説明

電池

【課題】各単電池の電池性能のばらつきを抑制することにより、利便性を向上させた複数の単電池から構成される電池を提供する。
【解決手段】電池は、発電要素がそれぞれ独立した収容部12に収容されてなる。電池には、収容部12は発電要素との間で吸収及び放出されるガスが漏出する材料からなるとともに、収容部12にはそれぞれガスが漏出する量を調整する調整手段としてのバリア層21が設けられており、収容部12の各バリア層21は、それら収容部12相互間でのガスの漏出量の差を少なくする態様で調整されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉型二次電池からなる電池に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、密閉型二次電池からなる電池モジュールでは、発電要素が収容されている収容部に安全弁が設けられている。これは、発電要素から発生したガスにより収容部の内部圧力が異常に上昇した場合、安全弁を開弁させることによってこの上昇した内部圧力を低下させ、収容部の過大な変形や、変形による破壊等を防ぐためである。例えば、特許文献1には、このようなガス放出用の安全弁を有する電池モジュールの一例が記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の電池モジュールは、図8に示すように、複数の単電池が直列接続されて構成される電池であって、直列接続された発電要素を角形ケース(角形電槽)11に収容しているとともに、角形ケース11の両短側面11bに設けられた電極10P,10Nを通じて電力の入出力が行われる。角形ケース11の内部には発電要素を収容する6個の独立した収容部(電槽)12が連設配置されているとともに、各収容部12には収容部の内部と外部とを連通させる連通孔14を所定の内部圧力以下で封止する安全弁15がそれぞれ設けられている。このように、独立した各収容部12それぞれに安全弁15を設けることにより、独立している収容部12のそれぞれにおいて内部圧力の異常上昇を各別に防止できるようになっている。
【0004】
また、安全弁15の数を減らすなどの目的により、複数の収容部12を連通させたとすると、発電要素から発生したガスが収容部12間を移動するようになり、このようなガスの移動が発電要素の反応に用いられるガスを偏在させるようになる。そして、このようなガスの偏在が、各単電池の電池性能にばらつきを生じさせるとともに、電池モジュールの性能を劣化させるようになることが知られている。この点、上記特許文献1に記載のように各収容部12を独立させた電池モジュールであれば、発電要素から発生したガスの各収容部12間での移動を防ぎ、ひいてはこうしたガスの移動に起因する電池モジュールの性能劣化を抑制することができるようにもなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−178909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで近年、独立した収容部に発電要素を収容した単電池であっても、各単電池からのガスの発生量が異なることにより各単電池の性能にばらつきを生じる場合もあることが分かってきた。そして、それら単電池の性能のばらつきが、結果として電池モジュールの性能を劣化させるなど、電池モジュールとしての利便性を低下させることにもなっている。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、各単電池の電池性能のばらつきを抑制することにより、利便性を向上させた複数の単電池から構成される電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、発電要素がそれぞれ独立した収容部に収容されてなる電池であって、前記収容部は前記発電要素との間で吸収及び放出されるガスが漏出する材料からなるとともに、前記収容部にはそれぞれ前記ガスが漏出する量を調整する調整手段が設けられており、前記収容部の各調整手段は、それら収容部相互間でのガスの漏出量の差を少なくする態様で調整されていることを要旨とする。
【0009】
従来、電池の劣化を避けるため、収容部のそれぞれについて各別にガスの漏出量を少なくし、それぞれのガスの残量が多くなるようにはしていたものの、各収容部のガス残量をできるだけ揃えるようには調整していなかった。しかし、このような構成によれば、独立した収容部にそれぞれ設けられた発電要素のガスの漏出量、換言すれば収容部におけるガスの残存量を、収容部間でばらつきを小さくすることができる。例えば、ガスの漏出量の少ない収容部の漏出量を、漏出量の差を小さくする調整を行わなかった場合に最も漏出量が多くなる収容部の漏出量に合わせるようにする、すなわち敢えて、多くすることで各収容部のガスの残量を揃えることができるようにもなる。充放電に伴う反応などにより発電要素との間で吸排されるガスであれば、その残存量は電池性能に影響を及ぼすため、各収容部におけるガスの残存量の差を小さくすることにより各発電要素間の電池性能の相違も小さくなるようにすることができる。
【0010】
このように各発電要素の電池性能のばらつきを小さくすることで、電池としての電池性能が安定化されるようにもなり、電池としての利便性が向上するようになる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電池において、当該電池がニッケル水素電池からなる電池であり、前記発電要素との間で吸収及び放出されるガスが水素であることを要旨とする。
【0012】
ニッケル水素電池は充放電に伴い水素や酸素が発生する。そしてニッケル水素電池は、水素の漏出により放電リザーブ量が減少して電池性能が劣化する。しかしながら、このような構成によれば、各収容部からのガスの漏出量が調整されて各収容部の水素の残存量の差が小さくなる。これにより、ニッケル水素電池を構成する各発電要素の電池性能のばらつきが小さくなり、電池としての利便性の向上が図られるようになる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の電池において、前記収容部のそれぞれの発電要素が電気的に直列に接続されていることを要旨とする。
【0014】
直列接続される発電要素からなる電池の電池性能は、電池性能の最も低下した発電要素の電池性能に影響される、すなわち最も低下した電池性能に基づいて電池性能が定まる。さらに、直列接続された発電要素は、電池性能が低下した発電要素に最も負荷がかかることなどから該発電要素の電池性能の劣化がより早く進行する傾向にもある。このようなことから、電池としての電池性能を好適に維持するためには、それぞれの発電要素の電池性能がばらつかないことが求められる。
【0015】
そこで、このような構成によれば、収容部からのガス漏出量を調整して各発電要素の電池性能のばらつきを抑制することができるようになる。これにより、直列接続される発電要素において、特に電池性能の劣化した発電要素の発生が抑制されるようになるとともに、各発電要素への負荷分担のばらつきが小さくされ、特に劣化の進行の早い発電要素の発生も抑制されるようになる。これにより電池の電池性能が好適に維持されるようになる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電池において、前記収容部が樹脂材料からなることを要旨とする。
【0017】
樹脂材料は成型や加工が容易なことから収容部を構成することに好適である反面、収容部内のガスを透過させ易い。そして、各単電池の樹脂材料が外部と接する面積の差により、各単電池間でガスの漏出量に差が生じる。そこでこの構成によるように、ガス漏出量を調整して電池性能を好適に維持させるようにすることで、樹脂材料からなる収容部であれ電池の収容部として好適に用いることができるようになる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電池において、前記調整手段は、前記収容部の表面に貼り付けられて前記ガスの透過を阻止するバリア層であり、前記収容部のガス漏出量が、前記バリア層により覆われる前記収容部の表面の面積によって調整されることを要旨とする。
【0019】
このような構成によれば、収容部のガス透過度よりも低いガス透過度のバリア層を採用することにより収容部からのガス漏出量を調整することができる。また、収容部表面に貼り付けるバリア層により覆われる収容部表面の面積によりガス漏出量を調整することができるため、その調整が容易にもなる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の電池において、前記バリア層は金属層を含むことを要旨とする。
【0021】
このような構成によれば、バリア性能が高く、安定的なバリア層を電池に設けることができる。
【0022】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の電池において、前記金属層がアルミニウムからなることを要旨とする。
【0023】
このような構成によれば、例えば、薄くて軽く、接着や蒸着等による貼り付けや、加工などが行いやすいアルミニウムをバリア層に用いることで、収容部に比較的容易にバリア層を設けることができる。
【0024】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の電池において、前記収容部にはその内部と外部とを連通させる連通孔を封止する封止部材を備える安全弁が各別に設けられており、前記各調整手段による収容部のガスの漏出量の調整には、前記安全弁を構成する封止部材のガス透過度に応じた調整が含まれることを要旨とする。
【0025】
このような構成によれば、独立した収容部に各別に設けられる安全弁にて各収容部のガス漏出量を調整するようにするため、収容部内のガスの残存容量の調整が比較的容易に行えるようになる。これにより、電池の性能維持を容易に行うことができるようになる。
【0026】
例えば、ゴム状の弾性部材を封止部材として用いるようにすることにより、安全弁としての好適な性能を維持しつつガスの漏出量の調整も好適に行うことができるようにもなる。
【0027】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の電池において、前記ガス透過度の調整が前記封止部材の材料選択として行われることを要旨とする。
【0028】
このような構成によれば、ガス漏出量を封止部材の材料のガス透過度の選択により調整するため、安全弁の封止圧力などに影響を及ぼすことなくガス漏出量を調整できるようになる。これにより、安全弁の機能を含めて電池としても電池性能が好適に維持される。
【発明の効果】
【0029】
本発明にかかる電池によれば、各単電池の電池性能のばらつきが抑制されるようになるため、複数の単電池から構成される電池の利便性が向上されるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の電池を具体化した電池モジュールの第1の実施形態について、その正面構造を示す正面図。
【図2】同実施形態の電池モジュールにバリア層を設けた場合の水素透過量と、バリア層を設けない場合の水素透過量とをそれぞれ模式的に示すグラフ。
【図3】同実施形態の電池モジュールに調整されたバリア層を設けない場合における各収容部内の水素残量の一例を示すグラフ。
【図4】同実施形態の電池モジュールに調整されたバリア層を設けた場合における各収容部の水素残量の一例を示すグラフ。
【図5】本発明の電池を具体化した電池モジュールの第2の実施形態について、その正面構造を示す正面図。
【図6】同実施形態の電池モジュールに用いられる各安全弁のゴム弁の水素透過量の相違についてその一例を示すグラフ。
【図7】本発明の電池を具体化したその他の電池モジュールについて示す図であって、(a)は上面構造を示す上面図、(b)は正面構造を示す正面図。
【図8】従来の電池モジュールの正面構造を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる電池の第1の実施形態について、図1を参照して説明する。
【0032】
本実施形態の電池は、所要の電力容量を得るべく電気的に直列接続された複数の単電池、具体的には6個の単電池を角形ケース11に有し構成された電池モジュールである。図1に示すように、直方体状の角形ケース11には、長方形状の広い表面積からなる2つの長側面11aと、長側面11aの短辺にそれぞれ接続される2つの短側面11bと、長側面11aの一方の長辺に接続される上面11cと、長側面11aの他方の長辺に接続される底面11dとが設けられている。なお、図1においては、正面側の長側面11aが図示される一方、裏面側の長側面11aは図示されていない。
【0033】
電池モジュールを構成する角形ケース11には、角形ケース11内が隔壁で仕切られることにより、6個の個別の直方体状からなる収容部12(121〜126)が形成されている。そして各単電池が、各収容部12と、それら収容部12にそれぞれ収容されている発電要素(図示略)とから構成されている。このことから電池モジュールは、長側面11aが各単電池の最も表面積の広い面(長側面)の配列により構成されるとともに、各単電池の長側面を縦に見てその側面にあたる短側面同士を互いに対向配列させた構造となっている。
【0034】
本実施形態では、各単電池はニッケル水素蓄電池からなる。すなわち電池モジュールは、ニッケル水素蓄電池としての単電池が複数連結されて構成されている。これら単電池は、各収容部12内に発電要素として、正極板と負極板とがセパレータを介して積層された極板群と、その両側に接合された集電板と、電解液とを収容してなる。なお、上記角形ケース11の長側面11aの表面には、隣り合う電池モジュール間に隙間を生じさせ、その隙間に空気などの冷却媒体を通すことで電池使用時の放熱性を高めるべく多数の凹凸が形成されているが、図1では便宜上、その図示を割愛している。
【0035】
各収容部12に収容されている発電要素は、隣接する収容部12に収容されている発電要素に電気的に直列接続されている。また、電池モジュールの両端の収容部12に収容され、他の発電要素に接続されない集電板の端子は、角形ケース11の短側面11b上方に設けられた正極側の電極10P又は負極側の電極10Nに接続されている。これによって、各収容部12に収容されて電気的に直列接続された複数の発電要素、すなわち複数の単電池の総出力が正極側の電極10Pと負極側の電極10Nとから取り出される。
【0036】
電池モジュールには、内部圧力により角形ケース11が変形することを防ぐため、複数の安全弁15が設けられている。安全弁15は収容部12の異常な内部圧力を開放するために収容部12に対して1つずつ設けられており、角形ケース11の上面11cには収容部12の数と同じ数である6個の安全弁15が配置される。各安全弁15は、ゴム状の弾性体からなる封止部材を有し、収容部12の内部を外部に連通させる連通孔の外側の口に封止部材を所定の圧力で押圧することにより、連通孔を規定の圧力で封止するようにしている。これにより各安全弁15は、通常は閉鎖(閉弁)して収容部12内部とその外部の大気とを隔離する一方、収容部12の内部圧力が所定の規定値よりも高い圧力となった場合、開放(開弁)して収容部12内部の気体などを外部に排出することで収容部12内部の圧力を低下させる。安全弁15が作動する圧力である規定値は、角形ケース11の耐圧性能に応じて定められている。例えば、安全弁15は、角形ケース11の内部圧力が、大気圧(例えば0.1MPa)に対して一定の値である所定の規定値(例えば1MPa)以上となったとき、すなわち、内外の圧力差が、規定値−大気圧(1MPa−0.1MPa)となったとき、開弁するように設定されている。なお安全弁15は、設定された規定値に対して高い精度での動作が求められることから、精度や信頼性を維持するため構造に多少の制約が伴うことが避けがたい。
【0037】
その他、この電池モジュールには、当該電池の内部温度を検出するためのセンサを装着するセンサ装着穴13などが設けられている。
【0038】
ところで本実施形態では、角形ケース11は、いわゆるモノブロックのケースとして樹脂材料から成型されている。樹脂材料としては、ポリプロピレン(PP)単体、ポリスチレン(PS)とポリフェニレンエーテル(PPE)とのポリマーアロイ、又は、ポリプロピレン(PP)とポリフェニレンエーテル(PPE)とのポリマーアロイなどが採用される。樹脂材料は、成型や加工が容易なことから角形ケース11の成型に好適である一方、収容部12内の発電要素が充放電に伴って吸排するガス、本実施形態では水素が透過する。すなわち、角形ケース11内に区画形成されている各収容部12内に収容されている水素が漏出する。収容部12から水素が漏出すると、その漏出量に応じて発電要素の負極(極板群)の放電リザーブが減少するため、単電池としての放電容量が減少したりするとともに、過放電時には負極から酸素が発生したりもする。なお、樹脂材料としては、例えば、摂氏40度における水素の透過量が、2×10−15[mol・m/(m・sec・Pa)]以上、かつ、1×10−14[mol・m/(m・sec・Pa)]以下であることが好ましい。また、水素の透過度は、水素透過量や、水素透過量の算出に用いられる水素透過係数などを指標に用いればよい。
【0039】
また、電池モジュールの角形ケース11の長側面11aには、角形ケース11を構成する樹脂材料の水素透過量よりも小さい水素透過量を有する金属層としてのバリア層21(調整手段)が同長側面11aの表面の一部であって、各収容部12に対応する位置を覆うように設けられている。バリア層21は、金属、具体的には膜状のアルミニウムを含み構成され、長側面11aには、アルミニウム箔やアルミニウム層を含む膜が接着や溶着により貼り付けられている、もしくはアルミニウムが蒸着等により貼り付けられている。角形ケース11の長側面11aに対応する各収容部12の広い面(長側面)は、樹脂材料と同様の水素透過量を有するものの、その表面に貼り付けられたバリア層21により水素の透過が抑制されて水素透過量が減少されるようになる。アルミニウムはほとんど水素を透過させないため、バリア層21が貼り付けられている表面部分からの水素の漏出が大きく抑制されるようになる。なお、本実施形態では、バリア層21は水素を透過しないものとする。このように水素の漏出が抑制された各収容部12はそれらの内部からの水素の漏出量が減少するため、各収容部12に収容されている発電要素の放電リザーブ量の減少が抑制されるようになる。なお、バリア層21としては、例えば、摂氏40度における水素の透過量が、2.5×10−17[mol/(m・sec・Pa)]以下であることが好ましい。
【0040】
例えば、図2に示すように、時間t1の経過後における収容部12内の水素残量は、バリア層21が設けられない場合、初期残量S1から残量S3まで減少する一方、バリア層21を設けた場合、初期残量S1より減少するものの上述の残量S3よりも多い量である残量S2となる。すなわち、収容部12内部の水素量の減少が抑制され、発電要素の放電リザーブ量の減少が抑制されるようになることから単電池としての電池性能も維持されるようになる。なお本実施形態では、安全弁15や電極10N,10Pなどが配置されている構造などであるため、バリア層を設けることが容易ではない短側面11b、上面11cや底面11dには、バリア層が設けられていない。
【0041】
ところで、上述のように、角形ケース11には、6個の収容部12として、第1〜第6の収容部121〜126が設けられている。第1〜第6の収容部121〜126はそれぞれ、角形ケース11におけるその配置位置が異なるため、それらの内部と外部(大気環境)とを仕切っている外壁の構成が同様ではない。詳述すると、第1〜第6の収容部121〜126はそれぞれ同様に、バリア層21の設けられた長側面11aに対応する長側面と、バリア層の設けられていない上面11cや底面11dに対応する面とを有しており、これらの面から同様の水素漏出量を有している。一方、第1及び第6の収容部121,126はそれぞれ、バリア層の設けられていない短側面11bに対応する面を有しており、この面からも水素が漏出する。また、第4の収容部124は、バリア層の設けられていないセンサ装着穴13を有しており、このセンサ装着穴13からも水素が漏出する。なお、第1〜第6の収容部121〜126の間に設けられている隔壁も水素を透過させるものの、水素は収容部間を相互に移動するのみであることなどから、説明の便宜上、相互に移動する水素の量は同様である、すなわち水素は漏出しないものとする。
【0042】
従来は、上述のように外壁の構成が違うことにより、各収容部121〜126の水素量漏出量が相違することとなるため、電池モジュールが作成された当初はそれぞれ初期残量S1であった水素の残量が、例えば時間t1の経過後、個々に相違するようになる。すなわち、図3に示すように、初期残量S1であった水素は、時間t1の経過後、第2,第3,第5の収容部122,123,125では残量S21となり、第4の収容部124では先の残量S21より少ない残量S22となり、第1及び第6の収容部121,126ではさらに先の残量S22より少ない残量S23になる。このように、時間t1の経過に伴い、最も水素が多く残っている第2の収容部122等の水素の残量S21と、第4の収容部124の水素の残量S22との間には残量の差として残量差Δ22が生じる。また、同様に第2の収容部122等の水素の残量S21と、第1又は第6の収容部121,126の水素の残量S23との間には残量の差として先の残量差Δ22よりも大きい残量差Δ23が生じる。
【0043】
ところで、このような各残量差Δ22,Δ23が各発電要素の放電リザーブ量に相違を生じさせて各発電要素の電池性能にばらつきが生じると、直列接続されている複数の発電要素の電池性能は、もっとも性能の低下した電池性能の影響を受ける。すなわち、最も電池性能が低下した単電池の電池性能に従って、電池モジュールとしての電池性能が低下するようになる。電池モジュールとしての電池性能が、最も電池性能の低下した単電池の電池性能に引きずられて低下するようになる。さらに、最も電池性能の低下した単電池は、電池性能(出力)に余裕を持って放電される他の単電池に比べ、電池性能(出力)の限界まで放電されることなどから、他の単電池よりも大きな負荷を受けることとなり、その電池性能がより早期に低下されるといった悪循環を招くおそれもある。すなわち、直列接続した単電池に、このように電池性能が特に低下した単電池を含む電池モジュールの電池性能は、該電池性能が特に低下した単電池と同様に早期に低下することが避けられない。
【0044】
そこで、本実施形態では、時間t1経過後であっても、各収容部121〜126の水素残量を同様にするようにした。すなわち図4に示すように、時間t1経過後の各収容部121〜126の水素残量を、最も水素の残量が少なくなる第1又は第6の収容部121,126の水素の残量S23と同様の残量になるようにしている。そのため、水素の残量S22の第4の収容部124からは、残量S23に対して余剰する水素量D22を、水素の残量S21の第2,第3,第5の収容部122,123,125からはそれぞれ、残量S23に対して余剰する水素量D21を、時間t1の間にさらに第2〜第5の収容部122〜125からそれぞれ漏出させるようにした。
【0045】
すなわち、図1に示すように、角形ケース11に設けたバリア層21には、第2の収容部122の長側面に対応する部分に切り欠き部222を設けることで、第2の収容部122の長側面からの水素透過量を増加させている。また、同バリア層21には、第3の収容部123の長側面に対応する部分に切り欠き部223を設けることで、第3の収容部123の長側面からの水素透過量を増加させている。さらに、同バリア層21には、第4の収容部124の長側面に対応する部分に切り欠き部224を設けることで、第4の収容部124の長側面からの水素透過量を増加させている。また、同バリア層21には、第5の収容部125の長側面に対応する部分に切り欠き部225を設けることで、第5の収容部125の長側面からの水素透過量を増加させている。
【0046】
これにより、各収容部121〜126は、単位時間当たりの水素透過量が同様になるように調整されることで、時間t1経過後であれ、水素残量も同様の残量S23となるようになるため、各単電池の電池性能のばらつきが小さく抑えられ、電池の利用に伴い特定の各単電池に大な負荷がかかることも抑制される。このように大きな負荷のかかる単電池が生じないようになることから、各単電池の電池性能に生じる低下が早く進行することを抑えることができるようになるため、電池モジュールとしての電池寿命を長くすることができるようになる。
【0047】
このようなことから、各収容部121〜126からの水素透過量が同様になるように各切り欠き部222〜225の面積を調整するようにしている。そのため、余剰する水素量D21や余剰する水素量D22が切り欠き部222等の面積で調整することができる水素透過量であれば、角形ケース11の大きさや、収容部12の構造や大きさ、収容部12の内部と外部とを隔離する樹脂材料の厚さ、収容部12に設けられる付属物などに関わらず、水素透過量を調整することができる。
【0048】
次に、収容部12の水素透過量を増加させるために設ける切り欠き部の面積を求める方法について具体的に説明する。
【0049】
まず、各収容部12の水素透過量をそれぞれ求める。収容部12の水素透過量は次式(1)から算出する。すなわち、水素透過量は、
収容部の水素透過量[mol/(sec・Pa)]
=収容部の水素を透過する部分の面積[m]×樹脂材料の水素透過速度[mol・m/(m・sec・Pa)]/収容部の水素を透過する部分の厚さ[m]・・・(1)
から算出される。
【0050】
なお、「収容部の水素透過量」は、単位時間当たりに収容部12を構成する外壁(角形ケース11の長側面11aなど)を通り抜けることのできる水素の量を示すものである。
【0051】
次に、各収容部12の水素透過量のなかから最も多い透過量を選択して最大透過量とするとともに、この最大透過量に対する各収容部12の水素透過量の不足率を次式(2)から算出する。すなわち、水素の透過不足率は、
水素の透過不足率[%]
=(最大透過量/個別透過量−1)×100・・・(2)
から算出される。
【0052】
なお、本実施形態では、電池モジュールの収容部12のうち、水素透過量の一番大きな収容部12の水素透過量を最大透過量とし、各収容部12各別の水素透過量を個別透過量とする。例えば、最大透過量には、第1又は第6の収容部121,126の水素透過量が対応し、個別透過量には、第1〜第6の収容部121〜126の各水素透過量が対応する。
【0053】
そして、各収容部12から不足分の水素を透過させるため、角形ケース11のバリア層21から各収容部12に対応する部分において該バリア層21の一部を除外すべき面積、すなわち切り欠き部の面積を算出する。すなわち、切り欠き部の面積は、
切り欠き部の面積[m
=水素の透過不足率[%]/100×個別透過量×収容部の水素を透過する部分の厚さ[m]/樹脂材料の水素透過速度[mol・m/(m・sec・Pa)]
=(最大透過量−個別透過量)×収容部の水素を透過する部分の厚さ[m]/樹脂材料の水素透過速度[mol・m/(m・sec・Pa)]・・・(3)
から算出される。
【0054】
例えば、本実施形態では、第2〜第5の収容部122〜125の各切り欠き部222〜225の面積が算出される。
【0055】
すなわち、第2の収容部122の切り欠き部222の面積は、「(第1の収容部121の水素透過量−第2の収容部122の水素透過量)×第2の収容部122の側面部の樹脂材料の厚さ/樹脂材料の水素透過速度」により算出される。また同様に、第3の収容部123の切り欠き部223の面積は、「(第1の収容部121の水素透過量−第3の収容部123の水素透過量)×第3の収容部123の側面部の樹脂材料の厚さ/樹脂材料の水素透過速度」により算出される。さらに同様に、第4の収容部124の切り欠き部224の面積は、「(第1の収容部121の水素透過量−第4の収容部124の水素透過量)×第4の収容部124の側面部の樹脂材料の厚さ/樹脂材料の水素透過速度」により算出される。また同様に、第5の収容部125の切り欠き部225の面積は、「(第1の収容部121の水素透過量−第5の収容部125の水素透過量)×第5の収容部125の側面部の樹脂材料の厚さ/樹脂材料の水素透過速度」により算出される。なお、樹脂材料の水素透過速度は温度によって変化するため、電池モジュールの各単電池間に温度に差が生じる場合、各単電池の温度に応じた水素透過速度を考慮するようにしてもよい。
【0056】
このようにして、角形ケース11のバリア層21の第2〜第5の収容部122〜125の対応する位置に切り欠き部222〜225を設けることにより、第1〜第6の収容部121〜126の水素透過量を同様にして、図6に示すように、所定の時間t1経過後の第1〜第6の収容部121〜126の水素残量をほぼ同様の残量S23とすることができる。
【0057】
以上説明したように、本実施形態の電池によれば、以下に列記するような効果が得られるようになる。
【0058】
(1)角形ケース11の各収容部12にそれぞれに設けられた発電要素の水素の漏出量、換言すれば収容部12における水素の残存量を、各収容部12間でばらつきを小さくするようにした。充放電に伴う反応などにより発電要素との間で吸排される水素は、その残存量は電池性能に影響を及ぼすため、各収容部12における水素の残存量の差を小さくすることにより各発電要素間の電池性能の相違も小さくなるようにすることができる。
【0059】
このように各発電要素の電池性能のばらつきを小さくすることで、電池としての電池性能が安定化されるようにもなり、電池としての利便性が向上するようになる。
【0060】
(2)ニッケル水素電池は充放電に伴い水素や酸素が発生する。そしてニッケル水素電池は、水素の漏出により放電リザーブ量が減少して電池性能が劣化する。しかしながら、各収容部12からの水素の漏出量を調整して各収容部12の水素の残存量の差を小さくすることにより、ニッケル水素電池を構成する各発電要素の電池性能のばらつきが小さくなり、電池としての利便性の向上が図られるようになる。
【0061】
(3)直列接続される発電要素からなる電池の電池性能は、電池性能の最も低下した発電要素の電池性能に影響される、すなわち最も低下した電池性能に基づいて電池性能が定まる。さらに、直列接続された発電要素は、電池性能が低下した発電要素に最も負荷がかることなどから該発電要素の電池性能の劣化がより早く進行する傾向にもある。このようなことから、電池としての電池性能を好適に維持するためには、それぞれの発電要素の電池性能がばらつかないことが求められる。
【0062】
そこで、収容部12からの水素漏出量を調整して各発電要素の電池性能のばらつきを抑制するようにした。これにより、直列接続される発電要素において、特に電池性能の劣化した発電要素の発生が抑制されるようになるとともに、各発電要素への負荷分担のばらつきが小さくされ、特に劣化の進行の早い発電要素の発生も抑制されるようになる。これにより電池の電池性能が好適に維持されるようになる。
【0063】
本実施形態では、電池モジュールを構成する各収容部121〜126の各水素漏出量を、水素漏出量の調整を行わなかったとすれば最も多くなる第1又は第6の収容部121,126、すなわち劣化の大きい発電要素が収容されている収容部12の水素漏出量に、同量もしくは近くなるように調整する。従来、各収容部121〜126のそれぞれについて各別に水素漏出量を少なくするようにすることで電池モジュールの劣化を避けることが一般的であった。しかしながら、本実施形態では、水素漏出量の少ない第2〜第5の収容部122〜125の水素漏出量を、敢えて、多くすることで、各収容部121〜126のそれぞれに収容されている水素ガスの残量をできるだけ揃えるようにすることで発電要素の単電池としての電池性能のばらつきを抑えるようにした。これにより、それら単電池により構成される電池モジュール全体としての電池性能が向上されるようになる。
【0064】
(4)樹脂材料は成型や加工が容易なことから角形ケース11を構成することに好適である反面、収容部12内のガスを透過させ易い。そして、各単電池の樹脂材料が外部と接する面積の差により、各単電池間でガスの漏出量に差が生じる。そこでこの構成によるように、水素の漏出量を調整して電池性能を好適に維持させるようにすることで、樹脂材料からなる角形ケース11であれ電池モジュール(電池)のケースとして好適に用いることができるようになる。
【0065】
(5)角形ケース11の水素透過度よりも低い水素透過度のバリア層21を採用することにより収容部12からの水素漏出量を調整することができる。また、角形ケース11の表面(長側面11a)に貼り付けるバリア層21により覆われる角形ケース11の表面(長側面11a)の面積により水素の漏出量を調整することができるため、その調整が容易にもなる。
【0066】
(6)バリア層21に金属を用いることにより、安定的かつ高いバリア性能を有するバリア層を電池に設けることができる。
【0067】
(7)薄くて軽く、接着や蒸着等による貼り付けや、加工などが行いやすいアルミニウムをバリア層21に用いることで、角形ケース11に比較的容易にバリア層21を設けることができる。
【0068】
(第2の実施形態)
以下、本発明にかかる電池の第2の実施形態について、図5を参照して説明する。本実施形態では、バリア層20に切り欠き部が設けられていない点と、各安全弁の封止部材の特性が全て同じではなく、安全弁がガスの透過を調整する調整手段である点が、先の第1の実施形態の構成と相違する点である。しかしながら、その他の構成については同様であることから、以下では主に相違点について説明し、説明の便宜上、同様な構成には同一の符号を付してその説明を割愛する。なお、本実施形態のバリア層20は、先の第1の実施形態のバリア層21と同様の材料、すなわちアルミニウムからなり、角形ケース11の長側面11aには同様の方法により貼り付けられている。
【0069】
角形ケース11の上面11cには収容部12の数と同じ数である第1〜第6の安全弁151〜156が配置されている。各安全弁151〜156はそれぞれ、封止部材及びゴム状弾性部材としての第1〜第6のゴム弁161〜166を有し、収容部12の内部を外部に連通させる連通孔14の外側の口に該第1〜第6のゴム弁161〜166を所定の圧力で押圧することにより、連通孔14を規定の圧力で封止するようにしている。
【0070】
第1〜第6のゴム弁161〜166はそれぞれ、ゴム状の弾性体からなる。そして本実施形態では、第1,第6のゴム弁161,166は、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)からなり、同第1,第6のゴム弁161,166からはそれぞれ漏出量L1,L6の水素が漏出する。また、第2〜第5のゴム弁162〜165は、スチレンブタジエンゴム(SBR)からなり、同第2〜第5のゴム弁162〜165からはそれぞれ漏出量L2〜L5の水素が漏出する。なお、EPDMはアルカリ耐性やオゾン耐性に、SBRはアルカリ耐性に優れているため、ニッケル水素電池のようなアルカリ電池へ適用することが好適である。
【0071】
また、本実施形態では、EPDMの水素透過係数は「5」、SBRの水素透過係数は「23.4〜31.6」であるものとしている。このようなゴムの水素透過係数は、規格番号 JISK6275−1(規格名 加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−ガス透過性の求め方−第1部:差圧法)により算出することができる。なお、水素透過係数は、その値が大きいほど、より多くの水素を透過させることを示しており、SBRはEPDMの約5〜6倍の量の水素を透過させることができるものとなっている。また、この水素透過係数は、先の第1の実施形態の式(1)などにおける、「水素透過速度」と同様に「水素透過度」に関連する指標である。
【0072】
このことから、図6に示すように、安全弁151,156は、漏出量L1,L6として、水素透過係数「5」の第1,第6のゴム弁161,166を通じて、同水素透過係数「5」に対応する量Lbの水素を第1又は第6の収容部121,126から透過(漏出)させる。また、安全弁152〜155は、漏出量L2〜L5として、水素透過係数「23.4〜31.6」の第2〜第5のゴム弁162〜165を通じて、同水素透過係数「23.4〜31.6」に対応する量Laの水素をそれぞれ第2〜第5の収容部122〜125から透過(漏出)させる。
【0073】
ところで、第1〜第6のゴム弁161〜166の水素透過量が同じであれば、各収容部121〜126の水素の残量は、先の第1の実施形態にて説明した図3に示されるようになる。すなわち当初、初期残量S1であった水素は、時間t1の経過後、第2,第3,第5の収容部122,123,125では残量S21となり、第4の収容部124では先の残量S21より少ない残量S22となり、第1及び第6の収容部121,126ではさらに先の残量S22より少ない残量S23になる。このように、時間t1の経過に伴い、第2の収容部122等の水素の残量S21と、第4の収容部124の水素の残量S22との間には残量の差として残量差Δ22が生じ、第2の収容部122等の水素の残量S21と、第1又は第6の収容部121,126の水素の残量S23との間には残量の差として残量差Δ23が生じる。
【0074】
本実施形態では、第1,第6のゴム弁161,166にEPDMを用い、第2〜第5のゴム弁162〜165にSBRを用いることにより、第2〜第5の安全弁152〜155からの水素漏出量を、第1,第6の安全弁151,156からの水素漏出量よりも多くする。これにより、第2〜第5の収容部122〜125にて余剰する水素である残量差Δ22や残量差Δ23を、各ゴム弁162〜165から多く透過させるようにした水素量に対応する量だけ減らすようにする。これにより、第1〜第6の収容部121〜126の相互間の水素の残量のばらつきを小さくするように調整することができる。
【0075】
すなわち、水素透過量の少ない第2〜第5の収容部122〜125には水素透過量の多いゴム弁162〜165を用い、水素透過量の多い第1,第6の収容部121,126には水素透過量の少ないゴム弁161,166を用いる。このように、材料の異なるゴム弁を組み合わせるようにすることにより、各収容部の水素透過量を調整できるようになる。仮に、ゴム弁の大小、すなわち体積の増減で水素透過量を調整する(例えば、ゴム弁の水素の透過する部分の距離を長くして水素透過量を抑えたり、短くして水素透過量を大きくしたりする)場合、各安全弁の開弁圧が体積などに応じて変化してしまうため、開弁圧を揃えるために複雑な調整・制御を行う必要がある。そこで本実施形態のように、材料の異なるゴム弁を組み合わせて各収容部の水素透過量を調整する場合、各収容部のゴム弁の体積を変化を抑えられるため、開弁圧を揃えるための調整・制御を行わない、もしくは少なく済ませることができるようになる。
【0076】
なお、角形ケース11の大きさや、収容部12の構造や大きさ、収容部12の内部と外部とを隔離する樹脂材料の厚さ、収容部12に設けられる付属物などによって調整しなければならない水素透過量が変化したとしても、調整すべき水素透過量に応じて材料を適宜選択して好適な調整をすることができる。
【0077】
以上説明したように、本実施形態の電池によれば、先の第1の実施形態で記載した効果(1)〜(7)に加え、以下に列記するような効果が得られるようになる。
【0078】
(8)独立した収容部121〜126に各別に設けられる安全弁151〜156にて各収容部121〜126の水素の漏出量を調整するようにしたため、収容部121〜126内の水素の残存容量の調整が比較的容易に行えるようになる。これにより、電池の性能維持を容易に行うことができるようになる。
【0079】
(9)水素の漏出量をゴム弁161〜166の材料の水素透過係数の選択により調整するため、安全弁の封止圧力などに影響を及ぼすことなくガス漏出量を調整できるようになる。これにより、安全弁の機能を含めて電池としても電池性能が好適に維持される。
【0080】
(10)ゴム状の弾性部材をゴム弁161〜166として用いることにより、安全弁151〜156としての好適な性能を維持しつつ水素の漏出量の調整を好適に行うことができるようになる。
【0081】
(その他の実施形態)
なお上記各実施形態は、以下の態様で実施することもできる。
【0082】
・上記各実施形態では、6個の単電池を電気的に直接接続して構成される電池モジュールについて例示した。しかしこれに限らず、電池モジュールを構成する単電池の数は、6個よりも少なくても、逆に6個よりも多くてもよい。これにより、電池モジュールへの適用範囲が拡げられる。
【0083】
・上記各実施形態では、1つの角形ケース11に設けられた複数の収容部12にそれぞれ発電要素が収容された電池モジュールについて例示したが、これに限らず、発電要素がそれぞれ独立した収容部としてのケースに収容されていてもよい。この場合、独立したケースにて構成される単電池を複数集めて電池モジュールを構成してもよい。
【0084】
例えば、図7(a)及び(b)に示すように、電池は、独立したケースに発電要素を収容して構成された単電池30を10個、締結具31でひとまとめにするにするとともに、各単電池30の電極32を導電体33で電気的に直列接続させた構成からなる電池モジュールであってもよい。このような電池モジュールでは、同モジュールの端部に配置された単電池30(例えば単電池30A)に比べ、同モジュールの中央部に配置された単電池30(例えば単電池30B)は、その温度が高くなるため、内部圧力が上昇し、水素漏出量が多くなる傾向にある。このような場合であれ、本発明を構成する調整手段(バリア層や安全弁)を用いることで、端部に配置された単電池と、中央部に配置された単電池とのそれぞれの水素漏出量に生じるばらつきを抑え、電池モジュール全体として電池性能を高く維持することができるようになる。
【0085】
・上記各実施形態では、発電要素が直列接続されている場合について例示したが、これに限らず、発電要素が直列接続されていなくても、もしくは、一部のみが直列接続されていてもよい。たとえ発電要素をそれぞれ単独に用いるような場合や、並列接続する場合であれ、電池に設けられているそれぞれの発電要素の電池性能のばらつきが小さくなれば、電池の利便性が向上されるようになる。
【0086】
・上記第1の実施形態では、水素透過量の調整をバリア層21に設けた切り欠き部222〜225の面積により調整し、第2の実施形態では、水素透過量の調整をゴム弁162〜165の材質により調整するようにした。しかしこれにかぎらず、バリア層とゴム弁とから調整手段を構成して、水素透過量の調整を、バリア層の切り欠き部と、安全弁のゴム弁の材質とにより調整するようにしてもよい。これにより、水素透過量の調整範囲を拡大させることができるようになる。
【0087】
・上記第2の実施形態では、ゴム弁16の材料がEPDM又はSBRである場合について例示した。しかしこれに限らず、ゴム弁の材料は、ニトリルゴムや水酸化ニトリルゴムなどのそのほかの材料であってもよい。特に、アルカリ耐性に優れているニトリルゴムや水酸化ニトリルゴムなどはニッケル水素電池への適用に適している。これにより、異なる特性を有するゴム弁の組み合わせとして、EPDMとSBRとの組み合わせ以外の組み合わせにすることができるようになる。また、水素透過量の調整範囲の拡大や、適切な性質を有するゴム材料の選択可能性が広げられるようになる。
【0088】
なお、ゴム弁の材料の組み合わせとしては、第1及び第6の収容部用の安全弁の水素透過係数が10×10−17[m/(N・sec)]以下であり、第2〜第5の収容部用の安全弁の水素透過係数が10〜200×10−17[m/(N・sec)]である組み合わせが特に好適である。
【0089】
・上記第2の実施形態では、安全弁15が封止部材としてゴムの弾性体からなるゴム弁16を用いる場合について例示した。しかしこれに限らず、封止部材は、角形ケースの上面に設けられた連通孔の外側の口を所定の圧力にて封止することができるものであれば、パッキンや独泡スポンジなどの樹脂材料からなるものなどゴム以外の材料からなるものであってもよい。これによりに、安全弁による水素透過量の調整領域を広げることができるようにもなる。
【0090】
・上記第1の実施形態では、安全弁15から漏出する水素漏出量を考慮しない場合について例示したが、これに限らず、安全弁から漏出する水素漏出量を考慮してもよい。これにより、より好適な水素残量の調整ができるようになる。
【0091】
・上記第1の実施形態では、センサ装着穴13から漏出する水素漏出量を考慮する場合について例示したが、これに限らず、センサ装着穴から漏出する水素漏出量が収容部からの水素透過量に影響が小さければ、センサ装着穴からの水素漏出量について考慮しなくてもよい。これにより、水素漏出量の調整を容易にすることができるようになる。
【0092】
・上記第1の実施形態では、バリア層21の各切り欠き部222〜225をそれぞれ上面11c側にまとめて確保する場合について例示した。しかしこれに限らず、切り欠き部を底面側にもうけたり、スリット状に設けたりしてもよい。また、必要面積を上下に分けて設けたり、点在するように設けたりするなど、複数に分散して確保するようにしてもよい。これにより、バリア層に対する切り欠き部の確保の自由度が向上し、このような水素透過量の調整が好適に行えるようになる。
【0093】
・上記第1の実施形態では、バリア層21を貼り付けた面積により収容部12からの水素漏出量を調整する場合について例示した。しかしこれに限らず、バリア層の厚みにより水素漏出量を調整することができるのであれば、バリア層の厚みの変更により水素漏出量を調整するようにしてもよい。これにより、水素漏出量の調整の自由度が高められる。また、バリア層の面積変更及び厚みの変更により水素漏出量を調整するようにしてもよい。これによっても、水素漏出量の調整の自由度が高められる。
【0094】
・上記各実施形態では、角形ケース11が樹脂材料からなる場合について例示したが、これに限らず、角形ケースとしては、水素を透過する材料からなるようであればこのような水素透過量の調整を行うことができる。例えば、角形ケースに用いられる水素を透過する材料としては、エラストマーなどがある。
【0095】
・上記各実施形態では、バリア層21としてアルミニウムを用いる場合について例示した。しかしこれに限らず、バリア層としては、角形ケースの水素透過量よりも小さい水素透過量とすることができるのであれば、他の金属(鉄箔など)や、金属以外の材料(カーボンセラミックなど)から構成されてもよいし、金属膜や、樹脂膜などの複数の材料から構成される多層膜であってもよい。これにより、バリア層の設計自由度が高められるようになり、水素透過量の調整が好適に行えるようになる。
【0096】
・上記第1の実施形態では、バリア層21を角形ケース11の長側面11aに設けた場合について例示した。しかしこれに限らず、バリア層は、収容部内からの水素透過量を調節できるように配置されるのであれば、角形ケースの長側面、短側面、天面及び底面の少なくとも1つの面に設けられるようにしてもよい。これにより、収容部内からの水素透過量の調節にかかる柔軟性が向上されるようになる。
【0097】
・上記各実施形態では、角形ケース11が直方体状である場合について例示したがこれに限らず、角形ケースは、複数の収容部を配置することができるようになっていれば多面体や、円柱などの立体であってもよい。そして、それら立体の面に必要に応じてバリア層を設けるようにしてもよい。これにより、バリア層の配置自由度が高められ、このような水素透過量の調整の適用対象の拡大が図られるようになる。
【0098】
・上記各実施形態では、収容部12からの水素の透過量を調整する場合について例示したが、これに限らず、収容部からの酸素や二酸化炭素など水素以外のガスの透過量を調整するようにしてもよい。これにより、ガスの種類にかかわらず、モジュールに設けられた複数の収容部内のガスの残量を好適に調整することができるようになる。
【0099】
なお、電池の種類により発生するガスが異なるため、電池の種類に応じて透過量を調整するガスを決定すればよい。
【0100】
・上記各実施形態では、ニッケル水素電池からなる電池について例示した。しかしこれに限らず、電池は、ガスの透過量を調整したい電池、例えば、ニッケルカドミウム電池やニッケル亜鉛電池等の二次電池(蓄電池)であってもよい。これにより、このようにガスの透過量を調整することのできる電池の種類を拡げることができる。
【符号の説明】
【0101】
10N…電極、10P…電極、11…角形ケース、11a…長側面、11b…短側面、11c…上面、11d…底面、12…収容部、13…センサ装着穴、14…連通孔、15…安全弁、16…ゴム弁、20,21…バリア層、121〜126…第1〜第6の収容部、151〜156…第1〜第6の安全弁、161〜166…第1〜第6のゴム弁、222〜225…切り欠き部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電要素がそれぞれ独立した収容部に収容されてなる電池であって、
前記収容部は前記発電要素との間で吸収及び放出されるガスが漏出する材料からなるとともに、前記収容部にはそれぞれ前記ガスが漏出する量を調整する調整手段が設けられており、前記収容部の各調整手段は、それら収容部相互間でのガスの漏出量の差を少なくする態様で調整されている
ことを特徴とする電池。
【請求項2】
当該電池がニッケル水素電池からなる電池であり、
前記発電要素との間で吸収及び放出されるガスが水素である
請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記収容部のそれぞれの発電要素が電気的に直列に接続されている
請求項1又は2に記載の電池。
【請求項4】
前記収容部が樹脂材料からなる
請求項1〜3のいずれか一項に記載の電池。
【請求項5】
前記調整手段は、前記収容部の表面に貼り付けられて前記ガスの透過を阻止するバリア層であり、
前記収容部のガス漏出量が、前記バリア層により覆われる前記収容部の表面の面積によって調整される
請求項1〜4のいずれか一項に記載の電池。
【請求項6】
前記バリア層は金属層を含む
請求項5に記載の電池。
【請求項7】
前記金属層がアルミニウムからなる
請求項6に記載の電池。
【請求項8】
前記収容部にはその内部と外部とを連通させる連通孔を封止する封止部材を備える安全弁が各別に設けられており、前記各調整手段による収容部のガスの漏出量の調整には、前記安全弁を構成する封止部材のガス透過度に応じた調整が含まれる
請求項1〜7のいずれか一項に記載の電池。
【請求項9】
前記ガス透過度の調整が前記封止部材の材料選択として行われる
請求項8に記載の電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−227099(P2012−227099A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96224(P2011−96224)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(399107063)プライムアースEVエナジー株式会社 (193)
【Fターム(参考)】