説明

電池配線モジュール、電池配線モジュールの製造方法、および電池配線モジュールを備えた電源装置

【課題】製造工程を簡略化することのできる電池配線モジュール、電池配線モジュールの製造方法、および電池配線モジュールを備えた電源装置を提供する。
【解決手段】電池配線モジュール10は、複数の電池セル2を直列接続し、各電池セル2の端子間電圧を検出する。電池配線モジュール10は、電池セル2の正極端子3と負極端子4とを互いに接続する複数個の接続部材30と、各接続部材30に接続される検出配線が形成された配線基板20とを備えている。接続部材30は、正極端子3と負極端子4とを接続する第1接続部と、検出配線が接続される第2接続部とを有する。配線基板20は第2接続部が固定される固定領域を有する。検出配線は、導線とランド部とを有する。第2接続部と配線基板20とは固定領域で互いに接着し、かつ第2接続部とランド部とは半田接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電池セルを直列接続し、かつ各電池セルの端子間電圧を検出する電池配線モジュール、電池配線モジュールの製造方法、および電池配線モジュールを備えた電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の電池セルで構成されている電源装置は、車両用の2次電池、家庭用としての蓄電装置として用いられている。この種の電源装置として、例えば特許文献1に記載の技術が知られている。
【0003】
特許文献1に記載の電源装置は、複数の電池セルと、電池セルを直列接続する電池配線モジュールとを備えている。電池配線モジュールは、隣接する電源セルの正極端子と負極端子とを接続する複数個の接続部材と、電線(配線)とを備えている。電線はそれぞれ対応する接続部材に接続されている。これら電線は、各電池セルの端子間電圧を取得するために設けられている。これは次の理由による。
【0004】
個々の電池セルは性能のばらつきがあるため、放電中または充電中において端子間電圧にばらつきが生じる。電池セルの端子間電圧が規定範囲を超えると電池セルの劣化が進行するため、各電池セルについて端子間電圧を監視し、かつ各電池セルの端子間電圧が規定範囲内となるように個々に制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−49047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、電源装置の高電圧化により直列接続する電池セルの個数が増大し、これに伴って電線数が増大している。このため、各電線を接続する作業時間が長くなっていた。このような実情から電池配線モジュールの製造工程の効率化が要求されている。
【0007】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、製造工程を簡略化することのできる電池配線モジュール、電池配線モジュールの製造方法、および電池配線モジュールを備えた電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)請求項1に記載の発明は、複数の電池セルを直列接続し、前記各電池セルの端子間電圧を検出する電池配線モジュールにおいて、隣接する前記電池セルの正極端子と負極端子とを互いに接続する複数個の接続部材と、前記各接続部材に接続される配線が形成された配線基板とを備え、前記接続部材は、隣接する前記電池セルの前記正極端子と前記負極端子とを接続する第1接続部と、前記配線が接続される第2接続部とを有し、前記配線基板は、前記第2接続部が固定される固定領域を有し、前記配線は、導線と、前記接続部材の前記第2接続部に対応するように前記固定領域に設けられたランド部とを有し、前記第2接続部と前記配線基板とは前記固定領域で互いに接着し、かつ前記第2接続部と前記ランド部とが半田接続されていることを要旨とする。
【0009】
この発明によれば、配線のランド部が、接続部材の第2接続部が接着する固定領域に設けられているため、接続部材を配線基板の固定領域に配置して両者を固定した状態で、ランド部と接続部材とを互いに半田接続することができる。すなわち、従来構造であれば、配線としての電線を1本1本について接続部材に接続するために電線を引き回しかつ電線が動かないように固定する作業が必要であったが、これらの作業を省略することができる。このため、電池配線モジュールの製造工程を簡略化することができる。
【0010】
(2)請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電池配線モジュールにおいて、前記ランド部は、前記配線基板において前記第2接続部が固定される面とは反対側の面に形成され、かつ前記ランド部には前記配線基板を貫通するランド孔が設けられ、前記ランド孔を通じて前記ランド部と前記第2接続部とが半田接続されていることを要旨とする。
【0011】
配線基板において第2接続部が固定される面と同じ側の面でランド部と第2接続部とを半田接続する場合、次のような手間が生じる。すなわち、接続部材を所定位置に配置し、これら接続部材の上に配線基板を置いて互いに接着固定し、その後、ランド部と第2接続部とを半田接続するという製造工程を経る場合に、接続部材と配線基板とを接着固定したアッセンブリを反転させる必要がある。
【0012】
一方、本発明によれば、接続部材を所定位置に配置し、これら接続部材の上に配線基板を置いて互いに接着固定した後、この状態を維持して、ランド部と第2接続部とを半田接続することができる。すなわち、この構成により、電池配線モジュールの製造工程を簡略化することができる。
【0013】
(3)請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の電池配線モジュールにおいて、前記第2接続部には、前記ランド部に設けられた前記ランド孔に対応するところに前記第2接続部を貫通する接続貫通孔が設けられていることを要旨とする。
【0014】
接続部材に接続貫通孔がないとき、ランド部と第2接続部との半田接続状態を精確に確認することができない。すなわち、半田接続によりランド孔が半田で埋まるため、第2接続部まで十分に広がっているか目視確認することが難しい。
【0015】
本発明では、第2接続部において、ランド孔に対応するところに接続貫通孔を形成する。このため、この接続貫通孔を通じて、半田を目視することができるため、半田の広がりを確認することにより半田接続の良否を判定することができる。
【0016】
(4)請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の電池配線モジュールにおいて、前記第2接続部には、前記ランド部に対応するところから前記第2接続部の端縁までにいたる通気溝が形成されていることを要旨とする。
【0017】
配線基板のランド部と接続部材の第2接続部とはランド孔を通じて半田接続される。ところで、半田接続のとき、フラックスがランド孔を通じて配線基板と第2接続部との間に溜まり、半田がランド部と第2接続部との間に十分流入しない場合がある。
【0018】
本発明では、第2接続部において、ランド部に対応するところに通気溝があるため、この通気溝を通じて、半田接続の際に生じるフラックスガスを外部に排出することができる。これにより、フラックスガスが配線基板と第2接続部との間の内部空間に溜まることが抑制されるため、半田がランド部と第2接続部との間に十分流入しないといった事象の発生を抑制することができる。
【0019】
(5)請求項5に記載の発明は、請求項2〜4のいずれか一項に記載の電池配線モジュールにおいて、前記配線基板は、絶縁層とこの絶縁層の両面に形成された前記配線とを含む導電層と、前記導電層の一面を覆う第1カバーレイと、前記導電層の他面を覆う第2カバーレイとを備え、前記ランド部は前記絶縁層の両面に形成されかつ前記絶縁層の両面に形成されたランド同士は前記ランド孔を通じて互いに接続されていることを要旨とする。
【0020】
ランド部は、配線基板の両面にわたって形成されているため、片面のみにランド部が形成される場合と比較して、半田接続面積を大きくすることができる。これにより、ランド部と第2接続部との半田接続部の強度を大きくすることができる。
【0021】
(6)請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の電池配線モジュールにおいて、前記導線は、前記配線基板の前記固定領域を通ることを要旨とする。
配線基板の固定領域、すなわち、配線基板において第2接続部が接着する領域に導線が通る構成とされている。この構成によれば、配線基板の固定領域には導線を配置しない構成に比べて、導線が配置することのできる配置面積を大きくすることができるため、配線基板を全体として小さくすることができる。
【0022】
(7)請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の電池配線モジュールにおいて、前記配線基板の前記固定領域と前記接続部材の前記第2接続部とは接着シートを介して互いに接着していることを要旨とする。
【0023】
配線基板と接続部材の第2接続部との接着方法としては熱圧着等の方法もある。本発明では、両者の接着に接着シートを採用する。これにより、仮接着が可能となるため、配線基板と接続部材とを簡易的に固定することができる。
【0024】
(8)請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の電池配線モジュールにおいて前記配線基板はフレキシブル基板により形成されていることを要旨とする。
この発明によれば、各接続部材は配線基板に固定されているが、配線基板が可撓性を有するため、接続部材は移動可能状態となる。接続部材が電池セルに固定された場合において電池セルが膨張または収縮したとき、予め撓みを与えていた配線基板が膨張収縮を吸収できるため、接続部材の第2接続部とランド部との半田接続部に過大な力が加わることが抑制される。すなわち、半田接続部の劣化を抑制することができる。
【0025】
(9)請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか一項に記載の電池配線モジュールにおいて、前記接続部材の前記第1接続部を収容し、かつ隣接する前記電池セルの正極端子と負極端子とに嵌る保持部材を備えていることを要旨とする。
【0026】
この発明によれば、第1接続部が保持部材に収容されるため、隣接する第1接続部同士の接触を抑制することができる。すなわち、隣接する接続部材の間での短絡を抑制することができる。
【0027】
(10)請求項10に記載の発明は、請求項1〜9のいずれか一項に記載の電池配線モジュールにおいて、前記配線基板には、前記電池セルのそれぞれに対してバイパス回路が設けられていることを要旨とする。
【0028】
電池セルは過充電または過放電する場合がある。特に、リチウム2次電池の場合、過充電および過放電により電池セルが劣化する。このため、電池セルの過充電または過放電を抑制するため、バイパス回路が設けられている。本発明では、配線基板上にバイパス回路を設ける。このため、外部基板に当該バイパス回路を設ける場合に比較して、当該外部基板を小さくすることができる。
【0029】
(11)請求項11に記載の発明は、請求項1〜10のいずれか一項に記載の電池配線モジュールを備えた電源装置である。電池配線モジュールを備えるため、電源装置の製造工程を簡略化することができる。
【0030】
(12)請求項12に記載の発明は、隣接する電池セルの正極端子と負極端子とを互いに接続する複数個の接続部材と、前記各接続部材に接続される配線が形成された配線基板とを備え、前記接続部材は、隣接する前記電池セルの前記正極端子と前記負極端子とを接続する第1接続部と、前記配線が接続される第2接続部とを有し、前記配線基板は、前記第2接続部が固定される固定領域を有し、前記配線は、導線と、前記接続部材の前記第2接続部に対応するように前記固定領域に設けられたランド部とを有し、前記第2接続部と前記配線基板とが前記固定領域で互いに接着し、かつ前記第2接続部と前記ランド部とが半田接続されている電池配線モジュールの製造方法であって、複数の前記接続部材を配列する工程と、前記配線基板の前記固定領域に接着剤を付ける工程と、前記接着剤により複数個の前記接続部材と前記配線基板とを接着する工程と、前記配線基板の前記ランド部に半田を塗布し、前記接続部材および前記配線基板をリフローにより加熱して半田接続する工程とを含むことを要旨とする。
【0031】
従来構造では、配線としての電線を接続部材に接続するために電線を引き回しかつ電線が動かないように固定し、この後、個々に溶接する作業が必要であった。本発明では、リフローにより各第2接続部と各ランド部とを一括して半田接続するため、第2接続部とランド部との接続する接続工程の時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、製造工程を簡略化することのできる電池配線モジュール、電池配線モジュールの製造方法、および電池配線モジュールを備えた電源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】一実施形態の電源装置の斜視図。
【図2】電源装置の回路図。
【図3】電池配線モジュールの分解斜視図。
【図4】電池配線モジュールの配線基板の断面図。
【図5】電池配線モジュールの半田接続部の分解斜視図。
【図6】電池配線モジュールの半田接続部の断面図。
【図7】電池配線モジュールの半田接続部を示し、(a)は比較形態の断面図、(b)は実施形態の断面図。
【図8】電池配線モジュールの半田接続部を示し、(a)は合格判定された半田接続部の断面図、(b)は合格判定された半田接続部の断面図。
【図9】電池配線モジュールの半田接続部を示し、(a)は合格判定された半田接続部の断面図、(b)は不合格判定された半田接続部の断面図。
【図10】半田接続部の変形例を示し、半田接続部の断面図。
【図11】変形例の半田接続部に用いられる接続部材の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1を参照して、本発明の電源装置の一実施形態について説明する。
以下に説明する電源装置1は、例えば、車両用の電力供給電源、家庭用またはオフィス用の蓄電池として用いられる。
【0035】
電源装置1は、複数の電池セル2と、各電池セル2を直列に接続する電池配線モジュール10とを備えている。例えば、電池セル2は十数個〜数十個直列接続される。電池セル2としては、例えば、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、溶融塩電池等が用いられる。
【0036】
電池セル2は直方体であり、上面に正極端子3と負極端子4とが設けられている。電池セル2の並び方向において正極端子3、負極端子4、正極端子3・・・のように電極端子の極性が交互に替わるように、電池セル2が並べられている。
【0037】
電池配線モジュール10は、各電池セル2を直列接続する接続機能と、各電池セル2について正極端子3と負極端子4との間の端子間電圧を監視する監視機構と、この端子間電圧を制御する制御機能とを有する。なお、制御機能は、電源装置1の外部に設けられた電池管理装置200とともに協働してその機能を発揮する。
【0038】
図2を参照して、電源装置1の回路構成を説明する。
電源装置1は、複数の電池セル2と、電池セル2の端子間電圧を制御する制御装置50と、制御装置50と外部の電池管理装置200との間の通信を制御する通信装置60とを備えている。なお、制御装置50と通信装置60とは上記電池配線モジュール10に含まれる。
【0039】
各電池セル2には、正極端子3と負極端子4との間の端子間電圧を測定するための検出配線26(配線)が接続されている。なお、隣接する2つの電池セル2の正極端子3と負極端子4とは短絡接続されているため、正極端子3の検出配線26と負極端子4の検出配線26とは共通線となる。これら検出配線26は、抵抗140を介して制御装置50に接続されている。なお、制御装置50および通信装置60はIC(Integrated Circuit)により構成されている。
【0040】
各電池セル2の正極端子3と負極端子4との間には、電池セル2に対してバイパス回路100が接続されている。バイパス回路100は、抵抗110と、スイッチング素子120とを備えている。スイッチング素子120としては、電界効果トランジスタ(以下、FET)、トランジスタ等が用いられる。各スイッチング素子120の制御端子(FETの場合はゲート端子、トランジスタの場合はベース端子)は制御配線27により制御装置50に接続されている。
【0041】
制御装置50は、各電池セル2の端子間電圧を検出する。そして、制御装置50は、通信装置60を通じて各電池セル2についての端子間電圧のデータを電池管理装置200に送信する。
【0042】
また、制御装置50は、電池管理装置200からの指令に基づいてスイッチング素子120を制御する。
例えば、電池管理装置200が、端子間電圧のデータに基づいて所定の電池セル2について放電が必要である旨判定し、制御装置50に放電指令を出したとき、制御装置50は放電指令に基づいてスイッチング素子120を制御し、当該電池セル2を放電させる。
【0043】
制御装置50には、電池セル2の温度を検出する温度センサ130が接続されている。制御装置50は、通信装置60を通じて温度センサ130からの出力値を電池管理装置200に送信する。温度センサ130からの出力値は、電源装置1の充放電制御に用いられる。
【0044】
図3を参照して、電池配線モジュール10について説明する。
電池配線モジュール10は、フレキシブル基板により形成された配線基板20と、隣接する電池セル2の正極端子3と負極端子4とを互いに接続する接続部材30と、接続部材30を収容する保持部材40とを備えている。配線基板20と接続部材30とは接着シート80により互いに接着している。
【0045】
接続部材30は、隣接する電池セル2の正極端子3と負極端子4とを接続する第1接続部31と、検出配線26が接続される第2接続部32と、第1接続部31と第2接続部32とを接続する中間部33とを備えている。接続部材30は、純銅またはタフピッチ銅の基板をプレス加工することにより形成されている。すなわち、第1接続部31と第2接続部32と中間部33とは一体になっている。
【0046】
第1接続部31には、正極端子3が挿入する正極挿入孔31Aと、負極端子4が挿入する負極挿入孔31Bとが設けられている。
第2接続部32には、接続貫通孔32Aが3個設けられている。接続貫通孔32Aは、配線基板20のランド孔29(図6参照)に対応して形成されている。第2接続部32の寸法は、配線基板20に接続部材30が強固に固定されるのに必要な大きさに設定されている。
【0047】
保持部材40は、底壁41と、底壁41を囲む周壁42を備えている。底壁41と周壁42とは接続部材30の第1接続部31を収容する収容部を構成する。底壁41には、正極端子3が挿通する正極孔41Aと、負極端子4が挿通する負極孔41Bとが形成されている。保持部材40は絶縁樹脂により形成されている。
【0048】
保持部材40は、正極孔41Aと正極端子3との嵌合および負極孔41Bと負極端子4との嵌合により電池セル2に取り付けられる。接続部材30は次のようにして電池セル2に固定される。
【0049】
すなわち、第1接続部31を収容部に収容した状態で正極挿入孔31Aに正極端子3を挿入し、かつ負極挿入孔31Bに負極端子4を挿入する。そして、第1のナットを正極端子3に嵌め、第2のナットを負極端子4に嵌めて、第1接続部31と正極端子3とを互いに締結しかつ第1接続部31と負極端子4とを互いに締結する。
【0050】
なお、接続部材30と保持部材40とが電池セル2に固定されたとき、配線基板20において隣り合う2つの接続部材30の間に対応する部分(以下、接続部材間部20X。図1参照)が撓む。すなわち、配線基板20は、複数の電池セル2の組に電池配線モジュール10が組み付けられたときに接続部材間部20Xが撓むように形成されている。
【0051】
図4を参照して、配線基板20について説明する。
配線基板20は、検出配線26、制御配線27等の配線が形成された導電層23と、導電層23の一面を覆う第1カバーレイ21と、導電層23の他面を覆う第2カバーレイ22とを備えている。なお、配線基板20において、第2カバーレイ22が貼り付けられた面側を裏面20Rとし、裏面20Rの反対側を表面20Sとする。
【0052】
第1カバーレイ21はポリイミド樹脂により形成されている。第1カバーレイ21は接着剤24Aにより導電層23に貼り付けられている。第2カバーレイ22はポリイミド樹脂により形成されている。第2カバーレイ22は接着剤24Bにより導電層23に貼り付けられている。
【0053】
配線基板20の裏面20Rには接続部材30が固定される。接続部材30の固定は、接着シート80を用いて行われる。なお、以降の説明では、配線基板20において、第2接続部32が接着する部分を固定領域20C(図5参照)とする。
【0054】
配線基板20の表面20Sには、抵抗140、バイパス回路100の抵抗110、スイッチング素子120、制御装置50、通信装置60、コネクタ70が配置されている(図1および図5参照)。コネクタ70は、図3に示すように、配線基板20の本体部20Aから延びたリード部20Bに設けられている。コネクタ70には、電池管理装置200から導出する配線が接続される。
【0055】
導電層23は、絶縁層23Cと、この絶縁層23Cの一方の面に形成された第1導電層23Aと、絶縁層23Cの他方の面に形成された第2導電層23Bとを備えている。第1導電層23Aおよび第2導電層23Bは、検出配線26、制御配線27等の配線を含む。これら配線はエッチングにより形成される。図5に示すように、検出配線26は、接続部材30の第2接続部32に半田で接続されている。以降の説明では、検出配線26と第2接続部32との半田接続部分を半田接続部25という。
【0056】
図5および図6を参照して、半田接続部25の構造を説明する。
なお、図5は、配線基板20と接続部材30とを接着シート80で接着するときの各部材の配置関係を示している。なお、検出配線26は第1導電層23Aおよび第2導電層23Bのいずれにも形成されているが、説明の便宜上、ここでは第1導電層23Aに検出配線26が形成されているものとして説明する。
【0057】
検出配線26は導線26Aとランド部28とを有する。具体的には、導線26Aの先端は3本の分岐線に分かれ、各分岐線にランド部28が形成されている。各ランド部28は、固定領域20C内でかつ配線基板20の端側に等間隔に配置されている。固定領域20Cには、分岐線またはランド部28以外に、検出配線26の導線26Aまたは制御配線27が配置されている。また、固定領域20Cに抵抗を配置してもよい。
【0058】
各ランド部28は、第2接続部32の接続貫通孔32Aに対応した位置に配置されている。すなわち、配線基板20に第2接続部32を接着したとき、ランド部28の中心軸と接続貫通孔32Aの中心軸とは一致する。
【0059】
なお、接着シート80は、固定領域20Cに対応する形状に形成されている。接着シート80には、ランド部28に対応するように貫通孔81が設けられている。貫通孔81の大きさは、ランド部28よりも大きい。すなわち、配線基板20と第2接続部32とを接着したときランド部28に接着剤が入らないように構成されている。
【0060】
図6に示すように、ランド部28の中心部分には配線基板20を貫通するランド孔29が形成されている。ランド孔29の内径は接続貫通孔32Aの内径よりも大きい。ランド部28は、絶縁層23Cを挟んで互いに対向するように形成された第1ランド部28Aと第2ランド部28Bとを含む。第1ランド部28Aと第2ランド部28Bとはランド孔29を介して接続されている。
【0061】
第1ランド部28Aは、第1導電層23Aとして形成されている。第2ランド部28Bは、第2導電層23Bとして形成されている。第1カバーレイ21において第1ランド部28Aに対応する部分は除去されている。すなわち、第1ランド部28Aは外部に露出する。同様に、第2カバーレイ22において第2ランド部28Bに対応する部分は除去されている。
【0062】
配線基板20と第2接続部32との間には接着層36が形成されている。接着層36は、接着シート80を介在させて配線基板20と第2接続部32とを熱圧着することにより形成されたものである。第2ランド部28Bと第2接続部32との間には、接着層36は存在しない。
【0063】
図6を参照して、半田接続部25の半田充填態様について説明する。
半田37は、第1ランド部28Aの全体を覆うとともに、ランド孔29を通じて第2ランド部28Bと第2接続部32との間の内部空間34に入り込み、かつ第2接続部32の接続貫通孔32Aに侵入している。接続貫通孔32Aの内面には、半田37のフィレット38が形成されている。
【0064】
半田37は第1ランド部28Aおよび第2ランド部28Bに接触する。すなわち、半田37とランド部28との接触面積は、絶縁層23Cの片面にのみランド部が形成された半田接続部の接触面積に比べて大きい。
【0065】
半田37は、配線基板20において表面20S側(第1ランド部28A側)と裏面20R側(第2ランド部28B側)との両面に広がっている。このような構造により、次の作用が生じる。
【0066】
配線基板20の熱膨張収縮等によって半田37に対し力が作用するとき、第1ランド部28Aに広がっている半田部分および第2ランド部28Bに広がっている半田部分が抵抗となって半田37が配線基板20に引っ掛かる。このため、半田接続部25の強度は、絶縁層23Cの片面にのみランド部が形成された半田接続部の強度に比べて大きい。
【0067】
また、半田37は、第2接続部32の接続貫通孔32Aに侵入している。接続貫通孔32Aに入った半田37は第2接続部32に引っ掛かる。このため、半田接続部25の強度は、第2接続部32に接続貫通孔32Aが設けられていない半田接続部の強度に比べて大きい。
【0068】
第2接続部32の接続貫通孔32Aに侵入することにより発揮する作用、すなわち引っ掛かりの作用は、接続貫通孔32Aに代えて第2接続部32に溝を形成することによっても生じる。すなわち、この溝によっても、半田接続部25の強度を大きくすることができる。なお、接続貫通孔32Aによる構成は、引っ掛かりの効果の他、半田未充填抑制効果も有するため、以下、この点について説明する。
【0069】
図7を参照して、接続貫通孔32Aのある半田接続部25と、接続貫通孔32Aのない半田接続部250と比較して説明する。なお、図7(a)の上側に示す図は、配線基板20の表面20S側からみたランド部28を示し、下側に示す図はA−A線に沿った断面構造を示す。図7(b)の上側に示す図は、配線基板20の表面20S側からみたランド部28を示し、下側に示す図はB−B線に沿った断面構造を示す。
【0070】
図7(a)は接続貫通孔32Aのない半田接続部250(比較形態)の断面図を示す。
この構造の場合、半田接続時において半田が第2接続部32にまで流れないことがある。この場合、図7(a)に示されるように、ランド部28と第2接続部32とが接続されない。このような半田未充填は次の2つの事象のいずれか、または両者が重なることにより生じる。
【0071】
第1は、半田が塗布されたとき、第2ランド部28Bと第2接続部32との間の内部空間34に空気が閉じ込められて、半田溶融時にこの内部空間34に閉じ込められた空気が外部に排出されにくくなる事象である。
【0072】
第2は、半田に含まれるフラックスまたは半田塗布時に用いられるフラックスが、半田溶融時にフラックスガスとなり、このフラックスガスが第2ランド部28Bと第2接続部32との間の内部空間34に閉じ込められることにより、半田が第2接続部32にまで流れにくくなる事象である。すなわち、いずれの事象でも、第2ランド部28Bと第2接続部32との間の内部空間34に空気またはフラックスガスが閉じ込められることに起因して、半田未充填が形成される。
【0073】
このような半田未充填は、外部から確認することができないといった問題もある。すなわち、半田が第1ランド部28Aを覆っている場合、ランド部28を配線基板20の表面20S側から観察しただけでは半田未充填を見つけ出すことはできない。
【0074】
図7(b)は接続貫通孔32Aのある半田接続部25の断面図を示す。
このような構造の場合、図7(b)に示されるように、半田が第2接続部32にまで流れ、ランド部28と第2接続部32とが接続される。これは、次の理由による。
【0075】
すなわち、外部空間に通じる接続貫通孔32Aが存在するため、半田の塗布により、第2ランド部28Bと第2接続部32との間の内部空間34に空気もしくはフラックスガスが閉じ込められる頻度は少なくなる。このため、半田未充填が形成される頻度は少なくなる。
【0076】
また、仮に、半田が第2接続部32まで到達しないといた半田未充填が形成されたとしても、第2接続部32の裏面32Rから半田充填状態を確認することができるため、半田接続状態の検査を目視で行うことが可能である。
【0077】
図8および図9を参照して、半田接続部25の外観検査判定条件の一例を説明する。
なお、図8(a)の上側に示す図は、配線基板20の表面20S側からみたランド部28を示し、下側に示す図はC−C線に沿った断面構造を示す。図8(b)の上側に示す図は、配線基板20の表面20S側からみたランド部28を示し、下側に示す図はD−D線に沿った断面構造を示す。図9(a)の上側に示す図は、配線基板20の表面20S側からみたランド部28を示し、下側に示す図はE−E線に沿った断面構造を示す。図9(b)の上側に示す図は、配線基板20の表面20S側からみたランド部28を示し、下側に示す図はF−F線に沿った断面構造を示す。
【0078】
半田接続部25の外観検査の合否判定条件として、2つの判定条件が設定される。そして、以下の2つの判定条件の両方が肯定判定されたとき、外観検査において合格判定とされる。2つの判定条件を次に示す。
【0079】
(半田接続部の外観検査の判定条件)
・(A)第1基準は、配線基板20の表面20S側からみて、少なくともランド孔29の内周が半田37で覆われていること。
・(B)第2基準は、第2接続部32の裏面32R側からみて、接続貫通孔32Aに半田37が入り込んでいること。
【0080】
第1基準によれば、半田37がランド孔29を通じて第2接続部32に流れていることが確認される。
第1基準を満たす具体例としては、例えば、ランド孔29が半田37により塞がれていること、ランド孔29の内周に半田が付着していること等が挙げられる。
【0081】
第2基準によれば、半田37が第2接続部32にまで到達していることが確認される。
第2基準を満たす具体例としては、例えば、接続貫通孔32Aが半田37で埋まっていること、接続貫通孔32Aに半田37のフィレット38が形成されていること等が挙げられる。
【0082】
条件(A)は配線基板20と半田37との接続状態を示し、条件(B)は第2接続部32と半田37との接続状態を示すため、上記2つの判定条件(A)および(B)により、配線基板20と第2接続部32とが半田37を介して互いに接続されていることを判定することができる。以下、半田接続状態の合格判定の例および不合格判定の例を説明する。
【0083】
図8(a)に示す半田接続部25は次の外観を呈する。配線基板20の表面20S側からみてランド孔29が半田37で塞がれ、かつ第2接続部32の裏面32R側からみて、接続貫通孔32Aが半田37で埋まっている。すなわち、半田接続部25は上記2つの判定条件(A)および(B)を満たすため、外観検査において合格と判定される。
【0084】
図8(b)に示す半田接続部25は次の外観を呈する。配線基板20の表面20S側からみてランド孔29の内周が半田37で覆われ、かつ第2接続部32の裏面32R側からみて、接続貫通孔32Aに半田37のフィレット38が形成されている。すなわち、上記2つの判定条件(A)および(B)を満たすため、外観検査において合格と判定される。すなわち、
図9(a)に示す半田接続部25は次の外観を呈する。配線基板20の表面20S側からみて、ランド孔29が半田37で塞がれ、かつ第2接続部32の裏面32R側からみて、接続貫通孔32Aに半田37のフィレット38が形成されている。すなわち、上記2つの判定条件(A)および(B)を満たすため、外観検査において合格と判定される。
【0085】
図9(b)に示す半田接続部25は次の外観を呈する。配線基板20の表面20S側からみてランド孔29の内周が半田37で覆われ、かつ第2接続部32の裏面32R側からみて、接続貫通孔32Aに半田37が侵入していない。すなわち、上記2つの判定条件のうち(A)条件を満たすが(B)条件を満たさないため、外観検査において不合格と判定される。
【0086】
図10および図11を参照して、半田接続部25の変形例を示す。
図10は、半田接続部25の変形例の断面図を示している。図11は半田接続部25の変形例に用いられる接続部材300の斜視図である。この変形例では、上記実施形態の接続貫通孔32Aに代えて、第2接続部32に通気溝310を形成している。
【0087】
図11の接続部材300の斜視図に示すように、この通気溝310は第2接続部32の端縁35まで延びている。すなわち、半田接続部25において、第2ランド部28Bと第2接続部32との間の内部空間34が外部空間と連通するように、通気溝310が形成されている。このような構成によれば、第2ランド部28Bと第2接続部32との間の内部空間34が半田塗布時に密封されることがなくなる。このため、半田未充填の発生を抑制することができる。
【0088】
次に、図3を参照して、電池配線モジュール10の製造方法について説明する。
接続部材30を2列に配列する。このとき、接続部材30の正極挿入孔31Aと負極挿入孔31Bとが等間隔に配置される。すなわち、電池セル2の配列に合わせて接続部材30が配列される。
【0089】
次に、配線基板20の固定領域20Cに接着シート80を貼り付ける。このとき、配線基板20のランド孔29の中心軸と接着シート80の貫通孔81の中心軸とを一致させて、接着シート80を貼り付ける。
【0090】
そして、接着シート80を貼り付けたところに接続部材30を配置し、接続部材30を仮固定する。このとき、ランド孔29の中心軸と第2接続部32の接続貫通孔32Aの中心軸とを一致させる。次に、ホットプレス機を用いて、配線基板20に接続部材30を固定する。例えば、配線基板20と第2接続部32とを、170℃、2MP、押圧保持時間30分の条件で加圧する。
【0091】
次に、配線基板20のランド部28に半田を塗布し、配線基板20と接続部材30とのアセンブリをリフローで加熱して、ランド部28と第2接続部32とを半田接続する。以上の工程により、電池配線モジュール10が完成する。
【0092】
以下、本実施形態の効果を説明する。
(1)上記実施形態では、接続部材30の第2接続部32と配線基板20とを固定領域20Cで互いに接着し、かつこの固定領域20Cで第2接続部32とランド部28とを半田接続する。すなわち、接続部材30を配線基板20の固定領域20Cに固定した状態でランド部28と接続部材30とを互いに半田接続することができる。従来構造であれば、電線を1本1本接続部材30に接続する必要があり手間を要していたが、これらの作業を省略することができる。このため、電池配線モジュール10の製造工程を簡略化することができる。
【0093】
また、上記実施形態の電池配線モジュール10では、従来構造の次のような課題も解決される。すなわち、従来構造の電池配線モジュール10においては、電池セル2の増大すなわち電線数の増大にともなって、電線の誤配線が頻発することが懸念されていた。この点、本実施形態では配線基板20を用いているため、配線作業がなく、ご配線が生じる虞が殆どない。
【0094】
さらに次の効果もある。すなわち、ランド部28の周囲と第2接続部32とが互いに接着していることから半田接続部25に過大な力が加わることが抑制される。このため、半田接続部25の劣化が抑制される。
【0095】
(2)上記実施形態では、配線基板20において表面20S側に第1ランド部28Aを形成する。そして、ランド孔29を通じてランド部28と第2接続部32とを半田接続する。
【0096】
この構成によれば、接続部材30を所定位置に配置し、これら接続部材30の上に配線基板20を置いて互いに接着固定した後、この状態を維持して、ランド部28と第2接続部32とを半田接続することができる。すなわち、この構成により、電池配線モジュール10の製造工程を簡略化することができる。
【0097】
(3)上記実施形態では、第2接続部32においてランド孔29に対応するところに接続貫通孔32Aが設けられている。
第2接続部32に接続貫通孔32Aが形成されていない場合、ランド部28と第2接続部32との半田接続状態を精確に確認することができない。すなわち、半田接続により第1ランド部28Aの全体が半田で覆われてランド孔29が封鎖されるため、第2接続部32まで十分に広がっているかを目視確認することが難しい。この点、上記構成によれば、接続貫通孔32Aを通じて、半田を目視することができるため、半田の広がりを確認することにより半田接続の良否を判定することができる。
【0098】
また、接続貫通孔32Aを通じて、半田接続の際に生じるフラックスガスが外部に排出されるため、フラックスガスが配線基板20と第2接続部32との間の内部空間34に溜まることが抑制される。これにより、半田がランド部28と第2接続部32との間に十分流入しないといった半田未充填の発生を抑制することができる。
【0099】
(4)上記実施形態の変形例では、図10および図11に示すように、接続貫通孔32Aに代えて、第2接続部32にランド部28に対応するところから第2接続部32の端縁35までにいたる通気溝310を形成する。
【0100】
この構成によれば、通気溝310があるため、この通気溝310を通じて、半田接続の際に生じるフラックスガスが外部に排出される。このため、半田未充填の発生を抑制することができる。
【0101】
(5)上記実施形態では、絶縁層23Cの両面に第1ランド部28Aと第2ランド部28Bとを形成し、両ランドをランド孔29を通じて互いに接続する。すなわち、絶縁層23Cの片面のみにランド部28を形成する場合と比較して、半田接続面積を大きくすることができる。これにより、ランド部28と第2接続部32との半田接続部25の強度を大きくすることができる。
【0102】
(6)上記実施形態では、検出配線26の導線26Aが固定領域20Cを通る。この構成によれば、配線基板20において固定領域20Cに導線26Aを配置しない構成に比べて、導線26Aが配置することのできる配置面積を大きくすることができるため、配線基板20を全体として小さくすることができる。この構成は、配線の本数が多いとき特に有用である。
【0103】
(7)上記実施形態では、配線基板20の固定領域20Cと接続部材30の第2接続部32とを接着シート80により互いに接着する。
配線基板20と第2接続部32との接着方法としては熱圧着等の方法もある。この構成では、両者の接着に接着シート80を採用する。これにより、仮接着が可能となるため、配線基板20と接続部材30とを簡易的に固定することができる。すなわち、リワーク可能となり、生産歩留りを高くすることができる。
【0104】
(8)上記実施形態では、配線基板20はフレキシブル基板により形成されている。
この構成により、接続部材30を移動可能とすることができる。すなわち、接続部材30が電池セル2に固定された場合において電池セル2が膨張または収縮したとき、予め撓みを与えていた配線基板20が膨張収縮を吸収できるため、半田接続部25に過大な力が加わることが抑制される。このため、半田接続部25の劣化を抑制することができる。
【0105】
(9)上記実施形態では、第1接続部31を収容し、かつ隣接する電池セル2の正極端子3と負極端子4とに嵌る保持部材40を備えている。
第1接続部31が保持部材40に収容されるため、隣接する第1接続部31同士の接触を抑制することができる。すなわち、隣接する接続部材30の間での短絡を抑制することができる。
【0106】
(10)上記実施形態では、配線基板20に電池セル2のそれぞれに対するバイパス回路100を設けている。バイパス回路100は、配線基板20以外の外部基板に設けることも可能であるが、この場合、この外部基板が大きくなる。この点、配線基板20にバイパス回路100に設けるため、外部基板の面積を小さくすることができる。
【0107】
(11)本実施形態の電源装置1は、上記構成の電池配線モジュール10を備えている。このため、電源装置1の製造工程を簡略化することができる。
(12)本実施形態の電池配線モジュール10の製造方法では、接続部材30と配線基板20とのアッセンブリをリフローにより加熱して各半田接続部25を一括して半田接続する。従来構造では、電線を接続部材30に接続するために電線を引き回しかつ電線が動かないように固定し、この後、個々に溶接する作業が必要であった。これに対し、本製造方法では、リフローにより第2接続部32と各ランド部28とを一括して半田接続するため、第2接続部32とランド部28との接続する接続工程における接続作業時間を短縮することができる。
【0108】
(その他の実施形態)
なお、本発明の実施態様は上記実施形態にて示した態様に限られるものではなく、これを例えば以下に示すように変更して実施することもできる。また以下の各変形例は、異なる変形例同士を互いに組み合わせて実施することもできる。
【0109】
・上記実施形態では、接続部材30の第1接続部31と第2接続部32とは、中間部33を介して接続されているが、中間部33を省略することもできる。すなわち、接続部材30の第1接続部31と第2接続部32とを同一平面を構成するように、接続部材30を形成することもできる。
【0110】
・上記実施形態では、配線基板20の両面にランド部28を形成している。すなわち、ランド部28は、絶縁層23Cを挟んで互いに対向する第1ランド部28Aと第2ランド部28Bとを含む。この構成において、第2ランド部28Bを省略することもできる。この構成によっても少なくとも上記(1)の効果は奏する。
【0111】
・上記実施形態では、配線基板20の導電層23は3層構造であるが、さらに多層構造とすることもできる。また、配線基板20として、一部がリジッドである所謂リジッドフレキシブル基板を用いることもできる。この場合、電池セル2間に対応する部分に可撓性を持たせる。
【0112】
・上記実施形態では、半田接続部25の内部空間34の空気もしくはフラックスガスの排出口として、接続貫通孔32Aまたは通気溝310を設けている。これらの構成に代えてまたはこれら構成に加えて、内部空間34に通じる貫通孔を配線基板20に形成してもよい。この構成によっても、上記(3)と同様の効果を奏する。
【0113】
・上記実施形態では、接着シート80により配線基板20と接続部材30とを接着しているが、接着剤はこれに限定されない。また接着方法もこれに限定されない。例えば、液状の接着剤を用いることができる。また、配線基板20の接着面の最表面に熱可塑性層を形成し、熱圧着により配線基板20と接続部材30とを接着する接着方法を採用することもできる。
【0114】
・上記実施形態では、車両用の2次電池または家庭用の蓄電池として用いられる電源装置1について本発明を適用しているが、本発明の適用の範囲はこれに限定されない。すなわち、電池セル2が直列接続される構造であってかつ各接続部材30に配線が接続される構造を有する電源装置1であれば、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0115】
1…電源装置、2…電池セル、3…正極端子、4…負極端子、10…電池配線モジュール、20…配線基板、20A…本体部、20B…リード部、20C…固定領域、20R…裏面、20S…表面、20X…接続部材間部、21…第1カバーレイ、22…第2カバーレイ、23…導電層、23A…第1導電層、23B…第2導電層、23C…絶縁層、24A…接着剤、24B…接着剤、25…半田接続部、26…検出配線、26A…導線、27…制御配線、28…ランド部、28A…第1ランド部、28B…第2ランド部、29…ランド孔、30…接続部材、31…第1接続部、31A…正極挿入孔、31B…負極挿入孔、32…第2接続部、32A…接続貫通孔、32R…裏面、33…中間部、34…内部空間、35…端縁、36…接着層、37…半田、38…フィレット、40…保持部材、41…底壁、41A…正極孔、41B…負極孔、42…周壁、50…制御装置、60…通信装置、70…コネクタ、80…接着シート(接着剤)、81…貫通孔、100…バイパス回路、110…抵抗、120…スイッチング素子、130…温度センサ、140…抵抗、200…電池管理装置、250…半田接続部、300…接続部材、310…通気溝。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルを直列接続し、前記各電池セルの端子間電圧を検出する電池配線モジュールにおいて、
隣接する前記電池セルの正極端子と負極端子とを互いに接続する複数個の接続部材と、前記各接続部材に接続される配線が形成された配線基板とを備え、
前記接続部材は、隣接する前記電池セルの前記正極端子と前記負極端子とを接続する第1接続部と、前記配線が接続される第2接続部とを有し、
前記配線基板は、前記第2接続部が固定される固定領域を有し、
前記配線は、導線と、前記接続部材の前記第2接続部に対応するように前記固定領域に設けられたランド部とを有し、
前記第2接続部と前記配線基板とは前記固定領域で互いに接着し、かつ前記第2接続部と前記ランド部とが半田接続されている
ことを特徴とする電池配線モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の電池配線モジュールにおいて、
前記ランド部は、前記配線基板において前記第2接続部が固定される面とは反対側の面に形成され、かつ前記ランド部には前記配線基板を貫通するランド孔が設けられ、
前記ランド孔を通じて前記ランド部と前記第2接続部とが半田接続されている
ことを特徴とする電池配線モジュール。
【請求項3】
請求項2に記載の電池配線モジュールにおいて、
前記第2接続部には、前記ランド部に設けられた前記ランド孔に対応するところに前記第2接続部を貫通する接続貫通孔が設けられている
ことを特徴とする電池配線モジュール。
【請求項4】
請求項2に記載の電池配線モジュールにおいて、
前記第2接続部には、前記ランド部に対応するところから前記第2接続部の端縁までにいたる通気溝が形成されている
ことを特徴とする電池配線モジュール。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか一項に記載の電池配線モジュールにおいて、
前記配線基板は、絶縁層とこの絶縁層の両面に形成された前記配線とを含む導電層と、前記導電層の一面を覆う第1カバーレイと、前記導電層の他面を覆う第2カバーレイとを備え、
前記ランド部は前記絶縁層の両面に形成され、かつ前記絶縁層の両面に形成されたランド同士は前記ランド孔を通じて互いに接続されている
ことを特徴とする電池配線モジュール。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の電池配線モジュールにおいて、
前記導線は、前記配線基板の前記固定領域を通る
ことを特徴とする電池配線モジュール。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の電池配線モジュールにおいて、
前記配線基板の前記固定領域と前記接続部材の前記第2接続部とは接着シートを介して互いに接着している
ことを特徴とする電池配線モジュール。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の電池配線モジュールにおいて、
前記配線基板はフレキシブル基板により形成されている
ことを特徴とする電池配線モジュール。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の電池配線モジュールにおいて、
前記接続部材の前記第1接続部を収容し、かつ隣接する前記電池セルの正極端子と負極端子とに嵌る保持部材を備えている
ことを特徴とする電池配線モジュール。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の電池配線モジュールにおいて、
前記配線基板には、前記電池セルのそれぞれに対してバイパス回路が設けられている
ことを特徴とする電池配線モジュール。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の電池配線モジュールを備えた電源装置。
【請求項12】
隣接する電池セルの正極端子と負極端子とを互いに接続する複数個の接続部材と、前記各接続部材に接続される配線が形成された配線基板とを備え、
前記接続部材は、隣接する前記電池セルの前記正極端子と前記負極端子とを接続する第1接続部と、前記配線が接続される第2接続部とを有し、
前記配線基板は、前記第2接続部が固定される固定領域を有し、
前記配線は、導線と、前記接続部材の前記第2接続部に対応するように前記固定領域に設けられたランド部とを有し、
前記第2接続部と前記配線基板とが前記固定領域で互いに接着し、かつ前記第2接続部と前記ランド部とが半田接続されている電池配線モジュールの製造方法であって、
複数の前記接続部材を配列する工程と、
前記配線基板の前記固定領域に接着剤を付ける工程と、
前記接着剤により複数個の前記接続部材と前記配線基板とを接着する工程と、
前記配線基板の前記ランド部に半田を塗布し、前記接続部材および前記配線基板をリフローにより加熱して半田接続する工程とを含む
ことを特徴とする電池配線モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−109927(P2013−109927A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253189(P2011−253189)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】