説明

電池電車システム

【課題】遅延発生時に、電池電車への充電に時間を要するとダイヤ回復が難しく、充電を時間で制御すると必要な電力を充電せずに電池電車が発車する可能性がある。そこで、必要な電力を充電しつつ、ダイヤの遅れを可及的に防止することができる電池電車システムを提供する必要がある。
【解決手段】電池電車1は、モータ21を駆動する電池2を有し、補助電源装置9にも給電する地上の給電装置3は、補充電力量監視装置8を有し、通信装置5を介して電池電車1と交信する。発車時刻になったときに、電池の電力量を調べて通常走行の指示のほかに、電車の補助機器の使用を制限する節電モード走行を指示してダイヤの遅れを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電池電車と、電力充電装置を備えた電池電車システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力供給が無い非電化区間でも走行可能となる電池電車の開発が進められている。この電池電車は、車両に蓄電池を搭載し、車両が給電設備のある車両基地または駅に停車している間に、車両の走行や車両内機器などで消費された電力量に相当する電力量を蓄電池に対して充電するようになっている。
この電池電車の蓄電池の充電方法については、例えば特許文献1のように電池の延命に着目した方法がある。この方法では,蓄電池の充放電を繰り返すたびに劣化していくが、その劣化度合いは充放電のされ方によって変わる。そこで、効率よく充放電ができる電池の充電率(以下SOC)を含む所定の範囲で蓄電池が動作するように、蓄電池への充電量を決めて充電している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4220946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような充電方法では、電池電車の持つ蓄電池の充電率が一定量以上になるまで充電を行っていた。充電開始時の電池の充電率は一定ではないため、充電時間が一定にならない。そのため、もっとも充電に時間がかかる場合を想定してダイヤを組む必要があるが、公共輸送を担っている鉄道においては停車時の電池のSOCによらず長時間の停車を行うことは、実用的とは言いがたい。
また、遅延が発生していてダイヤ回復が必要なときに、充電に時間を要するとダイヤ回復が難しい。一方で、ダイヤ回復を優先するために、充電を時間で制御した場合、必要な電力を充電しないまま電車が発車し、運行の途中で走行不能になる可能性がある。
そこで、本発明の目的は、通常走行が可能なモードと、通常走行に必要な電力まで停止状態で充電が必要な発車禁止モードの間に、節電状態で発車が可能な節電モードを設定することにより、ダイヤの遅れを可及的に防止することができる電池電車システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の電池電車システムは、給電設備または車上の制御装置において、車上機器の使用量を最低限にすること(節電モード)で、次の給電設備まで走行可能となる電力量Aと、車上機器の使用に制限を持たせずに次の給電設備まで走行可能となる電力量Bをあらかじめ算出しておく。また、充電開始時点での電池電車の充電量から、電池電車が電力量Aを有するために補充するべき電力量A´と電力量Bを有するために補充するべき電力量B´を算出しておく。
電池電車の発車時刻になった時点で給電装置から電池電車側に補充した電力量を調べ、補充した電力量が電力量B´を超えている場合は、電池電車が通常走行をするように指示をだすようにする。また、電力Bには達していないが、電力量A´を超えている場合は、機器の使用を制限した上で走行するように指示をだすようにする。この時、車上機器用の電源として使用可能な電力も電池電車側に知らせることで、なるべく車上機器が使用できるようにする。一方で、補充した電力量が電力量Aに満たない場合は、電力量Aを超えるまで給電を続けるようにし、それまでは電池電車が発車しないようにする。
【発明の効果】
【0006】
次の給電設備まで走行可能となる必要最低限の電力量を供給できている時点で電池電車に対して発車許可を出すため、充電が原因となる更なる遅延発生の防止や、遅延発生時のダイヤ回復を早く行うことができる。また、次の給電設備に到着するまでに電池電車が運行不能になることを防ぐことも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例1と実施例2におけるシステム編成を示す図である。
【図2】実施例1と実施例2における電池電車の主回路構成を示す図である。
【図3】実施例1と実施例2における充電手段の回路構成を示す図である。
【図4】実施例1と実施例2における電池電車停止時の機器動作を示す図である。
【図5】実施例1における地上給電装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】実施例1と実施例2における電車発車時刻直前の動作分岐を示す図である。
【図7】実施例2における地上給電装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】実施例3における電車発車時刻直前の動作分岐を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【実施例1】
【0009】
図1は、本発明による電池電車システムにおける第一の実施形態を示すシステム構成である。電池電車1はインバータ20でモータ21を駆動することで走行し、インバータ20へは自車に搭載した電池2から電力を供給している。また、空調機器、照明に対して電力を供給する補助電源装置9の電力も電池2から供給する。消費した電力は給電装置3から補充される。図1では、電池電車は1両編成として示されているが、1編成あたりの車両数や構成を特定するものではない。また、電池2は車上に設置されているが、電池2は床下や屋根上に搭載してもよく、設置場所を特定するものではない。
【0010】
給電装置3は電池電車が走行する区間の中間に設置してもよいし、区間の両端に設置してもよい。また、走行区間内に設置する給電装置の数は単数でも複数でもかまわない。通信装置4、通信装置5は電池電車1と給電装置3との通信に用いられる。データ記憶装置6には路線データ、路線ダイヤグラム、日付情報、外気温、路線に用いられている車両情報、過去の充電情報、など充電電力を算出するのに必要な情報が格納されている。演算装置7は通信装置5が受信した情報または、データ記憶装置6に格納された情報、あるいはその両方を用いて電池電車1へ補充する電力量を算出する機能を持っている。また、補充電力量監視装置8は電池電車1へ供給した電力量を計測している。
【0011】
充電手段10は給電装置3の外部にある電源から、電池電車1に電力を供給する役目を担っている。充電手段10は電流制御装置11と蓄電池12で構成されている。電流制御装置11は蓄電池12の充放電電流を制御するチョッパと、電池電車1に供給する電流を制御するチョッパを有している。蓄電池12は電力供給時に外部電源の電力供給を補助する役目を担っているため、設置しなくても良い。
【0012】
電車走行中は電池電車1の通信装置4から給電装置3の通信装置5に情報13が送信される。本実施例では、情報の送信方法には線路14を伝送媒体として使用しているが、情報の送信は無線通信でもよいし、線路上の特定の場所にバリスやトランスポンダなどの中継通信機器を設置して通信を行っても良い。情報13は電池2の充電率や乗車率、前回給電してから情報送信時までの補助電源装置9の平均出力、現在、電池電車1に搭載されている全電池数である。
また、本実施例では、電池電車1が給電装置3近郊の特定の地点を通過したときに情報13を送信するとして説明を行うが、情報13の送信箇所や回数を特定するものではない。複数回情報を送信する場合、情報13には電池電車1の位置情報を含んでも良い。また、給電装置3では演算装置7が通信装置5の受信データおよびデータ記憶装置6に格納されているデータを読み出し、電池電車1への補充するべき電力量を算出する。補充するべき電力量とは、電池電車1が次の充電地点まで走行可能となるように、電池2に供給するべき電力量を指している。
【0013】
図2は電池電車1の具体的な構成を示す。図2に示した構成では、電池出力をチョッパ装置23で昇圧してから、インバータ装置20および補助電力装置9に電力を供給している。しかし、電池および各装置間の接続は必ずしもチョッパ装置23を介して行う必要はなく、電池とインバータ装置20および補助電源装置9を直接接続してもよい。また、インバータ装置20と電池はチョッパ装置23を介して接続し、補助電源装置9と電池は直接接続してもよく、逆に補助電源装置9と電池はチョッパ装置23を介して接続し、インバータ装置20と電池を直接接続してもよい。電池電車には地上側の給電装置から電力供給を受ける充電端子が存在する。
【0014】
図2ではチョッパ装置23とインバータおよび補助電源装置の間にあるが、これは電池とチョッパ装置間に接続されても良い。図2では1台のインバータ装置20にモータ21が1台接続する構成が図示されているが、本実施例における1台のインバータが制御するモータの数を限定するものではない。
【0015】
図3は給電装置3に設置されている充電手段10の詳細を示している。充電手段10に電力を供給する外部電源は単相交流電源を考えており、外部電源から供給された電力は整流装置にて直流に変換される。本実施例では整流装置を単相ダイオードブリッジ回路で構成しているが、整流装置を限定するものではなく例えばPWMコンバータを用いても良く、外部電源も単相交流に限定せず3相交流でもよく、整流装置を必要としない直流電源でもよい。整流装置は2台のチョッパ装置に接続されており、1台は充電手段10に設けられた蓄電池12と接続し、もう1台は電池電車の充電端子と接続するようになっている。蓄電池12と接続しているチョッパ装置2は双方向チョッパであり、電池電車に電力を供給しないときは蓄電池12に充電を行い、給電中は蓄電池12から放電するように制御する。もう1台のチョッパ装置1は双方向チョッパである必要はなく、外部電源の電圧に応じて昇圧動作または降圧動作を実施できるものであれば良い。
【0016】
図4は電池電車1が給電装置3の設置場所に停車し、給電装置3が電池電車1に対して電力15を補充している状態を示している。補充電力量監視装置8は電池電車1に対して供給されている電力15を常に計測し、計測結果を時間積算することで補充された電力量16を算出している。あらかじめ演算装置7で算出した値以上の電力量が電車に供給されるまで電池電車1が発車しないように指示する信号Aを、通信装置5を通じて電池電車1に送信している。信号Aを受信している間は電池電車1が走行しないように制御される。また、電力の補充完了後に信号Bまたは信号Cを送信する。信号Bまたは信号Cの送信条件と、信号の内容については後述する。電力補充時の電力の供給方法に関しては、さまざまな給電方式が考えられるが、本システムの実施においては給電方式を限定しない。
【0017】
図5に給電装置3の動作開始から、電池電車1が発車するまでのフローチャートを示している。処理101は動作の起点を表す。処理101で給電装置3にある演算装置7は記憶装置6に格納されているダイヤグラムや日付、外気温を読み出し、演算装置7内に用意されているテーブルに読み出した情報を当てはめることで、電池電車1の補助電源装置9の平均出力電力や乗車率を予測する。予測した補助電源装置9の平均出力電力や乗車率を用いて、補助電源装置9の出力電力を最低限にする節電走行を実施することで、次の給電地点までの走行を可能とする電力量31と、補助電源装置9の出力を制限しない通常走行でも次の給電地点までの走行を可能とする電力量32を算出する。
【0018】
節電走行とは、電池電車1の安全な運行に必要な機器への電力は確実に確保した上で、それ以外の機器への補助電源装置から電力供給は,電池の充電率に応じて制限して走行することを意味する。
【0019】
節電走行時における補助電源装置の最低限の出力(以下、最低出力)とは、制御装置、保安装置、前灯、運転台装置など電池電車1の安全な運行に必要な機器の電源用電力のみを供給している状態を指しており、どの機器が安全な運行に必要な機器であるかは給電装置3が判断する。
【0020】
しかし、安全な運行に必要な機器の判断は必ずしも給電装置3が行う必要はなく、電池電車1に判断するための機器を設置しても良いし、インバータまたは補助電源装置を制御する装置に判断する機能を設けても良く、機器が自動で判断するのではなく、運転手や車掌が判断しても良い。電池電車1側で安全な運行に必要な機器の判断を行う場合は、機器の名称のみを給電装置3に伝達し最低出力を算出しても良いし、電池電車1側で最低出力も算出し、算出結果を給電装置3に伝達しても良い。
【0021】
最低出力は走行路線によってあらかじめ使用する電力が予測できるため一定値としても良いが、前灯の使用は車外の明るさによってその必要度が変化するため、昼間と夜間で最低出力を変化させてもよい。また、最低出力は一定値ではなく、気温や天候などに応じて給電装置3が随時変動させても良い。さらに、車内の安全性を考えると、前灯点灯時にあわせて車内照明を点灯するようにし、車内照明用の電力も最低出力に含めても良い。
【0022】
処理102において演算装置7は、実際に電池電車1に補充する電力量を算出する。処理101で算出した電力量31・電力量32は電力補充後に電池2に充電されておくべき電力量なので、電力量31または電力量32から電池2に充電されている電力量を除くことで、電池電車1に補充する電力量33および電力量34を算出する必要がある(電力量31〜34は図示せず)。演算装置7は、記憶装置から読み出したダイヤグラムおよび日付情報と、演算装置7にテーブルから、電力供給時における電池電車1が持つ電池2の充電状態を予測する。この予測値を用いて、電力量33および電力量34を算出する。給電装置3は電力量34を確実に電池電車1に供給できるように蓄電池12にあらかじめ電力を充電しておく。
【0023】
次に、処理103で電池電車1から給電装置3に対して充電に必要な情報を送信する。充電に必要な情報とは、電車の乗車率や前回の電力補充から情報送信時までの補助電源装置の平均出力を指している。また、安全な運行に必要な機器を電池電車1側で判断する場合は、機器名称または最低出力値が情報として追加される。電池電車1からの情報を受信した通信装置5は、その情報を演算装置7へと送る。演算装置7は処理104で電力量算出に用いた予測値と電池電車1から送信された情報とを比較し、その差を基に補充する電力量33および電力量34の補正を行う。補正した電力量が補正前より多い場合は、ここで、蓄電池に充電する電力量を増やす。
【0024】
ここで、フローチャートの処理101〜104は給電装置3の充電手段10が電流制御装置11と蓄電池12で構成されている場合の動作である。しかし、電力の補充が給電装置3から電池電車1に電気的に行われる、すなわち給電装置3が電池電車1に搭載された電池2を直接充電する場合で、給電装置3に電力を供給する外部電源が十分な電力供給能力を有している場合は、充電手段10は電流制御装置11のみで構成することができるため、処理101と102を処理104に統一することが可能となる。
【0025】
処理105からは電池電車1到着後の動作となる。処理105では、電池電車1が給電装置3の設置場所に到着すると、給電装置3は電池電車1に対して電力の補充を開始する。この時、補充電力量監視装置8は電池電車1に供給している電力15を測定し、それを時間積算することで補充電力量16を算出する。給電装置3はデータ記憶装置6に路線のダイヤグラムを格納しているため、発車時刻の直前になると処理106を行い、補充電力量監視装置8は処理106実施時点での積算電力量16を補充済電力量35(図示せず)として監視装置内で記憶する。
【0026】
次に判断107では、図6に示したように補充済電力量35と処理104で演算装置7が算出した電力量33および電力量34と比較を行い、比較結果に応じて3種類の信号を出力する。この時、補充済電力量35が電力量33より少ない場合は、処理108に移動し信号Aを送信する。処理108に移動すると、補充電力量監視装置8は処理109・判断110を通じて、補充した電力量16が電力量33を超えるまで電力の補充を継続させる。補充電力量16が電力量33を超えると処理111に移動し、電力補充を止めた上で信号Cを送信する。
【0027】
信号Cは、電池電車1に節電走行を指示した上で、補充した電力量から予測される電池2の充電率、補助電源装置9の許容される平均出力を電池電車1に伝送する信号である。補充済電力量35が電力量34より多い場合は、処理112に移動し信号Bを送信する。信号Bは、電池電車1の通常走行許可と補充した電力量から予測される電池2の充電率、補助電源装置9の許容される平均出力電力を電池電車1に伝送する信号である。また、補充済電力量35が電力量33と電力量34の間に位置する場合は、処理111に移動し信号Cを送信する。
【0028】
通信手段5から信号Bまたは信号Cが送信されると処理113に移動し、電池電車1が発車する。この時、電池電車1は受信した信号が信号Bの場合は通常走行、信号Cの場合は節電走行を行う。
これにより、ダイヤの遅れを最小限にしつつ、運行中に駅間で停車することなく電池電車が走行するシステムを提供できる。
【実施例2】
【0029】
本発明における第二の実施例について説明する。システム構成は第一の実施例と同じである。
【0030】
図7は本発明の第二の実施形態を説明するフローチャートを示す。第二の実施形態において、判断107までの動作は第一の実施形態と同じであるため省略する。また、判断107以降でも、補充済電力量35が電力量34を超えている場合に、処理112に移動し信号Bを送信する動作、補充済電力量35が電力量33を下回っている場合に、電力量33を超えるまで充電を実施する動作は第一の実施例と変わらない。
【0031】
第一の実施例では判断107または判断110のあとで、節電走行を指示する信号Cを送信していたが、本実施例では、まず処理114を実行し電池電車1に電力量34まで充電できていないことを知らせた上で、補充済電力量35が電力量34に達するまで電池2を充電するかどうかの確認をする。
【0032】
電力量34まで電池2を充電するかは、運転士が判断しても良いし,電池電車の制御装置が乗車率や気温、ダイヤグラム、補充済電力量35と電力量34との差などを用いて判断しても良い。このとき、気温やダイヤグラムなどの情報は、記憶または計測する機能を電池電車1に設けても良いし、通信手段5を介して給電装置3から情報を与えても良い。また、電池電車1ではなく、運転指令が電力量34まで電池2を充電するかを判断しても良い。
【0033】
判断115では、電池電車1からの返答がYesの時は処理116へ移動し、更なる充電を行う。処理116の具体的な動作は処理109、判断110の流れと同じであり、電池への補充済電力量35が電力量34を超えるまで電力の供給を行う。補充済電力量35が電力量34以上になると充電を終了し、処理112に移動して信号Bを送信する。電池電車1からの返答がNoの時は処理111に移動し、信号Cを送信する。また、処理114の動作は、通常の停車時間中における充電時に電池電車1と通信し、あらかじめ補充済電力量35が電力量34に達しなかったときの動作について確認しておいても良い。
これは、夏場など乗車環境にある程度の快適性が求められる場合に有効である。
【実施例3】
【0034】
本発明における第三の実施例について説明する。
システム構成は第一の実施例と同じである。
第一、第二の実施例では、給電装置3が節電走行か通常走行を判断していたが、第三の実施例では電池電車1が節電走行か通常走行を判断する。給電装置3は電池電車から指示がなければ、一定量の電力を供給し続けるとし、データ記憶装置7に格納されているダイヤ情報に従い電車発車時刻直前に電力供給終了を知らせる信号を電池電車1に送信する。
【0035】
電池電車1側で節電走行か通常走行かを判断するため、判断材料は補充電力量ではなく電池2のSOCで行うとする。節電走行のみを可能とするSOCをSOC−A、通常走行を可能とするSOCをSOC−Bとする。しかし、実施例1や2と同様に補充電力量で行っても良いし、電池2の充電電力量を測定してそれを用いてもよい。
【0036】
SOC−AとSOC−Bの算出は、電池電車1が給電装置3からダイヤなどの必要な情報を受け取った上で算出しても良いし、給電装置3でSOC−AとSOC−Bに対応する電力量を算出し、算出結果を電池電車1に送信して電池電車1で電力量をSOCに変換してもよい。また、給電装置3でSOC−AとSOC−Bを算出して電池電車に送信しても良い。給電装置3から電池電車1への情報の送信は、電車到着前に行っても良いし、充電開始と同時に行っても良い。
【0037】
電池電車1は電力供給終了を知らせる信号を受信すると、電池2のSOCを測定する。この時のSOCの大きさに応じて、図8のように動作が分かれる。電池SOCがSOC−Bより高ければ電池電車は、給電装置3に受諾信号を送信し通常走行を実施する。SOC−Bは実施例1,2における電力量32に相当する。また、電池SOCがSOC−Bより低くてもSOC−Aより高い場合は、給電装置3に受諾信号を送信し節電走行を実施する。しかし、乗車環境にある程度の快適性が求められる場合など、運転手や運転指令などの判断により更なる充電を給電装置3に求めてもよい。SOC−Aは実施例1,2における電力量31に相当する。
【0038】
電池SOCがSOC−Aより低い場合は、電池SOCがSOC−AまたはSOC−Bに達するまで充電を行うように給電装置3に求める。給電装置3に更なる充電を求める場合は、必要な電力量を算出し給電装置3に送信する。給電装置は、補充電力量監視装置8で監視をしながら補充電力量が電池電車1から求められた電力量に達するまで充電を続け、終了すると終了信号を電池電車1に送信する。
【0039】
これにより、ダイヤの遅れを最小限にしつつ、運行中に駅間で停車することなく電池電車が走行するシステムを提供できる。
【符号の説明】
【0040】
1 電池電車
2 電池
3 給電装置
4,5 通信装置
6 データ記憶装置
7 演算装置
8 補充電力量監視装置
9 補助電源装置
10 充電手段
11 電流制御装置
12 充電手段に備えられた蓄電池
13 電池電車から給電装置に対して送信される情報
14 線路
15 給電装置から電池電車に補充される電力
16 電池電車に補充された電力量
17 給電装置から電池電車に対して送信される信号
20 インバータ装置
21 モータ
22 断流器
23 チョッパ装置
24 フィルタコンデンサ
31 電車の走行を節電走行に制限することで次駅まで走行可能となる電力量
32 電車の走行を節電走行に制限しなくても次駅まで走行可能となる電力量
33 電車の走行を節電走行に制限することで次駅まで走行可能となる補充電力量
34 電車の走行を節電走行に制限しなくても次駅まで走行可能となる電力量
35 電車発車予定時刻における地上給電装置から電池電車への補充済電力量
SOC−A 電車の走行を節電走行に制限することで次駅まで走行可能となる電池充電率
SOC−A 電車の走行を節電走行に制限しなくても次駅まで走行可能となる電池充電率

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータとそれを駆動するインバータとモータ以外の車上電気機器に電力を供給する補助電源装置を有し、車両で使用する電力をすべて車両に搭載した電池から供給している電池電車と、
前記電池電車が停車しているときに、電池電車に搭載した電池に対して電力を供給する地上給電装置と、
前記電池電車と前記地上給電装置との間で情報の送受信を行える通信手段を有している電池電車システムにおいて、
電車発車時刻直前における前記電池電車に搭載した電池の充電量または電池に対して前記地上給電装置が供給した電力量に応じて、前記電池電車の動作を制限することを特徴とする電池電車システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電池電車システムにおいて、
前記電池電車の動作の制限は前記地上給電装置から送信される信号によって行われ、前記地上給電装置は電車発車時刻直前における前記電池電車に搭載した電池の充電量または電池に対して前記地上給電装置が供給した電力量を測定し、測定結果に応じて前記電池電車に対して送信する信号の内容を変えることで電池電車の動作を制限することを特徴とする電池電車システム。
【請求項3】
請求項1に記載の電池電車システムにおいて、
前記電池電車の動作の制限は電池電車により行われ、電車発車時刻に前記地上給電装置が充電を終了すると、前記電池電車は充電終了時における自車に搭載した電池の充電量または電池に対して前記地上給電装置が供給した電力量を測定し、測定結果に応じて前記電池電車の動作を制限することを特徴とする電池電車システム。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の電池電車システムにおいて、
前記地上給電装置が前記電池電車に対して送信する信号は、地上給電装置が電車発車時刻直前における電池電車の電池充電量または電池への電力供給量を測定し、充電量が少ないために次の地上給電装置までの走行が不可能と地上給電装置が判断した場合に、
地上給電装置が次の地上給電装置までの走行が可能となる電力量を電池に供給するまで、前記電池電車の動作を停車状態に制限する信号であることを特徴とする電池電車システム。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の電池電車システムにおいて、
前記地上給電装置が前記電池電車に対して送信する信号は、前記地上給電装置が電車発車時刻直前における電池電車の電池充電量または電池への電力供給量を測定し、前記電池電車に搭載した前記補助電源装置の出力を制限することで次の地上給電装置までの走行が可能であると前記地上給電装置が判断した場合に、
前記電池電車の動作を補助電源装置の出力を最小限にして走行する節電走行に制限する信号であることを特徴とする電池電車システム。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載の電池電車システムにおいて、
前記電池電車の動作を制御する信号は、地上給電装置が電車発車時刻直前における電池電車の電池充電量または電池への電力供給量を測定し、補助電源装置の出力を制限することなく次の地上給電設備までの走行が可能であると地上給電装置が判断した場合に、
前記電池電車の動作に対して制限せず通常走行も可能であると伝達する信号であることを特徴とする電池電車システム。
【請求項7】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の電池電車システムにおいて、
前記地上給電装置は発車時刻になり充電を終了すると、前記電池電車に対して充電が終了したことを伝達する信号を送信し、
電池電車は充電を終了する事を通達する信号を受信すると自車に搭載した電池充電量または電池への電力供給量を測定して、充電量が少ないために次の地上給電装置までの走行が不可能と電池電車が判断した場合に、
自車の動作を停車状態に制限し、地上給電装置に対し次の地上給電装置までの走行が可能となる電力量が電池に供給されるまで充電を続けるように給電装置に要求することを特徴とする電池電車システム。
【請求項8】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の電池電車システムにおいて、
前記地上給電装置は発車時刻になり充電を終了すると、前記電池電車に対して充電が終了したことを伝達する信号を送信し、
電池電車は充電を終了する事を通達する信号を受信すると自車に搭載した電池充電量または電池への電力供給量を測定し、補助電源装置の出力を制限することで次の地上給電装置までの走行が可能であると電池電車が判断した場合に、
自車の動作を補助電源装置の出力を最小限にして走行する節電走行に制限することを特徴とする電池電車システム。
【請求項9】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の電池電車システムにおいて、
前記地上給電装置は発車時刻になり充電を終了すると、前記電池電車に対して充電が終了したことを伝達する信号を送信し、
電池電車は充電を終了する事を通達する信号を受信すると自車に搭載した電池充電量または電池への電力供給量を測定し、補助電源装置の出力を制限することなく次の地上給電設備までの走行が可能であると電池電車が判断した場合に、
自車の動作に対する制限を実施せず、通常走行をすることを特徴とする電池電車システム。
【請求項10】
請求項5乃至請求項8のいずれか一項に記載の電池電車システムにおいて、
補助電源装置の出力を最小限にするとは、補助電源装置からの電力供給を、制御装置、保安装置、前灯、運転台装置を含む車両の安全走行に欠かすことのできないものに制限することを特徴とする電池電車システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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