説明

電池用配線モジュール

【課題】積層型の単電池群を備える電池モジュールにおいて、単電池の電圧検知を確実に行うことができる電池用配線モジュールを提供する。
【解決手段】複数の単電池11を積層して接続した単電池群10に取り付けられる電池用配線モジュール20は、複数の導電路32を集合させてなる集合導電線路と、単電池11の隙間に導入される導入線部34と、導入線部34に設けられ、単電池11の電圧を検知する電圧検知端子部35と、絶縁性材料からなり、導電路保持部22および導入線保持部25を有する絶縁支持部材21と、を備える。導入線保持部25には、電圧検知端子部35と単電池11の電極端子面15Aとを接続した状態で単電池11に係止される係止部26が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池用配線モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド車用の電池モジュールでは、出力を大きくするために多数の単電池が横並びに接続されている。隣り合う単電池の電極端子間はバスバーなどの接続部材で接続することにより複数の単電池が直列や並列に接続されるようになっている。ここで、複数の単電池を直列や並列に接続する場合、単電池間において電池電圧などの電池特性が不均一であると、電池の劣化や破損を招くという問題がある。
【0003】
そこで、上述のような電池モジュールには、各単電池間の電圧に異常が生じる前に充電、放電を中止するため、各接続部材には、単電池の電圧を検知するための電圧検知線が接続されている。電圧検知線は、例えばECUに接続され、ECUにより、各単電池の電圧を検知して過放電、過充電状態になる前に充電、放電を中止するようにしている。
【0004】
上記のような電圧検知線を複数の単電池を並べてなる単電池群に接続する構造としては、例えば、特許文献1に記載のものなどが知られている。
【0005】
この電池モジュールにおいては、電圧検知線の端末の露出導体を圧着により接続した電圧検知端子を単電池の電極端子に挿通させて、電極端子に接続部材とともにナットで共締めする構造が採用されている(特許文献1の図1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−124176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年、電池モジュールの小型化等の観点から、表裏に正極および負極の電極端子面を有する複数の単電池を、隣り合う単電池の電極端子面同士を接触させて積層配置することで、単電池を直列接続した積層型の単電池群を用いることが検討されている。
【0008】
このような構成の単電池を用いると、単電池の上端部に突出形状の電極端子を設ける必要がないうえに、バスバーなどの接続部材も不要となるので、従来の電池モジュールよりも小型な電池モジュールを提供することができる。しかしながら、表裏面に電極端子面を有する複数の単電池からなる単電池群においては、隣り合う単電池の電極端子面同士を接触させることで電気的に接続するので、電極端子面が外側に配されない。そのため、単電池の電圧を検知するための部材の接続構造について検討する必要があった。
【0009】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、積層型の単電池群を備える電池モジュールにおいて、単電池の電圧検知を確実に行うことができる電池用配線モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
積層型の単電池群を備える電池モジュールにおいて電圧検知のための部材を接続するには、隣り合う電極端子面間に電圧検知端子を挟む方法などが考えられるが、単に電圧検知端子を挟むだけでは、電圧検知端子が電極端子面間から抜けたり、ずれる等の懸念があった。
上記点に鑑み、さらなる検討を行った結果、本発明に到達した。
【0011】
すなわち、本発明は、表裏に正極および負極の電極端子面をそれぞれ有する複数の単電池を、隣り合う前記単電池の前記電極端子面同士を接触させるように積層することにより直列接続した単電池群に取り付けられる電池用配線モジュールであって、前記単電池の積層方向に延びて配される複数の導電路を集合させてなる集合導電線路と、前記導電路の端末に形成され、前記単電池の隙間に導入される導入線部と、前記導入線部に設けられ、前記電極端子面に接続されて前記単電池の電圧を検知する電圧検知端子部と、絶縁性材料からなり、前記集合導電線路を保持する導電路保持部、および前記導電路保持部から連なり前記導入線部を保持する導入線保持部を有する絶縁支持部材と、を備え、前記導入線保持部には、前記電圧検知端子部と前記単電池の前記電極端子面とを接続した状態で前記単電池に係止される係止部が形成されているところに特徴を有する。
【0012】
本発明においては、導入線保持部に単電池に係止される係止部が形成されているので、導入線部を保持させた状態の導入線保持部を、導入線部に設けた電圧検知端子部を電極端子面に接続させた状態で単電池に係止させることができる。その結果、本発明によれば、電圧検知のための電圧検知端子部を電極端子面に確実に接続することができるので、積層型の単電池群を備える電池モジュールにおいて、単電池の電圧検知を確実に行うことができる電池用配線モジュールを提供することができる。
【0013】
また、本発明によれば、絶縁支持部材の導入線保持部に導入線部を保持させた状態として、隣り合う単電池の隙間に挿入し、導入線保持部を単電池に係止させるだけで、電圧検知のための構造を接続することができるので、電圧検知端子部の接続作業を容易に行うことができ、電圧検知のための構造を簡易なものとすることができる。
【0014】
本発明は以下の構成であってもよい。
前記集合導電線路をフレキシブルプリント基板により形成し、前記導入線部は前記フレキシブルプリント基板に形成した前記導電路から一体的に延設されていてもよい。
このような構成とすると、集合導電線路を複数の電線を束ねてなるワイヤーハーネスにより形成するよりも、集合導電線路を省スペースで、軽量なものとすることができ、かつ、ハーネスを一括する作業を不要とすることができる。
【0015】
前記電圧検知端子部は、前記単電池の積層方向に撓み変形可能なバネ端子を有していてもよい。
単電池の電極端子間の製造公差や単電池の膨張収縮などにより電極端子間のピッチずれが生じると、電圧検知端子部と電極端子面との接続位置の位置ずれの発生が懸念される。そこで、上記のような構成とすると、バネ端子が単電池の積層方向に撓み変形することで、電圧検知端子部と電極端子面との接続位置の位置ずれを防止することができる。
【0016】
前記単電池には、前記導入線保持部を受け入れる凹部が設けられていてもよい。単電池の隙間に導入線保持部を挿入する際に、隣り合う単電池の電極端子面の間に導入線保持部を挟持させると、電極端子面の間に隙間が生じて単電池間の電気的な接続の悪化が懸念される。そこで上記のような構成とすると、導入線保持部を凹部に受け入れさせた状態として、隣り合う単電池の電極端子面を接触状態とすることができるので、単電池間の電気的な接続を良好なものとすることができる。
【0017】
前記単電池の凹部に、前記導入線保持部の前記係止部が係合する係止受け部が設けられていてもよい。このような構成とすると、凹部内で導入線保持部が係止されるので、隣り合う単電池の電極端子面間に隙間が生じにくくなり単電池間の電気的な接続を確実なものとすることができる。
【0018】
前記絶縁支持部材には、前記導入線保持部が設けられている領域ごとに、当該領域が前記単電池の積層方向に沿って変位するのを許容する変位許容部が設けられていてもよい。
単電池の電極端子間の製造公差などにより電極端子間のピッチずれが生じると、導入線保持部の位置と単電池の隙間位置との間にずれが生じて、導入線保持部を単電池の隙間に挿入する作業に支障が生じることがある。そこで、上記のような構成とすると、導入線保持部が導入線保持部が設けられている領域ごとに単電池の積層方向に沿って変位するのが許容されるので、導入線保持部を単電池の隙間に挿入する作業に支障が生じることを防止することができる。
【0019】
前記絶縁支持部材には、前記電圧検知端子部と前記電極端子面との接続状態を確認する確認窓が形成されていてもよい。このような構成とすると、電圧検知端子部と電極端子面との接続状態を確認することができるので、単電池の電圧検知を確実に行うことができる。
【0020】
前記単電池に設けた係合部に係合して位置決めされていてもよい。
このような構成とすると、電池用配線モジュールを単電池の係合部に係合させることで単電池に対して位置決めすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、積層型の単電池群を備える電池モジュールにおいて、単電池の電圧検知を確実に行うことができる電池用配線モジュールを提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態1の電池モジュールの平面図
【図2】単電池群の斜視図
【図3】電池モジュールの一部平面図
【図4】図3のA−A線における一部断面図
【図5】電池モジュールの一部断面図
【図6】電池用配線モジュールの斜視図
【図7】電池用配線モジュールの一部平面図
【図8】電池用配線モジュールの側面図
【図9】図7のB−B線における一部断面図
【図10】フレキシブルプリント基板を絶縁支持部材に取り付ける前の状態を示す斜視図
【図11】フレキシブルプリント基板の一部斜視図
【図12】絶縁支持部材にフレキシブルプリント基板を載置した状態を示す斜視図
【図13】電池用配線モジュールを単電池群に取り付ける前の状態を示す一部断面図
【図14】電池用配線モジュールを単電池群に取り付ける途中の状態を示す一部断面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図14によって説明する。
本実施形態の電池モジュール1は、例えば、電気自動車またはハイブリッド自動車等の車両を駆動するための電源として使用される。電池モジュール1は、図1に示すように、複数(本実施形態では38個)の単電池11が横並びに配置された単電池群10と、単電池群10に取り付けられる電池用配線モジュール20とを備えて構成されている。なお、以下の説明において、上下方向とは図5における上下方向を基準とし、前後方向については図1および図3における左側を前とし右側を後とする。
【0024】
単電池11は、図1及び図2に示すように、扁平な略直方体形状をなし、その内部には図示しない発電要素が収容されている。単電池11の上下左右の側面は、合成樹脂製の絶縁樹脂部12によって覆われており、単電池11の前後両側(表裏の両側)の面には、発電要素と導通可能に接続された一対の電極端子14,15が設けられている。
【0025】
各単電池11の上面には、図2および図4に示すように、上方に立ち上がる一対の係合片17(係合部の一例)が形成されている。一対の係合片17は、単電池群10の幅方向(図4における左右方向)に弾性変形可能に形成されている。一対の係合片17の間には図1に示すように、電池用配線モジュール20が配されるようになっている。一対の係合片17と電池用配線モジュール20の左右の端部とが係合することで、単電池群10に対して電池用配線モジュール20が位置決めされる。
【0026】
各単電池11の上面を覆う絶縁樹脂部12のうち、図5に示す左側(前側)の電極端子に連なる部分には、上方に近づくほど先細り状をなす傾斜面12Aが形成されている。この傾斜面12Aにより、絶縁支持部材21の導入線保持部25(詳細は後述する)が単電池11の隙間内に案内される。
【0027】
一対の電極端子14,15は金属製であって、電極端子面14A,15Aを有する。一対の電極端子14,15のうち、一方の電極端子が正極端子とされ、他方の電極端子が負極端子とされる。隣り合う単電池11において接触する位置に配されている電極端子14,15は極性が相違している。一対の電極端子14,15のうち、図5における左側(前側)に位置する電極端子14を第1電極端子14とし、図5における右側(後側)に位置する電極端子15を第2電極端子15とする。
【0028】
第1電極端子14は、絶縁樹脂部12よりも僅かに前方に張り出した張出部14Cと、張出部14Cの上に設けられ、張出部14Cよりも凹んだ形状の凹み部14Bを有する。第1電極端子14の張出部14Cは、隣りあう単電池11の第2電極端子15の張出部15D(後述する)と接触して電気的に接続される。第1電極端子14の凹み部14Bは、第1電極端子14の上縁において絶縁樹脂部12の傾斜面12Aから連なる部分に設けられている。第1電極端子14の凹み部14Bの外壁面および張出部14Cの外壁面はともに電極端子として機能する電極端子面14Aである。
【0029】
第2電極端子15は、上縁に絶縁樹脂部12と面一状に形成された平坦面部15Bを有し、平坦面部15Bの下側に凹み部15Cを有し、凹み部15Cの下側に絶縁樹脂部12よりも僅かに張り出した張出部15Dを有する。第2電極端子15の平坦面部15Bの外壁面、凹み部15Cの外壁面および張出部15Dの外壁面はともに電極端子として機能する電極端子面15Aである。
【0030】
第1電極端子14の張出部14Cの上端と第2電極端子15の張出部15Dの上端とは一致しており、隣り合う単電池11の第1電極端子14の張出部14Cと第2電極端子15の張出部15Dとを接触するように配置すると、第1電極端子14の凹み部14Bの外壁面と、第1電極端子14の凹み部14Bに対向する位置に配される第2電極端子15の外壁面(平坦面部15Bの外壁面および凹み部15Cの外壁面)とにより、囲まれた部分は、断面視L字状の空間を形成する(図5を参照)。このL字状の空間は、導入線保持部25を受け入れて収容する凹部13である。
【0031】
そして、この凹部13を構成する第2電極端子15の凹み部15Cの外壁面のうち、第2電極端子15の平坦面部15Bに連なる凹み部15Cの底壁151Cに対して略垂直な壁は、導入線保持部25の係止片26(「係止部」の一例、詳細は後述する)と係合して導入線保持部25を抜け止めする係止壁13A(「係止受け部」の一例)である。
【0032】
本実施形態では、複数の単電池11を、隣り合う単電池11の第1電極端子14の張出部14Cの外壁面(電極端子面14A)と第2電極端子15の張出部15Dの外壁面(電極端子面15A)とが接触するように、前後方向に積層配置することで、複数の単電池11を電気的に直列接続した単電池群10が構成される。
【0033】
単電池群10の前後方向の両端には、図2に示すように、例えば前面もしくは後面が絶縁性樹脂部に覆われた電極板16が取り付けられており、第1電極端子14および第2電極端子15が前後方向に露出しないようになっている。単電池群10には、図示しない保持板などの固定手段が取り付けられており、これにより、隣り合う単電池11の第1電極端子14と第2電極端子15との接触状態が保持されている。
【0034】
単電池群10の上面には、図1〜図3に示すように、単電池群10の積層方向(前後方向)に延びる電池用配線モジュール20が取り付けられている。電池用配線モジュール20は、図6〜図9に示すように、フレキシブルプリント基板30(以下「FPC」ともいう)と、FPC30を保持する絶縁性材料からなる絶縁支持部材21とを備える。
【0035】
FPC30は、図10に示すように、複数の導電路32を形成した帯状のFPC本体部31と、FPC本体部31の幅方向の両側に一体的に形成され、隣り合う単電池11の隙間に導入される複数の導入片33と、を備える。
【0036】
FPC30は、図11に示すように、例えばポリイミドフィルムや液晶状フィルム等からなる絶縁性のベースフィルムの片面または両面にプリント配線技術により複数の導電路32を形成し、その導電路32の表面を保護フィルム(例えば、ポリイミド製フィルム)で覆った構造とされる。なお、図11以外では、導電路32の図示を省略している。
【0037】
FPC本体部31には、図11に示すように、単電池11の積層方向(FPC30の長手方向)に延びる複数の導電路32が集合して形成されている(「集合導電線路」の一例)。導電路32の一方の端部は、導入片33に形成した導入線部34に連なっており、導電路32の他方の端部には、例えば図示しないECUなどが接続されるようになっている。
【0038】
導入片33は、単電池11間の隙間毎に形成されており、各導入片33は、FPC30の長手方向の2つの端縁30Aから、単電池11の厚さ寸法分だけ前後方向にずらして交互に配されている。これにより、前後方向(長手方向)に導入線部34が形成された導入片33を直線的に形成する場合に比べて、導入片33の材料取りを向上させることができる。
【0039】
導入片33は、図10に示すように、FPC30の幅方向両側の端部からFPC本体部31に向かって切り込みを形成し、その切り込みの奥端部から後方に向かって更に切り込みを形成して、これらの切り込みによって囲まれた部分を下方に折り曲げることで形成されている。
【0040】
各導入片33には、導入線部34が形成されている。導入線部34は、FPC本体部31に形成された導電路32から一体的に延出されている。導入線部34の端末には、図示しない電極パッドが設けられておりこの電極パッドには、図5に示すように、断面視台形状のバネ端子35(電圧検知端子部の一例)がリフロー半田付け等の公知の手法により接続されている。
【0041】
バネ端子35は、単電池11の電極端子15に導通可能に接続されることで、単電池11の電圧に関する情報を取り込む電圧検知端子であって、図5及び図11に示すように、導入片33から前方に突出した形態をなし、単電池11の積層方向において弾性変形可能とされる。なお、バネ端子35で得られた電圧に関する情報は、導入線部34及び導電路32を通じて図示しないECUなどに取り込み、各単電池11の電圧が検知されるようになっている。
【0042】
バネ端子35は導電性の金属板材を所定形状に切断し曲げ加工を施して作製したものであり、導入片33の下端部において電極パッドに接続されるU字状の導入片接続部35Aと、導入片接続部35Aから連なり、断面視台形状の弾性変形部35Bとを有する。
【0043】
バネ端子35の弾性変形部35Bの端部のうち、導入片接続部35A側の端部35C(下端部35C)は導入線保持部25の係止片26に覆われているが、弾性変形部35Bの導入片接続部35Aとは反対側の端部35D(上端部35D)は、導入線保持部25に覆われておらず、導入片33に固定されてもいない開放端35Dである。したがって、導入線保持部25を隣り合う単電池11の隙間に挿入する際に、隣り合う単電池11の第1電極端子14および第2電極端子15から押圧力を受けて、弾性変形部35Bの開放端35Dが上方に移動することで、バネ端子35が単電池11の積層方向に撓み変形するようになっている。
【0044】
バネ端子35の弾性変形部35Bの略中央部35Eには、導入片33の板面に対し略平行に配され、第2電極端子15の平坦面部15Bの外壁面(電極端子面15A)と接触して、第2電極端子15とバネ端子35とを電気的に接続する端子接続部35Eが設けられている。
【0045】
FPC30を保持する絶縁支持部材21は、図10に示すように、絶縁性樹脂からなる連結ユニット21Aを前後方向に複数(本実施形態では4つ)並べて構成されている。隣り合う連結ユニット21Aは、たがいに連結されておらず、FPC30を取り付けることにより連結される。
【0046】
連結ユニット21Aは、図10に示すように、FPC30が載置される載置部22と、載置部22と一体に形成されたカバー28とを備える。また、載置部22にカバー28を被せた状態の連結ユニット21Aの幅寸法は、図4に示すように、単電池11における一対の係合片17間の距離とほぼ同一に設定されている。
【0047】
載置部22(「導電路保持部」の一例)の略中央部には、FPC本体部31が載置されるようになっており、載置部22の、単電池11の積層方向に沿って配される両側縁には、FPC30の導入片33が載置されるようになっている。載置部22は、前後方向に複数に分割された分割載置部23からなり、本実施形態では、1つの連結ユニット21Aが10個の分割載置部23を備える。
【0048】
分割載置部23において導入片33が載置される部分には、上下方向に分割載置部23を貫通する導入片挿通孔24が形成されている。この導入片挿通孔24は、バネ端子35が取り付けられた導入片33を挿通可能に形成されている。各分割載置部23の下面には、図9に示すように、導入片挿通孔24の直下に設けられ、導入片33を保持する導入線保持部25が下方に突出形成されている。
【0049】
導入線保持部25は、導入片33の後面(バネ端子35が接続されていない面)の全域と、導入片33の前面(バネ端子35が接続されている面)の周縁のうち、上端縁以外の端縁とを、覆っている。また、導入線保持部25の下端部には、図5にしめすように、バネ端子35の弾性変形部35Bの導入片接続部35A側の端部を覆うように前方に突出した係止片26が形成されている。
【0050】
導入線保持部25におけるバネ端子35の端子接続部35Eが設けられている部分の厚み寸法Xは、隣り合う単電池11の隙間に挿入されていない状態では、第2電極端子15の平坦面部15Bの外壁面と第1電極端子14の凹み部14Bの外壁面との距離Yよりも大きく設定されている(図13参照)。
【0051】
隣り合う分割載置部23は、分割載置部23の下面から下向きに膨出した側面視略U字状の連結部27により連結されている。連結部27は、隣り合う分割載置部23を単電池群10の積層方向に連結するとともに、前後方向(単電池群10の積層方向)に弾性変形可能とされる。したがって、連結部27が前後方向に弾性変形することで、分割載置部23が前後方向に変位するのを許容し、分割載置部23間の前後方向の隙間間隔を、広くしたり狭くしたりすることができるようになっている(変位許容部の一例)。
【0052】
カバー28は、図10に示すように、可撓性のヒンジ29を介して、載置部22と連なっている。カバー28の側縁のうち、載置部22と反対側の側縁には、載置部22の係止突部23Aに係止される被係止部28Aが形成されている。ヒンジ29を屈曲させて、カバー28の被係止部28Aを載置部22の係止突部23Aに係合させることにより、カバー28は、図6及び図12に示すように、FPC30の上面を覆った状態で、載置部22に固定されるようになっている。すなわち、カバー28を載置部22に固定することで、FPC30は連結ユニット21Aにより包囲される。
【0053】
カバー28の側縁のうち単電池群10の並び方向に配される両側縁には、複数の係合突部28Bが形成されている。係合突部28Bは、図12に示すように、カバー28のヒンジ29及び被係止部28Aよりも(カバー28の)外側方向に突出して形成されており、図4に示すように、単電池11の係合片17と係合可能に形成されている。カバー28を載置部22に被せた状態としてから、係合突部28Bと単電池11の係合片17を係合させることで、単電池群10に対して電池用配線モジュール20が単電池群10の幅方向および上下方向に位置決めされ、絶縁支持部材21が単電池群10に保持されるようになっている。
【0054】
カバー28には、カバー28を載置部22に被せたときに、載置部22の複数の導入片挿通孔24と重なる位置に、方形状にくりぬかれた窓28Cが設けられている。この窓28Cは、図12に示すように、導入線保持部25の直上に設けられている。したがって、カバー28に設けた窓28Cおよび導入片挿通孔24は、単電池11の隙間に導入線保持部25を挿入した際に、バネ端子35と電極端子面15Aとが接触しているか否かを確認する確認窓として機能する。
【0055】
カバー28には、図1および図5に示すように、FPC本体部31の上面に設けた電子部品(図示せず)を保護するための電子部品保護部28Dが複数、上方に突出形成されている。これにより、他の部材が電子部品に接触して、電子部品が損傷したり、FPC30から剥離・脱落すること等を防止することができる。
【0056】
次に、本実施形態の電池モジュール1の組み立て手順の一例を簡単に説明する。
まず、図10に示すように、カバー28が開いた状態の連結ユニット21Aを前後方向に4つ並べるとともに、FPC30に加工を施して複数の導入片33、電子部品、バネ端子35および電子部品などを備えるFPC30を用意する。
【0057】
そして、FPC30の導入片33を連結ユニット21Aの載置部22に形成された導入片挿通孔24に挿通させることにより導入片33を導入線保持部25に保持させて、図12に示すように、載置部22の上面にFPC本体部31を載置する。
【0058】
次に、連結ユニット21Aのヒンジ29を屈曲させて、載置部22に載置されたFPC30の上面を覆うようにカバー28を載置部22に覆い被せ、カバー28の被係止部28Aを載置部22の係止突部23Aに係合させる。これにより、FPC30が、図6に示すように、連結ユニット21Aにより包囲されるとともに、各連結ユニット21AがFPC30によって連結され、電池用配線モジュール20が完成する。ここで、FPC30は、連結ユニット21Aにより包囲されているので、FPC30が他の部材と接触することを防ぎ、FPC30の破損を防止することができる。さらに、カバー28の窓28Cが各分割載置部23の導入片挿通孔24の直上に配され、これにより、カバー28の窓28Cおよび分割載置部23の導入片挿通孔24を通じて導入片33に設けたバネ端子35の状態を観察することが可能となる。
【0059】
電池用配線モジュール20の作製と同時または前後して、第1電極端子14が前側に配されるように、複数の単電池11を前後方向に並べて(積層して)単電池群10を作製する。
【0060】
次に、単電池群10の上面に、電池用配線モジュール20を上方から組み付ける。詳細には、まず、図13に示すように、隣り合う単電池11の隙間に各導入線保持部25を配して、電池用配線モジュール20の位置合わせをする。
【0061】
次に、導入線保持部25を、凹部13内に挿入する。導入線保持部25を凹部13内に差し込むと、導入線保持部25は絶縁樹脂部12の傾斜面12Aに案内される。さらに導入線保持部25を下方(図14の矢印の方向)に移動させると、図14に示すように、導入線保持部25の係止片26およびバネ端子35が、隣り合う単電池11の第1電極端子14の凹み部14Bの外壁と第2電極端子15の平坦面部15Bの外壁に押されて、弾性変形する。
【0062】
さらに、導入線保持部25を凹部13内において下方に移動させると、導入線保持部25の係止片26とバネ端子35が弾性変形したまま下方に移動し、係止片26の上端部26Aが第2電極端子15の凹み部15Cに至ると、係止片26が弾性復帰して係止壁13Aにより係止され抜け止めされる(図5を参照)。このとき、バネ端子35も係止片26とともに弾性復帰して、バネ端子35の端子接続部35Eが第2電極端子15の平坦面部15Bの外壁面(電極端子面15A)に接触し、導通可能となる。
【0063】
電池用配線モジュール20を単電池群10に組み付けると、単電池11の上面に形成した係合片17に電池用配線モジュール20が係合して位置決めされる。そして、電池用配線モジュール20を組み付けた単電池群10においては、図5に示すように、導入片33に接続されたバネ端子35と、単電池11の第2電極端子15の平坦面部15Bの外壁面(電極端子面15A)とを接続した状態で導入線保持部25が単電池11に係止されるとともに、隣り合う単電池11の第1電極端子14の張出部14Cの外壁面(電極端子面14A)と、第2電極端子1515の張出部15Dの外壁面(電極端子面15A)とが導通可能に接続される。なお、バネ端子35と第2電極端子15との接続状態については、カバー28の窓28Cと分割載置部23の導入片挿通孔24が重なることで形成された観察窓を通して確認することができる。
【0064】
また、このとき、凹部13内に、バネ端子35が接続された導入片33を保持する導入線保持部25が収容され、隣り合う単電池11の第1電極端子14の張出部14Cの外壁面と第2電極端子15の張出部15Dの外壁面とが接触して導通可能に接続されるので、凹部13よりも下方においては、隣り合う単電池11の第1電極端子14と第2電極端子15との間には隙間が生じない。以上のようにして電池モジュール1が完成する。
【0065】
次に本実施形態の効果について説明する。
本実施形態においては、導入線保持部25に単電池11に係止される係止部が形成されているので、導入片33(導入線部34)を保持させた状態の導入線保持部25を、導入線部34に設けたバネ端子35(電圧検知端子部)を電極端子面15Aに接続させた状態で単電池11に係止させることができる。その結果、本実施形態によれば、電圧検知のためのバネ端子35を電極端子面15Aに確実に接続することができるので、積層型の単電池群10を備える電池モジュール1において、単電池11の電圧検知を確実に行うことができる電池用配線モジュール20を提供することができる。
【0066】
また、本実施形態によれば、絶縁支持部材21の導入線保持部25に導入片33を保持させた状態として、隣り合う単電池11の隙間に挿入し、導入線保持部25を単電池11に係止させるだけで、電圧検知のための構造を接続することができるので、従来のように、ナットを電極端子に締め付けて電圧検知端子と電極端子とを接続する必要がなく、接続作業を容易に行うことができ、電圧検知のための構造を簡易なものとすることができる。
【0067】
また、本実施形態によれば、電極端子を接続するバスバーを備えた従来の電池配線モジュールに比べて、電池用配線モジュール20の部品点数を低減させることができるので、電池用配線モジュール20の製造コストを低減できると共に、電池用配線モジュール20を軽量化することができる。
【0068】
また、本実施形態によれば、集合導電線路をFPC30により形成し、導入線部34はFPC30に形成した導電路32から一体的に延設されているから、集合導電線路を複数の電線を束ねてなるワイヤーハーネスにより形成するよりも、集合導電線路を省スペースで、軽量なものとすることができ、かつ、ハーネスを一括する作業を不要とすることができる。
【0069】
ところで、単電池11の電極端子間の製造公差や単電池11の膨張収縮などにより電極端子14,15間のピッチずれが生じると、電圧検知端子部35と電極端子面15Aとの接続位置の位置ずれの発生が懸念される。しかしながら、本実施形態によれば、電圧検知端子部は、単電池11の積層方向に撓み変形可能なバネ端子35を有しているので、バネ端子35が単電池11の積層方向に撓み変形することで、電圧検知端子部と電極端子面15Aとの接続位置の位置ずれの発生を防止することができる。
【0070】
また、本実施形態によれば、単電池11に、導入線保持部25を受け入れる凹部13が設けられているから、導入線保持部25を凹部13に受け入れさせた状態として、隣り合う単電池11の第1電極端子14の電極端子面14Aと第2電極端子15の電極端子面15Aとを接触状態とすることができるので、凹部13よりも下方においては、隣り合う単電池11の第1電極端子14と第2電極端子15との間には隙間が生じず電気的な接続を良好なものとすることができる。
【0071】
特に本実施形態では、単電池11の凹部13に、導入線保持部25の係止片26が係合する係止壁13Aが設けられているから、凹部13内で導入線保持部25が係止され、隣り合う単電池11の電極端子面14A間には隙間が生じにくくなり単電池11間の電気的な接続を確実なものとすることができる。
【0072】
ところで、単電池11の電極端子14,15間の製造公差などにより電極端子14,15間のピッチずれが生じると、導入線保持部25の位置と単電池11の隙間位置との間にずれが生じて、導入線保持部25を単電池11の隙間に挿入する作業に支障が生じることがある。しかしながら、本実施形態によれば、絶縁支持部材21には、分割載置部23(「導入線保持部25が設けられている領域」の一例)ごとに、当該分割載置部23が単電池11の積層方向に沿って変位するのを許容する連結部27(変位許容部)が設けられているから、導入線保持部25が分割載置部23ごとに単電池11の積層方向に沿って変位するのが許容され、導入線保持部25を単電池11の隙間に挿入する作業に支障が生じることを防止することができる。
【0073】
また、本実施形態によれば、絶縁支持部材21には、バネ端子35と電極端子面15Aとの接続状態を確認する確認窓24,28Cが形成されているから、バネ端子35と電極端子面15Aとの接続状態を確認することができ、単電池11の電圧検知を確実に行うことができる。
【0074】
さらに、本実施形態によれば、単電池11に電池用配線モジュール20を位置決めする係合片17が設けられているので、電池用配線モジュール20を単電池群10に対して位置決めすることができる。
【0075】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、FPC30により形成された集合導電線路31を備える電池用配線モジュール20を示したが、集合導電線路を複数の電線を束ねてなるワイヤーハーネスにより形成してもよい。
(2)上記実施形態では電圧検知端子部35として単電池11の積層方向にたわみ変形可能なバネ端子35を有するものを示したが、単電池の電極端子面と接続可能なものであれば、これに限定されない。例えば平板状の端子などであってもよい。
(3)上記実施形態では、バネ端子35を接合した導入片33を示したが、導入線保持部においてバネ端子を導入片に接合せずに、導入線部と接触するように配してもよい。
(4)上記実施形態では、導入線保持部25を受け入れる凹部13が設けられている単電池11を示したが、これに限定されない。隣り合う単電池の隙間に導入線保持部を挿入可能であるとともに、単電池同士が電極端子面で接続可能であれば、単電池に凹部が設けられていない構成であってもよい。
(5)上記実施形態では、絶縁支持部材21の分割載置部23ごとに分割載置部23が単電池11の積層方向に変異するのを許容する変位許容部としてU字状の連結部27を設けたものを示したが、分割載置部を連結しない(連結部を設けない)で移動可能にしておきFPCにより連結してもよい。
(6)上記実施形態では、電圧検知端子部と電極端子面14Aとの接続状態を確認する確認窓28Cを備えるものを示したが、確認窓のないものであってもよい。
(7)上記実施形態では、単電池11に設けた係合片17により係止される電池用配線モジュール20を示したが、本発明の電池用配線モジュールは係止部を有さない単電池からなる単電池群に適用してもよい。
【符号の説明】
【0076】
1…電池モジュール
10…単電池群
11…単電池
13…凹部
13A…係止壁(係止受け部)
14…第1電極端子
14A…電極端子面
14B…凹み部
14C…張出部
15…第2電極端子
15A…電極端子面
15B…平坦面部
15C…凹み部
151C…凹み部の底壁
15D…張出部
17…係合片(係合部)
20…電池用配線モジュール
21…絶縁支持部材
21A…連結ユニット
22…載置部(導電路保持部)
23…分割載置部(導入線保持部が設けられている領域)
24…導入片挿通孔(確認窓)
25…導入線保持部
26…係止片(係止部)
27…連結部(変位許容部)
28…カバー
28C…窓(確認窓)
30…フレキシブルプリント基板(FPC)
31…FPC本体部(集合導電線路)
32…導電路
33…導入片
34…導入線部
35…バネ端子(電圧検知端子部)
35E…端子接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表裏に正極および負極の電極端子面をそれぞれ有する複数の単電池を、隣り合う前記単電池の前記電極端子面同士を接触させるように積層することにより直列接続した単電池群に取り付けられる電池用配線モジュールであって、
前記単電池の積層方向に延びて配される複数の導電路を集合させてなる集合導電線路と、前記導電路の端末に形成され、前記単電池の隙間に導入される導入線部と、前記導入線部に設けられ、前記電極端子面に接続されて前記単電池の電圧を検知する電圧検知端子部と、絶縁性材料からなり、前記集合導電線路を保持する導電路保持部、および前記導電路保持部から連なり前記導入線部を保持する導入線保持部を有する絶縁支持部材と、を備え、
前記導入線保持部には、前記電圧検知端子部と前記単電池の前記電極端子面とを接続した状態で前記単電池に係止される係止部が形成されていることを特徴とする電池用配線モジュール。
【請求項2】
前記集合導電線路をフレキシブルプリント基板により形成し、前記導入線部は前記フレキシブルプリント基板に形成した前記導電路から一体的に延設されていることを特徴とする請求項1に記載の電池用配線モジュール。
【請求項3】
前記電圧検知端子部は、前記単電池の積層方向に撓み変形可能なバネ端子を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電池用配線モジュール。
【請求項4】
前記単電池には、前記導入線保持部を受け入れる凹部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の電池用配線モジュール。
【請求項5】
前記単電池の凹部に、前記導入線保持部の前記係止部が係合する係止受け部が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の電池用配線モジュール。
【請求項6】
前記絶縁支持部材には、前記導入線保持部が設けられている領域ごとに、当該領域が前記単電池の積層方向に沿って変位するのを許容する変位許容部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の電池用配線モジュール。
【請求項7】
前記絶縁支持部材には、前記電圧検知端子部と前記電極端子面との接続状態を確認する確認窓が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の電池用配線モジュール。
【請求項8】
前記単電池に設けた係合部に係合して位置決めされることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の電池用配線モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−80620(P2013−80620A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219994(P2011−219994)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】