説明

電波暗室

【課題】 電磁妨害の測定に際し、垂直グランドプレーンの設置および撤去の作業が容易で、建屋の建設費用やシールド処理に関する対策費用を削減することができる電波暗室を提供する。
【解決手段】 基準面となる導電板1と、前記導電板1を垂直に起立させる手段と、床下に設けた収納部3を有し、前記導電板1の一部または全部を前記収納部3に収納する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電気および電子機器の電磁妨害測定に用いる電波暗室に関し、特に伝導妨害測定に供せられる垂直導電面を備えた電波暗室に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種電気および電子機器、装置、システムなどが設置されている環境には、様々な電磁現象が存在する。装置等の性能を低下させたり、誤動作を引き起こしたりする原因となる電磁現象を電磁妨害と呼ぶ。電磁妨害は妨害波を発生する装置と被害を被る装置との間の結合形態によって、一般に次の2種類に分類される。
【0003】
一つは伝導妨害であり、妨害波の電磁エネルギーが主として電力線や信号線などの導体を経由して伝達され、他の装置に侵入して妨害を与えるものをいう。もう一つは放射妨害であり、妨害波の電磁エネルギーが電磁波の形態で放射され、空間を伝搬して他の装置に妨害を与えるものをいう。
【0004】
これら電磁妨害の測定には、その種類によって各々異なった測定方法および測定環境の規定が設けられている。
【0005】
一般的に伝導妨害の測定は、部屋全体を導電材料からなるシールド材を用いて電磁気的に遮蔽したシールドルーム内において行われる。また、放射妨害の測定は、前記シールドルームの床面を除いた内壁を、電波吸収体で覆った電波暗室(一般に「半無響室」と呼ばれ、本発明では以下、半無響室を「電波暗室」という)で行われる場合が多い。
【0006】
しかしながら、電磁妨害の測定において、伝導妨害測定用のシールドルームと、放射妨害測定用の電波暗室を別々に建設することは、多額の設備投資を必要とするため設置者の経済的な負担が大きい。
【0007】
また、シールドルームと電波暗室の双方を建設しても、同一の被計測対象(以下「EUT」という)の伝導妨害と放射妨害を測定する場合には、測定場所を移動して再度セッティングを行う必要があるため、非常に作業効率が悪い。
【0008】
伝導妨害の測定では、基準面となる導電板とEUTとの間の距離が規定されており、基準面とEUTの間にある空間には、導体や電波吸収体を含む電磁気的に何らかの影響を与えるものは設置することができない。
【0009】
一方で、基準面の規定を満足すれば電波暗室内でも伝導妨害の測定は可能であることから、電波暗室の導電性の床面(地面と同電位と見なすことの出来る基準面として構成されており、以下「大地面」という。)や、大地面に対して垂直に立てた導電板を大地面に接地させて基準面(EUTと対向する側の面を、以下「導電面」という)として用いることにより、電波暗室内での測定が実施されている。
【0010】
なお、ここでいう「接地」とは、電気的な導通のみならず、米国のFCCや日本のVCCI等における接地の規定を満たす程度の一様な同電位状態を実現することをいう。
【0011】
前記導電板は、伝導妨害の測定時にのみ電波暗室内に搬入し、それ以外では他の電磁妨害測定に影響を与えないよう撤去しなければならず、そのような導電板の一例として、電波暗室用垂直導電面衝立が特許文献1に開示されている。
【0012】
【特許文献1】特開平08−46382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
以下、一般的な呼称や部品として用いる導電板と区別するため、本発明による導電板とそれに付随する機構を含んだ構成を「垂直グランドプレーン」という。
【0014】
なお、本発明で言う「垂直」とは、米国のFCC、日本のVCCI等が定めた計測規格で許容された傾きを含むものであり、適用する規格によって許容範囲が異なる場合がある。
【0015】
従来は、伝導妨害測定および放射妨害測定の度に、前記導電板を電波暗室の搬出入口から出し入れして設置および撤去を行っていた。しかしながら、電波暗室内部に設置するものとしては比較的大型の構造物である導電板を、使用の都度、搬出入することは作業性が悪いという課題がある。
【0016】
また、電波暗室の搬出入口も、前記導電板の寸法に応じた大きさが必要であることから、必然的に大型の開口部を設けなければならない。しかしながら、電波暗室の開口部には、測定の伝搬特性に影響を与えないよう厳重なシールド処理を施す必要があり、開口部の寸法が大きくなるほど、シールド対策は困難になるとともに対策費用が高額になるという課題がある。
【0017】
前記の2つの課題に対し、電波暗室の内部、より具体的には電波吸収体を設置した壁面に導電板の収納部を設ける方法が考えられるが、前記の通り開口部のシールド処理が必要であるとともに、電波暗室の建屋自体の面積が増大するため、建設に要する費用が高額になるという課題が残る。
【0018】
本発明は、かかる従来技術の課題を解決するためになされたもので、その目的は、電磁妨害の測定に際し、垂直グランドプレーンの設置および撤去の作業が容易で、建屋の建設費用やシールド処理に関する対策費用を削減することができる電波暗室を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明によれば、電磁妨害の測定を行う電波暗室であって、基準面となる導電板と、前記導電板を大地面に対して垂直に起立させる手段と、床下に設けた収納部を有し、前記導電板および前記垂直に起立させる手段の、一部または全部を、前記収納部に収納することを特徴とする電波暗室が得られる。
【0020】
従来、電波暗室において放射妨害の測定を行う際には、垂直グランドプレーンを電波暗室内から撤去し、伝導妨害の測定を行う際に再度設置を行っていたが、本発明では垂直グランドプレーンを電波暗室の床下に収納することにより、使用しない場合に他の測定に一切影響を与えることがないうえに、測定毎の設置や撤去に伴う搬出入が不要となるため、作業性が高まる。また、頻繁な搬出入が不要なことから、電波暗室の搬出入口の開口部寸法を小さく抑えることが可能で、且つ建屋自体の面積を増やす必要もないため、電波暗室の建設費用やシールド対策費用を抑えることが可能となる。
【0021】
なお、導電板を垂直に起立させる手段は様々な形態をとることが可能で、例えば導電板を垂直な支柱や台車等に取り付けることもできる。垂直グランドプレーンとしては、導電板がEUTと対向する面の裏側に配置される部材は、EUTから見て導電面の寸法内に納まり、測定環境に特段の影響を与えない限り、その構成に制約は受けない。
【0022】
本発明によれば、前記垂直に起立させる手段は、前記導電板の前記大地面からの高さを可変とすることを特徴とする電波暗室が得られる。
【0023】
本発明によれば、前記垂直に起立させる手段は、前記導電板を前記大地面に対して、垂直となる位置から平行となる位置まで傾斜可能に構成したことを特徴とする電波暗室が得られる。
【0024】
本発明では、垂直グランドプレーンの導電板を垂直に起立させる手段として、前記収納部に収納する昇降装置に導電板を取り付けたり、折り畳み機構や蝶番等を用いることで導電板を傾斜可能に構成したりすることができる。従って、使用時には収納部から導電板を上昇させたり垂直に起立させることにより、また収納時には導電板を下降させたり横倒して傾斜または平行状態とすることにより、使用時よりも収納時の高さを低くすることができるため、電波暗室の床下の収納部を浅くすることが可能となり、建設コストを更に低減することができる。
【0025】
本発明によれば、前記導電板は、前記収納により前記電波暗室の前記大地面の一部となるよう構成したことを特徴とする電波暗室が得られる。
【0026】
前記のように、電波暗室の導電性の床面は大地面として機能しているが、垂直グランドプレーンの導電板部分は、大地面に接地されているとともに収納時に表面の凹凸がなく、電波暗室の伝搬特性に影響を与えないよう構成されていれば、大地面と同様に扱うことができる。従って、床材としての強度と構造を与えれば、収納時に垂直グランドプレーンの導電板を床面の一部として構成することが可能であり、収納部のスペースを節約して、建設コストを更に低減することができる。
【0027】
本発明によれば、前記導電板は、移動手段を有することを特徴とする電波暗室が得られる。
【0028】
垂直グランドプレーンの設置や収納作業を容易にするために、本発明では例えば移動手段としてキャスターを底部に有した台車に導電板を取り付け、移動可能な垂直グランドプレーンを構成することができる。
【0029】
また、EUTの寸法形状や測定箇所の状況によっては、垂直グランドプレーンの設置位置を調整する必要が生じる場合があるため、垂直グランドプレーンの導電板の移動手段として、伸縮可能なアームを取り付け、導電板自体を移動させて設置位置を調整するよう構成することもできる。このような構成によって、設置可能な収納部の位置や、付帯設備等によって垂直グランドプレーンの移動に制約が生じた場合でも、導電板自体の設置位置やEUTとの対向角度を調整することが可能となる。
【0030】
本発明によれば、前記導電板は、複数の板状導電体を電気的および機械的に接続して成り、前記板状導電体を展開または収容することにより、前記導電板の導電面の寸法が変更可能であることを特徴とする電波暗室が得られる。
【0031】
伝導妨害測定に用いる垂直グランドプレーンにおいて、前記計測規格を満たすために最低限必要な導電面の寸法は(幅)2m×(高さ)2mである。本発明では、複数の板状導電体を電気的および機械的に接続して導電板を構成し、それを展開または収容して導電面の寸法を可変とすることで、測定に必要な導電面の寸法を確保するとともに、収納時には小型化することで、一体構成の導電板の場合よりも収納部を小さくすることが可能であるため、電波暗室の建設コストを更に低減することができる。また、板状導電体の構成を変えることによって、大型のEUTにも容易に対応することができる。
【0032】
本発明によれば、前記収納部は、前記大地面と連設した傾斜路を備えることを特徴とする電波暗室が得られる。
【0033】
本発明では、垂直グランドプレーン(例えば底部にキャスターを有する台車に、導電板を取り付けて構成した場合)の設置の際、床下の収納部から前記傾斜路に沿って垂直グランドプレーンを引き上げることができる。また、収納する際は逆に垂直グランドプレーンを前記傾斜路に沿って下ろすことができる。従って、垂直グランドプレーンを収納部からそのまま持ち上げる場合に比べ、設置や収納の作業が容易になる。
【0034】
本発明によれば、前記収納部は、前記導電板及び前記垂直に起立させる手段の、一部または全部を収納するまで下降し、且つ前記導電板の全部を前記電波暗室の床上まで上昇させることが可能な昇降機構を備えることを特徴とする電波暗室が得られる。
【0035】
本発明では、電波暗室の床下の収納部から床上まで、モーターや空気圧、油圧等により動作する昇降装置によって垂直グランドプレーンを昇降させるよう構成することにより、前記傾斜路を利用する場合よりも重量のある大型の垂直グランドプレーンや、収納部に傾斜路を設けることが困難な場合にも適用可能となり、設置や収納の作業が更に容易になる。
【0036】
また、昇降装置によって上下する範囲の、導電面以外であれば、電波暗室内で使用する部材や工具類を収納する収納棚を設けることも可能であり、新たな収納部を設けることなく作業性の良好な電波暗室が実現できる。また、昇降装置を電波暗室建屋の下層階と連通させることにより、資材や機器の搬出入に供することで更に作業性が向上する。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、電波暗室内における電磁妨害の測定に際し、垂直グランドプレーンを床下に収納するよう構成することにより、垂直グランドプレーンの設置および撤去の作業が容易で、建屋の建設費用やシールド処理に関する対策費用を削減することができる電波暗室を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態について説明する。
【0039】
(実施の形態1)
図1は本発明による電波暗室の実施の形態1における垂直グランドプレーンの収納状態を示す概略側面図、図2は本発明による電波暗室の実施の形態1における垂直グランドプレーンの使用状態を示す概略側面図である。
【0040】
図1において、垂直グランドプレーンは電波暗室の床下に設けた収納部3に収納され、導電板1はその導電面が電波暗室床面4と同じ高さに保持され、電波暗室内において大地面の一部を構成する。
【0041】
即ち、導電板1を垂直に起立させる手段および付随する機構が電波暗室の床下に収納され、導電板1は収納部3の蓋として電波暗室床面4の一部となることから、垂直グランドプレーンの一部が収納されている状態となる。
【0042】
また、床材の要求強度に応じ、収納部3の内部に導電板1を支える構造部材を設け、床面の補強を施すこともできる。
【0043】
尚、導電板1の接地に関する電気的および機械的な接続方法は、金属製の蝶番による接続や、導電性取付金具等の公知の手段を用いることが可能であり、以下の実施の形態についても同様である。
【0044】
図2において、本実施の形態における垂直グランドプレーンの使用時の構成は、電波暗室床面4に接地した導電板1を支柱11に取り付け、支え2を支柱11の固定溝21にはめ込んで固定することで、導電板1を垂直に起立させることができる。
【0045】
(実施の形態2)
図3は本発明による電波暗室の実施の形態2における垂直グランドプレーンの収納状態を示す概略側面図、図4は本発明による電波暗室の実施の形態2における図3の垂直グランドプレーンの折り畳み機構を説明する概略図である。
【0046】
図3において、導電板1を支柱11に取り付け、支柱11は回動支点12を介し、移動手段としてキャスター5を底部に有する台車51に取り付け、回動支点12は折り畳み機構22によって導電板1の垂直起立と保持および傾斜を行うことができる。
【0047】
垂直グランドプレーンは、導電板1を傾斜状態に変形させ、傾斜路31を有する収納部3に、導電板1が収納部3の蓋の一部となるよう収納する。導電板1の導電面が電波暗室床面4で大地面の一部として機能するよう、収納時にも導電板1と電波暗室床面4は接地を行う。導電板1で覆いきれない収納部3の開口部分は、電波暗室床面4に接地された導電材を開閉可能に構成した収納部蓋板33を設置すれば、測定に影響を与えないようにすることができる。
【0048】
本実施の形態においても、図1で示した実施の形態1と同様、導電板1が電波暗室床面4の一部を構成する例を用いて説明したが、導電板1を含めた垂直グランドプレーン全体を収納部3に収納し、収納部3の開口部全体を収納部蓋板33で覆う構成とすることも可能である。
【0049】
本実施の形態における垂直グランドプレーンを使用時に設置する場合、台車51にフックや持ち手(ともに図示せず)を取り付け、収納部3から傾斜路31に沿って引き上げる。垂直グランドプレーンを所定位置に移動させた後、レバー221を操作して導電板1を垂直に起立させ、電波暗室床面4との接地を行う。収納時は逆の手順で行う。
【0050】
図4は折り畳み機構22の具体的な構成と動作の一例を説明したものである。
【0051】
支柱11を貫通した取り付け軸211の一端に、ロック用突起224を有する固定部材A223を取り付け、取り付け軸211の他端にレバー221を取り付け、レバー221を操作(図中破線矢印方向に傾動)することで、固定部材A223とともにロック用突起224を押し下げることができる。
【0052】
一方、取り付け軸212によって支柱11に傾動可能に取り付けられた固定部材B225は、固定部材A223のロック用突起224と噛み合うロック用窪み226を有する。
【0053】
固定部材A223にはバネ222の一端を取り付け、バネ222の他端を固定部材B225に取り付け、引張り力を付勢することで固定部材B225が取り付け軸212を中心として、図中矢印方向に傾動する力を与える。
【0054】
傾斜状態で収納されていた導電板1を垂直に起立させると、固定部材A223のロック用突起224と固定部材B225のロック用窪み226が噛み合うとともに、固定部材B225の固定用突起228が台車51に設けた固定用バー229に咬止されることにより、導電板1の垂直起立を確実に保持することができる。
【0055】
収納時に導電板1を傾斜させる場合は、前記のようにレバー221を操作(図中破線矢印方向に傾動)することで、固定部材A223とともにロック用突起224が押し下げられロック用窪み226との噛み合いが解放され、ロック用突起224が固定部材B225の摺動曲面227を摺動して、バネ222によって付勢された力により固定部材B225が図中矢印方向に傾動し、固定用突起228と固定用バー229の咬止が解放されることにより、導体板1の垂直起立を解除することができる。
【0056】
本実施の形態に示した折り畳み機構は一例であり、機構や形状を限定するものではなく、同様の効果が得られるならば公知の機構によって構成することができる。
【0057】
(実施の形態3)
図5は本発明による電波暗室の実施の形態3における垂直グランドプレーンの収納状態を示す概略側面図である。
【0058】
導電板1はガイド13を介して支柱11に取り付けられ、支柱11は移動手段として底部にキャスター5を有する台車51に、回動支点12を介して取り付けられ、台車51に垂直起立・傾斜用直動機23を備える。
【0059】
垂直グランドプレーンは導電板1の導電面が電波暗室床面4と平行な状態で、昇降装置32を備える収納部3に収納されている。導電板1は、収納部3の蓋として大地面の一部を構成するように、電波暗室床面4と接地されている。
【0060】
垂直グランドプレーンを使用する際は、昇降装置32によって収納部3から持ち上げ、所定の測定位置まで移動させる。導電板1の垂直起立は、垂直起立・傾斜用直動機23を動作させて支柱11を押し上げると、回動支点12を軸に支柱11が回動し、ガイド13とともに導電板1がスライドして起立する。導電板1を垂直に起立させたら、電波暗室床面4との接地を行う。
【0061】
(実施の形態4)
図6は本発明による電波暗室の実施の形態4における垂直グランドプレーンの収納状態を示す概略側面図である。本実施の形態は、図5の実施の形態3の導電板1を電波暗室床面4の一部とせずに、収納部蓋板33を用いるものである。収納部蓋板33は大地面の一部として構成されるとともに、開閉可能な構造で備える。本実施の形態によれば、垂直グランドプレーンの全部を収納部3に収納することができる。
【0062】
(実施の形態5)
図7は本発明による電波暗室の実施の形態5における垂直グランドプレーンの収納状態を示す図であり、図7(a)は概略側面図、図7(b)は概略正面図である。図8は本発明による電波暗室の実施の形態5における垂直グランドプレーンの使用状態を示す図であり、図8(a)は概略側面図、図8(b)は概略正面図である。
【0063】
図7(a)および図7(b)において、垂直グランドプレーンは収納部蓋板33が昇降装置32の天板として構成され、3枚に分割して導電板を構成する板状導電体1a、1b、1cは、垂直を保持したまま電波暗室の床下から床上まで昇降する。垂直グランドプレーンの収納時は、板状導電体1a、1b、1cは折り畳まれて収容される。
【0064】
一方、垂直グランドプレーンの使用時は、図8(a)および図8(b)のように、板状導電体1a、1b、1cは電波暗室の床上まで上昇し、所定の寸法に展開される。また、この際に板状導電体1a、1b、1cが電波暗室床面4に接地されることはいうまでもない。
【0065】
本実施の形態のような、複数の板状導電体で導電板を構成する方法は、他の実施の形態に応用することも可能である。例えば、下層階と連通させたエレベータを有する電波暗室の場合、エレベータのかご部の外側面に本実施の形態の導電板を取り付けて接地することにより、垂直グランドプレーンを構成することができる。資材や機器の搬出入に供することで更に作業性が向上するとともに、小型のかご部であっても、板状導電体を展開して導電面の寸法を拡大することにより、測定の標準寸法のみならず、大型EUTへ対応することが可能である。また、板状導電体の展開時における導電面の寸法が確保されるならば、板状導電体の構成に関する制約は特にない。すなわち、本実施の形態のような観音開きのみならず、上下に分割された板状導電体を中央部で接続して開閉する方法、板状導電体をスライドさせて展開および収容する方法等、種々変形して用いることができる。
【0066】
(実施の形態6)
図9は本発明による電波暗室の実施の形態6における垂直グランドプレーンの使用状態を示す図であり、図9(a)はアーム収縮時を示す概略側面図、図9(b)はアーム伸長時を示す概略側面図、図9(c)はアーム伸長・傾斜時を示す概略上面図である。
【0067】
本実施の形態は、図7(a)および図7(b)と、図8(a)および図8(b)の実施の形態5の、昇降装置32に伸縮可能なアーム52を用いて導電板1を取り付けたものである。
【0068】
昇降装置32が設置される場所によっては、導電板1が所定の測定位置に設置出来ない場合があり、伸縮可能なアーム52によって導電板1の位置を調整することができる。
【0069】
また、導電板1とEUTが正対していない場合でも、図9(c)のように導電板1をEUTに向けることが容易にできる。取り付けるアーム52は、パンタグラフ式やボールジョイント式等の公知の構造のものを用いれば良い。
【0070】
以上、図面を用いて本発明の実施の形態を説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、材質や構成の変更があっても本発明に含まれる。すなわち、当業者であれば当然なしえるであろう各種変形や修正もまた、本発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明による電波暗室の実施の形態1における垂直グランドプレーンの収納状態を示す概略側面図。
【図2】本発明による電波暗室の実施の形態1における垂直グランドプレーンの使用状態を示す概略側面図。
【図3】本発明による電波暗室の実施の形態2における垂直グランドプレーンの収納状態を示す概略側面図。
【図4】本発明による電波暗室の実施の形態2における図3の垂直グランドプレーンの折り畳み機構を説明する概略図。
【図5】本発明による電波暗室の実施の形態3における垂直グランドプレーンの収納状態を示す概略側面図。
【図6】本発明による電波暗室の実施の形態4における垂直グランドプレーンの収納状態を示す概略側面図。
【図7】本発明による電波暗室の実施の形態5における垂直グランドプレーンの収納状態を示す図、図7(a)は概略側面図、図7(b)は概略正面図。
【図8】本発明による電波暗室の実施の形態5における垂直グランドプレーンの使用状態を示す図、図8(a)は概略側面図、図8(b)は概略正面図。
【図9】本発明による電波暗室の実施の形態6における垂直グランドプレーンの使用状態を示す図、図9(a)はアーム収縮時を示す概略側面図、図9(b)はアーム伸長時を示す概略側面図、図9(c)はアーム伸長・傾斜時を示す概略上面図。
【符号の説明】
【0072】
1 導電板
1a、1b、1c 板状導電体
2 支え
3 収納部
4 電波暗室床面
5 キャスター
11、14 支柱
12 回動支点
13 ガイド
15 収納棚
21 固定溝
22 折り畳み機構
23 垂直起立・傾斜用直動機
31 傾斜路
32 昇降装置
33 収納部蓋板
51 台車
52 アーム
211、212 取り付け軸
221 レバー
222 バネ
223 固定部材A
224 ロック用突起
225 固定部材B
226 ロック用窪み
227 摺動曲面
228 固定用突起
229 固定用バー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁妨害の測定を行う電波暗室であって、基準面となる導電板と、前記導電板を大地面に対して垂直に起立させる手段と、床下に設けた収納部を有し、前記導電板および前記垂直に起立させる手段の、一部または全部を、前記収納部に収納することを特徴とする電波暗室。
【請求項2】
前記垂直に起立させる手段は、前記導電板の前記大地面からの高さを可変とすることを特徴とする、請求項1記載の電波暗室。
【請求項3】
前記垂直に起立させる手段は、前記導電板を、前記大地面に対して垂直となる位置から平行となる位置まで傾斜可能に構成したことを特徴とする、請求項1乃至2記載の電波暗室。
【請求項4】
前記導電板は、前記収納により前記電波暗室の前記大地面の一部となるよう構成したことを特徴とする、請求項1乃至3記載の電波暗室。
【請求項5】
前記導電板は、移動手段を有することを特徴とする、請求項1乃至4記載の電波暗室。
【請求項6】
前記導電板は、複数の板状導電体を電気的および機械的に接続して成り、前記板状導電体を展開または収容することにより、前記導電板の導電面の寸法が変更可能であることを特徴とする、請求項1乃至5記載の電波暗室。
【請求項7】
前記収納部は、前記大地面に連設した傾斜路を備えることを特徴とする、請求項1乃至6記載の電波暗室。
【請求項8】
前記収納部は、前記導電板および前記垂直に起立させる手段の、一部または全部を収納するまで下降し、且つ前記導電板の全部を前記電波暗室の床上まで上昇させることが可能な昇降機構を備えることを特徴とする、請求項1乃至6記載の電波暗室。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−200280(P2009−200280A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−40988(P2008−40988)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【出願人】(501353052)株式会社トーキンEMCエンジニアリング (13)
【Fターム(参考)】