説明

電池電極用バインダー、電池電極用スラリー及び電池用電極

【課題】 活物質同士や活物質と集電体との十分な結着性を有する電池電極用バインダー、当該バインダーを含有するスラリー、当該スラリーを用いて成形された電池用電極を提供する。
【解決手段】 平均粒子径が0.05〜1.0μmである塩化ビニル重合体及び/又は平均粒子径が0.05〜1.0μmである塩化ビニル共重合体を含むラテックスを含有することを特徴とする電池電極用バインダー、当該バインダー及び活物質を含有することを特徴とする電池電極用スラリー、並びに電池用電極。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池等の電池に使用することができる水系のバインダー、当該バインダーを含有するスラリー、当該スラリーを用いて成形された電池用電極に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、導電性やイオン伝導性物質を基材上に結着した構造体は、多岐に渡る用途に利用されている。特に電池用の電極として利用されている。近年、電池の中で二次電池の普及が目覚しくなってきている。二次電池が用いられる用途としては、ハイブリッド方式自動車があり、著しく普及してきた。さらに、プラグインハイブリッド方式又は電気式自動車が将来大きく普及すると予測されている。また、電動自転車も現在普及し始めた。さらに、携帯電話、ノートパソコン、PDAなどの携帯端末の普及が著しくなってきている。電動工具などのパワーツールの普及も著しい。さらに、スマートグリッド、特に家庭用としての電源制御システムが普及し始めた。これらの電源は、二次電池が用いられており、最近では、リチウムイオン二次電池が多用されてきた。
【0003】
電池、特にリチウムイオン二次電池は、電解液、正極用と負極用活物質等と集電体が結着された電極、並びにセパレータから基本的に構成される。
【0004】
上記に掲げた用途において、二次電池は、小型化、軽量化、薄型化、高性能化が求められている。二次電池の性能向上には、当該電池に用いられている各部材の性能向上が重要であるが、電極の性能向上についても重要な特性と考えられている。電極については、活物質、又は集電体の影響の他、活物質同士、及び活物質と集電体とを結着するためのバインダーとなるポリマー材料の影響も重要である。通常、このバインダーは、ポリマーを、水又は有機溶剤に分散、あるいは溶解した組成物からなり、当該組成物を活物質などと混合したスラリーを集電体に塗布後、乾燥して電極が製造される。ここで水系スラリーに含まれるバインダーとして、スチレン、ブタジエン、アクリロニトリルなどを原料とするスチレン・ブタジエンゴム類(SBR)が知られている。SBRは負極用バインダーとして使用されている。溶剤系では、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのフッ素系樹脂が知られており、それらバインダーを用い成形した電極が知られている。PVDFは、負極、正極用バインダーとして使用されている(特許文献1、2)。
【0005】
しかし、水分散系SBR又は溶剤系フッ素系樹脂がバインダーとして使用され成形された電極を用いたリチウムイオン二次電池は、電極において、活物質同士や活物質と集電体の結着性が十分ではないので、電極が折りたたまれた場合、折りたたまれた部分において活物質と集電体間に剥離が発生し、電池特性が低下することが知られている。また、繰り返しの充放電の際、活物質の容積が膨張と収縮を繰り返すことが知られており、これまで用いられているバインダーでは結着性が十分でないために、活物質と集電体間に剥離が認められる。さらに、溶剤系バインダーは、N−メチルピロリドンのごとく溶剤と当該バインダー及び活物質などと混合することにより、スラリーを調製する。ここで使用される溶剤は、環境衛生上の問題から、また、このような溶剤系バインダーを用いる場合には、電極塗工設備を防爆構造とする必要があり、さらに排ガス処理設備を必要とする。このため、近年、その使用が忌避される傾向にある。
【0006】
このような状況下、活物質同士や活物質と集電体との十分な結着性を有する水系のバインダー、当該バインダーを含有するスラリー、さらには当該スラリーを用いて成形された電池用電極が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−260782号公報
【特許文献2】特開2009−245925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、二次電池等の電池に使用することができる水系のバインダーであって、活物質同士や活物質と集電体との十分な結着性を有する水系のバインダー、当該バインダーを含有するスラリー、当該スラリーを用いて成形された電池用電極を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の重合体を含むラテックスを含有するものが一次電池、二次電池の電池用電極のバインダーとして有用であることを新規に見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、平均粒子径が0.05〜1.0μmである塩化ビニル重合体及び/又は平均粒子径が0.05〜1.0μmである塩化ビニル共重合体を含むラテックスを含有することを特徴とする電池電極用バインダー、当該電池電極用バインダー及び活物質を含有することを特徴とする電池電極用スラリー、当該スラリーを集電体上に塗布、乾燥して得られることを特徴とする電池用電極である。
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】
本発明の電池電極用バインダーは、平均粒子径が0.05〜1.0μmである塩化ビニル重合体及び/又は平均粒子径が0.05〜1.0μmである塩化ビニル共重合体を含むラテックスを含有する。平均粒子径が0.05μm未満の場合には、得られるラテックスは高粘度となり、また。平均粒子径が1.0μmを超えると活物質同士や活物質と集電体との結着性が低下するばかりでなく、平均粒子径が大きくなるとラテックス中で粒子の沈降が起こりやすくなるため、ラテックスの保存安定性が悪化する。得られるラテックスの保存安定性を維持し、かつ活物質同士や、活物質と集電体との結着性を高めるため、平均粒子径が0.05〜0.5μmが好ましく、0.05〜0.2μmがさらに好ましい。
【0012】
本発明の電池電極用バインダーに含有されるラテックスに含まれる平均粒子径が0.05〜1.0μmである塩化ビニル重合体及び/又は平均粒子径が0.05〜1.0μmである塩化ビニル共重合体は、例えば、1)塩化ビニル単量体単独、又は塩化ビニル単量体とこれと共重合可能な他のモノマー(単量体)の混合物を水性媒体中で、乳化・分散剤、必要に応じて高級アルコール、連鎖移動剤、粒子径制御剤を用い、さらに水溶性開始剤を用いて乳化重合や播種乳化重合する、2)塩化ビニル単量体単独、又は塩化ビニル単量体とこれと共重合可能な他のモノマー(単量体)の混合物を水性媒体中で、乳化・分散剤、必要に応じて高級アルコール、連鎖移動剤を用い、さらに油溶性開始剤を添加して均質化した後に微細懸濁重合や播種微細懸濁重合する、3)塩化ビニル単量体単独、又は塩化ビニル単量体とこれと共重合可能な他のモノマー(単量体)の混合物を水性媒体中で、水溶性高分子、必要に応じて連鎖移動剤、さらに油溶性開始剤を用いて懸濁重合する等により得られる。これらのうち、重合操作の簡便さ等から乳化重合が好ましい。
【0013】
本発明の電池電極用バインダーに含有されるラテックスが、平均粒子径が0.05〜1.0μmである塩化ビニル重合体及び平均粒子径が0.05〜1.0μmである塩化ビニル共重合体を含む場合のそれらの割合は特に限定するものではない。
【0014】
本発明の電池電極用バインダーに含有されるラテックスに含まれる平均粒子径が0.05〜1.0μmである塩化ビニル共重合体は、活物質同士や、活物質と集電板との結着性を高めるために、脂肪酸ビニル及び/又は(メタ)アクリル酸エステルに由来する下記一般式(1)及び/又は一般式(2)で示される構造単位を含むことが好ましい。
【0015】
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜17のアルキル基を表す。)
【0016】
【化2】

(式中、Rは炭素数1〜18のアルキル基を表し、Rは水素又はメチル基を表す。)
ここで、脂肪酸ビニルとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等の炭素数2〜18の脂肪酸のビニルエステル等を挙げることができ、好ましくは酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル等の炭素数2〜12の脂肪酸のビニルエステルであり、より好ましくは酢酸ビニルである。
【0017】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸n−ペンチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸n−ヘプチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸n−デシル、アクリル酸n−ドデシル、アクリル酸ステアリル等の炭素数1〜18のアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸n−ペンチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸n−ヘプチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸n−デシル、メタクリル酸n−ドデシル、メタクリル酸ステアリル等の炭素数1〜18のメタクリル酸エステル等を挙げることができ、好ましくはアクリル酸メチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸n−ペンチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸n−ヘプチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸n−デシル、アクリル酸n−ドデシル等の炭素数1〜12のアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸n−ペンチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸n−ヘプチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸n−デシル、メタクリル酸n−ドデシル等の炭素数1〜12のメタクリル酸エステルであり、さらに好ましくはアクリル酸メチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル等の炭素数1〜4のアクリル酸エステルである。
【0018】
塩化ビニル単量体と共重合可能なモノマーは、例えば、上記した脂肪酸ビニルや(メタ)アクリル酸エステルの他、エチレン、プロピレン、ブテン等のオレフィン類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;塩化ビニルデン等のハロゲン化ビニルデン類;アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸及びその酸無水物;スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;ジアリルフタレート、トリアリルイソシアヌレート等の架橋性モノマー等が挙げられ、単独又は2種類以上使用することができる。塩化ビニル共重合体中のこれらの共重合可能なモノマーのモノマー仕込み組成としては、特に限定するものではないが、活物質同士や活物質と集電体とのより高い結着性を得るため、さらに耐電解液膨潤性を得るために、0重量%を超えて50重量%以下が好ましく、0重量%を超えて30重量%以下がさらに好ましい。
【0019】
重合に使用する乳化・分散剤としては、特に限定するものではなく、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、水溶性高分子等が用いられる。ここで、アニオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸塩;ラウリン酸ナトリウム、半硬化牛脂脂肪酸カリウム等の脂肪酸塩;不均化ロジン酸ナトリウム等の不均化ロジン酸塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテルサルフェートナトリウム塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルサルフェートナトリウム塩等のエトキシサルフェート塩;アルカンスルホン酸塩;アルキルエーテル燐酸エステルナトリウム塩等を挙げることができる。また、ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート等のポリオキシソルビトール脂肪酸エステル類;ステアリン酸モノグリセライド、オレイン酸モノジグリセライド等のグリセリン脂肪酸エステル類;ソルビタンモノパリミテート、ソルビタントリオレート等のソルビタン脂肪酸エステル類等を挙げることができる。水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸等のアルカリ金属塩;カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース類等が挙げられる。当該乳化・分散剤の添加時期としては、特に制限はなく、重合反応前に予め所定量を添加することもできるが、塩化ビニル系樹脂粒子の成長に応じて適宜添加することが好ましい。また、当該乳化・分散剤の添加量としては、特に限定するものではないが、重合時の機械安定性を維持し、及び結着性をより高くするために、単量体100重量部に対して0.5〜5重量部が好ましい。
【0020】
乳化重合や播種乳化重合に用いる水溶性開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、過リン酸カリウム等の水溶性過硫酸化物;これらの過酸化物に、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸アンモニウム、メタ重亜硫酸カリウム、アスコルビン酸、第1鉄イオンのエチレンジアミン四酢酸ナトリウム錯塩、ピロリン酸第1鉄等の還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤;2,2−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩等の水溶性アゾ化合物等を挙げることができる。また、当該水溶性開始剤の添加時期としては、特に制限はなく、重合反応前に予め添加しておくことも、反応速度を制御するために重合反応中に連続して添加することもできる。連続して添加する際の添加量に特に制限はなく、重合缶の徐熱能力を超えない範囲で添加すればよい。
【0021】
必要に応じて使用される高級アルコールとしては、特に制限はなく、通常、炭素数8〜18の脂肪族高級アルコール等が使用され、これは単独で使用しても、異なる炭素数の脂肪族高級アルコールを混合して用いても差し支えない。
【0022】
また、必要に応じて使用される連鎖移動剤としては、得られる塩化ビニル重合体及び/又は塩化ビニル共重合体の重合度を調節できるものであればよく、例えば、トリクロロエチレン、四塩化炭素等のハロゲン系炭化水素;2−メルカプトエタノール、3−メルカプトプロピオン酸オクチル、ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類;n−ブチルアルデヒド等のアルデヒド類;アセトン等が挙げられる。
【0023】
さらに、必要に応じて使用される粒子径制御剤としては、例えば、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム等のアルカリ金属硫酸塩が挙げられる。また、当該粒子径制御剤の添加量は、効率よく塩化ビニル重合体及び/又は塩化ビニル共重合体の粒子径制御が可能となり、重合反応が安定的なものとなることから単量体の総重量に対して100〜5000ppmとすることが好ましく、100〜3000ppmとすることがさらに好ましい。当該粒子径制御剤の添加時期としては、特に制限はなく、重合反応前に予め添加しておくことも、粒子径をより高度に制御するために重合反応中に連続して添加することもできる。
【0024】
微細懸濁重合や播種微細懸濁重合や懸濁重合に用いる油溶性開始剤としては、例えば、ジラウロイルパーオキサイド、ジ−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類;t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート等のパーオキシエステル類等の有機過酸化物系開始剤、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系開始剤等を挙げることができる。
【0025】
重合可能な温度としては特に限定するものではないが、重合を制御し、適切な重合時間とするために、10〜80℃の範囲が好ましく、30〜70℃の範囲がさらに好ましい。
【0026】
重合反応の終了時期は特に限定するものではないが、活物質同士や活物質と集電体との結着性を十分なものとするため、単量体の転化率が60〜100%まで重合を進行させることが好ましく、80〜100%まで重合を進行させることがさらに好ましい。
【0027】
得られたラテックスに未反応の単量体が残存する場合には、環境安全面を良好にするために、モノマーストリップ等により単量体を除去してもよい。
【0028】
塩化ビニル重合体及び/又は塩化ビニル共重合体を含むラテックスの固形分は特に限定されるものではないが、ラテックスの粘度が高くなるのを防ぎ、スラリーを製造する際の混合を容易にし、スラリーを塗布する際の加工性を良好にするため、70重量%以下が好ましい。
【0029】
本発明の電池電極用バインダーは、平均粒子径が0.05〜1.0μmである塩化ビニル重合体及び/又は平均粒子径が0.05〜1.0μmである塩化ビニル共重合体を含むラテックス以外に、バインダーの粘度を調整するためや、貯蔵時のラテックスの凝集防止や機械的安定性又は凍結安定性等を付与するために、一般的に知られている界面活性剤、分散剤、水溶性高分子等を含有していてもよい。
【0030】
本発明の電池電極用スラリーは、本発明の電池電極用バインダー及び活物質を含有するものであり、電池用電極を形成するために用いられるものであって、マンガン乾電池や二次電池の電極を形成するために用いられる。特に好ましくは、ニッケル水素電池などの一次電池用電極や、ニッケルカドミウム二次電池、リチウムイオン二次電池などの二次電池用電極であり、さらに好ましくはリチウムイオン二次電池用電極を形成するために用いられる。
【0031】
本発明の電池電極用スラリーは、本発明の電池電極用バインダーと活物質を混合させて調製する。
【0032】
本発明の電池電極用スラリーで用いられる活物質は、一般的に知られているものならすべて使用できる。負極用活物質としては、例えば、アモルファスカーボン、黒鉛、フッ化カーボン、炭素繊維、樹脂焼成炭素、黒鉛ウィスカーなどの炭素系材料、ポリアセンなどの高分子化合物、導電性の有機化合物、リチウムと合金化が可能な珪素、錫などの金属等が挙げられる。正極用活物質としては、例えば、二酸化マンガン、三酸化モリブデン、五酸化二バナジウム、酸化鉄類などの金属酸化物、LiCoO、LiMnO、LiNiOなどのリチウムを含む複合酸化物、LiFePOなどのリチウムを含む複合金属酸化物、FeSなどの遷移金属硫化物、Cuなどの遷移金属酸化物、NiFなどの金属フッ化物、ポリアセチレンなどの高分子化合物等が挙げられる。これらの活物質は、単独又は2種以上用いることができる。
【0033】
本発明の電池電極用スラリーは、スラリーの粘度や塗布作業性を調整するため、一般的に知られている界面活性剤、分散剤、水溶性高分子等を含有していてもよい。また、本発明の電池電極用スラリーは、導電性をより高くするために、導電性付与剤を含むことが好ましい。導電性付与剤としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンブラック、グラファイトなどの導電性カーボン等を用いることができる。
【0034】
本発明の電池電極用スラリーの製造方法は一般的に知られている方法が用いられる。具体的には、電池電極用バインダーと活物質を混合して製造される。混合は、一般的に用いられる混合装置であれば特に制限はない。例えば、ボールミル、ホモジナイザー、超音波分散機、プラネタリーミキサー、ニーダー等を用いることができる。
【0035】
本発明の電池電極用スラリーを構成する電池電極用バインダーは、特に限定するものではないが、活物質同士や活物質と集電体との十分な結着性を維持し、電気を流れやすくし、電池特性を良好にするため、活物質100重量部に対して、ラテックスの固形分が、好ましくは0.1〜20重量部、さらに好ましくは0.5〜10重量部となるように添加する。
【0036】
本発明の電池用電極は、本発明の電池電極用スラリーと集電体から形成される。具体的には、本発明の電池電極用スラリーを集電体上に塗布、乾燥することにより得られる。
【0037】
本発明で用いられる集電体は、一般的に用いられるものであれば制限するものではなく、例えば、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、タンタル、金、白金などの金属材料等が用いられる。正極用ではアルミニウムが好ましく、負極用では、銅が好ましい。
【0038】
本発明によって得られる電池用電極を製造するための、上記スラリーを集電体上に塗布する方法は、一般的な方法であれば制限はない。例えば、ロールコーター、グラビヤ、エアーナイフ、コンマバー、浸漬等の方法である。乾燥方法としては、放置乾燥、送風乾燥、熱風乾燥、赤外線乾燥等の方法が用いられる。乾燥温度と時間は特に限定するものではないが、電池特性を維持するために、水分が十分揮散されることが好ましい。
【発明の効果】
【0039】
本発明により、活物質同士、及び活物質と集電体が十分に結着することができる電池電極用バインダーを得ることができる。さらに当該バインダーを含むスラリーを用いて成形された電極は、これまでの電極では困難であった高度の電池特性を有した電池への適用が可能となり、産業上、極めて広い範囲に応用できる。
【実施例】
【0040】
次に、以下の実施例にもとづき本発明をさらに詳しく説明する。但し、これらは本発明の理解を助けるための例であって本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限を受けるものではない。
【0041】
なお、これらの実施例で用いた値は以下の測定法に準拠して得られたものである。
【0042】
<原料>
本発明の実施例には以下の原料を使用した。
【0043】
(1)スチレン・ブタジエンゴム類(SBR)−水系バインダー用原料
JSR株式会社製 TRD2001
(2)ポリフッ化ビニリデン(PVDF)−溶剤系バインダー用原料
株式会社クレハ製 KFポリマーT#1100
(3)黒鉛−負極用活物質
日本黒鉛工業株式会社製 球状化黒鉛粉末 CGB−10
(4)アセチレンブラック−導電付与材
電気化学工業株式会社製 デンカブラック
(5)カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)
第一工業製薬株式会社製 セロゲン7A
(6)N−メチルピロリドン(NMP)
和光純薬工業株式会社製
(7)コバルト酸リチウム−正極用活物質
日本化学工業株式会社製 セルシードC−5H
(8)銅箔−負極集電体
日本テストパネル株式会社製 C1220P(100mm×100mm×厚み0.05mm)
(9)アルミ箔−正極集電体
東洋アルミエコープロダクツ社株式会社製 クッキングホイル(250mm×100mm×厚み0.01mm)
<塩化ビニル重合体及び/又は塩化ビニル共重合体ラテックス中の塩化ビニル重合体及び/又は塩化ビニル共重合体の平均粒子径>
平均粒子径は、マイクロトラック粒度分布測定装置(日機装株式会社製)を用い、HRAモード、及びUPAモードで測定した。
【0044】
<ラテックス中の脂肪酸ビニル等の含有量測定>
ラテックス中の脂肪酸ビニル及び/又は(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位の含有量は、当該ラテックスを40℃で48時間真空乾燥後、フーリエ変換赤外分光光度計(IRAffinity−1、島津製作所製)を用い、塩化ビニル、及び脂肪酸ビニル及び/又は(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位のもつ特性吸収波長である1430cm−1付近と、1730cm−1付近の吸光度比を測定し、脂肪酸ビニル及び/又は(メタ)アクリル酸エステル含有量を求めた。
【0045】
<スラリーの調製>
(1)電池負極用スラリー
所定量のバインダー、黒鉛、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)を、300mlポリプロピレン製ディスポカップに投入し、T.K.ホモディスパー(PRIMIX社製)を用い、回転数350〜1200rpmで5分間混練して電池負極用スラリーを調製した。
【0046】
(2)電池正極用スラリー
所定量のバインダー、コバルト酸リチウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、及びアセチレンブラックを、300mlポリプロピレン製ディスポカップに投入し、T.K.ホモディスパー(PRIMIX社製)を用い、回転数350〜1200rpmで5分間混練して電池正極用スラリーを調製した。
【0047】
<電池用電極の調製>
バーコーター(RDS75、Webster社製)を用い、スラリーを集電体上に一定の厚み(100μm)になるように塗布し、135℃で15分熱風乾燥することにより、電池用電極を調製した。
【0048】
負極活物質(黒鉛)を用いた電池負極用スラリーの場合は、負極集電体(銅箔)を用いて、電池用電極を得た。正極活物質(コバルト酸リチウム)を用いた電池正極用スラリーの場合は、正極集電体(アルミ箔)を用いて、電極を得た。
【0049】
<結着性1>
電池用電極上のスラリーが塗布・乾燥された部分を、下記の樹脂により擦った際、剥離により集電体表面が露出する回数を、剥がれ回数として測定した。
【0050】
(1)軟質樹脂(パイロット社製フリクションボールのボディ後部ラバー)
(2)硬質樹脂(パイロット社製フリクションボールのキャップ先端部樹脂)
<結着性2>
電池負極用スラリーが塗布・乾燥された負極集電体(銅箔)を180°に折り曲げ、折り曲げた部分の負極活物質(黒鉛)の欠落状態を目視評価した。
【0051】
同様にして、電池正極用スラリーが塗布・乾燥された正極集電体(アルミ箔)を180°に折り曲げ、折り曲げた部分の正極活物質(コバルト酸リチウム)、及び導電付与材(アセチレンブラック)の欠落状態を目視評価した。
【0052】
活物質、導電付与材の欠落状態の目視での判定基準は以下のとおりとした。
【0053】
(1)欠落なし(結着性が極めて優れる);◎
(2)塗布面の僅かな欠落がみられる(結着性良好);○
(3)欠落して下地の集電板が僅かに露出する;△
(4)欠落して下地の集電板が完全に露出する;×
<通電性>
負極上の塗布表面、又は正極上の塗布表面に、テスター(三和電気計器株式会社製、AP−33)のテスト棒先端を接触させ、抵抗値測定モードで通電可否を測定した。
【0054】
実施例1
2.5Lオートクレーブ中に脱イオン水666g、塩化ビニル単量体600g(100重量部)、3重量%の過硫酸カリウム水溶液5.4g(0.027重量部)、及び5重量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液59.4g(0.495重量部)を仕込み、混合物を攪拌しながら66℃に昇温して乳化重合を開始した。重合反応開始1時間後から重合反応終了までの間、5重量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液163.0g(1.358重量部)と5重量%のラウリン酸カリウム水溶液59.4g(0.495重量部)との混合液を一定注入量で連続的に添加した。重合反応圧が66℃における塩化ビニル単量体の飽和蒸気圧から0.364MPa降下した時点で重合反応を停止し、未反応塩化ビニル単量体を回収し、塩化ビニル重合体ラテックスA(電池電極用バインダー)を得た。
【0055】
得られた塩化ビニル重合体ラテックスAの平均粒子径は、0.08μm、固形分濃度は、33.5%であった。
【0056】
実施例2
2.5Lオートクレーブ中に脱イオン水666g、塩化ビニル単量体600g(100重量部)、3重量%の過硫酸カリウム水溶液5.4g(0.027重量部)、5重量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液59.4g(0.495重量部)、及び5重量%−硫酸ナトリウム水溶液6.0g(0.05重量部)を仕込み、混合物を攪拌しながら66℃に昇温して乳化重合を開始した。重合反応開始1時間後から重合反応終了までの間、5重量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液163.0g(1.358重量部)と5重量%のラウリン酸カリウム水溶液59.4g(0.495重量部)との混合液を一定注入量で連続的に添加した。重合反応圧が66℃における塩化ビニル単量体の飽和蒸気圧から0.364MPa降下した時点で重合反応を停止し、未反応塩化ビニル単量体を回収し、塩化ビニル重合体ラテックスB(電池電極用バインダー)を得た。
【0057】
得られた塩化ビニル重合体ラテックスBの平均粒子径は、0.53μm、固形分濃度は、34.0%であった。
【0058】
実施例3
2.5Lオートクレーブ中に脱イオン水666g、塩化ビニル単量体552g(92.0重量部)、酢酸ビニル48.0g(8.0重量部)、3重量%の過硫酸カリウム水溶液5.4g(0.027重量部)、及び5重量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液83.4g(0.695重量部)を仕込み、混合物を攪拌しながら66℃に昇温して乳化重合を開始した。重合反応開始後から重合反応終了までの間、5重量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液138.6g(1.155重量部)と5重量%のラウリン酸カリウム水溶液24.0g(0.20重量部)との混合液を一定注入量で連続的に添加した。重合反応圧が66℃における塩化ビニル単量体の飽和蒸気圧から0.364MPa降下した時点で重合反応を停止し、未反応塩化ビニル単量体と未反応酢酸ビニルを回収し、さらに5重量%のラウリン酸カリウム水溶液35.4g(0.295重量部)を添加、混合し、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体ラテックスC(電池電極用バインダー)を得た。
【0059】
得られた塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体ラテックスCの平均粒子径は、0.08μm、固形分濃度は、36.3%であった。また、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニル含量は6.0%であった。
【0060】
実施例4
2.5Lオートクレーブ中に脱イオン水666g、塩化ビニル単量体480g(80.0重量部)、3重量%の過硫酸カリウム水溶液5.4g(0.027重量部)、及び5重量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液59.4g(0.495重量部)を仕込み、混合物を攪拌しながら66℃に昇温して乳化重合を開始した。アクリル酸ブチル120g(20.0重量部)を、重合反応開始後から20g/hr.の注入速度で6時間かけて連続的に添加した。また、重合反応開始1時間後から重合反応終了までの間、5重量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液163.0g(1.358重量部)と5重量%のラウリン酸カリウム水溶液59.4g(0.495重量部)との混合液を一定注入量で連続的に添加した。重合反応圧が66℃における塩化ビニル単量体の飽和蒸気圧から0.364MPa降下した時点で重合反応を停止し、未反応塩化ビニル単量体と未反応アクリル酸ブチルを回収し、塩化ビニル−アクリル酸ブチル共重合体ラテックスD(電池電極用バインダー)を得た。
【0061】
得られた塩化ビニル−アクリル酸ブチル共重合体ラテックスDの平均粒子径は、0.09μm、固形分濃度は、35.5%であった。また、塩化ビニル−アクリル酸ブチル共重合体中のアクリル酸ブチル含量は12.0%であった。
【0062】
実施例5
表1に示したように、黒鉛100重量部、2重量%のCMC水溶液16.7重量部、電池電極用バインダーとしてラテックスA29.9重量部を、300mlポリプロピレン製ディスポカップに秤量し、さらに固形分濃度が40重量%となるように水129.0重量部を添加し、スパチュラで固練り後、T.K.ホモディスパー(PRIMIX社製)を用い、回転数350〜1200rpmで5分間混練して、黒鉛100重量部、電池電極用バインダー10重量部、CMC0.3重量部の組成を有する電池負極用スラリーを調製した。
【0063】
【表1】

バーコーター(RDS75、Webster社製)を用い、スラリーを集電体である50μm−銅箔上に一定の厚み(100μm)になるように塗布し、135℃で15分熱風乾燥して、電池用電極を調製した。
【0064】
得られた電極を用いて結着性と通電性の評価を行った。その結果を表1に合わせて示す。得られた電極は、良好な結着性、及び通電性を示していた。
【0065】
実施例6〜8
表1に示したように、実施例5の電池電極用バインダーの種類をラテックスB〜Dに替えた以外は、実施例5と同様にして電池負極用スラリー、さらに電池用電極を調製した。
【0066】
得られた電極を用いて結着性と通電性の評価を行った。その結果を表1に合わせて示す。得られた電極は、いずれも良好な結着性、及び通電性を示していた。
【0067】
実施例9
表1に示したように、黒鉛100重量部、2重量%のCMC水溶液16.7重量部、電池電極用バインダーとしてラテックスA14.9重量部を、300mlポリプロピレン製ディスポカップに秤量し、さらに固形分濃度が40重量%となるように水131.5重量部を添加し、スパチュラで固練り後、T.K.ホモディスパー(PRIMIX社製)を用い、回転数350〜1200rpmで5分間混練して、黒鉛100重量部、電池電極用バインダー5重量部、CMC0.3重量部の組成を有する電池負極用スラリーを調製した。
【0068】
バーコーター(RDS75、Webster社製)を用い、スラリーを集電体である50μm−銅箔上に一定の厚み(100μm)になるように塗布し、135℃で15分熱風乾燥して、電池用電極を調製した。
【0069】
得られた電極を用いて結着性と通電性の評価を行った。その結果を表1に合わせて示す。得られた電極は、バインダー使用量を減らしたにもかかわらず良好な結着性、及び通電性を示していた。
【0070】
実施例10
表1に示したように、黒鉛100重量部、2重量%のCMC水溶液16.7重量部、電池電極用バインダーとしてラテックスA6.0重量部を、300mlポリプロピレン製ディスポカップに秤量し、さらに固形分濃度が40重量%となるように水133.0重量部を添加し、スパチュラで固練り後、T.K.ホモディスパー(PRIMIX社製)を用い、回転数350〜1200rpmで5分間混練して、黒鉛100重量部、電池電極用バインダー2重量部、CMC0.3重量部の組成を有する電池負極用スラリーを調製した。
【0071】
バーコーター(RDS75、Webster社製)を用い、スラリーを集電体である50μm−銅箔上に一定の厚み(100μm)になるように塗布し、135℃で15分熱風乾燥して、電池用電極を調製した。
【0072】
得られた電極を用いて結着性と通電性の評価を行った。その結果を表1に合わせて示す。得られた電極は、バインダー使用量を減らしたにもかかわらず良好な結着性、及び通電性を示していた。
【0073】
実施例11
表1に示したように、黒鉛100重量部、2重量%のCMC水溶液16.7重量部、電池電極用バインダーとしてラテックスD5.6重量部を、300mlポリプロピレン製ディスポカップに秤量し、さらに固形分濃度が40重量%となるように水133.5重量部を添加し、スパチュラで固練り後、T.K.ホモディスパー(PRIMIX社製)を用い、回転数350〜1200rpmで5分間混練して、黒鉛100重量部、電池電極用バインダー2重量部、CMC0.3重量部の組成を有する電池負極用スラリーを調製した。
【0074】
バーコーター(RDS75、Webster社製)を用い、スラリーを集電体である50μm−銅箔上に一定の厚み(100μm)になるように塗布し、135℃で15分熱風乾燥して、電池用電極を調製した。
【0075】
得られた電極を用いて結着性と通電性の評価を行った。その結果を表1に合わせて示す。得られた電極は、バインダー使用量を減らしたにもかかわらず良好な結着性、及び通電性を示していた。
【0076】
比較例1
2.5Lオートクレーブ中に脱イオン水900g、塩化ビニル単量体800g(100重量部)、10重量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液110g(1.375重量部)、過酸化ラウロイル15g(1.875重量部)を仕込み、当該混合液をホモジナイザーにより75分間循環し、均質化処理を行った。その後、内温を45℃に昇温させて重合反応を開始した。重合反応圧が45℃における塩化ビニル単量体の飽和蒸気圧から0.2MPa降下した時点で重合反応を停止し、未反応塩化ビニル単量体を回収し、塩化ビニル重合体ラテックスを製造し、播種重合用シード粒子ラテックスを得た。
【0077】
得られた播種重合用シード粒子ラテックスの平均粒子径は、0.59μm、固形分濃度は、31.6%であった。
【0078】
次に、2.5Lオートクレーブ中に脱イオン水610g、塩化ビニル単量体730g(100重量部)、得られた播種重合用シード粒子ラテックス66.8g(2.89重量部)、5重量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液15.3g(0.105重量部)を仕込み、混合物を攪拌しながら66℃に昇温して播種微細懸濁重合を開始した。重合反応開始55分後から4.4時間かけて、5重量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液103.0g(0.705重量部)を一定注入量で連続的に添加した。重合反応圧が66℃における塩化ビニル単量体の飽和蒸気圧から0.521MPa降下した時点で重合反応を停止し、未反応塩化ビニル単量体を回収し、さらに10重量%のラウリン酸カリウム水溶液7.3g(0.10重量部)を添加、混合し、塩化ビニル重合体ラテックスE(電池電極用バインダー)を得た。
【0079】
得られた塩化ビニル重合体ラテックスEの平均粒子径は、1.50μmと大きく、固形分濃度は、42.8%であった。
【0080】
比較例2
表2に示したように、実施例5の電池電極用バインダーの種類をラテックスEを用いた以外は、実施例5と同様にして電池負極用スラリー、さらに電池用電極を調製した。
【0081】
【表2】

得られた電極を用いて結着性と通電性の評価を行った。その結果を表2に合わせて示す。得られた電極は通電性を示したが、結着性が劣っていた。
【0082】
比較例3
表2に示したように、比較例2の電池電極用バインダーの種類をSBRラテックスに替えた以外は、比較例2と同様にして電池負極用スラリー、さらに電池用電極を調製した。
【0083】
得られた電極を用いて結着性と通電性の評価を行った。その結果を表2に合わせて示す。得られた電極は通電性を示したが、結着性が劣っていた。
【0084】
比較例4
表2に示したように、黒鉛100重量部、電池電極用バインダーとして6.4重量%のPVDF−NMP溶液156.3重量部を、300mlポリプロピレン製ディスポカップに秤量し、さらに固形分濃度が40重量%となるようにNMP19.0重量部を添加し、スパチュラで固練り後、T.K.ホモディスパー(PRIMIX社製)を用い、回転数350〜1200rpmで5分間混練して、黒鉛100重量部、電池電極用バインダー10重量部の組成を有する電池負極用スラリーを調製した。
【0085】
バーコーター(RDS75、Webster社製)を用い、スラリーを集電体である50μm−銅箔上に一定の厚み(100μm)になるように塗布し、135℃で15分熱風乾燥して、電池用電極を調製した。
【0086】
得られた電極を用いて結着性と通電性の評価を行った。その結果を表2に合わせて示す。得られた電極は通電性を示したが、結着性が劣っていた。
【0087】
比較例5
表2に示したように、黒鉛100重量部、2重量%のCMC水溶液16.7重量部、電池電極用バインダーとしてSBRラテックス10.3重量部を、300mlポリプロピレン製ディスポカップに秤量し、さらに固形分濃度が40重量%となるように水136.5重量部を添加し、スパチュラで固練り後、T.K.ホモディスパー(PRIMIX社製)を用い、回転数350〜1200rpmで5分間混練して、黒鉛100重量部、電池電極用バインダー5重量部、CMC0.3重量部の組成を有する電池負極用スラリーを調製した。
【0088】
バーコーター(RDS75、Webster社製)を用い、スラリーを集電体である50μm−銅箔上に一定の厚み(100μm)になるように塗布し、135℃で15分熱風乾燥して、電池用電極を調製した。
【0089】
得られた電極を用いて結着性と通電性の評価を行った。その結果を表2に合わせて示す。得られた電極は、バインダー使用量を減らしたため、通電性は示したが結着性は劣っていた。
【0090】
実施例12
表3に示したように、コバルト酸リチウム100重量部、アセチレンブラック3.0重量部、2重量%のCMC水溶液16.7重量部、電池電極用バインダーとしてラテックスA9.0重量部を、300mlポリプロピレン製ディスポカップに秤量し、さらに固形分濃度が55重量%となるように水64.6重量部を添加し、スパチュラで固練り後、T.K.ホモディスパー(PRIMIX社製)を用い、回転数350〜1200rpmで5分間混練して、コバルト酸リチウム100重量部、アセチレンブラック3重量部、電池電極用バインダー3重量部、CMC0.3重量部の組成を有する電池正極用スラリーを調製した。
【0091】
【表3】

バーコーター(RDS75、Webster社製)を用い、スラリーを集電体である10μm−アルミ箔上に一定の厚み(100μm)になるように塗布し、135℃で15分熱風乾燥して、電池用電極を調製した。
【0092】
得られた電極を用いて結着性と通電性の評価を行った。その結果を表3に合わせて示す。得られた電極は、良好な結着性、及び通電性を示していた。
【0093】
実施例13〜15
表3に示したように、実施例12の電池電極用バインダーの種類をラテックスB〜Dに替えた以外は、実施例12と同様にして電池正極用スラリー、さらに電池用電極を調製した。
【0094】
得られた電極を用いて結着性と通電性の評価を行った。その結果を表3に合わせて示す。得られた電極は、いずれも良好な結着性、及び通電性を示していた。
【0095】
実施例16
表3に示したように、コバルト酸リチウム100重量部、アセチレンブラック3.0重量部、2重量%のCMC水溶液16.7重量部、電池電極用バインダーとしてラテックスA14.9重量部を、300mlポリプロピレン製ディスポカップに秤量し、さらに固形分濃度が55重量%となるように水62.3重量部を添加し、スパチュラで固練り後、T.K.ホモディスパー(PRIMIX社製)を用い、回転数350〜1200rpmで5分間混練して、コバルト酸リチウム100重量部、アセチレンブラック3重量部、電池電極用バインダー5重量部、CMC0.3重量部の組成を有する電池正極用スラリーを調製した。
【0096】
バーコーター(RDS75、Webster社製)を用い、スラリーを集電体である10μm−アルミ箔上に一定の厚み(100μm)になるように塗布し、135℃で15分熱風乾燥して、電池用電極を調製した。
【0097】
得られた電極を用いて結着性と通電性の評価を行った。その結果を表3に合わせて示す。得られた電極は、良好な結着性、及び通電性を示していた。
【0098】
実施例17
表3に示したように、コバルト酸リチウム100重量部、アセチレンブラック3.0重量部、2重量%のCMC水溶液16.7重量部、電池電極用バインダーとしてラテックスA4.5重量部を、300mlポリプロピレン製ディスポカップに秤量し、さらに固形分濃度が55重量%となるように水66.4重量部を添加し、スパチュラで固練り後、T.K.ホモディスパー(PRIMIX社製)を用い、回転数350〜1200rpmで5分間混練して、コバルト酸リチウム100重量部、アセチレンブラック3重量部、電池電極用バインダー1.5重量部、CMC0.3重量部の組成を有する電池正極用スラリーを調製した。
【0099】
バーコーター(RDS75、Webster社製)を用い、スラリーを集電体である10μm−アルミ箔上に一定の厚み(100μm)になるように塗布し、135℃で15分熱風乾燥して、電池用電極を調製した。
【0100】
得られた電極を用いて結着性と通電性の評価を行った。その結果を表3に合わせて示す。得られた電極は、バインダー使用量を減らしたにもかかわらず良好な結着性、及び通電性を示していた。
【0101】
実施例18
表3に示したように、コバルト酸リチウム100重量部、アセチレンブラック3.0重量部、2重量%のCMC水溶液16.7重量部、電池電極用バインダーとしてラテックスD4.2重量部を、300mlポリプロピレン製ディスポカップに秤量し、さらに固形分濃度が55重量%となるように水66.7重量部を添加し、スパチュラで固練り後、T.K.ホモディスパー(PRIMIX社製)を用い、回転数350〜1200rpmで5分間混練して、コバルト酸リチウム100重量部、アセチレンブラック3重量部、電池電極用バインダー1.5重量部、CMC0.3重量部の組成を有する電池正極用スラリーを調製した。
【0102】
バーコーター(RDS75、Webster社製)を用い、スラリーを集電体である10μm−アルミ箔上に一定の厚み(100μm)になるように塗布し、135℃で15分熱風乾燥して、電池用電極を調製した。
【0103】
得られた電極を用いて結着性と通電性の評価を行った。その結果を表3に合わせて示す。得られた電極は、バインダー使用量を減らしたにもかかわらず良好な結着性、及び通電性を示していた。
【0104】
比較例6
表4に示したように、実施例12の電池電極用バインダーの種類をラテックスEに替えた以外は、実施例12と同様にして電池正極用スラリー、さらに電池用電極を調製した。
【0105】
【表4】

得られた電極を用いて結着性と通電性の評価を行った。その結果を表4に合わせて示す。得られた電極は通電性を示したが、結着性が劣っていた。
【0106】
比較例7
表4に示したように、比較例6の電池電極用バインダーの種類をSBRラテックスに替えた以外は、比較例6と同様にして電池正極用スラリー、さらに電池用電極を調製した。
【0107】
得られた電極を用いて結着性と通電性の評価を行った。その結果を表4に合わせて示す。得られた電極は通電性を示したが、結着性が劣っていた。
【0108】
比較例8
表4に示したように、コバルト酸リチウム100重量部、アセチレンブラック3.0重量部、電池電極用バインダーとして6.4重量%のPVDF−NMP溶液46.9重量部を、300mlポリプロピレン製ディスポカップに秤量し、さらに固形分濃度が55重量%となるようにNMP42.8重量部を添加し、スパチュラで固練り後、T.K.ホモディスパー(PRIMIX社製)を用い、回転数350〜1200rpmで5分間混練して、コバルト酸リチウム100重量部、アセチレンブラック3重量部、電池電極用バインダー3重部の組成を有する電池正極用スラリーを調製した。
【0109】
バーコーター(RDS75、Webster社製)を用い、スラリーを集電体である10μm−アルミ箔上に一定の厚み(100μm)になるように塗布し、135℃で15分熱風乾燥して、電池用電極を調製した。
【0110】
得られた電極を用いて結着性と通電性の評価を行った。その結果を表4に合わせて示す。得られた電極は通電性を示したが、結着性が劣っていた。
【0111】
比較例9
表4に示したように、コバルト酸リチウム100重量部、アセチレンブラック3.0重量部、2重量%のCMC水溶液16.7重量部、電池電極用バインダーとしてSBRラテックス10.3重量部を、300mlポリプロピレン製ディスポカップに秤量し、さらに固形分濃度が55重量%となるように水66.9重量部を添加し、スパチュラで固練り後、T.K.ホモディスパー(PRIMIX社製)を用い、回転数350〜1200rpmで5分間混練して、コバルト酸リチウム100重量部、アセチレンブラック3重量部、電池電極用バインダー5重量部、CMC0.3重量部の組成を有する電池正極用スラリーを調製した。
【0112】
バーコーター(RDS75、Webster社製)を用い、スラリーを集電体である10μm−アルミ箔上に一定の厚み(100μm)になるように塗布し、135℃で15分熱風乾燥して、電池用電極を調製した。
【0113】
得られた電極を用いて結着性と通電性の評価を行った。その結果を表4に合わせて示す。得られた電極は通電性を示したが、バインダー使用量を増やしたにもかかわらず結着性は劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の電池電極用バインダー、当該バインダーを含有する電池電極用スラリーを用いた電極は、活物質同士や活物質と集電体との十分な結着性が得られ、電池特性に優れた電池を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が0.05〜1.0μmである塩化ビニル重合体及び/又は平均粒子径が0.05〜1.0μmである塩化ビニル共重合体を含むラテックスを含有することを特徴とする電池電極用バインダー。
【請求項2】
塩化ビニル共重合体が、脂肪酸ビニル及び/又は(メタ)アクリル酸エステルに由来する下記一般式(1)及び/又は一般式(2)で示される構造単位を含むことを特徴とする請求項1に記載の電池電極用バインダー。
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜17のアルキル基を表す。)
【化2】

(式中、Rは炭素数1〜18のアルキル基を表し、Rは水素又はメチル基を表す。)
【請求項3】
電池電極用バインダーが、二次電池電極用バインダーであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電池電極用バインダー。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかの項に記載の電池電極用バインダー及び活物質を含有することを特徴とする電池電極用スラリー。
【請求項5】
請求項4に記載の電池電極用スラリーを集電体上に塗布、乾燥して得られることを特徴とする電池用電極。

【公開番号】特開2013−77526(P2013−77526A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218283(P2011−218283)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】