説明

電池

【課題】 外装ケース1の下端に取り付けた金属製のベローズ脚3を熱収縮チューブ4で覆うという簡単な構成により、海水や電解液等の漏れが生じたとしても、外装ケース1からリーク電流が流れ出るのを防ぐことができる電池を提供する。
【解決手段】 発電要素を収納した金属製の外装ケース1の下端に、この外装ケース1の内部と連通する伸縮可能なベローズを有する均圧装置2と、この均圧装置2のベローズが所定以上に伸長するのを制止する金属製のベローズ脚3とが取り付けられた電池において、このベローズ脚3の少なくとも下端部を、絶縁性の熱収縮チューブ4で覆った構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電要素を収納した金属外装ケースの下端に均圧装置と均圧装置収納枠とが取り付けられた電池に関する。
【背景技術】
【0002】
深海等の高圧の環境下で使用するために均圧装置を設けた非水電解質二次電池の従来の構成例を説明する。この非水電解質二次電池は、図2に示すように、上下に長い直方体形状の外装ケース1の内部に発電要素を収納すると共に非水電解液を充填して密閉したものである。外装ケース1は、ステンレス鋼板からなり、方形筒体1aの上下の開口端を正方形状の蓋板1bと底板1cとで塞いだものである。そして、この外装ケース1の蓋板1bからは、正負極の端子1dがそれぞれ上方に向けて突出している。
【0003】
上記外装ケース1の底板1cの下面には、均圧装置2が取り付けられている。均圧装置2は、薄いステンレス鋼板を円筒形の蛇腹状に形成して上下方向に伸縮可能となるようにしたベローズからなり、このベローズの内部が底板1cに形成された開口部を通じて外装ケース1の内部と連通している。従って、非水電解質二次電池は、外部圧力が高くなると、ベローズが収縮することにより均圧装置2の内部の容積を縮小させて外装ケース1の内部の圧力を上昇させると共に、外部圧力が低下した場合には、ベローズが伸長することにより均圧装置2の内部の容積を拡大させて外装ケース1の内部の圧力を低下させることができ、これにより外部圧力との均衡を図ることができる。
【0004】
ただし、非水電解質二次電池に上記のような均圧装置2が設けられていると、例えば過充電等により外装ケース1の内部圧力が異常に上昇した場合に、ベローズが限界まで伸びるので、この非水電解質二次電池が収納場所に収まり切らなくなって上方に飛び出すおそれがある。そこで、この非水電解質二次電池は、外装ケース1の底板1cの下面に、均圧装置2を囲むようにベローズ脚3を取り付けている。このベローズ脚3は、均圧装置2の両側方に配置された側板3a,3aと、これらの側板3a,3aの下端間に固定された底板3bとからなるステンレス鋼板製の枠体であり、側板3a,3aの上端をそれぞれ外装ケース1の底板1cに溶接により固着している。従って、外装ケース1の内部圧力が異常に上昇して均圧装置2のベローズが所定長さ以上に伸長すると、このベローズの下端がベローズ脚3の底板3bに当接して、それ以上伸長しようとするのを制止することができる。また、この非水電解質二次電池は、均圧装置2のベローズの底に、外装ケース1の内部圧力が異常に上昇した場合に高圧ガスを放出するための安全弁2aを設けているので、ベローズ脚3の底板3bにもガス抜き孔3cを形成すると共に、この底板3bをベローズ脚3の最下端よりも少し上方に位置するようにしている。このようなガス抜き孔3cが形成されていると、外装ケース1の内部圧力の異常な上昇によりベローズの下端が底板3bに当接して安全弁2aが開いた場合に、このガス抜き孔3cを通して高圧ガスを外部に円滑に放出することができる。
【0005】
上記非水電解質二次電池は、複数個を図示しない組電池ケースに収納し、組電池として深海等で使用される。この際、各非水電解質二次電池は、ベローズ脚3を下にして組電池ケースの底面上に縦置きにして並べられる。組電池ケースは、下部にゴムブラダが設けられた箱型のケースであり、内部に均圧油を充填して密閉するようになっている。従って、この組電池ケースが潜水艇等に装着されて深海に潜ると、組電池ケースのゴムブラダが水圧によって内側に撓むので、高圧の水圧が均圧油を介して各非水電解質二次電池の均圧装置2に加わることになる。
【0006】
ここで、非水電解質二次電池の外装ケース1は、ステンレス鋼板製であり内部で電解液と接触するので、この電解液の電位を有することになる。このため、組電池ケースに収納された各非水電解質二次電池は、外装ケース1間を互いに絶縁する必要がある。そこで、これらの非水電解質二次電池は、組電池ケース内の絶縁枠や絶縁材等によって互いに隔離して収納されるようにしたり、外装ケース1やベローズ脚3の表面を絶縁皮膜や絶縁板で覆うようにして絶縁を行うようにしていた(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
ところが、組電池ケースに海水が侵入したり、非水電解質二次電池から電解液が漏れ出した場合に、これらの海水や電解液は均圧油よりも比重が重いために、組電池ケースの底部に溜まることになる。このため、海水の侵入や電解液の液漏れが生じると、外装ケース1に溶接で固着されたベローズ脚3がこれらの海水や電解液に接触するので、絶縁枠や絶縁材等によって隔離されていた各非水電解質二次電池の外装ケース1間にリーク電流が流れるという問題が生じていた。また、外装ケース1の表面等を絶縁板で覆った場合にも、この絶縁板はベローズ脚3の外表面を覆うだけであるため、内側のステンレス鋼板が露出した部分が海水や電解液に接触すれば、同様に外装ケース1間にリーク電流が流れるおそれが生じる。ただし、ベローズ脚3の表面全体を絶縁塗料等の絶縁皮膜で覆った場合には、このような海水や電解液が組電池ケースの底部に溜まっても、外装ケース1間の絶縁を保つことはできる。しかしながら、非水電解質二次電池は、深海で極めて高い圧力に曝されるので、常圧と高圧の大きな圧力変化を繰り返し受ける間に絶縁皮膜が剥離するおそれがあり、しかも、このような絶縁皮膜は非水電解質二次電池が擦れるだけでも容易に傷付くので、この場合にも、外装ケース1間の確実な絶縁を保持することはできなかった。
【0008】
また、上記問題は、非水電解質二次電池以外の電池を用いた場合も同様であり、組電池として用いる場合の他、個々の電池を複数個並べて使用する場合にも同様の問題が生じる。さらに、この電池を1個だけ使用する場合にも、海水や電解液を通じて配線等や接地電位との間にリーク電流が流れるおそれがあるという問題が生じる。
【特許文献1】特開2003−51298号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、金属外装ケースの下端に取り付けた金属製の均圧装置収納枠の絶縁が困難であるために、底部に溜まった海水や電解液等によって金属外装ケースからリーク電流が流れ出るのを防ぐことができないという問題を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、発電要素を収納した金属外装ケースの下端に、この金属外装ケースの内部と連通する拡縮可能な均圧装置と、この均圧装置を収納する金属製の均圧装置収納枠とが取り付けられた電池において、この均圧装置収納枠の少なくとも下端部を、絶縁性の樹脂フィルムで覆ったことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、電池の下端部にある均圧装置収納枠が樹脂フィルムで覆われているので、海水や電解液が設置場所に溜まっても、これらの海水や電解液が均圧装置収納枠に直接接触するおそれがなくなり、電解液電位の金属外装ケースからリーク電流が流れ出すようなことがなくなる。特に複数個の電池を組電池ケースに収納して組電池として用いると、外部から浸入した海水や内部の電池から漏れ出した電解液がこの組電池ケースの底部に溜まり易くなり、しかも、複数個の電池が直列接続されていると、これらの金属外装ケース間に大きな電位差が生じるので、均圧装置収納枠を樹脂フィルムで覆うことによりリーク電流を確実に防止できるという効果が得られる。しかも、均圧装置収納枠を覆うものが樹脂フィルムであるため、大きな圧力変化を繰り返し受けても、均圧装置収納枠から剥離するようなこともなくなる。
【0012】
なお、均圧装置収納枠は、金属外装ケースの下方で均圧装置を囲むように取り付けて、発電要素を収納した金属外装ケースの重負荷を支える必要がある。しかも、この均圧装置収納枠が均圧装置の所定以上の拡大を制止するものである場合には、この均圧装置が金属外装ケース内部の高い圧力によって強い力で拡大しようとするのを確実に制止するために十分な強度も必要となる。このため、均圧装置収納枠自体を、強度の弱い樹脂等の絶縁物で構成することは困難である。
【0013】
また、上記樹脂フィルムは、熱収縮チューブであることが好ましい。このように、熱収縮チューブを用いると、均圧装置収納枠に十分径の大きい熱収縮チューブを外嵌して熱を加えるという簡単な作業で、この均圧装置収納枠の表面にほぼ密着させて覆うことができるようになり、この熱収縮チューブが均圧装置の動作を阻害したり、電池の設置の邪魔になるようなことがなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の最良の実施形態について説明する。
【0015】
本実施形態は、従来例と同様に、深海等の高圧の環境下で使用するための組電池に用いる非水電解質二次電池について説明する。この非水電解質二次電池は、図1に示すように、上下に長い直方体形状の外装ケース1の底板1cの下面に、均圧装置2とベローズ脚3を取り付けたものであり、これらの構成は図2に示した従来例の非水電解質二次電池と全く同一である。ただし、この外装ケース1は、アルミニウム合金やチタン合金等で形成することもできる。なお、この図1においても、図2に示した従来例と同様の機能を有する構成部材には同じ番号を付記する。
【0016】
本実施形態の非水電解質二次電池のベローズ脚3には、図1に示すように、熱収縮チューブ4が被せられている。即ち、このベローズ脚3は、両側板3a,3aの上端部を除く全体と底板3bの全体が熱収縮チューブ4で覆われている。ベローズ脚3は、間隔を開けて垂直に立てた両側板3a,3aの下端の間に底板3bを溶接により水平に固着することにより作製される。そして、熱収縮チューブ4は、このベローズ脚3を外装ケース1の底板1cに取り付ける前に嵌め込む。このためには、まず十分に大径の熱収縮チューブ4の筒状を横に広げて、ベローズ脚3の一方の側板3aの上端に上方から被せ、次にこの熱収縮チューブ4の先端を水平な底板3bから他方の側板3aの上端付近に至るまで嵌め込む。このとき、熱収縮チューブ4の末端は、一方の側板3aの上端付近に位置するような長さに予め切断しておく。そして、この熱収縮チューブ4を被せたベローズ脚3に熱風を吹き付ける等して熱を加えることにより、熱収縮チューブ4を熱収縮させる。すると、この熱収縮チューブ4がベローズ脚3の側板3a,3aや底板3bの表面に密着するので、ベローズ脚3の内側にはみ出して均圧装置2のベローズの上下動の障害となったり、外側にはみ出して組電池ケースに収納する際の邪魔になるようなことがなくなる。しかも、熱収縮チューブ4は、もともと筒状であり、両側板3a,3aの上端部でのみ開口するので、ベローズ脚3の下端部が海水や電解液に浸かったとしても、容易にこれらの浸入を防ぐことができるようになる。
【0017】
ただし、上記のままでは、均圧装置2の安全弁2aが開いた場合に、高圧ガスを円滑に外部に放出することができない。即ち、外装ケース1の内部圧力が異常に上昇して均圧装置2のベローズが所定以上に伸長し、このベローズの下端が熱収縮チューブ4を介して底板3bに当接することにより安全弁2aが開いても、この安全弁2aから排出された高圧ガスが熱収縮チューブ4に遮られてガス抜き孔3cを通り抜けることができないことになる。そこで、熱収縮チューブ4には、図1に示すように、底板3bのガス抜き孔3cの中央部に該当する部分に開口部4aを形成しておく。すると、安全弁2aが開いて、ここから排出された高圧ガスがこの開口部4aを通って円滑に外部に排出されるようになる。このような開口部4aは、例えば熱収縮チューブ4を熱収縮させた後に、ガス抜き孔3cを塞ぐ部分を切り抜き、この切り口の周縁部を熱圧着や接着剤等で封止することにより形成することができる。
【0018】
上記非水電解質二次電池は、まず図示しない組電池ケースの底面上にベローズ脚3を下にして縦置きに順次並べられる。次に、組電池ケースの上端開口部で各非水電解質二次電池の配線接続を行う。そして、組電池ケースの内部に均圧油を充填して蓋を被せ密閉することにより組電池が完成する。
【0019】
上記構成によれば、外部から海水が浸入したり、いずれかの非水電解質二次電池からの液漏れによって電解液が流れ出たりすることにより、これらの海水や電解液が組電池ケースの底面上に溜まった場合にも、この底面に接するベローズ脚3が熱収縮チューブ4に覆われているので、これらの海水や電解液に直接接触するようなことがなくなる。このため、非水電解質二次電池の外装ケース1からこれらの海水や電解液を通してリーク電流が流れるようなことがなくなる。
【0020】
なお、組電池ケースの底面上に大量の海水や電解液が溜まって熱収縮チューブ4で覆った部分を超えると、ベローズ脚3がこれらの海水や電解液に接触するために、非水電解質二次電池の外装ケース1間にリーク電流が流れるおそれが生じる。しかしながら、このように大量の海水や電解液が溜まった場合には、浸水センサや漏液センサ等によって容易に検知可能となるので、電池の使用を停止する等の他の対策を実施することができる。しかも、本実施形態の場合には、図1に示すように、海水や電解液がベローズ脚3に接触する前に、均圧装置2のステンレス鋼板製のベローズに接触することになるので、ベローズ脚3だけを上部まで熱収縮チューブ4で覆っても意味がない。従って、熱収縮チューブ4は、少なくともベローズ脚3の下端部のみを覆うようにしておけばよい。
【0021】
また、上記実施形態では、ベローズ脚3を熱収縮チューブ4で覆う場合を示したが、絶縁性を有する樹脂フィルムで覆えば同様の効果を得ることができる。即ち、必ずしも熱収縮樹脂を用いる必要はなく、筒状の樹脂フィルムを用いる必要もない。例えば、2枚のシート状の樹脂フィルム又は二つ折りにしたシート状の樹脂フィルムの間にベローズ脚3を挟んで、端縁部を熱溶着等により確実に封止することにより覆うこともできる。ただし、このような樹脂フィルムは、海水や電解液に対して耐食性を有するものを用いる必要がある。また、十分な耐熱性を有する樹脂フィルムを用いれば、安全弁2aから高温の高圧ガスが排出された場合にも、確実にベローズ脚3を絶縁することができ、このような高圧ガスの排出によるリーク電流の発生も防止することができるようになる。
【0022】
また、上記実施形態では、均圧装置2のベローズの底に安全弁2aを設け、ベローズ脚3の底板3bにガス抜き孔3cを形成した場合を示したが、このような安全弁2aを設けなかったり、外装ケース1等の他の場所に安全弁2aを設けた場合には、底板3bにガス抜き孔3cを形成する必要がなくなるので、このベローズ脚3を容易に樹脂フィルムで覆うことができるようになる。さらに、上記実施形態では、ベローズを伸縮させる均圧装置2を用いた場合を示したが、伸縮を含む容積の拡大縮小(拡縮)により外装ケース1の内部圧力を調整可能にするものであれば、どのような構造の均圧装置を用いていてもよい。
【0023】
また、上記実施形態では、側板3a,3aと底板3bからなるベローズ脚3を用いる場合を示したが、均圧装置の伸長を含む拡大を制止したり、その他、保護等のために、この均圧装置を収納するように構成された金属製の均圧装置収納枠であれば、どのような構造のものを用いてもよい。
【0024】
また、上記実施形態では、複数個の非水電解質二次電池を組み合わせて組電池として用いる場合を示したが、個々の非水電解質二次電池を別個に又は1個の非水電解質二次電池だけを単独で用いる場合にも同様に実施可能である。しかも、均圧装置を用いたものであれば、油漬型のものである必要もない。さらに、上記実施形態では、非水電解質二次電池について説明したが、この電池の種類も限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0025】
金属外装ケースの下端に取り付けた金属製の均圧装置収納枠を樹脂フィルムで覆うという簡単な構成により、海水や電解液等の漏れが生じたとしても、金属外装ケースからリーク電流が流れ出るのを確実に防ぐことができるという顕著な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態を示すものであって、非水電解質二次電池の上下方向の中央部を省略した仰瞰斜視図である。
【図2】従来例を示すものであって、非水電解質二次電池の上下方向の中央部を省略した仰瞰斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
1 外装ケース
2 均圧装置
3 ベローズ脚
4 熱収縮チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電要素を収納した金属外装ケースの下端に、この金属外装ケースの内部と連通する拡縮可能な均圧装置と、この均圧装置を収納する金属製の均圧装置収納枠とが取り付けられた電池において、この均圧装置収納枠の少なくとも下端部を、絶縁性の樹脂フィルムで覆ったことを特徴とする電池。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−18753(P2007−18753A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−196216(P2005−196216)
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【出願人】(304021440)株式会社ジーエス・ユアサコーポレーション (461)
【Fターム(参考)】