説明

電池用配線モジュール

【課題】各単電池の電圧検知を容易に行うことができる電池用配線モジュールを提供する。
【解決手段】正極および負極の電極端子80を有する複数の単電池21を直列接続してなる単電池群20に設けられる電池用配線モジュール40であって、前後方向に延びる複数本の導電路42を集合させてなるフレキシブルプリント基板41と、導電路42と一体に形成された導入線部45を有してフレキシブルプリント基板41に設けられた導入片44と、フレキシブルプリント基板41を保持する樹脂プロテクタ60と、導入片44の導入線部45に設けられ単電池21に設けられた電池側端子30と共に、単電池21に設けられたばね部材27によって弾性的に挟持されることで、電池側端子30と接続状態となる電極パッド46を備えるところに特徴を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池用配線モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電気自動車やハイブリッド車などの車両に搭載される電池モジュールとして、特許文献1に記載のものが知られている。このものは、上部に正極および負極の電極端子を有する複数の単電池を横並びに配置した単電池群と、単電池群に取り付けられる電池配線モジュールとを有している。
電池配線モジュールは、隣り合う単電池における正極の電極端子と負極の電極端子とを接続することで単電池を直列接続するバスバーと、ナットを電極端子に螺合させることでバスバーと共に共締めされる電圧検知端子と、バスバーおよび電圧検知端子を内部に収容する絶縁性の樹脂プロテクタとを備えて構成されている。電圧検知端子は、電圧検知線によって例えばECUに接続されており、ECUによって各単電池の電圧が検知されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−91003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の構成によると、ナットによって電極検知端子を電極端子に締め付けて接続しなければならないため、電圧検知端子と電極端子との接続作業が煩雑であるという問題があった。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、電圧検知端子と電極端子との接続作業を容易に行うことができる電池用配線モジュールを提供することを目的とする
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段として本発明は、正極および負極の電極端子を有する複数の単電池を直列接続してなる単電池群に設けられる電池用配線モジュールであって、前記単電池の積層方向に延びて形成された複数本の導電路を集合させてなる集合導電線路と、前記導電路の一方の端末に設けられ、前記単電池の所定個数毎に配された導入線部と、前記集合導電線路を保持する絶縁支持部材と、前記導入線部に設けられ、前記電極端子と接続して前記単電池に設けられた電池側端子に沿って配されて、前記単電池に設けられた付勢手段によって前記電池側端子側に付勢されることで、前記電池側端子と接触状態となる電圧検知端子を備えているところに特徴を有する。
【0007】
このような構成の電池用配線モジュールによると、付勢手段によって電圧検知端子が付勢されることで、電圧検知端子と電池側端子とを接続状態にすることができる。
また、電圧検知端子を電池側端子に沿って配し、付勢手段によって電圧検知端子を付勢することで、電圧検知端子と電池側端子とを接続状態にすることができるので、ナットを電極端子に締め付けることで電圧検知端子と電極端子とを接続状態にする従来の電池配線モジュールに比べて、電圧検知端子と電極端子とを容易に接続状態にすることができる。
【0008】
本発明の実施の態様として、以下の構成が好ましい。
前記集合導電線路はフレキシブルプリント基板により形成され、前記導入線部は前記フレキシブルプリント基板の前記導電路から一体に延出されている構成としてもよい。
このような構成によると、電線を束ねたワイヤーハーネスによって形成された集合電線路に比べて、電線を束ねる作業工程が不要となるとともに、電池用配線モジュールを軽量化することができる。
【0009】
前記電圧検知端子は、前記導入線部の端部に金属箔を露出して形成されている構成としてもよい。
このような構成によると、導電線部上に別体の金属端子を接続したものに比べて、部品点数を低減させることができると共に、導電線部上に金属端子を実装する作業工数を減らすことができるので、電池用配線モジュールの製造コストを低減させることができる。
【0010】
前記絶縁支持部材は、前記集合導電線路を包囲している構成としてもよい。
集合導電線路に他の部材が接触することで、導電路が断線する虞があるが、このような構成によると、集合導電線路が絶縁支持部材に全周に亘って包囲されているので、集合導電線路に他の部材が接触することを防止することができる。
【0011】
前記付勢手段は、前記絶縁支持部材側に開口して前記単電池に設けられた収容部に収容され、前記絶縁支持部材側から挿入される前記電圧検知端子と前記電池側端子とを弾性的に挟持することで前記電圧検知端子を前記電池側端子に付勢するばね部材であって、前記絶縁支持部材は、前記集合導電線路を載置して、前記単電池群に組み付けられる載置部を備え、前記載置部は、同載置部を前記単電池群に組み付ける際に、前記単電池側とは反対側から前記ばね部材を操作する治具を挿入するための治具挿入孔を有している構成としてもよい。
このような構成によると、治具を治具挿入孔から挿入して、収容部に収容されたばね部材を操作することができるので、単電池群の構造を複雑にすることなく、電圧検知端子と電池側端子とをばね部材によって容易に挟持させることができる。
【0012】
前記絶縁支持部材は、前記集合導電線路における前記単電池側とは反対側の面を覆う第一覆い部と、前記第一覆い部に可撓性のヒンジを介して設けられ、前記治具挿入孔の前記単電池側とは反対側の面を覆う第二覆い部とを備えている構成としてもよい。
このような構成によると、第一覆い部によって集合導電線路を保護した状態で電池用配線モジュールを単電池群に装着し、治具挿入孔から治具を取り除いた後に、第二覆い部によって、治具挿入孔の周辺部を保護することができる。これにおり、電池用配線モジュールを単電池群に装着する前の段階から集合導電線路を保護することができ、最終的に第二覆い部によって治具挿入孔を覆うことで、集合導電線路全体を保護することができる。
【0013】
前記付勢手段が、前記電圧検知端子と前記電池側端子とを接続した状態に弾性的に挟持するばね部材である単電池と、前記電池用配線モジュールとを備えた電池モジュール。
このような構成の電池モジュールによると、電圧検知端子と電池側端子とを弾性的に挟持して接続することができるので、付勢手段が電圧検知端子のみを付勢するばね部材に比べて、電圧検知端子と電池側端子とを確実に接続することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、各単電池の電圧検知を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】電池モジュールの斜視図
【図2】電池モジュールの一部拡大平面図
【図3】電池モジュールの正面図
【図4】図2のIV−IV線一部拡大側面図
【図5】単電池群に電池用配線モジュールが装着された状態であって、電池側端子と電極パッドとが接続された状態を示す要部拡大断面図
【図6】単電池群に電池用配線モジュールが装着される前の状態であって、電池側端子と電極パッドとが接続される前の状態を示す要部拡大断面図
【図7】電池用配線モジュールの一部拡大斜視図
【図8】電池用配線モジュールの正面図
【図9】電池用配線モジュールの一部拡大側面図
【図10】電池用配線モジュールの第二覆い部が開放された状態を示す一部拡大斜視図
【図11】電池用配線モジュールの第二覆い部が開放された状態を示す一部拡大平面図
【図12】図11のXII−XII線断面図
【図13】樹脂プロテクタにフレキシブルプリント基板を装着する前の状態を示す斜視図
【図14】樹脂プロテクタにフレキシブルプリント基板が載置された状態を示す斜視図
【図15】フレキシブルプリント基板の一部拡大平面図
【図16】フレキシブルプリント基板の正面図
【図17】単電池群の一部拡大斜視図
【図18】単電池群の一部拡大平面図
【図19】図18のXIX−XIX線断面図
【図20】ばね部材の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態>
本発明の実施形態について図1乃至図20を参照して説明する。
本実施形態に係る電池モジュール10は、例えば、電気自動車またはハイブリッド自動車等の車両を駆動するための電源として使用される。電池モジュール10は、図1に示すように、複数(本実施形態では38個)の単電池21が横並びに配置された単電池群20と、単電池群20に取り付けられる電池用配線モジュール40とを備えて構成されている。なお、以下の説明において、上下方向とは図3における上下方向を基準とし、左右方向とは図3における左右方向を基準とし、前後方向とは図2における左右方向を基準とする。
【0017】
単電池21は、図1、図17及び図18に示すように、扁平な略直方体形状をなし、その内部には発電要素(図示省略)が収容されている。単電池21の上下左右の側面は、合成樹脂製の絶縁樹脂部22によって覆われている。単電池21の上面には、左右方向の両端部寄りの位置に、上方に突出する一対の電極端子80が設けられている。一対の電極端子80の一方は正極であり、他方は負極となっている。電極端子80の外周面にはねじ山が形成されている。前後方向に並ぶ複数の単電池21の間には、単電池21同士を所定の間隔で離間した状態に保持するセパレータ23が配されている。
【0018】
複数の単電池21は、隣り合う単電池21の電極端子80の極性が異なるように配されている。隣り合う単電池21の電極同士は、金属板材をプレス加工してなるバスバー81によって電気的に接続されている。詳細には、バスバー81は、電極端子80に形成されたねじ山に螺合されたナット82によって、電極端子80に固定されている。これにより、複数の単電池21は直列接続されている。バスバー81を構成する金属は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス等、必要に応じて任意の金属を適宜に選択できる。バスバー81の表面には、スズ、ニッケル、亜鉛等、必要に応じて任意の金属からなるメッキ層を形成することができる。
【0019】
各単電池21の上面には、図17及び図18に示すように、単電池21の左右方向中央部よりも左側に配されたモジュール受部25と、単電池21の左右方向中央部よりも右側に配された収容部26とが設けられている。
モジュール受部25は、ブロック状をなし、モジュール受部25の上部には、上方及び収容部26側に開口した受部側凹部25Aが形成されている。
【0020】
収容部26は、上方に開口したフード状をなし、収容部26の内部には、図5、図6及び図17に示すように、ばね部材27(本発明の「付勢手段」の一例)が収容されている。
【0021】
ばね部材27は、ステンレス鋼等のばね性に優れた金属板材をプレス加工して形成されている。また、ばね部材27は、図6及び図20に示すように、長細い扁平な金属板28の一端28Aに板厚方向に貫通する矩形状の貫通孔29を形成し、金属板28を屈曲させて、金属板28の他端28Bを貫通孔29に貫通させて形成されている。なお、ばね部材27は、金属板28の一端28Aを上方から押圧することで、貫通孔29の前縁29Aと金属板28の他端28Bとの間の隙間が大きくなるように構成されている。
【0022】
ばね部材27の金属板28の幅方向両端部には、外方に突出する突出片28Cがそれぞれ形成されている。一方、収容部26の内面における左右方向両側には、図19に示すように、ばね部材27の突出片28Cと係止可能なばね用係止部26Aがそれぞれ形成されており、ばね用係止部26Aと突出片28Cとが互いに係止することで、ばね部材27が収容部26内に保持されている。
【0023】
ばね部材27の貫通孔29には、図5及び図6に示すように、収容部26の底壁から上方に真っ直ぐ立ち上がる電池側端子30が挿通されており、電池側端子30は、金属板28の他端28Bの前面に沿うようにして、貫通孔29の前縁29Aと金属板28の他端28Bとの間に配されている。
電池側端子30は、扁平な板状をなし、図示しないが単電池21の電極端子80に接続されている。
【0024】
収容部26におけるモジュール受部25側(左側)の壁部には、上方及びモジュール受部25側に開口した収容部側凹部26Bが形成されている。この収容部側凹部26Bは、図18に示すように、モジュール受部25の受部側凹部25Aと対をなすように対向して配されている。
【0025】
収容部26の右側には、図4及び図17に示すように、ブロック状の電池側係止部31が形成されている。この電池側係止部31は、上方に向かって略矩形状に開口した形態をなしており、電池側係止部31における右側壁の上端部には内側に向かって突出した電池側係止爪31Aが形成されている。
【0026】
単電池群20の上面には、図1及び図3に示すように、前後方向に延びる電池用配線モジュール40が取り付けられている。
電池用配線モジュール40は、フレキシブルプリント基板41(本発明の「集合導電線路」の一例)と、このフレキシブルプリント基板41を全周に亘って包囲する樹脂プロテクタ60(本発明の「絶縁支持部材」の一例)とを備えて構成されている。
【0027】
フレキシブルプリント基板(以下、単に「FPC」ともいう)41は、図15に示すように、例えばポリイミドフィルムや液晶状フィルム等からなる絶縁性のベースフィルムの片面または両面にプリント配線技術により複数の導電路42を形成し、その導電路42の表面を保護フィルム(例えば、ポリイミド製フィルム)で覆った構造とされている。なお、図13及び図14では、導電路42の図示省略している。
【0028】
FPC41は、図7および図13に示すように、単電池21の積層方向である前後方向に延びるFPC本体部43と、FPC本体部43に一体に形成された複数の導入片44とを備えて構成されている。
【0029】
FPC本体部43には、図15に示すように、前後方向に延びる複数の導電路42が集合した形態に形成されており、FPC本体部43の前後方向の長さ寸法は、単電池群20の前後方向の長さ寸法よりも長めに設定されている。
また、FPC本体部43の左右方向略中央部には、FPC本体部43を上下方向に貫通する矩形状の挿通孔43Aが前後方向に間隔を空けて複数並んで形成されている。また、FPC本体部43における導電路42の後側の端末には後述する導入片44の導入線部45が形成されており、導電路42の前側の端末には、例えば図示しないECUなどが接続されるようになっている。
【0030】
各導入片44は、FPC本体部43の左右方向における一方の端部(本実施形態では右側端部)において、単電池21毎に設けられている。また、各導入片44は、FPC本体部43から離れる方向に突出して、その前端縁から下方に延びた短冊状に形成されている。
【0031】
各導入片44には、導入線部45が形成されており、この導入線部45は、FPC本体部43の導電路42における後側の端末から延出されて一体に形成されている。また、導入線部45は、例えば、FPC本体部43における導電路42の後端部から導入片44に向かって右方向に延びて、その側端部から導入片44における下方に延びた部分の左右方向略中央部に配されるように下側に延びて形成されている。
【0032】
導入片44の前面における導入線部45の下端部には、電極パッド(本発明の「電圧検知端子」の一例)46が設けられている。電極パッド46は、略矩形状をなし、導入片44の表面を覆う保護フィルムを取り除くことで、導入片44上に金属箔を露出させて形成されている。
【0033】
また、電極パッド46は、図5に示すように、単電池群20の上面に電池用配線モジュール40が組み付けられ、FPC41の導入片44が単電池21のばね部材27の貫通孔29に挿入されることで、単電池21の電池側端子30の前面に沿うように配されている。そして、電極パッド46は、導入片44がばね部材27の貫通孔29内において、金属板28が弾性復帰しようとする弾性力により、電池側端子30と共に、貫通孔29の前縁29Aと金属板28の他端28Bとによって前後方向両側から弾性的に挟持されている。これにより、電極パッド46は電池側端子30側に付勢されると共に、電池側端子30は電極パッド46側に付勢され、電極パッド46と電池側端子30とが導通可能に接続されている。なお、電極パッド46は、単電池21の電池側端子30に導通可能に接続されることで、単電池21の電圧に関する情報を、導入線部45及び導電路42を通じて図示しないECUなどに取り込み、各単電池21の電圧が検知されるようになっている。すなわち、電極パッド46と電池側端子30とがばね部材27によって弾性的に挟持されて、電極パッド46と電池側端子30とが導通可能に接続されることで、各単電池21の電圧検知を確実に行うことができるようになっている。
【0034】
樹脂プロテクタ60は、絶縁性樹脂からなる連結ユニット61を前後方向に複数(本実施形態では4つ)並べて構成されている。また、隣り合う連結ユニット61は、FPC41が取り付けられることでFPC41を保持しつつ、FPC41によって連結されている。
連結ユニット61は、図7及び図13に示すように、FPC41が載置される載置部62と、載置部62の上面を覆うカバー63とを備えて構成されている。
【0035】
載置部62は、前後方向に縦長な形態をなしており、載置部62には、複数(本実施形態では2つ)の係合孔64と複数(本実施形態では10個)の治具挿入孔65とが形成されている。
【0036】
係合孔64は、図13に示すように、略矩形状をなし、載置部62を上下方向に貫通して形成されている。また、係合孔64は、載置部62の左右方向略中央部において、FPC本体部43の挿通孔43Aと対応した位置に配されている。
【0037】
治具挿入孔65は、単電池群20に対して電池用配線モジュール40を組み付ける際に、連結ユニット61の上方からばね部材27を操作する治具を挿入するための孔とされている。治具挿入孔65は、図10及び図11に示すように、略矩形状をなし、係合孔64と同様に、載置部62を上下方向に貫通して形成されている。また、治具挿入孔65は、載置部62の左右方向における一方の端部(本実施形態では右側端部)において、FPC41の導入片44に対応して形成されている。また、治具挿入孔65には、図5及び図6に示すように、導入片44が上方から下方に向かって挿通されている。
【0038】
載置部62の下部には、図4、図8及び図9に示すように、左右方向両側に突出する一対の係合突部66が単電池21毎に形成されている。この係合突部66は、電池用配線モジュール40が単電池群20に装着される際に、各単電池21の収容部側凹部26Bと受部側凹部25Aとの間に収容され、単電池群20に対して電池用配線モジュール40が前後左右に位置ずれしないように位置決めしている。これにより、各単電池21に対してFPC41の導入片44を位置ずれさせることなく配することができるようになっている。
【0039】
カバー63は、図7、図10及び図14に示すように、載置部62の上面を覆う第一覆い部67と、治具挿入孔65における単電池21側とは反対側の上面を覆う第二覆い部68とを備えて構成されている。
【0040】
第一覆い部67は、前後方向に縦長な矩形平板状をなし、載置部62の左側縁に可撓性の第一ヒンジ69を介して一体に形成されている。第一覆い部67は、第一ヒンジ69を屈曲変形させることで、載置部62の上面を覆うように載置部62の上方に配することができるようになっている。
【0041】
第一覆い部67の側縁部における第一ヒンジ69とは反対側の位置には、載置部62の各係合孔64に係合される一対の弾性脚70が複数(本実施形態では2つ)形成されている。
一対の弾性脚70は、両弾性脚70を互いに近付ける方向に弾性変形可能であって、両弾性脚70がそれぞれ弾性変形することで、係合孔64に上方から挿通され、弾性脚70が弾性復帰することで両弾性脚70の先端部が係合孔64の下側周縁部に係合するように形成されている。これにより、載置部62の上面を第一覆い部67によって覆い、両弾性脚70の先端部と係合孔64の下側周縁部とを係合させることで、図12に示すように、第一覆い部67が開放できないように載置部62に固定されている。なお、両弾性脚70は、係合孔64に挿通される際に、FPC本体部43の挿通孔43Aにも挿通され、連結ユニット61内においてFPC本体部43が移動しないように位置決めしている。
【0042】
第二覆い部68は、第一覆い部67の側縁における第一ヒンジ69とは反対側の位置に可撓性の第二ヒンジ(本発明の「ヒンジ」の一例)71を介して一体に形成されている。
第二覆い部68は、図10及び図11に示すように、前後方向に細長い形状をなしており、第二ヒンジ71を屈曲変形させることで、第二覆い部68のみを開放した状態にすることができる。これにより、第一覆い部67が載置部62に開放不能に保持固定された後、第一覆い部67とは独立して載置部62の上面を第二覆い部68によって覆うことができるようになっている。すなわち、FPC本体部43の上面を第一覆い部67によって覆った樹脂プロテクタ60を単電池群20の上面に配置した後で、治具挿入孔65の上面を第二覆い部68によって覆うことができるようになっている。
【0043】
また、第二覆い部68の側縁における第二ヒンジ71とは反対側の位置には、左右方向に弾性変形可能な弾性係止片72が形成されている。弾性係止片72は、図7乃至図9に示すように、第二覆い部68が治具挿入孔65の上面を覆った状態において、第二覆い部68の側縁から下方に延びた形態をなし、単電池21の電池側係止部31内に挿入可能に形成されている。弾性係止片72の先端部には、右側外方に突出した係止爪72Aが形成されている。この係止爪72Aは、単電池21における電池側係止部31の電池側係止爪31Aと係止可能に形成されている。これにより、弾性係止片72の係止爪72Aが電池側係止部31内に挿入され、係止爪72Aと電池側係止爪31Aとが係止することで、図4に示すように、連結ユニット61(樹脂プロテクタ60)が単電池群20に保持固定されるようになっている。
【0044】
本実施形態の電池モジュール10は、上記のような構造であって、続いて電池モジュール10の組み立て手順の一例を簡単に説明する。
はじめに、電池用配線モジュール40の組み立て手順を説明する。
まず、図13に示すように、カバー63が開いた状態の連結ユニット61を前後方向に並べ、FPC本体部43の一端に導入片44が形成されたFPC41を用意する。そして、FPC41の導入片44を載置部62に形成された治具挿入孔65に挿通させて、図14に示すように、載置部62の上面にFPC41を載置する。
【0045】
次に、連結ユニット61の載置部62に載置されたFPC本体部43の上面を覆うように第一覆い部67を載置部62に配し、FPC本体部43の挿通孔43Aと第一覆い部67の係合孔64とに弾性脚70を挿通させて、図12に示すように、弾性脚70の先端部を係合孔64の下側周縁部に係合させることで、第一覆い部67を開放できないように載置部62に固定する。このようにして、連結ユニット61内に配されたFPC本体部43は、図10及び図11に示すように、連結ユニット61(樹脂プロテクタ60)によって全周に亘って包囲され、各連結ユニット61がFPC41によって連結されることで、電池用配線モジュール40が完成する。ここで、FPC本体部43は、挿通孔43Aに弾性脚70が挿通されることで連結ユニット61内において位置決めされ、連結ユニット61(樹脂プロテクタ60)によって、全周に亘って包囲されることで、FPC本体部43が他の部材と接触して破損しないように保護することができるようになっている。
【0046】
次に、電池用配線モジュール40を単電池群20に取り付ける手順を説明する。
図6、図17及び図18に示すように、各単電池21を横並びに配列し、隣り合う電極端子80同士をバスバー81で直列接続する。これにより単電池群20を作成する。この単電池群20に、完成した電池用配線モジュール40を上方から押さえつけるようにして組み付ける。
詳細には、単電池群20の上方に第二覆い部68が開放された状態の電池用配線モジュール40を用意し、各単電池21のばね部材27に対して電池用配線モジュール40の各導入片44が配されるように配置する。次に、樹脂プロテクタ60の上方から図示しない治具を治具挿入孔65に挿入し、ばね部材27の金属板28の一端28Aを上方から押圧して、貫通孔29の前縁29Aと電池側端子30との間の大きくなった隙間に導入片44を挿入する。そして、貫通孔29の前縁29Aと電池側端子30との間に導入片44が挿入できたところで、治具を引き抜く。これにより、導入片44と電池側端子30とは、貫通孔29の前縁29Aと金属板28の他端28Bとによって弾性的に挟持され、電極パッド46と電池側端子30とが導通可能に接続される。なお、図6は、第二覆い部68が治具挿入孔65の上面を覆った状態であり、治具を治具挿入孔65に挿入する際に、第二覆い部68は開放される。
【0047】
最後に、治具が引き抜かれた治具挿入孔65の上面を第二覆い部68で覆い、弾性係止片72を電池側係止部31内に挿入することで、係止爪72Aと電池側係止爪31Aとが係止される。これにより、図4に示すように、電池用配線モジュール40が単電池群20に保持固定され、電池モジュール10が完成する。
【0048】
ところで、複数の単電池21を積層した状態に組み付けると、各単電池21の製造公差及び組み付け公差により、各単電池21間にずれが発生することになるが、本実施形態によると、導入片44がフレキシブルプリント基板によって形成されているので、導入片44の折り曲げ位置を前後させることで、単電池21間における製造公差、及び組み付け公差を吸収することができるようになっている。
【0049】
以上のように、本実施形態によると、ばね部材27によって導入片44と電池側端子30とが弾性的に挟持され、電極パッド46と電池側端子30とが互いに接するように付勢されることで、電極パッド46と電池側端子30とを導通可能に接続することができる。これにより、各単電池21の電圧検知を確実に行うことができる。
また、導入片44を電池側端子30に沿って配し、ばね部材27によって導入片44と電池側端子30とを弾性的に挟持することで、電極パッド46と電池側端子30とを接続状態にすることができるので、従来のように、ナット82を電極端子に締め付けて電圧検知端子と電極端子とを接続状態にする必要がなく、電極パッド46と電池側端子30との接続作業を容易に実施することができる。
【0050】
また、本実施形態によると、導入片44上に金属箔を露出して形成した電極パッド46を電池側端子30に接続する構造となっているので、導電線部上に別体の金属端子を接続したものに比べて、電池用配線モジュール40の部品点数を低減させることができると共に、導電線部上に金属端子を実装する作業工数を減らすことができるので、電池用配線モジュール40の製造コストを低減させることができる。
【0051】
また、本実施形態によると、樹脂プロテクタ60に治具を挿入するための治具挿入孔65が形成されているので、樹脂プロテクタ60の上方から治具を挿入してばね部材27を操作することができるので、単電池21の構造を複雑にすることなく、ばね部材27によって電極パッド46と電池側端子30とを容易に挟持させることができる。
また、本実施形態によると、フレキシブルプリント基板41を用いることで、電線を束ねたワイヤーハーネスによって形成された集合導電線路に比べて、電線を束ねる作業工程が不要となるとともに、電池用配線モジュール40を軽量化することができるようになっている。
【0052】
さらには、本実施形態によると、FPC本体部43と治具挿入孔65とを、第一覆い部67及び第二覆い部68によって個別に覆うことができるので、FPC本体部43を保護した状態で電池用配線モジュール40を単電池群20の上面に配置し、治具挿入孔65から治具を取り除いた後に、治具挿入孔65の上面を第二覆い部によって覆うことができるので、最終的にFPC41全体を全周に亘って保護することができるようになっている。
【0053】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0054】
(1)上記実施形態では、集合導電線路をフレキシブルプリント基板41によって構成したが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、電線を束ねたワイヤーハーネスによって構成してもよい。
(2)上記実施形態では、導入片44と電池側端子30とがばね部材27によって弾性的に挟持されることで、電極パッド46と電池側端子30とが接続される構成としたが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、板ばねなどによって、導入片44を電池側端子30に対して付勢する構成にしてもよい。
(3)上記実施形態では、導入片44の保護フィルムを取り除き、金属箔を露出させることで電圧検知端子を構成したが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、導入片44の保護フィルムを取り除き、露出した金属箔に別体の金属端子を接続することで電圧検知端子を構成してもよい。
(4)上記実施形態では、FPC本体部43と治具挿入孔65とを第一覆い部67及び第二覆い部68によって個別に覆う構成としたが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、FPC本体部43と治具挿入孔65とを一つの覆い部によって一括して覆う構成にしてもよい。
【符号の説明】
【0055】
20:単電池群
21:単電池
26:収容部
30:電池側端子
40:電池用配線モジュール
41:フレキシブルプリント基板(集合導電線路)
42:導電路
45:導入線部
46:電極パッド(電圧検知端子)
60:樹脂プロテクタ(絶縁支持部材)
65:治具挿入孔
67:第一覆い部
68:第二覆い部
71:第二ヒンジ(ヒンジ)
72:ばね部材(付勢手段)
80:電極端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極および負極の電極端子を有する複数の単電池を直列接続してなる単電池群に設けられる電池用配線モジュールであって、
前記単電池の積層方向に延びて形成された複数本の導電路を集合させてなる集合導電線路と、
前記導電路の一方の端末に設けられ、前記単電池の所定個数毎に配された導入線部と、
前記集合導電線路を保持する絶縁支持部材と、
前記導入線部に設けられ、前記電極端子と接続して前記単電池に設けられた電池側端子に沿って配されて、前記単電池に設けられた付勢手段によって前記電池側端子側に付勢されることで、前記電池側端子と接触状態となる電圧検知端子を備えていることを特徴とする電池用配線モジュール。
【請求項2】
前記集合導電線路はフレキシブルプリント基板により形成され、前記導入線部は前記フレキシブルプリント基板の前記導電路から一体に延出されていることを特徴とする請求項1記載の電池用配線モジュール。
【請求項3】
前記電圧検知端子は、前記導入線部の端部に金属箔を露出して形成されていることを特徴とする請求項2記載の電池用配線モジュール。
【請求項4】
前記絶縁支持部材は、前記集合導電線路を包囲していることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の電池用配線モジュール。
【請求項5】
前記付勢手段は、前記絶縁支持部材側に開口して前記単電池に設けられた収容部に収容され、前記絶縁支持部材側から挿入される前記電圧検知端子と前記電池側端子とを弾性的に挟持することで前記電圧検知端子を前記電池側端子に付勢するばね部材であって、
前記絶縁支持部材は、前記集合導電線路を載置して、前記単電池群に組み付けられる載置部を備え、
前記載置部は、同載置部を前記単電池群に組み付ける際に、前記単電池側とは反対側から前記ばね部材を操作する治具を挿入するための治具挿入孔を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の電池用配線モジュール。
【請求項6】
前記絶縁支持部材は、前記集合導電線路における前記単電池側とは反対側の面を覆う第一覆い部と、前記第一覆い部に可撓性のヒンジを介して設けられ、前記治具挿入孔の前記単電池側とは反対側の面を覆う第二覆い部とを備えていることを特徴とする請求項5記載の電池用配線モジュール。
【請求項7】
前記付勢手段が、前記電圧検知端子と前記電池側端子とを接続した状態に弾性的に挟持するばね部材である単電池と、請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載された電池用配線モジュールとを備えた電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−93307(P2013−93307A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−132744(P2012−132744)
【出願日】平成24年6月12日(2012.6.12)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】