説明

電池配線モジュール

【課題】隣り合う電極端子間のピッチのずれを容易に調整可能な電池配線モジュールを提供する。
【解決手段】正極及び負極の電極端子12を有する単電池11を複数個並べてなる単電池群10に取り付けられる電池配線モジュール20は、電極端子12に接続される複数のバスバー21と、バスバー21を保持する保持部32を有する絶縁樹脂製の樹脂プロテクタ30と、を備える。バスバー21は、保持部32により、単電池11の並び方向に移動可能に保持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池配線モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド車用の電池モジュールでは、出力を大きくするために多数の単電池が横並びに接続されている。隣り合う単電池の電極端子間をバスバーなどの接続部材で接続することにより複数の単電池が直列や並列に接続されるようになっている。
【0003】
上記構成の電池モジュールを組み立てる際には、複数箇所の電極端子間を接続部材で接続する必要があるため、電極端子間にそれぞれ接続部材を接続する作業を繰り返すという煩雑な作業が必要になる。
【0004】
そこで、接続する電極端子間の数に応じて、インサート成形等により金型内に配置した複数の接続部材を樹脂内に一体成形した電池接続プレートを形成することが考えられる(たとえば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3990960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載されている電池接続プレートを用いると、複数の単電池から突出する複数の電極端子に1つの電池接続プレートを取り付けるだけで、隣り合う単電池の電極端子間を複数箇所についてまとめて接続することができ、作業効率を向上させることが可能になる。
【0007】
しかしながら、並べられた複数の単電池間には、組み付け公差が設定されているため、複数の単電池が並べられた電池モジュールにおいては、隣り合う単電池に形成された電極端子間のピッチがずれる場合がある。すると、上記した電池接続プレートを電極端子に接続する際に、電極端子と、電池接続プレートに配置された接続部材との間に位置ずれが生じるため、電池接続プレートの接続作業の効率が低下することが懸念される。
【0008】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、隣り合う電極端子間のピッチのずれを容易に調整可能な電池配線モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するものとして、本発明は、正極及び負極の電極端子を有する単電池を複数並べてなる単電池群に取り付けられる電池配線モジュールであって、前記電極端子に接続される複数の接続部材と、前記接続部材を保持する保持部を有する絶縁樹脂製の樹脂プロテクタと、を備え、前記接続部材は、前記保持部により、前記単電池の並び方向に移動可能に保持されている電池配線モジュールである。
【0010】
本発明において、樹脂プロテクタの保持部は、電極端子を接続する接続部材を、複数の単電池の並び方向に移動可能に保持するので、電極端子間のピッチのずれが生じた場合に、接続部材が単電池の並び方向に移動することでピッチのずれを調整することができる。その結果、本発明によれば隣り合う電極端子間のピッチのずれを容易に調整可能な電池配線モジュールを提供することができる。
【0011】
本発明は以下の構成であってもよい。
前記樹脂プロテクタには、隣り合う前記接続部材の間に配されて、隣り合う前記接続部材の絶縁状態を保持する絶縁壁が設けられていてもよい。
このような構成とすると、隣り合う接続部材の絶縁状態を保持できる。
【0012】
前記樹脂プロテクタは、前記保持部を備える保持ユニットを、複数備え、複数の前記保持ユニットは、前記単電池の並び方向に移動可能に連結されていいてもよい。
単電池群を構成する単電池が、単電池の並び方向に膨張・収縮することにより、電極端子間のピッチのずれが大きくなると、特許文献1に記載されているような一体成形型の接続プレートではピッチのずれを調整できなくなるおそれがある。そこで、上記のような構成とすると、電極端子間のピッチのずれが大きくなったとしても、保持ユニットが複数の単電池の並び方向に移動することで、ピッチのずれを調整することができる。
【0013】
前記保持部には、前記接続部材を取り付け可能な取付突部が設けられる一方、前記接続部材には、前記取付突部を受け入れるとともに、前記単電池の並び方向に延びる形状の取付孔が設けられていてもよい。
このような構成とすると、接続部材の取付孔を保持部の取付突部に取り付けておけば接続部材が単電池の並び方向に移動可能であるので、簡易な構造により、電極端子間のピッチのずれを調整することができる。
【0014】
一方の端末が前記接続部材に接続されるとともに、当該接続部材に接続された単電池の電圧を検知する電圧検知回路を構成する電圧検知用導電路が形成されたフレキシブルプリント基板を備え、前記フレキシブルプリント基板は、前記保持部により、前記単電池の並び方向に移動可能に保持されていてもよい。
このような構成とすると、電圧検知回路を備える電池配線モジュールにおいて、電圧検知用導電路が形成されたフレキシブルプリント基板も、保持部により、単電池の並び方向に移動可能に保持されるので、フレキシブルプリント基板によっても、隣り合う電極端子間のピッチのずれを調整することができる。
【0015】
前記フレキシブルプリント基板には複数の電圧検知用導電路が形成されるとともに、前記複数の電圧検知用導電路には、それぞれ前記接続部材が接続され、前記フレキシブルプリント基板の、隣り合う前記接続部材間に配される領域には撓み部が形成されていてもよい。
このような構成とすると、フレキシブルプリント基板の撓み部が伸長することにより、接続部材間のピッチのずれを調整することができる。
【0016】
前記フレキシブルプリント基板には、前記電圧検知用導電路とともに、前記単電池の温度を制御する温度制御用回路を構成する温度制御用導電路が形成されていてもよい。
このような構成とすると、1つのフレキシブルプリント基板に、電圧検知機能と温度制御機能の双方の機能を持たせることができるので、電圧検知機能と温度制御機能を有する部材の接続作業を簡素化できるうえに、部品点数を減らすことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、隣り合う電極端子間のピッチのずれを容易に調整可能な電池配線モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】蓋を外した状態の実施形態1の電池配線モジュールを取り付けた電池モジュールの一部斜視図
【図2】電池配線モジュールの斜視図
【図3】フレキシブルプリント基板(FPC)と接続部材を保持した樹脂プロテクタおよび蓋ユニットを示す斜視図
【図4】接続部材と接続したFPCおよび樹脂プロテクタを示す斜視図
【図5】連結前の保持ユニットの斜視図
【図6】連結後の保持ユニット(樹脂プロテクタ)の平面図
【図7】図6のA−A線における断面図連結後の保持ユニット(樹脂プロテクタ)の平面図
【図8】FPCおよび接続部材を示す分解斜視図
【図9】FPCの導電路を部分的に示す斜視図
【図10】実施形態2の電池配線モジュールの斜視図
【図11】電池配線モジュールを取り付けた電池モジュールの一部平面図
【図12】図14の一部拡大図
【図13】保持ユニットの斜視図
【図14】保持ユニットの左側面図
【図15】保持ユニットの右側面図
【図16】保持ユニットに接続部材を挿入する様子を示す斜視図
【図17】連結前の保持ユニットを示す斜視図
【図18】連結後の保持ユニット(樹脂プロテクタ)に電圧検知端子を挿入する様子を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図9を参照しつつ説明する。本実施形態に係る電池配線モジュール20は、図1に示すように、正極及び負極の電極端子12を有する複数個(本実施形態では14個)の単電池11を並べてなる単電池群10に取り付けられるものである。以下、正極の電極端子12を正極端子12A、負極の電極端子12を負極端子12Bといい両者を総括するときは電極端子12という。
【0020】
本実施形態の電池配線モジュール20を単電池群10に取り付けてなる電池モジュールM1は、例えば、電気自動車又はハイブリッド自動車等の、車両(図示せず)の駆動源として使用される。単電池群10を構成する複数の単電池11は、電池配線モジュール20によって、異なる単電池11の正極端子12Aと負極端子12Bとを電気的に接続することにより、直列に接続されている。以下の説明において図3における上方を上とし下方を下とする。
【0021】
(単電池11)
単電池11は、扁平な直方体形状をなしている。単電池11の上面11Aには、図1に示すように、正極端子12A及び負極端子12Bが形成されている。電極端子12は、金属板材からなる台座(図示せず)と、台座から上方に向かって丸棒状に突出する電極ポスト13Bとを備える。電極ポスト13Bの表面には、ねじ山14が形成されている。複数個の単電池11は、隣り合う単電池11の電極端子12の極性が異なるように(正極端子12Aと負極端子12Bとが交互に配されるように)並べられている。電極ポスト13Bはバスバー21(接続部材の一例)の貫通孔23(詳細は後述)に挿通され、図示しないネジ部材の螺合によりバスバー21に固定されるようになっている。また、これら複数個の単電池11は、単電池群10を構成するように図示しない保持具によって固定されている。
【0022】
(電池配線モジュール20)
電池用配線モジュール20は、単電池群10の上面11A(電極端子面)の略中央に取り付けられる。
電池配線モジュール20は、図2〜図4に示すように、単電池11の電極端子12に接続される複数のバスバー21と、バスバー21に接続され単電池11の電圧を検知する電圧検知用の導電路42が形成されたFPC40と、バスバー21およびFPC40を保持する保持部32を有する合成樹脂製の樹脂プロテクタ30を備える。本実施形態の電池配線モジュール20の上面には、別体の蓋16がとりつけられるようになっている。
【0023】
(蓋16)
蓋16は、絶縁樹脂材料からなり、図2および図3に示すように、左右方向に並べられた2枚の蓋16からなる。各蓋16は、略中央の扁平状部16Aと、扁平状部16Aの長手方向の一対の側縁にヒンジ16Cを介して連なる山形状の側縁部16Bとからなる。扁平状部16AはFPC40を覆う部分であり、2つの側縁部16Bは、それぞれバスバー21の電極端子12と接続される端子接続部22(詳細は後述)の上を覆う部分である。
【0024】
蓋16の扁平状部16Aの長手方向における両側縁には、ヒンジ16Cに沿って、保持ユニット31に設けた蓋固定突部36を受け入れ可能な固定孔17が形成されている。
【0025】
(樹脂プロテクタ30)
樹脂プロテクタ30は、図4および図5に示すように、左右方向に連結された複数(本実施形態では2つ)の保持ユニット31からなる。複数の保持ユニット31は単電池11の並び方向に沿って並べられており相互に連結されている。以下の説明において、2つの保持ユニット31を区別して説明するときは、図5に示す左側の保持ユニット31を第1保持ユニット31Aとし、図5に示す右側の保持ユニット31を第2保持ユニット31Bとする。
【0026】
(保持ユニット31)
保持ユニット31は、絶縁樹脂材料からなる。保持ユニット31は、単電池11の並び方向に略平行に配され、FPC40とバスバー21とを重ねた状態で保持する直方体状の保持部32と、保持部32をバスバー21の配置領域ごとに仕切る仕切壁33とを備える。
【0027】
保持部32の上面(FPC40が載置される面)には、図4に示すように、保持部32の長手方向の側縁に沿って形成され、バスバー21とFPC40とを重ねた状態で取り付け可能な取付突部34が複数設けられている。
また、保持部32の上面の、単電池11の並び方向に沿って配される2つの側縁のうち、図4における手前側の側縁にはFPC40の挿入片46を受け入れる挿入片受入孔35が設けられている。
【0028】
保持部32の側面には、樹脂プロテクタ30に蓋16を固定するための蓋固定突部36が形成されている。蓋固定突部36は蓋16に形成された固定孔17に受け入れられて係止される。
【0029】
仕切壁33は、図3に示すように、隣り合うバスバー21の、電極端子12と接続される端子接続部22の間においてバスバー21に対して切り立つように設けられており、隣り合うバスバー21間の絶縁状態を保持する絶縁壁として機能する。
【0030】
第1保持ユニット31Aは、詳細は後述するが、3つの第1バスバー21A、3つの第2バスバー21Bおよび1つの第3バスバー21Cを保持可能とされる。第2保持ユニット31Bは、3つの第1バスバー21A、4つの第2バスバー21B、および1つの第3バスバー21Cを保持可能とされる。
【0031】
(保持ユニット31の連結構造)
次に、第1保持ユニット31Aと第2保持ユニット31Bを連結するための連結構造について説明する。
第1保持ユニット31Aの図5に示す右側面には、連結係止片37が右方向に2つ突出形成されている。連結係止片37には、連結係止爪37Aが上方に突出形成されている。
【0032】
第2保持ユニット31Bの図5に示す左側面には、第1保持ユニット31Aの連結係止片37が挿入可能な係止片挿入孔38が2つ形成されている。第2保持ユニット31Bには、係止片挿入孔38から連通して、連結係止爪37Aを係止する係止片係止孔39が形成されている。係止片係止孔39には、図6および図7に示すように、連結係止片37が単電池11の並び方向に移動可能な隙間S1が設定されている。これにより、電極端子12,12間のピッチのずれが大きくなったとしても、保持ユニット31が単電池11の並び方向に移動することでピッチのずれを吸収できるようになっている。なお、図7において、X1は連結係止爪37Aと係止片係止孔39の図示左側の孔縁39Aとの間の距離を示し、X2は連結係止爪37Aと係止片係止孔39の図示右側の孔縁39Aとの間の距離を示しており、連結係止爪37Aは、隙間内S1をX1とX2の合計分、移動可能である。
【0033】
(バスバー21)
バスバー21は、銅、銅合金、ステンレス鋼、アルミニウム等の金属からなる板材を所定形状にプレス加工してなる。バスバー21の表面には、スズ、ニッケル等に金属がメッキされていてもよい。
【0034】
本実施形態では、バスバー21として、図8に示すように、3種類の形状のバスバー21を用いる。図8に示す手前側のバスバー21のうち、図示左右の端部に配された、バスバー21を第3バスバー21Cとし、第3バスバー21Cの間に配された6つのバスバー21を第1バスバー21Aとし、図8に示す奥側の最も大きい7つのバスバー21を第2バスバー21Bとする。
【0035】
第1バスバー21Aおよび第2バスバーの長手方向(単電池11の並び方向)の寸法は、隣り合う単電池11の電極端子12,12間の寸法に応じて設定される。
各バスバー21は段付き形状をなしており、単電池11の電極端子12と接続される略長方形状の端子接続部22と、端子接続部22から連なり上方に立ち上がる起立壁24と、起立壁24から連なり保持ユニット31の上面に載置されFPC40と接続されるFPC接続部25とを備える。
【0036】
各バスバー21の端子接続部22には、単電池11の電極端子12の電極ポスト13Bが挿通される貫通孔23が形成されている。端部バスバー21には貫通孔23が1つ形成され、第1バスバー21Aおよび第2バスバー21Bには、それぞれ貫通孔23が2つずつ形成されている。
【0037】
さて、各バスバー21のFPC接続部25には樹脂プロテクタ30の保持部32の上面に形成された取付突部34を受け入れ可能な取付孔26が設けられている。取付孔26は、単電池11の並び方向を長手方向とする長円状をなしている。本実施形態においては、取付突部34が長円状の取付孔26内を移動することにより、単電池11の製造公差や組み付け公差に起因する隣り合う電極端子12,12間のピッチのずれを吸収可能となっている。
【0038】
第3バスバー21Cには取付孔26が1つ形成され、第1バスバー21Aおよび第2バスバー21Bには、それぞれ取付孔26が2つずつ形成されている。
各バスバー21のFPC接続部25の両端部には取付孔26に隣接してスリット27が形成されている。このスリット27は、取付孔26にかかる応力を分散する機能を有するものである。
【0039】
(FPC40)
バスバー21のFPC接続部25には、FPC40が載置される。FPC40は、図4、図8および図9に示すように、例えばポリイミドフィルムや液晶状フィルム等からなる絶縁性のベースフィルムの片面または両面にプリント配線技術により複数の導電路42を形成し、その導電路42の表面を保護フィルム(例えば、ポリイミド製フィルム)で覆った構造とされる。なお、図9以外では、導電路42の図示を省略している。
【0040】
FPC40は帯状をなし、図1に示すように、単電池11の並び方向に沿って配される。FPC40の略中央部には複数の電子部品44が実装されている。電子部品44は図9に示すように、FPC40に形成した半田パッド43を介して導電路42に接続されている。FPC40には、電圧検知回路を構成する電圧検知用導電路42Aと、温度制御用回路を構成する温度制御用導電路42Bが形成されている。電圧検知用導電路42Aの端部と温度制御用導電路42Bの端部には、例えば図示しないECUなどが接続されるようになっている。ここで、電池ECUは、マイクロコンピュータ、素子等が搭載されたものであって、単電池11の電圧・電流・温度等を検出して、各単電池11の監視制御等を行うための機能を備えた周知の構成のものである。
【0041】
FPC40の長手方向の両側縁のうち、第1バスバー21Aが配置される側の側縁(図3における手前側)は、短冊状の挿入片46が3つ設けられている。この挿入片46には図9に示すように、温度制御用導電路42Bが形成されており、温度制御用導電路42Bの端部には図示しない半田パッド43を介してサーミスタ46Aが実装されている。挿入片46は、図8に示すように、FPC40の側縁の一部を切り欠いて下方に折り曲げ加工することにより形成されている。
【0042】
FPC40には、単電池11の並び方向(長手方向)に伸長可能な撓み部47が形成されている。撓み部47は、側面視台形状をなして上方に突出形成されており、この撓み部47によってバスバー21間のピッチのずれを調整可能となっている。各撓み部47は、隣り合う第2バスバー21Bの間に配されている。
【0043】
FPC40の長手方向の両端縁にはそれぞれ、保持ユニット31の取付突部34を受け入れ可能な取付孔45が形成されている。FPC40の取付孔45は、単電池11の並び方向を長手方向とする長円状をなしている。
【0044】
FPC40の取付孔45は、バスバー21の取付孔26と概ね同形同大であり、バスバー21の取付孔26と重なり合うように設けられている。FPC40の取付孔45とバスバー21の取付孔26は互いに重なり合って、樹脂プロテクタ30の取付突部34を受け入れている。
【0045】
本実施形態においては、取付突部34が、FPC40の取付孔45内およびバスバー21の取付孔26内を移動することにより、単電池11の製造公差や組み付け公差に起因する隣り合う電極端子12,12間のピッチのずれを吸収可能となっている。
【0046】
FPC40の取付孔45を取り囲む領域は、図9に示すように、バスバー21の取付孔26を囲む領域と、半田パッド43を介して接着されるとともに、電気的に接続されている。この半田パッド43には電圧検知用導電路42AのECUと接続される端部とは反対側の端部(一方の端部)が接続されている。
【0047】
(電池配線モジュール20の組み付け方法)
次に、電池配線モジュール20の組み付け方法について説明する。
まず、電圧検知用導電路42A、温度制御用導電路42Bなどの導電路42を形成したFPC40の側縁の一部を切り欠くことにより、図8に示すような形状に加工しておき、各電子部品44や、サーミスタ46Aを実装する。
【0048】
各バスバー21を図8に示すように並べておき、バスバー21のFPC接続部25をFPC40と接着して一体とする。バスバー21とFPC40とを接着する際には、バスバー21の取付孔26とFPC40の取付孔45が重なるように配置し、取付孔26,45の周縁を半田パッド43を介して接着する。バスバー21とFPC40とを一体化した後、あるいは一体化する前に挿入片46を下方へ折り曲げて図4に示すような形状とする。
【0049】
上記バスバー21とFPC40の接着作業と同時または前後して、第1保持ユニット31Aと第2保持ユニット31Bとを連結し一体化する(図5および図6を参照)。第1保持ユニット31Aの連結係止片37を第2保持ユニット31Bの係止片挿入孔38に挿入すると、連結係止片37の連結係止爪37Aが係止片挿入孔38の孔壁に当接し下方にたわみ変形する。連結係止爪37Aの全体が係止片係止孔39に嵌り込むと、連結係止爪37Aが弾性復帰するとともに係止片係止孔39内に受け入れられ、第1保持ユニット31Aが第2保持ユニット31Bに連結される。
【0050】
ここで、係止片係止孔39には、図7に示すように、連結係止片37との間に隙間S1が設定されているので、第1保持ユニット31Aが第2保持ユニット31Bに連結された状態においても、連結係止片37は係止片係止孔39内で単電池11の並び方向に移動可能である。
【0051】
次に、保持ユニット31の一体化により得られた樹脂プロテクタ30の上に、バスバー21を接着したFPC(バスバー接着FPC41ともいう)を取り付ける。具体的には、バスバー接着FPC41のバスバー21の取付孔26およびFPC40の取付孔45を、樹脂プロテクタ30の保持部32の取付突部34に挿通させるとともに、保持部32の挿入片受入孔35に、バスバー接着FPC41の挿入片46を挿入する。
【0052】
撓み部47を形成しない状態(図4に示すような状態)のバスバー接着FPC41の長手方向の寸法は、樹脂プロテクタ30の保持部32の上面の長手方向の寸法よりも大きく設定されているので、バスバー接着FPC41を保持部32の上面に取り付ける際に、バスバー21の取付孔26およびFPC40の取付孔45内に、取付突部34が挿入できない場合がある。そこで、バスバー接着FPC41を保持部32の上面に取り付ける際には、バスバー接着FPC41の第2バスバー21Bの間に配される部分に撓み部47を形成して、バスバー接着FPC41の長手方向の寸法を調整しながら、バスバー21の取付孔26およびFPC40の取付孔45に、取付突部34を挿入する。このようにしてバスバー接着FPC41を樹脂プロテクタ30に取り付けると、本実施形態の電池配線モジュール20が得られる。
【0053】
上記のようにして得られた電池配線モジュール20を単電池群10に組み付ける。隣り合う単電池11の隣り合う電極端子12が異なった極性となるように並べて単電池群10を作製しておき、単電池群10に電池配線モジュール20を組み付ける。具体的には、各バスバー21の貫通孔23に、単電池11の電極端子12(電極ポスト13B)を挿通させる。
【0054】
貫通孔23を電極ポスト13Bに挿通させてバスバー21の端子接続部22を電極端子12の台座に接触させるように配して、各電極ポスト13Bに図示しないネジ部材を螺合して固定する。
このとき、樹脂プロテクタ30には、隣り合うバスバー21の絶縁状態を保持する仕切壁33が設けられているのでバスバー21間において短絡が生じることはない。
【0055】
上記の作業を繰り返して、電極ポスト13Bにネジ部材を固定し終わったら、単電池群10は電気的に接続可能となる。次に、電池配線モジュール20に蓋16を取り付けると電池モジュールM1が完成する。
【0056】
(本実施形態の作用、効果)
以下、本実施形態の作用および効果について説明する。
本実施形態において、樹脂プロテクタ30の保持部32に設けた取付突部34は、バスバー21の取付孔26およびFPC40の取付孔45内を、単電池11の並び方向に移動可能に保持するので、電極端子12,12間のピッチのずれが生じた場合に、バスバー21が単電池11の並び方向に移動することでピッチのずれを調整することができる。その結果、本実施形態によれば隣り合う電極端子12,12間のピッチのずれを容易に調整可能な電池配線モジュール20を提供することができる。
【0057】
特に、本実施形態によれば、バスバー21の取付孔26およびこれと重なり合うFPC40の取付孔45を保持部32の取付突部34に取り付けておけばバスバー21が単電池11の並び方向に移動可能であるので、簡易な構造により、電極端子12,12間のピッチのずれを調整することができる。
【0058】
さらに、本実施形態によれば、電圧検知用導電路42Aが形成されたFPC40も、保持部32により、単電池11の並び方向に移動可能に保持されるので、FPC40によっても、隣り合う電極端子12,12間のピッチのずれを調整することができる。
【0059】
また、本実施形態によれば、樹脂プロテクタ30には、隣り合うバスバー21の間に配されて、隣り合うバスバー21の絶縁状態を保持する絶縁壁として機能する仕切壁33が設けられているから、隣り合うバスバー21の絶縁状態を保持できる。
【0060】
ところで、単電池群10を構成する単電池11が、単電池11の並び方向に膨張・収縮することにより、電極端子12,12間のピッチのずれが大きくなると、一体成形型の樹脂プロテクタ30ではピッチのずれを調整できなくなるおそれがある。しかしながら、本実施形態によれば、樹脂プロテクタ30は、保持部32を備える保持ユニット31を、複数備え、複数の保持ユニット31は、単電池11の並び方向に移動可能に係止され連結されているから、電極端子12,12間のピッチのずれが大きくなったとしても、保持ユニット31が複数の単電池11の並び方向に移動することで、ピッチのずれを調整することができる。
【0061】
また、本実施形態によれば、FPC40には複数の電圧検知用導電路42Aが形成されるとともに、複数の電圧検知用導電路42Aには、それぞれバスバー21が接続され、FPC40の、隣り合うバスバー21間に配される領域には撓み部47が形成されているから、FPC40の撓み部47が伸長することにより、バスバー21間のピッチのずれを調整することができる。
【0062】
また、本実施形態によればFPC40には、電圧検知用導電路42Aとともに、単電池11の温度を制御する温度制御用回路を構成する温度制御用導電路42Bが形成されているから、1つのFPC40に、電圧検知機能と温度制御機能の双方の機能を持たせることができるので、電圧検知機能と温度制御機能を有する部材の接続作業を簡素化できるうえに、部品点数を減らすことができる。
【0063】
<実施形態2>
本発明の実施形態2を図10ないし図18を参照しつつ説明する。本実施形態に係る電池配線モジュール60は、図11に示すように、正極及び負極の電極端子12を有する複数個(本実施形態では12個)の単電池11を並べてなる単電池群50に取り付けられるものである。本実施形態の単電池群50を構成する単電池10の構成は、実施形態1の単電池10と同じ構成である。本実施形態でも、複数の単電池10は直列に接続されている。以下の説明において図14における上方を上とし下方を下とする。
【0064】
(電池配線モジュール60)
本実施形態の電池配線モジュール60は、単電池群50の上面11A(電極端子面)において、2列の電極端子12の列にそれぞれ取り付けられるようになっているが、図11には、一方の電極端子12の列に取り付けられた電池配線モジュール60のみを示している。
【0065】
電池配線モジュール60は、図11に示すように、単電池11の電極端子12に接続される複数のバスバー61と、バスバー61に接続され単電池11の電圧を検知する電圧検知端子63と、バスバー61および電圧検知端子63を保持する保持部72を有する合成樹脂製の樹脂プロテクタ70を備える。
【0066】
(バスバー61)
バスバー61は、銅、銅合金、ステンレス鋼、アルミニウム等の金属からなる板材を所定形状にプレス加工してなる。バスバー61の表面には、スズ、ニッケル等に金属がメッキされていてもよい。バスバー61は略長方形状をなしており、その長手方向(図11における左右方向)の寸法は、隣り合う単電池11の電極端子12,12間の寸法に応じて設定される。本実施形態において複数のバスバー61は同形同大である。
【0067】
バスバー61には、所定の間隔を空けて一対の貫通孔62が形成されている。一対の貫通孔62内には、単電池11の電極端子12の電極ポスト13Bがそれぞれ挿通される。本実施形態における貫通孔62は、図12に示すように、単電池11の並び方向(図12における左右方向)を長手方向とする長円状をなしているので、電極端子12に対してバスバー61が相対的に移動可能となっている。つまり、バスバー61は、図12に示すように、保持部72により、隙間S2の寸法を大きくしたり小さくする方向(単電池11の並び方向)に移動可能に保持されている。これにより、バスバー61が保持部72内を単電池11の並び方向に移動して、単電池11の製造公差や組み付け公差に起因する隣り合う電極端子12,12間のピッチのずれを調整できるようになっている。
【0068】
(電圧検知端子63)
バスバー61の上に重ね合わされる電圧検知端子63は、平板状の本体部63Aと、本体部63Aから連なり検知電線Wが圧着されるバレル部63Bを備える。本体部63Aの中心部には、バスバー61の一対の貫通孔62のいずれか一方と重なるように配されて、バスバー61の一方の貫通孔62に挿通される電極端子12の電極ポスト13Bを挿通可能な挿通孔64が貫通して形成されている。挿通孔64は、バスバー61の貫通孔62よりもわずかに小さく形成されている。
【0069】
電圧検知端子63のバレル部63Bが形成されている端縁と対向する端縁には、外側方向に張り出す突片65が形成されている。この突片65は、保持部72の端子係止孔75により係止され、これにより電圧検知端子63の上下方向の移動が規制される。
【0070】
電圧検知端子63は、銅、銅合金、ステンレス鋼、アルミニウム等の金属板材を所定の形状にプレス加工してなる。電圧検知端子63の表面は、スズ、ニッケル等の金属によってメッキされていてもよい。
【0071】
電圧検知端子63に接続された検知電線Wは、後述の樹脂プロテクタ70の電線収容部78に収容されて、電池ECU(図示せず)に接続される。検知電線Wには検知電線Wを束ねる結束部材66が取り付けられていてコンパクトにまとめられている。
【0072】
(樹脂プロテクタ70)
樹脂プロテクタ70は、図10および図17に示すように、左右方向に連結された複数(本実施形態では2つ)の保持ユニット71からなる。2つの保持ユニット71は単電池11の並び方向に沿って並べられており、相互に連結されている。保持ユニット71の連結構造の詳細については後述する。
【0073】
保持ユニット71は、バスバー61および電圧検知端子63を収容し保持する保持部72と、電圧検知端子63に接続された検知電線Wを導出する導出溝76と、導出溝76から導出された電圧検知端子63の検知電線Wを収容する電線収容部78と、を備えている。これらの部材は一体的に形成されている。以下、各部材について説明する。
【0074】
(保持部72)
保持ユニット71には、図17に示すように、3つのバスバー61をそれぞれ収容する3つの保持部72が設けられている。各保持部72は、上方に開口しており、図16に示すように、バスバー61の周縁を取り囲む包囲壁73と、バスバー61が載置される底壁73Eとを備える。
【0075】
底壁73Eは、図16に示すように、保持部72の略中央部分と、包囲壁73に沿った端部に部分的に設けられており、バスバー61を載置しつつ、バスバー61と電極端子12との電気的な接続を妨げないように設けられている。
【0076】
包囲壁73の高さ寸法は、詳細は図示しないが電池配線モジュール60が単電池群50に接続された状態において、電極端子12の上端部よりも高く設定されている。これにより、工具等が正極端子12Aおよび負極端子12Bに接触して、正極端子12Aと負極端子12Bとが工具等を介して短絡することを抑制できるようになっている。
【0077】
本実施形態において包囲壁73は、バスバー61の周縁のほぼ全域を取り囲むように形成されている。具体的には、包囲壁73は、図16における奥側に配される後壁73Aと、図16における手前側に配される前壁73Bと、バスバー61の短辺方向の一対の側縁が配される図示左右の側壁73C,73D(左側壁73C、右側壁73D)とからなる。前壁73Bには開口部73Fが導出溝76に貫通して設けられている。
【0078】
包囲壁73の左右の側壁73C,73Dとバスバー61との間には、電極端子12,12間のピッチのずれを調整可能な隙間S2が設定されている。包囲壁73のうち、左右の側壁73C,73Dは隣り合うバスバー61間に配置されて絶縁状態を保持する絶縁壁としての機能を有している。
【0079】
前壁73Bおよび後壁73Aの略中央には、それぞれ、図16に示すように、挿入されたバスバー61の上方向への移動を規制して抜け止めするバスバー係止片74が形成されている。バスバー係止片74はバスバー61を挿入する際に包囲壁73の外側方向に弾性変形し、バスバー61が底壁73Eに載置されると、弾性復帰して、バスバー61の上方への移動を規制するようになっている。
【0080】
後壁73Aの中央よりも図16における左側寄りの領域には、電圧検知端子63の突片65を受け入れて係止する端子係止孔75が形成されている。
【0081】
(導出溝76)
導出溝76は、保持部72から導出された電圧検知端子63のバレル部63Bと、バレル部63Bに圧着された検知電線Wが配される部材であり、保持部72と電線収容部78とを連通する溝状の部材である。導出溝76は凹状をなしており、単電池11の並び方向と略垂直な方向に設けられている。詳しくは、導出溝76は、保持部72の前壁73Bの開口部73Fを貫通して保持部72と連通するとともに、電線収容部78の後側溝壁部79A(詳細は後述)の開口部79Cを貫通して電線収容部78に連通するように設けられている。
【0082】
(電線収容部78)
電線収容部78は、単電池11の並び方向に延びる一対の溝壁部79および一対の溝壁部79をつなぐ底壁部79Dによって断面凹状に構成されている。2つの保持ユニット71同士を連結することで、電線収容部78が連結され、単電池11の並び方向に連通する1本の溝(電線収容溝78)が形成される。
【0083】
各保持ユニット71の導出溝76から導出された各検知電線Wは、略直角に屈曲されて、電線収容部78の延設方向に沿って収容されるようなっている。電線収容部78に収容された複数の検知電線Wは、電池ECU側へ導出される。
【0084】
一対の溝壁部79のうち導出溝76側の溝壁部79を後側溝壁部79Aとし、もう一方の溝壁部79を前側溝壁部79Bとする。後側溝壁部79Aには後側溝壁部79Aを2つにわける開口部79Cが設けられており、当該開口部79Cには導出溝76が貫通している。
【0085】
一対の溝壁部79の上端部には、対向する位置に、電線保持片80が内側方向に突出形成されている。一対の電線保持片80は、検知電線Wが電線収容部78から離脱するのを防止している。
【0086】
(保持ユニット71の連結構造)
次に、隣り合う保持ユニット71同士を連結するための連結構造について説明する。保持ユニット71の、図13における左端部の導出溝76と隣接する位置には、図13及び図14に示すように、隣り合う保持ユニット71同士を連結する連結突部81が、保持部72の側壁および電線収容部78の端部よりも外側に突出するように設けられている。保持ユニット71の図13おける右端部には、図13および図15に示すように、隣り合う保持ユニット71の連結突部81を受け入れて連結する連結受け部82が、保持部72の粗鋼壁および電線収容部78の端部よりも外側に突出するように設けられている。
【0087】
連結突部81の先端には連結係止爪81Aが設けられている。連結係止爪81Aが連結受け部82の導出溝76側の端部(図12における左側の端部)に係止されることで、保持ユニット71が連結されるようになっている。
【0088】
連結受け部82には一対の弾性片82Aが形成されている。一対の弾性片82Aは、連結係止爪81Aの挿入により外側に拡開変形し、連結係止爪81Aが連結受け部82内を通過し終えると弾性復帰し、連結突部81を係止するようになっている。
【0089】
連結突部81の長さ寸法は連結受け部82の長さ寸法よりも長く設定されている。したがって、図12に示すような、2つの保持ユニット71を連結させた状態では、連結係止爪81Aは、図12のX3で示す長さの分、単電池11の並び方向に移動可能である。ここで、X3は、2つの保持ユニット71を連結させた状態としたときの、連結係止爪81Aの連結受け部82側の端面から連結受け部82の導出溝76側の端部までの距離である。
【0090】
(電池配線モジュール60の組み付け方法)
次に電池配線モジュール60の組み付け方法について説明する。まず、各保持ユニット71の各保持部72内にバスバー61を取り付ける。保持部72の上方からバスバー61を保持部72内に挿入すると、バスバー61は、保持部72の後壁73Aおよび前壁73Bに形成されたバスバー係止片74に当接し、バスバー係止片74が包囲壁73の外側方向に撓み変形する。
【0091】
さらにバスバー61を下方に挿入し、バスバー61が保持部72の底壁73Eに至ると、バスバー係止片74が弾性復帰してバスバー61の上に配される。これによりバスバー61の上方向への移動が規制され抜け止めされる。
【0092】
次に、バスバー61を取り付けた2つの保持ユニット71を連結する。図17に示すように、左側に配されている保持ユニット71の連結受け部82の一対の弾性片82Aの間に、右側に配されている保持ユニット71の連結突部81を挿入する。すると、連結係止爪81Aが一対の弾性片82Aを外側に拡開変形させながら連結受け部82内に挿入される。連結係止爪81Aが連結受け部82内を通過し終えると一対の弾性片82Aが弾性復帰し、連結係止爪81Aが連結受け部82に抜け止めされ、2つの保持ユニット71が連結される(図18を参照)。このとき、2つの保持ユニット71の連結部分においては、連結突部81が連結受け部82内を図18における左右方向に移動可能になっている。
【0093】
次に、電圧検知端子63を保持部72の上方から、保持部72に収容されたバスバー61の上へと嵌め込むとともに、導出溝76から電圧検知端子63に圧着された検知電線Wを電線収容部78(電線収容溝78)に収容することにより、電圧検知端子63を取り付ける。
【0094】
電圧検知端子63は、図18に示すように、電圧検知端子63に接続された検知電線Wを結束部材66で1つにまとめた状態で保持部72に取り付けられる。電圧検知端子63を取り付ける際には、まず、電圧検知端子63の突片65を端子係止孔75にさし込みと、電圧検知端子63の突片65が、端子係止孔75により、上下方向への移動を規制され位置決めされる。
【0095】
さらに、電圧検知端子63のバレル部63Bの端縁を、保持部72に対して上方から押し込んでバレル部63Bと検知電線Wを導出溝76に嵌めこみ、検知電線Wを電線収容部78に収容する。
【0096】
電線収容部78に形成された一対の電線保持片80と検知電線Wが当接すると、電線保持片80が下方に弾性変形する。検知電線Wを電線収容部78内に押し込んで、検知電線Wが電線保持片80よりも下方に配されると、電線保持片80が弾性復帰し、電線収容部78に収容された検知電線Wが上方から飛び出さないように保持される。このようにして電池配線モジュール60が得られる。
【0097】
次に、電池配線モジュール60を単電池群50に組み付ける。隣り合う単電池11の隣り合う電極端子12が異なった極性となるように並べて単電池群50を作製しておき、単電池群50に電池配線モジュール60を組み付ける。具体的には、各バスバー61の貫通孔62及びこの貫通孔62と重なり合う電圧検知端子63の挿通孔64に、単電池11の電極端子12(電極ポスト13B)を挿通させる。
【0098】
貫通孔62、又は貫通孔62及び挿通孔64を電極ポスト13Bに挿通させてバスバー61を電極端子12の台座(図示せず)に接触させるように配して、各電極ポスト13Bに図示しないネジ部材を螺合して固定する。上記の作業を繰り返して、電極ポスト13Bにネジ部材を固定し終わったら、単電池群50は電気的に接続可能となり、電池モジュールM2が完成する。
【0099】
(本実施形態の作用、効果)
以下、本実施形態の作用および効果について説明する。本実施形態において、バスバー61は樹脂プロテクタ70の保持部72により、複数の単電池11の並び方向に移動可能に保持されるので、電極端子12,12間のピッチのずれが生じた場合に、バスバー61が単電池11の並び方向に移動することでピッチのずれを調整することができる。その結果、本実施形態によれば隣り合う電極端子12,12間のピッチのずれを容易に調整可能な電池配線モジュール60を提供することができる。
【0100】
また、本実施形態によれば、樹脂プロテクタ70の保持部72には、隣り合うバスバー61の間に配されて、隣り合うバスバー61の絶縁状態を保持する絶縁壁として機能する左右の側壁73C,73Dが設けられているから、隣り合うバスバー61の絶縁状態を保持できる。
【0101】
ところで、単電池群50を構成する単電池11が、単電池11の並び方向に膨張・収縮することにより、電極端子12,12間のピッチのずれが大きくなると、一体成形型の樹脂プロテクタ70ではピッチのずれを調整できなくなるおそれがある。
しかしながら、本実施形態によれば、樹脂プロテクタ70は、保持部72を備える保持ユニット71を、複数備え、複数の保持ユニット71は、単電池11の並び方向に移動可能に連結されているから、電極端子12,12間のピッチのずれが大きくなったとしても、保持ユニット71が単電池11の並び方向に移動することで、ピッチのずれを調整することができる。
【0102】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では隣り合うバスバー21間に配され、隣り合うバスバー21の絶縁状態を保持する絶縁壁33が設けられている保持部32を示したが、バスバー間に保持部以外の別部材を配してバスバー間の絶縁を行ってもよい。
(2)上記実施形態では、複数の保持ユニット31,71が、単電池11の並び方向に移動可能に連結されている樹脂プロテクタ20,70を示したが、一体的な樹脂プロテクタであってもよい。
(3)上記実施形態1では、保持部32にバスバー21を取り付け可能な取付突部34が設けられる一方、バスバー21およびFPC40には、それぞれ、長円状の取付孔26,45が設けられている構成を示したが、保持部に取付孔を設けてバスバーおよびFPCに取付突部を設けてもよい。
(4)上記実施形態1では、バスバー21の間に配される領域に撓み部47が形成されているFPC40を示したが、撓み部が形成されていないFPCを備える構成としてもよい。
(5)上記実施形態1では、電圧検知用導電路42Aとともに、温度制御用導電路42Bが形成されているFPC40を示したが、いずれか一方のみを形成したFFCであってもよい。
(6)上記実施形態1では、FPC40とバスバー21とを半田パッド43を介して接着した例を示したが、FPCとバスバーとを導電性の接着剤で接着してもよい。
【符号の説明】
【0103】
M1,M2…電池モジュール
10,50…単電池群
11…単電池
12…電極端子
12A…正極端子
12B…負極端子
20,60…電池配線モジュール
21,61…バスバー(接続部材)
21A…第1バスバー
21B…第2バスバー
21C…第3バスバー
23,62…貫通孔
26…(バスバーの)取付孔
30,70…樹脂プロテクタ
31…保持ユニット
31A…第1保持ユニット
31B…第2保持ユニット
32,72…保持部
33…仕切壁(絶縁壁)
34…取付突部
37…連結係止片
37A…連結係止爪
38…係止片挿入孔
39…係止片係止孔
39A…孔縁
S1,S2…隙間
40…FPC
42…導電路
42A…電圧検知用導電路
42B…温度制御用導電路
43…半田パッド
45…(FPCの)取付孔
46…挿入片
46A…サーミスタ
46…撓み部
73…包囲壁
73C…左側壁(絶縁壁)
73D…右側壁(絶縁壁)
81…連結突部
81A…連結係止爪
82…連結受け部
82A…弾性片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極及び負極の電極端子を有する単電池を複数並べてなる単電池群に取り付けられる電池配線モジュールであって、
前記電極端子に接続される複数の接続部材と、前記接続部材を保持する保持部を有する絶縁樹脂製の樹脂プロテクタと、を備え、
前記接続部材は、前記保持部により、前記単電池の並び方向に移動可能に保持されている電池配線モジュール。
【請求項2】
前記樹脂プロテクタには、隣り合う前記接続部材の間に配されて、隣り合う前記接続部材の絶縁状態を保持する絶縁壁が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電池配線モジュール。
【請求項3】
前記樹脂プロテクタは、前記保持部を備える保持ユニットを、複数備え、複数の前記保持ユニットは、前記単電池の並び方向に移動可能に連結されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電池配線モジュール。
【請求項4】
前記保持部には、前記接続部材を取り付け可能な取付突部が設けられる一方、前記接続部材には、前記取付突部を受け入れるとともに、前記単電池の並び方向に延びる形状の取付孔が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の電池配線モジュール。
【請求項5】
一方の端末が前記接続部材に接続されるとともに、当該接続部材に接続された単電池の電圧を検知する電圧検知回路を構成する電圧検知用導電路が形成されたフレキシブルプリント基板を備え、
前記フレキシブルプリント基板は、前記保持部により、前記単電池の並び方向に移動可能に保持されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の電池配線モジュール。
【請求項6】
前記フレキシブルプリント基板には複数の電圧検知用導電路が形成されるとともに、前記複数の電圧検知用導電路には、それぞれ前記接続部材が接続され、
前記フレキシブルプリント基板の、隣り合う前記接続部材間に配される領域には撓み部が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の電池配線モジュール。
【請求項7】
前記フレキシブルプリント基板には、前記電圧検知用導電路とともに、前記単電池の温度を制御する温度制御用回路を構成する温度制御用導電路が形成されていることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の電池配線モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−105571(P2013−105571A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247487(P2011−247487)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】