説明

電池

【課題】集電基材1の帯状側縁部の端辺1dを傾斜辺による波形状に形成することにより、合材未塗工部1aの境界付近に皺が発生したり電極4、5に反りが生じるのを防止すると共に、集電基材1が破断したり巻回したエレメント3の外径がいびつになる等の不都合を防止することができる電池を提供する。
【解決手段】帯状の金属箔からなる集電基材1に活物質合材2を塗工した電極4、5を巻回したエレメント3を備えた電池において、少なくとも正負いずれかの電極4、5の集電基材1における活物質合材2が未塗工となる端辺1dが、帯状の長手方向に対して傾斜した曲線状又は直線状の傾斜辺による波形状に形成された構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状の金属箔からなる集電基材における帯状側縁部を除いた表面に活物質合材を塗工した電極を巻回したエレメントを備えた電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
非水電解質二次電池の巻回型のエレメントに用いられる電極は、図4に示すように、帯状の金属箔からなる集電基材1における左右の帯状側縁部を除いた表面に活物質合材2を塗工し、この活物質合材2が未塗工となる集電基材1の帯状側縁部、即ち合材未塗工部1aを、リード等を介して電池の端子に接続することが多い。なお、この図4及び次ぎに示す図5では、図面を分かりやすくするために、集電基材1と活物質合材2の厚さだけを尺度を拡大して示している。
【0003】
しかしながら、集電基材1に合材未塗工部1aを設けると、活物質合材2の塗工後のプレス工程において、集電基材1における活物質合材2が塗工された部分の金属箔だけがプレスによって延伸されて(ロールプレスの場合には、このロールプレスの進行方向となる前後方向に特に延伸される)、合材未塗工部1aの金属箔にはこのような延伸が生じないので、この集電基材1における合材未塗工部1aの境界付近に皺1bが発生したり、帯状の電極全体に矢印A〜Dに示すような反りが発生する。そして、このような皺1bや反りが発生すると、エレメントの巻回の際に、電極が正しく巻かれずに巻きムラが生じるおそれがある。
【0004】
そこで、従来は、図5に示すように、集電基材1の合材未塗工部1aに左右の端辺から内側に向けて切り込まれたスリット1cを多数形成することにより、集電基材1における活物質合材2が塗工された部分の金属箔が延伸された分を、この合材未塗工部1aのスリット1cが隙間を広げることで吸収させて、皺1bや反りの発生を防止するようにしているものがあった(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【0005】
ところが、集電基材1の帯状側縁部に左右方向のスリット1cを形成すると、エレメントの巻回工程において、この集電基材1に前後の長手方向のテンションを加えたときに、スリット1cを起点として左右方向の破断が発生しやすくなるという問題があった。また、集電基材1の帯状側縁部である合材未塗工部1aの金属箔がスリット1cによって分断されて多数の短冊片状となるので、電極をエレメントに巻回したときに、隣接する短冊片状の金属箔の縁がスリット1c付近で重なり合って、エレメントの外径がいびつになるという問題もあった。さらに、この短冊片状の金属箔がねじれたり折れ曲がりやすくなり、千切れるおそれも生じるので、一方の極性の電極の短冊片状の金属箔が他方の極性の電極に接触してソフトショートが発生したり、この短冊片状の金属箔からリード等を介して電池の端子に接続することが困難になるという問題もあった。
【特許文献1】特開平11−354103号公報
【特許文献2】特開2000−12002号公報
【特許文献3】特開2000−208129号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、集電基材の帯状側縁部の端辺を傾斜辺による波形状に形成することにより、合材未塗工部の境界付近に皺が発生したり電極に反りが生じるのを防止すると共に、集電基材が破断したり巻回したエレメントの外径がいびつになる等の不都合を防止することができる電池を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、帯状の金属箔からなる集電基材に活物質合材を塗工した電極を巻回したエレメントを備えた電池において、少なくとも正負いずれかの電極の集電基材における活物質合材が未塗工となる端辺が、帯状の長手方向に対して傾斜した曲線状又は直線状の傾斜辺による波形状に形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、集電基材の帯状側縁部の端辺が傾斜辺による波形状に形成されるので、活物質合材の塗工後のプレス工程において、この集電基材における活物質合材が塗工された部分の金属箔だけが延伸されても、活物質合材が未塗工となる帯状側縁部の金属箔との伸びの差が端辺の波形状の凹部によって緩和され、この集電基材における合材未塗工部の境界付近に皺が発生したり電極に反りが生じるのを防止することができる。しかも、集電基材の帯状側縁部の端辺が帯状の長手方向に対して傾斜した傾斜辺による波形状により凹部と凸部が繰り返した形状となっているので、スリットが形成された場合のように、集電基材が破断したり巻回したエレメントの外径がいびつになる等の不都合も防止することができる。
【0009】
なお、帯状の長手方向に対して傾斜した曲線状又は直線状の傾斜辺による波形状とは、曲線状又は直線状の傾斜角度が帯状の長手方向に対して−90°を超え+90°未満の角度範囲(好ましくは、絶対値が22.5°以上45°以下となる角度範囲)で、0°を跨いで正負交互に連続的に又は段階的に変化することにより、凸部と凹部を繰り返す形状をいう。曲線状の傾斜辺による波形状としては、例えば正弦波形状があり、この傾斜辺の傾斜角度は、0°を通過しながら正負の適宜角度まで交互に連続的に変化することにより凸部と凹部を繰り返すことになる。また、直線状の傾斜辺による波形状としては、例えば二等辺三角形の三角波形状があり、この傾斜辺の傾斜角度は、0°を飛び越えて正負の絶対値の等しい2つの角度に交互に変化することにより凸部と凹部を繰り返すことになる。
【0010】
ただし、直角三角形の三角波形状やパルス状の矩形波形状は、帯状の長手方向に対して±90°の角度で直交する端辺が存在するので、上記傾斜辺による波形状とはならない。このように長手方向と直交する端辺が存在する場合には、スリットが形成された場合と同様に、この端辺の凹部側の端を起点として集電基材が破断したり折れ曲がるおそれが生じるからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の最良の実施形態について図1〜図3を参照して説明する。なお、これらの図においても、図4〜図5に示した従来例と同様の機能を有する構成部材には同じ番号を付記する。また、図2及び図3では、図面を分かりやすくするために、集電基材1と活物質合材2の厚さだけを尺度を拡大して示している。
【0012】
本実施形態は、図1に示すような長円筒形巻回型のエレメント3を備えた非水電解質二次電池について説明する。このエレメント3は、帯状の正極4と負極5をセパレータ6を介して長円筒形に巻回したものである。
【0013】
正極4と負極5(電極4、5)は、図2に示すように、集電基材1の表面に活物質合材2を塗工したものである。集電基材1は、前後に長尺な帯状の金属箔であり、正極4の場合はアルミニウム箔が用いられ、負極5の場合は銅箔が用いられる。活物質合材2は、正極4の場合はリチウムコバルト複合酸化物等の正極活物質にバインダ等を混合したものであり、負極5の場合はグラファイト等の負極材料にバインダ等を混合したものである。
【0014】
上記電極4、5の作製過程を説明する。前後に長尺な集電基材1の表面には、左右の帯状側縁部を除いた部分、即ち左右の中央の大部分に前後にわたって活物質合材2が塗工される。従って、この集電基材1の左右の帯状側縁部は、活物質合材2が未塗工となる合材未塗工部1a、1aとなる。
【0015】
上記集電基材1は、左右の帯状側縁部の端辺1d、1dが波形状に形成されている。即ち、各端辺1dは、左右の外側に張り出した凸部と、左右の内側に引き込んだ凹部の繰り返し形状に形成されている。なお、この端辺1dの凹部は、活物質合材2の塗工部に達しない程度、即ち合材未塗工部1aの左右の幅の範囲内で内側に引き込んでいればよく、最も引き込んだ部分でも活物質合材2の塗工部に達するまで十分な距離があることが好ましい。従って、これら凸部と凹部の左右の最大の波高幅は、合材未塗工部1aの左右の最大幅よりも狭く、この合材未塗工部1aの左右の最大幅の1/3〜1/5程度であることが好ましい。
【0016】
上記端辺1dの波形状は、図2では規則的に曲線の傾斜角度が滑らかに連続して変化した正弦波形状となっているが、必ずこの形状に限定されるものではなく、例えば図3に示すように、規則的に傾斜角度の異なる直線が連続して繋がった二等辺三角形の三角波形状であってもよい。また、必ずしも規則的な繰り返しでなくてもよく、例えば図1に示したようにエレメント3に巻回されたときの内周側に配置される部分と外周側に配置される部分とで、凸部と凹部の繰り返しのピッチが異なるようになっていたり、ある程度不規則な凸部の形状や凹部の形状が繰り返されるようになっていてもよい。
【0017】
ただし、上記端辺1dは、帯状の長手方向に対して傾斜した曲線状又は直線状の傾斜辺による波形状に形成されるので、曲線状又は直線状の傾斜角度が帯状の長手方向に対して直交することなく斜めに交差する、即ち−90°を超え+90°未満の角度範囲(好ましくは、絶対値が22.5°以上45°以下となる角度範囲)で交差するものでなければならない(次に述べるように傾斜角度は変化するので、0°に固定されることはない)。しかも、波形状であることから、この曲線状又は直線状の傾斜角度は、0°を跨いで正負交互に連続的に又は段階的に変化することにより、凸部と凹部を繰り返すことになる。曲線状の傾斜辺による波形状としては、例えば図2に示すような正弦波形状があり、この傾斜辺の傾斜角度は、0°を通過しながら約−40°から約+40°までの角度範囲で交互に連続的に変化することにより凸部と凹部を繰り返すことになる。また、直線状の傾斜辺による波形状としては、例えば図3に示すような二等辺三角形の三角波形状があり、この傾斜辺の傾斜角度は、0°を飛び越えて約−28°と約+28°の2つの角度に交互に変化することにより凸部と凹部を繰り返すことになる。
【0018】
上記集電基材1の表面に活物質合材2が塗工されると、長手方向である前方又は後方に搬送されて図示しないロールプレスの間を通ることによりプレスされる。ただし、このプレス工程では、集電基材1の表面に塗工されて盛り上がった活物質合材2の塗工部分だけがプレスされるので、集電基材1の左右両側の合材未塗工部1a、1aはプレスされない。このため、集電基材1の金属箔は、従来と同様に、活物質合材2の塗工部分では、特にロールプレスの進行方向である前後方向に延伸されるが、その左右両側の合材未塗工部1a、1aは延伸されないことになる。
【0019】
しかしながら、本実施形態の集電基材1の合材未塗工部1a、1aは、端辺1d、1dが凸部と凹部の繰り返しとなる波形状となっているので、凹部の左右の幅が凸部よりも狭くなり、この凹部の金属箔の方が前後に引き伸ばされやすくなる。従って、集電基材1における活物質合材2の塗工部分の金属箔のみがプレス工程によって前後に延伸されることになっても、その左右両側の合材未塗工部1a、1aも、繰り返し形成される凹部の金属箔がそれぞれ引き伸ばされることによって、皺や反りが発生するのを防止することができる。なお、これらの合材未塗工部1a、1aは、凸部の左右の幅が十分に広いので、この部分でリード等を介して容易に電池の端子に接続することができる。
【0020】
プレス工程を完了した集電基材1は、活物質合材2と共に、左右の中央で2分割されて電極4、5となる。従って、本実施形態の電極4、5は、図1に示すように、一方の帯状側縁部のみが合材未塗工部1aとなり、この合材未塗工部1aの端辺1dのみが凸部と凹部の繰り返しによる波形状に形成される。そして、この図1では、正極4は、合材未塗工部1aを上向きにして少し上にずらし、負極5は、合材未塗工部1aを下向きにして少し下にずらして巻回することにより、エレメント3の上端面には、正極4の合材未塗工部1aが突出し、このエレメント3の下端面には、負極5の合材未塗工部1aが突出するようにしている。
【0021】
上記のようにして巻回されたエレメント3は、図示しない電池容器に収納され、非水電解液が充填されて非水電解質二次電池となる。また、エレメント3の上下の端面から突出した電極4、5の各合材未塗工部1aは、リード等を介して、非水電解質二次電池の端子に接続される。
【0022】
上記構成によれば、集電基材1に皺が発生したり電極4、5に反りが生じるのを防止できる。しかも、この集電基材1の合材未塗工部1aの端辺1dに傾斜辺による波形状が形成されているだけなので、エレメント3の巻回のために電極4、5に前後方向のテンションを加えても、帯状の長手方向に対してこの端辺1dが直交することとなるスリットが形成された場合のように集電基材1が破断するようなおそれがなくなる。また、電極4、5を巻回しても、集電基材1の合材未塗工部1aの金属箔が重なり合ったり、ねじれや折れ曲がり等が生じることがないので、エレメント3の外径がいびつになるようなことがなくソフトショートの発生も防止することができる。さらに、電極4、5の合材未塗工部1aは、波形状の凸部の幅が十分に広いので、リード等を介して容易に電池の端子に接続することができる。
【0023】
なお、上記実施形態では、電極4、5の集電基材1における左右いずれか片側の帯状側縁部のみを合材未塗工部1aとして、その端辺1dを凸部と凹部が繰り返す波形状に形成した場合を示したが、左右両側の帯状側縁部を合材未塗工部1a、1aとして、これらの端辺1d、1dをそれぞれ凸部と凹部が繰り返す波形状に形成してもよい。即ち、図2や図3に示した集電基材1を左右に2分割することなくそのまま電極4、5として用いてもよい。
【0024】
また、上記実施形態では、集電基材1の片側の表面(図2や図3では上表面)にのみ活物質合材2を塗工したが、集電基材1の両側の表面に活物質合材2を塗工してもよい。さらに、上記実施形態では、正極4と負極5の双方の集電基材1の合材未塗工部1aの端辺1dを凸部と凹部が繰り返す波形状に形成した場合を示したが、正極4と負極5のいずれか一方だけであってもよい。即ち、正極4と負極5のいずれか一方のみに皺や反りが発生しやすい場合には、この正極4又は負極5の集電基材1の合材未塗工部1aの端辺1dだけを凸部と凹部が繰り返す波形状にしてもよい。
【0025】
また、上記実施形態では、長円筒形巻回型のエレメント3を備えた非水電解質二次電池について説明したが、巻回型のエレメントを備えた電池であれば、エレメントの巻回形状や電池の種類は任意であり、実施形態で示したものには限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態を示すものであって、巻回途上のエレメントを示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態を示すものであって、エレメントに巻回する前の帯状の電極であって、端辺の波形状が正弦波形状であるものの一部を示す部分拡大斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態を示すものであって、エレメントに巻回する前の帯状の電極であって、端辺の波形状が二等辺三角形の三角波形状であるものの一部を示す部分拡大斜視図である。
【図4】従来例を示すものであって、エレメントに巻回する前の帯状の電極の一部を示す部分拡大斜視図である。
【図5】従来例を示すものであって、エレメントに巻回する前の帯状の電極であって、合材未塗工部にスリットを形成したものの一部を示す部分拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
1 集電基材
1a 合材未塗工部
1b 皺
1c スリット
1d 端辺
2 活物質合材
3 エレメント
4 正極
5 負極
6 セパレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の金属箔からなる集電基材に活物質合材を塗工した電極を巻回したエレメントを備えた電池において、
少なくとも正負いずれかの電極の集電基材における活物質合材が未塗工となる端辺が、帯状の長手方向に対して傾斜した曲線状又は直線状の傾斜辺による波形状に形成されたことを特徴とする電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−123848(P2008−123848A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−306656(P2006−306656)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【出願人】(304021440)株式会社ジーエス・ユアサコーポレーション (461)
【Fターム(参考)】