説明

電池用配線モジュール

【課題】各単電池の電圧検知を容易に行うことができる電池用配線モジュールを提供する。
【解決手段】正極および負極の電極端子80を有する複数の単電池21を直列接続してなる単電池群20に設けられる電池用配線モジュール40であって、複数本の導電路42を集合させてなるフレキシブルプリント基板41と、導電路42の端部に設けられた電圧検知端子47を有してフレキシブルプリント基板41に設けられた突出片44と、フレキシブルプリント基板41を保持する樹脂プロテクタ60と、樹脂プロテクタ60に設けられ、電圧検知端子47を内部に収容して単電池群側に設けられた被嵌合部26と嵌合することで電圧検知端子47を単電池21の電極端子80に接続状態とするコネクタ嵌合部66とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池用配線モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電気自動車やハイブリッド車などの車両に搭載される電池モジュールとして、特許文献1に記載のものが知られている。このものは、上端部に正極および負極の電極端子を有する複数の単電池を横並びに配置した単電池群と、単電池群に取り付けられる電池配線モジュールとを有している。
【0003】
電池配線モジュールは、隣り合う単電池における正極の電極端子と負極の電極端子とを接続することで単電池を直列接続するバスバーと、ナットを電極端子に螺合させることでバスバーと共に共締めされる電圧検知端子と、バスバーおよび電圧検知端子を内部に収容する絶縁性の樹脂プロテクタとを備えて構成されている。電圧検知端子は、電圧検知線によって例えばECUに接続されており、ECUによって各単電池の電圧が検知されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−91003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の構成によると、ナットによって電極検知端子を電極端子に締め付けて接続しなければならないため、電圧検知端子と電極端子との接続作業が煩雑であるという問題があった。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、電圧検知端子と電極端子との接続作業を容易に行うことができる電池用配線モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための手段として本発明は、正極および負極の電極端子を有する複数の単電池を直列接続してなる単電池群に設けられる電池用配線モジュールであって、端部に電圧検知端子を備えた複数本の導電路を集合させてなる集合導電線路と、前記集合導電線路を保持する絶縁支持部材と、前記絶縁支持部材に設けられ、前記電圧検知端子を内部に収容して前記単電池群側に設けられた被嵌合部と嵌合することで前記電圧検知端子を前記単電池の前記電極端子に接続状態とするコネクタ嵌合部とを備えているところに特徴を有する。
このような構成の電池用配線モジュールによると、コネクタ嵌合部と被嵌合部とを嵌合させることで、電圧検知端子と電極端子とを接続状態にすることができるので、ナットを電極端子に締め付けることで電圧検知端子と電極端子とを接続状態にする従来の電池配線モジュールに比べて、電圧検知端子と電極端子との接続作業を容易に行うことができる。
本発明の実施の態様として、以下の構成が好ましい。
前記集合導電線路はフレキシブルプリント基板により形成されている構成としてもよい。
このような構成によると、電線を束ねたワイヤーハーネスによって形成された集合導電線路に比べて、電線を束ねる作業工程が不要となるとともに、電池用配線モジュールを軽量化することができる。
前記フレキシブルプリント基板には、前記単電池の電圧情報を処理するための電子部品が前記導電路に接続された状態で実装されている構成としてもよい。
集合電線路は、電圧検知端子とは異なる側の端部に、電圧信号を処理するための電子部品などが複数集積されたECUを構成する必要があったが、上記のような構成によると、フレキシブルプリント基板に電圧情報を処理するための電子部品が実装されているので、ECUを小型化することができる。これにより、従来なら電子部品に占有されていて使用が不可能だった領域を有効利用することができる。
前記絶縁支持部材は、前記集合導電線路を包囲している構成としてもよい。
集合導電線路に他の部材が接触することで、導電路が断線する虞があるが、このような構成によると、集合導電線路が絶縁支持部材に包囲されているので、集合導電線路に他の部材が接触することを防止することができる。
前記コネクタ嵌合部には、前記被嵌合部に設けられた被ロック部と係止することで、前記コネクタ嵌合部と前記被嵌合部とを嵌合状態に保持するロック部が設けられている構成としてもよい。
このような構成によると、ロック部と被ロック部とを係止させることで、コネクタ嵌合部と被嵌合部とを嵌合状態に保持することができるので、電圧検知端子と電極端子との接続状態を確実に保持することができる。
前記ロック部は、前記コネクタ嵌合部の前記被嵌合部への嵌合方向前側から後側に向かって片持ち状に延びる弾性変形可能なロック片として形成され、前記ロック部は前記絶縁支持部材が前記単電池群に装着される際に、前記被ロック部に押圧されて弾性変形し、前記単電池群に前記絶縁支持部材が正規の位置に装着された際に、弾性復帰することで、前記被ロック部と係止する構成としてもよい。
このような構成によると、絶縁支持部材を単電池群に装着するだけで、ロック片として形成されたロック部を被ロック部に容易に係止させることができる。
前記絶縁支持部材には前記コネクタ嵌合部が複数設けられると共に、各コネクタ嵌合部を含む領域毎に弾性部が一体に設けられて、同領域相互が前記各単電池の積層方向に沿って変位可能とされている構成としてもよい。
このような構成によると、各コネクタ嵌合部が弾性部によって単電池の積層方向に沿って変位することで、複数の単電池間における製造公差、及び組み付け公差を吸収することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、積層型の単電池群を使用した電池モジュールでありながら、各単電池の電圧検知を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】電池モジュールの斜視図
【図2】電池モジュールの一部拡大平面図
【図3】電池モジュールの一部拡大正面図
【図4】電池モジュールの一部拡大側面図
【図5】単電池の被嵌合部と電池用配線モジュールのコネクタ嵌合部とが嵌合した状態を示す要部拡大断面図
【図6】単電池の被嵌合部と電池用配線モジュールのコネクタ嵌合部とが嵌合する前の状態を示す一部拡大断面図
【図7】電池用配線モジュールの一部拡大斜視図
【図8】電池用配線モジュールの一部拡大平面図
【図9】電池用配線モジュールの正面図
【図10】電池用配線モジュールを下側から見た一部拡大斜視図
【図11】図8のX−X線断面図
【図12】フレキシブルプリント基板の正面図
【図13】フレキシブルプリント基板の一部拡大底面図
【図14】樹脂プロテクタにフレキシブルプリント基板を装着する前の状態を示す一部拡大斜視図
【図15】樹脂プロテクタの載置部にフレキシブルプリント基板を載置した状態を示す一部拡大斜視図
【図16】単電池群の一部拡大斜視図
【図17】単電池群の一部拡大平面図
【図18】単電池群の正面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施形態>
本発明の実施形態について図1乃至図18を参照して説明する。
【0011】
本実施形態に係る電池モジュール10は、例えば、電気自動車またはハイブリッド自動車等の車両を駆動するための電源として使用される。電池モジュール10は、図1に示すように、複数(本実施形態では38個)の単電池21が横並びに配置された単電池群20と、単電池群20に取り付けられる電池用配線モジュール40とを備えて構成されている。なお、以下の説明において、上下方向とは図3における上下方向を基準とし、左右方向とは図3における左右方向を基準とし、前後方向とは図2における左右方向を基準とする。
【0012】
単電池21は、図1及び図2に示すように、扁平な略直方体形状をなし、その内部には発電要素(図示省略)が収容されている。単電池21の上下左右の側面は、合成樹脂製の絶縁樹脂部22によって覆われている。単電池21の上面には、左右方向の両端部寄りの位置に、上方に突出する一対の電極端子80が設けられている。一対の電極端子80の一方は正極であり、他方は負極となっている。電極端子80の外周面にはねじ山が形成されている。前後方向に並ぶ複数の単電池21の間には、単電池21同士を所定の間隔で離間した状態に保持するセパレータ23が配されている。
【0013】
複数の単電池21は、隣り合う単電池21の電極端子80の極性が異なるように配されている。隣り合う単電池21の電極同士は、金属板材をプレス加工してなるバスバー81によって電気的に接続されている。詳細には、バスバー81は、電極端子80に形成されたねじ山に螺合されたナット82によって、電極端子80に固定されている。これにより、複数の単電池21は直列接続されている。バスバー81を構成する金属は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス等、必要に応じて任意の金属を適宜に選択できる。バスバー81の表面には、スズ、ニッケル、亜鉛等、必要に応じて任意の金属からなるメッキ層を形成することができる。
【0014】
単電池21の上面には、図16乃至図18に示すように、単電池21の左右方向中央部よりも左側に配された係止部25と、単電池21の左右方向中央部よりも右側に配された被嵌合部26とが設けられている。
【0015】
係止部25は、平面視U字状をなし、上方に立ち上がった形態をなしている。また、係止部25の上端部は、左側外方に突出して形成されている。
【0016】
被嵌合部26は、上方に開口したフード状をなし、被嵌合部26の底壁からは、図5及び図6に示すように、上方に真っ直ぐ延びて被嵌合部26の内部空間に突出する電池側端子27が設けられている。この電池側端子27は、角型のピン形状をなし、図示しないが単電池21の内部において電極端子80に電気的に接続されている。
被嵌合部26の右側壁には、同右側壁を左右方向に貫通する係止孔28が形成されている。
【0017】
電池用配線モジュール40は、図1及び図3に示すように、フレキシブルプリント基板41(本発明の「集合導電線路」の一例)と、このフレキシブルプリント基板41を全周に亘って包囲する樹脂プロテクタ60(本発明の「絶縁支持部材」の一例)とを備えて構成されている。
【0018】
フレキシブルプリント基板(以下、単に「FPC」ともいう)41は、図12乃至図14に示すように、例えばポリイミドフィルムや液晶状フィルム等からなる絶縁性のベースフィルムの片面または両面にプリント配線技術により複数の導電路42を形成し、その導電路42の表面を保護フィルム(例えば、ポリイミド製フィルム)で覆った構造とされている。これにより、電線を束ねたワイヤーハーネスによって形成された集合導電線路に比べて、電線を束ねる作業工程を不要にすることができるとともに、電池用配線モジュール40を軽量化することができるようになっている。
【0019】
FPC41は、図13および図14に示すように、単電池21の積層方向である前後方向に延びるFPC本体部43と、FPC本体部43の側縁から外方に突出する複数の突出片44とを備えて構成されている。
【0020】
FPC本体部43には、前後方向に延びる複数の導電路42が集合して形成されており、FPC本体部43の前後方向の長さ寸法は、単電池群20の前後方向の長さ寸法よりも長めに設定されている。また、FPC本体部43上には、例えば電圧検出ICや温度センサなどの電子部品45がリフロー半田付けなどにより実装されている。なお、電子部品45のうち、温度センサ45Aは、FPC本体部43に左右方向に延びて形成された導出片46の先端部に実装されている。
【0021】
導電路42の一方の端部(図13における図示後側の端部)は、突出片44上に延びて形成されており、導電路42の他方の端部は、電子部品45を介して例えば図示しないECUや図示しない電圧信号処理用ICなどに接続されるようになっている。
【0022】
各突出片44はFPC本体部43と一体に形成されており、FPC本体部43の左右方向における一方の端部(本実施形態では右側端部)に単電池21毎に設けられている。また、突出片44上に形成された導電路42は、突出片44の前後方向略中央部に配されており、導電路42の端末には、電圧検知端子47が接続されている。また、隣り合う電圧検知端子47は、電圧検出ICなどの電子部品45を介して接続されており、電圧検知端子47で検知された電圧に関する上方が導電路42及び電子部品45を通じて電圧信号処理ICなどに取り込まれるようになっている。
【0023】
電圧検知端子47は、図12及び図13に示すように、角筒状の接続筒部48と、接続筒部48の一端に形成された一対のリード部49とを備えて形成されている。
【0024】
一対のリード部49は、接続筒部48の一方の端部から突出片44側に向かいつつ、互いに離れる方向に延びた形態をなし、リード部49の先端部は、突出片44の導電路42にリフロー半田付けなどにより接続されている。
【0025】
接続筒部48の内部には、接続筒部48が延びる方向と交差する方向に弾性変形可能な弾性接触片48Aが設けられており、接続筒部48におけるリード部49が形成された側とは反対側の端部から単電池21の電池側端子27が接続筒部48の内部に挿入可能とされている。電池側端子27が接続筒部48の内部に挿入されると、図5に示すように、電池側端子27に弾性接触片48Aが弾性的に接触し、電池側端子27と弾性接触片48Aとが接続状態となる。また、電圧検知端子47が単電池21の電池側端子27と接続状態となることで、単電池21の電圧に関する情報が導電路42を通じて電子部品45内に取り込まれ、電圧に関する情報の一部が電子部品45内で処理された後、処理された情報が導電路42を通じて図示しないECUなどに取りこまれて、各単電池21の電圧が検知される。すなわち、電池側端子27と弾性接触片48Aとが弾性的に接触して、電圧検知端子47と電池側端子27とが接続状態となることで、各単電池21の電圧検知を確実に行うことができるようになっている。
また、電圧検知端子47で検知された電圧に関する情報は、電子部品45によって一部の情報が処理されて更に電圧信号処理ICで処理されてからECUに受け渡されるので、ECU内の電子部品数を低減させることができ、ECUを小型化することができる。これにより、従来は電子部品によって占有されていたECUの周辺領域を有効利用することができる。
【0026】
樹脂プロテクタ60は、絶縁性樹脂からなる連結ユニット61を前後方向に複数(本実施形態では4つ)並べて構成されている。また、隣り合う連結ユニット61は、FPC41が取り付けられることでFPC41を保持しつつ、FPC41によって連結されている。
【0027】
連結ユニット61は、図6及び図14に示すように、FPC41が載置される載置部62と、載置部62と一体に形成されたカバー63とを備えて構成されている。
【0028】
載置部62は、前後方向に複数(本実施形態では10個)に分割された分割載置部64からなり、隣り合う分割載置部64は、分割載置部64間の隙間間隔を調整するための可撓性ヒンジ65によって連結されている。
【0029】
可撓性ヒンジ65は、図4及び図10に示すように、隣り合う分割載置部64における互いに対向する両側縁間を前後方向に連結する前後方向に弾性変形可能な側面視略U字状に形成されている。また、可撓性ヒンジ65は、分割載置部64の下面から下向きに膨出した形態で、分割載置部64と一体に形成されている。そして、可撓性ヒンジ65が前後方向に弾性変形することで、分割載置部64が前後方向に変位し、分割載置部64間の前後方向の隙間間隔を、広くしたり狭くしたりできるようになっている。
【0030】
分割載置部64における左右方向略中央部よりも左側には、図14及び図15に示すように、FPC本体部43が載置されるようになっており、分割載置部64における右側端部には、FPC41の突出片44が載置されるようになっている。分割載置部64のうち、FPC本体部43の導出片46が配される分割載置部64には、分割載置部64を上下方向に貫通する貫通孔64Aが形成されている。
【0031】
分割載置部64における突出片44が載置される部分には、分割載置部64の下面から下方に突出するコネクタ嵌合部66が形成されている。コネクタ嵌合部66は、図10に示すように、左右方向に幅広なブロック状に形成されており、単電池21の被嵌合部26内に嵌合可能に形成されている。また、このコネクタ嵌合部66の内部には、コネクタ嵌合部66を上下方向に貫通する端子収容孔67が形成されている。
【0032】
端子収容孔67は、突出片44の電圧検知端子47を収容可能に形成されており、図5及び図6に示すように、載置部62にFPC41が載置された状態では、端子収容孔67に電圧検知端子47が上方から収容されている。電池用配線モジュール40が単電池群20の上面に取り付けられると、コネクタ嵌合部66は被嵌合部26内に嵌合され、コネクタ嵌合部66内に収容された電圧検知端子47の接続筒部48内に被嵌合部26の電池側端子27が挿入される。そして、接続筒部48内において弾性接触片48Aが電池側端子27に弾性的に接触し、電圧検知端子47と電池側端子27とが接続状態となる。すなわち、コネクタ嵌合部66と被嵌合部26とを嵌合させることで、電圧検知端子47と、電極端子80に接続された電池側端子27とを接続状態にすることができる。
【0033】
また、コネクタ嵌合部66の右側端部には、図6及び図9に示すように、コネクタ嵌合部66の嵌合方向前側(図6の下側)から後側(図6の上方)に向かって片持ち上に延びるロック片68が形成されている。このロック片68は、左右方向に弾性変形可能に形成されており、ロック片68の右側面には被嵌合部26の係止孔28に収容可能な係止突起68Aが形成されている。ロック片68は、被嵌合部26内にコネクタ嵌合部66が嵌合される過程において、係止突起68Aが被嵌合部26の開口縁部に押圧されて弾性変形し、コネクタ嵌合部66と被嵌合部26とが正規の嵌合状態に至ると、ロック片68の係止突起68Aが被嵌合部26の係止孔28に収容されることで、被嵌合部26の開口縁部との当接状態が解除されて弾性復帰する。そして、図5に示すように、係止突起68Aと係止孔28の開口縁部である被嵌合部26の上端部26Aとが係止することで、コネクタ嵌合部66と被嵌合部26とが嵌合状態に保持される。
【0034】
なお、複数の単電池21を積層した状態に組み付けると、各単電池21の製造公差及び組み付け公差により、各単電池21間にずれが発生することになるが、コネクタ嵌合部66が形成された領域である分割載置部64は可撓性ヒンジ65が前後方向に弾性変形することで、前後方向に変位可能とされているので、単電池21間における製造公差及び組み付け公差を吸収することができるようになっている。
【0035】
カバー63は、図7乃至図10に示すように、前後方向に縦長な略矩形状をなし、図2及び図14に示すように、載置部62の右側縁に形成された複数の可撓性のヒンジ69を介して載置部62と一体に形成されている。また、カバー63は、ヒンジ69を屈曲させることで、載置部62の上面全体を覆って閉止されるように形成されている。これにより、FPC41は、連結ユニット61(樹脂プロテクタ60)によって、全周に亘って包囲され、FPC41に他の部材が接触することを防止することができるようになっている。
【0036】
一方、カバー63の左側縁には、載置部62の左側下縁部に係止可能な弾性固定片70と、単電池21の係止部25に係止可能な弾性取付片71が形成されている。
【0037】
弾性固定片70は、図10及び図11に示すように、カバー63が閉止された状態において、カバー63の左側縁から下方に延びた形態をなし、前後方向に間隔を空けて複数(本実施形態では4つ)形成されている。また、弾性固定片70の先端部は内側(右側)に突出して形成されており、カバー63が閉止された状態において、載置部62の左側下縁部と係止して、カバー63を載置部62に閉止した状態に固定するようになっている。
【0038】
弾性取付片71は、図3及び図11に示すように、カバー63が閉止された状態において、弾性固定片70よりも下方に延びた形態をなし、前後方向に間隔を空けて複数(本実施形態では2つ)形成されている。また、弾性取付片71の先端部は、内側(右側)に突出して形成されており、単電池群20の上面に電池用配線モジュール40を組み付けた際に、単電池21における係止部25の先端部と係止して、連結ユニット61(樹脂プロテクタ60)を単電池群20に保持固定するようになっている。すなわち、単電池群20の上面に電池用配線モジュール40を組み付けると、弾性取付片71と係止部25とが係止することで電池用配線モジュール40の左側端部が単電池21に固定され、コネクタ嵌合部66のロック片68の係止突起68Aと被嵌合部26の係止孔28の開口縁とが係止することで、電池用配線モジュール40の右側端部が単電池21に固定される。これにより、単電池群20に対して電池用配線モジュール40を左右両側においてバランスよく固定することができる。
【0039】
カバー63における載置部62の上面を覆う側である内側の面には、図6及び図9に示すように、左右方向に横長で内側に向かって突出する温度センサ載置部72が形成されている。この温度センサ載置部72は、カバー63が閉止され、載置部62に載置されたFPC本体部43の導出片46を、貫通孔64Aを通して下方に押圧することで、温度センサ載置部72の突出端部72A(下端部)に温度センサ45Aを載置している。また、電池用配線モジュール40が単電池群に装着されると、図3に示すように、温度センサ載置部72に載置された温度センサ45Aは単電池21の上端面に配され、温度センサ45Aで得られた情報は導電路42を通じて図示しないECUなどに取り込まれ、単電池群20の温度が検知されるようになっている。
【0040】
本実施形態の電池モジュール10は、上記のような構造であって、続いて電池モジュール10の組み立て手順の一例を簡単に説明する。
【0041】
はじめに、電池用配線モジュール40の組み立て手順を説明する。
【0042】
まず、図14に示すように、カバー63が開いた状態の連結ユニット61を前後方向に並べ、FPC41の突出片44が載置部の右側(コネクタ嵌合部66が設けられている側)に配されるようにして、FPC41を連結ユニット61の上方に配置する。そして、突出片44に接続された電圧検知端子47をコネクタ嵌合部66の端子収容孔67に上方から挿入し、図15に示すように、載置部62の上面にFPC41を載置する。
【0043】
次に、連結ユニット61の載置部62に載置されたFPC本体部43の上面を覆うようカバー63を閉止して、カバー63の弾性固定片70を載置部62の左側下端部に係止させることで、カバー63を載置部62に固定する。このとき、FPC本体部43の導出片46は、カバー63の温度センサ載置部72によって上方から下方に押圧され、図11に示すように、温度センサ載置部72の突出端部72A(下端部)に温度センサ45Aが載置される。
【0044】
また、カバー63が載置部62に固定されると、連結ユニット61内に配されたFPC41は、図3及び図11に示すように、連結ユニット61(樹脂プロテクタ60)によって全周に亘って包囲され、各連結ユニット61がFPC41によって連結されることで、電池用配線モジュール40が完成する。ここで、FPC41は、連結ユニット61(樹脂プロテクタ60)によって全周に亘って包囲されているので、FPC41に他の部材が接触することを防止することができる。
【0045】
次に、電池用配線モジュール40を単電池群20に取り付ける手順を説明する。
【0046】
図16及び図17に示すように、各単電池21を横並びに配列し、隣り合う電極端子80同士をバスバー81で直列接続する。これにより単電池群20を作成する。この単電池群20に、完成した電池用配線モジュール40を上方から押さえつけるようにして組み付ける。
【0047】
詳細には、図6に示すように、単電池21の被嵌合部26内に電池用配線モジュール40のコネクタ嵌合部66が挿入されるように、単電池群20の上方に電池用配線モジュール40を配置し、電池用配線モジュール40全体を単電池群20に対して押さえつけることで、被嵌合部26内にコネクタ嵌合部66を嵌合させる。この嵌合過程において、コネクタ嵌合部66におけるロック片68の係止突起68Aが被嵌合部26における開口縁に押圧されてロック片68が弾性変形し、コネクタ嵌合部66と被嵌合部26とが正規の嵌合状態に至ると、ロック片68の係止突起68Aが被嵌合部26の係止孔28に収容され、係止突起68Aと被嵌合部26の開口縁部との当接状態が解除されることで、ロック片68が弾性復帰する。そして、係止突起68Aと係止孔28の開口縁部とが係止することで、コネクタ嵌合部66と被嵌合部26とが嵌合状態に保持される。この時、コネクタ嵌合部66の内部では、接続筒部48の内部に被嵌合部26の電池側端子27が挿入され、図5に示すように、電池側端子27に対して弾性接触片48Aが弾性的に接触し、電池側端子27と弾性接触片48Aとが接続状態となる。これにより、単電池21の電圧に関する情報が導電路42及び電子部品45を通じて図示しないECUなどに取り込まれ、各単電池21の電圧検知が確実に行われる。
【0048】
また、ロック片68の係止突起68Aと係止孔28の開口縁部とが係止すると同時に、カバー63の弾性取付片71が単電池21の係止部25と係止して、電池用配線モジュール40が単電池群20に固定される。これにより、電池用配線モジュール40が単電池群20に対して左右両側でバランスよく固定され、電池用モジュール10が完成する。
【0049】
以上のように、本実施形態によると、コネクタ嵌合部66と被嵌合部26とを嵌合させることで、電圧検知端子47と、電極端子80に接続された電池側端子27とを接続状態にすることができ、各単電池21の電圧検知を確実に行うことができる。これにより、ナット82を電極端子に締め付けることで電圧検知端子と電極端子とを接続状態にする従来の電池配線モジュールに比べて、電圧検知端子47と電池側端子27との接続作業を容易に行うことができる。
【0050】
また、ロック片68の係止突起68Aと係止孔28の開口縁部とを係止させることで、コネクタ嵌合部66と被嵌合部26とを嵌合状態に保持することができるので、電圧検知端子47と電池側端子27との接続状態を確実に保持することができる。さらに、本実施形態によると、単電池群20の上面に電池用配線モジュール40を配置して、電池用配線モジュール40を上方から押圧するだけで、ロック片68の係止突起68Aと係止孔28の開口縁部とを簡単に係止させることができる。
【0051】
さらに、各コネクタ嵌合部66を可撓性ヒンジ65によって単電池21の積層方向である前後方向に沿って変位させることができるので、複数の単電池21間における製造公差、及び組み付け公差を吸収することができる。
【0052】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0053】
(1)上記実施形態では、集合導電線路をフレキシブルプリント基板41によって構成したが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、電線を束ねたワイヤーハーネスによって構成してもよい。
(2)上記実施形態では、フレキシブルプリント基板41上に電子部品が実装された構成としたが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、フレキシブルプリント基板41上に電子部品が実装されず、電子部品はECUに設置されていてもよい。
(3)上記実施形態では、コネクタ嵌合部66にロック片68を形成した構成としたが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、ロック片を載置部62に形成してもよい。
【符号の説明】
【0054】
20:単電池群
21:単電池
26:被嵌合部
26A:被嵌合部の上端部(被ロック部)
40:電池用配線モジュール
41:フレキシブルプリント基板(集合導電線路)
42:導電路
45:電子部品
47:電圧検知端子
60:樹脂プロテクタ(絶縁支持部材)
65:可撓性ヒンジ
66:コネクタ嵌合部
68:ロック片(ロック部)
80:電極端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極および負極の電極端子を有する複数の単電池を直列接続してなる単電池群に設けられる電池用配線モジュールであって、
端部に電圧検知端子を備えた複数本の導電路を集合させてなる集合導電線路と、
前記集合導電線路を保持する絶縁支持部材と、
前記絶縁支持部材に設けられ、前記電圧検知端子を内部に収容して前記単電池群側に設けられた被嵌合部と嵌合することで前記電圧検知端子を前記単電池の前記電極端子に接続状態とするコネクタ嵌合部とを備えた電池用配線モジュール。
【請求項2】
前記集合導電線路はフレキシブルプリント基板により形成されていることを特徴とする請求項1記載の電池用配線モジュール。
【請求項3】
前記フレキシブルプリント基板には、前記単電池の電圧情報を処理するための電子部品が前記導電路に接続された状態で実装されていることを特徴とする請求項2記載の電池用配線モジュール。
【請求項4】
前記絶縁支持部材は、前記集合導電線路を包囲していることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の電池用配線モジュール。
【請求項5】
前記コネクタ嵌合部には、前記被嵌合部に設けられた被ロック部と係止することで、前記コネクタ嵌合部と前記被嵌合部とを嵌合状態に保持するロック部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の電池用配線モジュール。
【請求項6】
前記ロック部は、前記コネクタ嵌合部の前記被嵌合部への嵌合方向前側から後側に向かって片持ち状に延びる弾性変形可能なロック片として形成され、前記ロック部は前記絶縁支持部材が前記単電池群に装着される際に、前記被ロック部に押圧されて弾性変形し、前記単電池群に前記絶縁支持部材が正規の位置に装着された際に、弾性復帰することで、前記被ロック部と係止することを特徴とする請求項5記載の電池用配線モジュール。
【請求項7】
前記絶縁支持部材には前記コネクタ嵌合部が複数設けられると共に、各コネクタ嵌合部を含む領域毎に可撓ヒンジが一体に設けられて、同領域相互が前記各単電池の積層方向に沿って変位可能とされている請求項1ないし請求項6の何れか一項に記載の電池用配線モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−80693(P2013−80693A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−132743(P2012−132743)
【出願日】平成24年6月12日(2012.6.12)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】