説明

電池用配線モジュール

【課題】積層型の単電池群を備える電池モジュールにおいて、単電池の電圧検知を確実に行うことができる電池用配線モジュールを提供する。
【解決手段】本発明の電池用配線モジュール20は、複数の単電池11を、電極端子面14D,15A同士を接触させるように積層することで接続した単電池群10に取り付けられ、単電池11の積層方向に延びて配される複数の導電路32を集合させた集合導電線路31と、集合導電線路31を保持する絶縁支持部材21とを備える。導電路32は、一方の端末に、絶縁支持部材21から導出され隣り合う単電池11の隙間に導入される導入線部34を有する。導入線部34は、電圧検知端子部35を有するとともに、隣り合う単電池11の隙間への導入深さを変更可能に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池用配線モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド車用の電池モジュールでは、出力を大きくするために多数の単電池が横並びに接続されている。隣り合う単電池の電極端子間はバスバーなどの接続部材で接続することにより複数の単電池が直列や並列に接続されるようになっている。ここで、複数の単電池を直列や並列に接続する場合、単電池間において電池電圧などの電池特性が不均一であると、電池の劣化や破損を招くという問題がある。
【0003】
そこで、上述のような電池モジュールには、各単電池間の電圧に異常が生じる前に充電、放電を中止するため、各接続部材には、単電池の電圧を検知するための電圧検知線が接続されている。電圧検知線は、例えばECUに接続され、ECUにより、各単電池の電圧を検知して過放電、過充電状態になる前に充電、放電を中止するようにしている。
【0004】
上記のような電圧検知線を複数の単電池を並べてなる単電池群に接続する構造としては、例えば、特許文献1に記載のものなどが知られている。
【0005】
この電池モジュールにおいては、電圧検知線の端末の露出導体を圧着により接続した電圧検知端子を単電池の電極端子に挿通させて、電極端子に接続部材とともにナットで共締めする構造が採用されている(特許文献1の図1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−124176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年、電池モジュールの小型化等の観点から、表裏に正極および負極の電極端子面を有する複数の単電池を、隣り合う単電池の電極端子面同士を接触させて積層配置することで、単電池を直列接続した積層型の単電池群を用いることが検討されている。
【0008】
このような構成の単電池を用いると、単電池の上端部に突出形状の電極端子を設ける必要がないうえに、バスバーなどの接続部材も不要となるので、従来の電池モジュールよりも小型な電池モジュールを提供することができる。しかしながら、表裏面に電極端子面を有する複数の単電池からなる単電池群においては、隣り合う単電池の電極端子面同士を接触させることで電気的に接続するので、電極端子面が外側に配されない。そのため、単電池の電圧を検知するための部材の接続構造について検討する必要があった。
【0009】
さらに、このような構成の単電池においても、単電池の電極端子間には製造公差等が設定されているため、複数の単電池を並べてなる電池モジュールにおいては隣り合う単電池に形成された電極端子間のピッチがずれる場合がある。電極端子間のピッチのずれが生じると、電圧検知のための部材と単電池との電気的な接続に支障が生じることが懸念される
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、積層型の単電池群を備える電池モジュールにおいて、単電池の電圧検知を確実に行うことができる電池用配線モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するものとして本発明は、表裏に正極および負極の電極端子面をそれぞれ有する複数の単電池を、隣り合う前記単電池の前記電極端子面同士を接触させるように積層することにより直列接続した単電池群に取り付けられる電池用配線モジュールであって、前記単電池の積層方向に延びて配される複数の導電路を集合させてなる集合導電線路と、前記集合導電線路を保持する絶縁支持部材と、を備え、前記導電路は、その一方の端末に、前記絶縁支持部材から導出され隣り合う前記単電池の隙間に導入される導入線部を有し、前記導入線部は、前記電極端子面に接続されて前記単電池の電圧を検知する電圧検知端子部を有するとともに、隣り合う前記単電池の隙間への導入深さを変更可能に設けられているところに特徴を有する。
【0011】
表裏に電極端子面を有する単電池においても、単電池の電極端子間の製造公差や単電池の膨張収縮などにより電極端子間のピッチずれが生じる場合があるが、本発明においては、導入線部が単電池の隙間への導入深さを変更可能に設けられている。したがって、本発明によれば、導入線部の導入深さを変えることで、電極端子間のピッチずれが吸収され、電圧検知端子部と電極端子面とが確実に接触するので、単電池の電圧検知を確実に行うことができる。
その結果、本発明によれば、積層型の単電池群を備える電池モジュールにおいて、単電池の電圧検知を確実に行うことができる電池用配線モジュールを提供することができる。
【0012】
また、本発明においては、絶縁支持部材から導出された導入線部を隣り合う単電池の隙間に導入して、導入線部に設けた電圧検知端子部を電極端子に接触させることで、各単電池の電圧検知を行うことができるから、電圧検知端子部の接続作業を容易に行うことができ、電圧検知のための構造を簡易なものとすることができる。
【0013】
本発明は以下の構成としてもよい。
前記集合導電線路は、フレキシブルプリント基板により形成され、前記導入線部は前記フレキシブルプリント基板に形成した前記導電路から一体的に延設されていてもよい。
このような構成とすると、集合導電線路を複数の電線を束ねてなるワイヤーハーネスにより形成するよりも、集合導電線路を省スペースで、軽量なものとすることができ、かつ、ハーネスを一括する作業を不要とすることができる。
【0014】
前記絶縁支持部材は、フィルム状をなし、前記集合導電線路を間に挟んで保持する構成であってもよい。
このような構成とすると、電池用配線モジュールを、より省スペースで軽量なものとすることができる。
【0015】
前記絶縁支持部材は前記単電池の積層方向に沿って配され、対向する位置に形成された2つの端縁を有し、前記導入線部は、前記絶縁支持部材の前記2つの端縁から交互に導出されていてもよい。
このような構成とすると、導入線部を1つの端縁から導出する構成とするよりも、材料採りを向上させることができる。
【0016】
前記電圧検知端子部は、前記導入線部の前記単電池の隙間への導入深さを変更可能に前記電極端子面に対して係合されていてもよい。
このような構成とすると、電圧検知端子部が確実に電極端子面に接続されるので、単電池の電圧検知をさらに、確実に行うことができる。
【0017】
前記単電池に設けた係止部により係止されていてもよい。
このような構成とすると、電池用配線モジュールが係止部により係止されるので、電圧検知端子部を対応する単電池に対して位置決めすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、積層型の単電池群を備える電池モジュールにおいて、単電池の電圧検知を確実に行うことができる電池用配線モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態1の電池モジュールの斜視図
【図2】電池モジュールの一部平面図
【図3】電池モジュールの一部断面図
【図4】単電池群の斜視図
【図5】電池用配線モジュールの斜視図
【図6】電池用配線モジュールの一部平面図
【図7】電池用配線モジュールの一部側面図
【図8】電池用配線モジュールの正面図
【図9】集合導電線路の一部平面図
【図10】電圧検知端子部の正面図
【図11】電圧検知端子部の斜視図
【図12】電圧検知端子部の側面図
【図13】導入線部の導入深さの相違を説明する一部側面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図13によって説明する。
本実施形態の電池モジュール1は、例えば、電気自動車またはハイブリッド自動車等の車両を駆動するための電源として使用される。電池モジュール1は、図1に示すように、複数(本実施形態では38個)の単電池11が横並びに配置された単電池群10と、単電池群10に取り付けられる電池用配線モジュール20とを備えて構成されている。なお、以下の説明において、上下方向とは図3における上下方向を基準とし、前後方向については図2および図3における左側を前とし右側を後とする。
【0021】
単電池11は、図1及び図2に示すように、扁平な略直方体形状をなし、その内部には図示しない発電要素が収容されている。単電池11の上下左右の側面は、合成樹脂製の絶縁樹脂部12によって覆われており、単電池11の前後両側(表裏の両側)の面には、発電要素と導通可能に接続された一対の電極端子14,15が設けられている。
【0022】
一対の電極端子14,15は金属製であって、電極端子面14D,15Aを有する。一対の電極端子14,15のうち、一方の電極端子14,15が正極端子とされ、他方の電極端子14,15が負極端子とされる。隣り合う単電池11において接触する位置に配されている電極端子14,15は極性が相違している。
【0023】
一対の電極端子14,15のうち、図3における左側(前側)に位置する電極端子14は、絶縁樹脂部12よりも僅かに前方に張り出した部分を有している。この電極端子14を第1電極端子14とする。第1電極端子14の張り出した部分は、隣りあう単電池11の電極端子15と接触して電気的に接続される。第1電極端子14の上縁には、張出部分よりも凹んだ形状をなして、金属端子35および導入線部34等を備える導入片33(詳細は後述する)が収容される端子収容部14Aが設けられている。端子収容部14Aは、導入片33を上方から挿入可能に上方に開口するとともに、前方が開口している。端子収容部14Aには導入片33を係止する係合突部14Bが外側方向に突出形成されている。第1電極端子14において、端子収容部14Aの壁面14C、および端子収容部14Aの下側の絶縁樹脂部12よりも張り出した部分の壁面14Dが電極端子面である。
【0024】
一対の電極端子14,15のうち、図3における右側(後側)に位置する電極端子15は、平坦な形状をなし、絶縁樹脂部12と面一状に形成されている。この電極端子15を第2電極端子15とし第1電極端子14の張り出した部分の壁面14Dと接触する電極端子面15Aを有する。
【0025】
複数の単電池11を、隣り合う単電池11の第1電極端子14の電極端子面14Dと第2電極端子15の電極端子面15Aとが接触するように、前後方向に積層配置することで、複数の単電池11を電気的に直列接続した単電池群10が構成される。
【0026】
単電池群10の前後方向の両端には、図2に示すように、例えば前面もしくは後面が絶縁性樹脂部に覆われた電極板16が取り付けられており、第1電極端子14および第2電極端子15が前後方向に露出しないようになっている。単電池群10には、図示しない保持板などの固定手段が取り付けられており、これにより、隣り合う単電池11の第1電極端子14と第2電極端子15との接触状態が保持されている。
【0027】
各単電池11の上面には、図4に示すように、上方に立ち上がる一対の係合片17(係止部の一例)が形成されている。一対の係合片17は、単電池群10の幅方向(図2における左右方向)に弾性変形可能に形成されている。一対の係合片17の間には図1および図2に示すように、電池用配線モジュール20が配されるようになっている。一対の係合片17と電池用配線モジュール20の左右の端部とが係合することで、単電池群10に対して電池用配線モジュール20が位置決めされる。
【0028】
単電池群10の上面には、図1〜図3に示すように、単電池群10の積層方向(前後方向)に延びる電池用配線モジュール20が取り付けられている。電池用配線モジュール20は、フレキシブルプリント基板30(以下「FPC」ともいう)と、FPC30の中央の領域31(FPC本体部31)を保持する絶縁性材料からなる絶縁フィルム21(「絶縁支持部材」の一例)とを備える。
【0029】
絶縁フィルム21は、図2に示すように、FPC30よりも前後方向(単電池11の積層方向)において延びた形態をなし、単電池11の積層方向に沿って配され、対向する位置に形成された2つの端縁21Aを有する。
【0030】
絶縁フィルム21は、FPC本体部31を上下方向から挟み込むように形成されている。絶縁フィルム21の単電池11の積層方向に沿って配される2つの端縁21Aは、FPC本体部31の単電池11の積層方向に沿って配される2つの端縁30Aに概ね一致するように、FPC本体部31に接合されている。また、絶縁フィルム21は、FPC本体部31の前後方向の両端部よりも外側の位置において接着されており、これにより、FPC本体部31が保護されるとともに保持されている。
【0031】
FPC本体部31の上側に配される絶縁フィルム21には、FPC本体部31の上面に設けた電子部品(図示せず)を保護するための電子部品保護部22が複数、上方に突出形成されている。これにより、他の部材が電子部品に接触して、電子部品が損傷したり、FPC30から剥離・脱落すること等を防止することができる。
【0032】
FPC30は、図5〜図8に示すように、絶縁フィルム21により保持されるFPC本体部31と、FPC本体部31の幅方向の両側に一体的に形成され、隣り合う単電池11の隙間に導入される複数の導入片33と、を備える。
【0033】
FPC30は、図9に示すように、例えばポリイミドフィルムや液晶状フィルム等からなる絶縁性のベースフィルムの片面または両面にプリント配線技術により複数の導電路32を形成し、その導電路32の表面を保護フィルム(例えば、ポリイミド製フィルム)で覆った構造とされる。なお、図9以外では、導電路32の図示を省略している。
【0034】
FPC本体部31は帯状をなし、図2に示すように、単電池11の積層方向に沿って配され対向する位置に形成された2つの端縁30Aを有する。FPC本体部31の長手方向の寸法は、単電池群10の積層方向における長さ寸法よりも長めに設定されている。FPC本体部31には、図9に示すように、単電池11の積層方向に延びる複数の導電路32が集合して形成されている(「集合導電線路」の一例)。導電路32の一方の端部は、導入片33に形成した導入線部34に連なっており、導電路32の他方の端部には、例えば図示しないECUなどが接続されるようになっている。
【0035】
導入片33は、単電池11間の隙間毎に形成されており、各導入片33は、絶縁フィルム21の単電池11の積層方向に沿って配される2つの端縁21Aから、単電池11の厚さ寸法分だけ前後方向にずらして交互に導出されている。導入片33は、単電池11間の隙間において、単電池11の第1電極端子14の上縁に形成された端子収容部14Aに収容されている。
【0036】
第1電極端子14の端子収容部14Aの凹み深さ寸法Yは、図3に示すように、導入片33に設けた金属端子35(詳細は後述する)の前方突出部35Cの前端部から後方突出部35Bの後端部まで長さXとほぼ同一に設定されている。ここで、長さXがほぼ同一とは、端子収容部14Aの凹み深さ寸法Yが、長さXと同じ場合および長さXよりも僅かに小さい場合の双方を含む。
【0037】
複数の導入片33は、図5および図9に示すように、FPC30の中央領域31の両側において、FPC30の上下方向に貫通する略U字状の切り込みを形成し、切り込みに囲まれた部分を下方に向かって折り曲げることにより形成されている。本実施形態では、FPC30の中央領域31の2つの端縁30Aにおいて、単電池11の積層方向に一直線に並んだ複数の導入片33は、FPC30の幅方向における両側縁30Bにより、連結された状態となっている。これにより、本実施形態の導入片33の屈曲を抑制することができるようになっている。
【0038】
さて、本実施形態では、図13に示すように、複数の導入片33の単電池11間の隙間への導入深さは、変更可能とされ、これにより、単電池11の電極端子14,15間の製造公差や組み付け公差および電池の膨張収縮等に起因する電極端子14,15間のピッチずれを吸収するようになっている。図13に示した導入片33のうち、左端の導入片33(導入線部34)の導入深さP1が最も深く、右端の導入片33の導入深さP2が最も浅くなっている。
【0039】
各導入片33には、導入線部34が形成されている。導入線部34は、FPC本体部31に形成された導電路32から一体的に延出されている。導入線部34の端末は、導入片33の端部に形成された金属端子35(電圧検知端子部の一例)に接続される。
【0040】
各導入片33には、図8および図13に示すように、皿状の金属端子35と、金属端子35の上方に配された一対の接続検知端子36とが設けられている。さらに、複数の導入片33のうち一部の導入片33には、金属端子35、接続検知端子36以外に、ブロック状の温度センサ37が設けられている。
【0041】
金属端子35は、導入片33に形成された導入線部34の図示しない電極パッドに接続されている。金属端子35で得られた電圧に関する情報は、導入線部34及び導電路32を通じて図示しないECUなどに取り込まれ、各単電池11の電圧が検知されるようになっている。
【0042】
金属端子35は、図10〜図12に示すように、その周縁35Aはフランジ状をなし、周縁35Aの内側には図12における右側方向(後方)に突出する後方突出部35Bが設けられている。後方突出部35Bの内側には図12における左側方向(前方)に突出した前方突出部35Cが設けられている。前方突出部35Cは周縁35Aよりも前方に突出している。前方突出部35Cの中央部分は円形にくりぬかれており、この円形のくりぬかれた部分から十字形にスリット35Dが形成されている。
【0043】
金属端子35の前方突出部35Cの内部には、端子収容部14Aの係合突部14Bが収容可能とされており、図3に示すように、金属端子35の後方突出部35Bと端子収容部14Aの係合突部14Bとが係合することで、端子収容部14A内において金属端子35が位置ずれしないようになっている。
【0044】
上述したように、導入片33は、単電池11間の隙間への導入深さを変更可能に設けられているので、導入片33の金属金具の前方突出部35Cと係合突部14Bの位置がずれることがある。そこで、本実施形態では、導入片33の単電池11間の隙間への導入深さが、導入片33によって相違する場合であっても、端子収容部14Aの係合突部14Bと金属端子35の前方突出部35Cとが係合可能となるように、金属金具の前方突出部35Cと係合突部14Bとの間に所定間隔の隙間dを形成して隙間dの形成されている範囲で前方突出部35Cが移動可能となっている。つまり、本実施形態において、金属金具は、導入片33の単電池11の隙間への導入深さを変更可能に端子収容部14Aの壁面14Cに対して係合されている。
【0045】
なお、本実施形態において、金属端子35は、前方突出部35Cに形成されたスリット35Dの隙間間隔を狭くすることで、前方突出部35Cが後方側に弾性変形するようになっている。したがって、端子収容部14Aの凹み深さ寸法Yが、自然状態にある導入片33に設けた金属端子35の前方突出部35Cの前端部から後方突出部35Bの後端部までの長さXよりも僅かに小さい場合や、単電池11が膨張して、端子収容部14Aの凹み深さ寸法Yが小さくなった場合に、金属端子35の前方突出部35Cが後方に弾性変形することで、端子収容部14Aの下側において第1電極端子14と第2電極端子15との間に隙間が生じることなく接続される。
【0046】
導入片33の左右の端部には、図8に示すように、一対の接続検知端子36が設けられている。一対の接続検知端子36はそれぞれ、電圧検知用の導入線部34とは異なる接続検知用の導入線部36Aの端末に接続されている。接続検知端子36は、図3に示すように、電池用配線モジュール20が単電池群10に装着された際に、端子収容部14A内において、金属端子35と共に、第2電極端子15の電極端子面15Aに接触し、接続検知端子36が短絡するように設定されている。すなわち、接続検知端子36が短絡することで、隣り合う単電池11間において金属端子35と第2電極端子15の電極端子面15Aとが導通可能に接続されたことを検知することができるようになっている。
【0047】
温度センサ37は、導入片33における金属端子35の上方で、かつ、一対の接続検知端子36間に設けられており、電圧検知用及び接続検知用の導入線部34,36Aとは異なる温度センサ37用の導入線部37Aに接続されている。なお、温度センサ37は、導入片33に対して所定個数毎など、必要に応じて任意の導入片33に設けることができる。
【0048】
温度センサ37は、図3に示すように、電池用配線モジュール20が単電池群10に装着された際に、端子収容部14A内において、両電極端子14,15とは非接触の状態に配されるようになっており、温度センサ37で得られた温度情報は、導入線部34及び導電路32を通じてECUに取り込まれ、ECUによって単電池群10の温度が検知されるようになっている。
【0049】
次に、本実施形態の電池モジュール1の組み立て手順の一例を簡単に説明する。
まず、FPC30に加工を施して複数の導入片33、電子部品、各種端子および電子部品などを備えるFPC30を作製し、FPC30の中央領域31(FPC本体部31)に、絶縁フィルム21を接合すると電池用配線モジュール20が得られる。
【0050】
電池用配線モジュール20の作製と同時または前後して、第1電極端子14が前側に配されるように各単電池11間の間隔を僅かに開けた状態で、複数の単電池11を前後方向に並べ(積層)して単電池群10を作製する。
【0051】
単電池群10の上面に、電池用配線モジュール20を上方から組み付ける。詳細には、隣り合う単電池11の隙間に各導入片33を配して、電池用配線モジュール20の位置合わせをする。次に、単電池11間の隙間を閉じるとともに、導入片33を端子収容部14Aに挿入し、金属端子35の後方突出部35B内に端子収容部14Aの係合突部14Bを係合させる。
【0052】
電池用配線モジュール20を単電池群10に組み付けると、単電池11の上面に形成した係合片17に電池用配線モジュール20が係合して位置決めされる。そして、電池用配線モジュール20を組み付けた単電池群10においては、図3に示すように、導入片33に設けられた金属端子35が、隣り合う単電池11の第2電極端子15の電極端子面15Aと端子収容部14Aの壁面14Cとによって挟持され、単電池11の第2電極端子15と金属端子35の前方突出部35Cとが接触すると共に、端子収容部14Aの壁面14Cと金属端子35の後方突出部35Bとが接触して、金属端子35と第2電極端子15及び第1電極端子14とが導通可能に接続される。これにより電池モジュール1が完成する。
【0053】
このとき、端子収容部14Aの内部に金属端子35を収容して金属端子35と第1電極端子14とを接続するので、端子収容部14Aよりも下側において、隣り合う単電池11の第1電極端子14と第2電極端子15との間には隙間が生じない。
【0054】
次に、本実施形態の作用および効果について説明する。
表裏に電極端子面14D,15Aを有する複数の単電池11を積層してなる単電池群10では、各単電池11の製造公差及び組み付け公差や単電池11の膨張収縮などにより、電極端子14,15間のピッチずれが発生することがあるが、本実施形態によれば、図13に示すように、導入片33の単電池11間の隙間への導入長さが変更可能であるので、これにより電極端子14,15間のピッチずれを吸収することができる。
その結果、本実施形態によれば、積層型の単電池群10を備える電池モジュール1において、単電池11の電圧検知を確実に行うことができる電池用配線モジュール20を提供することができる。
【0055】
また、本実施形態においては、絶縁フィルム21から導出された導入線部34を隣り合う単電池11の隙間に導入して、導入線部34に設けた金属端子35を電極端子14,15に接触させるだけで、各単電池11の電圧検知を行うことができるので、従来のように、ナットを電極端子締め付けて電圧検知端子と電極端子とを接続する必要がなく、金属端子35(電圧検知端子部35)の接続作業を容易に行うことができ、電圧検知のための構造を簡易なものとすることができる。
【0056】
また、本実施形態によれば、電極端子を接続するバスバーを備えた従来の電池配線モジュール20に比べて、電池用配線モジュール20の部品点数を低減させることができるので、電池用配線モジュール20の製造コストを低減できると共に、電池用配線モジュール20を軽量化することができる。
【0057】
特に、本実施形態によれば、絶縁支持部材21は、フィルム状をなし、集合導電線路を間に挟んで保持する構成であるから、電池用配線モジュール20を、より省スペースで軽量なものとすることができる。
【0058】
また、本実施形態によれば、集合導電線路は、FPC30により形成され、導入線部34はFPC30に形成した導電路32から一体的に延設されているから、集合導電線路31を複数の電線を束ねてなるワイヤーハーネスにより形成するよりも、集合導電線路31を省スペースで、軽量なものとすることができ、かつ、ハーネスを一括する作業を不要とすることができる。
【0059】
また、本実施形態によれば、絶縁フィルム21は単電池11の積層方向に沿って配され、対向する位置に形成された2つの端縁21Aを有し、導入線部34は、絶縁フィルム21の2つの端縁21Aから交互に導出されているから、導入線部34を1つの端縁21Aから導出する構成とするよりも、材料採りを向上させることができる。
【0060】
また、本実施形態によれば、金属端子35は、導入線部34の単電池11の隙間への導入深さを変更可能に端子収容部14Aの壁面14Cに対して係合されているから、金属端子35が確実に電極端子14,15に接続され、単電池11の電圧検知をさらに確実に行うことができる。
【0061】
さらに、本実施形態によれば、電池用配線モジュール20が、単電池11に設けた係合片17により係止されているから、金属端子35を対応する単電池11に対して容易に位置決めすることができる。
【0062】
加えて、本実施形態によれば、端子収容部14Aの内部に金属端子35を収容して金属端子35と第1電極端子14および第2電極端子15とを接続する構造となっているので、第1電極端子14と第2電極端子15との間で電圧検知端子部35を挟むことなく、隣り合う単電池11の第1電極端子14と第2電極端子15とを接続することができ、隣り合う単電池11の電気的な接続を良好にすることができる。
【0063】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、FPC30により形成された集合導電線路31を備える電池用配線モジュール20を示したが、集合導電線路を複数の電線を束ねてなるワイヤーハーネスにより形成してもよい。
(2)上記実施形態では、絶縁支持部材として絶縁フィルム21を示したが、絶縁支持部材は板状の絶縁材料からなるものなどであってもよい。
(3)上記実施形態では、絶縁フィルム21が単電池11の積層方向に沿って配され対向する位置に形成された2つの端縁21Aを有し、この2つの端縁21Aから導入線部34が交互に導出されているものを示したが、導入線部が絶縁フィルムの一方の端縁から導出されているものであってもよい。
(4)上記実施形態では電圧検知端子部35として、導入線部34の単電池11の隙間への導入深さを変更可能に電極端子面14Cに対して係合する金属端子35を示したが、これに限定されない。電圧検知端子部は電極端子面に対して係合しないものであってもよい。
(5)上記実施形態では、単電池11に設けた係合片17により係止される電池用配線モジュール20を示したが、本発明の電池用配線モジュールは係止部を有さない単電池からなる単電池群に適用してもよい。
(6)上記実施形態では、端子収容部14Aに収容されている電圧検知端子部35を示したが、電圧検知端子部は隣り合う単電池の電極端子面に挟持されていてもよい。このような構成とすると、電圧検知端子部を電極端子面に接触させるために、他の部材を用意する必要がないので、部品点数を少なくすることができる。
【符号の説明】
【0064】
1…電池モジュール
10…単電池群
11…単電池
14…第1電極端子(電極端子)
14B…係合突部
14C,14D…電極端子面
15…第2電極端子(電極端子)
15A…電極端子面
17…係合片(係止部)
20…電池用配線モジュール
21…絶縁フィルム(絶縁支持部材)
21A…(単電池の積層方向に沿って配される)絶縁フィルムの端縁
30…FPC
31…FPC本体部(集合導電線路)
32…導電路
33…導入片
34…導入線部
35…金属端子(電圧検知端子部)
d…金属端子の前方突出部と係合突部との隙間
P1,P2,P3…導入片(導入線部)の導入深さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表裏に正極および負極の電極端子面をそれぞれ有する複数の単電池を、隣り合う前記単電池の前記電極端子面同士を接触させるように積層することにより直列接続した単電池群に取り付けられる電池用配線モジュールであって、
前記単電池の積層方向に延びて配される複数の導電路を集合させてなる集合導電線路と、前記集合導電線路を保持する絶縁支持部材と、を備え、
前記導電路は、その一方の端末に、前記絶縁支持部材から導出され隣り合う前記単電池の隙間に導入される導入線部を有し、
前記導入線部は、前記電極端子面に接続されて前記単電池の電圧を検知する電圧検知端子部を有するとともに、隣り合う前記単電池の隙間への導入深さを変更可能に設けられていることを特徴とする電池用配線モジュール。
【請求項2】
前記集合導電線路は、フレキシブルプリント基板により形成され、前記導入線部は前記フレキシブルプリント基板に形成した前記導電路から一体的に延設されていることを特徴とする請求項1に記載の電池用配線モジュール。
【請求項3】
前記絶縁支持部材は、フィルム状をなし、前記集合導電線路を間に挟んで保持することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電池用配線モジュール。
【請求項4】
前記絶縁支持部材は、前記単電池の積層方向に沿って配され対向する位置に形成された2つの端縁を有し、
前記導入線部は、前記絶縁支持部材の前記2つの端縁から交互に導出されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の電池用配線モジュール。
【請求項5】
前記電圧検知端子部は、前記導入線部の前記単電池の隙間への導入深さを変更可能に前記電極端子面に対して係合されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の電池用配線モジュール。
【請求項6】
前記単電池に設けた係止部により係止されることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の電池用配線モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−80621(P2013−80621A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220005(P2011−220005)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】