説明

電池用配線モジュール

【課題】電圧検知線の浮き上がりを防止する。
【解決手段】端末において単電池群の状態を検出する複数本の検知電線23と、検知電線23群を収容する電線収容溝33を備えたプロテクタ30と、を備え、プロテクタ30は、電線収容溝33内の検知電線23を単電池群側へと導出させる電線導出溝34と、電線収容溝33及び電線導出溝34を覆う蓋部40と、蓋部40の裏面側に突設され蓋部40の閉蓋時に電線収容溝33又は電線導出溝34内の空間を狭めて検知電線23の浮き上がりを規制する電線規制部43とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池用配線モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリット車用の電池モジュールは、内部に発電要素を有する扁平な形状の本体部と、正極及び負極の電極とを備える複数の単電池を重ねて配置されている。そして、隣り合う単電池の電極間が接続部材で接続されることにより複数の単電池が直列や並列に接続されている。
【0003】
下記特許文献1には、接続部材と、単電池の電圧を測定するための電圧検知線と、接続部材と電圧検知線とを収容する基部とからなる電池用配線モジュールが記載されている。この電池用配線モジュールを単電池群に装着し、各接続部材に形成されている端子挿通孔に各単電池の電極端子を挿通させた上で、ナットを螺合させて締め付けることで、各単電池間が電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−008957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示の基部の一側壁には、収容された電圧検知線の上部を開閉可能に覆う蓋部が取り付けられており、電圧検知線を保護することができる。しかしながら、このような構成によると、基部内に配索された電圧検知線が浮き上がった状態で、蓋部を閉めた場合に当該電圧検知線がカバーとの間に挟み込まれる虞があった。このため、基部内に電圧検知線を配索する時点で浮き上がりを防止する電線抑えを配索路に設けることも考えられるが、配索時の作業性が低下するため、更なる改良の余地があった。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、電圧検知線の浮き上がりを防止することが可能な蓋部を備える電池用配線モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、正極及び負極の電極部を有する単電池を複数個並べてなる単電池群に取り付けられる電池用配線モジュールであって、端末において前記単電池群の状態を検出する複数本の検知電線と、前記検知電線群を収容する電線収容溝を備えたプロテクタと、を備え、前記プロテクタは、前記電線収容溝内の前記検知電線を前記単電池群側へと導出させる電線導出溝と、前記電線収容溝及び前記電線導出溝を覆う蓋部と、前記蓋部の裏面側に突設され前記蓋部の閉蓋時に前記電線収容溝又は前記電線導出溝内の空間を狭めて前記検知電線の浮き上がりを規制する電線規制部と、を備えることに特徴を有する。
【0008】
このような構成によれば、蓋部を閉じることで、電線収容溝又は電線導出溝に収容された複数本の検知電線が浮き上がるのを阻止し、検知電線自体の動きを規制することができる。これにより、例えば振動を受けやすい自動車等の車両に搭載された場合であっても、その振動により検知電線が動き回り、互いに摩耗する等して検知電線が傷付いたり、検知電線に連なる接続部分に応力が集中して接続信頼性が低下する等の不具合を未然に防止することができる。
【0009】
また、電線規制部を蓋部の裏面側に突設することで、電線収容溝又は電線導出溝に検知電線を収容する際の作業性を向上させることができる。即ち、電線収容溝又は電線導出溝自体に検知電線の浮き上がりを防止する電線抑えを設ける場合(例えば、電線収容溝の上部にスリットを設けてそのスリットを挿通させて検知電線を収容する場合等)においては、電線収容溝又は電線導出溝内に検知電線を押し込む必要がある等、作業性が悪かった。これに対して、本発明は、蓋部を閉める作業と同時に、検知電線を電線収容溝の底部側に抑え込むことができるから、収容する作業をより容易なものとすることができる。
【0010】
前記電線規制部は、前記蓋部の閉蓋時に前記検知電線上に配置される凸状の電線規制突部を備えていてもよい。このような構成によれば、蓋部を閉めつつ(蓋部が完全に閉じる前に)、凸状の電線規制突部により検知電線を電線収容溝又は電線導出溝に押し込んでいくことができるから、検知電線が蓋部と電線収容溝又は電線導出溝との間に挟み込まれることなく、検知電線が収容時に傷付くのを防止することができる。
【0011】
前記プロテクタには、前記検知電線の端末に接続された検知端子が収容されており、前記検知端子は、本体部と、前記検知電線の端末に接続される接続部と、を備え、前記電線規制部は、前記蓋部の閉蓋時に前記電線導出溝に収容された前記接続部上に配置される接続部規制部を備えていてもよい。通常、検知電線と検知端子とは、材料が異なり、即ち物性が異なるため、外部より振動等が加えられた場合には、その接続部分(接続部)に応力が集中しやすい。よって、接続部規制部により電線導出溝内に収容された接続部の動きを規制することで、接続信頼性低下等の不具合を抑制することができる。
【0012】
また、接続部及び接続部に接続される検知電線の端末は、電線収容溝に沿って収容される検知電線を屈曲させることで電線導出溝に収容されているから、当該接続部及び検知電線の端末は、検知電線の大部分が収容された電線収容溝側へと戻ろうとする反力が生じる。この反力により、検知電線の端末及び接続部は特に浮き上がりやすいから、これらの浮き上がりを接続部規制部によって重点的に規制することにより、検知電線全体の浮き上がりを効果的に抑制することができる。
【0013】
前記電線収容溝は、前記検知電線の配索方向に沿って立ち上がる一対の溝壁部を有し、前記蓋部は、前記溝壁部に一体ヒンジを介して一体に設けられると共に、前記接続部規制部は、前記蓋部の一体ヒンジとは反対側の端縁から延設された突出片からなってもよい。このような構成によれば、蓋部は電線収容溝に対して一体形成されているから、部品点数の削減、製造工程の短縮化による製造効率の向上が見込める。また、接続部規制部を突出片とすることで、接続部規制部を形成するのに必要な材料量を凸部のような肉だまりとするよりも、減らすことができる。更には、平板状の突出片により電線導出溝の広域にわたって、収容された接続部及び検知電線の端末を上部から(その空間を狭めることにより)抑えつけることも可能であるから、軽量化又は材料費の低減を図りつつ、浮き上がりを防止するのに効果的な形状とすることが可能となる。
【0014】
前記プロテクタは、前記検知電線の配索方向に収容ユニットを複数個連結して構成されていてもよい。このような構成によれば、電池用配線モジュールを取り付ける単電池群を構成する単電池の数に応じて収容ユニットの連結数を変えればよいから、汎用性に優れる。また、プロテクタとして一括して成形するのではなく、収容ユニットに分割して成形すれば成形金型を小型化することができるから、型費を安くすることができ、製造コストを低減することができる。更には、収容ユニット毎に電線規制部を設ければ、自ずと所定間隔毎に検知電線の浮き上がりを規制し、プロテクタ全域にわたって検知電線の浮き上がりを規制することができる。
【0015】
前記プロテクタは、隣り合う電極部間を接続する接続部材を収容する接続部材収容部を備え、前記電線導出溝は、前記電線収容溝と前記接続部材収容部とに連通していてもよい。このような構成によれば、電線収容溝は、単電池の並び方向であって、接続部材収容部に並列して設けられることとなり、当該電線収容溝と接続部材収容部とを連通する電線導出溝の延出方向は、電線収容溝及び接続部材収容部に対して交差することとなる。よって、これに収容される検知電線は、少なくとも電線導出溝において電線収容溝に配索された検知電線を屈曲させて導出させることとなるから、電線収容溝方向へと戻ろうとする反力が生じ、検知電線が浮き上がりやすくなる。このような構成に、本発明の電線規制部を適用することは特に有用である。
【0016】
前記接続部材収容部は収容された前記接続部材周りを囲う囲壁枠部に一体ヒンジを介して一体に設けられ前記接続部材上を覆う接続部材側蓋部を備え、前記蓋部及び前記接続部材側蓋部の閉蓋時には、前記蓋部の上に前記接続部材側蓋部の一部が重畳して配されていてもよい。このような構成によれば、検知電線の浮き上がりを規制する電線規制部が設けられた蓋部を接続部材側蓋部によってその一部を覆うことができるから、蓋部自体が浮き上がるのを抑制することができる。また、接続部材収容部に対して、接続部材側蓋部を一体形成することで、蓋部と同様、部品点数の削減、製造工程の短縮化による製造効率の向上が見込める。
【0017】
また、前記接続部材収容部には、前記接続部材に接続される前記検知端子が収容されており、前記検知端子は、本体部と、前記検知電線に接続される接続部と、を備え、前記電線規制部は、前記接続部上に配置される接続部規制部を備え、前記蓋部の前記接続部規制部上には前記接続部材側蓋部が重畳して配されていてもよい。上記したように、接続部及びそれに接続される検知電線の端末は浮き上がり易く、この接続部の浮き上がりを接続部規制部により規制することは、検知電線全体の浮き上がりを防止するためにも重要である。よって、浮き上がり易い接続部上に配置される接続部規制部上に、更に接続部材側蓋部が重畳して配されることで、接続部規制部が形成された蓋部自体が浮き上がりにくくなり、より強力に接続部の浮き上がりを阻止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電圧検知線の浮き上がりを防止することが可能な蓋部を備える電池用配線モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る電池用配線モジュールが取り付けられた電池モジュールの平面図
【図2】第1蓋部及び第2蓋部が開いた状態を示す電池モジュールの平面図
【図3】収容ユニットの平面図
【図4】図1のA−A断面図
【図5】図3のB−B断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
<実施形態>
本発明の一実施形態を図1ないし図5によって説明する。
本実施形態の電池用配線モジュール20は、図1に示すように、単電池11が複数個並べられた単電池群に取り付けられて電池モジュール10を構成するものであって、この電池モジュール10は、例えば、電気自動車やハイブリット自動車等の車両の駆動源として使用される。以下、図1の上側を前側、下側を後側、左右方向を接続方向、紙面手前側を上側、紙面奥側を下側として説明する。
【0021】
(電池モジュール)
電池モジュール10は、図1に示すように、例えば横並びに配列された複数個の単電池11(単電池群に相当する)と、複数個の単電池11に取り付けられる電池用配線モジュール20とを備えて構成されている。
【0022】
(単電池)
単電池11は、内部に図示しない発電要素が収容された直方体状の本体部の所定の面(上面)の前後両端には、一対の電極端子12,13が突設されている。電極端子12,13の一方は正極端子であって、他方は負極端子である。電極端子12,13の周面にはネジ山が形成されている。各単電池11は、隣り合う単電池11の前後方向の向きが互いに逆向きとなるように横並びに配置されることで、隣り合う電極端子12,13の極性が異なる(正極と負極が横並び方向に交互となる)構成とされている。これら複数個の単電池11は、横並び状態となった単電池群を構成するように図示しない保持板によって固定されている。
【0023】
(電池用配線モジュール)
電池用配線モジュールは、単電池群の前後両端(図1および図2における上下両端)において横並びとなっている二列の電極端子12,13群に沿うように二組が取り付けられているが、同図では、二組のうち前側のもののみを図示している。
【0024】
この電池用配線モジュール20は、図2に示すように、合成樹脂製のプロテクタ30内に左右に隣り合う電極端子12,13間を接続する複数のバスバー21(接続部材に相当する)と、各バスバー21に重ねられた単電池11の電圧を検知するための複数の電圧検知端子25(検知端子に相当する)を収容してなる。
【0025】
(バスバー)
バスバー21は、銅、銅合金、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウム等の金属からなり、図2及び図3に示すように、隣り合う単電池11の電極端子12,13間の寸法に応じた長さの板状をなし、電極端子12,13を挿通可能な通し孔22が一対形成されている。この通し孔22の形状は、接続方向を長手方向とする長円形状をなしていて、各単電池11の寸法公差や組付公差に起因する電極端子12,13間の寸法誤差を吸収できるようになっている。
【0026】
(電圧検知端子)
バスバー21上に重ね合わされる電圧検知端子25は、方形状の平板部26(本体部に相当する)と、平板部26から突出して設けられた圧着部27(接続部に相当する)を備え、圧着部27には各単電池11の電圧を検知する検知電線23が圧着されている。平板部26の中心部には、バスバー21のどちらか一方の通し孔22に連通し、これに対応する一方の電極端子12(13)を挿通可能な挿通孔28が貫通形成されている。
【0027】
電圧検知端子25に接続された検知電線23は、後述するプロテクタ30の電線収容溝33に集められて、図1の右方となる位置に設けられた監視ECU(図示せず)に接続される。監視ECUは、マイクロコンピュータ、素子等が搭載されたものであって、単電池11の電圧・電流・温度等を検出して、各単電池11の監視制御等を行うための機能を備えた周知の構成をなしている。
【0028】
(プロテクタ)
プロテクタ30は、図1及び図2に示すように、左右方向に連結された複数(本実施形態では5つ)の収容ユニット31からなる。収容ユニット31の並び方向は検知電線23の配索方向に一致し、本実施形態では、更に単電池11の並び方向に一致する。
【0029】
(収容ユニット)
収容ユニット31は、合成樹脂製であって、図3に示すように、バスバー21及びそれに重ね合わされる電圧検知端子25を収容するバスバー収容部32(接続部材収容部に相当する)と、バスバー収容部32に平行して設けられ、左右方向が開放された電線収容溝33と、バスバー収容部32と電線収容溝33とに連通する電線導出溝34とが設けられている。
【0030】
(バスバー収容部)
バスバー収容部32は、バスバー32を収容すべく左右方向(接続方向)が長い箱形をなしており、収容されたバスバー32周りの三方(図3の左方以外)を囲う囲壁枠部32Aと、図3の左方からバスバー32を横入れ可能な挿入用開放端32Bと、収容されたバスバー32が載置される底板32Cとを備えている。囲壁枠部32Aのうち左右方向に沿う壁面からは、横入れされたバスバー32の上下方向の移動を規制するバスバー押さえ32Dが内側に向かって複数突設されている。なお、図示はしないが、バスバー32に重ね合わせた状態で収容される電圧検知端子25は、バスバー収容部32の上方から挿入され、その平板部26に突設された凸形状が囲壁枠部32Aの壁面に形成された凹部に嵌め込まれることで抜け止めが図られる。
【0031】
(電線導出溝)
電線導出溝34は、前後方向に延びる凹状をなし、バスバー収容部32における囲壁枠部32Aのうち、左右方向に沿う壁面の後側壁面32Eを貫通してバスバー収容部32に連通するとともに、電線収容溝33の後述する溝壁部33Aのうち、前側溝壁部33Bを同じく貫通して当該電線収容溝33に連通した態様をなしている。この電線導出溝34は、電圧検知端子25の圧着部27及びそれに圧着された検知電線23をバスバー収容部32から電線収容溝33へと導出する。
【0032】
(電線収容溝)
電線収容溝33は、左右方向に延びる一対の溝壁部33Aによって断面凹状に構成され、収容ユニット31同士を連結することで、左右方向に連通する1本の溝を構成する。この電線収容溝33は、各収容ユニット31の電線導出溝34から導出された各検知電線23を略直角に屈曲させることで、当該電線収容溝33の延設方向に沿って複数の検知電線23を収容し、前述した監視ECU側となる右方へと導出させる。
【0033】
(第1蓋部)
さて、電線収容溝33には、図3ないし図5に示すように、その溝壁部33Aの後側溝壁部33Cの側面から外側に向かって突出する後側ヒンジ35を介して第1蓋部40(蓋部に相当する)が一体に設けられている。第1蓋部40は、後側ヒンジ35を軸中心として回動可能とされており、閉蓋時に電線収容溝33全体をその上方から覆うことが可能な略長方形状の本体部41を有する。本体部41の裏面(閉蓋時に下側となる面)からは、図3に示すように、一対の第1ロック片42が突設されている。そして、バスバー収容部32と電線収容溝33との間には、閉蓋時に第1ロック片42に対応する第1ロック受け部36が設けられている。この第1ロック片42は、前後方向に撓み変形可能とされ、当該第1ロック片42を第1ロック受け部36に弾性変形しつつ挿入させ、その爪部が弾性復帰することで、第1ロック片42と第1ロック受け部36とが係合される。こうして、第1蓋部40は閉じた状態に保持される。
【0034】
(電線規制部)
本体部41にあって、一対の第1ロック片42に挟まれた位置には、電線規制部43が設けられている。この電線規制部43は、閉蓋時に電線導出溝36内に導出された検知電線23上に配置される電線規制突部44と、圧着部27上に配置される接続部規制部45とから構成される。電線規制突部44は、本体部41の裏面から突出する凸状をなしており、接続方向の幅寸法は、電線導出溝34の溝幅よりもやや小さく設定され、電線導出溝内に進入可能な構成とされている。この電線規制突部44は、図4に示すように、閉蓋時に電線導出溝34内の圧着部27から後方に延びる検知電線23の直上に位置し、その上下方向の突出高さは、閉蓋時の電線導出溝34の底面から当該電線規制突部44の突出端までの空間距離aが検知電線23を導出可能となるように、検知電線23の径寸法に応じて設定されている。
【0035】
接続部規制部45は、図4に示すように、本体部41のうち後側ヒンジ35に連結された側とは反対側の端縁から下方に向かって突出し前方に向かって屈曲したのち延設された突出片から構成されている。接続部規制部45のうち、閉蓋時に圧着部27の直上に略平行をなして配される抑え片部45Aは、電線導出溝34の上部を覆うように幅方向両端部が下側に垂れ下がった形状をなしている。この抑え片部45Aの上下方向の位置は、閉蓋時の電線導出溝34の底面から抑え片部45Aの幅方向略中央部の下面(裏面)までの空間距離bが電圧検知端子25の圧着部27を導出可能となるように、圧着部27の高さ寸法に応じて設定されている。
【0036】
(第2蓋部)
一方、バスバー収容部32には、図3ないし図5に示すように、囲壁枠部32Aの前側壁面32Fの側面から外側に向かって突出する前側ヒンジ37を介して第2蓋部50(接続部材側蓋部に相当する)が一体に設けられている。第2蓋部50は、前側ヒンジ37を軸中心として回動可能とされており、閉蓋時にバスバー収容部32全体を覆うことが可能な略長方形状の本体部51を有している。本体部51の裏面(閉蓋時に下側となる面)からは、図3に示すように、一対の第2ロック片52が突設されている。
【0037】
そしてバスバー収容部32と電線収容部33との間であって、第1ロック受け部36の前方には、閉蓋時に第2ロック片52に対応する第2ロック受け部38が設けられている。第2ロック片52は、第1ロック片42と同様、片持ち状の係合片であって、第2ロック受け部38に係合させることで、第2蓋部50を閉じた状態に保持することができる。なお、第2蓋部50には、閉蓋時に、接続部規制部45の直上に重畳配置される重畳部53が設けられており、第1蓋部40の接続部規制部45上に第2蓋部50の重畳部53が重なった状態で閉じることが可能な観音開き式の蓋部40,50とされている。これら蓋部40,50を閉じることで、収容ユニット31に収容されたバスバー21、電圧検知端子25、検知電線23のすべての上方を覆うことができる。
【0038】
続いて、収容ユニット31同士を連結するための構成について説明する。第1ロック受け部36及び第2ロック受け部38の左方(即ち、バスバー収容部32と電線収容溝33との中間部位の左端部)には、接続方向に突出する本体連結用係合爪39Aが設けられている。同右方(即ち、バスバー収容部32と電線収容溝33との中間部位の右端部)には、相手側となる収容ユニット31の本体連結用係合爪39Aを係合可能な本体連結用被係合凹部39Bが設けられている。
【0039】
さて、図3の第2蓋部50の上部左端からは、本体連結用係合爪39Aと同様の形状をなす蓋部連結用係合爪54Aが突設されている。同右端部には、相手側となる収容ユニット31の蓋部連結用係合爪54Aを係合可能な蓋部連結用被係合孔54Bが設けられている。本体連結用係合爪39A及び蓋部連結用係合爪54Aは、それぞれ一対の弾性片からなり、互いに近づく方向に撓み変形可能な構成とされている。一方、本体連結用被係合凹部39Bは、本体連結用係合爪39Aを撓み変形させつつ挿入させ、弾性復帰することで当該係合爪39Aを係り受けることが可能な凹状をなしている。そして、蓋部連結用被係合孔54Bは、接続方向に貫通するリング状をなしている。この蓋部連結用被係合孔54Bに蓋部連結用係合爪54Aを撓み変形させつつ挿通させ、弾性復帰することで挿入側と反対側の孔縁に当該係合爪54Aが引っ掛かり、引き抜き不能に保持することができる。
【0040】
続いて、電池用配線モジュール20の組付方法の一例について説明する。
まず、バスバー21を挿通用開放端32Bからバスバー収容部32内へと横入れする。そして、電圧検知端子25をバスバー収容部32の上方から収容されたバスバー21上へと嵌め込むと共に、電線導出溝34から電圧検知端子25に圧着された検知電線23を電線収容溝33へと導出する。これと前後して収容ユニット31同士を連結する。図2に示すように、第1蓋部40及び第2蓋部50を開いた状態で、隣り合う本体連結用係合爪39Aを本体連結用被係合凹部39Bに、同様に隣り合う蓋部連結用係合爪54Aを蓋部連結用被係合凹部54Bに係合させる。これを繰り返すことで、装着する単電池11の数に応じた収容ユニット31を連結し、電池用配線モジュール20の組付けが完了する。
【0041】
次に、電池用配線モジュール20の単電池群への組付方法について説明する。
各バスバー21の通し孔22及びそれに連通する電圧検知端子25の挿通孔28に対応する単電池11の電極端子12,13を挿通する。通し孔22、又は通し孔及び挿通孔28を挿通した電極端子12,13に図示しないナットを螺合させて締め付ける。これにより、バスバー21を通じて同じバスバー収容部32内に突出する電極端子12,13、電圧検知端子25が電気的に接続される。
【0042】
電池用配線モジュール20の単電池群への組付けが完了したのち、まず、第1蓋部40を閉じる。なお、第1蓋部40は隣り合う第1蓋部40同士が連結されていないから、収容ユニット31毎に独立して開閉動作を行うことが可能である。第1蓋部40を閉じていくと、電線導出溝34に収容された検知電線23が浮き上がっている場合には、先ず電線規制突部44が検知電線23に接触して検知電線23を電線導出溝34内へと押し込んでいく。また、圧着部27が浮き上がっている場合には、接続部規制部45の抑え片部45Aがその浮き上がりを規制しつつ、第1ロック片42が第1ロック受け部36に係合することで、第1蓋部40を閉じる作業が完了する。この際、検知電線23の根本である圧着部27及びそれに連なる検知電線23の端末部を電線規制部43で電線導出溝34内へと抑え込みつつ、第1蓋部40を閉じるから、検知電線23が第1蓋部40と電線収容溝33及び電線導出溝34との間に挟まる可能性を低減できる。
【0043】
また、閉蓋時に、電線導出溝34の底面から当該電線規制突部44の突出端までの空間距離aと、電線導出溝34の底面から抑え片部45Aの幅方向略中央部の下面(裏面)までの空間距離bとが確保されているから、電線導出溝34に収容された圧着部27及び検知電線23に電線規制部43が接触、押圧する虞がなく、当該圧着部27及び検知電線23に余計な外力が加わることによる不具合は未然に防止される。
【0044】
続いて、第2蓋部50を閉じる。第2蓋部50は隣り合う第2蓋部50同士が連結されているから、複数の第2蓋部50の開閉動作を一括して行うことができる。第2ロック片52を第2ロック受け部38に係合させることで、第2蓋部50を閉じる作業が完了する。この際、第2蓋部50の少なくとも重畳部53は、第1蓋部40の抑え片部45A上に重ねて配されることとなり、第1ロック片42及び第1ロック受け部36の係合により閉じられた第1蓋部40を更に強固に閉じた状態に保持することが可能となる。以上のようにして、電池モジュール10の組付けが完了する。
【0045】
以上説明したように、本実施形態によれば、第1蓋部40を閉じることで、電線導出溝34に収容された複数本の検知電線23が浮き上がるのを阻止し、検知電線23自体の動きを規制することができる。これにより、例えば振動を受けやすい自動車等の車両に搭載される電池モジュール10に適用した場合であっても、その振動により検知電線23が動き回り、互いに摩耗する等して検知電線23が傷付いたり、検知電線23に連なる圧着部27に応力が集中して接続信頼性が低下する等の不具合を未然に防止することができる。
【0046】
また、電線規制部43を第1蓋部40の本体部41裏面側に突設することで、電線導出溝34に検知電線23を収容する際の作業性を向上させることができる。即ち、電線導出溝自体に検知電線の浮き上がりを防止する電線抑えを設ける場合(例えば、電線収容溝の上部にスリットを設けてそのスリットを挿通させて検知電線を収容する場合等)においては、電線導出溝内に検知電線を押し込む必要がある等、作業性が悪かった。これに対して、本実施形態は、第1蓋部40を閉める作業と同時に、検知電線23を電線導出溝34の底部側に抑え込むことができるから、収容する作業をより容易なものとすることができる。
【0047】
また、電線規制部43は、第1蓋部40の閉蓋時に検知電線23上に配置される凸状の電線規制突部44を備えているから、第1蓋部40を閉めつつ、電線規制突部44により検知電線23を電線導出溝34に押し込んでいくことができるから、検知電線23が第1蓋部40と電線導出溝34との間に挟み込まれることなく、検知電線23が収容時に傷付くのを防止することができる。
【0048】
また、接続部規制部45により圧着部27の浮き上がりを規制することで、接続信頼性の低下等の不具合を効果的に抑制することができる。即ち、検知電線23と電圧検知端子25とは、それぞれを構成する材質が異なり、即ち物性が異なるため、外部より振動等が加えられた場合には、その圧着部27に応力が集中しやすい。よって、接続部規制部45により電線導出溝34内に収容された圧着部27の動きを規制することで、接続信頼性低下等の不具合を抑制することができる。
【0049】
また、圧着部27及び圧着部27に圧着される検知電線23の端末は、電線収容溝33に沿って収容される検知電線23を基準とすれば、それら検知電線23を屈曲させることで電線導出溝34に収容されている。よって、当該圧着部27及び検知電線23の端末は、検知電線23の大部分が収容された電線収容溝33側へと戻ろうとする反力が生じる。この反力により、検知電線23の端末及び圧着部27は特に浮き上がりやすいから、これらの浮き上がりを接続部規制部45によって重点的に規制することにより、検知電線23全体の浮き上がりを効果的に抑制することができる。
【0050】
また、第1蓋部40は電線収容溝33に対して一体形成されているから、部品点数の削減、製造工程の短縮化による製造効率の向上が見込める。また、接続部規制部45を第1蓋部40の本体部41の端縁から延設された突出片とすることで、電線導出溝34に合わせて第1蓋部40全体を前方向に延設させる必要がなく、製造コストを抑えることができる。また、接続部規制部45を抑え片部45Aのような突出片とすることで、接続部規制部45を形成するのに必要な材料量を凸部のような肉だまりとするよりも、減らすことができる。更には、平板状の抑え片部45Aにより電線導出溝34の広域にわたって、収容された圧着部27及び検知電線23の端末を上部から(その空間を狭めることにより)抑えつけることも可能であるから、軽量化又は材料費の低減を図りつつ、浮き上がりを防止するのに効果的な形状とすることが可能となる。
【0051】
また、プロテクタ30は、検知電線23の配索方向に収容ユニット31を複数個連結して構成されており、電池用配線モジュール20を取り付ける単電池群を構成する単電池11の数に応じて収容ユニット31の連結数を変えればよいから、汎用性に優れる。また、収容ユニット31を形成する成形金型を小型化することができるから、型費を安くすることができ、製造コストを低減することができる。更には、収容ユニット31毎に電線規制部43を設ければ、自ずと所定間隔毎に検知電線23の浮き上がりを規制し、プロテクタ30全域にわたって検知電線23の浮き上がりを規制することができる。
【0052】
また、電線収容溝33は、単電池11の並び方向であって、バスバー収容部32に並列して設けられることとなり、当該電線収容溝33とバスバー収容部32とを連通する電線導出溝34の延出方向は、電線収容溝33及びバスバー収容部32に対して交差することとなる。よって、これに収容される検知電線23は、少なくとも電線導出溝34において電線収容溝33に配索された検知電線23を屈曲させて導出させることとなるから、電線収容溝33方向へと戻ろうとする反力が生じ、検知電線23が浮き上がりやすくなる。このような構成に、電線規制部43を適用することは特に有用である。
【0053】
また、浮き上がり易い圧着部27上に配置される接続部規制部45上に、更に第2蓋部50の重畳部53が重畳して配されることで、接続部規制部45が形成された第1蓋部40自体が浮き上がりにくくなり、より強力に圧着部27の浮き上がりを阻止することができる。また、バスバー収容部32に対して、第2蓋部50を一体形成することで、第1蓋部40と同様、部品点数の削減、製造工程の短縮化による製造効率の向上が見込める。
【0054】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0055】
(1)上記した実施形態では、隣り合う電極端子12,13を接続するバスバー21を収容可能な電池用配線モジュール20を例示したが、これに限られず、検知電線のみを収容するものであってもよく、その他電池周りに配索される各種用途の電線を収容する電池用配線モジュールに適用可能である。また、検知電線は、必ずしも電圧検知線である必要はなく、電流検知線等各電池の状態を検出し、ECU等に検出信号を送るための電線であればよい。
【0056】
(2)上記した実施形態では、圧着部27の浮き上がりを規制する接続部規制部45とそれに連なる検知電線23の浮き上がりを規制する電線規制突部44との両方が設けられていたが、どちらか一方が設けられたものも本発明に含むものとする。
【0057】
(3)上記した実施形態では、電線規制部43は閉蓋時に電線導出溝34に進入する位置に設けられていたが、これに限られず、例えば閉蓋時に電線収容溝33に進入する位置に設けられていてもよい。
【0058】
(4)上記した実施形態では、主に電線収容溝33を覆う第1蓋部40と、バスバー収容部32を覆う第2蓋部50とが設けられていたが、これに限られず、少なくとも第1蓋部40が設けられていればよい。また、各蓋部は、一体ヒンジにより連結されていたが、これに限られず、別体のヒンジにより連結される構成であってもよい。
【0059】
(5)上記した実施形態では、単電池11の電極端子12,13がその周面にネジ山が形成された棒状の軸部を有する構成とされていたが、これに限られず、各電極端子がナット形で、別部材のボルトを用いて締結する構成であってもよい。
【0060】
(6)上記した実施形態では、複数の単電池11を直列に接続する場合について説明したが、これに限られず、複数の単電池を並列に接続する場合について適用してもよい。
【0061】
(7)電池モジュール10を構成する単電池11の数については、上記実施形態の数に限られない。また、単電池11の数に応じて電池用配線モジュール20の形状も任意に設定することができる。
【0062】
(8)上記した実施形態では、接続部材としてバスバー21を例示したが、これに限られず、電気的に接続可能な部材であればよく、例えば電線や、フレキシブルプリント基板(FPC)等を用いてもよい。
【符号の説明】
【0063】
10…電池モジュール
11…単電池
12,13…電極端子(電極部)
20…電池用配線モジュール
21…バスバー(接続部材)
23…検知電線
25…電圧検知端子(検知端子)
26…平板部(本体部)
27…圧着部(接続部)
30…プロテクタ
31…収容ユニット
32…バスバー収容部(接続部材収容部)
32A…囲壁枠部
33…電線収容溝
33A…溝壁部
34…電線導出溝
35…後側ヒンジ(一体ヒンジ)
37…前側ヒンジ(一体ヒンジ)
40…第1蓋部(蓋部)
43…電線規制部
44…電線規制突部
45…接続部規制部
45A…抑え片部
50…第2蓋部(接続部材側蓋部)
53…重畳部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極及び負極の電極部を有する単電池を複数個並べてなる単電池群に取り付けられる電池用配線モジュールであって、
端末において前記単電池群の状態を検出する複数本の検知電線と、
前記検知電線群を収容する電線収容溝を備えたプロテクタと、を備え、
前記プロテクタは、前記電線収容溝内の前記検知電線を前記単電池群側へと導出させる電線導出溝と、前記電線収容溝及び前記電線導出溝を覆う蓋部と、前記蓋部の裏面側に突設され前記蓋部の閉蓋時に前記電線収容溝又は前記電線導出溝内の空間を狭めて前記検知電線の浮き上がりを規制する電線規制部と、を備えることを特徴とする電池用配線モジュール。
【請求項2】
前記電線規制部は、前記蓋部の閉蓋時に前記検知電線上に配置される凸状の電線規制突部を備えることを特徴とする請求項1に記載の電池用配線モジュール。
【請求項3】
前記プロテクタには、前記検知電線の端末に接続された検知端子が収容されており、
前記検知端子は、本体部と、前記検知電線の端末に接続される接続部と、を備え、
前記電線規制部は、前記蓋部の閉蓋時に前記電線導出溝に収容された前記接続部上に配置される接続部規制部を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電池用配線モジュール。
【請求項4】
前記電線収容溝は、前記検知電線の配索方向に沿って立ち上がる一対の溝壁部を有し、
前記蓋部は、前記溝壁部に一体ヒンジを介して一体に設けられると共に、
前記接続部規制部は、前記蓋部の一体ヒンジとは反対側の端縁から延設された突出片からなることを特徴とする請求項3に記載の電池用配線モジュール。
【請求項5】
前記プロテクタは、前記検知電線の配索方向に収容ユニットを複数個連結して構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の電池用配線モジュール。
【請求項6】
前記プロテクタは、隣り合う前記電極部間を接続する接続部材を収容する接続部材収容部を備え、
前記電線導出溝は、前記電線収容溝と前記接続部材収容部とに連通することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の電池用配線モジュール。
【請求項7】
前記接続部材収容部は収容された前記接続部材周りを囲う囲壁枠部に一体ヒンジを介して一体に設けられ前記接続部材上を覆う接続部材側蓋部を備え、
前記蓋部及び前記接続部材側蓋部の閉蓋時には、前記蓋部の上に前記接続部材側蓋部の一部が重畳して配されることを特徴とする請求項6に記載の電池用配線モジュール。
【請求項8】
前記接続部材収容部には、前記接続部材に接続される前記検知端子が収容されており、
前記検知端子は、本体部と、前記検知電線に接続される接続部と、を備え、
前記電線規制部は、前記接続部上に配置される接続部規制部を備え、
前記蓋部の前記接続部規制部上には前記接続部材側蓋部が重畳して配されることを特徴とする請求項7に記載の電池用配線モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−97896(P2013−97896A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237226(P2011−237226)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】