説明

電波吸収体の製造方法、電波吸収体

【課題】樹脂製の電波吸収体を比較的少量の導電性フィラーで製造することができると共に導電性フィラーの添加量を比較的管理しやすい電波吸収体の製造方法を提供する。
【解決手段】電波吸収体の製造方法は、準備工程および圧縮成形工程を備える。準備工程では、混合粉体が準備される。混合粉体には、少なくとも導電性フィラー(誘電損失材料)と樹脂製の多孔質粉体とが含まれる。圧縮成形工程では、混合粉体が圧縮成形されて多孔質の電波吸収体が作製される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波吸収体の製造方法および電波吸収体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の普及や通信技術の多様化により電磁波障害問題が多数発生している。このような電磁波障害問題に対して、不要電波の吸収を目的とした電波吸収体が種々開発されている。
【0003】
電波吸収体には、樹脂製のものとセラミックス製のものが存在するが、軽量であることから樹脂製のものがよく利用されている。
【0004】
このような樹脂製の電波吸収体は、例えば、樹脂製の多孔質体を導電性フィラーの水性分散液に浸漬させた後に引き上げて乾燥させる方法(以下「浸漬法」という)や、導電性フィラーを分散させた樹脂含有液を発泡させると共にその樹脂を硬化させる方法(以下「発泡硬化法」という)により作製される(例えば、特開2004−172200号公報、特開2000−223883号公報、特開平6−314894号公報等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−172200号公報
【特許文献2】特開2000−223883号公報
【特許文献3】特開平6−314894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、樹脂製の電波吸収体の作製方法として浸漬法を利用する場合、多孔質体に対する導電性フィラーの塗布量を一定にするには、水性分散液中の導電性フィラーの濃度や多孔質体の引き上げ速度を精密に管理する必要がある。一方、樹脂製の電波吸収体の作製方法として発泡硬化法を利用すると、発泡による体積の膨張に伴って導電性フィラーが樹脂内で散在してしまう。このため、発泡硬化法を利用する場合、必要な導電性を確保するためには、比較的多量の導電性フィラーを必要とする。
【0007】
本発明の課題は、樹脂製の電波吸収体を比較的少量の導電性フィラーで製造することができると共に導電性フィラーの添加量を比較的管理しやすい電波吸収体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)
本発明の第1局面に係る電波吸収体の製造方法は、準備工程および圧縮成形工程を備える。準備工程では、混合粉体が準備される。なお、この準備工程では、混合粉体が購入されるだけであってもかまわない。混合粉体には、少なくとも導電性フィラー(誘電損失材料)および樹脂製の多孔質粉体が含まれる。圧縮成形工程では、混合粉体が圧縮成形されて多孔質の電波吸収体が作製される。
【0009】
この電波吸収体の製造方法では、混合粉体が圧縮成形されて多孔質の電波吸収体が作製される。このため、この電波吸収体の製造方法を利用すれば、樹脂内において導電性フィラーを散在させることがない(むしろ導電性フィラーが連続構造を形成するのを助成する)。したがって、この電波吸収体の製造方法を利用すれば、比較的少量の導電性フィラーで電波吸収体を作製することができる。
【0010】
また、この電波吸収体の製造方法を利用すれば、導電性フィラーの添加量を質量のみで管理することができる。このため、この電波吸収体の製造方法を利用すれば、導電性フィラーの添加量を比較的容易に管理することができる。
【0011】
つまり、この電波吸収体の製造方法を利用すれば、樹脂製の電波吸収体を比較的少量の導電性フィラーで製造することができると共に導電性フィラーの添加量を比較的管理しやすくなる。
【0012】
なお、多孔質粉体を構成する樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、架橋ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー、ポリスチレン、天然ゴム、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ブチルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリルゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂(レゾール型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂および変性フェノール樹脂を含む)、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フラン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いられてもよいし、併用されてもよい。また、これらの樹脂は、予備発泡体ビーズの形態で利用されてもよいし、溶液の形態で利用されてもよいし、水性分散液の形態で利用されてもよいし、有機液体分散液の形態で利用されてもよい。
【0013】
なお、上述の樹脂には、必要に応じて、結着剤(バインダー)、軟化剤、硬化剤、充填剤、強化剤、加硫剤(粉末硫黄等)、加硫促進剤、加硫促進助剤、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤(老化防止剤)、発泡剤または発泡助剤、整泡剤等の添加剤が添加されてもかまわない。これらの添加剤は、単独で用いられてもよいし、併用されてもよい。なお、発泡剤としては、特に限定されないが、例えば、n−ヘキサン,塩化メチレン,トリクロロフロロメタン,アルコールなどの低沸点脂肪族炭化水素またはそのハロゲン化物、ジニトロペンタメチレンテトラミン,ベンゼンスルホニルヒドラジドのような加熱分解型の発泡剤が挙げられる。また、整泡剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテルホルマリン縮合物などのエチレンオキサイド付加物で代表されるノニオン界面活性剤、メチルポリシロキサンポリアルキレンオキサイドなどのシリコーン系ノニオン界面活性剤等が挙げられる。また、難燃剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリリン酸アンモニウムのようなリン化合物、トリス(β−クロロエチル)ホスフェート(TCEP)等のハロゲン化物等が挙げられる。なお、本発明において、明示の記載がない限り、上記添加剤の質量は樹脂の質量には含まれない。
【0014】
導電性フィラーとしては、特に限定されないが、例えば、カーボンブラック(オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等)、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、フラーレン、カーボンマイクロコイル、グラファイト(天然グラファイト、人造グラファイト等)、導電性チタン酸カリウムウィスカー、フィラメント状ニッケル、カーボンファイバー短繊維(PAN系カーボン短繊維、ピッチ系カーボン短繊維等)、ウィスカー繊維、金属粒子(銅粒子、錫粒子、ニッケル粒子、銀粒子等)、金属酸化物(二酸化チタン、二酸化錫、二酸化亜鉛、酸化ニッケル、酸化銅等)、金属炭化物(チタンカーバイド、シリコンカーバイド等)等が挙げられる。これらの導電性フィラーは、単独で用いられてもよいし、併用されてもよい。
【0015】
電波吸収体は、四角錐型であってもよいし、くさび型であってもよいし、平板状(シート状)であってもよい。
【0016】
(2)
本発明の第2局面に係る電波吸収体の製造方法は、第1局面に係る電波吸収体の製造方法であって、圧縮成形工程では混合粉体が加熱されながら圧縮成形される。
【0017】
このため、この電波吸収体の製造方法を利用すれば、樹脂の熱融着性や、反応性官能基含有樹脂の化学結合性を利用して優れた剛性や強度を有する電波吸収体を作製することができる。
【0018】
(3)
本発明の第3局面に係る電波吸収体の製造方法は、第1局面または第2局面に係る電波吸収体の製造方法であって、準備工程には第1多孔質体形成工程、第1多孔質体粉砕工程および混合粉体作製工程が含まれる。第1多孔質体形成工程では、多孔質体が形成される。第1多孔質体粉砕工程では、多孔質体が粉砕されて多孔質粉体が作製される。混合粉体作製工程では、少なくとも多孔質粉体と導電性フィラーとが混合されて混合粉体が作製される。なお、この混合粉体作製工程では、必要に応じて結着剤(バインダー)が混合されてもかまわない。
【0019】
このため、この電波吸収体の製造方法では、導電性フィラーの添加量を質量のみで管理することができる。したがって、この電波吸収体の製造方法を利用すれば、導電性フィラーの添加量を容易に管理することができる。
【0020】
(4)
本発明の第4局面に係る電波吸収体の製造方法は、第1局面または第2局面に係る電波吸収体の製造方法であって、準備工程には第2多孔質体形成工程および第2多孔質体粉砕工程が含まれる。第2多孔質体形成工程では、導電性フィラーが分散される樹脂含有液から多孔質体が形成される。なお、この樹脂含有液とは、例えば、樹脂溶液、樹脂分散液等である。第2多孔質体粉砕工程では、多孔質体が粉砕される(以下、このようにして粉砕された多孔質体を「第2多孔質粉体」という)。なお、第2多孔質粉体が自己結着性を有する場合、その第2多孔質粉体をそのまま混合粉体としてかまわない。また、第2多孔質粉体が自己結着性を有しない場合、必要に応じてその第2多孔質粉体に結着剤(バインダー)を混合して混合粉体としてもかまわない。また、準備工程には、さらに、導電性フィラー分散樹脂溶液調製工程が含まれてもかまわない。導電性フィラー分散樹脂溶液調製工程では、樹脂含有液に導電性フィラーが分散される。
【0021】
このため、この電波吸収体の製造方法では、導電性フィラーを樹脂中に均一に混ぜることができる。したがって、この電波吸収体の製造方法を利用すれば、品質の安定した電波吸収体を作製することができる。
【0022】
(5)
本発明の第5局面に係る電波吸収体の製造方法は、第1局面から第4局面のいずれかに係る電波吸収体の製造方法であって、混合粉体には結着剤が含まれる。なお、結着剤としては、特に限定されないが、例えば、フッ素樹脂,ポリアミド樹脂,ポリエーテルケトンおよびポリエーテルエーテルケトン等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂およびウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリアミック酸等の樹脂、付加型官能基を有するイミドオリゴマー等が挙げられる。なお、多孔質粉体を構成する樹脂がポリイミド樹脂を主成分とする場合、付加型官能基を有するイミドオリゴマーが好適に用いられる。
【0023】
このため、この電波吸収体の製造方法を利用すれば、自己結着性がない多孔質粉体であっても優れた剛性や強度を有する電波吸収体を作製することができる。
【0024】
(6)
本発明の第6局面に係る電波吸収体の製造方法は、第5局面に係る電波吸収体の製造方法であって、電波吸収体は、1GHz以上100GHz以下の周波数帯域の電波を減衰する。そして、導電性フィラーは、多孔質粉体と結着剤との合計質量を100質量部としたとき、1質量部以上20質量部未満添加される。また、導電性フィラーは、多孔質粉体と結着剤との合計体積を100体積部としたとき、0.6体積部以上11.9体積部未満添加されるのが好ましい。
【0025】
このため、この電波吸収体の製造方法を利用すれば、発泡硬化法で必要とされる導電性フィラーの量よりも少量の導電性フィラーで、1GHz以上100GHz以下の周波数帯域の電波を減衰する樹脂製の電波吸収体を作製することができる。
【0026】
(7)
本発明の第7局面に係る電波吸収体の製造方法は、第6局面に係る電波吸収体の製造方法であって、電波吸収体は、20GHz以上30GHz以下の周波数帯域の電波を減衰する。そして、導電性フィラーは、カーボンブラックである。また、この導電性フィラーは、多孔質粉体と結着剤との合計質量を100質量部としたとき、15質量部以上20質量部未満添加される。また、導電性フィラーは、多孔質粉体と結着剤との合計体積を100体積部としたとき、9.0体積部以上11.9体積部未満添加されるのが好ましい。
【0027】
このため、この電波吸収体の製造方法を利用すれば、発泡硬化法で必要とされる導電性フィラーの量よりも少量の導電性フィラーで、20GHz以上30GHz以下の周波数帯域の電波を減衰する樹脂製の電波吸収体を作製することができる。
【0028】
(8)
本発明の第8局面に係る電波吸収体の製造方法は、第6局面に係る電波吸収体の製造方法であって、電波吸収体は、45GHz以上55GHz以下の周波数帯域の電波を減衰する。そして、導電性フィラーは、カーボンナノファイバーである。また、この導電性フィラーは、多孔質粉体と結着剤との合計質量を100質量部としたとき、15質量部以上20質量部未満添加される。また、導電性フィラーは、多孔質粉体と結着剤との合計体積を100体積部としたとき、9.0体積部以上11.9体積部未満添加されるのが好ましい。
【0029】
このため、この電波吸収体の製造方法を利用すれば、発泡硬化法で必要とされる導電性フィラーの量よりも少量の導電性フィラーで、45GHz以上55GHz以下の周波数帯域の電波を減衰する樹脂製の電波吸収体を作製することができる。
【0030】
(9)
本発明の第9局面に係る電波吸収体の製造方法は、第1局面から第4局面のいずれかに係る電波吸収体の製造方法であって、多孔質粉体は、自己結着性を有する自己結着性多孔質粉体である。なお、ここにいう「自己結着性」とは、複数の同一物同士が互いに結着することができる性質を意味する。なお、このような自己結着性多孔質粉体は、例えば、樹脂に反応性官能基を導入することによって作製することができる。そのような手法としては、特に限定されないが、例えば、樹脂そのものの骨格に反応性官能基を導入する手法や、熱硬化性樹脂の前駆体(熱硬化前の液状体)に対して「硬化反応に関与する反応性官能基」と「硬化反応に関与せず自己結着反応に関与する反応性官能基」とを有する化合物を添加する手法等が挙げられる。
【0031】
このため、この電波吸収体の製造方法では、結着剤(バインダー)を利用する必要がない。したがって、この電波吸収体の製造方法を利用すれば、原料コストを抑制して優れた剛性や強度を有する電波吸収体を作製することができる。なお、かかる場合、混合粉体には、自己接着性を有さない多孔質粉体が混合されてもかまわない。
【0032】
(10)
本発明の第10局面に係る電波吸収体の製造方法は、第9局面に係る電波吸収体の製造方法であって、電波吸収体は、1GHz以上100GHz以下の周波数帯域の電波を減衰する。そして、導電性フィラーは、自己結着性多孔質粉体を100質量部としたとき、1質量部以上20質量部未満添加される。なお、導電性フィラーの添加量は、自己結着性多孔質粉体を100質量部としたとき、5質量部以上20質量部未満であるのが好ましく、7.5質量部以上20質量部未満であるのがより好ましく、10質量部以上20質量部未満であるのがさらに好ましい。また、導電性フィラーは、自己結着性多孔質粉体を100体積部としたとき、0.6体積部以上11.9体積部未満添加されるのが好ましく、3.0体積部以上11.9体積部未満添加されるのがより好ましく、4.5体積部以上11.9体積部未満添加されるのがさらに好ましく、6.0体積部以上11.9体積部未満添加されるのがさらに好ましい。
【0033】
このため、この電波吸収体の製造方法を利用すれば、発泡硬化法で必要とされる導電性フィラーの量よりも少量の導電性フィラーで、1GHz以上100GHz以下の周波数帯域の電波を減衰する樹脂製の電波吸収体を作製することができる。
【0034】
(11)
本発明の第11局面に係る電波吸収体の製造方法は、第10局面に係る電波吸収体の製造方法であって、電波吸収体は、10GHz以上21GHz未満の周波数帯域の電波を減衰する。なお、導電性フィラーとしては、例えば、カーボンブラックやカーボンナノチューブ等が使用することができる。また、この導電性フィラーは、自己結着性多孔質粉体を100質量部としたとき、1質量部以上20質量部未満添加される。なお、導電性フィラーは、自己結着性多孔質粉体を100質量部としたとき、5質量部以上20質量部未満添加されるのが好ましく、10質量部以上20質量部未満添加されるのがより好ましく、10質量部以上17.5質量部未満添加されるのがさらに好ましい。また、導電性フィラーは、自己結着性多孔質粉体を100体積部としたとき、3.0体積部以上11.9体積部未満添加されるのが好ましく、6.0体積部以上11.9体積部未満添加されるのがより好ましく、6.0体積部以上10.5体積部未満添加されるのがさらに好ましい。
【0035】
このため、この電波吸収体の製造方法を利用すれば、発泡硬化法で必要とされる導電性フィラーの量よりも少量の導電性フィラーで、10GHz以上21GHz未満の周波数帯域の電波を減衰する樹脂製の電波吸収体を作製することができる。
【0036】
(12)
本発明の第12局面に係る電波吸収体の製造方法は、第10局面に係る電波吸収体の製造方法であって、電波吸収体は、21GHz以上100GHz以下の周波数帯域の電波を減衰する。なお、導電性フィラーとしては、例えば、カーボンブラックやカーボンナノチューブ等が使用することができる。また、この導電性フィラーは、自己結着性多孔質粉体を100質量部としたとき、1質量部以上20質量部未満添加される。なお、導電性フィラーは、自己結着性多孔質粉体を100質量部としたとき、10質量部以上20質量部未満添加されるのが好ましく、15質量部以上20質量部未満添加されるのがより好ましい。また、導電性フィラーは、自己結着性多孔質粉体を100体積部としたとき、0.6体積部以上11.9体積部未満添加されるのが好ましく、6.0体積部以上11.9体積部未満添加されるのがより好ましく、9.0体積部以上11.9体積部未満添加されるのがさらに好ましい。
【0037】
このため、この電波吸収体の製造方法を利用すれば、発泡硬化法で必要とされる導電性フィラーの量よりも少量の導電性フィラーで、21GHz以上100GHz以下の周波数帯域の電波を減衰する樹脂製の電波吸収体を作製することができる。
【0038】
(13)
本発明の第13局面に係る電波吸収体の製造方法は、第1局面から第12局面のいずれかに係る電波吸収体の製造方法であって、多孔質粉体は、ポリイミド樹脂を主成分とする。なお、多孔質粉体は、ポリイミド樹脂のみから形成されていてもよい。
【0039】
このため、この電波吸収体の製造方法を利用すれば、多孔質粉体に優れた耐熱性を付与することができ、延いては耐熱性に優れる電波吸収体を製造することができる。
【0040】
なお、ポリイミド樹脂としては、特に限定されないが、例えば、縮合型熱硬化性ポリイミド樹脂や付加型熱硬化性ポリイミド樹脂等の熱硬化性ポリイミド樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂が挙げられる。なお、これらのポリイミド樹脂の中でも熱硬化性ポリイミド樹脂が特に好ましい。
【0041】
縮合型熱硬化性ポリイミド樹脂は、例えば、テトラカルボン酸エステルとジアミンとを加熱することにより得られる。なお、テトラカルボン酸エステルは、対応するテトラカルボン酸二無水物をアルコールでエステル化することにより極めて簡単に得られる。なお、テトラカルボン酸二無水物のエステル化は50〜150度Cの温度で行うのが好ましい。
【0042】
また、テトラカルボン酸エステルを誘導形成するためのテトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、2,2−ビス[3,4−(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(BPADA)、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、オキシジフタル酸無水物(ODPA)、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホキシド二無水物、チオジフタル酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物や9,9−ビス[4−(3,4’−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,4−ジカルボキシ−1−シクロヘキシルコハク酸二無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物などが挙げられる。なお、これらのテトラカルボン酸二無水物は、単独で用いられてもよいし、混合されて用いられてもよい。
【0043】
また、テトラカルボン酸エステルを誘導形成するためのアルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、シクロヘキサノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−イソプロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、フェノール、1−ヒドロキシ−2−プロパノン、4−ヒドロキシ−2−ブタノン、3−ヒドロキシ−2−ブタノン、1−ヒドロキシ−2−ブタノン、2−フェニルエタノール、1−フェニル−1−ヒドロキシエタン、2−フェノキシエタノールなどが挙げられ、さらに1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、グリセロール、2−エチル−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、2,2’−ジヒドロキシジエチルエーテル、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、3,6−ジオキサオクタン−1,8−ジオール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコールなどの多価アルコールも挙げられる。なお、これらのアルコールは、単独で用いられてもよいし、混合されて用いられてもよい。
【0044】
なお、テトラカルボン酸エステルは、他の方法、例えばテトラカルボン酸の直接エステル化によっても製造することができる。
【0045】
また、ジアミンとしては、パラフェニレンジアミン(PPD)、メタフェニレンジアミン(MPDA)、2,5−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニル、2,2−ビス(トリフルオロメチル)−4、4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MDA)、2,2−ビス−(4−アミノフェニル)プロパン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(33DDS)、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(44DDS)、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(34ODA)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、1,5−ジアミノナフタレン、4,4’−ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(133APB)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(134APB)、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPSM)、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、2,2−ビス(3−アミノフェニル)1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレンなどが挙げられる。これらのジアミンは、単独で用いられてもよいし、混合されて用いられてもよい。
【0046】
また、付加型熱硬化性ポリイミド樹脂は、例えば、極性溶媒中にテトラカルボン酸二無水物、ジアミンおよび付加型官能基を有するジカルボン酸無水物を既知の方法で投入することにより得られる。なお、ここにいう「付加型官能基」とは、特に限定されないが、例えば、アルケニル基や、アルキニル基、アルケニレン基、アルキニレン基などである。
【0047】
なお、テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、前述のテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。なお、これらのテトラカルボン酸二無水物は、単独で用いられてもよいし、混合されて用いられてもよい。
【0048】
また、ジアミンとしては、例えば、前述のジアミンなどが挙げられる。なお、これらのジアミンは、単独で用いられてもよいし、混合されて用いられてもよい。
【0049】
また、付加型官能基を有するジカルボン酸無水物としては、例えば、ナジック酸無水物(5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物)、マレイン酸無水物のアルキル誘導体(例えば、メチルマレイン酸無水物(シトラコン酸無水物))、イタコン酸無水物、ジメチルマレイン酸無水物、2−オクテン−1−イルコハク酸無水物、4−フェニルエチニル無水フタル酸などが挙げられる。
【0050】
また、このような付加型熱硬化性ポリイミド樹脂としては、例えば、特開2000−219741号公報や特開2005−76032号公報等に記載されるものが挙げられる。
【0051】
(14)
本発明の第14局面に係る電波吸収体は、第1局面から第13局面のいずれかに係る電波吸収体の製造方法により得られる。
【0052】
このため、この電波吸収体は、発泡硬化法で必要とされる導電性フィラーの量よりも少量の導電性フィラーで構成される。このため、この電波吸収体は、発泡硬化法において使用される樹脂と同一の樹脂が使用されていると仮定すると、発泡硬化法により得られる電波吸収体よりも原料コストが低い。このため、この電波吸収体は、市場に普及しやすい。
【0053】
(15)
本発明の第15局面に係る電波吸収体は、多孔質構造を有し、1GHz以上100GHz以下の周波数帯域の電波を減衰する電波吸収体であって、樹脂および導電性フィラーを備える。なお、このような電波吸収体は、第1局面から第13局面のいずれかに係る電波吸収体の製造方法により得ることができる。樹脂としては、「本発明の第1局面に係る電波吸収体の製造方法」の欄に例示される各種樹脂を用いることができる。また、この樹脂には、「本発明の第1局面に係る電波吸収体の製造方法」の欄に記載される通り、必要に応じて、結着剤(バインダー)、軟化剤、硬化剤、充填剤、強化剤、加硫剤(粉末硫黄等)、加硫促進剤、加硫促進助剤、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤(老化防止剤)、発泡剤または発泡助剤、整泡剤等の添加剤が添加されてもかまわない。なお、本発明において、結着剤が樹脂に添加される場合、その結着剤の質量は樹脂の質量に含まれるが、結着剤以外の添加剤が樹脂に添加される場合、その添加材の質量は樹脂の質量には含まれない。導電性フィラーは、樹脂100質量部に対して1質量部以上20質量部未満存在する。なお、導電性フィラーの添加量は、樹脂100質量部に対して5質量部以上20質量部未満であるのが好ましく、7.5質量部以上20質量部未満であるのがより好ましく、10質量部以上20質量部未満であるのがさらに好ましい。また、導電性フィラーの添加量は、樹脂100体積部に対して0.6体積部以上11.9体積部未満添加されるのが好ましく、3.0体積部以上11.9体積部未満添加されるのがより好ましく、4.5体積部以上11.9体積部未満添加されるのがさらに好ましく、6.0体積部以上11.9体積部未満添加されるのがさらに好ましい。また、導電性フィラーとしては、「本発明の第1局面に係る電波吸収体の製造方法」の欄に例示される各種導電性フィラーを用いることができる。
【0054】
この電波吸収体は、発泡硬化法で必要とされる導電性フィラーの量よりも少量の導電性フィラーで1GHz以上100GHz以下の周波数帯域の電波を減衰することができる。このため、この電波吸収体は、発泡硬化法において使用される樹脂と同一の樹脂が使用されていると仮定すると、発泡硬化法により得られる同様の電波吸収特性を有する電波吸収体よりも原料コストが低い。このため、この電波吸収体は、1GHz以上100GHz以下の周波数帯域用の電波吸収体として市場に普及しやすい。
【0055】
(16)
本発明の第16局面に係る電波吸収体は、第15局面に係る電波吸収体であって、10GHz以上21GHz未満の周波数帯域の電波を減衰する。なお、導電性フィラーとしては、例えば、カーボンブラックやカーボンナノチューブ等が使用することができる。また、この導電性フィラーは、樹脂100質量部に対して1質量部以上20質量部未満存在する。なお、導電性フィラーは、樹脂100質量部に対して5質量部以上20質量部未満添加されるのが好ましく、10質量部以上20質量部未満添加されるのがより好ましく、10質量部以上17.5質量部未満添加されるのがさらに好ましい。また、導電性フィラーは、樹脂を100体積部としたとき、3.0体積部以上11.9体積部未満存在するのが好ましく、6.0体積部以上11.9体積部未満添加されるのがより好ましく、6.0体積部以上10.5体積部未満添加されるのがさらに好ましい。
【0056】
この電波吸収体は、発泡硬化法で必要とされる導電性フィラーの量よりも少量の導電性フィラーで10GHz以上21GHz未満の周波数帯域の電波を減衰することができる。このため、この電波吸収体は、発泡硬化法において使用される樹脂と同一の樹脂が使用されていると仮定すると、発泡硬化法により得られる同様の電波吸収特性を有する電波吸収体よりも原料コストが低い。このため、この電波吸収体は、10GHz以上21GHz未満の周波数帯域用の電波吸収体として市場に普及しやすい。
【0057】
(17)
本発明の第17局面に係る電波吸収体は、第16局面に係る電波吸収体であって、導電性フィラーは、カーボンブラックである。そして、カーボンブラックは、DBP吸油量が350cm/100g以上650cm/100g以下であり、BET比表面積が800m/g以上1800m/g以下である。なお、カーボンブラックのDBP吸油量は400cm/100g以上650cm/100g以下であるのが好ましく、450cm/100g以上650cm/100g以下であるのがより好ましい。また、カーボンブラックのBET比表面積は800m/g以上1700m/g以下であるのが好ましく、900m/g以上1700m/g以下であるのがより好ましく、1000m/g以上1700m/g以下であるのがさらに好ましい。
【0058】
本願発明者の鋭意検討の結果、この電波吸収体の導電性フィラー(誘電損失材料)として上記特性を有するカーボンブラックを利用すると、電波吸収体がより良好な電波吸収特性を示すことが明らかとなった。
【0059】
このため、この電波吸収体は、より良好な電波吸収特性を示すことができる。
【0060】
(18)
本発明の第18局面に係る電波吸収体は、第15局面に係る電波吸収体であって、21GHz以上100GHz以下の周波数帯域の電波を減衰する。なお、導電性フィラーとしては、例えば、カーボンブラックやカーボンナノチューブ等が使用することができる。また、この導電性フィラーは、樹脂100質量部に対して1質量部以上20質量部未満存在する。なお、導電性フィラーは、樹脂100質量部に対して10質量部以上20質量部未満添加されるのが好ましく、15質量部以上20質量部未満存在するのがより好ましい。また、導電性フィラーは、樹脂を100体積部としたとき、0.6体積部以上11.9体積部未満存在するのが好ましく、6.0体積部以上11.9体積部未満添加されるのがより好ましく、9.0体積部以上11.9体積部未満添加されるのがさらに好ましい。
【0061】
この電波吸収体は、発泡硬化法で必要とされる導電性フィラーの量よりも少量の導電性フィラーで21GHz以上100GHz以下の周波数帯域の電波を減衰することができる。このため、この電波吸収体は、発泡硬化法において使用される樹脂と同一の樹脂が使用されていると仮定すると、発泡硬化法により得られる同様の電波吸収特性を有する電波吸収体よりも原料コストが低い。このため、この電波吸収体は、21GHz以上100GHz以下の周波数帯域用の電波吸収体として市場に普及しやすい。
【0062】
(19)
本発明の第19局面に係る電波吸収体は、第15局面または第18局面に係る電波吸収体であって、連続気泡構造を有する。
【0063】
このため、この電波吸収体は柔軟性に優れるのみならず、その広い内表面積により優れた放熱性と電波吸収性を備えることができる。
【0064】
(20)
本発明の第20局面に係る電波吸収体は、第15局面から第19局面のいずれかに係る電波吸収体であって、樹脂は、ガラス転移温度が250度C以上である。
【0065】
このため、この電波吸収体は、電波吸収より発生する熱により溶融するおそれを低減することができる。
【0066】
(21)
本発明の第21局面に係る電波吸収体は、第15局面から第20局面のいずれかに係る電波吸収体であって、樹脂はポリイミド樹脂を主成分とする。なお、この樹脂は、ポリイミド樹脂のみであってもよい。
【0067】
ポリイミド樹脂は、一般に、250度C以上の温度環境下に曝されてもその物理的物性、化学的物性を良好に保持する。このため、この電波吸収体は、電波吸収より発生する熱にほとんど影響を受けることなくその電波吸収特性を安定して維持することができる。
【0068】
(22)
本発明の第22局面に係る電波吸収体は、第21局面に係る電波吸収体であって、ポリイミド樹脂は、主として、下記化学構造式(I)に示される構成単位を有する。
【化1】

【0069】
化学構造式(I)に示される構成単位を主成分とするポリイミド樹脂は、300度C以上加熱することにより架橋構造を形成し、優れた剛性や強度を示すことが知られている。
【0070】
このため、この電波吸収体は、優れた剛性や強度を示すことができる。
【0071】
(23)
本発明の第23局面に係る電波吸収体は、第15局面から第22局面のいずれかに係る電波吸収体であって、導電率が1.0x10−15S/m以上1.0x10−2S/m以下である。なお、電波吸収体の導電率は、1.0x10−14S/m以上1.0x10−2S/m以下であるのが好ましく、1.0x10−13S/m以上1.0x10−2S/m以下であるのがより好ましく、1.0x10−8S/m以上1.0x10−2S/m以下であるのがさらに好ましい。
【0072】
本願発明者の鋭意検討の結果、電波吸収体の導電率が上記範囲であると、電波吸収体が良好な電波吸収特性を示すことが明らかとなった。
【0073】
このため、この電波吸収体は、良好な電波吸収特性を示すことができる。
【0074】
(24)
本発明の第24局面に係る電波吸収体は、第15局面から第23局面のいずれかに係る電波吸収体であって、見かけ密度が0.0625g/cm以上0.625g/cm以下である。なお、見かけ密度は0.0833g/cm以上0.625g/cm以下であるのが好ましく、0.120g/cm以上0.625g/cm以下であるのがより好ましい。
【0075】
このため、この電波吸収体は比較的軽量である。したがって、この電波吸収体は、建造物等への設置に際し、その設置作業性を良好なものとすることができる。
【0076】
(25)
本発明の第25局面に係る電波吸収体は、第15局面から第24局面のいずれかに係る電波吸収体であって、300度Cで1時間の加熱処理前後の「23度Cにおける周波数1GHzから50GHzまでの複素比誘電率」の変化率が30%以下である。なお、この変化率の下限は0%である。また、電波吸収体は、300度Cで1時間の加熱処理前後の「23度Cにおける周波数1GHzから50GHzまでの複素比誘電率」の変化率が25%以下であるのが好ましく、20%以下であるのがより好ましい。
【0077】
このため、この電波吸収体は、300度Cで1時間の加熱処理前後の「23度Cにおける周波数1GHzから50GHzまでの複素比誘電率」が変化しにくい。したがって、この電波吸収体は、ライフサイクルに優れる。
【0078】
(26)
本発明の第26局面に係る電波吸収体は、第15局面から第25局面のいずれかに係る電波吸収体であって、1GHz以上50GHz以下のいずれかの周波数において10dB以上の電波吸収性能を示す。なお、電波吸収体は、1GHz以上50GHz以下のいずれかの周波数において15dB以上の電波吸収性能を示すのが好ましく、20dB以上の電波吸収性能を示すのがより好ましい。
【0079】
このため、この電波吸収体は、ETC(エレクトロニック・トール・コレクション・システム)や、無線LAN(ローカル・エリア・ネットワーク)、通信衛星、テレビ放送用衛星等から発生する不要な電波を消去する電波吸収体として使用することできる。
【0080】
(27)
本発明の第27局面に係る電波吸収体は、多孔質構造を有する電波吸収体であって、樹脂および導電性フィラーを備える。導電性フィラーは、樹脂中に存在する。そして、この電波吸収体は、300度Cで1時間の加熱処理前後の「23度Cにおける周波数1GHzから50GHzまでの複素比誘電率」の変化率が30%以下である。なお、この変化率の下限は0%である。また、電波吸収体は、300度Cで1時間の加熱処理前後の「23度Cにおける周波数1GHzから50GHzまでの複素比誘電率」の変化率が25%以下であるのが好ましく、20%以下であるのがより好ましい。また、樹脂としては、上述の(13)、(22)に示されるポリイミド樹脂が好ましい。
【0081】
このため、この電波吸収体は、300度Cの加熱前後において、23度Cにおける複素比誘電率が変化しにくい。したがって、この電波吸収体は、ライフサイクルに優れる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】実施例2で得られた電波吸収体の電波吸収特性を示すグラフである。
【図2】実施例2で得られた電波吸収体の断面の走査型電子顕微鏡写真(倍率:100倍)である。
【図3】実施例2で得られた電波吸収体の断面の走査型電子顕微鏡写真(倍率:200倍)である。
【図4】実施例2で得られた電波吸収体の断面の走査型電子顕微鏡写真(倍率:500倍)である。
【図5】実施例3で得られた電波吸収体の電波吸収特性を示すグラフである。
【図6】実施例4で得られた電波吸収体の電波吸収特性を示すグラフである。
【図7】実施例5で得られた電波吸収体の電波吸収特性を示すグラフである。
【図8】複素比誘電率測定装置の概略図である。
【図9】実施例6で得られた電波吸収体の電波吸収特性を示すグラフである。
【図10】実施例7で得られた電波吸収体の電波吸収特性を示すグラフである。
【図11】実施例8で得られた電波吸収体の電波吸収特性を示すグラフである。
【図12】実施例9で得られた電波吸収体の電波吸収特性を示すグラフである。
【図13】実施例10で得られた電波吸収体の電波吸収特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0083】
以下、実施例を示して本発明をより詳細に説明する。なお、以下に示される実施例は、例示に過ぎず、本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0084】
1.電波吸収体の作製
(1)原料
主な樹脂原料として株式会社I.S.T製の発泡ポリイミド前駆体粉体SKYBOND(登録商標)7271と、付加型官能基を有するポリイミド粉体(以下「付加型ポリイミド粉体」と略する)とを用意した。また、誘電損失材料としてライオン株式会社製のケッチェンブラックECP−600JD(DBP吸油量495cm/100g,BET比表面積1270m/g)を用意した。
【0085】
なお、SKYBOND(登録商標)7271は、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸エステルとメタフェニレンジアミンとのエタノール溶液を加熱発泡させた後に粉砕して得られる。なお、ここで、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸エステルとメタフェニレンジアミンとのモル比は、およそ1:1である。
【0086】
また、付加型ポリイミド粉体は、極性溶媒中に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジアニリン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンおよびメチルマレイン酸無水物(シトラコン酸無水物)を投入して反応させた後、極性溶媒を除去すると共にイミド化し、粉末化することにより得られる。なお、ここで、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジアニリン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、メチルマレイン酸無水物(シトラコン酸無水物)のモル比はおよそ1:1:1:2である。
【0087】
(2)発泡ポリイミド粉体の調製
40gのSKYBOND(登録商標)7271を圧縮して直径16cmの円盤状のペレットを作製した後、内部温度を200度Cに設定した炉の中にこのペレットを投入して発泡体を得た。そして、この発泡体を360度Cで35分間加熱処理した後に炉から取り出してミルで粉砕し、発泡ポリイミド粉体を得た。
【0088】
(3)電波吸収体の作製
先ず、発泡ポリイミド粉体100質量部に対して25質量部の付加型ポリイミド粉体を加えて第1混合粉体を調製した。そして、この第1混合粉体100質量部に対して17.6質量部のケッチェンブラックECP−600JDを加えて乾式にて混合し、第2混合粉体を調製した。なお、このとき、ケッチェンブラックECP−600JDは、第1混合粉体100体積部としたとき、10.48体積部添加されることなる。なお、この計算は、ポリイミド樹脂の真比重を1.25とし、ケッチェンブラックECP−600JDの真比重を2.1として行っている。
【0089】
94mmx94mmx20mmの内部寸法を有するアルミ枠体内に5.20gの第2混合粉体を投入した後、第2混合粉体の厚みが2.00±0.10mmになるまで第2混合粉体を圧縮した。そして、第2混合粉体を先の通り圧縮したまま、その第2混合粉体を炉に投入して335度Cで4時間加熱して単層の電波吸収体を得た。なお、この電波吸収体中のケッチェンブラックECP−600JD(誘電損失材料)の濃度は15質量%である。
【0090】
2.電波吸収体の物性測定
(1)ガラス転移温度の測定
94mmx94mmx20mmの内部寸法を有するアルミ枠体内に上述の第1混合粉体を5.20g投入した後、第1混合粉体の厚みが2.00±0.10mmになるまで第1混合粉体を圧縮した。そして、第1混合粉体を先の通り圧縮したまま、その第1混合粉体を炉に投入して335度Cで4時間加熱して測定サンプルを得た。
【0091】
そして、セイコーインスツルメンツ製動的弾性測定装置DMS6100を用いて先の測定サンプルの動的粘弾性測定を行ったところ、この電波吸収体中のポリイミド樹脂のガラス転移温度が301度Cであることが明らかとなった。なお、測定条件は、以下の通りである。
【0092】
・測定モード:曲げ測定モード
・周波数 :1Hz
・昇温温度 :2度C/分
【0093】
(2)見かけ密度の測定
単層の電波吸収体から10mmx10mmx10mmのサンプル体を切り出し、そのサンプル体の質量を測定したところ、0.31gであった。したがって、このサンプル体の見かけ密度は、0.31g/cm3となる。
【0094】
(3)発泡倍率
0.2gの発泡ポリイミド粉体と0.05gの付加型ポリイミド粉体とを乾式にて混合して第3混合粉体を調製した。なお、発泡倍率の測定では、ケッチェンブラックECP−600JDは添加されなかった。
【0095】
10mmx10mmx20mmの内部寸法を有するアルミ枠体内に第3混合粉体を投入した後、第3混合粉体の厚みが10mmになるまで第3混合粉体を圧縮した。そして、第3混合粉体を先の通り圧縮したまま、その第3混合粉体を炉に投入して335度Cで4時間加熱して10mmx10mmx10mmのサンプル体を得た。
【0096】
そして、そのサンプル体の質量を測定したところ0.25gであった。したがって、このサンプル体の見かけ密度は、0.25g/cmとなる。そして、ポリイミド樹脂の真密度(1.25g/cm)を、このサンプル体の見かけ密度で割ることにより発泡倍率を求めた。このサンプル体の発泡倍率は5.00であった。
【0097】
(4)複素比誘電率の測定
本実施例に係る電波吸収体の複素比誘電率は、図8に示される複素比誘電率測定装置により測定された。複素比誘電率測定装置100は、図8に示されるように、主に、一対のレンズ付きホーンアンテナ110、ネットワークアナライザー120および通信線130から構成される。一対のレンズ付きホーンアンテナ110は、図8に示されるように、互いに対向するように配置される。なお、測定対象となる電波吸収体SPは、図8に示されるように、一対のレンズ付きホーンアンテナ110の間に設置される。ネットワークアナライザー120は、いわゆるコンピュータであって、図8に示されるように、通信線130を介して一対のレンズ付きホーンアンテナ110と通信接続される。そして、このネットワークアナライザー120は、通信線130を介してレンズ付きホーンアンテナ110に制御信号を送信し、レンズ付きホーンアンテナ110を制御する。また、このネットワークアナライザー120は、通信線130を介してレンズ付きホーンアンテナ110から送信される信号をデジタルデータに変換した後、そのデジタルデータからニコルソン−ロス法またはNIST法と称される材料定数推定用のアルゴリズムを利用して測定対象の電波吸収体SPの複素比誘電率を算出する。なお、電波吸収体SPの複素比誘電率の測定では、先ず、一対のレンズ付きホーンアンテナ110の間の空間を伝送路とみなし、電波吸収体SPを設置しないときの伝送路、つまり空気の伝送特性を測定する。次に、電波吸収体SPを設置し、電波吸収体SPによる電波の反射・透過特性からレンズアンテナ法により空気の伝送特性を基準とする材料定数を特定して電波吸収体SPの複素比誘電率を算出する。
【0098】
18GHzから26.5GHzまでの範囲における上述の電波吸収体の複素比誘電率を測定した結果、複素比誘電率の実部は5.34〜4.41であり、複素比誘電率の虚部は3.40〜2.20であった。
【0099】
(5)導電率の測定
本実施例に係る電波吸収体の導電率は、電波吸収体の体積抵抗率(Ω・cm)の逆数から算出した。電波吸収体の体積抵抗率は、三菱化学社製の抵抗計ロレスタまたはハイレスタにより測定された。なお、体積抵抗率の測定装置として抵抗計ロレスタが使用される場合はJIS−K7194に準じてASPプローブを用いて電波吸収体の体積抵抗率の測定が行われ、体積抵抗率の測定装置として抵抗計ハイレスタが使用される場合はJIS−K6911に準じてUR−100プローブを用いて電波吸収体の体積抵抗率の測定が行われた。
【0100】
本実施例に係る電波吸収体の導電率は、2.17x10−4S/mであった。
【実施例2】
【0101】
「94mmx94mmx20mmの内部寸法を有するアルミ枠体内に3.69gの第2混合粉体を投入したこと」以外は、実施例1と同様にして単層の電波吸収体を作製し、実施例1と同様にしてその単層の電波吸収体の見かけ密度および発泡倍率を測定した。また、本実施例では、「18GHzから50GHzまでの範囲における電波吸収体の電波吸収量の測定」、「電波吸収体の構造観察」および「電波吸収体の複素比誘電率に及ぼす加熱の影響の検討」を行った。なお、この電波吸収体中のケッチェンブラックECP−600JD(誘電損失材料)の濃度は15質量%である。また、このとき、ケッチェンブラックECP−600JDは、第1混合粉体を100体積部としたとき、10.48体積部添加されることなる。なお、この計算は、ポリイミド樹脂の真比重を1.25とし、ケッチェンブラックECP−600JDの真比重を2.1として行っている。
【0102】
この電波吸収体の見かけ密度は0.29g/cm3であり、発泡倍率は4.72であった。
【0103】
また、「18GHzから50GHzまでの範囲における電波吸収量の測定」、「電波吸収体の構造観察」および「電波吸収体の複素比誘電率に及ぼす加熱の影響の検討」は以下の通りに行った。
【0104】
(1)電波吸収量の測定
JIS R 1679/IEC62431に準じて18GHzから50GHzまでの範囲における電波吸収体の電波吸収量を測定したところ、図1に示される通りであった。なお、この電波吸収体の20.25GHzにおける電波吸収量は19.65dBであった(図1参照)。
【0105】
(2)構造観察
本実施例に係る電波吸収体を刃物で切断した後、走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製S−3000N)を用いてその切断面の写真を撮影した。なお、100倍の倍率で撮影した写真を図2に示した。また、200倍の倍率で撮影した写真を図3に示した。また、500倍の倍率で撮影した写真を図4に示した。これらの走査型電子顕微鏡から本実施例に係る電波吸収体は連続気泡構造を有することが明らかとなった。
【0106】
(3)電波吸収体の複素比誘電率に及ぼす加熱の影響の検討
先ず、「実施例1の(5)複素比誘電率の測定」の記載の測定方法に従って、本実施例に係る加熱処理前の電波吸収体の複素比誘電率を測定した。
【0107】
次に、本実施例に係る電波吸収体をオーブンに入れた後、オーブンの温度を30度Cから300度Cまで2度C/分で昇温し、オーブンの温度が300度Cに達してからオーブンの温度を300度Cで1時間維持した。その後、オーブンから電波吸収体を取り出して、「実施例1の(5)複素比誘電率の測定」の記載の測定方法に従って、加熱処理後の電波吸収体の複素比誘電率を測定した。
【0108】
本実施例に係る電波吸収体は、上記加熱処理前後の「23度Cにおける周波数1GHzから50GHzまでの複素比誘電率」の変化率が実部で7.2%以下であり、虚部で4.2%以下であった。
【0109】
なお、電波吸収体の複素比誘電率の変化率Rcは下式(I)により求められる。
【0110】
Rc(%)={|(加熱処理後の電波吸収体の複素比誘電率)−(加熱処理前の電波吸収体の複素比誘電率)|}/(加熱処理前の電波吸収体の複素比誘電率)〕x100 (I)
【実施例3】
【0111】
「94mmx94mmx20mmの内部寸法を有するアルミ枠体内に3.20gの第2混合粉体を投入した後、第2混合粉体の厚みが1.42±0.10mmになるまで第2混合粉体を圧縮したこと」以外は、実施例1と同様にして単層の電波吸収体を作製し、実施例1と同様にしてその単層の電波吸収体の見かけ密度および発泡倍率を測定すると共に実施例2と同様にして「18GHzから50GHzまでの範囲における電波吸収体の電波吸収量の測定」および「電波吸収体の複素比誘電率に及ぼす加熱の影響の検討」を行った。なお、この電波吸収体中のケッチェンブラックECP−600JD(誘電損失材料)の濃度は15質量%である。また、このとき、ケッチェンブラックECP−600JDは、第1混合粉体を100体積部としたとき、10.48体積部添加されることなる。なお、この計算は、ポリイミド樹脂の真比重を1.25とし、ケッチェンブラックの真比重を2.1として行っている。
【0112】
この電波吸収体の見かけ密度は0.24g/cm3であり、発泡倍率は5.73であった。また、この電波吸収体の18GHzから50GHzまでの範囲における電波吸収量は図5に示される通りであった。なお、この電波吸収体の22.70GHzにおける電波吸収量は22.3dBであった(図5参照)。また、この電波吸収体は、上記加熱処理前後の「23度Cにおける周波数1GHzから50GHzまでの複素比誘電率」の変化率が実部で5.6%以下であり、虚部で3.2%以下であった。
【実施例4】
【0113】
「94mmx94mmx20mmの内部寸法を有するアルミ枠体内に3.42gの第2混合粉体を投入した後、第2混合粉体の厚みが1.42±0.10mmになるまで第2混合粉体を圧縮したこと」以外は、実施例1と同様にして単層の電波吸収体を作製し、実施例1と同様にしてその単層の電波吸収体の見かけ密度および発泡倍率を測定すると共に実施例2と同様にして「18GHzから50GHzまでの範囲における電波吸収体の電波吸収量の測定」および「電波吸収体の複素比誘電率に及ぼす加熱の影響の検討」を行った。なお、この電波吸収体中のケッチェンブラックECP−600JD(誘電損失材料)の濃度は15質量%である。また、このとき、ケッチェンブラックECP−600JDは、第1混合粉体を100体積部としたとき、10.48体積部添加されることなる。なお、この計算は、ポリイミド樹脂の真比重を1.25とし、ケッチェンブラックの真比重を2.1として行っている。
【0114】
この電波吸収体の見かけ密度は0.26g/cm3であり、発泡倍率は5.29であった。また、この電波吸収体の18GHzから50GHzまでの範囲における電波吸収量は図6に示される通りであった。なお、この電波吸収体の26GHzにおける電波吸収量は50dBであった(図6参照)。また、この電波吸収体は、上記加熱処理前後の「23度Cにおける周波数1GHzから50GHzまでの複素比誘電率」の変化率が実部で11.6%以下であり、虚部で5.2%以下であった。
【実施例5】
【0115】
「第1混合粉体100質量部に対して17.6質量部の昭和電工製カーボンナノファイバーVGCF−H(BET比表面積13m/g)を加え、乾式にて混合して第2混合粉体を調製したこと」および「94mmx94mmx20mmの内部寸法を有するアルミ枠体内に5.20gの第2混合粉体を投入した後、第2混合粉体の厚みが1.42±0.10mmになるまで第2混合粉体を圧縮したこと」以外は、実施例1と同様にして単層の電波吸収体を作製し、実施例1と同様にしてその単層の電波吸収体の見かけ密度および発泡倍率を測定すると共に実施例2と同様にして「18GHzから50GHzまでの範囲における電波吸収体の電波吸収量の測定」および「電波吸収体の複素比誘電率に及ぼす加熱の影響の検討」を行った。なお、この電波吸収体中のVGCF−H(誘電損失材料)の濃度は15質量%である。また、このとき、VGCF−Hは、第1混合粉体を100体積部としたとき、11.00体積部添加されることなる。なお、この計算は、ポリイミド樹脂の真比重を1.25とし、カーボンナノファイバーの真比重を2.0として行っている。
【0116】
この電波吸収体の見かけ密度は0.28g/cm3であり、発泡倍率は5.00であった。また、この電波吸収体の18GHzから50GHzまでの範囲における電波吸収量は図7に示される通りであった。なお、この電波吸収体の49GHzにおける電波吸収量は34dBであった(図7参照)。また、この電波吸収体は、上記加熱処理前後の「23度Cにおける周波数1GHzから50GHzまでの複素比誘電率」の変化率が実部で10.0%以下であり、虚部で6.0%以下であった。
【実施例6】
【0117】
「第1混合粉体100質量部に対して10.6質量部のケッチェンブラックECP−600JDを加えて乾式にて混合し、第2混合粉体を調製したこと」および「94mmx94mmx20mmの内部寸法を有するアルミ枠体内に5.12gの第2混合粉体を投入した後、第2混合粉体の厚みが2.23±0.10mmになるまで第2混合粉体を圧縮したこと」以外は、実施例1と同様にして単層の電波吸収体を作製し、実施例1と同様にしてその単層の電波吸収体の見かけ密度および発泡倍率を測定すると共に実施例2と同様にして「18GHzから50GHzまでの範囲における電波吸収体の電波吸収量の測定」および「電波吸収体の複素比誘電率に及ぼす加熱の影響の検討」を行った。なお、この電波吸収体中のケッチェンブラックECP−600JD(誘電損失材料)の濃度は9質量%である。また、このとき、ケッチェンブラックECP−600JDは、第1混合粉体を100体積部としたとき、6.31体積部添加されることなる。なお、この計算は、ポリイミド樹脂の真比重を1.25とし、ケッチェンブラックの真比重を2.1として行っている。
【0118】
この電波吸収体の見かけ密度は0.28g/cm3であり、発泡倍率は5.00であった。また、この電波吸収体の18GHzから50GHzまでの範囲における電波吸収量は図9に示される通りであった。なお、この電波吸収体の20GHzにおける電波吸収量は17dBであった(図9参照)。また、この電波吸収体は、上記加熱処理前後の「23度Cにおける周波数1GHzから50GHzまでの複素比誘電率」の変化率が実部で4.5%以下であり、虚部で3.0%以下であった。
【実施例7】
【0119】
「第1混合粉体100質量部に対して15.3質量部のケッチェンブラックECP−600JDを加えて乾式にて混合し、第2混合粉体を調製したこと」および「94mmx94mmx20mmの内部寸法を有するアルミ枠体内に4.53gの第2混合粉体を投入した後、第2混合粉体の厚みが1.94±0.10mmになるまで第2混合粉体を圧縮したこと」以外は、実施例1と同様にして単層の電波吸収体を作製し、実施例1と同様にしてその単層の電波吸収体の見かけ密度および発泡倍率を測定すると共に実施例2と同様にして「18GHzから50GHzまでの範囲における電波吸収体の電波吸収量の測定」および「電波吸収体の複素比誘電率に及ぼす加熱の影響の検討」を行った。なお、この電波吸収体中のケッチェンブラックECP−600JD(誘電損失材料)の濃度は13質量%である。また、このとき、ケッチェンブラックECP−600JDは、第1混合粉体を100体積部としたとき、9.11体積部添加されることなる。なお、この計算は、ポリイミド樹脂の真比重を1.25とし、ケッチェンブラックの真比重を2.1として行っている。
【0120】
この電波吸収体の見かけ密度は0.29g/cm3であり、発泡倍率は5.00であった。また、この電波吸収体の18GHzから50GHzまでの範囲における電波吸収量は図10に示される通りであった。なお、この電波吸収体の19GHzにおける電波吸収量は50dBであった(図10参照)。また、この電波吸収体は、上記加熱処理前後の「23度Cにおける周波数1GHzから50GHzまでの複素比誘電率」の変化率が実部で7.3%以下であり、虚部で5.6%以下であった。
【実施例8】
【0121】
「第1混合粉体100質量部に対して18.8質量部のケッチェンブラックECP−600JDを加えて乾式にて混合し、第2混合粉体を調製したこと」および「94mmx94mmx20mmの内部寸法を有するアルミ枠体内に3.21gの第2混合粉体を投入した後、第2混合粉体の厚みが1.36±0.10mmになるまで第2混合粉体を圧縮したこと」以外は、実施例1と同様にして単層の電波吸収体を作製し、実施例1と同様にしてその単層の電波吸収体の見かけ密度および発泡倍率を測定すると共に実施例2と同様にして「18GHzから50GHzまでの範囲における電波吸収体の電波吸収量の測定」および「電波吸収体の複素比誘電率に及ぼす加熱の影響の検討」を行った。なお、この電波吸収体中のケッチェンブラックECP−600JD(誘電損失材料)の濃度は16質量%である。また、このとき、ケッチェンブラックECP−600JDは、第1混合粉体を100体積部としたとき、11.19体積部添加されることなる。なお、この計算は、ポリイミド樹脂の真比重を1.25とし、ケッチェンブラックの真比重を2.1として行っている。
【0122】
この電波吸収体の見かけ密度は0.30g/cm3であり、発泡倍率は5.00であった。また、この電波吸収体の18GHzから50GHzまでの範囲における電波吸収量は図11に示される通りであった。なお、この電波吸収体の26.5GHzにおける電波吸収量は50dBであった(図11参照)。また、この電波吸収体は、上記加熱処理前後の「23度Cにおける周波数1GHzから50GHzまでの複素比誘電率」の変化率が実部で8.9%以下であり、虚部で7.1%以下であった。
【実施例9】
【0123】
「第1混合粉体100質量部に対して11.7質量部のケッチェンブラックECP−600JDを加えて乾式にて混合し、第2混合粉体を調製したこと」および「94mmx94mmx20mmの内部寸法を有するアルミ枠体内に7.04gの第2混合粉体を投入した後、第2混合粉体の厚みが3.05±0.10mmになるまで第2混合粉体を圧縮したこと」以外は、実施例1と同様にして単層の電波吸収体を作製し、実施例1と同様にしてその単層の電波吸収体の見かけ密度および発泡倍率を測定すると共に実施例2と同様にして「10GHzから18GHzまでの範囲における電波吸収体の電波吸収量の測定」および「電波吸収体の複素比誘電率に及ぼす加熱の影響の検討」を行った。なお、この電波吸収体中のケッチェンブラックECP−600JD(誘電損失材料)の濃度は10質量%である。また、このとき、ケッチェンブラックECP−600JDは、第1混合粉体を100体積部としたとき、6.96体積部添加されることなる。なお、この計算は、ポリイミド樹脂の真比重を1.25とし、ケッチェンブラックの真比重を2.1として行っている。
【0124】
この電波吸収体の見かけ密度は0.29g/cm3であり、発泡倍率は5.00であった。また、この電波吸収体の10GHzから18GHzまでの範囲における電波吸収量は図12に示される通りであった。なお、この電波吸収体の13GHzにおける電波吸収量は50dBであった(図12参照)。また、この電波吸収体は、上記加熱処理前後の「23度Cにおける周波数1GHzから18GHzまでの複素比誘電率」の変化率が実部で12.5%以下であり、虚部で7.5%以下であった。
【実施例10】
【0125】
「第1混合粉体100質量部に対して19.9質量部のケッチェンブラックECP−600JDを加えて乾式にて混合し、第2混合粉体を調製したこと」および「94mmx94mmx20mmの内部寸法を有するアルミ枠体内に1.54gの第2混合粉体を投入した後、第2混合粉体の厚みが0.65±0.10mmになるまで第2混合粉体を圧縮したこと」以外は、実施例1と同様にして単層の電波吸収体を作製し、実施例1と同様にしてその単層の電波吸収体の見かけ密度および発泡倍率を測定すると共に実施例2と同様にして「50GHzから100GHzまでの範囲における電波吸収体の電波吸収量の測定」および「電波吸収体の複素比誘電率に及ぼす加熱の影響の検討」を行った。なお、この電波吸収体中のケッチェンブラックECP−600JD(誘電損失材料)の濃度は16.9質量%である。また、このとき、ケッチェンブラックECP−600JDは、第1混合粉体を100体積部としたとき、11.82体積部添加されることなる。なお、この計算は、ポリイミド樹脂の真比重を1.25とし、ケッチェンブラックの真比重を2.1として行っている。
【0126】
この電波吸収体の見かけ密度は0.29g/cm3であり、発泡倍率は5.00であった。また、この電波吸収体の50GHzから100GHzまでの範囲における電波吸収量は図13に示される通りであった。なお、この電波吸収体の60GHzにおける電波吸収量は16dBであった(図13参照)。また、この電波吸収体は、上記加熱処理前後の「23度Cにおける周波数1GHzから100GHzまでの複素比誘電率」の変化率が実部で3.6%以下であり、虚部で8.7%以下であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも導電性フィラーと樹脂製の多孔質粉体とを含む混合粉体を準備する準備工程と、
前記混合粉体を圧縮成形して多孔質の電波吸収体を作製する圧縮成形工程と
を備える、電波吸収体の製造方法。
【請求項2】
前記圧縮成形工程では、前記混合粉体が加熱されながら圧縮成形される
請求項1に記載の電波吸収体の製造方法。
【請求項3】
前記準備工程には、
多孔質体を形成する第1多孔質体形成工程と、
前記多孔質体を粉砕して前記多孔質粉体を作製する第1多孔質体粉砕工程と、
少なくとも前記多孔質粉体と前記導電性フィラーとを混合して前記混合粉体を作製する混合粉体作製工程と
が含まれる
請求項1または2に記載の電波吸収体の製造方法。
【請求項4】
前記準備工程には、
前記導電性フィラーが分散される樹脂含有液から多孔質体を形成する第2多孔質体形成工程と、
前記多孔質体を粉砕する第2多孔質体粉砕工程と
が含まれる
請求項1または2に記載の電波吸収体の製造方法。
【請求項5】
前記混合粉体には、結着剤が含まれる
請求項1から4のいずれかに記載の電波吸収体の製造方法。
【請求項6】
前記電波吸収体は、1GHz以上100GHz以下の周波数帯域の電波を減衰し、
前記導電性フィラーは、前記多孔質粉体と前記結着剤との合計質量を100質量部としたとき、1質量部以上20質量部未満添加される
請求項5に記載の電波吸収体の製造方法。
【請求項7】
前記多孔質粉体は、自己結着性を有する自己結着性多孔質粉体である
請求項1から4のいずれかに記載の電波吸収体の製造方法。
【請求項8】
前記電波吸収体は、1GHz以上100GHz以下の周波数帯域の電波を減衰し、
前記導電性フィラーは、前記自己結着性多孔質粉体を100質量部としたとき、1質量部以上20質量部未満添加される
請求項7に記載の電波吸収体の製造方法。
【請求項9】
前記多孔質粉体は、ポリイミド樹脂を主成分とする
請求項1から8のいずれかに記載の電波吸収体の製造方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の電波吸収体の製造方法により得られる
電波吸収体。
【請求項11】
多孔質構造を有し、1GHz以上100GHz以下の周波数帯域の電波を減衰する電波吸収体であって、
樹脂と、
前記樹脂100質量部に対して1質量部以上20質量部未満存在する導電性フィラーと
を備える、電波吸収体。
【請求項12】
前記導電性フィラーは、カーボンブラックであり、
前記カーボンブラックは、DBP吸油量が350cm/100g以上650cm/100g以下であり、BET比表面積が800m/g以上1800m/g以下である
請求項11に記載の電波吸収体。
【請求項13】
連続気泡構造を有する
請求項11または12に記載の電波吸収体。
【請求項14】
前記樹脂は、ガラス転移温度が250度C以上である
請求項11から13のいずれかに記載の電波吸収体。
【請求項15】
前記樹脂は、ポリイミド樹脂を主成分とする
請求項11から14のいずれかに記載の電波吸収体。
【請求項16】
前記ポリイミド樹脂は、主として、下記化学構造式(I)に示される構成単位を有する
請求項15に記載の電波吸収体。
【化1】

【請求項17】
導電率が1.0x10−15S/m以上1.0x10−2S/m以下である
請求項11から16のいずれかに記載の電波吸収体。
【請求項18】
見かけ密度が0.0625g/cm以上0.625g/cm以下である
請求項11から17のいずれかに記載の電波吸収体。
【請求項19】
300度Cで1時間の加熱処理前後の「23度Cにおける周波数1GHzから50GHzまでの複素比誘電率」の変化率が30%以下である
請求項11から18のいずれかに記載の電波吸収体。
【請求項20】
1GHz以上50GHz以下のいずれかの周波数において10dB以上の電波吸収性能を示す
請求項11から19のいずれかに記載の電波吸収体。
【請求項21】
多孔質構造を有する電波吸収体であって、
樹脂と、
前記樹脂中に存在する導電性フィラーと
を備え、
300度Cで1時間の加熱処理前後の「23度Cにおける周波数1GHzから50GHzまでの複素比誘電率」の変化率が30%以下である
電波吸収体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−74668(P2012−74668A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40806(P2011−40806)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 工業材料 第59巻 第2号 通巻第747号 発行所:日刊工業出版プロダクション 発行日:平成23年2月1日 社団法人 電子情報通信学会 2010年ソサイエティ大会講演論文集 発行所:社団法人 電子情報通信学会 発行日:平成22年8月31日
【出願人】(391059399)株式会社アイ.エス.テイ (102)
【Fターム(参考)】