説明

電波測距装置及び電波測距方法

【課題】電波信号によって端末装置間の距離を測定するときに、受信レベルが低い状況下においても精度よく端末装置間の距離を測定できる電波測距装置を提供する。
【解決手段】フレーム間時間測定器19が、送信側である第1の端末装置1の基準クロックS83によって生成された基準フレーム信号S81と、受信側である第2の端末装置2からの受信信号を複号化して生成された復号フレーム信号S82との時間差の期間に発生した基準クロックS83の周期(パルス数)によって、端末装置間の距離情報を測定する。また、クロック位相差測定器20aが、基準クロックS83と、受信信号から再生された復調クロックS84との位相差を毎クロック測定して、その位相差の測定結果を平滑化した補正値を生成する。そして、クロック位相差測定器20aは、フレーム間時間測定器19が測定した距離情報に対して補正値を加算した補正後距離情報を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電波測距装置及び電波測距方法に係り、詳しくは、電波信号によって端末装置相互間の距離を測定する電波測距装置及び電波測距方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電波測距方法として、一方の端末装置が、他方の端末装置へ送信信号を発信し、続いて他方の端末装置から応答信号を受信し、その応答信号を復調した後の復調信号からデータフレームを検出して、送信信号のフレーム信号と復調信号のフレーム信号との時間差によって、端末装置間の距離を算出する方法が知られている。
【0003】
また、関連する技術として、一方の端末装置が、他方の端末装置へ送信したクロック信号のカウントタイミングと、一方の端末装置が、他方の端末装置から受信した応答信号の受信タイミングとのタイミング差を検出する。そして、このタイミング差と、クロック信号を用いたカウント動作によって応答信号を受信したときのカウント値とを用いて経過時間を算出し、この経過時間に基づいて、端末装置相互間の距離を測定する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−047047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、無線通信を行う端末装置相互間の距離をフレーム信号の時間差で求める上記方法では、受信信号のレベルが低い状況のときは、距離測定の精度が悪化する虞がある。すなわち、送信信号と受信信号を用いた電波測距方法では、送信したフレーム信号と復調したフレーム信号との時間差のみによって端末装置間の距離を算出しているため、無線通信回線の回線状態が悪い状況のときは、受信したフレーム信号や、復調したフレーム信号のジッタが大きくなるため、端末装置相互間の算出距離の誤差(測定誤差)が大きくなる虞がある。
【0006】
また、特許文献1に開示された技術においても、端末装置の相互間で送受信されるクロック信号と応答信号とのタイミング差に基づいて、端末装置相互間の距離を算出しているため、無線通信回線の回線状態が悪化すれば、端末装置相互間の算出距離の誤差(測定誤差)が大きくなる虞がある。
【0007】
この発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、受信レベルが低い状況下でも、精度よく端末装置間の距離を測定することができる電波測距装置及び電波測距方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の第1の構成は、電波信号によって端末装置間の距離を測定する電波測距装置に係り、第1の端末装置にて、基準クロックによって生成され、第2の端末装置に送信した基準フレーム信号と、前記第2の端末装置からの折り返し信号を受信し複号化して生成された復号フレーム信号との時間差の期間に発生した前記基準クロックの周期により、前記端末装置間の距離情報を測定するフレーム間時間測定器と、前記基準クロックと、前記受信信号から再生された復調クロックとの位相差を毎クロック測定して、その位相差の測定結果を平滑化した補正値を生成し、前記フレーム間時間測定器が測定した距離情報に対して前記補正値を加算した補正後距離情報を出力するクロック位相差測定器とを備えてなることを特徴としている。
【0009】
この発明の第2の構成は、電波信号によって端末装置間の距離情報を測定する電波測距方法に係り、第1の端末装置にて、基準クロックによって生成され、第2の端末装置に送信した基準フレーム信号と、前記第2の端末装置からの折り返し信号を受信し複号化して生成された復号フレーム信号との時間差の期間に発生した前記基準クロックの周期により、前記端末装置間の距離情報を測定する第1のステップと、前記基準クロックと、前記受信信号から再生された復調クロックとの位相差を毎クロック測定して、その位相差の測定結果を平滑化した補正値を生成する第2のステップと、前記第1のステップで測定された距離情報に対して、前記第2のステップで生成された補正値を加算した補正後距離情報を出力する第3のステップとを有してなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
この発明の構成によれば、第1の端末装置(送信側端末装置)の基準クロックと、第2の端末装置(受信側端末装置)からの折り返し信号の復調クロックとの位相差に基づいて補正値を生成し、この補正値に基づいて端末装置間で測定された距離情報を補正している。したがって、端末装置間における回線状態の悪化によって受信レベルが低下して復号フレーム信号にジッタが発生しても、端末装置間の距離情報の測定誤差を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の第1及び第2の実施形態に係る無線通信システムの構成を示すブロック図である。
【図2】同無線通信システムを構成する第1の無線端末の送信部が備えるデータフレーム符号化器の動作概念を示すブロック図である。
【図3】同データフレーム符号化器を構成する各部の動作波形を示すタイムチャートである。
【図4】同無線通信システムを構成する第1の無線端末及び第2の無線端末がそれぞれ備える送信機の構成を示すブロック図である。
【図5】同第1の無線端末及び第2の無線端末がそれぞれ備える受信機の構成を示すブロック図である。
【図6】同第1の無線端末及び第2の無線端末のそれぞれの受信部が備えるデータフレーム復号化器の構成を示すブロック図である。
【図7】同第2の無線端末を構成する送信部が備えるデータフレーム符号化器の動作概念を示すブロック図である。
【図8】同無線通信システムを構成する距離測定器が備えるフレーム間時間測定器の動作を示す信号系統図である。
【図9】同フレーム間時間測定器が備えるカウンタが第1の無線端末と第2の無線端末との間の距離情報を測定するときの波形図である。
【図10】同距離測定器を構成するクロック位相差測定器であって、第1の実施形態に係るクロック位相差測定器の構成を示すブロック図である。
【図11】同距離測定器を構成するクロック位相差測定器であって、第2の実施形態に係るクロック位相差測定器の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明による電波測距方法は、端末装置間において無線信号を互いに送受信するRF(Radio Frequency)無線システムにおいて、送信のための基準クロック信号と折り返し信号より復調された復調クロック信号との間の位相差を算出して端末装置間の距離を測定する機能と、各クロック信号で測定された測定結果を平滑化することで、測定誤差を低減させる機能とを備えたことを特徴とする。
【実施形態1】
【0013】
以下、図面を参照して、この発明の実施形態について詳細に説明する。図1は、この発明の第1の実施形態に係る無線通信システムの構成を示すブロック図である。まず、図1を参照して、同システムの全体構成について説明する。図1に示すように、この無線通信システム10は、第1の無線端末(送信側無線端末)1と、第2の無縁端末(受信側無線端末)2と、第1の信号処理器3と、第2の信号処理器4と、距離測定器5とを備えて構成されている。
【0014】
上記第1の無線端末1は、図1に示すように、送信部6と受信部7とから構成されている。送信部6は、第1の信号処理器3からのデータ及び基準クロックS83を受信してPCM(Pulse Code Modulation)などのデジタル信号にフレーム符号化処理を行うデータフレーム符号化器11と、符号化されたデータを変調し、所定の周波数に変換してRF(Radio Frequency)信号として送信する送信機12とから構成されている。受信部7は、第2の無線端末2から送信されたRF信号を受信して復調する受信機14と、受信された信号から復号フレーム信号S82と復調クロックS84とを抽出して出力するデータフレーム復号化器13とから構成されている。
【0015】
第2の無線端末2は、受信部8と送信部9とから構成されている。受信部8は、第1の無線端末1から送信されたRF信号を受信して復調する受信機15と、復調した信号が復号化されたデータを第2の信号処理器4へ出力する機能、及び復調クロックS85を再生した復号フレーム信号S86を検出する機能を併せて持つデータフレーム復号化器16とから構成されている。送信部9は、データフレーム復号化器16で再生された復調クロックS85を平滑化し、第2の信号処理器4からのデータと同期させて、復号フレーム信号S86を使用してPCMなどのデジタル信号にフレーム符号化するデータフレーム符号化器18と、符号化されたデータを変調して所定のRF周波数に変換して送信する送信機17とから構成されている。
【0016】
距離測定器5は、無線装置1、2間で送受される電波信号に基づいて第1の無線端末1と第2の無線端末2との間の距離を測定する。一般的には、第1の無線端末1のデータフレーム符号化器11からの基準フレーム信号S81とデータフレーム復号化器13からの復号フレーム信号S82との時間差を測定するフレーム間時間測定器19で構成されている。これに対して、この実施形態では、このフレーム間時間測定器19に加えて、第1の信号処理器3からの基準クロックS83とデータフレーム復号化器13からの復調クロックS84とから両クロック(つまり、基準クロックS83と復調クロックS84)の位相差を算出し、算出した結果を平滑化するクロック位相差測定器20が追加されている。
【0017】
次に、同無線通信システム10の動作について説明する。最初に、送信側の第1の無線端末1と、送信側の第1の信号処理器3の動作について説明する。図2は、同無線通信システムを構成する第1の無線端末1の送信部6が備えるデータフレーム符号化器11の動作概念を示すブロック図、また、図3は、データフレーム符号化器11を構成する各部の動作波形を示すタイムチャートであり、横軸は時間の流れを示している。
【0018】
図2において、PCMフォーマット生成器24が、基準クロックS83をトリガ信号として、同期信号S21、識別信号S22、及び第1の信号処理器3からのデータをバッファするデータバッファ23を適宜に切り替え、基準フレーム信号S81と、その基準フレーム信号S81で同期する規定フォーマットのデータを生成して出力データSoとを出力する。すなわち、図3に示すように、同期信号S21、識別信号S22、及びデータバッファ23が、基準クロックS83の所定のパルスによって順次切り替えられ、出力データSoとして出力されると共に、所定のインターバルで基準フレーム信号S81が出力される。
【0019】
図4は、同無線通信システムを構成する第1の無線端末1が備える送信機12の構成を示すブロック図である。この送信機12は、変調部31と、LPF(Low Pass Filter)32と、ミキサー33と、RFローカル発振器34と、BPF(Band Pass Filter)35と、電力増幅部36とから構成されている。
【0020】
このように構成された送信機12は、データフレーム符号化器11から出力された出力データSoに対して変調部31で変調を行い、LPF32で高周波成分を除去する。そして、ミキサー33及びRFローカル発振器34によって所定の周波数に変換され、さらに、BPF35によって不要な周波数成分が除去される。そして電力増幅部36により規定の電力に増幅され、第1の無線端末1からRF信号Srfとして出力される。
【0021】
このようにして、第1の無線端末1から出力されたRF信号Srfは、受信側の端末である第2の無線端末2における受信部8の受信機15へ入力される。図5は、第2の無線端末2が備える受信機15の構成を示すブロック図である。この受信機15は、受信増幅部41と、ミキサー42と、RFローカル発振器43と、BPF44と、増幅部45と、復調部46とから構成されている。
【0022】
このように構成された受信機15は、入力されたRF信号Srfが受信増幅部41で増幅され、ミキサー42及びRFローカル発振器43によってIF(Intermediate Frequency)周波数に変換される。さらに、BPF44によって不要な周波数が除去された後に、増幅部45及び復調部46によって、信号が増幅された後にベースバンド信号Sbbに復調されて、第2の無線端末2における受信部8のデータフレーム復号化器16へ出力される。
【0023】
図6は、第2の無線端末2が備えるデータフレーム復号化器16の構成を概略示すブロック図である。図6に示すように、第2の無線端末2のデータフレーム復号化器16は、クロック用PLL(Phase Locked Loop)回路51と、クロック信号発振器52と、フレーム検出部54と、PCMフォーマット復号部55と、データバッファ56とから構成されている。
【0024】
このような構成のデータフレーム復号化器16において、第2の無線端末2の受信機15より出力されたベースバンド信号Sbbは、クロック用PLL回路51及び内蔵のクロック信号発振器52を使用して、ベースバンド信号Sbbと同期する復調クロックS85を再生する。そして、ベースバンド信号Sbbと復調クロックS85から、フレーム検出部54によって復号フレーム信号S86が検出されて出力される。その後、PCMフォーマット復号部55が復調クロックS85と復号フレーム信号S86とによってデータを抽出する。そして、PCMフォーマット復号部55で抽出されたデータは、一旦、データバッファ56へ入力された後、第2の信号処理器4のタイミングに合わせてデータバッファ56からデータ出力Sdとして出力される。
【0025】
そして、このデータ出力Sdは、第2の信号処理器4を介して、第2の無線端末2における送信部9のデータフレーム符号化器18へ入力される。図7は、第2の無線端末2を構成する送信部9が備えるデータフレーム符号化器18の動作概念を示すブロック図である。図7に示すように、第2の無線端末2における受信部8のデータフレーム復号化器16からの復調クロックS85は、平滑化器66で平滑処理されてジッタによる影響を少なく抑えている。この後、PCMフォーマット生成器64が、復号フレーム信号S86を検出したタイミングに合わせ、復調クロックS85に同期して、同期信号S61、識別信号S62、及び信号処理器4からのデータDをバッファするデータバッファ23を順次切り替えて、第2の無線端末2における送信部9の送信機17へ出力データSdとして出力する。
【0026】
なお、第2の無線端末2における送信部9の送信機17は、第1の無線端末1における送信部6の送信機12と同様の構成(つまり、図4と同じ構成)で同様の働きを行う。したがって、第2の無線端末2における送信部9のデータフレーム符号化器16からの出力データSdは、送信機17において、変調部31によって変調処理が行われた後、LPF32で高周波成分が除去される。そして、ミキサー33、及びRFローカル発振器34によって周波数変換され、BPF35において不要な周波数成分が除去される。その後、電力増幅部36によって規定の電力まで増幅されたRF信号Srfは第1の無線端末1側へ送信される。
【0027】
すなわち、第2の無線端末2から送信されたRF信号Srfは、第1の無線端末1における受信部7の受信機14へ入力される。なお、この受信機14は、第2の無線端末2における受信部8の受信機15と同様の構成(つまり、図5と同じ構成)で同様の動きを行う。したがって、第1の無線端末1における受信部7の受信機14において、受信増幅部41で増幅されたRF信号Srfは、ミキサー42、及びRFローカル発振器43によってIF周波数に変換される。そして、BPF44によって不要な周波数が除去された後、増幅部45及び復調部46により、RF信号Srfは増幅されてベースバンド信号Sbbに復調され、第1の無線端末1における受信部7のデータフレーム復号化器13へ送信される。
【0028】
なお、第1の無線端末1における受信部7のデータフレーム復号化器13は、第2の無線端末2における受信部8のデータフレーム復号化器16と同様の構成(つまり、図6と同じ構成)で同様の動きを行う。したがって、第1の無線端末1の受信機14から出力されたベースバンド信号Sbbは、データフレーム復号化器13において、クロック用PLL回路51、及び内蔵のクロック用信号発振器52を使用して、ベースバンド信号Sbbと同期している復調クロックS85が取り出される。また、ベースバンド信号Sbbと復調クロックS85から、フレーム検出部54によって復号フレーム信号S86が検出される。さらに、復号フレーム信号S86に基づいて、PCMフォーマット復号化器55がデータを抽出する。抽出されたデータは一旦データバッファ56に保存された後、第1の信号処理器3のタイミングに合わせて出力データSdとして出力される。
【0029】
そして、距離測定器5が、第1の無線端末1における受信部7のデータフレーム符号化器11で再生及び検出された信号を使用して、第1の無線端末1と第2の無線端末2との間の距離を測定(測距)する。
【0030】
図8は、同無線通信システムを構成する距離測定器5が備えるフレーム間時間測定器19の動作を示す信号系統図である。図8に示すように、データフレーム符号化器11で使用されている基準フレーム信号S81は、カウンタ91がカウントを開始するときのスタート信号、及びリセット信号となる。また、図1に示すデータフレーム復号化器13からの復号フレーム信号S82は、カウンタ91をストップさせるときのストップ信号となる。そして、距離基準パルス信号Spをクロックとしてカウンタ91を動作させることで、フレームの時間差であるカウント値と距離基準パルス信号Spの周期より、カウンタ91は、第1の無線端末1と第2の無線端末2との間の距離情報Lを測定して出力することができる。
【0031】
次に、図9は、フレーム間時間測定器19が備えるカウンタ91が第1の無線端末1と第2の無線端末2との間の距離情報Lを測定するときの波形図であり、横軸に時間を示している。すなわち、図9に示すように、例えば、299.78MHz(1m/パルス)の距離基準パルス信号Spをクロックとしてカウンタ91を動作させることにより、基準フレーム信号S81の時刻t1における立ち上り波形で距離基準パルス信号Spのパルスのカウントが開始される。そして、復号フレーム信号S82の時刻t2における立ち上り波形で距離基準パルス信号Spのパルスのカウントが停止される。したがって、時刻t1から時刻t2までの時間における距離基準パルス信号Spのパルス数のカウントすれば、第1の無線端末1と第2の無線端末2との間の距離情報Lを測定することができる。
【0032】
ところが、第1の無線端末1と第2の無線端末2との間の無線通信回線における回線状態の悪化などにより、復調フレーム信号S82の信号レベルが低下して波形が揺らぐジッタが生じることがある。このようなジッタが生じると、図9に示すように、復号フレーム信号S82は時刻t3で立ち上がることがある。したがって、時刻t1から時刻t3までの時間における距離基準パルス信号Spのパルス数をカウントしてしまうため、第1の無線端末1と第2の無線端末2との間の距離情報Lには誤差が生じるおそれがある。そこで、この本実施形態では、図1に示すように、距離測定器5にクロック位相差測定器20を追加してジッタによる距離測定誤差の不具合を解消している。
【0033】
図10は、距離測定器5を構成するクロック位相差測定器であって、第1の実施形態に係るクロック位相差測定器20aの構成を示すブロック図である。図10において、クロック位相カウンタ71は、基準クロックS83をカウンタ91のスタート信号、及びリセット信号とし、復調クロックS84をカウンタ91の停止信号として、距離基準パルス信号Spをクロックとしてカウンタ71を動作させる。
【0034】
次に、ラッチ72は、復号フレーム信号S82が入力された時点のカウンタ値を保持する。そして、復号フレーム信号S82が入力された時点のカウンタ値と現在のカウンタ値の差分が差分器73によって計算される。さらに、差分器73で計算された計算結果の情報は、基準フレーム信号S81のタイミングで平滑化器74によって平滑処理される。そして、加算器75が、平滑化器74で平滑処理された平滑結果(補正値)の情報を、図1に示すフレーム間時間測定器19で測定された距離情報Lに加算して、補正後距離情報L0を出力する。
【0035】
すなわち、第1の実施形態の電波測距装置は、フレーム間時間測定器19に対して、第1の無線端末の基準クロックS81と、第2の無線端末からの受信信号から再生された復調クロックS83との位相差を毎クロック測定し、その位相差の測定結果を平滑化器74で平滑化するクロック位相差測定器20aが追加されている。そして、フレーム間時間測定器19が測定した距離情報Lに対して、クロック位相差測定器20aが生成した補正値を加算した補正後距離情報L0を出力している。
【0036】
以上、説明したように、第1の無線端末1と第2の無線端末2との間の無線通信回線における回線状態の悪い状況下では、第1の無線端末1の受信機14による受信レベルが低下するため、復調された復号フレーム信号S82にジッタが生じる。一方、第2の無線端末2の受信機15の復号フレーム信号S86も同様の現象が発生するため、関連技術に係る一般的な電波測距装置では、弟1の無線端末1と第2の無線端末2との間で測定された距離情報に大きな誤差が発生してしまう。
【0037】
これに対して、この実施形態の電波測距装置によれば、図1に示すように、ジッタによる距離情報の測定誤差を補正する回路としてクロック位相差測定器20aを設けている。このクロック位相差測定器20aは、フレーム間時間測定器19の測定情報よりも短い周期で補正後距離情報L0を測定することができるため、ジッタによる距離情報の測定誤差を最小限に抑えることができる。
【実施形態2】
【0038】
次に、第2の実施形態では、距離情報の標準偏差を求めることで、測定する補正後の距離精度をさらに向上させる方法について説明する。なお、第1の実施形態と重複する説明は省略又は簡略にする。
【0039】
図11は、距離測定器5を構成するクロック位相差測定器であって、第2の実施形態に係るクロック位相差測定器20bの構成を示すブロック図である。図11に示す第2の実施形態のクロック位相差測定器20bは、図10で示した第1の実施形態のクロック位相差測定器20aに対して、メモリ76と標準偏差判定器77とが追加されている。なお、図1では、同一の図面で、第1の実施形態のクロック位相差測定器20aと第2の実施形態のクロック位相差測定器20bが表示されている。
【0040】
図11において、クロック位相差測定器20bは、差分器73からの出力信号を一旦メモリ76に保存しておき、その出力信号が一定量保存された結果よって、標準偏差判定器77が出力信号の標準偏差を求め、その標準偏差から外れた出力信号の値を除外した後に平滑化器74にデータを渡す。そして、平滑化器74によってデータが平滑処理された後、加算器75が、平滑化器74で平滑された平滑結果情報を、図1に示すフレーム間時間測定器19で測定された距離情報Lに加算して、補正後距離情報L1を出力する。
【0041】
すなわち、第1の無線端末1と第2の無線端末2との間の無線通信回線における回線状態が悪化して受信レベルが低下した状況では、受信機15の内部のPLLクロック再生回路(図示せず)においてクロックの飛びが生じ、一時的に大きな誤差を生じることがある。そこで、第2の実施形態の距離測定器5においては、クロック位相差測定器20bが、出力信号のデータをメモリ76に保存しておき、そのデータが一定量保存されたら、標準偏差判定器77によってそのデータの標準偏差を求めることにより、クロックの飛びが生じたデータを除外することにより、補正後距離情報L1の測定精度を向上させることができる。
【0042】
また、図11に示すように、復号フレーム信号S82によってラッチ72をクロックし、基準フレーム信号S81によって標準偏差判定器77をクロックすることによってカウンタを動作させ、その差分を計算することにより、長い距離の測定を行うことが可能となる。
【0043】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、この発明の具体的に構成は、これらの実施形態に限られるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもそれらはこの発明に含まれる。例えば、上記の各実施形態では、送信側の無線端末(図1に示す第1の無線端末1)と受信側の無線端末(図1に示す第2の無線端末2)が移動しない場合について説明したが、両者の移動端末が相対的に移動している場合においても、この発明を適用できることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
この発明の電波測距装置は、無線通信システムにおける端末間の距離を測定する用途に有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 第1の無線端末(送信側端末装置)
2 第2の無線端末(受信側端末装置)
5 距離測定器(電波測距装置)
10 無線通信システム
11,18 データフレーム符号化器
12,17 送信機
13,16 データフレーム復号化器
14,15 受信機
19 フレーム間時間測定器
20a、20b クロック位相差測定器
71 クロック位相カウンタ
74 平滑化器
77 標準偏差判定器
S81 基準フレーム信号
S82,S86 復号フレーム信号
S83 基準クロック
S84,S85 復調クロック
Sp 距離基準パルス信号
L 距離情報
L0,L1 補正後距離情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波信号によって端末装置間の距離を測定する電波測距装置であって、
第1の端末装置にて、基準クロックによって生成され、第2の端末装置に送信した基準フレーム信号と、前記第2の端末装置からの折り返し信号を受信し複号化して生成された復号フレーム信号との時間差の期間に発生した前記基準クロックの周期により、前記端末装置間の距離情報を測定するフレーム間時間測定器と、
前記基準クロックと、前記受信信号から再生された復調クロックとの位相差を毎クロック測定して、その位相差の測定結果を平滑化した補正値を生成し、前記フレーム間時間測定器が測定した距離情報に対して前記補正値を加算した補正後距離情報を出力するクロック位相差測定器とを備えてなることを特徴とする電波測距装置。
【請求項2】
前記第1の端末装置に接続されて、
前記基準クロックは、前記第1の端末装置側の信号処理器にて生成され、前記復調クロックは、前記第1の端末装置のデータフレーム復号化器にて生成されて、ともに、クロック位相差測定器に入力され、
前記基準フレーム信号は、前記第1の端末装置のデータフレーム符号化器にて生成され、前記復号フレーム信号は、前記第1の端末装置のデータフレーム復号化器にて生成されて、ともに、フレーム間時間測定器に入力されることを特徴とする請求項1記載の電波測距装置。
【請求項3】
前記クロック位相差測定器は、前記フレーム間時間測定器が距離情報を測定する周期よりも短い周期で補正後距離情報を測定することを特徴とする請求項1又は2記載の電波測距装置。
【請求項4】
前記クロック位相差測定器は、
前記基準クロックと前記復調クロックとの位相差を、所定数のクロック間隔に亘って測定する差分器と、
前記差分器が所定数のクロック間隔に亘って測定した位相差を、前記基準フレーム信号のタイミングで平滑化して前記補正値を生成する平滑化器と、
前記フレーム間時間測定器が測定した距離情報に対して前記補正値を加算し、前記補正後距離情報を出力する加算器と
を備えていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の電波測距装置。
【請求項5】
前記クロック位相差測定器は、さらに、
前記差分器が所定数のクロック間隔に亘って測定した位相差を保存するメモリと、
前記メモリに保存された一定量の位相差について標準偏差を求める標準偏差判定器とを備え、
前記平滑化器は、前記標準偏差判定器が求めた標準偏差の内にある位相差について平滑化を行って前記補正値を生成することを特徴とする請求項4記載の電波測距装置。
【請求項6】
電波信号によって端末装置間の距離情報を測定する電波測距方法であって、
第1の端末装置の基準クロックによって生成され第2の端末装置に送信された基準フレーム信号と、前記第2の端末装置からの折り返し信号を前記第1の端末装置にて受信し複号化して生成された復号フレーム信号との時間差の期間に発生した前記基準クロックの周期により、前記端末装置間の距離情報を測定する第1のステップと、
前記基準クロックと、前記受信信号から再生された復調クロックとの位相差を毎クロック測定して、その位相差の測定結果を平滑化した補正値を生成する第2のステップと、
前記第1のステップで測定された距離情報に対して、前記第2のステップで生成された補正値を加算した補正後距離情報を出力する第3のステップと
を含むことを特徴とする電波測距方法。
【請求項7】
前記第3のステップで測定される補正後距離情報の測定周期は、前記第1のステップで測定される距離情報の測定周期よりも短いことを特徴とする請求項6記載の電波測距方法。
【請求項8】
前記第2のステップにおいて、前記基準クロックと前記復調クロックとの位相差を所定数のクロック間隔に亘って測定し、かつ、前記位相差を前記基準フレーム信号のタイミングで平滑化して前記補正値を生成することを特徴とする請求項6又は7記載の電波測距方法。
【請求項9】
電波信号によって端末装置間の距離情報を測定する電波測距方法であって、
第1の端末装置にて、基準クロックによって生成され、第2の端末装置に送信した基準フレーム信号と、前記第2の端末装置からの折り返し信号を受信し複号化して生成された復号フレーム信号との時間差の期間に発生した前記基準クロックの周期により、前記端末装置間の距離情報を測定する第1のステップと、
前記基準クロックと、前記受信信号から再生された復調クロックとの位相差を所定数のクロック間隔に亘って測定してメモリへ保存する第2のステップと、
前記メモリに保存された一定量の位相差について標準偏差を求める第3のステップと、
前記第3のステップで求めた標準偏差の内にある位相差について平滑化を行って前記補正値を生成する第4のステップと、
前記第1のステップで測定された距離情報に対して、前記第4のステップで生成された補正値を加算した補正後距離情報を出力する第5のステップと
を含むことを特徴とする電波測距方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−203023(P2011−203023A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68983(P2010−68983)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(599161890)NECネットワーク・センサ株式会社 (71)
【Fターム(参考)】