説明

電波発射源可視化装置

【課題】電波発射源可視化装置において、特に近距離の電波発射源をカメラ画像中から特定する際にも、良好な位置精度を維持できる電波発射源可視化装置を得る。
【解決手段】アレイアンテナ部11の中心軸に沿って前方にレーザ光を照射し、このレーザ光の照射された位置をカメラ画像の撮像視野の中心となるようにカメラ部13の撮像方向を調整して両者の軸合わせを行った後、電波到来方向を推定した2次元の波源画像とカメラ画像とを重ね合わせて、電波発射源可視化画像を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波の到来方向をカメラ画像上に可視化して表示する電波発射源可視化装置に係り、特に近距離に存在する電波発射源を良好な位置精度で可視化する電波発射源可視化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電波の到来方向を推定しその結果をカメラ画像とともに表示することによって、対象電波の発射源を視覚的に容易に特定可能とする電波発射源可視化装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献1に開示された事例では、平面上に配列された複数のアンテナ素子を備えたアンテナ装置を用いて、これらアンテナ素子を順次切り替えながら到来する電波を受信し、電波ホログラフィ法によってそれら受信した電波の到来方向を、方位/仰角の2次元画像に可視化すると同時に、アンテナ装置の指向方向をカメラにより撮像した2次元のカメラ画像を取得し、これら2つの画像をその方位/仰角が一致するように重ね合わせて合成し表示している。
【0003】
このような電波発射源可視化装置においては、到来電波の受信に影響を及ぼさないように、アンテナ装置とカメラとを異なる構成にし、互いに距離をおいて設置されることが多い。しかし、このような設置手法の場合には、アンテナ装置の中心軸とカメラの中心軸とが必ずしも一致しなくなり、両画像を重ね合わせた画像から電波発射源の場所を特定する際に、特に近距離においてその精度が劣化するおそれがある。このため、例えば装置の操作員によるカメラ取り付け方向の微調整や、重ね合わせの基準位置との距離に対応した補正値の手動設定等を行うことによって、画像重ね合わせ時の誤差を低減する必要があった。
【0004】
また、両画像の方位/仰角をより少ない誤差で一致させるための手法として、合成処理の際にそれぞれの位置関係により生ずるカメラ画像の視差を補正する手法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。この特許文献2に開示された事例では、アンテナ装置とカメラとの距離、及びアンテナ装置と基準位置との距離に基づきアンテナ装置の中心軸とカメラの中心軸との視差角としてのオフセット角度を算出し、カメラ画像に対してこのオフセット角度分の補正を施した上で重ね合わせを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−212229号公報(第6ページ、図1)
【特許文献2】特開2007−17272号公報(第7ページ、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したように、基準位置との距離情報を装置の運用状況に対応させながら迅速かつ正確に把握することは難しい。また、基準位置が遠距離の場合には基準位置との距離の変化に対して上記した視差角の変化も大きなものとはならないが、特に、近距離で基準位置をしばしば変更する場合にはその影響も大きく、また距離情報の取得・更新のための操作員の作業負荷も多くなる。このため、到来電波の可視化画像とカメラ画像との視差によりこれらを重ねあわせたときに誤差を生じ、電波発射源の位置を特定する際の精度が劣化するおそれがあった。
【0007】
本発明は、上述の事情を考慮してなされたものであり、電波発射源可視化装置において、到来電波を受信するアンテナ装置の中心軸とその指向方向を撮像するカメラの中心軸との軸合わせを行った後にそれぞれの取得画像を重ね合わせ、カメラ画像中の電波発射源の位置を良好な精度で特定する電波発射源可視化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の電波発射源可視化装置は、到来する電波を複数のアンテナ素子が配列されたアレイアンテナで受信し、到来方向を推定して2次元画像化するとともに、その推定された到来方向を撮像視野内に含むカメラにより撮像された2次元カメラ画像と重ね合わせて表示する電波発射源可視化装置において、前記アレイアンテナの中心軸に沿ってレーザ光を前方に照射するレーザポインタと、前記カメラにより撮像された、前記レーザポインタの照射位置を撮像視野内に含むカメラ画像中からこのレーザポインタの照射位置を検出するとともに、この検出されたレーザポインタの照射位置がカメラ画像の中心に撮像されるよう、カメラの撮像方向を制御する視軸制御手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、到来電波を受信するアンテナ装置の中心軸とその指向方向を撮像するカメラの中心軸との軸合わせを行い、その後にそれぞれの取得画像を重ね合わせるので、特に近距離においてもカメラ画像中の電波発射源の位置を良好な精度で特定することのできる電波発射源可視化装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る電波発射源可視化装置の一実施例の構成を示すブロック図。
【図2】図1に例示した電波発射源可視化装置の動作を説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る電波発射源可視化装置を実施するための最良の形態について、図1及び図2を参照して説明する。
【実施例】
【0012】
図1は、本発明に係る電波発射源可視化装置の一実施例の構成を示すブロック図である。図1に例示したように、この電波発射源可視化装置は、アレイアンテナ部11、到来方向推定部12、カメラ部13、画像合成処理部14、表示部15、レーザポインタ部16、カメラ方向調整機構17、視軸制御部18、及び操作表示器19を備えている。
【0013】
アレイアンテナ11は、アンテナ素子として、例えば半波長のダイポールアンテナが同一平面上にM×N個(M及びNはいずれも正の整数)の2次元に配列されており、いずれかのアンテナ素子(例えば2次元配列の中心に位置するアンテナ素子)をリファレンス用とし、他のアンテナ素子を順次切り替えながら到来電波を受信する。また、このアレイアンテナ部11の中心軸には、後述するレーザポインタ部16が取り付けられている。到来方向推定処理部12は、アレイアンテナ部11で受信された到来電波の到来方向を推定し、その結果を方位角方向及び仰角方向からなる2次元面に画像化した波源画像を取得する。カメラ部13は、アレイアンテナ部11で受信した電波の到来方向を撮像しその2次元のカメラ画像を取得する。また、このカメラ部13は、後述するカメラ方向調整機構17に取り付けられている。画像合成処理部14は、到来方向推定処理部12にて取得された波源画像(電波到来方向の2次元画像)とカメラ部13により撮像されたカメラ画像とを、方位及び仰角方向のスケールを一致させて重ね合わせるように合成する。表示部15は、画像合成処理部14で合成された画像を表示する。
【0014】
レーザポインタ部16は、発光するレーザ光の方向がアレイアンテナ部11の中心軸に沿った前方向となるようにアレイアンテナ部11内のアンテナ素子配列の中央部に取り付け固定されている。そして、後述する視軸制御部18の制御によりアレイアンテナ部11の前方に向けてレーザ光を発光する。発行するレーザ光は、例えばアイセーフのレーザ光としている。カメラ方向調整機構17は、視軸制御部18からの駆動信号に基づいて、カメラ部13で撮像するカメラ画像の撮像方向を設定する。視軸制御部18は、レーザポインタ部16のレーザ光の照射位置をその撮像視野内に含むカメラ部13からのカメラ画像中から、この照射位置を検出するとともに、この照射位置がカメラ画像の視野の中心に撮像されるようにカメラ方向調整機構17を駆動するための駆動信号を生成しカメラ方向調整機構17に送出する。また、後述の操作表示器19からの撮像方向の指定指示操作に従って、カメラ方向調整機構17に対する同様の駆動信号を生成し送出する。操作表示器19は、カメラ部13により撮像されたカメラ画像を表示するとともに、この表示に基づいて操作員等により入力されるカメラ部13の撮像方向の指定指示操作を受けつけ、視軸制御部18に送出する。
【0015】
次に、前出の図1及び図2のフローチャートを参照して、上述のように構成された本実施例の電波発射源可視化装置の動作について説明する。なお、以下の説明においては、電波発射源可視化装置の運用を開始する準備段階として、電波到来方向を2次元画像化した波源画像の中心となるアレイアンテナ部11の中心軸と、カメラ部13で撮像したカメラ画像の視野の中心軸との軸合わせを行う場面を取りあげて説明する。図2は、図1に例示した電波発射源可視化装置の実施例の動作を説明するためのフローチャートである。
【0016】
まず、装置電源が投入されると、視軸制御部18からの制御により、アレイアンテナ部11に取り付けられたレーザポインタ部16がレーザ光を発光する。レーザポインタ部16は、その発光するレーザ光が対象の電波到来方向に向けられたアレイアンテナ部11の中心軸に沿った前方向となるようにアレイアンテナ部11に取り付け固定されているので、このレーザ光の照射方向が、後段の到来方向推定処理部12で取得される波源画像の中心に相当する。このレーザ光は、その照射方向にある対象物に照射されるが、そのときの対象物上の照射位置は、アレイアンテナ11の中心軸の方向に一致している(ST21)。
【0017】
これと合わせ、カメラ部13も、アレイアンテナ部11と同じ方向を視野にして2次元のカメラ画像を撮像しており、レーザポインタ部16が照射したレーザ光の照射位置は、このカメラ部13の撮像視野内に捉えられる(ST22)。この、レーザ光の照射位置を視野内に捉えたカメラ画像は、カメラ部13から視軸制御部18、及び操作表示器19に送出されるとともに、操作表示器19に表示される(ST23)。
【0018】
次いで、視軸制御部18では、このカメラ画像内に捕らえられたレーザ光の照射位置が検出され、カメラ画像内におけるその2次元位置が特定される(ST24)。そして、レーザ光の照射位置がカメラ画像の撮像視野の中心に撮像されるように、カメラ部13の撮像方向が設定される。すなわち、カメラ画像内で特定されたレーザ光の照射位置と撮像視野の中心点との偏差に基づいて、カメラ方向調整機構17を駆動するための駆動信号が生成され(ST25)、視軸制御部18からカメラ方向調整機構17に送出される(ST26)。
【0019】
この駆動信号により、カメラ方向調整機構17が駆動され、カメラ部13では、レーザポインタ部16から照射されたレーザ光の照射位置をその視野中心に捉えたカメラ画像が撮像される。なお、上記したST23の動作ステップにおいて、操作表示器19にはカメラ画像が表示されるので、操作員等がこの表示されたカメラ画像上でポイントマーカ等によりカメラ部13の撮像方向、すなわち視野中心の指定操作を行い、視軸制御部18はその操作結果に従ってST25及びST26の動作ステップを実行するように構成することもできる。このようにして、アレイアンテナ部11の中心軸と、カメラ部13で撮像したカメラ画像の視野の中心軸とが軸合わせされる(ST27)。
【0020】
準備段階としての軸合わせの後は、対象の方向に向けられたアレイアンテナ部11で到来電波が受信されると、これら到来電波は到来方向推定処理部12に送られ、その到来方向の推定処理が実行されてその結果が2次元画像に可視化される。一方、軸合わせされたカメラ部13では、アレイアンテナ部11の中心軸を撮像視野の中心とした2次元のカメラ画像が取得される。そして、これら波源画像とカメラ画像とは、画像合成部14において重ね合わせるように合成され、電波発射源の位置を精度良く特定可能な電波発射源可視化画像として表示部15に表示される。
【0021】
さらにその後、対象の方向が変更されると(ST28のY)、上記したST21からの動作ステップが繰り返され、動作終了が指示されるまで、前述の動作ステップが繰り返される(ST29)。
【0022】
以上説明したように、本実施例においては、アレイアンテナ部11の中心軸に沿って前方にレーザ光を照射し、このレーザ光の照射された位置をカメラ画像の撮像視野の中心となるようにカメラ部13の撮像方向を調整して両者の軸合わせを行った後、電波到来方向を推定した2次元の波源画像とカメラ画像とを重ね合わせて電波発射源の可視化画像としている。これにより、両画像を重ね合わせる際に、特に近距離での場合に影響の大きい波源画像とカメラ画像との視差に起因する誤差を低減することができるので、電波発射源の位置を良好な精度で特定することができる。また、レーザポインタを用いた簡素な手法により迅速かつ正確に設定することができるので、軸合わせの際にも装置運用への影響を最小限に留めることができる。
【0023】
なお、本発明は、上記した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0024】
11 アレイアンテナ部
12 到来方向推定部
13 カメラ部
14 画像合成処理部
15 表示部
16 レーザポインタ部
17 カメラ方向調整機構
18 視軸制御部
19 操作表示器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
到来する電波を複数のアンテナ素子が配列されたアレイアンテナで受信し、到来方向を推定して2次元画像化するとともに、その推定された到来方向を撮像視野内に含むカメラにより撮像された2次元カメラ画像と重ね合わせて表示する電波発射源可視化装置において、
前記アレイアンテナの中心軸に沿ってレーザ光を前方に照射するレーザポインタと、
前記カメラにより撮像された、前記レーザポインタの照射位置を撮像視野内に含むカメラ画像中からこのレーザポインタの照射位置を検出するとともに、この検出されたレーザポインタの照射位置がカメラ画像の中心に撮像されるよう、カメラの撮像方向を制御する視軸制御手段と
を有することを特徴とする電波発射源可視化装置。
【請求項2】
さらに、前記カメラにより撮像された、前記レーザポインタの照射位置を撮像視野内に含むカメラ画像を表示するとともに、この表示に基づき入力される前記カメラの撮像方向の指定操作を受けつける操作・表示手段を有することを特徴とする請求項1に記載の電波発射源可視化装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−22117(P2011−22117A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169980(P2009−169980)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】