前後方向の向きが互いに逆向きとなるように横並びに配置されることで、隣り合う電極端子12,13の極性が異なる(正極と負極が横並び方向に交互となる)構成とされている。これら複数個の単電池11は、横並び状態となった単電池群を構成するように図示しない保持板によって固定されている。
【0019】
(電池用配線モジュール)
電池用配線モジュール20は、単電池群の前後両端(図2の上下両端)において横並びとなっている二列の電極端子12,13群に沿うように取り付けられ、それぞれの右端は後述する接続用フレキシブルプリント基板部50(以下、接続用FPC部とする)によって接続されている。
【0020】
この電池用配線モジュール20は、図1及び図2に示すように、合成樹脂製の絶縁プロテクタ30内に左右に隣り合う電極端子12,13間を接続する複数のバスバー21(端子間接続導電路に相当する)と、各バスバー21に連なるフレキシブルプリント基板40(以下、FPCとする)とを収容してなる。
【0021】
(バスバー)
バスバー21は、銅、銅合金、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウム等の金属板をプレス加工してなり、図3ないし図6に示すように、単電池11の電極端子12,13に接続される本体部22と、FPC40を受けて、その裏面に形成された電圧検知導電路41A,42Aに接続される電圧検知部23とから構成されている。このバスバー21は、図3及び図4に示す2穴バスバー21Aと、図5及び図6に示す1穴バスバー21Bの2種類からなる。
【0022】
2穴バスバー21Aは、図3及び図4に示すように、平面視長方形状の本体部22Aを備え、隣り合う単電池11の電極端子12,13を挿通可能な通し孔24Aが一対形成されている。本体部22Aの前後方向の一側縁には、本体部22Aに対して略直角をなして立ち上がり再び屈曲して前後方向に延びる、段差を介した電圧検知部23Aが一体形成されている。
【0023】
この電圧検知部23Aは、収容ユニット31,32単位毎に当該電圧検知部23Aと電気的に接続される電圧検知導電路46,47を有するFPC40が載置される。具体的には、本体部22Aよりも前後方向にやや長い平面視長方形状をなす電圧検知部23Aの四隅には、対応するFPC40と共に、収容ユニット31,32のFPC収容部34に位置決めするための貫通孔25Aが形成されている。そして、この貫通孔25A同士の間部には、電圧検知部23Aに対応するFPC40を貼り合わせるために、接着剤の注入を許容したり、余分な接着剤を逃がす接着孔26Aが適宜形成されている。
【0024】
1穴バスバー21Bは、図5及び図6に示すように、平面視方形状の本体部22Bを備え、単電池11の電極端子12,13のいずれか一方を挿通可能な通し孔24Bが一つ形成されている。そして、本体部22Bの前後方向の一側縁には、本体部22Bに対して略直角をなして立ち上がり再び屈曲して前後方向に延びる、段差を介した電圧検知部23Bが一体形成されている。この電圧検知部23Bには、2穴バスバー21Aの電圧検知部23Aと同様に、対応するFPC40を位置決めするための貫通孔25Bと、互いに張り合わせるための接着剤の注入を許容したり、余分な接着剤を逃がす接着孔26Bとが形成されている。
【0025】
(絶縁プロテクタ)
続いて、バスバー21及びFPC40を収容する絶縁プロテクタ30について説明する。
絶縁プロテクタ30は、図1及び図2に示すように、単電池群の前後両端において横並びとなっている二列の電極端子12,13群に沿うように並列し、そのうち後側に位置するものは第1絶縁プロテクタ30Aとされ、前側に位置するものは第2絶縁プロテクタ30Bとされている。第1絶縁プロテクタ30Aは、左右方向に連結された複数(本実施形態では7つ)の第1収容ユニット31からなる。第2絶縁プロテクタ30Aは、同様に左右方向に連結された複数(本実施形態では4つ)の第1収容ユニット31とその左右両端に1つずつ連結された第2収容ユニット32からなる。第2収容ユニット32は、第1収容ユニット31を左右方向の略中央で切断した形状が、同じく第1収容ユニットの右側、又は左側に連結したような構成をなすため、ここでは、第1収容ユニット31の構成について詳しく説明し、第2収容ユニット32の同構造については同符号を付して説明を省略する。
【0026】
(第1収容ユニット)
第1収容ユニット31は、合成樹脂製であって、図7ないし図9に示すように、2穴バスバー21Aの本体部22Aが収容される本体部収容部33と、電圧検知部23Aが載置され、その上方からFPC40が重ね合わされた状態で収容されるFPC収容部34とが前後方向に並列して形成されている。更に、FPC収容部34の上側側縁には、当該FPC収容部34の上面を覆うカバー35がヒンジを介して回動可能に一体形成されている。
【0027】
本体部収容部33は、2穴バスバー21Aを上方から挿入可能な箱形に形成されており、同本体部収容部33の底面には、本体部22Aに形成された一対の通し孔24Aを外部に露出すべく対応する位置に2つの窓孔33Aが形成されている。そして、本体部収容部33において、FPC収容部34が連なる後側とは反対側の前側となる側壁の略中央部には、収容された2穴バスバー21Aの本体部22Aを係止して抜け止めを図る係止爪33Bが形成されている。
【0028】
FPC収容部34は本体部収容部33を囲う側壁の上下方向略中央位置から後方に向かって張り出す板状をなしている。FPC収容部34の四隅には、それぞれ同形状のピン34Aが突設されている。FPC収容部34には、その上方から2穴バスバー21Aの電圧検知部23A、FPC40の順に載置されるが、これらに形成された貫通孔25A,40Dを上述したピン34Aに貫通させることで、位置決めがなされる。そして、FPC収容部34の左端縁からは、左右方向(接続方向)に突出する連結用係合爪34Bが設けられている。同右端には、相手側となる収容ユニット31,32の連結用係合爪34Bを摺動可能に受け入れる連結用被係合部34Cが形成されている。
【0029】
カバー35は、FPC収容部34の上部全面を覆うことが可能な大きさの板状をなし、第1絶縁プロテクタ30Aを構成するものと第2絶縁プロテクタ30Bを構成するものとでやや構成が異なる。第1絶縁プロテクタ30Aを構成するカバー35には、開いた状態において、上側に配されるカバー35の裏面(FPC収容部34への対向面)に、方形状の深さの浅い逃がし凹部35Aが形成されている。この逃がし凹部35Aは、対向するFPC40上に後述する電子部品60が実装されている場合においても、カバー35を閉状態とすることが可能なように、電子部品60のFPC40からの突出部分をカバー35内に逃がす機能を有する。そして、この逃がし凹部35Aの周りには、FPC40及び2穴バスバー21Aの電圧検知部23Aを押さえる押さえリブ35Bが突設されている。
【0030】
一方、第2絶縁プロテクタ30Bを構成するカバー35は、FPC収容部34に載置されたFPC40上に電子部品60が実装されないため、逃がし凹部35Aを形成する必要がなく、中央部分を除いた左右両側に、同形状の押さえリブ35Bが適宜形成されている。
【0031】
さて、いずれのカバー35にも、その開状態において前端となる自由端には、裏面(開状態においては上面)から一対のロック片35Cが突設されている一方、本体部収容部33とFPC収容部34との間には、このロック片35Cを係り受けるロック受け部33Cが対応する位置に設けられている。また、押さえリブ35Bの合間には、FPC収容部34の四隅に突設されたピン34Aが嵌る嵌合孔35Dが形成されている。
【0032】
(第2収容ユニット)
第2収容ユニット32は、図2に示すように、第2絶縁プロテクタ30Bの左右両端(自由端)に位置し、2穴バスバー21Aの本体部22Aが収容される本体部収容部33とは隔絶して1穴バスバー21Bの本体部22Bを収容可能な1穴用本体部収容部36が設けられている。FPC収容部37は、図16及び図17に示すように、第1収容ユニット31のFPC収容部34よりも1穴バスバー21Bの電圧検知部23B及び後述する第2FPC40Bの分だけ、左右方向に長く設けられており、2穴バスバー21A及び1穴バスバー21Bの電圧検知部23A,23B、及びその上からFPC40のうち第2絶縁プロテクタ30Bに収容される第2FPC40Bが重ね合わされた状態で収容される。詳しくは後述するが、第2FPC40Bの右端には、接続用FPC部50に接合される被接合部43Eが設けられており、また、反対側の左端には、外部ECU(図示せず)と接続される外部接続コネクタ55が取り付けられている。このため、第2収容ユニット32のFPC収容部37は、接合部51又は外部接続コネクタ55が載置可能に延設されている。
【0033】
この第2収容ユニット32のFPC収容部37の上部全面を覆うことが可能なカバー38は、第1収容ユニット31のカバー35構造の1.5個分に加えて、右端には接合部51を覆う接合部用カバー38A、左端には外部接続コネクタ55をその上方から覆うコネクタ用カバー38Bがそれぞれ延設されている。接合部用カバー38Aにはその裏面(接合部51への対向面)全面に接合部51を押さえる押さえリブ38Cが突設されている(図16及び図17参照)。
【0034】
第1収容ユニット31の本体部収容部33、及び第2収容ユニット32の1穴用本体部収容部36の互いに向き合う中央部側の外側壁には、図2及び図16、図17に示すように、FPC40のうち、主に第2FPC40Bから延出された延出片40Cを周面に這わせて保持する保持部33D,36Aが突設されている。保持部33D,36Aは、単電池11側(下側)に向かって凸をなすU字状のリブにより形成されており、そのリブ周りに延出片40Cを這わせ、当該延出片40Cに実装されたサーミスタ52を単電池11に向かって押圧する機能を有する。
【0035】
(FPC)
続いて、FPC40及び接続用FPC部50について、図10ないし図15を用いて詳しく説明する。FPC40は、第1絶縁プロテクタ30Aに収容される第1FPC40Aと、第2絶縁プロテクタ30Bに収容される第2FPC40Bとからなる。共に、ポリイミドフィルムや液晶状フィルム等の絶縁フィルムからなる支持基板を有し、第1FPC40Aは、その一面に、第2FPC40Bはその両面に銅製の導体箔によって導電路を形成し、保護フィルムで覆った周知の片面基板又は両面基板からなる。また、接続用FPC部50は、第1FPC40Aを折り返すことにより一体に形成され、その端部は接合部51とされている。この接合部51は、各第1導電路の端部にスルーホールを形成する等して詳しくは後述する第2FPC40Bの被接合部43Eにおいて、その表面に形成された表側導電路へと接合される。よって、第1FPC40Aから接続用FPC部50を接合部51において第2FPC40Bに接合した状態では、全体としてU字状をなしている。
【0036】
後側に位置する第1FPC40A(及び接続用FPC部50)は上述した通り、片面基板であって、その裏面(接続用FPC部50にあっては折り返すため表面)のみに第1電圧検知導電路46を含む第1導電路が形成されている。第1FPC40Aは、長さ方向に沿って7つの単位領域43Aに等分されている。各単位領域43Aはその長辺が2穴バスバー21Aよりやや長い方形状の平板をなしており、その四隅には、第1収容ユニット31のFPC収容部34に設けられたピン34Aを貫通する貫通孔40Dが形成されている。
そして、隣り合う単位領域43A間は、基板を下方に弛ませた余長吸収部44Aとされている。余長吸収部44Aは、各収容ユニット31,32間の間隙長を調整する機能を有するから、電池用配線モジュール20を単電池群に取り付ける際に、主に電極端子12,13間の公差吸収、及び単電池群への取付誤差の吸収を行うことができる。
【0037】
前側に位置する第2FPC40Bは、上述した通り両面基板であって、第2導電路が表裏両面に形成されている。第2FPC40Bの表面は、電子部品60が実装される実装面45であって、この実装面45には、接続用FPC部50を介して第1導電路に電気的に接続される表側導電路が形成されている。一方、第2FPC40Bの裏面は、第2電圧検知導電路47を含む第2導電路が形成されている。第2FPC40Bは、長さ方向に沿って6つの単位領域に分割されており、中程の4つの単位領域43Bは、第1FPC40Aの単位領域43Aと略同じ態様をなす。その左右両端の単位領域43C,43Dは中程の単位領域43Bの1.5倍(横並びする単電池11の約3つ分)の長さに加えて、右端の単位領域43Cにおいては、接続用FPC部50の接合部51が接合される被接合部43E分長くなっている。同様にして、左端の単位領域43Dにおいては、外部接続コネクタ55が装着されるコネクタ接続部43F分長くなっている。加えて、第2FPC40Bにおいても、第1FPC40A同様、隣り合う単位領域43B,43C,43D間は基板を下方に弛ませた余長吸収部44Bとされている。各単位領域43Bの四隅、及び単位領域43B寄りの被接合部43Eの角部及びコネクタ接続部43Fの角部には、収容ユニット31,32のFPC収容部34に設けられたピン34Aを貫通可能な貫通孔40Dが形成されている。
【0038】
第2FPC40Bのうち、後側端縁であって、左右両端に位置する単位領域43C,43Dの略中央位置、及び中程の4つの単位領域43Bの略中央位置からは、後方に向かって延びたのち、下方に向かってU字状に湾曲した延出片40Cが延設されている。この延出片40Cの下端面には、サーミスタ52が取り付けられている(図15参照)。このサーミスタ52は、対応する単電池11に直接接触して、当該単電池11の表面温度を検出する。
【0039】
各導電路のうち、電圧検知導電路46,47の形成パターンの概略が、図12に示されている。電圧検知導電路46,47は単位領域43ごとに設けられたランド48に接続されている。そして、ランド48及び各導電路46,47周りには補強を目的とする複数本の補強部49が銅箔によって形成されている。各FPC40は、単位領域43ごとに設けられたランド48が、バスバー21の電圧検知部23に重ね合わされることで、単電池群の電極端子12,13へと電気的に接続される。ランド48に接続された電圧検知導電路46,47は、後述する電子部品60へと連なっており、単電池11の両極間の電位差を検出することが可能となる。なお、図示はしないが、電圧検知導電路46,47の他にも、サーミスタ52に連なる温度検知導電路が形成されており、その他複数の導電路が形成されている場合もある。
【0040】
なお、第1FPC40Aと第2FPC40Bを比較した場合、第1FPC40Aの単位領域43Aと第2FPC40Bの右端に位置する単位領域43Cとの長さが異なるために、第2FPC40B側の単位領域43B,43Dが単電池11の1個分、ピッチがずれて配されている。これは、2穴バスバー21Aにおいても同様の位置関係にあって、つまりは隣り合う単電池11同士が直列に接続されていることを意味する。
【0041】
(電子部品)
第2FPC40Bの実装面45には、図13及び図14に示すように電子部品60が表面実装されている。この電子部品60は、実装面45に形成された接続用FPC部50を介して第1電圧検知導電路46を含む第1導電路に電気的に接続される表側導電路、又は第2電圧検知導電路47を含む第2導電路に接続されている。電子部品60は、例えば電圧検知導電路46,47により検出可能な単電池11の電圧情報、及びサーミスタ52によって検出可能な単電池11の温度情報を処理するCPU等が含まれている。
【0042】
(外部接続コネクタ)
外部接続コネクタ55は、図13及び図14に示すように、第2FPC40Bのコネクタ接続部43Fに装着されている。コネクタ接続部43Fには、電子部品60に接続される導電路が接合用ランド等を設けるなどして露出しており、この露出した導電路と、図15に示す外部接続コネクタ55に収容された端子金具55A(外部接続端子に相当する)とが接合されている。この端子金具55Aが、外部接続コネクタ55の相手側コネクタへの嵌合によって、外部ECUに接続されると、単電池11の電圧情報や温度情報といった信号を送信したり、又は外部ECUからの単電池11への制御情報を受信することが可能となる。
【0043】
次に、電池用配線モジュール20の組立手順の一例について説明する。
まず、裏面又は表裏両面に配線パターンにより電圧検知導電路46,47を含む各種導電路及びランド48等を形成されたFPC40及び接続用FPC部50は、図10及び図11に示すように、第1FPC40Aの先端を折り返して形成された接続用FPC部50の接合部51を第2FPC40Bの被接合部43Eへとリフロー半田付け等により接合する。そして、図13ないし図15に示すように、第2FPC40Bの実装面45に電子部品60、サーミスタ52、外部接続コネクタ55を表面実装したのち、切り出された延出片40Cが曲げ形成されて、所定形状へと成形される。
【0044】
続いて、このFPC40にバスバー21を貼着する。各単位領域43の裏面に導電性接着剤を塗布し、対応するバスバー21の電圧検知部23を貼着する。この際、第1FPC40Aに貼着されるバスバー21は、その本体部22が第1FPC40Aに対して前方に位置し、第2FPC40Bに貼着されるバスバー21は、その本体部22が第2FPC40Bに対して後方に位置する。各単位領域43においては、FPC40の貫通孔40Dが、バスバー21の貫通孔25に整合するように、貼着する。
【0045】
さて、図7ないし図9に示す、第1収容ユニット31は、その連結用係合爪34Bを相手側となる連結用被係合部34Cに挿入して、係合させることで、第1絶縁プロテクタ30A及び第2絶縁プロテクタ30Bが形成される。そして、図16及び図17に示すように、第1絶縁プロテクタ30Aの本体部収容部33には、2穴バスバー21Aの本体部22Aを、同FPC収容部34には、その上面に第1FPC40Aが貼着された2穴バスバー21Aの電圧検知部23Aを収容する。具体的には、本体部22Aは、本体部収容部33の底部まで押し込まると係止爪33Bによって係止され、抜け止めがなされる。第1FPC40Aが貼着された電圧検知部23Aは、FPC収容部34に突設されたピン34Aに、対応する貫通孔25,40Dを貫通させることで、FPC収容部34上へと載置される。
【0046】
同様に、第2絶縁プロテクタ30Bの本体部収容部33,36に対応する2穴バスバー21Aの本体部22A又は1穴バスバー21Bの本体部22Bを収容し、FPC収容部34,37には、その上面に第2FPC40Bが貼着された2穴バスバー21A及び1穴バスバー21Bの電圧検知部23A,23Bを収容する。この際、第2FPC40Bの延出片40Cを、FPC収容部34,37から導出して保持部33D,36Aの外周に這わせるように設置することで、延出片40Cに実装されたサーミスタ52が、下端に配される(図20参照)。最後に、図18ないし図20に示すように、各カバー35,38を回動させ、ロック片35Cをロック受け部33Cに係止させることで、閉状態が維持される。
【0047】
以上のようにして組立てられた電池用配線モジュール20は、図1に示すように、単電池群の上面の所定位置へと装着される。具体的には、2穴バスバー21A及び1穴バスバー21Bの通し孔24A,24Bを対応する電極端子12,13に挿通し、その上から電極端子12,13に図示しないナットを螺合させて締め付けることにより、電極端子12,13とバスバー21とが接続される。これにより、電極端子12,13から、バスバー21、バスバー21に重畳するFPC40のランド48を介して各種導電路へと電気的に接続される。
【0048】
以上説明したように、本実施形態によれば、1ユニットの単電池群あたり、2列に並列して取り付けられる電池用配線モジュール20において、外部接続コネクタ55を一箇所にまとめることができるから、電極端子群の列ごとに外部接続端子を設ける場合と比較して、小型化が可能である。また、電圧検知導電路46,47をFPC40上に設けることで、単位領域43間に設けた余長吸収部44により、電極端子12,13間の公差に柔軟に対応できる他、第1FPC40Aと第2FPC40Bとを同じ可撓性を有する接続用FPC部50で接続することで、一単電池11内の正負電極端子12,13間の公差にも対応できる。
【0049】
また、接続用FPC部50を第1FPC40Aに一体に設けることができるから、部品点数が少なくなり、コスト低減効果が期待できる。
【0050】
また、電圧検知導電路46,47からの出力を少なくとも電子部品60内で検出し、その信号情報のみを外部接続端子55Aから外部ECUへと出力することが可能となるから、電圧検知導電路46,47から電子部品60までの配線長を短くすることができる。
【0051】
また、予め、各絶縁プロテクタ30A,30Bに対応する各FPC40A,40Bを収容しておけば、電池用配線モジュール20として、単電池群への装着が容易となる。
【0052】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0053】
(1)上記した実施形態では、第1FPC40Aに接続用FPC部50が一体に設けられていたが、これに限られず、例えば第2FPCに接続用FPC部が一体に設けられていてもよいし、第1FPC及び第2FPCとは別体の接続用FPC部がそれぞれに接合される構成であってもよい。
【0054】
(2)上記した実施形態では、第1FPC40Aと第2FPC40Bとは、接続用FPC部50を介してU字状をなしていたが、これに限られず、例えば第1FPCと第2FPCとの長さ方向略中央部において接続用FPC部を介して接続するH字状であってもよいし、接続用FPC部の位置は、これに限定されない。
【0055】
(3)上記した実施形態では、第2FPC40Bのコネクタ接続部43Fに外部接続端子55Aを収容した外部接続コネクタ55が装着されていたが、これに限られず、第1FPCに外部接続端子が設けられていてもよいし、接続用FPC部に設けられていてもよい。
【0056】
(4)上記した実施形態では、第1FPC40A及びそれに連なる接続用FPC部50が片面基板であって、第2FPC40Bが両面基板であったが、これに限られず、例えばいずれも両面基板であってもよいし、第2FPCを片面基板とし、第1FPCを両面基板とするものも本発明に含まれるものとする。
【0057】
(5)上記した実施形態では、第2FPC40Bの実装面45に電子部品60が実装されていたが、これに限られず、第1FPC及び第2FPCのいずれも両面基板とし、両FPCの上面に電子部品が実装されているものも本発明に含むものとする。
【0058】
(6)上記した実施形態では、端子間接続導電路は、バスバー21により構成されていたが、これに限られず、FPCや絶縁被覆電線により構成されていてもよい。また、本発明の電池用配線モジュールに端子間接続導電路が含まれていなくともよい。
【0059】
(7)上記した実施形態では、絶縁プロテクタ30にFPC40が収容されていたが、これに限られず、収容されていなくてもよい。
【0060】
(8)上記した実施形態では、単電池11の電極端子12,13がその周面にネジ山が形成された棒状の軸部を有する構成とされていたが、これに限られず、各電極端子がナット形で、別部材のボルトを用いて締結する構成であってもよい。
【0061】
(9)上記した実施形態では、複数の単電池11を直列に接続する場合について説明したが、これに限られず、複数の単電池を並列に接続する場合について適用してもよい。
【0062】
(10)電池モジュール10を構成する単電池11の数については、上記実施形態の数に限られない。また、単電池11の数に応じて電池用配線モジュール20の形状も任意に設定することができる。
【符号の説明】
【0063】
10…電池モジュール
11…単電池
12,13…電極端子
20…電池用配線モジュール
21…バスバー(端子間接続導電路)
22…本体部
23…電圧検知部
24…通し孔
25,40D…貫通孔
30A…第1絶縁プロテクタ
30B…第2絶縁プロテクタ
31…第1収容ユニット
32…第2収容ユニット
33…本体部収容部
34,37…FPC収容部
34A…ピン
35,38…カバー
36…1穴用本体部収容部
40…フレキシブルプリント基板(FPC)
46…第1電圧検知導電路
47…第2電圧検知導電路
48…ランド
49…補強部
50…接続用フレキシブルプリント基板部(接続用FPC部)
51…接合部
55…外部接続コネクタ
55A…外部接続端子
60…電子部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極及び負極の電極端子を備えた単電池を複数個並べてなる単電池群に取り付けられる電池用配線モジュールであって、
前記電極端子に連なり端子間電圧を検出する電圧検知導電路を含む複数の導電路が形成され、2列に並列する前記電極端子群に対応して2列に並列してなる第1及び第2のフレキシブルプリント基板と、
前記第1及び第2フレキシブルプリント基板間において、両フレキシブルプリント基板の導電路を接続する接続用フレキシブルプリント基板部と、を備える電池用配線モジュール。
【請求項2】
前記第1フレキシブルプリント基板は、対応する前記電極端子群の一列側において前記電極端子間を接続する第1端子間接続導電路に連なり、
前記第2フレキシブルプリント基板は、対応する前記電極端子群の他列側において前記電極端子間を接続する第2端子間接続導電路に連なり、
各導電路を外部に接続するための外部接続端子は前記第1及び第2フレキシブルプリント基板のいずれか一方に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電池用配線モジュール。
【請求項3】
前記第1及び第2フレキシブルプリント基板の一方は片面基板であって、他方は両面基板であり、前記接続用フレキシブルプリント基板部は前記一方の片面基板に一体に設けられ、前記一方の片面基板を折り返すことにより前記他方の両面基板側へと延設されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電池用配線モジュール。
【請求項4】
前記他方の両面基板には、前記第1及び第2電圧検知導電路に連なる電子部品が実装されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の電池用配線モジュール。
【請求項5】
前記第1及び第2フレキシブルプリント基板はそれぞれ第1及び第2絶縁プロテクタに収容されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の電池用配線モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−105522(P2013−105522A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246366(P2011−246366)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】