説明

電池箱の取付構造

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電気機器筐体に段状に凹設した電池収納部に電池箱を取り付ける電池箱の取付構造に関する。
【0002】
【従来の技術】この種の電池箱の取付構造としては、実公昭58−11016号公報に開示されたものがある。ここに開示されたものは、電気機器筐体に凹設され後端のみが開口した電池箱収納凹部に電池箱を収納する構造であって、電池箱の側壁には突起が形成され、この突起と係合する係止部を先端に設けた操作部材が電池箱収納凹部の側壁内に摺動自在に支持され、この操作部材はばねにより先端の係止部が電池箱収納凹部内に突出するように付勢されている。電池箱収納凹部内に収納された電池箱は、電池箱の突起が操作部材の係止部に係合することにより、開口からの抜けを規制されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述した従来の電池箱の取付構造では、電池箱収納凹部の側壁内に操作部材を摺動自在に支持するスペースとばねを収納するスペースとを設けなければならないため、電気機器筐体は幅方向の寸法が大きくなり、小型化に支障をきたしていた。また、上述した電池収納凹部は後端側のみに電池を収納する開口を有し、上下方向および左右方向は電気機器筐体に覆われた構造であるため、電気機器筐体は幅方向だけでなく高さ方向の寸法も大きくなるといった問題があった。そこで、後端側のみならず左右方向および上方向が開口した電池収納凹部を電気機器筐体に段状に凹設し、電気機器筐体の上下方向および左右方向の寸法を小さくする構造の電池箱の取付構造も提案されている。この構造のものでは、電池収納凹部に電池箱の左右方向の動きと上方向の動きを規制する部材を必要としていた。
【0004】したがって、本発明は上記した従来の問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、左右方向および上下方向の小型化を図った電池箱の取付構造を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するために、本発明に係る電池箱の取付構造は、電気機器筐体に後端が開口した段状の電池収納部を凹設し、この電池収納部に電池箱を嵌合係着させて取り付ける電池箱の取付構造であって、前記電池箱の両側部に係着部を有する段状のガイド凹部を形成するとともに底面に係合凹部を有する凸部を設け、前記電池収納部の両側部に、前記電池箱の係着部が係着される係着部を有し前記電池箱のガイド凹部が係合して電池箱を電池収納部の開口側から前端側に摺動案内するガイド壁を立設するとともに、電池収納部の開口側の底面に、後端が開口し前記電池箱の凸部が嵌合する凹部を設け、この凹部に、電池収納部の開口側に沿って配設され、かつ前記電池収納部内に進退自在となるように電池収納部の裏面側で揺動自在に支持され、この凹部に進出することにより前記係合凹部に係合する係合片を設け、前記電池収納部のガイド壁に、前記電池箱の係着部が当接することにより電池箱の凸部の前端が前記係合片に当接するのを規制する規制部を設けたものである。
【0006】
【作用】本発明によれば、電池箱を電池収納部に収納すると、電池収納部のガイド壁に電池箱のガイド凹部が係合して電池箱は電池収納部の開口前端から後端に摺動案内され、両係着部が互いに係着して電池箱の上下方向の動きが規制されるとともに、電池箱の係合凹部に係合片が係合して電池箱の前後方向の動きが規制される。また、電池箱を電池収納部に収納する際に、電池箱の凸部の前端が係合片に当接する位置にあるときは、電池箱の係着部がガイド壁の規制部に当接し、凸部の前端が係合片に当接することがない。
【0007】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図に基づいて説明する。図1は本発明に係る電池箱の取付構造を採用した電気機器の背面側から視た全体を示す斜視図、図2は同じく電気機器の底面図、図3は同じく電気機器の一部を破断した背面図、図4は図3におけるIV-IV 線断面図、図5は図3におけるV-V 線断面図である。これらの図において、全体を符号1で示す電気機器の筐体は、ともに合成樹脂で形成されたアッパーケース2とロアーケース3とからなる。4は電池が内蔵された偏平な直方体状に形成された合成樹脂製の電池箱である。
【0008】ロアーケース3の底部には図1に示すように略右半分が段状を呈する電池収納部5が凹設され、この電池収納部5は両側部にガイド壁6が立設され、後端部に開口7が設けられている。この開口7側には、後端部8aが開口し底部に開口7に沿って左右方向に延在するスリット状の窓8bが穿設された平面視矩形状の凹部8が凹設されている。前記ガイド壁6には、互いに対向する二対の断面L字状に形成された係着部9,9および係着部10,10が突設されているとともに、これら係着部10よりも開口7側に規制部11が互いに対向して突設されている。
【0009】図3において、13は前記凹部8の裏面に突設されたばね取付部、14は電池収納部5の裏面側の底部5bに対向して立設された軸受片、15は底部5bに突設されたばね止め部、16は底部5bに対向して立設されたガイド部である。17は断面コ字状に形成された操作部材であって、一体に形成したリブ17aがガイド部16に挟持され、A−B方向に摺動自在となっており、一体に突設した突起17bと前記ばね止め部15との間に介装された圧縮コイルばね18によりB方向に摺動習性が付与されている。操作部材17の前部には操作部17cが、また一側部には弾性を有する押圧部17dが、それぞれ一体的に突設されている。
【0010】20は操作部材17とほぼ同じ高さ位置で隣接して配設された係合片であって、中央部の両端面に突設したダボ20aが前記軸受片14に支持され、この係合片20は図4中矢印C−D方向、すなわち電池収納部5の開口7に沿って(図3参照)揺動自在となるように構成されており、一端に突設した被押圧部20bが前記操作部材17の押圧部17dに係合している。係合片20の他端には、前記凹部8の窓8bに臨む係合部20cが下方に突設しており、この係合部20cの裏面側にはばね受部20dが水平方向に突設している。この係合片20は全体が水平方向に延在するように軸受部14に支持されている。
【0011】21は前記ばね取付部13に取り付けられた板ばねであって、ばね受部20dを上方から押圧して前記係合片20を矢印D方向、すなわち係合部20cが窓8bから凹部8内に突出する方向に回動するように付勢している。これら操作部材17と係合片20とは、電池収納部5の開口7に沿って配設されている。アッパーケース2の開口7側端面には、図2に示すように前記操作部材17の操作部17cが臨む長方形の窓22が穿設されている。アッパーケース2の上面部の内面には、図4R>4に示すように前記操作部材17の上端に当接して操作部材17の上方への抜けを規制する当接片23が、また、前記軸受片14の上端に当接して軸受片14から係合片20のダボ20aが抜けるのを規制する規制片24がそれぞれ突設されている。
【0012】電池箱4の底部の後端側には、前記電池収納部5の凹部8に嵌合する偏平な直方体状の凸部25が突設され、凸部25には前記係合片20の係合部20cが係合する溝25aが凹設されている。電池箱4の両側部には、前記ガイド壁6に係合して電池箱4を電池収納部5の前端開口7側から後端側に摺動案内する段状に形成されたガイド凹部4aが設けられている。このガイド凹部4aがガイド壁6に係合することにより、電池箱4の底面とロアーケース3の底面とが同一面を形成する。このガイド凹部4aには前記ガイド壁6の係着部10および係着部9のそれぞれに嵌合する断面L字状の係着部26および係着部27が突設されている。先端側の係着部26と前記凸部25との間隔をlとし、前記ガイド壁6の規制部11と係合片20の係合部20cとの間隔をLとすると、L>lに形成されている。28は電池箱4の前端部に設けられた電池の端子部である。
【0013】次に、このような構成の電池箱の取付構造における電池箱の取付け方法を説明する。まず、電池箱4の前端が開口7から入らないように、電池箱4を図1に矢印Eで示すように、電池収納部5の開口7側の上方から電池収納部5のほぼ中央の上方へ水平に移動させた後、電池箱4を電池収納部5方向に下降させる。このとき、図5(a)に示すように、係着部26と凸部25との間隔lの方が、ガイド壁6の規制部11と係合片20の係合部20cとの間隔Lよりも短いので、電池箱4の凸部25の前端25bが、係合片20の係合部20cの下方まで位置していないときには、係着部26が規制部11に当接し、凸部25のF方向への移動が規制され、凸部25の底面25cが凹部8の底面8cに当接することがない。したがって、この状態で電池箱4を矢印E方向に移動させても、凸部25の前端25bが係合片20の係合部20cに当接することがないので、凸部25により、電池収納部5の開口7に沿った方向、すなわち矢印E方向と直交する方向に揺動支持された係合部20cを破損することがない。
【0014】ここで、仮に、電池箱4のガイド凹部4aと電池収納部5のガイド壁6とを係合させるようにして、電池箱4の前端を電池収納部5の開口7から電池収納部5内に水平に挿入させると、電池箱4の係着部26と、ガイド壁6の規制部11より開口7側に位置する係着部9とが係合して、電池箱4の電池収納部5内への収納が阻止される。したがって、電池箱4の凸部25の前端25bは係合片20の係合部20cに当接することがなく、係合部20cが凸部25により破損するようなことはない。
【0015】電池箱4をさらにE方向に移動させて、同図(b)に示すように凸部25が係合部20cの下方に位置すると、係着部26と規制部11との当接が解除されるので、電池箱4をF方向へ移動させることができ、これにより凸部25の底面25cで係合片20の係合部20cを押圧して、係合部20cを前記板ばね21の付勢力に抗して凹部8から退出させる。したがって、さらに電池箱4をE方向に移動させた際に、凸部25により係合部20cを破損させることがなく、同図(c)に示すように係着部26がガイド壁6の係着部10に、係着部27がガイド壁6の係着部9にそれぞれ嵌合して、電池箱4は電池収納部5から上方への抜けが規制される。同時に、凸部25の溝25aが係合片20の係合部20cに対応して位置するので、係合部20cは前記板ばね21の付勢力により凹部8内に突出して溝25aに係合し、電池箱4は電池収納部5から後方への抜けが規制される。また、電池収納部5のガイド壁6により電池箱4は電池収納部5から左右方向への抜けが規制され、電池箱4は電池収納部5内に取り付けられる。
【0016】取り外す際には、前記操作部材17の操作部17cをスプリング18の付勢力に抗して矢印A方向に摺動させると、操作部材17の押圧部17dが係合片20の被押圧部20bを押圧し、図4に二点鎖線で示すように係合片20がダボ20aを揺動中心として図中時計方向に揺動する。これにより、係合部20cが凹部8から退出して電池箱4の凸部25の溝25aとの係合が解除し、電池箱4を矢印E方向(図1参照)と反対方向に移動させることができて電池収納部5から取り外すことができる。
【0017】電池箱4の凸部25の溝25aに係合する係合片20は、図4に示すように、電池収納部5の裏面側においてダボ20aを中心として水平方向に延在して軸受片14に揺動自在に支持されている。このため、これを収納しているアッパーケース2は係合片20の揺動範囲内の収納スペースを設ければよく、揺動方向であるC−D方向に大きなスペースを必要としないので、アッパーケース2の厚みを薄くすることができる。また、ガイド壁6に電池箱4の係着部26が係止される規制部11を設けて、電池箱4の凸部25により係合片20の破損を防止したので、係合片20を開口7に沿った方向に揺動自在に支持することができ、これにより係合片20および操作部材17を電池収納部4の開口7に沿って、電池収納部5の裏面側に配設することができ、このため電池収納部5の裏面側に他の部品を実装するのに充分なスペースを確保することが可能となる。さらに、電池収納部5のガイド壁6に電池箱4の上方への抜けを規制する係着部9,10を設けて電池収納部5の上方を開口した構造としているので、ロアーケース3の薄型化を図ることができる。
【0018】また、電池収納部5の窓8bが設けられた部位を凹設して凹部8を形成し、電池箱4にこの凹部8に嵌合する凸部25を形成したことにより、この凸部25に係合片20の係合部20cが係合する溝25aを形成できる。このため、電池箱4の電池を収納するスペース内に溝25aを設ける必要がなくなり、これにより電池箱4の外形を必要最小限の大きさとし、電池箱4の小型化を図ることができる。
【0019】なお、ガイド壁6には二対の係着部9,10が設けられているが、どちらか一対でもよく、係着部9のみが設けられる場合には規制部11は係着部9の開口7側に設けられる。
【0020】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、電池箱の底面に係合凹部を設け、この係合凹部に係合する係合片を電池収納部内に進退自在となるように電池収納部の裏面側で揺動自在に支持したので、電気機器の筐体は、係合片が揺動する範囲の収納スペースを確保すればよく、このため小型化を図ることができる。また、電池箱の底面の係合凹部が形成された部位を突設するとともに、電池収納部の係合片が配設された部位を凹設したことにより、電池箱の外形を必要最小限の大きさとすることができるので、電子機器筐体をより小型化することができる。また、この係合片を電池収納部の開口端側に沿って配設したので、電池収納部の裏面において他の部品の実装スペースを充分に確保することができる。さらに、電池収納部のガイド壁に電池箱の上方への抜けを規制する係着部を設けたことにより、電池収納部の上方を開口した構造とすることができるので、電気機器筐体の薄型化を図ることができる。また、電池収納部には電池箱の係着部が係着される係着部を有し電池箱のガイド凹部が係合して電池箱を電池収納部の後端開口側から前端側に摺動案内するガイド壁が立設され、このガイド壁に、電池箱の係着部が当接することにより電池箱の凸部の前端が係合片に当接するのを規制する規制部を設けたことにより、電池箱を電池収納部に収納する際、誤って電池箱の凸部の前端で係合片を破損することもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る電池箱の取付構造を採用した電気機器の背面側から視た全体を示す斜視図である。
【図2】 本発明に係る電池箱の取付構造を採用した電気機器の底面図である。
【図3】 本発明に係る電池箱の取付構造を採用した電気機器の一部を破断した背面図である。
【図4】 図3におけるIV-IV 線断面図である。
【図5】 図3におけるV-V 線断面図である。
【符号の説明】
1…電気機器、2…アッパーケース、3…ロアーケース、4…電池箱、5…電池収納部、6…ガイド壁、8…凹部、8b…窓、9,10…係着部、11…規制部、17…操作部材、20…係合片、20c…係合部、25…凸部、25a…溝、26,27…係着部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 電気機器筐体に後端が開口した段状の電池収納部を凹設し、この電池収納部に電池箱を嵌合係着させて取り付ける電池箱の取付構造において、前記電池箱の両側部に係着部を有する段状のガイド凹部を形成するとともに底面に係合凹部を有する凸部を設け、前記電池収納部の両側部に、前記電池箱の係着部が係着される係着部を有し前記電池箱のガイド凹部が係合して電池箱を電池収納部の開口側から前端側に摺動案内するガイド壁を立設するとともに、電池収納部の開口側の底面に、後端が開口し前記電池箱の凸部が嵌合する凹部を設け、この凹部に、電池収納部の開口側に沿って配設され、かつ前記電池収納部内に進退自在となるように電池収納部の裏面側で揺動自在に支持され、この凹部に進出することにより前記係合凹部に係合する係合片を設け、前記電池収納部のガイド壁に、前記電池箱の係着部が当接することにより電池箱の凸部の前端が前記係合片に当接するのを規制する規制部を設けたことを特徴とする電池箱の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【特許番号】特許第3351162号(P3351162)
【登録日】平成14年9月20日(2002.9.20)
【発行日】平成14年11月25日(2002.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−73365
【出願日】平成7年3月30日(1995.3.30)
【公開番号】特開平8−273646
【公開日】平成8年10月18日(1996.10.18)
【審査請求日】平成10年11月11日(1998.11.11)
【出願人】(000003632)株式会社田村電機製作所 (18)
【参考文献】
【文献】特開 平7−161386(JP,A)