説明

電波吸収体部材用難燃紙および電波吸収体部材

【課題】
電波吸収体の部材に好適な、高強度、高剛性、高難燃性を有する加工性に優れた電波吸収体部材用難燃紙および、それを用いた高強度な取扱い性に優れた電波吸収部材を提供する。
【解決手段】
本発明の電波吸収体部材用難燃紙は、セルロース繊維40〜70質量%、ガラス繊維5〜20質量%、水酸化アルミニウム粉末5〜50質量%、リン酸グアニジン難燃剤6〜20質量%からなり、かつ、前記リン酸グアニジン難燃剤が前記セルロース繊維に対して、15〜30質量%含有していることを特徴とする。
また、本発明の電波吸収体部材は、前記電波吸収体部材用難燃紙を、波型に加工した中芯及び/またはライナに用いた段ボール構造体であり、かつ中芯及び/またはライナが導電性物質を含有しており、かつ段ボール構造体の曲げ強度が15N以上であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波暗室用のほか、無線通信システムなどにおける電波障害を軽減するために用いられる電波吸収体の部材となる難燃紙および、それを用いた電波吸収体の部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電波吸収体は、各種電子機器・通信機器から発生する電波ノイズの評価、及び電波による誤作動がないかを評価する施設である電波暗室や、近年では、ETC、無線LAN、RFIDシステムなどの無線通信システムにおいて、電波干渉といった電波障害を低減させるために使用されている。
【0003】
これら電波吸収体は、電波エネルギーを熱エネルギーに変化することにより電波を吸収するため、高電力の電波が照射された際、電波吸収体が燃えてしまう可能性があり、特に電波暗室に用いられる吸収体については、難燃性が求められている。また、その他電波吸収体においても火災等に対する安全性を確保するため、難燃性を有するものが求められている。
【0004】
また、これら電波吸収体は、取扱い性(施工性)の観点から軽量であることが求められており、さらには、破損や変形による電波吸収性能の低下が無いよう、剛性の高いものが求められている。
【0005】
上記のような要求を満たす電波吸収体として、特許文献1のような、難燃性を有するシート材を、段ボール構造体とし、それを組み立てた中空立体構造の電波吸収体が提案されている。しかしながら、この電波吸収体を構成するシート材は、目標とする難燃性を達成するため、多くの無機成分(特に無機粉体)を必要としていた。その結果、シート材としての強度が低くなり、シート材を段ボール構造体にしても、運搬、施工時、施工後の衝撃に耐え得る十分な剛性が得られず、変形や破損してしまうといった問題があった。また、剛性を高くしようとすると、シート材の米坪量(原料)を多くする必要があり、結果的に吸収体の重量アップ、材料コストアップにつながってしまうといった問題があった。更に、これらシート材を段ボール構造体に加工する際においても、シート材の強度が低いため、加工装置の圧力や張力に耐えられずシート材が破断するなどの加工不良が発生したり、これらを防ぐため加工スピードを上げられず、加工コストがアップするなどの加工上の問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−311332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解消し、電波吸収体の部材に好適な、高強度、高剛性、高難燃性を有する加工性に優れた電波吸収体部材用難燃紙および、それを用いた取扱い性に優れた高強度な電波吸収部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の電波吸収体部材用難燃紙は、セルロース繊維40〜70質量%、ガラス繊維5〜20質量%、水酸化アルミニウム粉末5〜50質量%、リン酸グアニジン難燃剤6〜20質量%を含有し、かつ、前記リン酸グアニジン難燃剤が前記セルロース繊維に対して15〜30質量%含有していることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の電波吸収体部材は、前記電波吸収体部材用難燃紙を、波型に加工した中芯及び/またはライナに用いた段ボール構造体であり、かつ中芯及び/またはライナが導電性物質を含有しており、かつ段ボール構造体の曲げ強度が15N以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高強度、高剛性、高難燃性を有する加工性に優れた電波吸収体部材用難燃紙および、それを用いた取扱い性に優れた高強度な電波吸収部材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】段ボール構造体の曲げ強度における測定治具の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態の例を説明する。
【0013】
本発明の電波吸収体部材用難燃紙は、セルロース繊維40〜70質量%、ガラス繊維5〜20質量%、水酸化アルミニウム粉末5〜50質量%、リン酸グアニジン難燃剤6〜20質量%を含有し、かつ、前記リン酸グアニジン難燃剤が前記セルロース繊維に対して15〜30質量%含有している。
【0014】
本発明の電波吸収体部材用難燃紙中のセルロース繊維の含有量は、40〜70質量%含む必要がある。その含有量が少ないと、電波吸収体部材用難燃紙の十分な引張強度が得られず、段ボール構造体などの二次加工時に破断し、安定した製造をすることが困難になる。更に、電波吸収体部材用難燃紙の剛軟度も低下するため、段ボール構造体の十分な曲げ強度が得られなくなり、段ボール構造体を用いた電波暗室用電波吸収体としてよく用いられる形態である中空の立体形状した際に、施工時や使用時の接触などにより変形、破損しやすくなる。また、多すぎると、UL94 V−0乃至はVTM−0相当の難燃性を達成することが困難になる。セルロース繊維の含有量としては、さらに下の方の値としては50質量%以上、上の方の値としては70質量%以下の範囲が好ましい。この範囲であると、二次加工するのに十分な引張強度と、電波吸収体部材とした際に十分な曲げ強度を得ることができるからである。
【0015】
セルロース繊維としては、広葉樹パルプ、針葉樹パルプ、サーモメカニカルパルプ、砕木パルプ、リンターパルプ、麻パルプなどを挙げることができる。
次に、本発明の電波吸収体部材用難燃紙中のガラス繊維の含有量は、5〜20質量%含む必要がある。その含有量が少ないと、UL94 V−0乃至はVTM−0相当の難燃性を達成することが難しくなる。また、電波吸収体部材用難燃紙の剛軟度が低下するため、段ボール構造体とした際に、十分な曲げ強度が得られなくなり、段ボール構造体を中空立体形状の電波吸収体とした際に、施工時や使用時の接触などにより変形、破損しやすくなる。また、多いと、電波吸収体部材用難燃紙としての剛軟度は高くなるものの、電波吸収体部材用難燃紙を抄造する際に、抄造スピードを下げなければ安定した抄造をすることが困難になり、製造コストの観点から好ましくない。ガラス繊維の含有量は5〜15質量%の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは5〜10質量%である。この範囲とすることで、高度な強度、特に高い剛性を有する電波吸収体部材用難燃紙をより安定して製造でき、段ボール構造体とした際に十分な曲げ強度が得られ、施工時や使用時の接触などによる変形、破損に耐え得る電波吸収体とすることができる。
【0016】
次に、本発明の電波吸収体部材用難燃紙は水酸化アルミニウム粉末を、5〜50質量%含むことが必要である。水酸化アルミニウムは、白色粉末の分子中に結晶水を持ち、高温加熱時にこれらが加水分解し、その際の吸熱作用により難燃効果が得られる。水酸化アルミニウムは、抄紙時にカチオン高分子化合物あるいはアニオン高分子化合物からなる歩留まり向上剤や紙力増強剤等の慣用的な抄紙用薬剤を適宜添加することで、セルロース繊維などの繊維に吸着され、紙の難燃性に寄与する。電波吸収体部材用難燃紙に対する水酸化アルミニウム粉末の含有量が少ないと、目標とするUL94 V−0乃至はVTM−0相当の難燃性を達成することができず、また、難燃性を得るためには多くの難燃剤が必要となる。一方、多すぎると、高度な難燃性は得られるが、電波吸収体部材用難燃紙として十分な引張強度が得られず、段ボール構造体などの二次加工時に破断し、安定した製造をすることが困難になる。また、段ボール構造体の十分な曲げ強度が得られず、段ボール構造体を中空立体形状の電波吸収体とした際に、施工時や使用時の接触などにより変形、破損しやすくなるため、好ましくない。更に、水酸化アルミニウム粉末の好ましい含有量は下の方としては10質量%以上、一方上の方としては40質量%以下の範囲であると、二次加工するのに十分な引張強度と、電波吸収体部材とした際に十分な曲げ強度を得ることができるため好ましい。また、白色であるため、電波暗室用の電波吸収体とした際、室内の照明効果を高めることができる。
【0017】
更に、リン酸グアニジン難燃剤を6〜20質量%含むことが必要であり、かつリン酸グアニジン難燃剤を前記セルロース繊維に対して15〜30質量%含有することが必要である。難燃剤としては、リン酸グアニジン、リン酸メラミン、スルファミン酸グアニジン、スルファミン酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、縮合リン酸アルキルエステル誘導体などが挙げられるが、本発明の電波吸収体部材用難燃紙の構成において、少量の含有量で高度な難燃性を達成できる点や、加水分解による経時的に難燃性の低下がない点から、リン酸グアニジン難燃剤を用いる必要がある。なお、本発明の目的を阻害しない範囲で、リン酸グアニジン難燃剤に加えてその他の難燃剤を混合して電波吸収体部材用難燃紙に含有させてもよい。また、リン酸グアニジン難燃剤の含有量が6質量%より少ない含有量、またはリン酸グアニジン難燃剤が少ない含有量であると、目標とするUL94 V−0乃至はVTM−0相当の難燃性を達成することができない傾向にあり、一方、リン酸グアニジン難燃剤が多い場合、または、リン酸グアニジン難燃剤がセルロース繊維に対して多すぎる場合であると、段ボール構造体など、電波吸収体部材用難燃紙の二次加工時に、加工ロールにリン酸グアニジン難燃剤が脱落、堆積し、電波吸収体部材用難燃紙が破断するなど加工性が低下する傾向がある。更に、リン酸グアニジン難燃剤の好ましい含有量は下の方としては6質量%以上、上の方としては15質量%以下が好ましい。またリン酸グアニジン難燃剤の前記セルロース繊維に対する割合としては、下の方の値としては15質量%以上、また上の方の値としては25質量%以下の含有が好ましい。より安定して段ボール構造体などの二次加工することか可能となるからである。
【0018】
本発明の電波吸収体部材用難燃紙の米坪量は、50〜200g/mの範囲であることが好ましい。電波吸収体部材用難燃紙を段ボール構造体に二次加工する際に、電波吸収体部材用難燃紙の破断が抑制でき、また電波吸収体部材用難燃紙が柔軟であり、高速でも安定したができるためである。さらには、80g/m以上が好ましく、一方150g/m以下であることが好ましい。
【0019】
なお、本発明の電波吸収体部材用難燃紙は、必要に応じて、一般の紙材料で用いられる湿潤紙力増強剤や乾燥紙力増強剤、歩留向上剤、バインダーなどを添加剤として添加してもよい。
【0020】
本発明の電波吸収体部材用難燃紙は、UL94の難燃性試験でV−0もしくはVTM−0に合格するレベルであることが好ましい。電波吸収体、特に電波暗室用電波吸収体は、安全性の点で難燃性を有することが求められているためである。ここで、ULとは、米国Underwriters Laboratories Inc.が制定・認可している電子機器に関する安全性規格であり、UL94は難燃性の規格である。
【0021】
また、上記米坪量の範囲において、電波吸収体部材用難燃紙の剛軟度が縦方向横方向共に1〜10mNであることが好ましい。剛軟度がこの範囲であれば、電波吸収体部材用難燃紙を電波吸収体部材である段ボール構造体とした場合に、十分な曲げ強度を得ることができ、この段ボール構造体を中空立体形状の電波吸収体とした際に、施工時や使用時の接触などにより変形、破損しにくくなるため、また電波吸収体部材用難燃紙が柔軟であり、段ボール構造体に二次加工する際に、高速でも安定した加工ができるためである。さらに、2mN以上であることが好ましく、また8mN以下であることも好ましい。
【0022】
更に、本発明の電波吸収体部材用難燃紙の引張強度が4kN/m以上であると、段ボール構造体など二次加工する際に、電波吸収体部材用難燃紙の破断が抑制でき、安定した加工が可能となるため好ましい。
【0023】
次に、本発明の電波吸収体部材は、上記の電波吸収体部材用難燃紙を、段ボール構造体において、波型に加工した中芯、ライナのいずれか一枚、もしくは両方に用いた段ボール構造体とすることにより、十分な曲げ強度と難燃性を併せ持つ電波吸収体部材を得ることができる。なお、中芯とライナの両方に本発明の電波吸収体部材用難燃紙を用いることが、より高度な難燃性と曲げ強度を実現できるため好ましい。
【0024】
また、本発明の電波吸収体部材は、中芯、ライナのいずれか一枚、もしくは両方に導電性物質を含有することができる。本発明における導電性物質とは、電波エネルギーを微小な電流に変換し、更に熱エネルギーに変換することにより電波の減衰作用、すなわち電波の吸収をおこなう材料である。導電性物質としては例えば、金属粒子、カーボンブラック、カーボンナノチューブ粒子、カーボンマイクロコイル粒子、グラファイト粒子などの導電性粒子や、炭素繊維、ステンレス、銅、金、銀、ニッケル、アルミニウム、鉄などの金属繊維などの導電性繊維を挙げることができる。また、非導電性の粒子もしくは繊維に金属をメッキ、蒸着、溶射するなどして導電性を付与したものを挙げることもできる。
【0025】
これら導電性物質の中でも、導電性短繊維を用いることがより好ましい。導電性繊維はアスペクト比が大きいので、繊維同士が接触しやすく、粉体に比べて少量でも効果的に電波吸収性能を得ることができる。また、導電性繊維の中でも、炭素繊維は、繊維自体が剛着であり基材内に配向させやすいこと、長期間の使用においてほとんど性能の変化がないことから、更に好ましい。
【0026】
更に、この段ボール構造体において、曲げ強度が15N以上であれば、段ボール構造体を中空立体形状の電波吸収体とした際に、施工時や使用時の接触などにより変形、破損しにくくなるため好ましい。
【0027】
本発明の電波吸収体部材用難燃紙の製造方法としては、その一例として、周知の紙材料の抄紙製造方法を利用することができる。本発明の電波吸収体部材用難燃紙の構成材料である、繊維、水酸化アルミニウム粉末などと水とを混合したスラリーとし、抄紙機で抄きあげる湿式抄紙法などである。抄紙機としては、円網、単網、長網、パーチフォーマー、ロトフォーマー、ハイドロフォーマーなど、いずれを用いてもよく、乾燥機も、ヤンキー型、多筒型、スルー型などのいずれを用いてもよい。
【0028】
更に、リン酸グアニジン難燃剤を含有させる方法は特に限定されないが、例えばサイズプレスコーター、ロールコーター、ブレードコーター、バーコーターエアーナイフコーターなどの装置を、オンマシンもしくはオフマシンで用いることができる。
【0029】
また、電波吸収体部材用難燃紙に導電性物質を添加する方法は特に限定されないが、上記スラリー中に導電性物質を混合し、電波吸収体部材用難燃紙の中に抄き込んだり、バインダー樹脂材料に導電性物質を混合し、サイズプレスコーター、ロールコーター、ブレードコーター、バーコーターエアーナイフコーターなどの装置で電波吸収体部材用難燃紙に塗布するなどといった方法が挙げられる。
【0030】
本発明の電波吸収体部材の製造方法としては、その一例として、高速で、かつ製造コストの安い周知の紙段ボールの製造方法を利用することができる。具体的にはコルゲーターと呼ばれる装置で中芯に波型をつけ、表または裏いずれか一方のライナに糊付けすることにより、片面段ボールを製造する。更に、同装置で片面段ボールにもう一枚ライナを糊付けし、両面または複両面段ボールにするとともに、カッターに送り込んで、所定寸法に裁断する方法が利用できる。なお、中芯やライナなど、段ボールを構成する部材同士を接着剤としては、デンプン糊など周知の接着剤を使用することができる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。なお、実施例に示す性能値は次の方法で測定した。
[測定方法]
(1)米坪量
原紙を300mm角の正方形にカットして、質量から原紙の米坪量を算出した。
【0032】
(2)剛軟度
JIS L−1096 A法(ガーレ法)に準拠して原紙の縦方向(抄紙での流れ方向。以下同じ。)と横方向(幅方向以下同じ。)の剛軟度を測定した。なお、試料のサイズは、それぞれの方向で、長さ51cm、幅25cmに5枚カットし、測定した。
【0033】
(3)引張り強度
引張り強度はJIS P−8113に準拠して原紙の縦方向を測定した。
【0034】
(4)難燃性
機器の部品用プラスチック材料の燃焼性試験UL−94安全規格における20mm垂直燃焼試験;94V−0に基づき、原紙及び段ボール構造体の縦方向と横方向について評価した。
評価基準
○:V−0合格
×:V−0不合格 。
【0035】
(5)抄造スピード
抄紙機にて抄き上げるスピードの初期条件を10m/minとし、そこから順に10m/min単位で100m/minまでスピードを上げてそれぞれ300mを抄造し、紙切れ、地合い不良、その他抄造におけるトラブルが生じない事を目視確認し、安定して抄造可能なスピードを確認した。
評価基準
○:50m/minよりも速いスピードで安定して抄造可能
△:50m/min〜30m/minの範囲で安定して抄造可能
×:30m/minよりも遅いスピードで安定して抄造可能
(6)難燃剤の脱落性評価(原紙表裏面のベタツキ)
原紙表裏面を指で触り、感触(ベタツキ)を評価した。
評価基準
○:原紙表面にベタツキ感無し(脱落なし)。
×:原紙表面にベタツキ感有り(脱落あり)。
【0036】
(7)段ボールの加工性
コルゲーターを用いて段ボール加工した際、加工中に発生した加工不良(原紙切れ)の不良回数をカウントし、加工性を評価した。なお、加工スピードは、90m/minで行った。
評価基準
○:加工不良なし
△:加工不良が2回以下
×:加工不良が3回以上 。
【0037】
(8)段ボール構造体の曲げ強度
以下の3点曲げ強度試験により、段ボール構造体の曲げ強度を測定した。
曲げ強度測定機器は、デジタルフォースゲージDS2−50N(株式会社イマダ製)、折曲治具GA−10N(株式会社イマダ製)、手動スタンドHV−500NII(株式会社イマダ製)を使用した。
【0038】
段ボール構造体の曲げ強度の測定治具1は、図1のように配置し、加圧棒2、支持棒3として幅aが5mm(先端が半径2.5mmの半円形)、奥行きDが60mmのものを使用した。支持棒3はその間隔Wを40mmとなるように配置し、加圧棒2はその間の中心にくるように配置した。
【0039】
次に、段ボール構造体を、50mm角で一辺が中芯の波型の稜線と垂直または平行となるように10枚カットし、測定用試料4を用意した。
次に、測定用試料4を支持棒上に、中芯の波型の稜線と加圧棒2とが垂直となるように乗せ、加圧棒2を介して加圧方向5の方向に加圧し、試料が折れ曲がるまでの最大の加重(曲げ強度)を測定した。
【0040】
[実施例1]
繊維長5mmのセルロース繊維とガラス繊維をそれぞれ40質量%、5質量%、水酸化アルミニウム粉末を49質量%混合して湿式抄紙し、サイズプレスコーターにより、リン酸グアニジン難燃剤(製品名ノンネン985、丸菱油化工業社製)を6質量%となるように含有させて、米坪量100g/mの電波吸収体部材用難燃紙を得た。なお、抄造スピードについては、80m/minで安定して抄造できることを確認した。また、リン酸グアニジン難燃剤はセルロース繊維に対して15質量%含有していた。
得られた電波吸収体部材用難燃紙について、剛軟度、引張り強度、難燃性、難燃剤の脱落について評価し、その結果を表1に示した。剛軟度は縦方向横方向ともに1mN以上であり、引張り強度は4.5kN/m、難燃性はV−0合格、原紙表面のベタツキ(難燃剤の脱落)は見られず、高強度、高難燃性を有するものであった。
【0041】
[実施例2]
実施例1のガラス繊維を10質量%、水酸化アルミニウム粉末を44質量%とした以外は、実施例1と同様にして実施例2の電波吸収体部材用難燃紙を得た。なお、抄造スピードについては、70m/minと実施例1と比べるとガラス繊維が増えたことにより、若干遅いスピードで安定して抄造できることを確認した。
【0042】
得られた電波吸収体部材用難燃紙について実施例1と同様の評価を行い、その結果を表1に示した。剛軟度は縦方向横方向ともに1mN以上であり、引張り強度は4.1kN/m、難燃性はV−0合格、原紙表面のベタツキ(難燃剤の脱落)は見られず、高強度、高難燃性を有するものであった。
【0043】
[実施例3]
実施例1のガラス繊維を20質量%、水酸化アルミニウム粉末を34質量%とした以外は、実施例1と同様にして実施例3の電波吸収体部材用難燃紙を得た。なお、抄造スピードについては、40m/minと実施例1、2と比べると更にガラス繊維が増えたことにより、遅いスピードで安定して抄造できることを確認した。
【0044】
得られた電波吸収体部材用難燃紙について実施例1と同様の評価を行い、その結果を表1に示した。剛軟度はガラス繊維が増量したことで縦方向横方向ともに2mN以上であり、引張り強度は3.8kN/m、難燃性はV−0合格、原紙表面のベタツキ(難燃剤の脱落)は見られず、後加工に耐え得る最低限の強度と高難燃性を有するものであった。
【0045】
[実施例4]
実施例1の米坪量を150g/mとした以外は、実施例1と同様にして実施例4の電波吸収体部材用難燃紙を得た。なお、抄造スピードについては、実施例1と同様、80m/minで安定して抄造できることを確認した。
得られた電波吸収体部材用難燃紙について実施例1と同様の評価を行い、その結果を表1に示した。剛軟度は縦方向横方向ともに1mN以上であり、引張り強度は4.9kN/m、難燃性はV−0合格、原紙表面のベタツキ(難燃剤の脱落)は見られず、高強度、高難燃性を有するものであった。
【0046】
[実施例5]
繊維長5mmのセルロース繊維とガラス繊維をそれぞれ50質量%、5質量%、水酸化アルミニウム粉末を37質量%混合して湿式抄紙し、サイズプレスコーターにより、リン酸グアニジン難燃剤(製品名ノンネン985、丸菱油化工業社製)を8質量%となるように含有させて、米坪量100g/mの電波吸収体部材用難燃紙を得た。なお、抄造スピードについては、80m/minで安定して抄造できることを確認した。また、リン酸グアニジン難燃剤はセルロース繊維に対して16質量%含有していた。
得られた電波吸収体部材用難燃紙について、剛軟度、引張り強度、難燃性、難燃剤の脱落について評価し、その結果を表1に示した。剛軟度は縦方向横方向ともに1mN以上であり、引張り強度は5.4kN/m、難燃性はV−0合格、原紙表面のベタツキ(難燃剤の脱落)は見られず、高強度、高難燃性を有するものであった。
【0047】
[実施例6]
実施例5のガラス繊維を15質量%、水酸化アルミニウム粉末を27質量%とした以外は、実施例5と同様にして実施例6の電波吸収体部材用難燃紙を得た。なお、抄造スピードについては、60m/minと実施例5に比べ、ガラス繊維が増えたことにより、遅いスピードで安定して抄造できることを確認した。
得られた電波吸収体部材用難燃紙について実施例1と同様の評価を行い、その結果を表1に示した。剛軟度は縦方向横方向ともに2mN以上であり、引張り強度は5.1kN/m、難燃性はV−0合格、原紙表面のベタツキ(難燃剤の脱落)は見られず、高強度、高難燃性を有するものであった。
【0048】
[実施例7]
実施例5のガラス繊維を20質量%、水酸化アルミニウム粉末を22質量%とした以外は、実施例5と同様にして実施例7の電波吸収体部材用難燃紙を得た。なお、抄造スピードについては、40m/minと実施例5に比べ、ガラス繊維が更に増えたことにより、遅いスピードで安定して抄造できることを確認した。
得られた電波吸収体部材用難燃紙について実施例1と同様の評価を行い、その結果を表1に示した。剛軟度は縦方向横方向ともに2mN以上であり、引張り強度は4.9kN/m、難燃性はV−0合格、原紙表面のベタツキ(難燃剤の脱落)は見られず、高強度、高難燃性を有するものであった。
【0049】
[実施例8]
繊維長5mmのセルロース繊維とガラス繊維をそれぞれ60質量%、5質量%、水酸化アルミニウム粉末を25質量%混合して湿式抄紙し、サイズプレスコーターにより、リン酸グアニジン難燃剤(製品名ノンネン985、丸菱油化工業社製)を10質量%となるように含有させて、米坪量100g/mの電波吸収体部材用難燃紙を得た。なお、抄造スピードについては、90m/minで安定して抄造できることを確認した。また、リン酸グアニジン難燃剤はセルロース繊維に対して17質量%含有していた。
【0050】
得られた電波吸収体部材用難燃紙について、剛軟度、引張り強度、難燃性、難燃剤の脱落について評価し、その結果を表1に示した。剛軟度は縦方向横方向ともに2mN以上であり、引張り強度は6.3kN/m、難燃性はV−0合格、原紙表面のベタツキ(難燃剤の脱落)は見られず、高強度、高難燃性を有するものであった。
【0051】
[実施例9]
実施例8のガラス繊維を10質量%、水酸化アルミニウム粉末を20質量%とした以外は、実施例8と同様にして実施例9の電波吸収体部材用難燃紙を得た。なお、抄造スピードについては、70m/minのスピードで安定して抄造できることを確認した。
【0052】
得られた電波吸収体部材用難燃紙について実施例1と同様の評価を行い、その結果を表1に示した。剛軟度は縦方向横方向ともに3mN以上であり、引張り強度は6kN/m、難燃性はV−0合格、原紙表面のベタツキ(難燃剤の脱落)は見られず、高強度、高難燃性を有するものであった。
【0053】
[実施例10]
実施例8のガラス繊維を20質量%、水酸化アルミニウム粉末を10質量%とした以外は、実施例8と同様にして実施例10の電波吸収体部材用難燃紙を得た。なお、抄造スピードについては、40m/minと実施例8に比べるとガラス繊維が更に増えたことにより、遅いスピードで安定して抄造できることを確認した。
【0054】
得られた電波吸収体部材用難燃紙について実施例1と同様の評価を行い、その結果を表1に示した。剛軟度は縦方向横方向ともに3mN以上であり、引張り強度は5.8kN/m、難燃性はV−0合格、原紙表面のベタツキ(難燃剤の脱落)は見られず、高強度、高難燃性を有するものであった。
【0055】
【表1】

【0056】
[実施例11]
繊維長5mmのセルロース繊維とガラス繊維をそれぞれ70質量%、5質量%、水酸化アルミニウム粉末を14質量%混合して湿式抄紙し、サイズプレスコーターにより、リン酸グアニジン難燃剤(製品名ノンネン985、丸菱油化工業社製)を11質量%となるように含有させて、米坪量100g/mの電波吸収体部材用難燃紙を得た。なお、抄造スピードについては、90m/minで安定して抄造できることを確認した。また、リン酸グアニジン難燃剤はセルロース繊維に対して16質量%含有していた。
【0057】
得られた電波吸収体部材用難燃紙について、剛軟度、引張り強度、難燃性、難燃剤の脱落について評価し、その結果を表2に示した。剛軟度は縦方向横方向ともに3mN以上であり、引張り強度は7kN/m、難燃性はV−0合格、原紙表面のベタツキ(難燃剤の脱落)は見られず、高強度、高難燃性を有するものであった。
【0058】
[実施例12]
実施例11の水酸化アルミニウム粉末を10質量%、リン酸グアニジン難燃剤(製品名ノンネン985、丸菱油化工業社製)を15質量%とした以外は、実施例11と同様にして実施例12の電波吸収体部材用難燃紙を得た。なお、抄造スピードについては、90m/minのスピードで安定して抄造できることを確認した。また、リン酸グアニジン難燃剤はセルロース繊維に対して21質量%含有していた。
得られた電波吸収体部材用難燃紙について実施例1と同様の評価を行い、その結果を表2に示した。剛軟度は縦方向横方向ともに3mN以上であり、引張り強度は7kN/m、難燃性はV−0合格、原紙表面のベタツキ(難燃剤の脱落)は見られず、高強度、高難燃性を有するものであった。
【0059】
[実施例13]
実施例11のガラス繊維を10質量%、水酸化アルミニウム粉末を5質量%、リン酸グアニジン難燃剤(製品名ノンネン985、丸菱油化工業社製)を15質量%とした以外は、実施例11と同様にして実施例13の電波吸収体部材用難燃紙を得た。なお、抄造スピードについては、70m/minのスピードで安定して抄造できることを確認した。また、リン酸グアニジン難燃剤はセルロース繊維に対して21質量%含有していた。
【0060】
得られた電波吸収体部材用難燃紙について実施例1と同様の評価を行い、その結果を表2に示した。剛軟度は縦方向横方向ともに3mN以上であり、引張り強度は6.7kN/m、難燃性はV−0合格、原紙表面のベタツキ(難燃剤の脱落)は見られず、高強度、高難燃性を有するものであった。
【0061】
[実施例14]
実施例11の水酸化アルミニウム粉末を5質量%、リン酸グアニジン難燃剤を(製品名ノンネン985、丸菱油化工業社製)20質量%とした以外は、実施例11と同様にして実施例14の電波吸収体部材用難燃紙を得た。なお、抄造スピードについては、90m/minのスピードで安定して抄造できることを確認した。また、リン酸グアニジン難燃剤はセルロース繊維に対して29質量%含有していた。
得られた電波吸収体部材用難燃紙について実施例1と同様の評価を行い、その結果を表2に示した。剛軟度は縦方向横方向ともに3mN以上であり、引張り強度は7kN/m、難燃性はV−0合格、原紙表面のベタツキ(難燃剤の脱落)は見られず、高強度、高難燃性を有するものであった。
【0062】
[実施例15]
実施例11の米坪量を50g/mとした以外は、実施例11と同様にして実施例15の電波吸収体部材用難燃紙を得た。なお、抄造スピードについては、実施例1と同様、90m/minで安定して抄造できることを確認した。
得られた電波吸収体部材用難燃紙について実施例1と同様の評価を行い、その結果を表2に示した。剛軟度は縦方向横方向ともに2mN以上であり、引張り強度は5kN/m、難燃性はV−0合格、原紙表面のベタツキ(難燃剤の脱落)は見られず、高強度、高難燃性を有するものであった。
【0063】
[実施例16]
実施例8において、外割りで繊維長3mmの炭素繊維を1.2質量%湿式抄紙の際に加えた以外は実施例8と同様にして実施例16の電波吸収体部材用難燃紙を得た。抄造スピードについては、90m/minで安定して抄造できることを確認した。
得られた電波吸収体部材用難燃紙について実施例1と同様に評価を行い、その結果を表2に示した。実施例8と同様の結果であり、高強度と高難燃性を有するものであった。
【0064】
[実施例17]
実施例9において、外割りで繊維長3mmの炭素繊維を1.2質量%湿式抄紙の際に加えた以外は実施例9と同様にして実施例17の電波吸収体部材用難燃紙を得た。抄造スピードについては、70m/minで安定して抄造できることを確認した。
得られた電波吸収体部材用難燃紙について実施例1と同様に評価を行い、その結果を表2に示した。実施例9と同様の結果であり、高強度と高難燃性を有するものであった。
【0065】
[実施例18]
実施例10において、外割りで繊維長3mmの炭素繊維を1.2質量%湿式抄紙の際に加えた以外は実施例9と同様にして実施例17の電波吸収体部材用難燃紙を得た。抄造スピードについては、40m/minで安定して抄造できることを確認した。
得られた電波吸収体部材用難燃紙について実施例1と同様に評価を行い、その結果を表2に示した。実施例10と同様の結果であり、高強度と高難燃性を有するものであった。
【0066】
【表2】

【0067】
[比較例1]
実施例1のセルロース繊維を35質量%、水酸化アルミニウム粉末を54質量%とした以外は実施例1と同様にして比較例1の電波吸収体部材用難燃紙を得た。なお、抄造スピードについては、実施例1に比べセルロース繊維が少ないこともあり、60m/minで安定して抄造できることを確認した。また、リン酸グアニジン難燃剤はセルロース繊維に対して17質量%含有していた。
【0068】
得られた電波吸収体部材用難燃紙について実施例1と同様に評価を行い、その結果を表3に示した。剛軟度は横方向において1mN以下となり、引張り強度は3.2kN/mと低く、難燃性はV−0合格、原紙表面のベタツキ(難燃剤の脱落)は見られず、高難燃性を有するものの、セルロース繊維の量が少ないため強度と剛性に劣るものであった。
[比較例2]
実施例1のガラス繊維を0質量%、水酸化アルミニウム粉末を54質量%とした以外は、実施例1と同様にして比較例2の電波吸収体部材用難燃紙を得た。なお、抄造スピードについては、80m/minで安定して抄造できることを確認した。また、リン酸グアニジン難燃剤はセルロース繊維に対して15質量%含有していた。
【0069】
得られた電波吸収体部材用難燃紙について実施例1と同様に評価を行い、その結果を表3に示した。剛軟度はガラス繊維が含まれないため横方向において1mN以下となり、引張り強度は4.8kN/m、原紙表面のベタツキ(難燃剤の脱落)は見られなかったものの、難燃性は実施例1に比べガラス繊維が含まれないためV−0不合格であり、難燃性と剛性に劣るものであった。
【0070】
[比較例3]
実施例1の水酸化アルミニウム粉末を50質量%、リン酸グアニジン難燃剤(製品名ノンネン985、丸菱油化工業社製)を5質量%となるように含有させた以外は、実施例1と同様にして比較例3の電波吸収体部材用難燃紙を得た。なお、抄造スピードについては、80m/minで安定して抄造できることを確認した。また、リン酸グアニジン難燃剤はセルロース繊維に対して13質量%含有していた。
得られた電波吸収体部材用難燃紙について実施例1と同様に評価を行い、その結果を表3に示した。剛軟度は縦方向横方向ともに1mN以上であり、引張り強度は5kN/mと高いものの、難燃性は難燃剤が少なくV−0不合格であり、難燃性に劣るものであった。
【0071】
[比較例4]
実施例1のガラス繊維を3質量%、水酸化アルミニウム粉末を51質量%、となるように含有させた以外は、実施例1と同様にして比較例4の電波吸収体部材用難燃紙を得た。なお、抄造スピードについては、80m/minで安定して抄造できることを確認した。また、リン酸グアニジン難燃剤はセルロース繊維に対して15質量%含有していた。
得られた電波吸収体部材用難燃紙について実施例1と同様に評価を行い、その結果を表3に示した。剛軟度は、実施例1に比べガラス繊維が少ないため横方向で1mN以下であり、引張り強度は4.7kN/m、難燃性はV−0合格、原紙表面のベタツキ(難燃剤の脱落)は見られないものの、剛性が劣るものであった。
【0072】
[比較例5]
実施例1のガラス繊維を24質量%、水酸化アルミニウム粉末を30質量%、となるように含有させた以外は、実施例1と同様にして比較例5の電波吸収体部材用難燃紙を得た。なお、抄造スピードについては、ガラス繊維が多いため30m/minと遅いスピードで安定して抄造できることを確認した。また、リン酸グアニジン難燃剤はセルロース繊維に対して15質量%含有していた。
得られた電波吸収体部材用難燃紙について実施例1と同様に評価を行い、その結果を表3に示した。剛軟度は縦方向横方向ともに2mN以上であり、引張り強度は3.5kN/mと低く、難燃性はV−0合格、原紙表面のベタツキ(難燃剤の脱落)は見られず、高剛性、高難燃性を有するものの、ガラス繊維が多いため、抄造スピードが上げられず、製造コストの面で劣るものであった。
【0073】
[比較例6]
実施例1の水酸化アルミニウム粉末を41質量%、リン酸グアニジン難燃剤(製品名ノンネン985、丸菱油化工業社製)を14質量%となるように含有させた以外は、実施例1と同様にして比較例6の電波吸収体部材用難燃紙を得た。なお、抄造スピードについては、80m/minで安定して抄造できることを確認した。また、リン酸グアニジン難燃剤はセルロース繊維に対して35質量%含有していた。
【0074】
得られた電波吸収体部材用難燃紙について実施例1と同様に評価を行い、その結果を表3に示した。剛軟度は縦方向横方向ともに1mN以上であり、引張り強度は4.4kN/m、難燃性はV−0合格であるものの、セルロース繊維に対する難燃剤の量が多く、原紙表面のベタツキ(難燃剤の脱落)が見られ、高強度、高難燃性を有するものの、難燃剤が多いため、後加工において難燃剤の脱落しやすく、コストの面で劣るものであった。
【0075】
[比較例7]
実施例11の水酸化アルミニウム粉末を15質量%、リン酸グアニジン難燃剤(製品名ノンネン985、丸菱油化工業社製)を10質量%となるように含有させた以外は、実施例11と同様にして比較例7の電波吸収体部材用難燃紙を得た。なお、抄造スピードについては、90m/minで安定して抄造できることを確認した。また、リン酸グアニジン難燃剤はセルロース繊維に対して14質量%含有していた。
【0076】
得られた電波吸収体部材用難燃紙について実施例1と同様に評価を行い、その結果を表3に示した。剛軟度は縦方向横方向ともに3mN以上であり、引張り強度は7.0kN/mと高いものの、難燃性は難燃剤が少なく、V−0不合格となり、難燃性に劣るものであった。
【0077】
[比較例8]
実施例14のガラス繊維を3質量%、水酸化アルミニウム粉末を3質量%、リン酸グアニジン難燃剤(製品名ノンネン985、丸菱油化工業社製)を24質量%となるように含有させた以外は、実施例14と同様にして比較例9の電波吸収体部材用難燃紙を得た。なお、抄造スピードについては、90m/minで安定して抄造できることを確認した。また、リン酸グアニジン難燃剤はセルロース繊維に対して34質量%含有していた。
得られた電波吸収体部材用難燃紙について実施例1と同様に評価を行い、その結果を表3に示した。剛軟度は縦方向横方向ともに4mN以上であり、引張り強度は7.2kN/m、難燃性はV−0合格であるものの、セルロース繊維に対する難燃剤の量が多く、原紙表面のベタツキ(難燃剤の脱落)が見られ、高強度、高難燃性を有するものの、難燃剤が多いため、後加工において難燃剤の脱落しやすく、コストの面で劣るものであった。
[比較例9]
実施例14のガラス繊維を10質量%、水酸化アルミニウム粉末を0質量%となるように含有させた以外は、実施例14と同様にして比較例8の電波吸収体部材用難燃紙を得た。なお、抄造スピードについては、90m/minで安定して抄造できることを確認した。また、リン酸グアニジン難燃剤はセルロース繊維に対して29質量%含有していた。
得られた電波吸収体部材用難燃紙について実施例1と同様に評価を行い、その結果を表3に示した。剛軟度は縦方向横方向ともに4mN以上であり、引張り強度は6.8kN/mと高いものの、難燃性は水酸化アルミニウム粉末を含まないため、V−0不合格となり、難燃性に劣るものであった。
【0078】
[比較例10]
実施例14について、セルロース繊維を75質量%、リン酸グアニジン難燃剤(製品名ノンネン985、丸菱油化工業社製)を15質量%含有させた以外は実施例14と同様にして、比較例10の電波吸収体部材用難燃紙を得た。なお、抄造スピードについては、90m/minのスピードで安定して抄造できることを確認した。また、リン酸グアニジン難燃剤はセルロース繊維に対して20質量%含有していた。
得られた電波吸収体部材用難燃紙について実施例1と同様に評価を行い、その結果を表3に示した。剛軟度は4以上、引張り強度は6.6kN/m、原紙表面のベタツキ(難燃剤の脱落)については見られなかったが、セルロース繊維の量が多いため難燃性がV−0不合格であり、高強度であるが、難燃性に劣るものであった。
【0079】
【表3】

【0080】
[比較例11]
実施例9について、リン酸グアニジン難燃剤に変えてグアニルスルフォアミド難燃剤(製品名SDF−NS、大京化学社製)を含有させた以外は実施例9と同様にして、比較例11の電波吸収体部材用難燃紙を得た。
得られた電波吸収体部材用難燃紙について実施例1と同様に評価を行い、その結果を表4に示した。剛軟度、引張り強度、原紙表面のベタツキ(難燃剤の脱落)については実施例9と同様であったが、難燃性がV−0不合格であり、高強度であるが、難燃性に劣るものであった。
【0081】
[比較例12]
実施例9について、リン酸グアニジン難燃剤に変えてリン酸エステル難燃剤(製品名ニッカファイノンHFT−3、日華化学社製)を含有させた以外は実施例9と同様にして、比較例12の電波吸収体部材用難燃紙を得た。
得られた電波吸収体部材用難燃紙について実施例1と同様に評価を行い、その結果を表4に示した。剛軟度、引張り強度については実施例9と同様であったが、難燃性がV−0不合格であり、さらに原紙表面のベタツキ(難燃剤の脱落)が見られ、高強度であるが、後加工において難燃剤の脱落しやすく、難燃性に劣るものであった。
【0082】
[比較例13]
繊維長5mmのセルロース繊維とガラス繊維をそれぞれ20質量%、15質量%、水酸化アルミニウム粉末を65質量%混合して湿式抄紙し、米坪量100g/mの電波吸収体部材用難燃紙を得た。なお、抄造スピードについては、セルロース繊維が少ないこともあり、40m/minで安定して抄造できることを確認した。
【0083】
得られた電波吸収体部材用難燃紙について実施例1と同様に評価を行い、その結果を表3に示した。剛軟度は横方向において1mN以下となり、引張り強度は2.6kN/mと低く、難燃性はV−0合格、原紙表面のベタツキ(難燃剤の脱落)は難燃剤を使用していないことから見られず、高難燃性を有するものの、セルロース繊維の量が少ないため強度に劣るものであった。
【0084】
[比較例14]
比較例13において、外割りで繊維長3mmの炭素繊維を1.2質量%湿式抄紙の際に加えた以外は比較例1と同様にして比較例14の電波吸収体部材用難燃紙を得た。抄造スピードについては、40m/minで安定して抄造できることを確認した。
【0085】
得られた電波吸収体部材用難燃紙について実施例1と同様に評価を行い、その結果を表4に示した。比較例1と同様の結果であり、高難燃性を有するものの、強度に劣るものであった。
【0086】
[比較例15]
比較例9において、外割りで繊維長3mmの炭素繊維を1.2質量%湿式抄紙の際に加えた以外は比較例9と同様にして比較例15の電波吸収体部材用難燃紙を得た。抄造スピードについては、90m/minで安定して抄造できることを確認した。
【0087】
得られた電波吸収体部材用難燃紙について実施例1と同様に評価を行い、その結果を表4に示した。比較例9と同様の結果であり、高い強度を有するものの、難燃性に劣るものであった。
【0088】
【表4】

【0089】
[実施例19]
表ライナ及び裏ライナ用原紙として実施例9の電波吸収体部材用難燃紙を用い、中芯用原紙として実施例16の電波吸収体部材用難燃紙を用いて、コルゲーターにてBフルート(波形高さ2.5mm、段繰率1.35)の段ボール構造体とし、電波吸収体部材を得た。なお、加工中に加工不良は発生せず、加工性良好であることを確認した。
得られた電波吸収部材の曲げ強度を測定した結果を表5に示すが、18Nと高い曲げ強度を有するものであり、高い難燃性を有するものであった。
【0090】
[実施例20]
実施例19において中芯用原紙に実施例17の電波吸収体部材用難燃紙を用いた以外は、実施例19と同様にして実施例20の電波吸収体部材を得た。なお、加工中に加工不良は発生せず、加工性良好であることを確認した。
得られた電波吸収部材の曲げ強度を測定した結果を表5に示すが、23Nと高い曲げ強度を有するものであり、高い難燃性を有するものであった。
【0091】
[実施例21]
実施例19において中芯用原紙に実施例18の電波吸収体部材用難燃紙を用いた以外は、実施例19と同様にして実施例21の電波吸収体部材を得た。なお、加工中に加工不良は発生せず、加工性良好であることを確認した。
得られた電波吸収部材の曲げ強度を測定した結果を表5に示すが、27Nと高い曲げ強度を有するものであり、高い難燃性を有するものであった。
【0092】
[実施例22]
表ライナ及び裏ライナ用原紙として実施例18の電波吸収体部材用難燃紙を用い、中芯用原紙として実施例9の電波吸収体部材用難燃紙を用いて、コルゲーターにてBフルート(波形高さ2.5mm、段繰率1.35)の段ボール構造体とし、電波吸収体部材を得た。なお、加工中に加工不良は発生せず、加工性良好であることを確認した。
得られた電波吸収部材の曲げ強度を測定した結果を表5に示すが、20Nと高い曲げ強度を有するものであり、高い難燃性を有するものであった。
【0093】
[実施例23]
表ライナ及び裏ライナ用原紙として比較例13の電波吸収体部材用難燃紙を用い、中芯用原紙として実施例18の電波吸収体部材用難燃紙を用いて、コルゲーターにてBフルート(波形高さ2.5mm、段繰率1.35)の段ボール構造体とし、電波吸収体部材を得た。なお、加工中、原紙の強度不足が原因と考えられる加工不良(原紙切れ)が2回発生した。
【0094】
得られた電波吸収部材の曲げ強度を測定した結果を表5に示すが、15Nと電波吸収体用部材として最低限の曲げ強度を有するものであり、高い難燃性を有するものであった。
【0095】
[実施例24]
実施例19において、中芯用原紙に比較例15の電波吸収体部材用難燃紙を用いた以外は、実施例19と同様にして実施例24の電波吸収体部材を得た。なお、加工中に加工不良は発生しなかった。得られた電波吸収部材の曲げ強度を測定した結果を表5に示すが、難燃性に劣る原紙を用いたため高難燃性は得られなかったものの、21Nと高い曲げ強度を有するものであった。
【0096】
[実施例25]
実施例22において、中芯原紙に実施例1の電波吸収体部材用難燃紙を用いた以外は、実施例22と同様にして実施例25の電波吸収部材を得た。なお、加工中に加工不良は発生しなかった。得られた電波吸収部材の曲げ強度を測定した結果を表5に示すが、16Nの曲げ強度を有するものであり、高い難燃性を有するものであった。
【0097】
[実施例26]
実施例22において、中芯原紙に比較例1の電波吸収体部材用難燃紙を用いた以外は、実施例22と同様にして実施例26の電波吸収部材を得た。なお、加工中、原紙の強度不足が原因と考えられる加工不良(原紙切れ)が2回発生した。得られた電波吸収部材の曲げ強度を測定した結果を表5に示すが、12Nと実施例25よりも低い曲げ強度であるものの、高い難燃性を有するものであった。
【0098】
[比較例16]
実施例23において中芯用原紙に比較例14の電波吸収体部材用難燃紙を用いた以外は、実施例23と同様にして比較例16の電波吸収体部材を得た。なお、加工中、原紙の強度不足が原因と考えられる加工不良(原紙切れ)が4回発生した。得られた電波吸収部材の曲げ強度を測定した結果を表5に示すが、7Nと低く、高難燃性を有するが、強度に劣るものであった。
【0099】
【表5】

【0100】
上記実施例1〜18及び比較例1〜15の結果から、本発明の電波吸収体部材用難燃紙は、セルロース繊維、ガラス繊維、水酸化アルミニウム粉末、リン酸グアニジン難燃剤をそれぞれ所定量配合することにより、高強度(高剛性)、高難燃性を両立する加工性に優れたものとなることがわかる。強度に関しては、セルロース繊維、ガラス繊維の量を多くすることで高強度のものとなり、ガラス繊維に関しては、5〜20質量%の範囲において配合量が多いほど、高い剛軟度を示していることがわかる。しかしながら15質量%よりも多くなると、生産性(抄造スピード)が低下する傾向にあり、5〜15質量%にすることで生産性良好な高強度なものとなることがわかる。さらに難燃性に関しては、ガラス繊維、水酸化アルミニウム粉末、リン酸グアニジン難燃剤を3つの成分を所定の量を含有させることで少量の難燃剤を用いて高い難燃性を得ることができ、一つでも欠けたり、所定の量から外れてしまうと、難燃性が得られなかったり、多くの難燃剤が必要となったり、後加工に適さないものとなることがわかる。よって、セルロース繊維、ガラス繊維、水酸化アルミニウム粉末、リン酸グアニジン難燃剤のそれぞれの複合かつ相乗的効果により、高強度、高剛性、高難燃性を有する加工性に優れた電波吸収体部材用難燃紙となることがわかる。
【0101】
また、実施例19〜26及び比較例16の結果から、上述した電波吸収体部材用難燃紙を用いた段ボール構造体とすることにより、高い曲げ強度と高い難燃性を併せ持つ電波吸収体用部材となることがわかる。中でも実施例19〜21において、中芯原紙に使用した電波吸収体部材用難燃紙のガラス繊維の配合量を見ると、ガラス繊維の量が多いほど曲げ強度が増加しており、剛軟度の高い電波吸収体部材用難燃紙を用いることで、高い曲げ強度が得られることがわかる。よって、高強度、高剛性、高難燃性を有する加工性に優れた電波吸収体部材用難燃紙を用いることで、生産性良く段ボール構造体に加工することができ、かつ、十分な曲げ強度を有し、施工時や使用時の接触などによる変形、破損に耐え得る電波吸収体用部材とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0102】
電波暗室用吸収体や、ETC、無線LAN、RFIDシステムなどの各種無線通信システムにおける電波環境改善用の電波吸収体を構成する部材、中でも電波暗室用電波吸収体としてよく用いられる形態である中空の立体形状の電波暗室用吸収体の部材として利用することができる。
【符号の説明】
【0103】
1:段ボール構造体の曲げ強度の測定治具
2:加圧棒
3:支持棒
4:段ボール構造体
5:加圧方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース繊維40〜70質量%、ガラス繊維5〜20質量%、水酸化アルミニウム粉末5〜50質量%およびリン酸グアニジン難燃剤6〜20質量%を含み、かつ、前記リン酸グアニジン難燃剤が前記セルロース繊維に対して、15〜30質量%含有していることを特徴とする電波吸収体部材用難燃紙。
【請求項2】
米坪量が50〜200g/mの範囲であり、かつ剛軟度が縦方向横方向共に1〜10mNの範囲であることを特徴とする請求項1記載の電波吸収体部材用難燃紙。
【請求項3】
請求項1または2記載の電波吸収体部材用難燃紙を、波型に加工した中芯及び/またはライナに用いた段ボール構造体であり、かつ中芯及び/またはライナが導電性物質を含有しており、かつ段ボール構造体の曲げ強度が15N以上であることを特徴とする電波吸収体部材。

【図1】
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【公開番号】特開2013−2003(P2013−2003A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130878(P2011−130878)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】